特許第6651971号(P6651971)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ オムロンヘルスケア株式会社の特許一覧

特許6651971脈波検出装置、生体情報測定装置、脈波検出方法、及び、脈波検出プログラム
<>
  • 特許6651971-脈波検出装置、生体情報測定装置、脈波検出方法、及び、脈波検出プログラム 図000002
  • 特許6651971-脈波検出装置、生体情報測定装置、脈波検出方法、及び、脈波検出プログラム 図000003
  • 特許6651971-脈波検出装置、生体情報測定装置、脈波検出方法、及び、脈波検出プログラム 図000004
  • 特許6651971-脈波検出装置、生体情報測定装置、脈波検出方法、及び、脈波検出プログラム 図000005
  • 特許6651971-脈波検出装置、生体情報測定装置、脈波検出方法、及び、脈波検出プログラム 図000006
  • 特許6651971-脈波検出装置、生体情報測定装置、脈波検出方法、及び、脈波検出プログラム 図000007
  • 特許6651971-脈波検出装置、生体情報測定装置、脈波検出方法、及び、脈波検出プログラム 図000008
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6651971
(24)【登録日】2020年1月27日
(45)【発行日】2020年2月19日
(54)【発明の名称】脈波検出装置、生体情報測定装置、脈波検出方法、及び、脈波検出プログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/0225 20060101AFI20200210BHJP
   A61B 5/02 20060101ALI20200210BHJP
   A61B 5/022 20060101ALI20200210BHJP
【FI】
   A61B5/0225 G
   A61B5/02 310M
   A61B5/02 310P
   A61B5/022 400E
【請求項の数】8
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2016-89791(P2016-89791)
(22)【出願日】2016年4月27日
(65)【公開番号】特開2017-196192(P2017-196192A)
(43)【公開日】2017年11月2日
【審査請求日】2019年3月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】503246015
【氏名又は名称】オムロンヘルスケア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002505
【氏名又は名称】特許業務法人航栄特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100115107
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 猛
(74)【代理人】
【識別番号】100151194
【弁理士】
【氏名又は名称】尾澤 俊之
(72)【発明者】
【氏名】加藤 雄樹
(72)【発明者】
【氏名】山下 新吾
(72)【発明者】
【氏名】小椋 敏彦
【審査官】 遠藤 直恵
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−244938(JP,A)
【文献】 特開2006−280485(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3174783(JP,U)
【文献】 特開2004−313409(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/02 −5/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に配列された複数の歪み検出素子を有する可撓性の歪みセンサと、
前記歪みセンサを生体の体表面に対して押圧する押圧部材であって前記歪みセンサが固定された可撓性の押圧部材と、
前記押圧部材を駆動する駆動部と、
前記駆動部を制御して、前記押圧部材が前記歪みセンサを前記体表面に対して押圧する押圧力を制御する押圧制御部と、
前記押圧制御部によって前記押圧力が増加されていく昇圧過程において前記複数の歪み検出素子の各々により検出される歪み検出信号に基づいて前記歪みセンサの検出面の変形が停止した変形停止タイミングを判定する変形停止タイミング判定部と、
前記変形停止タイミングにおいて前記複数の歪み検出素子の各々により検出された前記歪み検出信号を基準レベルに設定し、前記変形停止タイミング以降に前記複数の歪み検出素子の各々により検出される第一の歪み検出信号の校正を前記基準レベルに基づいて行う校正部と、
前記校正後の前記第一の歪み検出信号から圧力信号を生成する圧力生成部と、を備える脈波検出装置。
【請求項2】
請求項1記載の脈波検出装置であって、
前記圧力生成部は、前記昇圧過程のうちの前記変形停止タイミングと前記変形停止タイミングから予め決められた時間が経過した時点の間の期間の複数のタイミングの各々において前記歪み検出素子により検出されて前記校正された第一の歪み検出信号と、前記複数のタイミングの各々における前記押圧力と、に基づいて、前記校正された前記第一の歪み検出信号を圧力信号に変換するための変換式を生成し、前記変換式に基づいて、前記校正後の前記第一の歪み検出信号から圧力信号を生成する脈波検出装置。
