(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6651644
(24)【登録日】2020年1月24日
(45)【発行日】2020年2月19日
(54)【発明の名称】連続的な半凝固ダイカスト製造方法及び製造システム
(51)【国際特許分類】
B22D 17/00 20060101AFI20200210BHJP
【FI】
B22D17/00 310
B22D17/00 314
【請求項の数】8
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-545486(P2018-545486)
(86)(22)【出願日】2017年3月21日
(65)【公表番号】特表2019-510636(P2019-510636A)
(43)【公表日】2019年4月18日
(86)【国際出願番号】CN2017077539
(87)【国際公開番号】WO2017173921
(87)【国際公開日】20171012
【審査請求日】2018年8月29日
(31)【優先権主張番号】201610216958.3
(32)【優先日】2016年4月8日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】518194822
【氏名又は名称】ジュハイ ルンシンタイ エレクトリカル カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】レン フアイダ
(72)【発明者】
【氏名】ジャン イン
(72)【発明者】
【氏名】ワン ジチェン
(72)【発明者】
【氏名】リ グナン
【審査官】
印出 亮太
(56)【参考文献】
【文献】
特表2006−525123(JP,A)
【文献】
特表2008−522831(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22D 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
造核剤製造装置で固体造核剤を製造して、且つ前記固体造核剤を半凝固スラリー製造装置の液体スラリーを有する製造容器中に輸送する工程と、
前記半凝固スラリー製造装置で半凝固スラリーを製造して、且つ前記半凝固スラリーを半凝固ダイカストマシンに輸送する工程と、
前記半凝固ダイカストマシンで半凝固ダイカストを行う工程とを実行するように、
中央制御装置により制御することを含み、
前記造核剤製造装置で固体造核剤を製造して、且つ前記固体造核剤を半凝固スラリー製造装置の半凝固スラリー製造容器に輸送することは、
造核剤インゴットを電気抵抗炉に入れてから、シールカバーを確実にロックするように制御し、前記電気抵抗炉で加熱して、造核剤インゴットを、温度が液体所定温度である液体造核剤とするように制御し、金属製ダイを第1の所定温度に予熱して維持するように制御し、油圧装置により前記金属製ダイをしめるように制御し、上昇管により前記液体造核剤を前記金属製ダイに注入するように制御し、固体造核剤を生成した後、前記油圧装置により前記金属製ダイを開型して、生成された固体造核剤を固体造核剤輸送装置により固体造核剤搬送装置に送るように制御する工程を含み、前記液体所定温度は650〜700℃とされ、前記第1の所定温度の範囲は180〜240℃とされていることを特徴とする連続的な半凝固ダイカスト製造方法。
【請求項2】
半凝固スラリー製造装置の液体スラリーを有する製造容器中に輸送される固体造核剤の質量は、前記液体スラリーの質量の0.68〜0.88%であることを特徴とする請求項1に記載の連続的な半凝固ダイカスト製造方法。
【請求項3】
半凝固スラリー製造装置の液体スラリーを有する製造容器中に輸送される固体造核剤の質量は、前記液体スラリーの質量の0.88%であることを特徴とする請求項2に記載の連続的な半凝固ダイカスト製造方法。
【請求項4】
前記固体造核剤は中空半球状顆粒であり、各顆粒の重量は、10〜20gであることを特徴とする請求項1に記載の連続的な半凝固ダイカスト製造方法。
【請求項5】
