(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記固体ホスト材料は、ガラス、非晶性ポリマー、結晶性材料、半結晶性ポリマー、金属ガラス、またはセラミックのうちの少なくとも一つを含む、請求項1に記載の検査装置。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1Aは、本明細書に開示された実施例に従って形成された検査装置100の斜視図を示す。検査装置100は、互いにほぼ平面的に広がる上面104および下面106を有する本体102を含む。本体102は、側面108と前端110および後端112との間を移行する丸みを帯びた角を含むことができる。この例では、本体102は矩形であるが、代替の形状を利用することもできる。検査装置100は、光学的測定および分析を行う機器内に取り付けられるような形状および寸法にされている。例として、本明細書に開示された例は、非流体光学装置と共に利用されてもよいが、装置は流体装置であってもよい。
例として、本明細書に記載される検査装置100は、マイクロ流体工学、半導体、バイオテクノロジーおよび消費者産業装置に関連して利用することができる。例えば、検査装置100は、マスクアライナおよびステッパのような半導体冶具の配列や、マシンビジョンシステムのキャリブレーション、および光コヒーレンストモグラフィや蛍光ベースの生物学的撮像のような応用光学ステージのために用いることができる。他の例として、検査装置100は、蛍光顕微鏡のような標準的コンシューマ光学冶具のキャリブレーションに関連して用いることができる。
【0029】
本明細書中の実施例は、様々な蛍光法を利用する次世代シーケンスシステムと関連して用いることができる。例えば、検査装置100は、イラミーナインコーポレーテッド(カリフォルニア州サンディエゴ)の販売に係るMINISEQ(R)装置、HISEQ(R)装置、NEXTSEQ(R)装置、MISEQ(R)装置および/またはほかの企業から売り出された装置と関連して用いることができる。少なくともいくつかの例によれば、検査装置100は、(従来使用されていたような)蛍光基準粒子または蛍光色素を必要とせずに、装置の光学キャリブレーションを可能にする。慣例的な蛍光基準粒子および色素は、いくつかのより頻繁に使われる蛍光色素分子(たとえばフルオレセインやフィコエリスリン)にキャリブレーションを提供する。しかしながら、慣例的な蛍光基準粒子および色素は、熱及び光安定性、漏洩および/または機械的な不良を被る。
【0030】
本明細書に開示される実施例によれば、検査装置100は、内蔵のリモート診断光学ターゲットとして用いることができる。検査装置100は、装置内に恒久的に取り付けられ、任意の追加の器具を手動で装填する必要なく、装置内の検出器が光学測定を行うことができるように配置することができる。検査装置100は、装置によって、さまざまな活動に関連するリモート診断情報を提供するために用いることができる。例えば、装置は、検査装置100を利用して、装置の寿命にわたっての装置の点広がり関数、レーザアライメント、光学較正、および光伝送効率などのデータ傾向分析を実行することができる。データはユーザの介在なしで自動的に収集され、遠隔デバッグや予測診断を実行し、さまざまな装置での傾向をつかむためにクラウドにアップロードされる。検査装置100は、XYZステージの態様のような、装置の光学システムの様々な態様を評価するために用いることができる。例えば、レーザアラインメントがオフであると判明した場合、ソフトウェアは自動的にポインティングミラーを作動させて、レーザをアライメントさせることができる。
【0031】
いくつかの実施例によれば、検査装置100は、各装置で組み立てられて出荷されてもよく、この装置は、検査装置100で様々な検査を実行するように装置を制御する検査アプリケーションの現行のソフトウェアリリースを含む。検査装置100が装填および取り外しのために寸法決めされるとき、検査装置100は、光学メトリックを測定するために使用することのできるフルサイズの検査装置として構成することができる。フルサイズの検査装置は、フローセルホルダとかみ合い、フローセルホルダのアライメントを評価するために利用される。フルサイズの検査装置は、シーケンスフローセルの全長を延長して、シーケンス動作のシミュレーションを可能にする。必要に応じて、検査装置100は、小型化され、フローセルレーンに隣接するステージング位置で装置内に取り付けることができる。検査装置100が恒久的に装置内(の縮小された専有面積)に搭載されるとき、装置は検査装置100の取り付けと取り外しの必要なく検査動作を実行することができる。検査装置の縮小された専有面積は光学基準を実行するのに用いることができる。
【0032】
光学ターゲット120は、概して平面であり、互いに平行に配向された上部および底部ターゲット面107,109を含む。側壁105は光学ターゲットの周りに広がっている。この例では、光学ターゲット120は、一般に矩形の立方体形状を有するが、特定の用途に基づいて別の形状を用いることができるものと認識される。本明細書で説明するように、光学ターゲット120は、固体ホスト材料と、固体ホスト材料内に埋設された蛍光材料とを含む固体構造を表す。固体ホスト材料は完全に、または少なくとも部分的に透明とすることができる。例えば、固体ホスト材料の透明度は、光学ターゲット120から放射される蛍光発光の所望の強度に部分的に基づくことができる。一例として、固体構造または基板の固体ホスト材料は、本明細書に記載されるような所望の機械的および光学的特性を有するガラス基板または別の固体ホスト材料を表すことができる。
【0033】
一例として、ホスト固体材料はフッ化インジウムガラスで構成することができる。例えば、固体ホスト材料はガラス、非晶質ポリマー、結晶質材料、半結晶質ポリマー、金属ガラス、セラミックなどの少なくとも一種を含むことができる。以下の表1は、固体構造または基板内で用いられ得る固体ホスト材料の例を示す。表1に示すように、固体ホスト材料は重金属フッ化物ガラス(例:ZBLAN)を表すことができる。ZBLANガラスはZrF
4,BaF
2,LaF
3,AlF
3,およびNaFなどのフッ化物との様々な組み合わせを用いることができる。場合により、固体ホスト材料はCaF
2であり得る。固体ホスト材料は低い最大フォノンエネルギ準位を示す。いくつかの例によれば、固体ホスト材料は所定の波数以下の最大フォノンエネルギを示すことができる。更なる例として、固体ホスト材料は約370cm
−1〜約525cm
−1の最大フォノンエネルギを示すことができる。固体ホスト材料は、低い最大フォノンエネルギを含み、関心光チャネルに対応する放射帯域内で蛍光を得るために関心位置において利用可能なエネルギバンドを示す、他の材料から構成することもできる。
【0035】
蛍光材料は希土類イオンであるTm
3+(455nm)、Ho
3+(550nm)、Tb
3+(540nm)、Eu
3+(611nm)、Sm
3+(550nm)、Pr
3+(488、590nm)、Dy
3+(480nmおよび575nm)、またはEr
3+(550nmおよび660nm)、もしくはアクチノイド類の元素であるU、遷移金属イオンであるTi
3+,Cr
2+/3+、などの希土類元素であり得る。蛍光材料は固体ホスト材料の全体にわたって均等かつ均質な定まった方法で配置することができ、Er−InF
3ガラスを形成する。蛍光材料は一つ以上の関心発光チャネルで発光する。例えば、蛍光材料は1000nmより短い波長で発光することができる。
【0036】
蛍光材料は固体ホスト材料内に様々な濃度で提供することができ、蛍光発光材料の濃度は、期待される励起光強度に応じて得られる蛍光発光の所望の強度に部分的に基づいて管理される。上記の例において、ホスト基板が三価のエルビウムイオンをドープしたフッ化インジウム(InF
3)ガラスの場合、三価のエルビウムイオンは約0.1%〜約10.0%のドーパント濃度で提供することができ、例えば原子分率約0.5%〜約6%であり得る。他の例として、三価のエルビウムイオンのドーパント濃度は原子分率で約1.0%〜3.0%+/−0.01%の範囲であり得る。蛍光材料は、組成を調整することによって調整され得る選択発光強度を示す。例えば、発光強度および/または発光色は、蛍光材料の濃度を調整することや、第2ドーパント(例えば共ドーパント)を添加することおよび/または固体ホスト材料の組成を調整することにより、さまざまに変化させることができる。例えば、第1ドーパントは主ドーパントまたは活性化イオンを表すことができ、一方第2ドーパントは主ドーパントの放出強度を増加または減少させるために添加することができる。第2ドーパントは増感イオンを表す。複数のドーパントを組み合わせることにより、蛍光強度を高めることができる。追加の増感イオンと共ドーピングすることにより、増感イオンと活性化イオン(例えば、Er)との間のエネルギ移動によって放出強度を増加させることができる。例えば、Er
3+が活性化イオンとして使用される場合、増感イオンとしてYb
3+またはTm
3+が用いることができる。他の例として、Yb,HoおよびYF
3が増感イオンとして用いることができる。
【0037】
必要に応じて、1つ以上のドーパントを組み合わせることにより、1つ以上の発光バンドの蛍光強度を減少させることができる。追加の増感イオンと共ドーピングすることにより、増感イオンと活性化剤(例えば、Er)との間のエネルギ移動によって放出強度を減少させることができる。たとえば、Tb/EuはYb
2O
3に共ドーピングすることができ、TbからEuへのエネルギ移動は赤から緑へと発光の変化をもたらす。他の例として、Tmは、1.5ミクロン(μm)の連続波(cw)レーザを促進するために、TbまたはHoを共ドーピングすることができる。共ドーピングの組み合わせの例は、“Properties of the 1.5 and 2.3 um laser emissions of various Tm doped fluoride crystals codoped with Tb or Yb ions”(OSA TOPS Voi.26、先進固体物理レーザ学会)、“Ultraviolet and visible emissions of Er
3+ in KY(WO
4)
2 single crystals co-doped with Yb
3+ ions”(Journal of Luminescence 115号(2005)131~137ページ)、“Color-tunable properties of Eu
3+ - and Dy
3+ -codopedY
2O
3 phosphor particles”(NanoscaleResearch Letter 2012年7号(1)556ページで公開)、書籍“Current Trends in Optical Amplifiers and Their Applications”(Tien-Pei Lee編集)に記載され、それらすべての主題を本明細書の一部として援用する。
【0038】
固体ホスト材料とドーパントは所望のエネルギ準位比を示すような組み合わせを選択することができる。例えば、HOST
PE/FM
ETのエネルギ準位比を示すことができ、HOST
PEは固体ホスト材料の最大フォノンエネルギを表し、FM
ETは蛍光材料のターゲット発光エネルギ準位と最近位のエネルギ準位の間のエネルギ遷移を表す。
【0039】
本明細書中で公開された例に従って、固体ホスト材料と蛍光材料はFM
EG2/HOST
PE>=4のエネルギ準位比を示し、HOST
PEは固体ホスト材料のフォノンエネルギを表し、FM
EG2は蛍光材料のターゲット励起エネルギ準位と次に低い(NLL)エネルギ準位の間のエネルギ遷移を表す。例として、下記に記された表2は例示された蛍光材料のエネルギギャップFM
EG2と様々な固体ホスト材料との関係を示している。例として、蛍光材料は、TEエネルギ準位が
4F
9/2エネルギ準位で、NLLエネルギ準位が
4I
9/2エネルギ準位である、三価のエルビウムイオン(Er
3+)元素であり得る。
4F
9/2と
4I
9/2エネルギ準位の間のエネルギギャップは2900cm
−1の波数である。表2において、例示された固体ホスト材料はそれぞれ1100cm
−1、900cm
−1、500cm
−1の最大フォノンエネルギを有するケイ酸塩、ゲルマニウム塩、およびZBLANを含む。三価のエルビウムイオン(Er
3+)と固体ホスト材料であるケイ酸塩、ゲルマニウム塩、およびZBLAN(FM
EG2/HOST
PE)のエネルギ準位比は、それぞれ3、4、および6であり、一方量子効率はそれぞれ約0.22%、14%および90%である。「量子効率」(Q.E.)は、入射励起光フォトンの数に対する放射された蛍光フォトンの数の比である。表2から明らかであるように、ZBLANは、特定の蛍光材料Er
3+に対するケイ酸塩やゲルマニウム塩と比較して、高い度合の量子効率を示す。場合によって、異なる蛍光材料がドーパントとして用いられるとき、ケイ酸塩とゲルマニウム塩は表2に例示されたものよりも高い量子効率を付与することができる。Er
3+をドープしたInF
3ガラスにおいて、エネルギ準位比は6であり、約90%の量子効率に対応している。他の蛍光材料は、表に示された固体ホスト材料と異なる量子効率を示すものと認識される。
【0041】
引き続き
図1Aに関連して、本体102は、アルミニウム、または類似した機械的特性および光学的特性を有する他の材料を備えることができる。本体102は、本明細書中で検討された様々なレッジ、ウォール、ウェルなどに求められる許容誤差を与える、粉砕工程または他の製造工程によって形成することができる。本体102は、上面104にわたって設けられた挿入領域118を含む。中央ポケット114およびチャネル116は、挿入領域118の内部領域に設けられる。中央ポケット114は光学ターゲット120を受け入れるように構成される。光学ターゲット120は接着剤のような様々な方法でポケット114の中に固定することができる。必要に応じて、ポケット114は光学ターゲット120の周辺ウォールとしっかりと係合する(例えば、圧入方式で)周辺機能をともなって形成することができる。挿入領域118は、光学ターゲット120をポケット114内へ覆う、ガラス層(
図1Aには示されていない)やほかの透明材料(すなわち透明層)を受け入れるように構成される。チャネル116はガラス層と本体102とを接着する接着剤を受け、それによって光学ターゲット120を外部環境から覆い密封する。少なくともいくつかの例に従うと、ガラス層はその上に形成された微細構造を有することができ、それによって格子層(例:
図2Aの122)を画定する。必要に応じて、ガラス層は完全に省略することができ、光学ターゲット120は本体102の上面104から露出させることができる。