【請求項3】
請求項2記載の脈波検出装置であって、
前記圧力生成部は、前記複数の歪み検出素子の各々を注目素子とし、前記複数のタイミングの各々において前記注目素子により検出されて前記校正された第一の歪み検出信号と、前記複数のタイミングの各々における前記押圧力とに基づいて、前記校正された前記第一の歪み検出信号を圧力信号に変換するための変換式を生成する処理を前記注目素子毎に行い、任意の前記歪み検出素子により検出されて前記校正された前記第一の歪み検出信号と、当該任意の歪み検出素子に対して生成した前記変換式とに基づいて圧力信号を生成する脈波検出装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項記載の脈波検出装置であって、
前記歪みセンサの検出面が平らになっている状態での前記複数の歪み検出素子の各々の出力信号を基準値として記憶する記憶媒体を更に備え、
前記歪み検出素子により検出される歪み検出信号は、前記基準値に基づいて校正されたものである脈波検出装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項記載の脈波検出装置であって、
前記歪みセンサは、前記複数の歪み検出素子が二次元状に配列されたものである脈波検出装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項記載の脈波検出装置と、
前記圧力生成部により生成された前記圧力信号に基づいて生体情報を算出する生体情報算出部と、を備える生体情報測定装置。
【請求項7】
基板上に配列された複数の歪み検出素子を有する可撓性の歪みセンサと、前記歪みセンサを生体の体表面に対して押圧する押圧部材であって前記歪みセンサが固定された可撓性の押圧部材と、を用いた脈波検出方法であって、
前記押圧部材が前記歪みセンサを前記体表面に対して押圧する押圧力を増加させるステップと、
前記押圧力が増加されていく昇圧過程において前記複数の歪み検出素子の各々により検出される歪み検出信号に基づいて前記歪みセンサの検出面の変形が停止した変形停止タイミングを判定するステップと、
前記変形停止タイミングにおいて前記複数の歪み検出素子の各々により検出された前記歪み検出信号を基準レベルに設定し、前記変形停止タイミング以降に前記複数の歪み検出素子の各々により検出される第一の歪み検出信号の校正を前記基準レベルに基づいて行うステップと、
前記校正後の前記第一の歪み検出信号から圧力信号を生成するステップと、を備える脈波検出方法。
【請求項8】
同一平面上に配列された複数の歪み検出素子を有する可撓性の歪みセンサと、前記歪みセンサを生体の体表面に対して押圧する押圧部材であって前記歪みセンサが固定された可撓性の押圧部材とを用いた脈波検出プログラムであって、
前記押圧部材が前記歪みセンサを前記体表面に対して押圧する押圧力を増加させるステップと、
前記押圧力が増加されていく昇圧過程において前記複数の歪み検出素子の各々により検出される歪み検出信号に基づいて前記歪みセンサの検出面の変形が停止した変形停止タイミングを判定するステップと、
前記変形停止タイミングにおいて前記複数の歪み検出素子の各々により検出された前記歪み検出信号を基準レベルに設定し、前記変形停止タイミング以降に前記複数の歪み検出素子の各々により検出される第一の歪み検出信号の校正を前記基準レベルに基づいて行うステップと、
前記校正後の前記第一の歪み検出信号から圧力信号を生成するステップと、をコンピュータに実行させるための脈波検出プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脈波検出装置、生体情報測定装置、脈波検出方法、及び、脈波検出プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
手首の橈骨動脈等の動脈が通る生体部位の体表面にセンサを接触させた状態で、このセンサにより検出される情報を用いて脈拍、心拍、又は、血圧等の生体情報を測定することのできる生体情報測定装置が知られている(特許文献1−3参照)。
【0003】
特許文献1には、可撓性基板上に二次元状に配置された歪みを抵抗値として検出するための複数の磁気抵抗効果素子と、この可撓性基板を体表面に向けて押圧する押圧機構と、を有する血圧センサが記載されている。
【0004】
特許文献1には、この血圧センサを用いて血圧を測定する方法として、予め実測により求められた血圧と磁気抵抗効果素子の抵抗値との相関データを利用して、磁気抵抗効果素子により検出された抵抗値を血圧値に変換する方法が開示されている。
【0005】
特許文献2には、帯状の可撓性の圧電シートが交差する状態で配置された可撓性シートと、可撓性シートの背面に固定された弾性部材とを有する脈波検出センサが記載されている。
【0006】
特許文献3には、可撓性基板上に二次元状に配置された複数の磁気抵抗効果素子を有するセンサを用いて、血圧等の生体情報を測定する装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2011−244938号公報
【特許文献2】特開2004−208711号公報
