(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付の図面に従って、本発明を実施するための最良の形態について説明する。なお、この実施の形態により本発明が限定されるものではない。
【0021】
図1に示すブロック図には、本発明の一実施形態である画像処理方法を実装した撮像装置の主要な構成が示されている。
【0022】
100は撮影レンズであり、詳しくは、カメラ本体200に着脱可能な交換レンズである。撮影レンズ100内には、ズームレンズ110とフォーカスレンズ120とを有している。これらは図中においてそれぞれ1枚のレンズで描写しているが、これに限らない。また、これら以外のレンズを有していてもよい。ズームレンズ110とフォーカスレンズ120はズーム制御部140とフォーカス制御部150とにそれぞれ接続されており、レンズの駆動や位置検出等の制御が行われる。
【0023】
130は撮影レンズ100内に設けられた絞りユニットであり、絞り制御部160に接続されている。絞り制御部160は絞りユニット130の絞り値(F値)を制御する。
【0024】
170はレンズCPUであり、後述するメインCPU240と協働して上述した各種制御部の制御内容を決定し、指示を出す。また、レンズCPU170は撮影レンズ100のズーム位置、フォーカス位置、F値等の撮影条件を各種制御部から取得し、メインCPU240に出力する。また、不図示のメモリ部に格納されたレンズIDを必要に応じてメインCPU240に出力する。
【0025】
200はカメラ本体であり、不図示の機構により撮影レンズ100を装着可能となっている。210は撮像素子であり、撮影レンズ100により集光された光線を受光して光電変換し、画像信号として出力する。本実施形態の撮像素子210はCMOSイメージセンサが用いられている。
【0026】
この撮像素子210の受光面は多数の画素から構成されている。これらの画素は、その内部において、入射光の波長により光電変換される深さの違いを用いることで、単一画素からRGBの各色信号値からなる画像信号を出力可能な垂直色分離型のイメージセンサである。本実施形態の撮像素子210には、画素から読み出した色信号値を増幅するゲイン可変アンプやゲイン値を補正するためのゲイン補正回路、アナログ画像信号をデジタル変換するA/Dコンバータが内蔵されている。
【0027】
220は色ムラ補正部であり、撮像素子210から出力された画像信号に対して色ムラ補正に係る画像処理を行う。色ムラ補正部220における色ムラ補正について詳しくは後述する。
【0028】
230は画像処理部であり、色ムラ補正部220から出力された画像信号に対して各種の一般的な画像処理を施す。ここで施される処理としては、例えば、画像信号から所定の形式のRAWデータを生成する処理や、ホワイトバランス処理、色再現処理がある。JPEG形式やTIFF形式の画像データへの現像処理も画像処理部230で行われる。
【0029】
240はメインCPUであり、撮像装置300全体の包括的な制御を行う。また、メインCPU240はレンズCPU170と電気的に接続されており、協働して撮影レンズ100の制御を行う。
【0030】
250は記録媒体I/Fであり、不図示の記録媒体との間でRAWデータや現像後の画像データの記録又は読み出しを行う。この記録媒体は、半導体メモリ等の着脱可能な記録媒体である。
【0031】
260はユーザI/Fであり、例えば、レリーズボタン、電源ボタン、コマンドダイヤル、十字キー等の操作部材を有している。ユーザがこれらの操作部材を操作すると、メインCPU240は所定の動作を行う指示を出す。
【0032】
270は画像表示部であり、画像処理部230で処理された画像データや、不図示の記録媒体から読み出された画像データ等を表示する。
【0033】
なお、上述したゲイン可変アンプ、ゲイン補正回路、A/Dコンバータを内蔵していない撮像素子210を採用する場合には、これらのデバイスを個別に搭載すればよい。
【0034】
次に、補正の対象となる色ムラの発生原因について考察する。
【0035】
従来から、入射光線角度とF値が色ムラに影響を与えることが知られている。入射光線角度が大きいほど画素への入射光が斜めになり、結像光束が画素から外れたり隣接画素へ漏れ込んだりすることで色ムラが起きる。
【0036】
また、結像光束の形状は撮影レンズ100のF値に応じて変化する。すなわち、撮影レンズ100のF値が大きく(暗く)なると結像光束の面積が小さくなり、F値が小さく(明るく)なると結像光束の面積が大きくなる。結像光束の面積が大きいと、それだけ隣接画素への漏れ込みが発生しやすくなり色ムラが起きる。この特性が維持されている範囲においては、色ムラは結像光束の入射角度とF値に依存する。