前記半凝固スラリー製造装置で半凝固スラリーを製造するように制御することは、空冷式機械的撹拌装置で前記製造容器内において撹拌し、所定の回転数で所定の時間撹拌するように制御し、中空撹拌棒の温度測定装置により前記半凝固スラリーの温度を取得し、前記製造容器の製造温度を制御することにより前記半凝固スラリーの温度を第2の所定温度に保持することを含み、前記所定の回転数は200〜1000r/sとされ、前記所定の時間は10〜25sとされ、前記第2の所定温度は595〜605℃とされていることを特徴とする請求項1に記載の連続的な半凝固ダイカスト製造方法。
【請求項6】
前記所定の回転数は800r/sとされ、前記所定の時間は20sとされ、前記第2の所定温度は605℃とされていることを特徴とする請求項5に記載の連続的な半凝固ダイカスト製造方法。
【請求項7】
造核剤製造装置、半凝固スラリー製造装置、半凝固ダイカストマシン、中央制御装置を備える連続的な半凝固ダイカスト製造システムであって、
前記中央制御装置は、造核剤製造装置で固体造核剤を製造して、且つ前記固体造核剤を半凝固スラリー製造装置の液体スラリーを有する製造容器中に輸送するように制御し、前記半凝固スラリー製造装置で半凝固スラリーを製造して、且つ前記半凝固スラリーを半凝固ダイカストマシンに輸送するように制御し、前記半凝固ダイカストマシンで半凝固ダイカストを行うように制御するためであり、
前記造核剤製造装置は、電気抵抗炉、シールカバー、上昇管、金属製ダイ、油圧装置、固体造核剤輸送装置を備え、
前記中央制御装置は、造核剤インゴットを電気抵抗炉に入れてから、シールカバーを確実にロックするように制御し、前記電気抵抗炉で加熱して、造核剤インゴットを、温度が液体所定温度である液体造核剤とするように制御し、金属製ダイを第1の所定温度に予熱して維持するように制御し、前記油圧装置により前記金属製ダイをしめるように制御し、上昇管により前記液体造核剤を前記金属製ダイに注入するように制御し、固体造核剤を生成した後、前記油圧装置により前記金属製ダイを開型して、生成された固体造核剤を固体造核剤輸送装置により固体造核剤搬送装置に送るように制御する方法に従って、造核剤製造装置で固体造核剤を製造して、且つ前記固体造核剤を輸送するように制御するためであり、前記液体所定温度は650〜700℃とされ、前記第1の所定温度の範囲は180〜240℃とされていることを特徴とすることを特徴とする連続的な半凝固ダイカスト製造システム。
【請求項8】
前記半凝固スラリー製造装置は、銅管が内蔵された中空撹拌棒及び製造容器を有し、前記中空撹拌棒内に、温度測定装置が設けられており、
前記中央制御装置は、空冷式機械的撹拌装置で前記製造容器内において撹拌するように制御し、所定の回転数で所定の時間撹拌し、前記中空撹拌棒の温度測定装置により前記半凝固スラリーの温度を取得し、前記製造容器の製造温度を制御することにより前記半凝固スラリーの温度を第2の所定温度に保持するためであり、前記所定の回転数は200〜1000r/sとされ、前記所定の時間は10〜25sとされ、前記第2の所定温度は595〜605℃とされていることを特徴とする請求項7に記載の連続的な半凝固ダイカスト製造システム。
【発明の詳細な説明】
【0001】
本出願は、2016年04月08日に中国特許局に提出し、出願番号が201610216958.3で、発明の名称が「連続的な半凝固ダイカスト製造方法及び製造システム」である中国特許出願の優先権を要求し、その全ての内容を引用により本出願に組み込む。
【技術分野】
【0002】
本発明は、半凝固ダイカストの製造分野に関し、特に連続的な半凝固ダイカスト製造方法及び製造システムに関する。
【背景技術】
【0003】
20世紀70年代初から発展してきた半凝固ダイカスト技術によって、従来のダイカスト形態が深刻に変化した。中国国内外の学者は、機械的撹拌法、電磁撹拌法、凝固制御法、ひずみ誘起融体活性化プロセス、粉末冶金方法及びその他の方法などの多くの半凝固金属スラリー製造プロセス方法を提案した。現在、多くの半凝固金属スラリー製造方法では、半凝固スラリーの固液比が制御し難く、製造された半凝固スラリーの球状結晶が太く、真球度が低い問題が存在する。これらのスラリー製造方法は、スラリー製造装置の効率及び半凝固スラリーの品質安定性に影響されて、工場での実際の連続的なダイカスト製造に普及されておらず、まだ実験室での研究段階にある。