【特許文献3】特開2002−148132号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1−3に記載されているように、可撓性を有するセンサを体表面に接触させて生体情報を測定する構成によれば、センサの装着感を良好なものにすることができる。また、より多くの素子によって生体情報の算出に必要な情報を検出可能となるため、生体情報の算出精度を向上させることができる。
【0009】
生体情報の算出に用いられる情報の1つである脈波を検出する方法としてトノメトリ方式が一般的に知られている。トノメトリ方式は、動脈を適度に圧扁した状態(トノメトリ状態)でセンサにより動脈から圧脈波(拍動に伴って体表面に伝わる圧力振動波)を検出する方式である。このため、センサを体表面に対して押圧する押圧機構と、この押圧機構を駆動する駆動部とが必要である。
【0010】
特許文献1には、血圧センサと、血圧センサを体表面に対して押圧する押圧機構と、この押圧機構を駆動する駆動部とを備える生体情報測定装置が記載されている。この血圧センサは、拍動に伴ってセンサに生じる引っ張り応力を磁気抵抗効果素子により抵抗値として検出し、この抵抗値を血圧に変換するものである。
【0011】
また、特許文献1に記載の血圧センサは可撓性を有しているため、血圧センサを体表面に押圧している状態では、複数の磁気抵抗効果素子の各々の位置によって磁気抵抗効果素子に加わる歪みの大きさが異なる。したがって、このような歪みの差を考慮しないと、圧脈波を精度よく検出することはできない。
【0012】
特許文献2は、可撓性シートを体表面に押圧していく場合のことは想定しておらず、可撓性シートを体表面に押圧した状態での圧脈波の検出方法については考慮されていない。
【0013】
特許文献3は、可撓性基板を体表面に押圧していく場合のことは想定しておらず、可撓性基板を体表面に押圧した状態での圧脈波の検出方法については考慮されていない。
【0014】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、可撓性のあるセンサを体表面に押圧した状態で圧脈波を高精度に検出することのできる脈波検出装置、生体情報測定装置、脈波検出装置の制御方法、及び、脈波検出装置の制御プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の脈波検出装置は、基板上に配列された複数の歪み検出素子を有する可撓性の歪みセンサと、前記歪みセンサを生体の体表面に対して押圧する押圧部材であって前記歪みセンサが固定された可撓性の押圧部材と、前記押圧部材を駆動する駆動部と、前記駆動部を制御して、前記押圧部材が前記歪みセンサを前記体表面に対して押圧する押圧力を制御する押圧制御部と、前記押圧制御部によって前記押圧力が増加されていく昇圧過程において前記複数の歪み検出素子の各々により検出される歪み検出信号に基づいて前記歪みセンサの検出面の変形が停止した変形停止タイミングを判定する変形停止タイミング判定部と、前記変形停止タイミングにおいて前記複数の歪み検出素子の各々により検出された前記歪み検出信号を基準レベルに設定し、前記変形停止タイミング以降に前記複数の歪み検出素子の各々により検出される第一の歪み検出信号の校正を前記基準レベルに基づいて行う校正部と、前記校正後の前記第一の歪み検出信号から圧力信号を生成する圧力生成部と、を備えるものである。
【0016】
本発明の生体情報測定装置は、前記脈波検出装置と、前記圧力生成部により生成された前記圧力信号に基づいて生体情報を算出する生体情報算出部と、を備えるものである。
【0017】
本発明の脈波検出方法は、基板上に配列された複数の歪み検出素子を有する可撓性の歪みセンサと、前記歪みセンサを生体の体表面に対して押圧する押圧部材であって前記歪みセンサが固定された可撓性の押圧部材と、を用いた脈波検出方法であって、前記押圧部材が前記歪みセンサを前記体表面に対して押圧する押圧力を増加させるステップと、前記押圧力が増加されていく昇圧過程において前記複数の歪み検出素子の各々により検出される歪み検出信号に基づいて前記歪みセンサの検出面の変形が停止した変形停止タイミングを判定するステップと、前記変形停止タイミングにおいて前記複数の歪み検出素子の各々により検出された前記歪み検出信号を基準レベルに設定し、前記変形停止タイミング以降に前記複数の歪み検出素子の各々により検出される第一の歪み検出信号の校正を前記基準レベルに基づいて行うステップと、前記校正後の前記第一の歪み検出信号から圧力信号を生成するステップと、を備えるものである。
【0018】
本発明の脈波検出プログラムは、同一平面上に配列された複数の歪み検出素子を有する可撓性の歪みセンサと、前記歪みセンサを生体の体表面に対して押圧する押圧部材であって前記歪みセンサが固定された可撓性の押圧部材とを用いた脈波検出プログラムであって、前記押圧部材が前記歪みセンサを前記体表面に対して押圧する押圧力を増加させるステップと、前記押圧力が増加されていく昇圧過程において前記複数の歪み検出素子の各々により検出される歪み検出信号に基づいて前記歪みセンサの検出面の変形が停止した変形停止タイミングを判定するステップと、前記変形停止タイミングにおいて前記複数の歪み検出素子の各々により検出された前記歪み検出信号を基準レベルに設定し、前記変形停止タイミング以降に前記複数の歪み検出素子の各々により検出される第一の歪み検出信号の校正を前記基準レベルに基づいて行うステップと、前記校正後の前記第一の歪み検出信号から圧力信号を生成するステップと、をコンピュータに実行させるためのものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、可撓性のあるセンサを体表面に押圧した状態で圧脈波を高精度に検出することのできる脈波検出装置、生体情報測定装置、脈波検出装置の制御方法、及び、脈波検出装置の制御プログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施形態である生体情報測定装置に含まれる脈波検出部100の外観構成を示す模式図である。