【0037】
しかしながら、使用する撮影レンズ100によっては、この結像光束に口径食が発生する場合がある。
図2は画素中の受光面に形成された結像光束の形状(面積)を説明する模式図であり、口径食が発生した状態を示したものである。口径食が発生すると、結像光束の形状(面積)の変化特性に影響が生じ、結像光束は楕円形若しくは欠けた円形に近い形状となる。
【0038】
すなわち、本図に示すように、結像光束のサジタル方向の長さは依然としてF値に応じて変化するが、メリジオナル方向の長さは口径食によって制限されるため、F値がある値(本図の場合にはF2.0)より小さくなると変化しなくなる。結像光束のメリジオナル方向の長さは結像光束の上下光線の入射角から算出が可能であるが、上記の面積特性の変化により、色ムラ特性を精度よく評価するためには従来技術のような上下光線の入射角のみでは不十分であり、光束の面積を考慮することが必要となる。
【0039】
色ムラに影響を及ぼす入射光線角度は同じ像高ごとでは同じ値となる。そのため、色ムラは像高、すなわち画像中心からの距離に依存することが知られている。しかしながら、この色ムラが画像中心に対して非対称性を有している場合があり、より精度よく評価するためには像高にのみ依存する形での補正は望ましくない。
【0040】
この色ムラの非対称性は主に、撮像素子210を構成する画素構造の中心非対称性に因るものと考えることができる。近年の撮像素子は高画素化、画素ピッチ微細化が進み画素構造が高度に複雑化しており、その結果、画素内部では配線層や遮光層が複雑に入り組んでいる。そのような画素に対して結像光束の入射角度と入射方向が変化すると、画素内部構造により生じるケラレの特性も複雑に変化する。このケラレが各像高、各画素構造で様々に発生する結果、中心非対称の色ムラが生じると考えられる。
【0041】
これに加えて、画素構造やマイクロレンズアレイの製造誤差も色ムラに影響を与える要素となり得る。
【0042】
このような像高に依存しない色ムラに対しては、従来技術のように像高毎にグループ分けされた補正量を用いることでは不十分であり、画像信号を所定の数に分割して得られる複数のブロック毎に補正量を求めることが必要となる。
【0043】
(第1実施例)
次に、上述した非対称性を有する色ムラに対する補正処理を行うための画像処理の流れを説明する。
図3は第1実施例において色ムラ補正に係る画像処理を行うための主要な構成を示したブロック図である。
【0044】
レンズCPU170は、内部にROM171とRAM172を有している。このROM171には予め撮影レンズ100に固有の光線角度情報及び周辺光量落ち情報が格納されている。これらの情報について詳しくは後述する。また、RAM172にはズーム制御部140等から得られた各種撮影条件が記憶されている。
【0045】
色ムラ補正部220は、内部に光束情報算出部221と補正係数算出部222とROM223と補正係数補間部224と補正処理部225とを有している。このROM223には、画像信号を所定の数に分割して得られる複数のブロック内に予め設けられた代表点に関する情報が格納されている。この代表点情報について詳しくは後述する。
【0046】
光束情報算出部221は、ROM171から入力される光線角度情報及び周辺光量落ち情報、RAM172から入力される撮影条件、並びにROM223から入力される代表点情報を用いて光束中心光線角度及び光束面積を上述した全ての代表点の位置に対して算出し、光束中心光線角度マップ及び光束面積マップを作成する。
【0047】
次に補正係数算出部222は、作成した光束中心光線角度マップ及び光束面積マップ、並びにROM223に格納されている代表点情報を用いて各代表点における補正係数を算出する。この補正係数には、光束中心光線角度に基づく第1の補正係数と光束面積に基づく第2の補正係数とが含まれる。
【0048】
次に補正係数補間部224は、補正係数算出部222にて得られた各代表点における補正係数から画像信号全体の補正係数を補間計算により算出する。これにより、全ての画像信号に対応する補正係数が得られる。
【0049】
次に補正処理部225は、補正係数補間部224にて得られた補正係数を画像信号の信号値に適用することで色ムラ補正に係る画像処理が完了する。色ムラ補正が施された画像信号は色ムラ補正部220から画像処理部230へ送られる。
【0050】
以上の構成を用いた色ムラ補正に係る画像処理について具体的に説明する。
【0051】