【0004】
ダイカスト業界における半凝固製造は、スラリー製造装置、スラリー製造プロセス及び半凝固スラリーの品質により制限されている。上記スラリー製造プロセスのスラリー製造装置が複雑で、スラリー製造効率が低く、スラリー固形含有量が安定的でないため、一般的なスラリー製造プロセスが連続的なダイカスト量産に適用できない。本発明の半凝固スラリー製造方法及び連続的なダイカストプロセスによれば、半凝固ダイカスト製造を効率的、且つ連続的にする課題が解決される。
【発明の概要】
【0005】
上記した技術的課題を解決するために、本発明は、半凝固スラリーの製造効率を高め、半凝固スラリーの品質を安定的にし、半凝固連続的ダイカスト製造時の問題を解決する連続的な半凝固ダイカスト製造方法及び製造システムを提供する。
【0006】
本発明により提供される連続的な半凝固ダイカスト製造方法は、
造核剤製造装置で固体造核剤を製造して、且つ前記固体造核剤を半凝固スラリー製造装置の液体スラリーを有する製造容器中に輸送する工程と、
前記半凝固スラリー製造装置で半凝固スラリーを製造して、且つ前記半凝固スラリーを半凝固ダイカストマシンに輸送する工程と、
前記半凝固ダイカストマシンで半凝固ダイカストを行う工程とを実行するように、中央制御装置により制御することを含む。
【0007】
上記した連続的な半凝固ダイカスト製造方法において、
前記造核剤製造装置で固体造核剤を製造して、且つ前記固体造核剤を半凝固スラリー製造装置の半凝固スラリー製造容器に輸送することは、
造核剤インゴットを電気抵抗炉に入れてから、シールカバーを確実にロックするように制御し、前記電気抵抗炉で加熱して、造核剤インゴットを、温度が液体所定温度である液体造核剤とするように制御し、金属製ダイを第1の所定温度に予熱して維持するように制御し、前記油圧装置により前記金属製ダイをしめるように制御し、上昇管により前記液体造核剤を前記金属製ダイに注入するように制御し、固体造核剤を生成した後、前記油圧装置により前記金属製ダイを開型して、生成された固体造核剤を固体造核剤輸送装置により固体造核剤搬送装置に送るように制御する工程を含み、前記液体所定温度は650〜700℃とされ、前記第1の所定温度の範囲は180〜240℃とされている特徴を更に有してもよい。
【0008】
上記した連続的な半凝固ダイカスト製造方法において、
半凝固スラリー製造装置の液体スラリーを有する製造容器中に輸送される固体造核剤の質量は、前記液状スラリーの質量の0.5〜1.5%である特徴を更に有してもよい。
【0009】
上記した連続的な半凝固ダイカスト製造方法において、
半凝固スラリー製造装置の液体スラリーを有する製造容器中に輸送される固体造核剤の質量は、前記液状スラリーの質量の1%である特徴を更に有してもよい。
【0010】
上記した連続的な半凝固ダイカスト製造方法において、
前記固体造核剤は中空半球状顆粒であり、各顆粒の重量は、10〜20gである特徴を更に有してもよい。
【0011】
上記した連続的な半凝固ダイカスト製造方法において、
前記した前記半凝固スラリー製造装置で半凝固スラリーを製造するように制御することは、空冷式機械的撹拌装置で前記製造容器内において撹拌し、所定の回転数で所定の時間撹拌するように制御し、前記中空撹拌棒の温度測定装置により前記半凝固スラリーの温度を取得し、前記製造容器の製造温度を制御することにより前記半凝固スラリーの温度を第2の所定温度に保持することを含み、前記所定の回転数は200〜1000r/sとされ、前記所定の時間は10〜25sとされ、前記第2の所定温度は595〜605℃とされている特徴を更に有してもよい。
【0012】
上記した連続的な半凝固ダイカスト製造方法において、
前記所定の回転数は800r/sとされ、前記所定の時間は20sとされ、前記第2の所定温度は605℃とされている特徴を更に有してもよい。
【0013】