図2図1に示す歪みセンサ4の概略構成を示す模式図である。
図3】本実施形態の生体情報測定装置のブロック構成を示す図である。
図4】本実施形態の生体情報測定装置の連続測定モード時の動作を説明するためのフローチャートである。
図5図4のステップS1の処理が行われた状態で歪みセンサ4に含まれる任意の素子列により検出される歪み検出信号の一例を示す図である。
図6】歪みセンサ4に含まれる任意の素子列により検出される歪み検出信号の一例を示す図である。
図7】変形停止タイミング以降に任意の歪み検出素子41により検出され校正された第一の歪み検出信号と、この第一の歪み検出信号の検出時の空気袋3の内圧との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0022】
図1は、本発明の一実施形態である生体情報測定装置に含まれる脈波検出部100の外観構成を示す模式図である。本実施形態の生体情報測定装置は、図示しないバンドにより、生体情報の測定対象となる動脈(図1の例では橈骨動脈T)が内部に存在する生体部位(図1の例では利用者の左手の手首)に装着して用いられる。
【0023】
脈波検出部100は、歪みセンサ4と、空気袋3と、空気袋3と歪みセンサ4とを固定する接着層5と、空気袋3を支持する平板状の支持部材2と、支持部材2、空気袋3、及び、歪みセンサ4を保持する筐体1と、を備える。
【0024】
空気袋3は、図1の例では半球状となっており、図示しないポンプにより、内部の空気量(内圧)が制御される。空気袋3は、内圧が変化することにより、その外形が変形する可撓性の部材である。空気袋3の形状は半球状に限定されるものではない。
【0025】
空気袋3は、図1に示すように脈波検出部100が手首に固定された状態で、歪みセンサ4の検出面42を生体部位(手首)の体表面に対して押圧する押圧部材として機能する。
【0026】
図2は、図1に示す歪みセンサ4の概略構成を示す模式図である。
【0027】
歪みセンサ4は、可撓性を有する基板40と、基板40の表面上に配列された複数の歪み検出素子41と、を備える。基板40の表面は平面となっている。複数の歪み検出素子41の配列は、図2の例では、方向Xに配列された複数の歪み検出素子41からなる素子列が、方向Xに直交する方向Yに複数配列された構成(複数の歪み検出素子41が二次元状に配列された構成)となっている。歪みセンサ4は、基板40上にこの素子列が少なくとも1つ形成されていればよい。
【0028】
歪み検出素子41は、基板40の表面上の任意の方向に生じる歪みを検出する素子であり、金属又は半導体の抵抗変化によって歪みを検出する歪ゲージ、或いは、特許文献1に記載されているような磁気抵抗効果によって歪みを検出する素子等が用いられる。
【0029】
複数の歪み検出素子41の各々の表面を合わせた面が、歪みセンサ4の検出面42を構成する。
【0030】
基板40の歪み検出素子41が形成された表面の反対面は、接着剤又は粘着テープ等の接着部材からなる接着層5によって空気袋3に固定されている。このため、空気袋3が変形すると、歪みセンサ4も変形することになる。
【0031】
本実施形態の生体情報測定装置は、図2に示す方向Yが生体情報の測定対象となる橈骨動脈Tに沿った状態で、歪みセンサ4の検出面42が体表面に対して押圧されて使用される。
【0032】
図1に示す装着状態では、脈波検出部100に含まれる歪みセンサ4の検出面42の一部が利用者の手首の皮膚に接触する。この状態で空気袋3に注入される空気量が増えると、空気袋3が膨らんで形状が変化し、空気袋3の形状変化に伴って歪みセンサ4は変形しながら体表面に向けて押圧される。空気袋3の内圧は、空気袋3が歪みセンサ4を体表面に対して押圧する際の押圧力となる。
【0033】
図3は、本実施形態の生体情報測定装置のブロック構成を示す図である。
【0034】
生体情報測定装置は、脈波検出部100と、内圧センサ10と、ポンプ11と、装置全体を統括制御する制御部12と、表示部13と、操作部14と、メモリ15と、を備える。
【0035】
ポンプ11は、制御部12の指示のもと、空気袋3に注入する空気量(空気袋3の内圧)を制御する。ポンプ11は、空気袋3を駆動する駆動部を構成する。
【0036】
内圧センサ10は、空気袋3の内圧を検出し、検出した内圧を制御部12に入力する。
【0037】
表示部13は、生体情報等の各種情報を表示するためのものであり、例えば液晶表示装置等により構成される。
【0038】
操作部14は、制御部12に対する指示信号を入力するためのインターフェースであり、生体情報の測定を含む各種動作の開始を指示するためのボタン等により構成される。
【0039】
メモリ15は、制御部12によって算出された生体情報を含む各種情報を記憶するものであり、例えばフラッシュメモリ等により構成される。メモリ15は着脱可能なものであってもよい。
【0040】
制御部12は、プロセッサを主体に構成されており、プロセッサの実行するプログラム等が記憶されるROM(Read Only Memory)、及び、ワークメモリとしてのRAM(Random Access Memory)等を含む。