【0042】
図1Aの例において、中央ポケット114は細長く、本体102の長辺に沿って長手方向に伸びるように配置される。チャネル116は、ポケット114の両側に沿って形成されている。チャネル116は、チャネル116の底部から本体102の底面106まで延在する、その底部にある1つ以上の入口/出口ポート117を含む。入口/出口ポート117は、上面ガラスが挿入領域118に差し込まれた後、接着剤をチャネル116に注入するために使うことができる。
【0043】
必要に応じて、光学ターゲット120は、その上またはそれに近接して形成された微細構造や他のパターンなしに、独立した検査装置として用いることができる。例えば、光学ターゲット120は、他のいかなる支持構造もなしに、単純に、フローセルおよび/または装置の中に直接搭載することができる。
【0044】
図1Bは別の例に従って形成された本体202の上面平面図を示す。本体202は、その中に形成された挿入領域218を含んだ上面204を備える。挿入領域218は浅く、本体202内に深く下方に延び、その深さは一般的にガラス層(例えば格子層)の厚さと一致し、挿入領域218中で支えられる。
図1Bの例では、挿入領域218は一般に正方形または長方形であるが、別の形状も利用することができる。更に、
図1Bの例において、挿入領域218は一般的に、ガラス層の厚さに対応した一様な/共通した深さを有する。しかしながら、挿入領域218は、ガラス層を形成するために異なる厚さを有するおよび/または別個に分かれる部分を持ったガラス層を利用することが望ましい場合などに、その異なる領域における深さの変化があってもよい。
【0045】
本体202は一般的に挿入領域218内の中央に位置するポケット214も含む。ポケット214は、光学ターゲット120を受け入れるように形作られ、大きさを定められる。ポケット214は、挿入領域218の深さより下に所定の深さまで延びる。チャネル216は挿入領域218の中に設けられ、おおむねポケット214を取り囲むように位置する。チャネル216は、ポケット214を取り囲むように連続的であることを除いて、一般に
図1Aのチャネル116に対応する。チャネル216は、本体202を通ってその底面に延びる穴を表す入口/出口ポート217を含む。入口/出口ポート217は、一旦挿入されたガラス層の内部に接近し、チャネル216に接着剤を挿入するために用いることができる。
【0046】
例として、チャネル216は、チャネル216のまわりに配置された一連の圧力解放ポケット221をも備える。下記により詳細に説明するように、圧力解放ポケット221は、ガラス層にかかる圧力を、チャネル216に添加された接着シリコーンにより解放する。より具体的には、シリコーンが入口/出口ポート217を通ってチャネル216に導入されるとき、シリコーンは少なくとも部分的にポケット221の上を橋を架けるように覆い、それによりポケット221のそれぞれの中の少量の空気を堰き止める。シリコーンが硬化するにつれ、シリコーンは収縮し、それによって格子層へ引き抜き力/収縮力がかかり、チャネル216の壁面を包囲する。ポケット221で堰き止められた空気はシリコーンの第1解放領域を形成し、それによって、シリコーンによって格子層にかかる引き抜き力を軽減させる。
【0047】
ポケット214とチャネル216は、
図1Bの例において、これもまた長方形である内部レッジ215によって分離される。
図1Bに示された正方形または長方形の幾何学形状のいずれも、類似した多数の代替形状に変更できるものと認識される。チャネル216は、外部レッジ219によってその外周で囲まれる。内部レッジ215及び外部レッジ219は、ガラス層を受け入れる棚を形成する。
【0048】
組み立ての際、光学ターゲット120は、ポケット214に挿入され、ポケット214の壁面と光学ターゲット120の側面の間の摩擦干渉などにより、そこに接着されて保持される構成とすることができる。
一旦光学ターゲット120がポケット214に挿入されると、ガラス層は内部レッジ215および外部レッジ219に受け止められるまで挿入領域218に挿入される。本明細書中で開示されたいくつかの例に従うと、挿入領域218は格子層(例えば、
図2A中の122を参照)としての機能を果たす透明層(例えば、ガラスから形成され、従ってガラス層とも呼ばれるもの)を受け入れる。格子層は、組み立てが完了した後、汚染物質がポケット214に入り込むのを防ぐために、挿入領域218の中に密封される。例えば、エンドユーザは、清掃のために、定期的に検査装置をクリーナー(例えば、アルコール)で拭きとることができる。本明細書中の例は、格子層を本体202に接着するためにチャネル216に注入された耐アルコール性接着剤を用いており、接着剤はアルコール暴露に十分に耐えることとなる。例えば、接着剤はアルコール中で非常に安定なシリコーンであり得るが、UV硬化接着剤はアルコールで化学変化する傾向がある。シリコーンはチャネル116が満たされるまで注入される。しかしながら、シリコーンは硬化の際に「ガス放出」を示すことができる。
【0049】
本明細書で開示される例は、ポケット214と光学ターゲット120をガス放出工程の副生成物から隔離するものである。そうするために、一旦格子層が挿入領域218に挿入され、内部レッジ215および外部レッジ219に受けいれられると、ガス放出バリア213が格子層と内部レッジ215との間の境界面の周囲に形成される。ガス放出バリア211も格子層と外部レッジ219との間の境界面の周囲に形成される。ガス放出バリア213、215は、一つ以上の入口/出口ポート217を通って冶具を挿入することと、格子層と内部レッジ215の間の境界面の縁、および格子層と外部レッジ219の間の境界面の縁にそって、所定の量のバリア接着剤を付着させることで形成することができる。例えば、バリア接着剤は低粘性(例:300cp)UV硬化接着剤であり得る。所定の時間待った後、バリア接着剤は内部レッジ215および外部レッジ219を横切って運ばれ、内部レッジ215、外部レッジ219と、格子層との間の薄い接着層(ガス放出バリアとして鎖線211、213で示される)を形成する。格子層は圧力がかからない状態になり、内部レッジ215と外部レッジ219へと引き下げられる。この状態でのUV硬化は、格子層を曲げることのできる締め付け固定具なしに格子層を平らで適切な位置に維持する。加えて、内部レッジ215におけるガス放出バリア213はいかなるシリコーンの放出ガスがポケット214に入り込むのをも防ぐ。
【0050】
図1Cは、別の例に従って形成された検査装置250の斜視図を示す。検査装置250は本体252、光学ターゲット270および格子層272を備える。本体252は、通常挿入領域268の中央に位置するポケット264を備える。ポケット264は、光学ターゲット270を受け入れるように形作られ大きさを定められる。チャネル266は挿入領域268の中に設けられ、ポケット264をおおむね包囲するように位置する。チャネル266は入口/出口ポート267を備える。挿入領域268は、同一平面上に配置され、格子層272の下面を受け入れるように配置された内部レッジ265および外部レッジ269を備える。本体252は、格子層272における所望の平坦度を維持するように形成される。いくつかの光学キャリブレーションがクロムパターンの平坦領域を用いるので、格子層272における所望の平坦度を維持することは有益である。シリコーンが硬化する際、特に正されない限り、格子層272をチャネル266まで引き下げる収縮が起こり得る。格子層272が266まで引っ張られる場合、格子層272の中央部は、光学ターゲット270の上方領域で上向きに湾曲することができる。また、接着剤硬化中の上面ガラス(格子層272)の所定の場所への締め付けは、接着剤がこの状態で硬化する際に、格子層272を恒久的になるように曲げることができる。
【0051】
本明細書中の例に従うと、格子層272の上面は、所望の平坦度/平面形状で維持される。そうするために、チャネル266は、チャネル266の周りに分布した一連の圧力解放ポケット271とともに設けられている。圧力解放ポケット271は、硬化工程の間にチャネル266に添加された接着シリコーンによって、格子層272にかかる圧力を解放する。本明細書中で公開された例のいくつかは、硬化の際、シリコーンが格子層272をチャネル266へと引き下げるのを防ぐ。UV硬化接着剤(
図1Bのバリア211、213)は、チャネル266の両側で格子層272を下に保持し、それによって格子層272の曲がりを避ける(または少なくともおおむね曲げを減らす)。シリコーンが格子層272を引っ張ることなく収縮することができるように、チャネル266の一部を拘束しないままにすることによって、格子層272の屈曲の可能性がさらに低減される。これはチャネル266の底に周期的なポケット271(穴)を形成することで成し遂げることができる。シリコーンがチャネル266を通って流れると、空気はポケット271の内部に封じ込められる。シリコーンが硬化するとき、シリコーンが収縮するにつれて気泡は自由にチャネル266内へ膨張する。格子層272をチャネル266へ引き下げることよりも気泡をチャネル266に引き上げるほうがより容易であるので、格子層272は硬化中に変形しない。
【0052】
必要に応じて、本体252は、その向かい合う端部に設けられた開口部のような、1つ以上の取付機構251を備えることができる。取付機構251は、検査装置250を所望の位置に位置決めするために、装置上にはめ合い部品を受け入れる。
図1Cの例において、取付機構251は、対応するピンを受け入れる穴を表す。代替または追加の取付機構を用いてもよい。
【0053】
検査装置250を組み立てる一般的な工程について説明する。光学ターゲット270はポケット264に挿入される。
図1Cの例において、ポケット264の向かい合わせの端部は、接着剤の導入を容易にする空洞263を備える。例えば、接着剤を詰めた冶具(例えば、シリンジ)は光学ターゲット270の端にある空洞263に挿入することができる。接着剤は冶具から導入され、毛細管力によって、光学ターゲット270の下面に沿って少なくとも部分的に底部ポケットレッジ259を横切り、吸い上げ/流入させることができる。毛細管力は光学ターゲット270をポケットレッジ259の底面に対して引っ張り、それによって光学ターゲット270をポケット264内の所望の深さに維持する。必要に応じて、接着剤がUV硬化接着剤を表すとき、UVライトはこの時点で導入することができ、接着剤を硬化させる。
【0054】
格子層272は、挿入領域268に装填され、挿入領域268の周縁が格子層272の外周に当接した状態になる。本体252は、格子層272がいったん配置されると、空洞249が格子層272の周囲の周りに分布するように、挿入領域268の周囲に1つ以上の空洞249を備える。一旦格子層272が挿入領域268に搭載されると、接着剤を分注する冶具(例えば、シリンジを搭載した空気式接着剤ディスペンサー)は、格子層272の周縁のあたりの一つ以上の箇所に、制御された量の接着剤を導入するために用いることができる。例えば、シリンジの先端は格子層272の角にある空洞249に挿入することができる。所定の量の接着剤が導入される。接着剤は、毛細管力によって、格子層272と外部レッジ269との間の境界面にそって引っ張られる。毛細管力によって、接着剤は、光学ターゲット270に近接する格子層272の部分の上を流れることなく、外縁269にそって吸い上げ/流入される。毛細管力は、格子層272を外部レッジ269に対して引っ張り、それによって格子層272を挿入領域268中の所望の深さに維持する。必要に応じて、接着剤がUV硬化接着剤を表すとき、UVライトはこの時点で接着剤を硬化させるために導入することができる。
【0055】
加えてまたは代替的に、接着剤は内部レッジ265へ導入することができる。接着剤は、格子層272が挿入領域268に挿入される前か後に、内部レッジ265へ導入することができる。例えば、一滴以上の接着剤を、格子層272が挿入される前に内部レッジ268の上に位置させることができる。必要に応じて、接着剤を分注する冶具は、格子層272の挿入後に接着剤を内部レッジ265に導入するために用いることができる。例えば、シリンジの先端は一つ以上の入口/出口ポート267を通って挿入することができ、シリンジは所定量の接着剤を導入することができる。接着剤は、毛細管力を通して、格子層272と内部レッジ265との間の境界面に沿って引っ張られる。毛細管力によって、接着剤は、光学ターゲット270に近接する格子層272の部分の上を流れることなく、内部レッジ265にそって吸い上げ/流入される。毛細管力は格子層272を内部レッジ265に対して引っ張り、それによって格子層272を挿入領域268中の所望の深さに維持する。必要に応じて、接着剤がUV硬化接着剤を表すとき、UVライトは、接着剤を硬化させるためにこの時点で導入することができる。
【0056】
接着剤(例:シリコーン)は一つ以上の入口/出口ポート267を介してチャネル266に導入される。例えば、チャネル266の一つ以上の隅にある入口/出口ポート267は、接着剤を導入するための入り口として用いることができ、一方でチャネル266の他の一つ以上の隅にある入口/出口ポート267は、空気をチャネル266から排出させる出口を形成する。上記で説明したように、接着剤がチャネル266を通って流れるにつれて、接着剤はポケット271の上に橋渡しするように流れる。接着剤が硬化するにつれて収縮するために、ポケット271は後でエアリリーフを提供する。
【0057】
図2Aは、光学ターゲット120を搭載した図
1Aの検査装置100の、図
1Aの線2A‐2Aにそった側面断面図を示す。
図2Aは、ポケット114に搭載された光学ターゲット120と、挿入領域118に搭載された格子層122を表す透明層とを示す。格子層112は、異なるタイプのアライメント操作および/またはキャリブレーション試験に関連して使われる異なる領域を有することができる。例として、下記の
図2Dに関連して議論されるように、格子層122は一つ以上の「タイル」を含むことができ、それは様々な操作に関連して情報を収集するために対物レンズ(
図2D中の200)が位置する領域を表す。例として、格子層122は一つ以上の画質タイル、歪みタイル、クリアタイル、基準点などを含むことができる。対物レンズは様々な試験の実行に関連する情報を収集するための様々なタイルに対応して位置する。格子層122はまた、励起空間プロファイルの均一性と位置を監視するためにも使うことができる。格子層122は、基板上に設けられ一つ以上の所定のパターン形状をした様々な微細構造123をもつ透明キャリア基板(たとえばガラス)から形成することができる。微細構造123は、一つ以上のタイル/領域に設けられ、対物レンズはキャリブレーション操作および試験に関連してそこに位置する。様々なキャリブレーション操作および試験の例を、