本発明により提供される連続的な半凝固ダイカスト製造システムは、造核剤製造装置、半凝固スラリー製造装置、半凝固ダイカストマシン、中央制御装置を備える。
前記中央制御装置は、造核剤製造装置で固体造核剤を製造して、且つ前記固体造核剤を半凝固スラリー製造装置の液体スラリーを有する製造容器中に輸送するように制御し、前記半凝固スラリー製造装置で半凝固スラリーを製造して、且つ前記半凝固スラリーを半凝固ダイカストマシンに輸送するように制御し、前記半凝固ダイカストマシンで半凝固ダイカストを行うように制御するためである。
【0014】
上記した連続的な半凝固ダイカスト製造システムにおいて、
前記造核剤製造装置は、電気抵抗炉、シールカバー、上昇管、金属製ダイ、油圧装置、固体造核剤輸送装置を備える特徴を更に有してもよい。
【0015】
前記中央制御装置は、造核剤インゴットを電気抵抗炉に入れてから、シールカバーを確実にロックするように制御し、前記電気抵抗炉で加熱して、造核剤インゴットを、温度が液体所定温度である液体造核剤とするように制御し、金属製ダイを第1の所定温度に予熱して維持するように制御し、前記油圧装置により前記金属製ダイをしめるように制御し、上昇管により前記液体造核剤を前記金属製ダイに注入するように制御し、固体造核剤を生成した後、前記油圧装置により前記金属製ダイを開型して、生成された固体造核剤を固体造核剤輸送装置により固体造核剤搬送装置に送るように制御する方法に従って、造核剤製造装置で固体造核剤を製造して、且つ前記固体造核剤を輸送するように制御するためであり、前記液体所定温度は650〜700℃とされ、前記第1の所定温度の範囲は180〜240℃とされている。
【0016】
上記した連続的な半凝固ダイカスト製造システムにおいて、
前記半凝固スラリー製造装置は、銅管が内蔵された中空撹拌棒及び製造容器を有し、前記中空撹拌棒内に、温度測定装置が設けられている特徴を更に有してもよい。
【0017】
前記中央制御装置は、空冷式機械的撹拌装置で前記製造容器内において撹拌し、所定の回転数で所定の時間撹拌するように制御し、前記中空撹拌棒の温度測定装置により前記半凝固スラリーの温度を取得し、前記製造容器の製造温度を制御することにより前記半凝固スラリーの温度を第2の所定温度に保持するためであり、前記所定の回転数は200〜1000r/sとされ、前記所定の時間は10〜25sとされ、前記第2の所定温度は595〜605℃とされている。
【0018】
本発明により提供される連続的な半凝固ダイカスト製造プロセスは、以下の有益な効果を有する。
(1)液体スラリーに固体造核剤を添加すると共に、造核剤の添加百分率及び造核剤と液体スラリーの相対温度を制御することで、液体スラリーが迅速に降温でき、固体造核剤が撹拌過程で溶融して分解し、大量の固体核形成が可能であり、撹拌により破砕された樹枝状結晶が細かい真球度の球状結晶組織を迅速に形成し、最終的に形成された半凝固スラリーにおけるスラリー固体の含有量が高められ、常に42〜50%程度に維持される。スラリー製造時間が短縮され、スラリー固形含有量が高められ、球状結晶が微細化され、真球度が高くなり、従来の半凝固スラリー製造過程における固形含有量が低い問題が解決され、半凝固スラリーの製造効率が高められ、半凝固スラリーの品質が安定的になる。
【0019】
(2)固体造核剤の製造、半凝固スラリーの製造、半凝固スラリーのダイカストという三つの工程の連動循環実施が実現され、半凝固ダイカスト製造一体化装置の自動的且つ安定的な製造が実現される。製造された半凝固ダイカスト製品の内部品質が安定的であり、合格率が高められ、製造コストが削減される。一体化装置により半凝固ダイカストを連続的に循環して行うプロセス方法により、半凝固ダイカスト製造の新しいモードを開拓し、半凝固ダイカスト業界の発展に新しいアプローチを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明における連続的な半凝固ダイカスト製造システムの構造図である。
【
図2】本発明における連続的な半凝固ダイカスト製造方法のフローチャートである。
【