【0041】
このプログラムは、脈波検出プログラムを含む。ROMは、プログラムをコンピュータが読取可能な一時的でない(non−transitory)記憶媒体である。ROMに記憶されたプログラムは、ネットワークを介して別の機器からダウンロードされて記憶されたものであってもよい。
【0042】
制御部12のROMには、歪みセンサ4の検出面42が平らになっている状態での歪みセンサ4の各歪み検出素子41の出力信号が、各歪み検出素子41の基準値(以下、歪み基準値という)として記憶されている。この歪み基準値は、生体情報測定装置の製造時において、歪みセンサ4が空気袋3に固定される前に、この歪みセンサ4によって実測されてROMに記憶される。
【0043】
制御部12は、歪みセンサ4の各歪み検出素子41の出力信号を、この各歪み検出素子41の歪み基準値に基づいて校正(歪み基準値に対する相対値に変換)し、校正後の出力信号を、この各歪み検出素子41により検出された歪み検出信号として扱う。
【0044】
制御部12は、プロセッサが脈波検出プログラムを含むプログラムを実行することにより、押圧制御部、変形停止タイミング判定部、校正部、圧力生成部、及び、生体情報算出部として機能する。
【0045】
脈波検出部100、ポンプ11、及び、制御部12により、脈波検出装置が構成される。
【0046】
以下、本実施形態の生体情報測定装置の動作について説明する。本実施形態の生体情報測定装置は、1拍毎に圧脈波を検出し、この圧脈波に基づいて生体情報を算出して記憶する連続測定モードを有する。
【0047】
図4は、本実施形態の生体情報測定装置の連続測定モード時の動作を説明するためのフローチャートである。
【0048】
生体情報測定装置が手首に装着されて生体情報の測定開始指示がなされると、制御部12は、ポンプ11を制御して、空気袋3の内圧を解放して大気圧と同じにする(ステップS1)。
【0049】
ステップS1の後、制御部12は、内圧センサ10の検出信号を取得し、取得した検出信号を空気袋3の内圧の基準値(内圧基準値)として設定する(ステップS2)。これにより、内圧センサ10により検出される空気袋3の内圧は、この内圧基準値に対する相対値として処理される。
【0050】
図5は、図4のステップS1の処理が行われた状態で歪みセンサ4に含まれる任意の素子列により検出される歪み検出信号の一例を示す図である。図5の横軸は、素子列を構成する各歪み検出素子41の方向Xの位置を示し、図5の縦軸は各歪み検出素子41により検出された歪み検出信号を示す。
【0051】
なお、図5に示した検出信号は、制御部12のROMに記憶されている上記の歪み基準値に基づいて校正された値を示している。
【0052】
ここでは、歪みセンサ4の検出面42が基板40の反対側に反っている状態で各歪み検出素子41により検出される歪み検出信号の符号をプラスとしている。ステップS1の処理が行われた状態では、図1に示すように、検出面42は空気袋3の表面形状に沿って、基板40側に反った状態となる。このため、図5に示すように、歪み検出信号の符号はマイナスとなっている。また、歪みセンサ4は可撓性を有するため、検出面42は、位置によって曲がり度合いが異なる。このため、図5に示すように、各歪み検出素子41からは、その素子の配置位置の曲がり度合いに応じた出力が得られることになる。
【0053】
ステップS2の後、制御部12は、ポンプ11を制御して、空気袋3の内圧を徐々に増加させる昇圧工程を開始する(ステップS3)。制御部12は、空気袋3の内圧の情報を時刻と対応付けてメモリ15に記憶していく。
【0054】
昇圧工程の開始後、歪みセンサ4の各歪み検出素子41によって歪みが検出されると、制御部12は、歪みセンサ4の各歪み検出素子41により検出された歪み検出信号(歪み検出信号群)を検出時刻と対応付けてRAMに一時記憶する(ステップS4)。
【0055】
ステップS4の後、制御部12は、歪み検出信号群がRAMに複数個記憶されているか否かを判定し、記憶されていれば(ステップS5:YES)ステップS6の処理を行い、記憶されていなければ(ステップS5:NO)ステップS4に処理を戻す。
【0056】
空気袋3の内圧が増加していくと、検出面42の全体が体表面に接触する。空気袋3の内圧が低く、空気袋3及び歪みセンサ4の弾性率が体表面の弾性率よりも十分に小さい状態では、検出面42が体表面の形状に合うように変形する。その後、空気袋3の内圧が高くなり、空気袋3及び歪みセンサ4の弾性率が体表面の弾性率よりも大きくなると、検出面42の形状はほとんど変化しなくなる。
【0057】
ステップS6では、制御部12は、RAMに記憶した歪み検出信号群に基づいて、上記のように検出面42が実質的に変形しなくなったタイミング(検出面42の変形が実質的に停止したタイミング)を判定する。
【0058】
なお、検出面42の変形が実質的に停止するとは、変形が完全に停止することに限らず、検出面42の変形による圧脈波の検出精度への影響が無視できる程度に、検出面42の変形が小さくなることを含む。
【0059】
ステップS6において、具体的には、制御部12は、RAMに記憶された最新の検出時刻(検出時刻tnとする)に対応する歪み検出信号群と、RAMに記憶された最新の1つ前の検出時刻(検出時刻tn−1とする)に対応する歪み検出信号群とを抽出する。制御部12は、この2つの歪み検出信号群において、同じ歪み検出素子41により検出された歪み検出信号同士(1つの歪み検出素子41によって検出時刻tnと検出時刻tn−1の各々で検出された2つの歪み検出信号)の差分を算出し、算出した差分の総和を歪み検出素子41の総数で割って、差分の平均値を算出する。
