【実施例】
【0047】
(実施例1−1)
以下に、実施例を用いて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。なお、部表示は、断りのない限り、質量部である。
【0048】
(正極活物質及び負極活物質の作製)
正極活物質及び負極活物質として、以下の方法で作製したLi
3V
2(PO
4)
3を用いた。その作製方法としては、Li
2CO
3とV
2O
5とNH
4H
2PO
4とを出発材料とし、ボールミルで16時間湿式混合を行い、脱水乾燥した後に得られた粉体を850℃で2時間、窒素水素混合ガス中で仮焼した。仮焼品をボールミルで湿式粉砕を行った後、脱水乾燥して正極活物質粉末及び負極活物質粉末を得た。この粉体の平均粒径は0.2μmであった。作製した粉体の組成がLi
3V
2(PO
4)
3であることは、X線回折装置を使用して確認した。
【0049】
(正極活物質層用ペースト及び負極活物質層用ペーストの作製)
正極活物質ペースト及び負極活物質ペーストは、この正極活物質粉末及び負極活物質粉末100部に、バインダーとしてエチルセルロース15部と、溶媒としてジヒドロターピネオール65部とを加えて、混合・分散して正極活物質層用ペースト及び負極活物質層用ペーストを作製した。
【0050】
(固体電解質層用ペーストの作製)
固体電解質として、以下の方法で作製したLi
1.3Al
0.3Ti
1.7(PO
4)
3を用いた。Li
2CO
3とAl
2O
3とTiO
2とNH
4H
2PO
4を出発材料として、ボールミルで16時間湿式混合を行った後、脱水乾燥した。得られた粉体を800℃で2時間、空気中で仮焼した。仮焼品をボールミルで18時間湿式粉砕を行った後、脱水乾燥して固体電解質の粉末を得た。この粉体の平均粒径は0.6μmであった。作製した粉体の組成がLi
1.3Al
0.3Ti
1.7(PO
4)
3であることは、X線回折装置を使用して確認した。
【0051】
次いで、この粉末に、溶媒としてエタノール100部、トルエン200部をボールミルで加えて湿式混合した。その後ポリビニールブチラール系バインダー16部とフタル酸ベンジルブチル4.8部をさらに投入し、混合して固体電解質層用ペーストを調製した。
【0052】
(固体電解質層用シートの作製)
この固体電解質層用ペーストをドクターブレード法でPETフィルムを基材としてシート成形し、厚さ15μmの固体電解質層用シートを得た。
【0053】
(正極集電体層用ペースト及び負極集電体層用ペーストの作製)
正極集電体及び負極集電体として用いたCuとLi
3V
2(PO
4)
3とを体積比率で80/20となるように混合した後、バインダーとしてエチルセルロース10部と、溶媒としてジヒドロターピネオール50部を加えて混合・分散して正極集電体層用ペースト及び負極集電体層用ペーストを作製した。Cuの平均粒径は0.9μmであった。
【0054】
(端子電極ペーストの作製)
銀粉末とエポキシ樹脂、溶剤とを三本ロールで混錬・分散し、熱硬化型の端子電極ペーストを作製した。
【0055】
これらのペーストを用いて、以下のようにしてリチウムイオン二次電池を作製した。
【0056】
(正極活物質ユニットの作製)
上記の固体電解質層用シート上に、スクリーン印刷により厚さ5μmで正極活物質層用ペーストを印刷し、80℃で10分間乾燥した。次に、その上に、スクリーン印刷により厚さ5μmで正極集電体層用ペーストを印刷し、80℃で10分間乾燥した。更にその上に、スクリーン印刷により厚さ5μmで正極活物質層用ペーストを再度印刷し、80℃で10分間乾燥し、次いでPETフィルムを剥離した。このようにして、固体電解質層用シート上に、正極活物質層用ペースト、正極集電体層用ペースト、正極活物質層用ペーストがこの順に印刷・乾燥された正極活物質ユニットのシートを得た。
【0057】
(負極活物質ユニットの作製)
上記の固体電解質層用シート上に、スクリーン印刷により厚さ5μmで負極活物質層用ペーストを印刷し、80℃で10分間乾燥した。次に、その上に、スクリーン印刷により厚さ5μmで負極集電体層用ペーストを印刷し、80℃で10分間乾燥した。更にその上に、スクリーン印刷により厚さ5μmで負極活物質層用ペーストを再度印刷し、80℃で10分間乾燥し、次いでPETフィルムを剥離した。このようにして、固体電解質層用シート上に、負極活物質層用ペースト、負極集電体層用ペースト、負極活物質層用ペーストがこの順に印刷・乾燥された負極活物質ユニットのシートを得た。
【0058】
(積層体の作製)