図4はROM171に格納されている光線角度情報及び周辺光量落ち情報の一例であり、一部数値を省略している。ROM171には光線角度情報として上下光線角度と主光線角度が含まれている。本図に示すように、光線角度情報と周辺光量落ち情報は像高と対応させたデータテーブルの形でROM171に格納されている。周辺光量落ち情報は、像高0(画像中心)における光量を1とした場合の各像高における光量の割合を表したものである。これらの情報は撮影レンズ100に固有のものであり、レンズ光学系の設計データから得られたものである。
【0052】
図5は上下光線角度と主光線角度を説明する模式図である。本図に示すように、射出瞳を通過して撮像素子に入射した結像光束の上光線と結像点の法線(点線)との成す角度を上光線角度θupper、結像光束の下光線と結像点の法線との成す角度を下光線角度θlower、射出瞳の中心を通る主光線と結像点の法線との成す角度を主光線角度θchiefとし、それぞれ本図中に実線で記載してある。本実施形態では、結像点の法線より下側で成る角度をプラス、法線より上側で成る角度をマイナスと定義している。
【0053】
また、光線角度情報及び周辺光量落ち情報と像高との関係は撮影条件に応じても変化するので、ROM171内には撮影条件毎に異なるデータテーブルが複数格納されていることになる。どの条件におけるデータテーブルを格納するかは任意に選択可能であり、補正精度とROM171の容量等に応じて適宜選択すればよい。
【0054】
光束情報算出部221は、上述した光線角度情報及び周辺光量落ち情報と撮影時の撮影条件とを用いて光束中心光線角度及び光束面積を算出する。ここで光束中心光線角度は、ある像高における上下光線角度の平均値として得られる角度であり、光束中心光線は本図中に破線で記載したものである。
【0055】
この光束中心光線角度θcは以下の式1で求められる。
θc=(θlower(h)+θupper(h))/2
−θSTDlower(h)+θSTDupper(h))/2 ・・・(1)
ここで、
θlower(h)は像高hにおける下光線角度、
θupper(h)は像高hにおける上光線角度、
θSTDlower(h)は像高hにおける基準レンズの下光線角度、
θSTDupper(h)は像高hにおける基準レンズの上光線角度
である。
【0056】
また本実施形態において光束面積Sは、画素位置や波長によりそれぞれ異なる画素内の吸収深さの取り扱いを簡便にするために、光束面積を所定の深さにおける面積として正規化したものである。以後の説明では、光束面積と記載した場合には基本的にこの正規化された光束面積のことを指すものとする。
【0057】
レンズの透過率を考慮しない場合、周辺光量落ちは画像中心と任意像高との光束面積比に相当する。このため、各像高における光束面積は画像中心における光束面積S0と対応する周辺光量落ち情報とを乗算することで求められる。すなわち、以下の式2に示すように、
像高hにおける光束面積S
=中心光束面積S0×像高hにおける周辺光量落ち情報 ・・・(2)
となる。
【0058】
中心光束面積S0は以下の式3で求められる。
S0=π×tan(θlower(0))^2 ・・・(3)
ここで、θlower(0)は像高0、すなわち画像中心における下光線角度である。なお、像高0であれば下光線角度と上光線角度は絶対値が等しくなるので、正負の符号を考慮しさえすればいずれの値を用いてもよい。
【0059】
図4に示したデータテーブルの例では、各情報は像高1割刻みで格納されている。従って、まず光束情報算出部221はこの1割刻みの像高に対応した光束中心光線角度及び光束面積を算出する。
【0060】
図6はROM223に格納されている代表点情報の一例であり、一部数値を省略している。代表点情報は、各代表点の位置(i,j)とそれに対応する像高hを有している。代表点とは上述したように、画像信号を所定の数に分割して得られる複数のブロック内に設定した点である。本実施形態では、画像信号を60×40個(合計2400個)のブロックに分割し、最も左上のブロックを(1,1)、一つ下のブロックを(1,2)と順番に番号を振り、最後に最も右下のブロックを(60,40)としている。
【0061】
また、代表点は各ブロックの中央画素としている。各ブロックの大きさは均等であるので、代表点の位置座標は一義的に決定される。
【0062】
光束情報算出部221はROM223から上述した代表点情報を取得すると、各代表点の像高に対応する光束中心光線角度及び光束面積を補間計算により算出し、光束中心光線角度マップ及び光束面積マップを作成する。
【0063】