図3】本発明の方法により製造された半凝固スラリーの金属組織模式図である。 図面における符号:中央制御装置1、造核剤製造装置2、電気抵抗炉201、シールカバー202、上昇管203、金属製ダイ204、油圧装置205、固体造核剤輸送装置206、半凝固スラリー製造装置3、空冷式機械的撹拌装置301、製造容器302、半凝固ダイカストマシン4。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の実施例の目的、技術方案と利点をより明らかにするために、以下、本発明の実施例における図面を参照しながら、本発明の実施例における技術方案を明らか且つ完全に記載し、記載される実施例は、本発明の一部の実施例であり、全ての実施例ではないことは明らかである。本発明における実施例に基づき、当業者が創造的な努力をすることなく得られた他の実施例は、全て本発明の保護範囲に属する。衝突しない限り、本出願における実施例及び実施例における特徴は、相互に任意に組み合わせることができる。
【0022】
図1は、本発明における連続的な半凝固ダイカスト製造システムの構造図であり、この製造システムは、中央制御装置1、中央制御装置に電気信号を伝送可能に接続される造核剤製造装置2、半凝固スラリー製造装置3、半凝固ダイカストマシン4を備える。中央制御装置1は、全製造フローを制御し、各過程の動作について、数値制御プログラム及び対応する位置検出スイッチにより、連続的なダイカスト製造を自動的に循環して完成する。
【0023】
中央制御装置1は、造核剤製造装置2で固体造核剤を製造して、固体造核剤を半凝固スラリー製造装置3の液体スラリーを有する製造容器中に輸送するように制御し、半凝固スラリー製造装置3で半凝固スラリーを製造して、半凝固スラリーを半凝固ダイカストマシン4に輸送するように制御し、半凝固ダイカストマシン4で半凝固ダイカストを行うように制御する。
【0024】
造核剤製造装置2は、電気抵抗炉201、シールカバー202、上昇管203、金属製ダイ204、油圧装置205、固体造核剤輸送装置206を備える。中央制御装置1は、造核剤インゴットを電気抵抗炉201に入れてから、シールカバー202を確実にロックするように制御し、電気抵抗炉201で加熱して、造核剤インゴットを、温度が液体所定温度である液体造核剤とするように制御し、金属製ダイ204を第1の所定温度に予熱して維持するように制御し、油圧装置205により金属製ダイ204をしめるように制御し、上昇管203により液体造核剤を金属製ダイ204に注入するように制御し、固体造核剤を生成した後、油圧装置205により金属製ダイ204を開型して、生成された固体造核剤を固体造核剤輸送装置206により固体造核剤搬送装置に送るように制御する方法に従って、造核剤製造装置2で固体造核剤を製造して、且つ固体造核剤を輸送するように制御し、前記液体所定温度は650〜700℃とされ、前記第1の所定温度の範囲は180〜240℃とされている。金属製ダイ204は、上ダイキャビティと下ダイキャビティを有し、油圧装置205により、金属製ダイ204が開型するように制御し、その後、上ダイキャビティは、送りねじの伝送によって、スラリー製造領域に移動して、固体造核剤を固体造核剤輸送装置206伝送することができる。
【0025】
半凝固スラリー製造装置3は、空冷式機械的撹拌装置301と製造容器302を有する。中空撹拌棒301内に、温度測定装置が設けられている。空冷式機械的撹拌装置301は、銅管が内蔵された中空撹拌棒を有し、撹拌棒が回動する時、一定の流量と圧力の圧縮空気が溶融アルミニウムと間接的に熱交換し、溶融アルミニウムに対する降温作用を奏する。空冷式機械的撹拌装置を設定する際に、好ましい設定として、冷却空気圧力が3.5〜4.5KPaとされ、圧縮空気流量が10〜30L/minとされる。
【0026】
中央制御装置1は、空冷式機械的撹拌装置301で製造容器内において撹拌し、所定の回転数で所定の時間撹拌するように制御し、中空撹拌棒の温度測定装置により半凝固スラリーの温度を取得し、製造容器の製造温度を制御することで半凝固スラリーの温度を第2の所定温度に保持し、且つ、第2の所定温度の変動範囲が±3℃の偏差範囲にあるように保持する。所定の回転数は200〜1000r/sとされ、所定の時間は10〜25sとされ、第2の所定温度は595〜605℃とされている。