【0060】
この差分の平均値が小さいということは、検出面42の形状の変化が少ないことを意味する。そこで、制御部12は、この差分の平均値が閾値未満となっている場合には、時刻tn−1において検出面42の変形が実質的に停止したと判定する。なお、この閾値は、2つの歪み検出信号群の各々が検出された時刻の押圧力の差を考慮した値に設定される。
【0061】
上記の差分は、検出時刻tnにおける押圧力によって体表面から受ける圧力と、検出時刻tn−1における押圧力によって体表面から受ける圧力との差に起因する信号差も含まれる。このため、この閾値を、この信号差よりも大きな値にしておくことで、検出面42の変形が実質的に停止したタイミングを正確に判定することができる。
【0062】
なお、上記の差分の代わりに、歪み検出素子41により別々の時刻で検出された2つの歪み検出信号の比を用いることもできる。または、制御部12は、2つの歪み検出信号群の各々で表される図5に示すような曲線の形状の類似度を判定し、類似度が閾値以上の場合には、時刻tn−1において検出面42の変形が実質的に停止したと判定してもよい。
【0063】
上記の判定に用いる2つの歪み検出信号群の各歪み検出信号は、信号の直流成分であってもよいし、信号の絶対値であってもよい。変形停止タイミング以前に検出される歪み検出信号には、拍動に伴う交流成分はほとんど含まれない。このため、直流成分と絶対値のどちらでも検出面42の変形が停止したタイミングを判定することができる。
【0064】
ステップS6の判定がYESになると、制御部12は、検出面42の変形が実質的に停止したタイミングである変形停止タイミング(上記の時刻tn−1)において歪みセンサ4により検出された歪み検出信号群の各歪み検出信号を、この各歪み検出信号の出力元の歪み検出素子41の基準レベルに設定する(ステップS7)。
【0065】
なお、変形停止タイミングでは、拍動に伴う歪みの変動はまだ大きくなっていない。このため、この変形停止タイミングにおいて歪みセンサ4により検出された歪み検出信号群の各歪み検出信号は、ほぼ直流成分のみの信号となる。
【0066】
基準レベルの設定後、制御部12は、変形停止タイミング以降に歪みセンサ4の各歪み検出素子41により検出される歪み検出信号(以下、第一の歪み検出信号という)については、この第一の歪み検出信号を、この各歪み検出素子41に対して設定した基準レベルに基づいて校正し、校正後の第一の歪み検出信号を検出時刻と対応付けてメモリ15に記憶する(ステップS8)。
【0067】
図6は、歪みセンサ4に含まれる任意の素子列により検出される歪み検出信号の一例を示す図である。図6(a)の横軸は、素子列を構成する各歪み検出素子41の方向Xの位置を示し、図6の縦軸は各歪み検出素子41により検出された歪み検出信号(制御部12のROMに記憶された歪み基準値に基づいて校正された値)を示す。
【0068】
図6(a)は、上記の変形停止タイミングにおいて歪みセンサ4に含まれる任意の素子列により検出された第一の歪み検出信号の一例を示している。
【0069】
図6(b)は、図6(a)に示した第一の歪み検出信号の校正後の信号を示している。ステップS7及びステップS8の処理により、変形停止タイミングで得られた第一の歪み検出信号は全てゼロとして扱われる。
【0070】
ステップS8の処理によって、メモリ15には、変形停止タイミング以降に、歪みセンサ4の各歪み検出素子41により検出されて校正された後の第一の歪み検出信号と、この校正後の第一の歪み検出信号の検出時刻と、その検出時刻における空気袋3の内圧とが記憶されていく。
【0071】
図7は、変形停止タイミング以降に任意の歪み検出素子41により検出され校正された第一の歪み検出信号と、この第一の歪み検出信号の検出時の空気袋3の内圧との関係を示す図である。
【0072】
上述したように、変形停止タイミング以降は、検出面42はほとんど変形しない。このため、歪みセンサ4による体表面の押圧によって橈骨動脈Tが潰れ始めるまでの押圧初期の段階(図7中の期間T1)では、各歪み検出素子41により検出されて校正された後の第一の歪み検出信号の直流成分は、空気袋3の内圧の増加に応じて線形的に変化する。
【0073】
なお、この期間T1を過ぎた後の、橈骨動脈Tが適度に潰れてトノメトリ状態に近くなる期間T2では、空気袋3の内圧の増加に伴う校正後の第一の歪み検出信号の直流成分の変化は小さくなる。
【0074】
制御部12は、ステップS8の後、図7に示す期間T1に属する複数の検出時刻の各々に対応する校正後の第一の歪み検出信号の直流成分と、この複数の検出時刻の各々における空気袋3の内圧とに基づいて、空気袋3の内圧(y)と校正後の第一の歪み検出信号(x)との関係を示す一次関数y=ax+bの係数a,bを求め、RAMに記憶する(ステップS9)。
【0075】
図7に示す縦軸及び横軸のデータは、歪みセンサ4の全ての歪み検出素子41の各々についてメモリ15に記憶されている。制御部12は、上記の一次関数を、全ての歪み検出素子41の各々について記憶されているデータに基づいて、歪み検出素子41毎に生成し、歪み検出素子41と対応付けて記憶する。
【0076】
一例として、図7に示した直線F1は、制御部12によって生成された一次関数y=ax+bで示される直線を示している。この一次関数y=ax+bは、基準レベルに基づく校正後の第一の歪み検出信号を圧力信号に変換するための変換式となる。