図10に関連して下記に説明する。例として、微細構造123は、クロムまたはほかの不透明な合成物を備えることができ、合成物は励起光および/または一つ以上の関心蛍光発光バンドに対して所望の不透明度(例えば、部分的または完全に不透明)を示す。例えば、本明細書中で説明されたように、クロムの層は、異なるアライメントおよび/またはキャリブレーション操作に関連して用いられる異なるパターン(これもまた「クロム」または「クロムパターン」と言及される)を形成するクロムの異なる領域とともに、さまざまな技法を通して格子層122の表面に置くことができる。微細構造123は、帯状、ドット状、ピンホール状などのような様々なパターンで形成され得る。場合によって、微細構造123は、微細構造123を通ってチャネルやピンホールなどを形成する開口部または隙間によってあらわされる所定のパターンで、固体層として設けることができる。微細構造123は、格子層122の上面および/または下面に設けることができ、上面及び下面は装置の対物レンズに対応して指定される。例えば、上面は対物レンズに近説する面を表し、一方で下面は対物レンズから遠い面を表す。かわりに、格子構造は、モノリシック構造を形成するために、固体蛍光基板(例えば、
図2E参照)に直接パターニングすることができる。この例において、格子構造は、光学ターゲット120と接しており、発光強度が所望のレベルに達するように(例えば、最大化)、励起照明の光学ターゲットへの結合を増加させ、同様に光学ターゲット120の蛍光の格子構造への連結を増加させる。場合によって、格子層122は完全に省略することができる。必要に応じて、格子層122と光学ターゲット120との間の間隔は、球面収差をもたらすように調整することができる。
【0058】
図2Aに示された例において、微細構造123は中央領域119によって隔てられた第1及び第2格子領域115、117を含む。中央領域119は微細構造123が存在しないところである。
【0059】
図2Aに示されるように、反射防止コーティング121は透明層(格子層122)または光学ターゲット120の少なくとも一つの表面に形成することができる。反射防止コーティング121は、格子層122と光学ターゲット120との間のフリンジギャップに面する任意の面に形成することができる。一例として、反射防止コーティング121は、光学ターゲット120の表面に位置する。他の例として、反射防止コーティング121は、微細構造123上を含む格子層122の表面上に位置する。さらに他の例として、反射防止コーティング121は光学ターゲット120の表面上および微細構造123上を含む格子層122の表面上に位置する。
【0060】
反射防止コーティング121のひとつの例を形成するために、反射防止材料は、光学ターゲット120がポケット114の中に位置するときにフリンジギャップ124に面する光学ターゲット120の表面に塗布。反射防止コーティング121の他の例を形成するために、微細構造123は、透明層(すなわち格子層122)の表面に形成することができ、それから反射防止材料を表面に塗布することができる。
【0061】
フリンジギャップ124の中で光学ターゲット120と格子層122との表面の間における光反射から起こり得る光干渉を減らすか、または除去するために、反射防止コーティング121を含むことができる。その結果、本明細書で開示される装置および装置を使用するときに得られる画像から、光学的干渉パターンまたは干渉縞を低減または排除することができる。
【0062】
反射防止コーティング121は単層として示されているが、所望の反射防止効果を達成するために単層または複層を使えることを理解されたい。例えば、関心発光バンド/波長において反射を最小限にするかまたは全く反射をしないようにするために、複数の層を積み重ねることができる。例えば、複層反射防止コーティング121は、約520〜700nmの範囲の波長において0%〜1%の反射率を示すことができ、約500〜520nmの範囲の波長において0%〜5%の反射率を示すことができ、約700〜1000nmの範囲の波長において0%〜9%の反射率を示すことができる。このようにして、反射防止コーティング121の反射防止特性は、異なる波長で同じでなくてもよく、装置や機器が使われる用途によって変化させることができる。
【0063】
反射防止コーティング121を形成するために使うことのできる適切な反射防止材料の例は、材料が置かれた基板(例:光学ターゲット120または格子層122)の屈折率の平方根と等しい屈折率を有する任意の透明材料を含む。反射防止材料のいくつかの例は、フッ化マグネシウム(MgF
2)、フルオロポリマー、メソポーラスシリカナノ粒子、シリカとより高い屈折率の材料の交互層、または所望の発光バンド/波長が使われる中で望ましい反射防止特性を示すほかの反射防止材料を含む。
【0064】
この例において、挿入領域118は、本体102の中に形成された挿入レッジ126と内部ウォール127とともに形成される。挿入レッジ126は本体102の上面104の下方に所定の距離離間し、所定の距離だけ内部に広がる。挿入レッジ126は、挿入領域118の深さを画定し、その深さは格子層122の厚さに対応する。例えば、挿入レッジ126は格子層122を支えるのに十分な距離だけ内部に広がることができる。一例として、接着剤は格子層122を所望の位置に保持するために、挿入レッジ126にそって塗布することができる。挿入レッジ126は、接着剤がポケット114にあふれることなく挿入レッジ126を横切って広がることができる、ある程度定められた長さを有することができる。レッジウォール127は挿入領域118の周縁の周りに広がるような形状および寸法を有する。挿入領域118はポケット114と連続的に形成される。
【0065】
ポケット114は、ポケットレッジ128とポケットウォール129によって区画され、画定される。ポケットレッジ128は挿入レッジ126の下方に所定の距離離間し、所定の距離だけ内部に広がる。例えば、ポケットレッジ128は光学ターゲット120を支持するのに十分な距離だけ内部に広がることができる。一つの例として、接着剤は光学ターゲット120を希望の位置に保持するためにポケットレッジ128にそって塗布することができる。ポケットレッジ128は、接着剤が拡散ウェル130にあふれることなくポケットレッジ128を横切って広がることができるように、ある程度定められた長さの分だけ内部に広がることができる。ポケット114は、接着剤が光学ターゲット120の中央領域119の下に入り込むのを防ぐために、ポケット114が本体102の中央に位置するように本体102内で内側に間隔を空けて配置される。
【0066】
ポケットウォール129は光学ターゲット120の形状に対応する形状および寸法を有する。ポケットウォール129はポケットレッジ128から挿入レッジ126へと延びる高さを有する。ポケットウォール129の高さ129Aは、光学ターゲット120が挿入されしっかりとポケットレッジ128にあたっているときに、光学ターゲット120の上面が挿入レッジ126の平面の下方に位置するような、光学ターゲット120の高さ120Aを超える所定の距離である。光学ターゲット120の上面は、フリンジギャップ124の厚さの分だけ挿入レッジ126の平面の下方に位置する。フリンジギャップ124は、光学ターゲット120の上面(またはその上の反射防止コーティング121)と格子層122(またはその上の反射防止コーティング121)の下面との間の距離に対応する。フリンジギャップ124は干渉縞を避けるのに十分に大きい。干渉縞は、格子層122と光学ターゲット120が一点以上で互いに直接接触するときに発生し得る。フリンジギャップ124は、光学ターゲット120と格子層122との間の直接接触を避けるのに十分に大きい。フリンジギャップ124は光が格子層122と光学ターゲット120の間を通過する際に有害な光学特性を導入することを避けるのに十分小さい。例として、もしフリンジギャップ124が過度に大きければ、フリンジギャップ124を通る間に極端に多い量の光が失われる場合がある。フリンジギャップ124は、光が格子層122と光学ターゲット120の間を通る際のフリンジギャップ124における過度の光損失を避ける。例えば、フリンジギャップ124は約10〜100μmの間の厚み、例として約30μm(+/−20μm)の厚みを有することができる。必要に応じて、フリンジギャップ124は所定の光損失限界(例:入射光強度の約20%以下)にとどまる光損失の量に規定される異なる厚みを有することができる。必要に応じて、格子層122と光学ターゲット120は、光学ターゲット120の使用に過度に影響を与えない小さな干渉縞を導入し得る制御された最小量の接触を経験することができる。上で述べたように、干渉縞は、反射防止コーティング121を光学ターゲット120と格子層122の一つまたは両方に含めることで、いっそう低減または排除することができる。
【0067】
必要に応じて、屈折率整合流体または屈折率整合エポキシは、フリンジギャップ124を充填して格子層122と光学ターゲット120の経年移動の可能性を減らすために提供することができる。すくなくともある屈折率整合エポキシは、少なくともある用途においては望ましくないであろう経年に伴うわずかな色の変化(例:退色)を経験することができる。また、屈折率整合流体が経年とともにフリンジギャップ124から漏れ出し得る可能性が存在する。結果として、少なくともある屈折率整合流体および/またはエポキシは、蛍光発光強度の経年変化を起こす可能性がある。例えば、経年した屈折率整合流体またはエポキシは、光学ターゲット120に入射する励起光強度および/またはフリンジギャップ124を横切る蛍光発光の強度をわずかに減少させることができる。加えて、少なくともある例では、フリンジギャップ124中の空気を用いることは、検査装置100からの一定の蛍光発光強度を維持するための少なくとも一つの態様を表すことができる。更に、屈折率整合流体およびエポキシの添加は、フリンジギャップ124が製造工程に空気で満たされているときに他に存在しない余分なステップ/複雑さを伴う場合がある。
【0068】
ポケット114は、ポケット114の下方に(
図2Bに示されるように対物レンズ200から遠方に)位置し、ポケット114に挿入されているときは光学ターゲット
120の下方に位置する拡散ウェル130と接合される。拡散ウェル130はポケット114の下方に位置し、光学ターゲット120の中央に位置する。拡散ウェル130は、光学ターゲット120を通過する光を受光するように構成される。光は、拡散ウェル130を通過するにつれウェルベース132に接触するまでの間、次第にデフォーカスされまたは乱反射する。光がウェルベース132に到達するとき、光はウェルベース132の光変性を避けるのに十分な所望の程度に乱反射している。
【0069】
ポケット114は、(光学ターゲット120内の)光の焦点と本体120の底部との間の所望の距離(例:最大距離)を提供するように定められた高さを有する。拡散ウェル130は、光変性の回避を促進し反射率を所望のレベル(例:約6%以下)に管理する顔料系黒色仕上またはコーティングを備えることのできるウェルボトム132を含む。例として、顔料系黒色仕上はニューヨーク州シラキュースのAnoplate社から売り出されているANOBLACK
TM ECのような無機金属塩を用いた電解黒色を表すことができる。本明細書に開示された実施例によれば、黒色仕上は、染料ではなく、顔料を用いて提供される。黒色染料は、励起光への暴露によって経年でより分解されやすい大きな分子(顔料の分子サイズと比べて)を有するからである。少なくともいくつかの例に従って、黒色仕上を形成するために用いられる顔料は、励起光に対してより影響を受けにくく経年で分解しないより小さな分子から成り立つ。一例として、顔料は、黒色仕上を形成するリン酸富化黒色酸化ニッケルで構成することができ、励起光によって分解しにくい比較的小さな分子サイズを有し、このようにして比較的一定の反射率を維持する。また、顔料は、コーティングにおいて低い蛍光を供給するように選択することができる。なぜなら、コーティングにおける初期低蛍光は、蛍光コーティングが過度の経年に伴って低下しないであろうことを意味するからである。
【0070】
必要に応じて、本体102の表面の様々な他の部分(例:上面および/または下面104、106、側面108および/または前面および背面110、112)が仕上やコーティングで覆うことができる。
【0071】
本明細書中で開示された例に従って、
図2Bは、第1測定位置に位置する対物レンズ200とともにある光学ターゲット120のモデルの側面図を示す。本明細書中で公開された例に従って、
図2Cは、第2測定位置に位置する対物レンズ200とともにある光学ターゲット120のモデルの側面図を示す。
図2Bおよび2Cは、それぞれ、検査装置100に対して第1および第2測定位置に位置する対物レンズ200を例示する。
図2Bと2Cのモデルは、他の構造の間における、本体102、光学ターゲット120、格子層122、および拡散ウェル130を例示するが、図を簡略化するために、フリンジギャップ124と
図2Aのほかの特徴は詳細に例示されていない。
【0072】
図2Bにおいて、励起計測操作の実行に関連するように、検査装置200は格子層122の中心領域119に近接して位置する。対物レンズ200が中央領域119の中に位置するとき、励起光202は格子領域115、117中の微細構造123を回避する。対物レンズ200は励起光202を検査装置100に向け、励起光202は実行された特定の計測に基づいて異なる焦点に合わせられる。例として、フレーム計測操作(
図2Bと対応する)と関連して、対物レンズ200は励起光202を光学ターゲット120の上面107の下方(例:50μm)にある焦点204に合わせる。対物レンズ200は、焦点204における所望のフォーカス度合および、光学ターゲット120とそれ以降におけるより深い深度において所望の拡散/デフォーカス度合を得るため、開口角208を制御する。対物レンズ200は、中央領域119中の光学ターゲット120の上面107から発された蛍光発光を受光する。
【0073】
操作中、対物レンズ200を領域119の上方に置くことで、格子に基づかない計測(例:光学強度計測)が実行される場合がある。例えば、格子に基づかない計測は、検出カメラの視野と関連した励起光照明の位置の撮影に関連して実行することができる。焦点204は、擦り傷、埃、指紋および、光学ターゲット120の表面の破片、擦り傷、欠陥などを焦平面から除去するため、下面107の下方に位置し、これらの潜在的干渉効果が測定に無影響または比較的にほとんど影響を与えないようにする。他の操作は、領域119から得られる画像を用いることのできる
図10と関連して議論される。
【0074】