【0027】
図2は、連続的な半凝固ダイカスト製造プロセスのフローチャートである。本方法は、中央制御装置により、以下の工程を実行するように制御することを含む。
工程1、造核剤製造装置で固体造核剤を製造して、且つ固体造核剤を半凝固スラリー製造装置の液体スラリーを有する製造容器中に輸送するように制御する。
【0028】
工程2、半凝固スラリー製造装置で半凝固スラリーを製造して、且つ半凝固スラリーを半凝固ダイカストマシンに輸送するように制御する。
工程3、半凝固ダイカストマシンで半凝固ダイカストを行うように制御する。
【0029】
以下、本方法を詳細に説明する。
工程1において、造核剤インゴットを電気抵抗炉に入れてから、シールカバーを確実にロックするように制御し、電気抵抗炉で加熱して、造核剤インゴットを、温度が液体所定温度である液体造核剤とするように制御し、金属製ダイを第1の所定温度に予熱して維持するように制御し、油圧装置により金属製ダイを開型するように制御し、上昇管により液体造核剤を金属製ダイに注入するように制御し、油圧装置により金属製ダイをしめるように制御し、固体造核剤を生成した後、油圧装置により金属製ダイを開型して、生成された固体造核剤を固体造核剤輸送装置(流路であってもよい)により固体造核剤搬送装置に送るように制御する。ここで、液体所定温度は650〜700℃であり、好ましくは680℃であり、第1の所定温度の範囲は180〜240℃である。金属製ダイを180〜240℃に予熱して維持するように制御することにより、造核剤顆粒を80〜120℃に保持可能であり、スラリー製造時に添加された中空半球状造核剤顆粒を容易に溶融して固体核を形成し、温度が80〜120℃に保持される造核剤顆粒は、スラリー製造過程において迅速に降温する目的を達成することができる。
【0030】
【表1】
半凝固スラリー製造装置の液体スラリーを有する製造容器中に輸送される固体造核剤の質量は、液状スラリーの質量の0.2〜1.5%である。造核剤の添加量は、球状結晶の真球度と固形含有量に対してある程度の影響を及ぼし、表1に示すとおりである。
【0031】
表1から分かるように、造核剤の添加量が0.5〜1.5%の範囲内にあり、添加量の増加につれて、半凝固スラリーの球状結晶の真球度が高くなり、固形含有量の割合が増え、添加量が1%よりも大きい場合、スラリー固形含有量がまた低下し、真球度が低くなる。固体造核剤顆粒の最適な添加量は、スラリー製造用合金の量の1%である。
【0032】
固体造核剤は中空半球状顆粒であり、各顆粒の重量は、10〜20gである。
工程2において、半凝固スラリー製造装置で半凝固スラリーを製造するように制御することは、空冷式機械的撹拌装置で製造容器内において撹拌し、所定の回転数で所定の時間撹拌するように制御し、中空撹拌棒の温度測定装置により半凝固スラリーの温度を取得し、製造容器の製造温度を制御することで半凝固スラリーの温度を第2の所定温度に保持することを含み、所定の回転数は200〜1000r/sとされ、所定の時間は10〜25sとされ、第2の所定温度は595〜605℃とされている。
【0033】
撹拌棒の回転数と撹拌時間は、半凝固ダイカスト製品の球状結晶組織と力学性能に対してある程度の影響を及ぼし、表2に示すとおりである。
【0034】
【表2】
表2の実験データから分かるように、スラリー製造時に、撹拌棒の撹拌速度と撹拌時間は、半凝固ダイカスト製品の力学性能に対して直接影響を及ぼす。保温炉における溶融アルミニウムの温度が670℃である時、撹拌してスラリー製造を行い、スラリー製造のパラメータとして、回転数が800r/sとされ、20s撹拌し、半凝固スラリー温度が605℃とされ、このパラメータの場合に、半凝固スラリーダイカスト製造による半凝固製品の性能が良好である。
【0035】