正極活物質ユニットと負極活物質ユニットを、正極活物質層用ペースト、正極集電体層用ペースト、正極活物質層用ペースト、固体電解質層用シート、負極活物質層用ペースト、負極集電体層用ペースト、負極活物質層用ペースト、固体電解質層用シートの順に形成されるように積み重ねた。このとき、正極活物質ユニットの正極集電体層用ペーストが一の端面にのみ延出し、負極活物質ユニットの負極集電体層用ペーストが他の面にのみ延出するように、各ユニットをずらして積み重ねた。この積み重ねられたユニットの両面に厚さ500μmとなるように固体電解質層用シートを積み重ね、その後、これを熱圧着により成形した後、切断して積層ブロックを作製した。その後、積層ブロックを同時焼成して積層体を得た。同時焼成は、窒素中で昇温速度200℃/時間で焼成温度840℃まで昇温して、その温度に2時間保持し、焼成後は自然冷却した。
【0059】
(端子電極形成工程)
積層体の端面に端子電極ペーストを塗布し、150℃、30分の熱硬化を行い、一対の端子電極を形成してリチウムイオンニ次電池を得た。
【0060】
(実施例1−2)
固体電解質の作製において、ボールミルでの湿式粉砕の時間を12時間に変更し、粉体の平均粒径が1.0μmであったこと以外は実施例1−1と同様にしてリチウムイオン二次電池を作製した。
【0061】
(実施例1−3)
固体電解質の作製において、ボールミルでの湿式粉砕の時間を8時間に変更し、粉体の平均粒径が1.6μmであったこと以外は実施例1−1と同様にしてリチウムイオン二次電池を作製した。
【0062】
(実施例1−4)
固体電解質の作製において、ボールミルでの湿式粉砕の時間を4時間に変更し、粉体の平均粒径が2.0μmであったこと以外は実施例1−1と同様にしてリチウムイオン二次電池を作製した。
【0063】
(比較例1−1)
固体電解質の作製において、ボールミルでの湿式粉砕の時間を24時間に変更し、粉体の平均粒径が0.2μmであったこと以外は実施例1−1と同様にしてリチウムイオン二次電池を作製した。
【0064】
(比較例1−2)
固体電解質の作製において、ボールミルでの湿式粉砕の時間を20時間に変更し、粉体の平均粒径が0.4μmであったこと以外は実施例1−1と同様にしてリチウムイオン二次電池を作製した。
【0065】
(比較例1−3)
固体電解質の作製において、ボールミルでの湿式粉砕の時間を2時間に変更し、粉体の平均粒径が2.4μmであったこと以外は実施例1−1と同様にしてリチウムイオン二次電池を作製した。
【0066】
(実施例2−1)
正極活物質に粉体の平均粒径が0.6μmのLiVOPO
4を用いたこと以外は実施例1−1と同様にしてリチウムイオン二次電池を作製した。
【0067】
(実施例2−2)
正極活物質に粉体の平均粒径1.0μmのLiVOPO
4を用いたこと以外は実施例1−2と同様にしてリチウムイオン二次電池を作製した。
【0068】
(実施例2−3)
正極活物質に粉体の平均粒径1.6μmのLiVOPO
4を用いたこと以外は実施例1−3と同様にしてリチウムイオン二次電池を作製した。
【0069】
(実施例2−4)
正極活物質に粉体の平均粒径2.0μmのLiVOPO
4を用いたこと以外は実施例1−4と同様にしてリチウムイオン二次電池を作製した。
【0070】
(比較例2−1)
正極活物質に粉体の平均粒径0.2μmのLiVOPO
4を用いたこと以外は比較例1−1と同様にしてリチウムイオン二次電池を作製した。
【0071】
(比較例2−2)
正極活物質に粉体の平均粒径0.4μmのLiVOPO
4を用いたこと以外は比較例1−2と同様にしてリチウムイオン二次電池を作製した。
【0072】
(比較例2−3)
正極活物質に粉体の平均粒径2.4μmのLiVOPO
4を用いたこと以外は比較例1−3と同様にしてリチウムイオン二次電池を作製した。
【0073】
(実施例3−1)
正極活物質に粉体の平均粒径が0.2μmのLiCoO
2を用い、負極活物質に粉体の平均粒径が0.6μmのLi
4Ti
5O
12を用いたこと以外は実施例1−1と同様にしてリチウムイオン二次電池を作製した。
(実施例3−2)
正極活物質に粉体の平均粒径が0.2μmのLiCoO
2を用い、負極活物質に粉体の平均粒径が1.0μmのLi
4Ti
5O
12を用いたこと以外は実施例1−2と同様にしてリチウムイオン二次電池を作製した。
(実施例3−3)
正極活物質に粉体の平均粒径が0.2μmのLiCoO
2を用い、負極活物質に粉体の平均粒径が1.6μmのLi
4Ti
5O
12を用いたこと以外は実施例1−3と同様にしてリチウムイオン二次電池を作製した。
(実施例3−4)
正極活物質に粉体の平均粒径が0.2μmのLiCoO
2を用い、負極活物質に粉体の平均粒径が2.0μmのLi
4Ti
5O
12を用いたこと以外は実施例1−4と同様にしてリチウムイオン二次電池を作製した。
【0074】
(比較例3−1)
正極活物質に粉体の平均粒径が0.2μmのLiCoO