励起光は、対物レンズ200から発され、微細構造123を通ることなく、格子層122を通って光学ターゲット120へと移動する。それに応じて、光学ターゲット120は、光学ターゲット120において領域119を通って戻り対物レンズ200へ入射する蛍光発光を生成し、蛍光発光は内部光学系を通って一つ以上の検出器へ向きを変えられる。対物レンズ200は、光学ターゲット120の表面の所定の距離だけ下方に位置する焦点へ励起光を合わせる。例えば、焦点204は光学ターゲット120の表面107から約20〜100μm下方に位置させることができる。他の例として、焦点204は光学ターゲット120の表面107から約50μm下方に位置させることができる。励起光は、焦点204の下方の光学ターゲット120のより低い部分に拡散され、光学ターゲット120の中の比較的大きな範囲を横切る蛍光発光を起こし、それによって比較的均一な走査が可能になる。少なくともいくつかの例は、焦点204を光学ターゲット120の表面107の下方に位置させ、開口角208を制御することで、光学ターゲット120の表面107および/または格子層122における擦り傷、埃、指紋などの悪影響を除去またはおおむね減らすものである。
【0075】
図2Cにおいて、検査装置200は格子計測操作の実行に関連するような格子領域115、117の一つに隣接して位置する。検査装置200が格子領域115、117の一つに隣接して位置するとき、励起光202は、それらの間のギャップまたは隙間を通って微細構造123に入射する。対物レンズ200は、励起光202を格子層122の下面に一致する焦点206に合わせる。対物レンズ200は、焦点206における所望のフォーカス度合および、光学ターゲット120とそれ以降におけるより深い深度において所望の拡散/デフォーカス度合を得るため、開口角210を制御する。焦点206は、微細構造123の位置にも一致する。対物レンズ200は、対応格子領域115、117中の光学ターゲット120から発せられる蛍光発光を受光する。少なくともいくつかの例に従って、発光の全てまたは一部は、光学ターゲット120の上部体積に由来し得るものであるが、一方でより少ない発光が光学ターゲット120の残りの体積に由来する、または由来する発光がない。
【0076】
操作中、対物レンズ200を第1及び第2格子領域115、117のひとつまたは両方の上方に配置することで、格子に基づく計測が得られる。励起光は対物レンズ200から発せられ、格子領域115、117を通って光学ターゲット120へと移動する。励起光は、光学ターゲット120中のより深部における開口角210によって定められた速度で、焦点206を超えて拡散またはデフォーカスする。励起光に反応して、光学ターゲット120の対応領域は、上面107から発せられ格子層122の下面(および微細構造123)へ入射する蛍光発光を生成する。蛍光発光は、格子層122上の微細構造123の間を通り、対物レンズ200に入射するまで上方へ通りぬける。蛍光発光は、内部光学系を通って一つ以上の検出器へ向きを変えられ、それによって処理される。励起光が光学ターゲット120を通り抜ける範囲で、ウェルボトム132に接触する前に拡散ウェル130を通り抜けるとき、励起光は所望のデフォーカス度合を示す。ウェルボトム132に接触する励起光の強度は、所定の閾値を下回り、そうして経年によってウェルボトム132の光学特性が変化する可能性を避ける。
【0077】
励起光が微細構造132を超えて通過するにつれ、レーザ光はより大きな領域に発散し、蛍光を発するときに光学ターゲット120の比較的大きな部分を発光させる。加えて、装置内のカメラは、焦点206のいずれかの側部に横方向に位置させることのできる微細構造132の部分からクロムパターンを収集でき、それによってクロムパターン計測に改善した照明均一性を提供する。
【0078】
対物レンズ200は、高開口数を有することができ、対物レンズ200が格子層122の表面からより遠くへ動くほど、より多くの励起源が焦点から外れる。励起レーザは、励起光が焦点206から遠ざかるにつれて発散する。励起光が発散する/集中する速度は、対物レンズ200の開口数にある程度左右される。少なくともいくつかの例に従うと、励起光は、励起光が光学ターゲット120の底面を脱するときまでおおむねデフォーカスする。励起光は、励起光が拡散ウェル130を通過するにつれてより拡散しつつづける(より焦点から外れる)。励起光がウェルボトム132に突き当たるときまで、励起光は、ウェルボトム132に突き当たるエネルギの強度を所望の強度閾値を下回るまで制限するのに望ましい角度へデフォーカスする/拡散する。
【0079】
本明細書中の例に従うと、対物レンズ200と検査装置100は、励起レーザラインを広範囲の領域へ広げることで(例:X方向に2.33mm、Y方向に0.53mm)本体102の過度の光分解を回避する(例:光変性を最小にする)。加えて、いくつかの例では、励起光が本体102の表面に突き当たるときに励起光が望ましい量(Er−InF
3の約1.5%未満)までデフォーカスされるように励起光のフォーカスをある程度制御することによって、本体102の過度の自己蛍光を避ける(例:最小化)。
【0080】
加えて、拡散ウェル130および、焦点206とウェルボトム132との間の距離は、自己蛍光の可能性を減らす。自己蛍光は、励起光の受光に応じてウェルボトム132から生じさせることができる。ウェルボトム132が蛍光エネルギを発する範囲について、拡散ウェル130を通り抜ける間、光学ターゲット120からの関心特性に衝撃を与えることなく、蛍光エネルギはおおむね散乱する。
【0081】
場合によって、少なくともいくつかの例に従うと、光学ターゲット120の長さは、格子領域115、117中の微細構造123に対する所望の方法で定めることができる。例えば、格子上の測定を行うとき(
図2Cに対応)、開口210中の励起光がポケットウォール129に衝突しないような位置に対物レンズ200を制御することが望ましい。
【0082】
本明細書中の例に従うと、検査装置100は、長期にわたってほぼ一定のままの蛍光源を提供する。例えば、検査装置100は、少なくとも10000回の検査操作(それぞれの検査操作は、励起光による光学ターゲットの少なくとも一回の照明操作に対応する)にわたって蛍光強度の顕著な損失を示さず、ほぼ安定したままである。他の例についても、検査装置100は、少なくとも10000回の検査操作にわたって約3%未満の蛍光発光強度の変化しか示さない。より一般的には、検査装置100は、本明細書中の例に従って形成されたとき、検査装置100が用いられる装置に応じた使用寿命にわたって約2%以下の蛍光発光強度の減少しか示さない。
【0083】
図2Dは例に従って形成された検査装置の平面図を示す。格子層(
図2A中の122)および微細構造は、さまざまなタイル/領域で配置され異なるタイプの試験に関して用いられる。
図2Dにおいて281、283と表示された枠の中の領域(枠281、283の中に定義されたサブ領域を含む)は、クロム/微細構造が設けられる格子層の領域に対応する。これらの領域もまたピンホールをともなったクロムで構成することができる。281または283と表された領域の外の領域(例:281または283と周囲の間の領域、または281と283の間の領域)は、クロム/微細構造がない空き領域を示す。+記号中の領域もまたクロム/微細構造がない空き領域を示すことができる。
【0084】
検査装置は、撮像装置の自動センタリング操作に関して用いられるトップ自動センタリング基準280とボトム自動センタリング基準282を備える。画質タイル284は画質試験で使用するために設けられる。歪みタイル286は歪み試験に関して使用するために設けられる。クリアタイル288は照明均一操作およびフラットフィールド補正操作で使用するために設けられる。クリア領域290はレーザライン測定で使用するために設けられる。水平ナイフエッジ292および垂直ナイフエッジ294がレーザスポット位置チェックに関して使用するために設けられる。タイル296には、変調伝達関数の測定に関連して利用される明確な穴のパターンが設けられる。必要に応じて、追加の、少数の、または代替のタイル領域が設けられる。
【0085】
図2Eは代替例に従って形成された検査装置300を示す。検査装置300は、
図2Aの検査装置100と様々な様子で類似しており、相違点は以下で述べる。検査装置300は、光学ターゲット320をポケット314中に受け入れる本体302を備える。ポケット314は、光学ターゲット320を拡散ウェル330の上方かつ本体302の所定の深さに維持するポケットレッジ328を備える。透明層322(例:ガラスから形成される)は、本体302中に画定された挿入領域318に挿入される。外部レッジ326は、フリンジギャップ324とともに、透明層322を光学ターゲット320の上部の所定の距離に維持する。光学ターゲット320は、その上面に形成された微細構造323を備える。微細構造323は、フリンジギャップ324によって透明層322と分離される。微細構造323は、透明層322と分離され異なる光学ターゲット320の表面に格子層を形成する。必要に応じて、透明層322は完全に除去することができる。必要に応じて、透明層322と光学ターゲット320の間の間隔は、球面収差を設けるために調整することができる。加えて、検査装置300は、透明層322の底面のかわりに光学ターゲット320の表面に直接クロムパターン(微細構造323)を印刷することによって製造される。
【0086】
図示されてはいないが、
図2Eに示された例は、フリンジギャップ324に面した透明層322の表面上および/または光学ターゲット320の表面上および光学表面320に形成された微細構造323上に反射防止コーティング121をも備えることができる。本明細書中で公開されたいかなる反射防止材料の例も、この例において用いることができる。
【0087】
透明層322の厚みは、結像系における球面収差を埋め合わせるように定められる。もし結像系が球面収差なく設計されれば、透明層322は完全に除去することができ、クロムパターンが光学ターゲット320の表面に印刷される。結像系が球面収差を有している場合(あるガラスの厚みを通して見るように設計されているので)、透明層322は、たとえクロムパターンが光学ターゲット320に印刷されていても用いられる。必要に応じて、光学ターゲット320は光学ターゲット320の表面に直接よりかかり当接するように、フリンジギャップ324は完全に除去することができる。
【0088】
図2Fは代替例に従って形成された検査装置350の側面図を示す。検査装置350は分離された本体(上記に記された本体302や102のような)を備えない。検査装置350は互いに直接接合された光学ターゲット356と透明層352を備える。微細構造353は、光学ターゲット356と透明層352の境界面に設けられる。微細構造353は、光学ターゲット356の上面および/または透明層352の底面に形成されたひとつ以上のクロムパターンを表すことができる。例として、検査装置350は、検査装置350が装置に装着されるかわりにフローセル上に直接位置する例において用いられる。加えて、または代替として、検査装置350もまた装置中に装着することができる。
【0089】
必要に応じて、透明層352は完全に除去され得る。例えば、本明細書中で示された光学ターゲット120、320、356のいずれも、追加の本体部品や透明層を設けられることなく、独立した検査装置として用いることができる。加えて、光学ターゲット120、320および356は、微細構造やほかのパターンが光学ターゲットの上や光学ターゲットに近接して設けられることなく、独立した検査装置として用いることができる。例えば、光学ターゲット120、320および356は、他の支持構造なく、フローセル上および/または装置中に単に直接装着することができる。
【0090】
図3Aは本明細書中の例に従って用いられる蛍光材料についてのエネルギ準位図を示す。エネルギ準位図は、縦軸にエネルギ(cm
−1)を、横軸に代替遷移を示す。基底エネルギ準位302は、上昇するエネルギ準位304〜309に沿って、三価のエルビウムイオン電子が励起したときに上昇し得る準位まで示される。例えば、エルビウムイオン電子は、約18800cm
−1のエネルギを吸収することができ、電子を
4I
15/2基底エネルギ準位302から
4S
3/2ターゲット励起(TE)エネルギ準位308まで移動させる。他の例として、エルビウムイオン電子は、約15000cm
−1のエネルギを吸収することができ、電子を
4I
15/2基底エネルギ準位302から異なる
4F
9/2TEエネルギ準位307まで移動させる。エルビウムイオン電子は、励起光からエネルギを吸収して対応するTEエネルギ準位307、308へ移動する。一旦イオンが対応する上昇TEエネルギ準位へ移動すると、イオンは吸収したエネルギをフォトンの形で放出し、基底エネルギ準位302へ戻る。TEエネルギ準位は、基底エネルギ準位から関心蛍光発光波長(FEWI)に対応する第1エネルギギャップFM
EG1を介して離間する。例えば、FEWIは赤、緑、青、またはほかの発光波長であり得る。放出されたフォトンは蛍光発光として対物レンズに受光される。蛍光発光の色は第1エネルギギャップFM
EG1に対応するフォトンエネルギに左右される。イオンがターゲット励起エネルギ準位307から基底エネルギ準位302に遷移するとき、対応する放出フォトンは、650nmの関心蛍光発光波長として検出される(赤い蛍光発光として目視される)約1500cm
−1のエネルギを有する。イオンがターゲット励起エネルギ準位308から基底エネルギ準位302に遷移するとき、対応する放出フォトンは、532nmの関心蛍光発光波長として検出される(緑の蛍光発光として目視される)約18800cm
−1のエネルギを有する。
【0091】
図3Aはまた、三価のエルビウムイオンによって示すことのできる追加のエネルギ準位遷移をも示す。エネルギ準位304〜308のそれぞれは、対応する次に低いエネルギ準位を有する。本明細書中の例に従って、固体ホスト材料と蛍光材料は、一つ以上のターゲット励起エネルギ準位(例:308)と次に低い(NLL)エネルギ準位との間のエネルギギャップ(例:307)にある程度基づいて選択される。
4F
9/2エネルギ準位307は、
4S
3/2エネルギ準位308に対する次に低い(NLL)エネルギ準位を表す。
4I
9/2基底エネルギ準位306は、
4S
3/2エネルギ準位307に対するNLLエネルギ準位を表す。
【0092】
電子はエネルギ準位304、305、306へ上昇することができ、基底エネルギ準位302へ戻るとき、対応するエネルギ量を有するフォトンを放出する。エネルギ準位304〜306からの遷移において放出されるフォトンは、それぞれ1520nm、975nm,800nmの対応する波長を有する。加えて、電子は中間上昇エネルギ準位304〜308の間を遷移することができる。電子が隣接エネルギ準位または中間上昇エネルギ準位の間を遷移するとき、フォトンは、開始時と終了時の上昇エネルギ準位の差異に対応した、対応するエネルギ量を放出する。