撹拌速度の増加につれて、半凝固ダイカスト製品の組織における一次固相の外形は、徐々に細かい真球度になり、分布がより均一である。その主な理由としては、(a)撹拌速度を増加すれば、溶融体の坩堝内での対流強度の向上に寄与し、対流強度の増加によって、合金溶融体が同じ時間内でより大きい過冷却度に達するように促進し、より核形成しやすく、対流強度の増加によって、過冷却した合金溶融体の内部の温度場と濃度場の分布をより均一にする。(b)撹拌速度が小さい場合、樹枝状結晶と撹拌羽根、樹枝状結晶と筒壁、及び樹枝状結晶と樹枝状結晶との間の衝突回数と強度が足りず、一部の樹枝状結晶のみ破砕される。撹拌速度の増加につれて、衝突強度と頻度が大幅に多くなり、樹枝状結晶の2次枝間隔が折れ、また、顆粒状結晶粒子の尖った角の丸めに寄与し、よって、ほぼ球状の結晶粒子になる。しかしながら、激しい撹拌速度によって、合金溶融体に大量の空気が混入され、組織に多くの気孔欠陥が存在することが招かれ、成形品の性能の向上に不利である。
【0036】
図3は、本発明で製造された半凝固スラリーの金属組織模式図である。
本発明は、以下の有益な効果を有する。
(1)液体スラリーに固体造核剤を添加すると共に、造核剤の添加百分率及び造核剤と液体スラリーの相対温度を制御することで、液体スラリーが迅速に降温でき、固体造核剤が撹拌過程で溶融して分解し、大量の固体核形成が可能であり、撹拌により破砕された樹枝状結晶が細かい真球度の球状結晶組織を迅速に形成し、最終的に形成された半凝固スラリーにおけるスラリー固形の含有量が高められ、常に42〜50%程度に維持される。スラリー製造時間が短縮され、スラリー固形含有量が高められ、球状結晶が微細化され、真球度が高くなり、従来の半凝固スラリー製造過程における固形含有量が低い問題が解決され、半凝固スラリーの製造効率が高められ、半凝固スラリーの品質が安定的になる。
【0037】
(2)固体造核剤の製造、半凝固スラリーの製造、半凝固スラリーのダイカストという三つの工程の連動循環実施が実現され、半凝固ダイカスト製造一体化装置の自動的且つ安定的な製造が実現される。製造された半凝固ダイカスト製品の内部品質が安定的であり、合格率が高められ、製造コストが削減される。一体化装置により半凝固ダイカストを連続的に循環して行うプロセス方法により、半凝固ダイカスト製造の新しいモードを開拓し、半凝固ダイカスト業界の発展に新しいアプローチを提供する。
【0038】
なお、本明細書で用いる「含む」、「有する」という用語又はこれらのその他の変形は、非排他的な包含をカバーするものである。よって、要素のリストを含む物品又は装置は、それらの要素を含むだけでなく、更に、明らかに列挙されていない他の要素をも含む。又は、かかる物品又は装置に固有の要素を含む。特に限定されていない限り、「〜を含む」により限定された要素について、前記要素を含む物品又は装置に更に他の同じ要素が存在することを排除しない。
【0039】
以上の実施例は、本発明の技術方案を説明するためのものに過ぎず、限定するものではない。好ましい実施例を参照しながら、本発明を詳細に説明しただけである。当業者にとって、本発明の技術方案の精神和範囲から逸脱することなく、本発明の技術方案に行った補正や等価置換が、全て本発明の特許請求の範囲に含まれるべきであることが明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明の連続的な半凝固ダイカスト製造方法によれば、スラリー製造時間が短縮され、スラリー固形含有量が高められ、球状結晶が微細化され、真球度が高くなり、従来の半凝固スラリー製造過程における固形含有量が低い問題が解決され、半凝固スラリーの製造効率が高められ、半凝固スラリーの品質が安定的になる。その製造システムによれば、固体造核剤の製造、半凝固スラリーの製造、半凝固スラリーのダイカストという三つの工程の連動循環実施が実現され、半凝固ダイカスト製造一体化装置の自動的且つ安定的な製造が実現される。製造された半凝固ダイカスト製品の内部品質が安定的であり、合格率が高められ、製造コストが削減される。一体化装置により半凝固ダイカストを連続的に循環して行うプロセス方法により、半凝固ダイカスト製造の新しいモードを開拓し、半凝固ダイカスト業界の発展に新しいアプローチを提供する。