代表点情報にはさらに第1及び第2の補正項が各代表点と対応する形で格納されている。第1の補正項とは光束中心光線角度に係る補正項であり、予め光束中心光線角度と基準レンズで得られた画像信号との関係を例えば3次関数で多項式近似することで、それらの係数a1乃至d1として求められる。すなわち、3次の項の係数をa1、2次の項の係数をb1、1次の項の係数をc1、そして0次の項の係数をd1としている。第2の補正項とは光束面積に係る補正項であり、第1の補正項と同様に、光束面積と画像信号との関係を3次元多項式に近似することで係数a2乃至d2として求められる。すなわち、3次の項の係数をa2、2次の項の係数をb2、1次の項の係数をc2、そして0次の項の係数をd2としている。
【0064】
これらの補正項を各ブロックにおいてそれぞれ算出することで、本図に示した代表点情報のデータテーブルが得られる。なお、これらの補正項は各色情報について算出されるべきもので、例えば赤(R)、緑(G)、青(B)に対応した3種類、色比(R/G)、(B/G)に対応した2種類等となるが、図中のデータテーブルでは省略して1種類のみ記載している。
【0065】
光束中心光線角度及び光束面積と色付き(色ムラ特性)との関係を算出することによって、撮影レンズ及び撮影条件が異なることで生じる色ムラ特性への影響を減じることが可能となる。また、上記を画像位置(代表点)毎に算出することによって、入射光束と撮像素子構造との関係により生じる色ムラ特性を捉えることが可能となる。
【0066】
補正係数算出部222は、光束情報算出部221で得られた光束中心光線角度θcと第1の補正項a1乃至d1とから以下の式4に従って第1の補正係数k1を算出する。
k1=a1×θc^3+b1×θc^2+c1×θc+d1 ・・・(4)
同様に第2の補正係数k2も、光束面積Sと第2の補正項a2乃至d2とから以下の式5に従って算出する。
k2=a2×S^3+b2×S^2+c2×S+d2 ・・・(5)
これにより、各ブロックの代表点位置における色ムラ補正の補正係数が得られる。
【0067】
続いて補正係数補間部224は、代表点に対して得られた各補正係数から画像信号全体に対応する補正係数を線形補間(バイリニア補間)により算出する。このバイリニア補間は、
図7に示すように、4点の既知の値から未知の1点の値を求める補間法である。
【0068】
4点(x1,y1)、(x1,y2)、(x2,y1)及び(x2,y2)における値がそれぞれI11、I12、I21及びI22である場合を考える。このとき、バイリニア補間によれば、4点に囲まれる領域内の1点(x’,y’)における値I(x’,y’)は式6により求められることが知られている。
【0069】
上述したバイリニア補間により画像信号全体に対応する第1及び第2の補正係数が得られると、補正処理部225はそれらの補正係数を撮像素子210から得られた画像信号に乗算して適用することで色ムラ補正に係る画像処理が完了する。なお、補正項がRGB毎に取得してある場合には、得られた補正係数を対応するRGB信号値にそれぞれ適用することで補正処理が行われ、また、補正項が例えば色比R/G、B/G毎に取得してある場合には、対応する色比信号値にそれぞれ適用することで補正処理が行われる。
【0070】
補正処理が完了した画像信号は、上述したように後段の画像処理部230に送られ、各種の一般的な画像処理が施される。
【0071】
以上、本発明を実施の画像処理方法の第1実施例によれば、場所により異なる色ムラを光束中心光線角度と光束面積の関数であるとし、色ムラを補正するための補正量を光束中心光線角度と光束面積の3次関数と仮定している。そして、それら3次関数の係数(第1及び第2の補正項)として、基準レンズで得られた画像信号をそれぞれ光束中心光線角度と光束面積の3次関数で多項式近似した際に得られる係数を用いることとしている。
【0072】
これにより、色ムラを光束面積の関数としても捉えているので、メリジオナル方向(光束中心光線角度)だけでは捉えられない変化もサジタルを考慮した光束面積で捉えることが可能となり、色ムラ補正の精度が向上する。
【0073】
本出願人は、当初、メリジオナル方向の光線角や光線角幅だけでは説明できない色変化の挙動を捉えた際に、サジタル光線角の変化に注目したが、メリジオナル光線角幅とサジタル光線角幅の比では色変化との相関が得られなかった。さらに検討を重ねた結果、メリジオナル光線角幅とサジタル光線角幅の積、つまり光束の面積であれば色変化との相関を得ることを見出した。これはF値によって画像の色付きが変化する現象に相当すると解釈でき、F値を像高毎の光束面積に置き換えることで像高毎の色付きの変化を取り扱うことが可能になる。さらに、光束面積が大きいほど(F値が小さく明るいレンズほど)画素内部構造に起因するケラレや隣接画素への斜入射が起きやすく、画素構造が中心非対称であることによる色付きの方向依存性を扱ううえで有用な情報となる。
【0074】