図3Aは、異なる上昇エネルギ準位間で電子が遷移するときに放出されるフォトンに関連して見える波長の例を示す。例えば、エネルギ準位308の電子はエネルギ準位307、306、305、304のいずれにも遷移することができ、この場合において放出されるフォトンはそれぞれ3230nm、1670nm,1210nm、840nmの波長を有する。さらなる例として、エネルギ準位307の電子がほかの中間上昇エネルギ準位306〜304に遷移するとき、対応する放出フォトンはそれぞれ3450nm、1940nm,1132nmの波長を有する。放出フォトンはフォトン波長に対応する色で蛍光発光する。
【0093】
本明細書中で示されたいくつかの、すべてではない例は、所定の関心発光バンドにおける蛍光発光を用いる流体システムに関連して検査装置を使用することを意図している。例によると、発光バンドは、緑色蛍光発光および/または赤色蛍光発光に対応した波長を中心とすることができる。関心発光バンドが赤色または緑色蛍光発光に対応した波長の中心に位置するとき、
図3Aのエネルギ図の対応部が重要である。より具体的にいうと、緑色発光が重要であるとき、ターゲット励起エネルギ準位ならびに基底エネルギ準位308および302の間の遷移が望ましい。赤色発光が重要であるとき、ターゲット励起エネルギ準位ならびに基底エネルギ準位307および302の間の遷移が望ましい。現在の例において、
図3Aにおけるほかのエネルギ準位間の遷移は赤色および/または緑色関心発光バンドを用いる装置に関連して重要ではない。
【0094】
前述の議論は一例であり、ほかの例は本開示の範囲内にあるものと考えられる。加えてまたは代替として、他の発光バンドが重要な場合がある。例として、装置は800nmおよび/または975nmと関連した発光バンドを用いることができる。関心発光バンドが800nmおよび/または975nmを中心とした波長を有するとき、準位306および302、ならびに準位305および302の間のエネルギ遷移が重要である。一般的に、100nmを上回るエネルギバンドは、典型的に100nmを上回るエネルギバンドを用いないシーケンス解析の実行と関連した蛍光発光として、典型的に流体装置と関連して重要でない。加えて、第1上昇エネルギ準位304および基底エネルギ準位302の間の遷移は、流体装置に関連して重要でも有益でもない。
【0095】
本明細書の実施例によれば、蛍光材料からの蛍光は、レーザまたは発光ダイオード(LED)光源を用いて上方エネルギ準位(ターゲット励起エネルギ準位とも呼ばれる)への光学的励起によって達成される。光励起プロセスに続いて、不純物イオン内のより低いエネルギ準位への減衰は、フォトンの放出(蛍光)に対応する放射減衰および周囲の格子構造への光学フォノン放出による非放射性減衰の、2つの競合するエネルギ遷移プロセスを介して起こる。非放射性減衰速度は、周囲の格子と不純物イオンとの間の結合相互作用に依存し、放出されるフォノンの数にともなって指数関数的に低下する。その結果、多数の放出されたフォノンを含む非放射性プロセスは、発生確率が低い。2つのエネルギ準位間の非放射遷移確率は、指数減衰関数W
mp=Cexp(−αΔE)[n(T)+1]
pによって適切に記述され、ここで、Cおよびαは、固体ホスト材料に特有の定数であり、ΔEは二つのエネルギ準位を隔てるエネルギギャップであり、n(T)は温度Tにおけるボーズ・アインシュタイン占有数であり、pはエネルギギャップを広げるのに必要なフォノンの最小数である。一般に、マルチフォノンプロセスによる非放射性減衰は、最大フォノンエネルギが低いホストを選択することによって最小化することができる。例えば、Er
3+の
4F
9/2〜
4I
15/2間の遷移から約660nmの可視蛍光を観察するためには、
4F
9/2準位と次に低い準位
4I
9/2との間の非放射性減衰を最小にする必要がある。
4F
9/2〜
4I
9/2準位間のエネルギ分離は2900cm
−1までであるので、約580cm
−1以下の最大フォノンエネルギを有するホスト材料を選択することが有利である(5つ以上のフォノンの同時放出に対応する)。赤色波長領域での発光促進に加えて、低フォノンホスト材料の選択はまた、Er
3+の
4S
3/2励起状態からの緑色発光を増強し、次に低いエネルギ準位(
4F
9/2)はこの状態の約3100cm
−1下方に位置する。
【0096】
固体ホスト材料は、所定のフォノンエネルギHOST
PEを有するが、蛍光材料は、選択基底エネルギ準位および関心蛍光発光波長(FEWI)に対応する第1エネルギギャップを介して基底エネルギ準位から離間するターゲット励起エネルギ準位を示す。
図3Aの例では、FEWIは緑色および/または赤色発光波長である。蛍光材料は、TEエネルギ準位に対して次に低い(NLL)エネルギ準位を有する。NLLエネルギ準位は、FM
EG2/HOST
PEの比が3以上であるTEエネルギ準位の下方に第2エネルギギャップFM
EG2を介して離間する。必要に応じて、FM
EG2/HOST
PEの比は4以上10以下であってもよい。
【0097】
図3Aは、固体ホスト材料内にドープすることのできる潜在的蛍光材料に関連するエネルギ準位図の一例を表すことが認識される。本明細書で論じるように、代替の蛍光材料をドーパントとして利用することができる。例として、
図3Bは、3価のプラセオジムイオン(Pr
3+)に関連するイオンエネルギ準位図を示し、
図3Cは、3価のホルミウムイオン(Ho
3+)に関連するイオンエネルギ準位図を示す。
図3Bおよび3Cの図は、基底エネルギ準位、ターゲット励起エネルギ準位、および中間上昇エネルギ準位、ならびに対応する指定されたエネルギ準位間を遷移するときに電子によって放出されるフォトンに関連する波長を示す。上記の例に続き、関心エネルギ準位遷移のサブセットは、関心発光バンドに基づく。
【0098】
Pr
3+(
図3B)に関して、ターゲット励起エネルギ準位
3P
0と基底エネルギ準位
3H
5との間の遷移は、515〜548nmの間の波長(532nmにおける関心バンドを含む)を有するフォトンを放出する。Pr
3+(
図3B)に関して、ターゲット励起エネルギ準位
3P
0と中間エネルギ準位
3F
4との間の遷移は、597〜737nmの間の波長(660nmにおける関心バンドを含む)を有するフォトンを放出する。従って、Pr
3+は、固体ホスト材料中にドープされるべき蛍光材料の潜在的な候補となり得る。
図3Bの例では、ターゲット励起エネルギ準位が
3P
0である場合、次に低いエネルギ準位は
1D
2である。
【0099】
Ho
3+(
図3C)に関して、ターゲット励起エネルギ準位
3F
4と基底エネルギ準位
5I
8との間の遷移は、約544nmの波長(532nmでの関心波長帯域に近接している)を有するフォトンを放出する。目標励起エネルギ準位
3S
2と中間エネルギ準位
5I
7との間の遷移は、約656nmの波長(660nmでの関心バンドに近接している)を有するフォトンを放出する。従って、Ho
3+は、固体ホスト材料中にドープされるべき蛍光材料の潜在的な候補となり得る。
図3Cの例では、ターゲット励起エネルギ準位が
3S
2である場合、次に低いエネルギ準位は
5F
5である。
【0100】
図4は、異なる蛍光発光色について示された強度の例を示す。縦軸はエネルギ強度を示し、横軸は固体ホスト材料にドープされた蛍光材料の濃度(百分率)を示す。基準点として、データ点402は液体緑色染料の励起時に測定される強度に対応し、データ点404は液体赤色染料の励起時に測定される強度に対応する。液体緑色染料を励起レーザで照射したとき、液体緑色染料は約1650カウントの強度で緑色エネルギスペクトルで蛍光を発した。液体赤色染料を励起レーザで照射したとき、液体赤色染料は約1150カウントの強度で赤色エネルギスペクトルで蛍光を発した。
【0101】
図4はまた、固体状態の光学ターゲットに関連して実行されるデータ測定、すなわちデータ点410〜416を示す。データ点410および414は、ホストインジウムフッ化物ガラスに2.5%の濃度で3価のエルビウムイオンをドープした固体光学ターゲットの励起時に測定された強度に対応する。データ点412および416は、ホストインジウムフッ化物ガラスに4%の濃度で3価のエルビウムイオンをドープした固体光学ターゲットの励起時に測定された強度に対応する。
図4から明らかなように、2.5%ドープされた固体光学ターゲットは、約650カウントで緑色エネルギスペクトルで蛍光を発し、約1300カウントで赤色エネルギスペクトルで蛍光を発した。4.0%ドープされた固体光学ターゲットは、約500カウントで緑色エネルギスペクトルで蛍光を発し、約2350カウントで赤色エネルギスペクトルで蛍光を発した。前述の試験データから、所望の蛍光強度に基づいて、3価のエルビウムドーパントの濃度を決定することができる。例えば、光学ターゲットが赤色エネルギスペクトルにおいて蛍光発光することが望ましい場合、三価のエルビウムイオンドーパントの濃度を3.5%以上(例えば、4%、4.5%)に増加させることが望ましい。光学ターゲットが緑色エネルギスペクトルにおいて蛍光発光することが望ましい場合、3価エルビウムイオンドーパントの濃度を約1.5%〜約2%に減少させることが望ましいといえる。
【0102】
さらに、上記の試験データから、光学ターゲットが等しい強度を有する2つ以上のエネルギスペクトル(例えば、緑色および赤色エネルギスペクトル)で蛍光発光することが望ましい場合、3価のエルビウムドーパントの濃度を決定することができる。例えば、3価のエルビウムイオンドーパント濃度を約1.25%〜約2%に維持することが望ましい。さらなる例として、3価のエルビウムイオンドーパント濃度は、フッ化インジウムガラス内で約1.3%〜約1.5%であってもよい。
図5は、金属フッ化物ガラス(ZBLAN)に約2%濃度および約5%濃度の3価のエルビウムイオンをドープして形成された固体ホスト材料の試験結果を示す。
図5は、垂直軸に蛍光発光強度を、水平軸に発光波長をプロットしている。2%濃度および5%濃度のエルビウムイオンは、約550nmを中心とする強度スパイクを示した。2%および5%のエルビウム濃度はまた、約660nmで二次強度スパイクを示した。
【0103】
図4の例では、3価のエルビウムイオンは、活性蛍光材料を表す。場合により、固体ホスト材料に1種以上の追加元素を共ドーパントとして添加してもよい。共ドーパントは、活性蛍光材料(例えばエルビウム)の発光強度を増加または減少させるために用いることができる。
【0104】
図6Aは、別の例に従って形成された検査装置600の側面断面図を示す。検査装置600は、光学ターゲット620をポケット614内に保持する本体602を備える。格子層622は、対物レンズ(図示せず)に近接して光学ターゲット620の上方に配置される。格子層622は、格子層622の底面に所定のパターンで形成された微細構造623を備える。
【0105】
光学ターゲット620は、フリンジギャップ624によって格子層622から分離することができる。光学ターゲット620は、概して平面であり互いに平行に配向された上部ターゲット面607および下部ターゲット面609を備える。光学ターゲット620は、その中に埋め込まれた複数の量子ドット621を含む固体本体を備える。固体本体は、複数の別個の本体(例えば、量子ドット621)を囲み個々の本体を固定配置で保持することができるエポキシ、ポリマーおよび他の材料で形成することができる。量子ドット621は、励起光によって照射されると、量子ドット621が1つ以上の所定の関心発光バンドで蛍光発光するように、光学ターゲット620全体に実質的に均一に分布する。検査装置600は、本明細書に記載の他の検査装置と同様の方法で用いることができる。
【0106】
必要に応じて、量子ドット621は、波長が調整可能になるように、シリコン(Si)量子ドットとして形成されてもよい。
【0107】
図6Bは、別の例に従って形成された検査装置640の一部を示す。検査装置640は、格子層662と本体642とを備える。光学ターゲット660は、本体642内に保持され、格子層662と直接係合する。格子層662は、(対物レンズに対して)その背面または底面に形成された微細構造663を備える。光学ターゲット660は、微細構造663を取り囲んで密封する。光学ターゲット660は、全体にわたって分布した量子ドット661を含む。量子ドット661は、微細構造663間の領域665内にも設けられる。一例として、光学ターゲット660は、微細構造663の間のギャップ665に流入してギャップ665を充填し、その内部に量子ドット661の分散されたグループを密閉封入するエポキシ、ポリマーまたは他の組成物から形成することができる。
【0108】
図6Cは、別の例に従って形成された検査装置670の一部を示す。検査装置670は、格子層682と、本体672と、本体672内に保持される光学ターゲット680とを備える。光学ターゲット680は、格子層682に直接係合し、格子層682の背面/底面に形成された微細構造683の間のギャップ685を満たす。
図6Cの例では、量子ドット681はギャップ685内に保持され、マイクロ構造683に近接して包囲するように密集する。微細構造683から離れた光学ターゲット680の部分は、実質的に量子ドット681の空隙である。
【0109】
図6A〜
図6Cの例では、量子ドット621,661,681は、発光バンドまたは関心発光バンドに応じて、1つ以上の関心波長を中心として蛍光発光するように構成することができる。例えば、量子ドット621,661,681の一部は、約532nmの波長で蛍光を発するように構成することができ、量子ドット621,661,681の他の一部は、約660nmの波長で蛍光を発するように構成することができる。必要に応じて、量子ドット621,661,681は、前述の例の代わりに、またはそれに加えて、他の波長で発光するように構成することができる。
【0110】
必要に応じて、蛍光材料は、有機ポリマーとして提供することができる。必要に応じて、蛍光材料は、エポキシ内に埋め込まれた蛍光染料を表すことができる。別の例として、固体ホスト材料内に蛍光材料をドープすることに加えて、またはその代わりに、蛍光フィルムを光学ターゲットの上にコーティングすることができる。
【0112】