2を用い、負極活物質に粉体の平均粒径が0.2μmのLi
4Ti
5O
12を用いたこと以外は比較例1−1と同様にしてリチウムイオン二次電池を作製した。
【0075】
(比較例3−2)
正極活物質に粉体の平均粒径が0.2μmのLiCoO
2を用い、負極活物質に粉体の平均粒径が0.4μmのLi
4Ti
5O
12を用いたこと以外は比較例1−2と同様にしてリチウムイオン二次電池を作製した。
【0076】
(比較例3−3)
正極活物質に粉体の平均粒径が0.2μmのLiCoO
2を用い、負極活物質に粉体の平均粒径が2.4μmのLi
4Ti
5O
12を用いたこと以外は比較例1−3と同様にしてリチウムイオン二次電池を作製した。
【0077】
(電池の評価)
それぞれの端子電極にリード線を取り付け、繰り返し充放電試験を行った。測定条件は、充電及び放電時の電流はいずれも2.0μA、充電時及び放電時の打ち切り電圧をそれぞれ4.0V及び0Vとした。5サイクル目の放電容量と放電開始時の電圧降下から算出した内部抵抗を表1に示した。
【0078】
また、表1には、焼成後の固体電解質、正極活物質、及び負極活物質の粒径も併せて示した。さらに、(固体電解質の粒径)/(正極活物質の粒径)と、(固体電解質の粒径)/(負極活物質の粒径)も併せて記載した。なお、固体電解質、正極活物質及び負極活物質の粒径は、走査型電子顕微鏡などにより撮影したリチウムイオン二次電池の断面写真を画像解析し、粒子の面積から、円と仮定したときの直径、すなわち円相当径として算出した。測定個数は、300個としその平均値を粒径としている。
【0079】
全てが固体から構成されるリチウムイオン二次電池、すなわち全固体の電池においては、粒子内部のイオン移動抵抗よりも粒子と粒子の界面、すなわち界面抵抗の方が圧倒的に大きいことが知られていることから、表1に示す内部抵抗は、界面抵抗を評価していると考えることが出来る。
【0080】
【表1】
【0081】
表1より、実施例1−1から実施例1−4は、比較例1−1及び比較例1−2と比較して内部抵抗が小さく、放電容量が高くなった。この結果は、粒径の大きい固体電解質の間に粒径の小さい正極活物質及び負極活物質が配置されることにより、正極活物質及び負極活物質と固体電解質の接触面積が大きくなり、リチウムイオン二次電池の界面抵抗が低減されたためであると考えられる。一方、実施例1−1から実施例1−4よりも粒径の比が大きい、比較例1−3では内部抵抗の増大と放電容量の低下がみられた。これは、焼成後のリチウムイオン二次電池にクラックがみられたことから、固体電解質と活物質の非常に大きな粒径の差により、焼結に伴う収縮挙動の差が大きくなり、焼成時にクラックが生じたものと考えられる。以上の結果より、固体電解質と活物質の粒径の比は、3.0から10.0の範囲が適していることが分かる。
【0082】
実施例2−1から実施例2−4、及び比較例2−1から比較例2−3では、固体電解質と正極活物質LiVOPO
4の粒径の比は全て1であり、固体電解質と負極活物質Li
3V
2(PO
4)
3の粒径の比のみ異なる。固体電解質と負極活物質の粒径の比が3.0から10.0の範囲である実施例2−1から実施例2−4は、比較例2−1から比較例2−3と比較して内部抵抗が低く、放電容量が高かった。以上の結果より、固体電解質と正極活物質及び負極活物質のいずれか一方の粒径の比が3.0から10.0の範囲であれば、リチウムイオン二次電池の界面抵抗の低減に効果があることが分かる。
【0083】
実施例3−1から実施例3−4、及び比較例3−1から比較例3−3では、正極活物質はLiCoO
2であり、負極活物質がLi
4Ti
5O
12である。固体電解質と正極活物質の粒径の比が3.0から10.0の範囲である実施例3−1から実施例3−4は、比較例3−1から比較例3−3と比較して内部抵抗が低く、放電容量が高いことが分かる。以上の結果より、本発明の効果は正極活物質及び負極活物質の材料の種類によらず、固体電解質と正極活物質及び負極活物質のいずれか一方の粒径の比が3.0から10.0の範囲であれば、リチウムイオン二次電池の界面抵抗の低減に効果があることが分かる。
【0084】
実施例1−4の焼成前のリチウムイオン二次電池の断面写真を以下に示した。正極活物質粉末の平均粒径は0.2μmであり、固体電解質粉末の平均粒径は2.0μmである。焼成前ではあるが、粒径の大きい固体電解質粉末の間に粒径の小さい正極活物質粉末及び負極活物質粉末が配置されることにより、正極活物質粉末と固体電解質粉末及び負極活物質粉末と固体電解質粉末との接触面積が大きくなっている様子がみられる。焼成後においても、正極活物質と固体電解質及び負極活物質と固体電解質との大きな接触面積は維持されるため、リチウムイオン二次電池の内部抵抗が低減したものと考えられる。