また、光束中心光線角度及び光束面積は像高に依存するが、第1及び第2の補正項は代表点毎に作成するので像高に非依存で変化させることができるため、像高に非依存の現象に由来する色ムラまでも適切に補正することが可能となる。
【0075】
また、線形補間を利用して、得られた補正係数を画像信号全体に対して補間算出することで、必要とする第1及び第2の補正項のブロック数を抑えつつブロック境界での変化が滑らかになるように補正を行うことができる。
【0076】
(第2実施例)
次に第2実施例について説明する。上述した第1実施例において光束面積は、式2に示したように画像中心における中心光束面積S0と周辺光量落ち情報を用いて算出していた。そしてこの周辺光量落ち情報は
図4に示したように像高に対応したデータテーブルの形式でROM171に格納されていた。第2実施例においては光束面積を、結像光束に内接する四角形により近似することで算出する。光束面積の算出に係る部分以外は上述した第1実施例と同様であるので説明は省略する。
【0077】
図8は第2実施例においてROM171に格納されている光線角度情報の一例であり、一部数値を省略している。上下光線角度及び主光線角度は上述した第1実施例と同義であるので説明を省略する。サジタル光線角度とは
結像光束のサジタル光線と受光面の法線とがなす角度であり、他の光線角度情報と同様にレンズ光学系の設計データから得られる。これらの光線角度情報と像高との関係は撮影条件に応じても変化するので、ROM171内には撮影条件毎に異なるデータテーブルが複数格納される。
【0078】
図9は上述した結像光束の内接四角形の面積を求める式を説明するための概念図である。本図に示したように、結像光束の周縁には各種の光線が入射している。すなわち、像高(メリジオナル)方向では画像中心に近い側には下光線、画像中心から遠い側には上光線が入射する。また、像高方向と垂直に交わるサジタル方向にはサジタル光線が入射する。さらに、結像光束内部の一点には主光線が入射する。
【0079】
このとき図中の結像光束に内接する三角形の面積Stを求めるには、像高方向を底辺、サジタル方向を高さと考えれば、それぞれ
底辺の長さ:(tan(θlower(h)−θchief(h))
−tan(θupper(h)−θchief(h)))
高さ:tan(θsagittal(h))
と表すことができる。
ここで、
θlower(h)は像高hにおける下光線角度、
θupper(h)は像高hにおける上光線角度、
θchief(h)は像高hにおける主光線角度、
θsagittal(h)は像高hにおけるサジタル光線角度幅
である。
【0080】
結像光束の形状はメリジオナル光線に対して概ね線対称であると考えれば、結像光束の内接四角形の面積は三角形の面積を2倍すればよく、内接四角形の面積Sは以下の式7で求められる。
S=(tan(θlower(h)−θchief(h))
−tan(θupper(h)−θchief(h)))
×tan(θsagittal(h)) ・・・(7)
【0081】
上述した演算を光束情報算出部221が全ての代表点について行い、光束面積マップを作成する。これ以降の処理の流れは第1実施例と同様であるので説明は省略する。
【0082】
以上、本発明を実施の画像処理方法の第2実施例によれば、周辺光量落ち情報を用いず、結像光束の内接四角形の面積をもって光束面積を近似している。周辺光量落ち情報には撮影レンズ100の透過率による光量減少分が含まれており、撮影レンズ100によっては誤差が大きくなる可能性がある。その一方で、上述した第2実施例であれば撮影レンズ100の透過率による影響を受けることがないという利点がある。
【0083】
変形例として、光束面積を内接四角形ではなく楕円形に近似してもよい。その場合であれば、楕円面積を求める公式を用いることで光束面積が得られる。その他にも適切な近似を用いることで光束面積を算出することが可能である。
【0084】
なお、上述してきた実施形態の画像処理方法では、代表点に対して算出した補正係数を補正係数補間部224において線形補間(バイリニア補間)することにより全画像信号に対する補正係数を得ていたが、補間方法はこれに限らない。例えば、代表点に対する補正係数をその代表点が属するブロック内に一様に適用することで全画像信号に対する補正係数を得るようにしてもよい。この場合、色ムラの補正精度は低下することになるが、演算の負荷を低減することができる。また、補正係数補間部224は不要であるので、補正係数算出部222にて算出された補正係数は補正処理部225に直接送られることになる。
【0085】
以上で説明したように、本発明に記載の画像処理方法によれば、撮影条件(入射光線の状態)に応じて変化する画像位置ごとの色ムラを適切に補正可能な画像処理方法を提供することが可能となる。