本明細書の例は、多数の制御された反応の実行を含む生物学的または化学的研究に使用される装置と関連して使用することができる。反応は、例えば、適切な流体工学、光学および電子工学を有する自動システムによって、所定のプロトコルに従って実行することができる。このシステムは、例えば、その後の使用のための生物学的または化学的生成物を生成するため、またはサンプルを分析して、サンプルの特定の特性/特色を検出するために使用することができる。試料を分析するいくつかの場合において、識別可能な標識(例えば、蛍光標識)を含む化学的部分を、試料が位置するチャンバーに送達し、試料の別の化学的部分に選択的に結合することができる。これらの化学反応は、放射線で標識を励起し、標識からの発光を検出することによって観察または確認することができる。このような発光は、化学発光のような他の手段によっても提供することができる。
【0113】
いくつかの既知のシステムは、フローセルの1つ以上の内面によって画定されたフローチャネル(例えば、内部チャンバ)を備える、フローセルのような流体装置を使用する。反応は、内面に沿って実行することができる。フローセルは、典型的に、フローチャネル内に試料を結像するための装置を備える光学アセンブリに近接して配置される。光学アセンブリは、対物レンズおよび/または固体撮像装置(例えば、電荷結合素子(CCD)または相補型金属酸化膜半導体(CMOS))を備えることができる。場合によっては、対物レンズは使用されず、固体撮像装置は、フローチャネルを画像化するためにフローセルに直接隣接して配置される。
【0114】
本明細書に記載される検査装置の任意の例は、生物学的または化学的分析のために、試料中の所望の反応を検出する様々なシステム、方法、アセンブリ、および装置と共に使用することができる。例えば、1つのsequencing−by−synthesis(SBS)技術において、フローチャネルの1つ以上の表面は、ブリッジPCRによって形成される核酸クラスタのアレイ(例えば、クローンアンプリコン)を有する。クラスタを生成した後、核酸を「線形化」して一本鎖DNA(sstDNA)を提供する。シーケンスサイクルを完了するために、所定の計画に従って多数の反応成分がフローチャネルに流される。例えば、各シーケンスサイクルは、単一塩基によってsstDNAを伸長させるためにフローチャネルに1つ以上のヌクレオチド(例えばA、T、G、C)を流すことを含む。ヌクレオチドに結合された可逆的ターミネーターは、サイクル当たり1つのヌクレオチドのみがsstDNAによって組み込まれることを保証することができる。各ヌクレオチドは、励起されたときに色を発し(例えば、赤色、緑色、青色など)、対応するヌクレオチドを検出するために使用される独特の蛍光標識を有する。新たに取り込まれたヌクレオチドでは、多数のクラスタの画像が4つのチャネル(すなわち、各蛍光標識について1つ)に取り込まれる。撮像後、別の反応成分をフローチャネルに流して、蛍光標識および可逆的ターミネーターをsstDNAから化学的に切断する。sstDNAはその時別のサイクルのために準備される。従って、多数の異なる反応成分が各サイクルごとにフローチャネルに提供される。単一のシーケンスセッションは、100,300、またはそれ以上のような多数のサイクルを含むことができる。検査装置は、分析において蛍光標識によって利用される色で蛍光を発するように構成することができる。検査装置は、シーケンスセッションの前および/またはその間に、様々な時点で利用することができる。
【0115】
いくつかの例では、所望の反応は、光アセンブリによって検出される光信号を提供する。検査装置は、検証、確認、校正などに使用することができる。光信号は、標識からの発光であってもよく、またはサンプルによって反射または屈折された透過光であってもよい。例えば、光学アセンブリは、sstDNAがフローセル内で配列決定されるシーケンスプロトコルを実行するか、または実行を促進するために用いることができる。
【0116】
本明細書の実施例によれば、検査装置は、サンプルおよび試薬を装置に供給するために使用され得る光学走査装置および流体カートリッジと共に使用することができる。流体カートリッジは、リザーバ、流体接続部、ポンプ、弁などのような様々な流体構成要素を保護するハウジングを含むことができる。フローセルは、ハウジング内の試薬と流体連通する位置で流体カートリッジに組み込むことができる。例えば、ハウジングは、流体カートリッジがカートリッジ受け部に置かれたときに光走査装置と光学的に相互作用できるように、フローセルの面が露出する開口部を有していてもよい。この装置は、1つ以上のマイクロ蛍光計を含む。
【0117】
図7は、一例に従って形成された光学検出装置700(検出器とも呼ばれる)のブロック図を示す。検出器700は、メモリ732に格納されたプログラム命令を実行する1つ以上のプロセッサ730を含み、本明細書中で説明した動作を実行する。プロセッサ730は、対物レンズ701をZ方向に移動させ、検出器700をXY方向に移動させるように、1つ以上のドライバ734に指示する。検出器700は、流体充填チャネル775によって分離された上部層771および下部層773を有するフローセル770に近接して配置される。図示の構成では、上層771は光学的に透明であり、検出器700は、上層771の内面772上の領域776に合焦される。別の構成では、検出器700は、下部層773の内面774に合焦することができる。表面772,774の一方または両方は、検出器700によって検出されるべきアレイ特徴を含むことができる。
【0118】
検出器700は、放射源702からフローセル770に励起放射を向け、フローセル770からの放射を検出器708に向けるように構成された対物レンズ701を備える。例示された配置では、放射源702からの励起放射はレンズ705を通過し、次にビームスプリッタ706を通過し、次に対物レンズを通過してフローセル770に至る。示された例では、放射源702は、2つの発光ダイオード(LED)703および704を備え、それらは互いに異なる波長の放射を生成する。フローセル770からの放出放射は、対物レンズ701によって取り込まれ、ビームスプリッタ706によって反射され、コンディショニング光学系707を通って検出器708(例えば、CMOSセンサ)へ至る。ビームスプリッタ706は、放出放射の経路に直交する方向に励起放射を向けるように機能する。対物レンズ701の位置は、マイクロ蛍光計の焦点を変えるためにZ方向に移動させることができる。検出器700は、フローセル770の上部層771の内部表面772のいくつかの領域の画像を取り込むために、Y方向に前後に移動させることができる。
【0119】
図1A〜
図1C、
図2A〜
図2F、および
図6A〜
図6Cの検査装置は、フローセル770内の既定の位置に配置することができる。必要に応じて、検査装置は、対物レンズ701の範囲内でフローセル770に隣接する既定の位置に配置されてもよい。対物レンズ701は、様々な種類の試験に関連して、シーケンスセッションの前、最中および/または後に検査装置へと移動させることができる。
【0120】
図8は、様々な光学部品の機能的配置を示すための例示的なマイクロ蛍光計の分解図を示す。2つの励起源が示され、それらは緑色LED(LEDG)および赤色LED(LEDR)を含む。それぞれからの励起光/放射は、それぞれ緑色LEDコレクタレンズ(L6)および赤色LEDコレクタレンズ(L7)を通過する。LEDフォールドミラー(M1)は、コンバイナーダイクロイック(F5)へと緑色励起放射を反射し、コンバイナーダイクロイック(F5)は励起フィルタ(F2)、次いでレーザダイオードビームスプリッター(F3)、次いで励起フィールドストップ(FS)、次いで励起投影レンズ群(L2)を通って励起/放出ダイクロイック(F4)へ緑色励起放射を反射し、励起/放出ダイクロイック(F4)は固定対物レンズ群(L3)および平行移動対物レンズ群(L4)を通ってフローセル(FC)の表面へ緑色励起放射を反射する。赤色励起放射は、赤色LEDコレクタレンズ(L7)からコンバイナーダイクロイック(F5)に進み、その後赤色励起放射は、緑色励起放射と同じ経路に従ってフローセル(FC)の表面へ向かう。
図8に示すように、平行移動対物レンズ群(L4)を上下に(すなわち、Z方向に沿って)移動させることによって焦点合わせが行われる。フローセル(FC)表面からの放出は平行移動対物レンズ群(L4)、次に固定対物レンズ群(L3)を通って励起/放出ダイクロイック(F4)へ戻り、励起/放出ダイクロイック(F4)は放出放射を放出投影レンズ群(L1)を通って、放出フィルタ(F1)、次いでCMOSイメージセンサ(S1)へ通す。レーザダイオード(LD)もまた、レーザダイオードカップリングレンズ群(L5)を介してレーザダイオードビームスプリッタ(F3)に向けられており、レーザダイオードビームスプリッタ(F3)はレーザダイオード放射を励起フィールドストップ(FS)、励起投影レンズ群(L2)、励起/放出ダイクロイック(F4)、固定対物レンズ群(L3)、および平行移動対物レンズ群(L4)を通ってフローセル(FC)へ反射させる。
【0121】
図1A〜
図1C、
図2A〜
図2F、および
図6A〜
図6Cの検査装置は、フローセル(FC)内の既定の位置に配置することができる。必要に応じて、検査装置は、マイクロ蛍光計の範囲内でフローセル(FC)に隣接する既定の位置に配置されてもよい。マイクロ蛍光計は、様々な種類の試験に関連して、シーケンスセッションの前、最中および/または後に検査装置へと移動させることができる。
【0122】
図9は、本明細書に開示された実施例に従って検査装置を用い得る検出装置のブロック図を示す。読み出しプリント基板(PCB)は読み出しヘッド内に存在し、検出装置のハウジング内に典型的に含まれる主PCBに接続される。別の例では、メインPCBを機器の外部に配置することができる。データは、LVDSラインを介して読み出しPCBとメインPCB間で交信することができる。LVDSラインは、読み出しPCBからメインPCBへ画像データを伝達し、メインPCBから読み出しPCBへカメラ制御のための命令を伝達するように構成することができる。
【0123】
図9の例では、メインPCBは、USB 3.0 SS I/Fコネクタまたは他の適切なコネクタを介して、外部一次解析パーソナルコンピュータ(PC)にも接続されている。いくつかの例では、一次分析コンピュータを検出装置のハウジング内に配置することができる。しかしながら、一次分析コンピュータを機器外に配置することは、種々の用途に使用される様々なコンピュータの交換可能な使用、検出装置の活動を中断すること必要なく置き換えることによる一次分析コンピュータのメンテナンス簡便化、および検出装置の省スペース化を可能にする。例えば以下を含む、様々なコンピュータのいずれも使用することができる。デスクトップコンピュータ、ラップトップコンピュータ、またはアクセス可能なメモリおよび本明細書に記載のコンピュータ実装方法の実施のための命令を操作通信するプロセッサを含むサーバ。メインPCBはまた、人間のユーザとの通信のために液晶ディスプレイ(LCD)にも接続される。他のユーザインターフェースも同様に使用することができる。
【0124】
いくつかの例では、ユーザインターフェースは、ユーザからの情報を表示または要求するためのディスプレイ(例えば、LCD)およびユーザ入力を受け取るユーザ入力機器(例えば、キーボード)を含むことができる。いくつかの例では、ディスプレイとユーザ入力機器は同じ機器である。例えば、ユーザインターフェースは、個別のタッチの存在を検出し、またディスプレイ上におけるタッチ位置を識別するように構成されたタッチセンシティブディスプレイを含むことができる。しかし、マウス、タッチパッド、キーボード、キーパッド、ハンディスキャナー、音声認識システム、動作認識システムなどのような他のユーザ入力装置を使用してもよい。
【0125】
読み出しPCBは、個々のセンサ(すなわち、検出器)から、LVDSライン、3.3ボルトスイッチングレギュレータ、5ボルトスイッチングレギュレータ、およびLED励起放射線源のためのLEDバックドライブに、データを転送するための送信機を備える。メインPCBは、LVDSから画像データを受け取るように構成されたFPGAプロセッサを備える。DDR3 DIMMフレームバッファはFPGAプロセッサに電子的に接続される。メインPCBはまた、Y軸モータ、カートリッジモータ、バルブモータ、およびポンプモータなどの様々な駆動モータ用の、熱制御レギュレータと制御回路とを備える。
【0126】
図1A〜
図1C、
図2A〜
図2F、および
図6A〜
図6Cの検査装置は、
図9の検出装置に対する既定の位置に配置することができる。検出装置は、様々な種類の試験に関連して、シーケンスセッションの前、最中および/または後に検査装置へと移動させることができる。
【0127】
画像モジュールの様々な特性のいずれも、本明細書に記載の検査装置を使用して評価することができる。
検査装置を用いたシーケンサ装置の試験において、いくつかの例を以下に説明する。異なる検査装置を使用する他の分析システムについても同様の試験を実施できることが理解されるであろう。さらに、以下に例示する原理を代替の分析システムおよび検査装置に適用する場合、当業者には明らかであるように、各試験の詳細は、すべての用途において必須である必要はない。
【0128】
図10は、本明細書で開示される実施例に従って形成された検査装置を利用して実行され得る様々な測定および試験の例を示す。本明細書の実施例によれば、
図10の方法は、装置の対物レンズを、蛍光材料を囲む固体本体を備える光学ターゲットにアライメントする。
図10の方法は、励起光を光学ターゲットに導き、光学ターゲットからの蛍光発光を参照情報として検出し、装置の光学的配列または光学的キャリブレーションの少なくとも1つと関連して参照情報を利用する。様々なタイプの参照情報が本明細書で説明されている。参照情報の非限定的な例は、
図10の各動作(以下に説明する)で記録された情報を含む。
【0129】
図10の動作が順番に説明されているが、動作はほかの順序で実行されてもよいことが理解される。また、
図10の1つ以上の動作は、完全に省略されてもよいことが理解される。1002において、装置の1つ以上のプロセッサが、光学ターゲットおよびシーケンスフローセルを保持するフローセルデッキの傾斜を調整するようにモータに指示し、自動傾斜動作を実行する。自動傾斜動作の間、装置は最終的なチルトモータの座標を決定して記録する。1004において、装置の1つ以上のプロセッサは、フローセルデッキのXY位置を調整するようにモータに指示し、自動センタリング動作を実行する。自動センタリング動作の間、装置は検査装置におけるXYステージの基準位置を記録する。基準位置は、フローセルが機器に挿入されるときに、装置のXYステージのドリフトおよび/またはフローセルデッキの位置を監視するために使用される。
【0130】
1006において、装置は、1つ以上のレーザラインのフレームモード画像を取得し、それに応じてレーザラインのXY位置を調整する。それに関連して、対物レンズは、検査装置上の空き領域に移動され、光学ターゲット中の所定の深さ(例えば、光学ターゲットの表面より100μm下)に焦点を合わせるように調整される。レーザラインを含むフレームモード画像が取り込まれる。レーザラインのXY位置が調整され、追加のフレームモード画像が取り込まれる。このプロセスは、レーザラインに対して所望のX−Y位置を達成するまで繰り返される。