【0077】
ステップS9で一次関数を導出した後、制御部12は、メモリ15に記憶されている校正後の第一の歪み検出信号を、この第一の歪み検出信号の出力元の歪み検出素子41に対応する一次関数に基づいて圧力信号に変換し、変換後の圧力信号をメモリ15に記憶する(ステップS10)。
【0078】
これにより、メモリ15には、変形停止タイミング以降に、歪みセンサ4の各歪み検出素子41により検出されて校正された第一の歪み検出信号に対応する圧力信号と、この圧力信号の検出時刻と、その検出時刻における空気袋3の内圧とが記憶されることになる。メモリ15に記憶される圧力信号は、各歪み検出素子41によって検出された圧脈波となる。
【0079】
ステップS10の後は、脈波検出ルーチンに移行する。
【0080】
脈波検出ルーチンにおいて、制御部12は、メモリ15に記憶された空気袋3の内圧の昇圧過程で検出された圧力信号に基づいて、例えば圧力信号の交流成分が最大となっている歪み検出素子41を最適素子として選択し、この最大の交流成分の圧力信号が検出された検出時刻における空気袋3の内圧をトノメトリ状態が実現される最適押圧力として決定する。
【0081】
そして、制御部12は、空気袋3の内圧を最適押圧力に保持し、この状態で、最適素子により順次検出される各歪み検出信号を、上記の基準レベルに基づいて校正する。制御部12は、この校正後の歪み検出信号を、最適素子に対応して生成された上記の一次関数に基づいて圧力信号に変換し、変換後の圧力信号をメモリ15に記憶する。
【0082】
制御部12は、このようにしてメモリ15に記憶した圧力信号に基づいて、最高血圧及び最低血圧等の血圧情報、心拍数、又は、脈拍数等の生体情報を算出し、算出した生体情報をメモリ15に記憶する。
【0083】
なお、制御部12は、生体情報算出機能を有していなくてもよい。この場合は、生体情報測定装置のメモリ15に記憶された圧力信号が電子機器に転送され、この電子機器において生体情報が算出され記憶される構成とすればよい。
【0084】
以上のように、本実施形態の生体情報測定装置は、昇圧過程において歪みセンサ4の検出面42の変形が停止したタイミングを判定し、このタイミングにおいて各歪み検出素子41により検出された歪み検出信号を基準レベルとして設定する。つまり、歪みセンサ4が変形することによって各歪み検出素子41に生じる歪みが略固定された状態を基準にして歪み検出信号を検出することができる。このため、上記タイミング以降は、歪み検出信号が、押圧力に伴って検出される歪みと、拍動に伴って検出される歪みとの合成になるので、圧脈波のみを高精度に検出することができる。
【0085】
また、本実施形態の生体情報測定装置は、校正後の第一の歪み検出信号に基づいて、歪み検出信号を圧力信号に変換するための変換式を生成している。このように、被測定者から検出される生体信号を利用して変換式が生成されるため、変換後の圧力信号の信頼性を高めることができ、圧脈波を高精度に検出することができる。
【0086】
なお、生体情報測定装置の制御部12のROMに、多数の被測定者から実測されて校正された第一の歪み検出信号に基づいて生成された歪み検出素子41毎の変換式を製造時に記憶しておき、制御部12は、この変換式を利用して校正後の第一の歪み検出信号を圧力信号に変換してもよい。この構成によれば、生体情報測定装置において変換式の演算が不要となるため、生体情報測定開始までの時間短縮と、生体情報測定装置の省電力化が可能となる。
【0087】
また、本実施形態の生体情報測定装置によれば、歪みセンサ4に含まれる全ての歪み検出素子41毎に変換式が生成され、任意の歪み検出素子41により検出されて校正された第一の歪み検出信号は、この任意の歪み検出素子41に対して生成された変換式に基づいて圧力信号に変換される。このように、歪み検出素子41毎に異なる変換式が適用されて圧力信号への変換が行われることで、圧脈波の検出精度を高めることができる。
【0088】
なお、制御部12は、歪みセンサ4に含まれる全ての歪み検出素子41の中から1つ(例えば検出面42の中央付近にあるもの)を選択し、選択した歪み検出素子41により上記の期間T1に属する複数の検出時刻の各々において検出され校正された第一の歪み検出信号と、この複数の検出時刻の各々における空気袋3の内圧とに基づいて、歪み検出信号から圧力信号への変換式を生成してもよい。この構成によれば、歪みセンサ4に含まれる歪み検出素子41の総数分の変換式の演算が不要となるため、生体情報測定開始までの時間短縮と、生体情報測定装置の省電力化が可能となる。
【0089】
この場合、制御部12は、歪みセンサ4に含まれる各歪み検出素子41により検出されて校正された第一の歪み検出信号を、上記のようにして生成した全ての歪み検出素子41に共通の1つの変換式に基づいて圧力信号に変換する。この構成によれば、変換式の生成に必要な演算量を削減することができるため、生体情報測定装置の省電力化が可能となる。
【0090】
本実施形態の生体情報測定装置において、空気袋3とポンプ11の代わりに、内圧一定かつ変形可能な空気袋と、この空気袋を体表面に対して押圧する押圧機構と、この押圧機構を駆動する駆動部とを採用することもできる。
【0091】