【0131】
1008において、装置は、検査装置上の空き領域の時間遅延積分(TDI)画像を収集し、均一照明を達成するために装置のビームエキスパンダを調整する。例えば、TDI画像は、検査装置上のクリアタイルにおいて、光学ターゲット内の所定の深さに合焦された対物レンズとともに得られうる。レーザズームビームエキスパンダは、選択された照明均一性が得られるまで調節することができる。1010において、装置の1つ以上のプロセッサは、照明均一性およびレーザライン位置が所定の閾値または仕様を満たすか否かを決定する。照明均一性及びレーザライン位置が閾値/仕様を満たさない場合、フローは1006に戻り、1006及び1008の動作が繰り返される。あるいは、照明均一性およびレーザライン位置が閾値/仕様を満たす場合、フローは1012に続く。1006及び1008での操作に続いて、装置は、レーザXYポインティングアクチュエータ及びズームビームエキスパンダアクチュエータの最終位置を記録する。装置はまた、最終照明均一性、XおよびY方向のレーザライン位置、レーザライン幅およびレーザラインに対するカメラ回転を記録する。
【0132】
1012において、装置の1つ以上のプロセッサは、焦点モデルの再現性を測定する。これに関連して、対物レンズは検査装置上の画質タイルに移動され、装置は焦点モデルを取得しオートフォーカス位置再現性をテストする。1012において、装置は、最良焦点Z位置におけるオートフォーカススポット位置、オートフォーカスレーザ強度、オートフォーカスキャプチャ範囲、オートフォーカスゲイン、オートフォーカス迷光およびオートフォーカスZ位置再現性を記録する。
【0133】
1014において、装置の1つ以上のプロセッサが、画質および光学的配列を測定し、カメラの傾斜オフセットキャリブレーションを保存する。装置が自動的にシーケンスフローセルを傾斜させると、システムは、フローセル撮像面をXステージの移動方向と平行に設定するように、特定の傾斜モータを調整する。XYステージの移動方向は、対物レンズの光軸に垂直になるように意図されている。ただし、多少のばらつきが生じることがあり得る。製造中、対物レンズ及びカメラは、撮像面が適切な非傾斜フローセルの画像と同一平面になるように傾けられてもよい。しかし、時間の経過とともに調整が行われ、ドリフトが導入されることがある。検査装置は、カメラの傾斜を測定するために利用することができる。そうするために、1つ以上のプロセッサは、ピンホールアレイの画像のスルーフォーカススタックを収集し、画像を分析して、カメラの傾きに対するクロム層(微細構造)の傾きを決定する。装置は、オートフォーカススポットおよび/またはフォーカススタックの1つまたは両方を利用して、クロム層の傾斜を測定する。エラーはカメラの傾きとクロム層の傾きとの間で発見され、クロム層の角度を測定することによって補正される。一例として、クロム層の角度は、異なるX座標で複数のスルーフォーカススタックを行い、各X座標で最良フォーカスZ位置を比較することによって測定することができる。加えてまたは代わりに、クロム層の角度は、装置のオートフォーカスシステムを用いて複数のX位置でクロム層のZ位置を検出することによって測定することができる。カメラ傾斜のキャリブレーションは、各シーケンス動作の開始時に実行され、その結果に基づいて相殺するようにチルトモータが調整される。
【0134】
画質および光学的配列を測定する場合、装置は、検査装置に設けられた画質タイル上に対物レンズを位置決めする。画質タイルは、クロムまたは別の微細構造(例えば、3μmピッチの六角パターンにつき1μmのピンホール)を通るピンホールの配列で形成される。装置内の撮像システムは一連の画像を収集し、ここで対物レンズは1つ以上の画像の間のZ位置で調整される。対物レンズが画像間のZ位置に移動するにつれ、ピンホールは焦点に入ったり外れたりする。異なる対物レンズ位置における一連の画像を分析し、所望の焦点品質(例えば、最良焦点)を有する画像を識別する。例えば、システムは、一連のスタック画像においてピンホールがどれくらい緊密に合焦しているかを判断することができ、それが画像品質(例えば、半値全幅)を表示する。別の例として、視野にわたる様々な点でピンホールが最良焦点になるZ位置を決定することによって、システムは、異なる発光色(例えば、赤色および緑色)間における軸方向色収差、像面湾曲、カメラ傾斜および使用可能な被写界深度を評価することができる。1014において、装置は画質(FWHM)、軸方向色収差、像面湾曲および使用可能な被写界深度を記録する。この装置はまた、最良焦点Z位置も記録する。また、装置はカメラの傾きを相殺するために、Xステージに対するカメラの傾きとチルトモータのオフセットも記録する。
【0135】
1016において、機器の1つ以上のプロセッサは、歪みを測定し歪み補正係数を保存することによって歪み補正キャリブレーションを実行する。各クラスタが既知の位置にあるパターンフローセルを撮影する場合、結像系の光学的歪みを相殺して、クラスタ内のどこにイメージが現れるかを装置が知ることができる。検査装置は、シーケンス動作の開始時に歪み補正をキャリブレーションするために利用することができる。それを行うために、対物レンズは歪み補正タイルの上に配置される。歪み補正タイルは、全視野(例えば、10nm)にわたって所定の位置公差で位置決めされたピンホールを含み、それにより一貫した所定のピンホール間隔でピンホールアレイを設ける。画像は、隣接するピンホールの位置の間のシフトを識別するために、視野にわたって分析される。シフトはそうして、ピンホールシフトに多項式を当てはめるなどにより分析され、多項式は、シーケンスプロセス中に取得される後続画像中でクラスタが表示される場所を示す。1016において、装置は、歪み補正多項式の係数、光学倍率、フローセルデッキの回転およびYステージの回転を記録する。
【0136】
1018において、装置の1つ以上のプロセッサは、1つ以上のレーザのY方向の位置に対するオートフォーカスレーザスポット測定を実行する。オートフォーカスレーザスポットの位置をチェックすることに関連して、対物レンズは、空き領域とクロム領域との間の急な移行を示す水平ナイフエッジを超えた最良焦点に位置決めされる。オートフォーカスレーザスポットはクロム領域において明るく、空き領域において非常に暗い。TDIスキャンは、赤色および/または緑色カメラを使用して行われる。画像は、各関心発光バンドのカメラ視野が水平ナイフエッジに対してどこに配置されているかを識別するために利用される。対物レンズは、その後最初にクロム領域上に配置され、その後、レーザスポットが消えるまでY方向にゆっくりと下げられ、レーザスポットの消失はレーザスポットがもはやクロムの一部に向けられなくなり、代わりに水平ナイフエッジに近接する空き領域に完全に向けられたときに起きる。次いで、システムは、赤色および緑色カメラの視野に対してY方向のオートフォーカススポット位置を識別することができる。1018において、装置は、関心発光バンドの視野に対して(例えば、赤色および緑色の視野に対して)Y方向にオートフォーカスレーザスポット位置を記録する。
【0137】
1020において、装置の1つ以上のプロセッサは、1つ以上のレーザのX方向の位置に対するオートフォーカスレーザスポット測定を実行する。オートフォーカスレーザスポットの位置をチェックすることに関連して、対物レンズは、空き領域とクロム領域との間の急な移行を示す垂直ナイフエッジを超えて位置決めされる。オートフォーカスレーザスポットはクロム領域において明るく、空き領域において非常に暗い。TDIスキャンは、赤色および/または緑色カメラを使用して行われる。画像は、各関心発光バンドのカメラ視野が垂直ナイフエッジに対してどこに配置されているかを識別するために利用される。対物レンズは、その後最初はクロム領域上に配置され、その後、レーザスポットが消えるまでX方向にゆっくりと下げられ、レーザスポットの消失はレーザスポットがもはやクロムの一部に向けられなくなり、代わりに垂直ナイフエッジに近接する空き領域に完全に向けられたときに起きる。次いで、システムは、赤色および緑色カメラの視野に対してX方向のオートフォーカススポット位置を識別することができる。1020において、装置は、関心発光バンドの視野に対して(例えば、赤色および緑色の視野に対して)X方向にオートフォーカスレーザスポット位置を記録する。
【0138】
1022において、装置の1つ以上のプロセッサは、フラットフィールド補正キャリブレーションを実行することができる。これに関連して、装置は、フラットフィールド補正キャリブレーションを実行するときに、対物レンズをクリアタイルに移動させ、対物レンズを光学ターゲットの表面よりも所定距離だけ下に合焦させる。フラットフィールド補正キャリブレーションは、フラットフィールド補正画像を得ることを含む。1つ以上のプロセッサは、結像系の光伝送効率を計算し、それに関連してフラットフィールド補正係数を保存する。シークエンス中のベースコール操作は、画像内のクラスタの強度に基づく。視野全体の強度の不均一性は、ベースコールに影響を与える場合がある。この装置は、誤差を最小にするためにフローセル内のクラスタを均一に照らすが、しかしながら、完全に均一な照明を達成することは必ずしも実際的ではない。カメラ内のピクセルのゲインおよびオフセットは、製造中にキャリブレーションされるが、しかしながら、カメラピクセルのキャリブレーションは経時的および/または温度によって変化する可能性がある。フラットフィールド補正キャリブレーションを実行するために、対物レンズは、検査機器の空き領域上に配置され、光学ターゲット中の所定の深さ(例えば、100μm)に合焦される。測定は、画像強度の均一性ベースラインを提供するために得られる。その後、1つ以上のシーケンス動作の開始時に、装置は、フラットフィールド補正キャリブレーションを実行することによって、照明の不均一性ならびにカメラピクセルのゲインおよびオフセットの変化を相殺することができる。
【0139】
フラットフィールド補正キャリブレーションは、(暗像を生成するために)レーザシャッタを閉じた状態、および画像内の異なる強度のカウント(例えば、約500、約100、約1500、約200、約2500、約300、および約3500の強度)で画像を得るために複数のレーザ出力でレーザをオンにして、光学ターゲット内の所定の深さに焦点を合わせた検査装置の空き領域の画像を取得することを含む。一例として、ほこり、指紋等の影響が走査(Y)次元の全ての画素を平均化することによって平均化できるように、画像は約1.4mmの長さであり得る。3200画素(カメラの非スキャン次元)ごとに、装置は、暗読み出しと異なる強度の読み出しを使用し、そのピクセルの応答を特徴づける(カメラの画素の光応答と組み合わされてどの程度の明るさで露光されたか)ために、データを多項式に適合させる。シーケンス中にクラスタの画像を撮影する場合、装置は、完全な均一照明ならびに完全に均一なピクセルゲインおよびオフセットで得られるものと同等な全体画像を作成するために、各ピクセルの測定された多項式応答を使用し、クラスタ画像内のそのピクセルの強度を調整する。1022において、機器は、X方向およびY方向の一方または両方の画素のすべてまたは少なくとも一部について、光伝送効率およびフラットフィールド補正多項式係数を記録する。
【0140】
1024において、装置の1つ以上のプロセッサは、フィルタの破過および背景光をチェックする。これに関連して、装置は検査装置上の固体クロムタイルに対物レンズを移動させ、フィルタ破過試験を行う。例えば、フィルタ破過タイルは、鏡として現れる固体クロム領域として形成することができる。装置結像系は、すべてのレーザ光をカメラへの衝突から除去するように設計される。したがって、対物レンズがフィルタ破過タイルの上に配置されている場合、システムはカメラにおいて光を検出しないと予想される。カメラにおいて光が検出されると、光源はさまざまな要因からのものであり得る。例えば、光学フィルタは、レーザ光の全てを適切にフィルタリングしていないことがあり得る。それに加えて、またはこれに代えて、光路内の汚染物質が、レーザ励起光および関心発光バンドにおける蛍光(例えば、赤色または緑色)によって励起されていることがあり得る。光学フィルタが適切に動作していないか、または光路内に汚染物質が存在する場合、両方の状況はカメラによって高いバックグラウンドレベルが検出されるという結果になりかねない。様々な補正措置がとられることがあり得る。1024において、機器は、フィルタの破過情報、背景光情報などを記録する。
【0141】
1026において、1つ以上のプロセッサは、XYステージの位置再現性を測定する。これに関連して、装置は対物レンズを自動センタリング基準点に移動させ、XYステージの位置再現性試験を行う。計器はXとYステージを各方向から自動センタリング基準点まで複数回移動させ、各移動後にオートセンタリング基準点の画像を撮影する。理想的には、自動センタリング基準点は、移動するたびに画像内の同じ位置に正確に現れる。画像内の基準点が動くことは、XYステージの不完全な位置取りを示す。装置は、X方向およびY方向の位置再現性を記録する。装置はまた、X方向およびY方向に示されるヒステリシスも記録する。1028において、1つ以上のプロセッサは、前述のプロセスで収集されたすべての結果をリモート診断サイトに記録する。その後、装置はシーケンス動作を続ける。
【0142】
前述の動作に関連して、装置は遠隔診断を行うように指示することができる。検査装置の画像を周期的に(例えば、各シーケンス動作の開始時に)収集し、分析することにより、装置は経時的に結像系の性能を監視することができる。結果は、ローカルハードディスクドライブに格納および/もしくはリモートサーバまたはクラウドサーバにアップロードすることができる。診断情報は、装置の結像系の健全性を監視し、経時的な装置の性能の動向を認識するために監視することができる。結像系のいずれかの様態が故障に近づいている場合は、実際に装置が故障する前に修理が予定に組み込むことができる。これは顧客の使用可能時間を増加させることとなる。また、装置が結像系に問題を抱えているかどうかに関して疑問が生じた場合、結像系の任意の様態が変更されたかどうかを判断するためにアライメントデータを収集することができる。これは多くの問題の潜在的根本原因として結像系を迅速に排除し、または結像系の特定の問題を指摘することができる。装置がクラウドに情報をアップロードしていない場合、フィールドサービスエンジニアは、ローカルハードディスクドライブに格納されている結果の履歴を確認することで、経時的にデータの動向を追うことが可能になるであろう。
【0143】
さらに、蛍光強度はドーパント濃度に比例する。ドーパント濃度(例えば、約1.1%+/−0.01%)を制御することによって、検査装置は、蛍光の実測値を所望の公差(例えば、赤色で+/−0.6%および緑色で+/−0.1%)に制御することができる。ひとつの装置におけるスキャン速度とレーザ出力で検査装置の強度を測定することは、実質的に全ての類似の装置で予想される強度を示す測定情報を提供することとなる。検査装置からの蛍光強度測定は、装置が適切に動作しているかどうか(例えば、フローセルに供給される適切なレーザ出力、収集されカメラへ供給される適切な蛍光量などの提供)を示すために用いることができる。検査装置の放出特性が経時的に変化しないことを考慮すると、装置の寿命までの蛍光強度の測定値の変化は、適切なレーザ出力がフローセルに供給されていないか、全ての蛍光がカメラに供給されているわけではないことを示すであろう。
【0144】
上記の動作は、検査装置を利用して実行され得る様々な動作の非限定的な例であると認識される。上記の動作は、おそらく互いに完全に独立して、異なる時点で実行されるだろう。検査装置を使用して自動的に実行され得るリモート診断および測定の非限定的な例は以下を含む。光学伝達効率、画質(半値全幅)、カメラ傾斜、軸方向色シフト、像面湾曲、使用可能な被写界深度、歪み、光学倍率、レーザラインXY位置およびライン幅、照明均一性、レーザラインに対するカメラ回転、フラットフィールド補正係数、オートフォーカスZ位置再現性、最良焦点におけるオートフォーカススポット位置、赤色および緑色視野におけるオートフォーカススポット位置、オートフォーカスレーザ強度、オートフォーカスキャプチャ範囲、オートフォーカスゲイン、オートフォーカス迷光、最良焦点Z位置、自動傾斜後のオートチルトモータ座標、XおよびYにおけるヒステリシス、X方向およびY方向の位置再現性、フローセルデッキの回転、Yステージ方向の移動、XYステージのBIRD基準位置、レーザポインティングアクチュエータの位置、レーザズームビームエキスパンダアクチュエータの位置。
【0145】
本明細書の実施例によれば、検査方法は、適正な画像強度のための励起源電流を設定するルーチンを含むことができる。このルーチンは、チャネルの開放領域(すなわち、微細構造を有さない)が検出されるように検査装置を撮像モジュール内に位置決めし、カメラ露光を1ms、LED電流を30%に設定し、1msの露光とオンになっているLEDがない状態で暗像を取り込み、1msの露光で赤色および緑色チャネルにおける画像を取り込み、画像の平均強度を計算し、1msの露出で2500カウントの所望の強度に達するようにLED電流を調整する、逐次的な段階を含むことができる。LED電流は、以降の試験において、これらの値に保たれる。その後のすべての試験は、微細構造パターンの形状に基づいた異なる露光時間を使用できる。基準タイルおよび均一性タイル(微細構造がない)は1msの露光で、オートフォーカスタイルは4msの露光で、画質タイルは150msの露光で、フィルタ破過タイル(上部ガラスの内面に金属で完全に被覆されている)は500msの露光で検出できる。
【0146】
本明細書の実施例によれば、検査方法は、励起源キャリブレーションのためのルーチンを含むことができる。ルーチンは以下のように実行することができる。装置のXYステージは、オートフォーカスタイルに移動される。スルーフォーカススタックは赤色で生成され、最良焦点Z高さが計算される(例えば、ステップサイズは6μm、露光時間は4ms、スイープ範囲は108μm)。次に、XYステージはレーザ画像を収集するために隣接するタイルに移動される。これは、すべてのクロムがオートフォーカスタイルの500ミクロン四方の開口の内側から除去されるわけではない検査装置における、製造上の欠陥の危険性を軽減するために行われる。この欠陥は、オートフォーカスタイルにおいてレーザスポット強度を明るくしすぎることとなる。次の工程は、(焦点モデル生成のための標準設定を使用して)レーザスルーフォーカス画像を収集し、レーザスポット強度がチェックされる。これらの測定中のステップサイズは2ミクロンであり、Z範囲は+/−18ミクロンである。次に、AFスポットが「最も明るいスポット」(赤色最良焦点の+/−18ミクロン以内)において200+/−200カウントになるまで、レーザ露光時間が調整される。ユーザインターフェース上で「キャリブレーションを保存」が選択されている場合、シーケンスに使用するレーザ露光時間が保存される。
【0147】
本明細書の実施例によれば、方法は、検出器のキャリブレーション試験を含むことができる。一例として、試験は以下のように実施することができる。検査装置の画像は、(1)暗(LED消灯)、(2)中低強度、(3)中高強度、(4)明強度(約300カウント)の4つの異なるLED強度で得られる。これらの画像を撮影するとき、XYステージは各画像の間を移動する。選択されたレーンのすべてのタイルは、(検査機表面のごみまたは指紋のために)不均一な蛍光を平均化するために使用される。選択された後続の試験には、カメラ補正を適用する必要はない。
【0149】
本開示の様々な態様は、方法、システム、コンピュータ可読媒体、および/またはコンピュータプログラム製品として具体化することができる。本開示の態様は、ハードウェアの例、ソフトウェアの例(ファームウェア、常駐ソフトウェア、マイクロコードなどを含む)、または本明細書ではほとんど「回路」、「モジュール」、または「システム」として言及され得るソフトウェアとハードウェアの態様の結合の形態を取ることができる。さらに、本開示の方法は、媒体に埋め込まれたコンピュータ使用可能プログラムコードを有するコンピュータ使用可能記憶媒体上のコンピュータプログラム製品の形態を取ることができる。
【0150】
任意の適切なコンピュータ使用可能媒体は、本開示のソフトウェア態様として用いることができる。コンピュータ使用可能またはコンピュータ可読媒体は、例えば、電子、磁気、光学、電磁気、赤外線、または半導体の、システム、装置、デバイス、または伝播媒体であり得るが、これらに限定されない。コンピュータ可読媒体は、一時的な例を含むことができる。コンピュータ可読媒体のより具体的な例(完全には網羅していない一覧)は、以下のいくつかまたは全部を含む。1つ以上のワイヤを有する電気的接続部、ポータブルコンピュータディスケット(フロッピーディスク)、ハードディスク、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読み出し専用メモリ(ROM)、消去可能プログラマブル読み出し専用メモリ(EPROMまたはフラッシュメモリ)、光ファイバ、ポータブルコンパクトディスク読み取り専用メモリ(CD−ROM)、光記憶装置、インターネットやイントラネットをサポートするような伝送媒体、または磁気記憶装置。コンピュータ使用可能またはコンピュータ可読媒体は、紙またはプログラムが印刷される他の適切な媒体であってもよいことに留意されたい。プログラムは、例えば紙または他の媒体の光学スキャンを介して電子的に取り込まれ、その後コンパイルされ、分析され、あるいは適切な方法で処理され、必要に応じて次いでコンピュータメモリに格納され得るからである。本明細書の文脈において、コンピュータ使用可能またはコンピュータ可読媒体は、命令実行システム、装置、またはデバイスに関連して使用されるプログラムを含み、格納し、通信し、伝播し、または移送することができる任意の媒体で構成することができる。
【0151】
本明細書に記載の方法および装置の動作を実行するためのプログラムコードは、Java(登録商標)、Smalltalk、C++などのオブジェクト指向プログラミング言語で記述することができる。しかしながら、本明細書に記載の方法および装置の動作を実行するためのプログラムコードは、「C」プログラミング言語または同様のプログラミング言語のような、従来の手続き型プログラミング言語でも記述することができる。プログラムコードは、プロセッサ、特定用途向け集積回路(ASIC)、またはプログラムコードを実行する他の構成要素によって実行することができる。プログラムコードは、単にメモリ(例えば、上述したコンピュータ可読媒体)に格納されるソフトウェアアプリケーションとして言及することができる。プログラムコードは、プロセッサ(または任意のプロセッサ制御デバイス)にグラフィカルユーザインターフェース(「GUI」)を生成させることができる。グラフィカルユーザインターフェースは、ディスプレイデバイス上で視覚的に生成され得るが、さらにグラフィカルユーザインターフェースは、音響機能をも有することができる。しかし、プログラムコードは、コンピュータ、サーバ、パーソナルデジタルアシスタント、電話、テレビ、またはプロセッサおよび/またはデジタル信号プロセッサを利用する任意のプロセッサ制御デバイスなどの、任意のプロセッサ制御デバイスで動作させることができる。
【0152】
プログラムコードは、ローカルおよび/またはリモートで実行することができる。例えば、プログラムコードは、プロセッサ制御デバイスのローカルメモリに完全にまたは部分的に格納することができる。プログラムコードは、しかしながら、プロセッサ制御デバイスに少なくとも部分的に遠隔格納され、アクセスされ、ダウンロードすることができる。例えば、ユーザのコンピュータは、プログラムコードを完全に実行してもよいし、プログラムコードを部分的にしか実行しなくてもよい。プログラムコードは、少なくとも部分的にユーザのコンピュータにありおよび/またはリモートコンピュータ上で部分的に実行される、もしくは完全にリモートコンピュータまたはサーバ上で実行されるスタンドアロンソフトウェアパッケージであり得る。後者の場合では、リモートコンピュータは通信ネットワークを介してユーザのコンピュータに接続することができる。
【0153】
本明細書に記載の方法および装置は、ネットワーク環境に関係なく適用することができる。通信ネットワークは、無線周波数ドメインおよび/またはインターネットプロトコル(IP)ドメインで動作するケーブルネットワークで構成することができる。しかしながら、通信ネットワークはまた、インターネット(ときには代わりに「ワールドワイドウェブ」として知られている)、イントラネット、ローカルエリアネットワーク(LAN)、および/またはワイドエリアネットワーク(WAN)のような分散型コンピューティングネットワークをも含むことができる。通信ネットワークは、同軸ケーブル、銅線、光ファイバ線、および/またはハイブリッド同軸線を含むことができる。通信ネットワークは、電磁スペクトルの任意の部分および任意の標準シグナル(IEEE802標準ファミリ、GSM(登録商標)/CDMA/TDMA、または任意の標準セルラおよび/またはISMバンドなど)を利用する無線部分さえも含むことができる。通信ネットワークは、電力線部分さえも含むことができ、その中では信号は電気配線を介して通信される。本明細書に記載の方法および装置は、物理的構成要素、物理的配置、または通信標準にかかわらず、任意の無線/有線通信ネットワークに適用することができる。
【0154】
本開示の特定の態様は、様々な方法および手順を参照して記載される。各手順は、プログラムコードおよび/または機械命令によって実施できることが理解されよう。プログラムコードおよび/または機械命令は、方法で指定された機能/動作を実施するための手段を作成することができる。
【0155】
プログラムコードはまた、プロセッサ、コンピュータ、または他のプログラム可能なデータ処理装置を特定の方法で直接機能させることができるコンピュータ可読メモリに格納することができ、コンピュータ可読メモリに格納されたプログラムコードは、手順の様々な態様を実施する命令手段を含む製品を製造または改造する。
【0156】
プログラムコードは、コンピュータまたは他のプログラム可能なデータ処理装置にロードされて、プロセッサ/コンピュータ実装プロセスを生成するために一連の手順を実行させることもでき、プログラムコードは、本開示の方法において特定された様々な機能/動作を実施するための手順を提供する。
【0157】
特許請求の範囲を含む本開示を通じて使用される「実質的に(substantially)」および「約(about)」という用語は、処理におけるバラつきなどに起因するような小さな変動を記述し、説明するために使用される。例えば、それらは+/−5%以下、+/−2%以下、+/−1%以下、+/−0.5%以下、+/−0.2%以下、+/−0.1%以下、+/−0.05%以下などを表す。
【0158】
本明細書および特許請求の範囲で使用される用語「備える(comprise)」、「含む(include)」、「含有する(contain)」など、およびそれらの活用形は、非制限的であるように意図されており、列挙された要素だけでなく、包括的な追加要素をもさらに含む。本明細書を通して、「一例(one example)」、「別の例(another example)」、「例(an example)」などは、本明細書に記載の少なくとも1つの例に関連して記載された特定の要素(例えば、特徴、構造および/または特性)を意味し、他の例に存在しても存在しなくてもよい。加えて、文脈上他に明確に指示されていない限り、任意の例に対する記載された要素は、様々な例において任意の適切な方法で組み合わせられ得ることが理解されるべきである。
【0159】
前述の概念および以下により詳細に論じられる追加の概念(そのような概念が相互に矛盾しないことを条件とする)のすべての組み合わせが、本明細書に開示された発明主題の一部であると考えられることを理解されたい。特に、本開示の最後に現れるクレームに記載された対象の全ての組み合わせは、本明細書に開示される本発明の主題の一部であると考えられる。また、本明細書で明示的に用いられ参照により組み込まれる任意の開示に現れ得る用語は、本明細書に開示された特定の概念と最も一致する意味で解釈されるべきであることを理解されたい。
【0160】
本明細書で提供される範囲は、記載された範囲および記載された範囲内の任意の値または部分範囲を含むことが理解されるべきである。例えば、4以上10以下(4〜10)で表される範囲は、明確に列挙された4〜10の境界値だけでなく、例えば、約6,7.5,9などの個々の値および約5〜約8などの下位範囲を含むと解釈されるべきである。
【0161】
いくつかの実施例を詳細に説明してきたが、開示された実施例は変更され得ることが理解されるべきである。したがって、上記の説明は非限定的であるとみなされるべきである。
を有する。蛍光材料は、選択基底エネルギ準位と、基底エネルギ準位から関心蛍光発光波長に一致する第1エネルギギャップを介して離間するターゲット励起(TE)エネルギ準位を示す。蛍光材料は、TEエネルギ準位に対して次に低い(NLL)エネルギ準位を有する。NLLエネルギはエネルギギャップTEの下方の第2エネルギギャップFM