この構成では、内圧一定かつ変形可能な空気袋に歪みセンサ4が固定される。制御部12は、駆動部を制御して押圧機構を体表面側に移動させる。押圧機構が移動し、歪みセンサ4が体表面に押圧されていくと、しばらくは空気袋が押圧機構の移動によって変形するため、歪みセンサ4の検出面42も変形する。そして、ある程度押圧力が高まると、空気袋の変形は止まるため、これにより、検出面42の変形も停止する。制御部12は、この検出面42の変形が停止したタイミングで検出された歪み検出信号を基準レベルに設定し、後の校正を行う。この構成においては、内圧一定の空気袋が可撓性を有する押圧部材となる。
【0092】
以上説明してきたように、本明細書には以下の事項が開示されている。
【0093】
開示された脈波検出装置は、基板上に配列された複数の歪み検出素子を有する可撓性の歪みセンサと、前記歪みセンサを生体の体表面に対して押圧する押圧部材であって前記歪みセンサが固定された可撓性の押圧部材と、前記押圧部材を駆動する駆動部と、前記駆動部を制御して、前記押圧部材が前記歪みセンサを前記体表面に対して押圧する押圧力を制御する押圧制御部と、前記押圧制御部によって前記押圧力が増加されていく昇圧過程において前記複数の歪み検出素子の各々により検出される歪み検出信号に基づいて前記歪みセンサの検出面の変形が停止した変形停止タイミングを判定する変形停止タイミング判定部と、前記変形停止タイミングにおいて前記複数の歪み検出素子の各々により検出された前記歪み検出信号を基準レベルに設定し、前記変形停止タイミング以降に前記複数の歪み検出素子の各々により検出される第一の歪み検出信号の校正を前記基準レベルに基づいて行う校正部と、前記校正後の前記第一の歪み検出信号から圧力信号を生成する圧力生成部と、を備えるものである。
【0094】
開示された脈波検出装置は、前記圧力生成部は、前記昇圧過程のうちの前記変形停止タイミングと前記変形停止タイミングから予め決められた時間が経過した時点の間の期間の複数のタイミングの各々において前記歪み検出素子により検出されて前記校正された第一の歪み検出信号と、前記複数のタイミングの各々における前記押圧力と、に基づいて、前記校正された前記第一の歪み検出信号を圧力信号に変換するための変換式を生成し、前記変換式に基づいて、前記校正後の前記第一の歪み検出信号から圧力信号を生成するものである。
【0095】
開示された脈波検出装置は、前記圧力生成部は、前記複数の歪み検出素子の各々を注目素子とし、前記複数のタイミングの各々において前記注目素子により検出されて前記校正された第一の歪み検出信号と、前記複数のタイミングの各々における前記押圧力とに基づいて、前記校正された前記第一の歪み検出信号を圧力信号に変換するための変換式を生成する処理を前記注目素子毎に行い、任意の前記歪み検出素子により検出されて前記校正された前記第一の歪み検出信号と、当該任意の歪み検出素子に対して生成した前記変換式とに基づいて圧力信号を生成するものである。
【0096】
開示された脈波検出装置は、前記歪みセンサの検出面が平らになっている状態での前記複数の歪み検出素子の各々の出力信号を基準値として記憶する記憶媒体を更に備え、前記歪み検出素子により検出される歪み検出信号は、前記基準値に基づいて校正されたものである。
【0097】
開示された脈波検出装置は、前記歪みセンサは、前記複数の歪み検出素子が二次元状に配列されたものである。
【0098】
開示された生体情報測定装置は、前記脈波検出装置と、前記圧力生成部により生成された前記圧力信号に基づいて生体情報を算出する生体情報算出部と、を備えるものである。
【0099】
開示された脈波検出方法は、基板上に配列された複数の歪み検出素子を有する可撓性の歪みセンサと、前記歪みセンサを生体の体表面に対して押圧する押圧部材であって前記歪みセンサが固定された可撓性の押圧部材と、を用いた脈波検出方法であって、前記押圧部材が前記歪みセンサを前記体表面に対して押圧する押圧力を増加させるステップと、前記押圧力が増加されていく昇圧過程において前記複数の歪み検出素子の各々により検出される歪み検出信号に基づいて前記歪みセンサの検出面の変形が停止した変形停止タイミングを判定するステップと、前記変形停止タイミングにおいて前記複数の歪み検出素子の各々により検出された前記歪み検出信号を基準レベルに設定し、前記変形停止タイミング以降に前記複数の歪み検出素子の各々により検出される第一の歪み検出信号の校正を前記基準レベルに基づいて行うステップと、前記校正後の前記第一の歪み検出信号から圧力信号を生成するステップと、を備えるものである。
【0100】
開示された脈波検出プログラムは、同一平面上に配列された複数の歪み検出素子を有する可撓性の歪みセンサと、前記歪みセンサを生体の体表面に対して押圧する押圧部材であって前記歪みセンサが固定された可撓性の押圧部材とを用いた脈波検出プログラムであって、前記押圧部材が前記歪みセンサを前記体表面に対して押圧する押圧力を増加させるステップと、前記押圧力が増加されていく昇圧過程において前記複数の歪み検出素子の各々により検出される歪み検出信号に基づいて前記歪みセンサの検出面の変形が停止した変形停止タイミングを判定するステップと、前記変形停止タイミングにおいて前記複数の歪み検出素子の各々により検出された前記歪み検出信号を基準レベルに設定し、前記変形停止タイミング以降に前記複数の歪み検出素子の各々により検出される第一の歪み検出信号の校正を前記基準レベルに基づいて行うステップと、前記校正後の前記第一の歪み検出信号から圧力信号を生成するステップと、をコンピュータに実行させるためのものである。
【符号の説明】
【0101】
100 脈波検出部
1 筐体
2 支持部材
3 空気袋
4 歪みセンサ
5 接着層
40 基板
41 歪み検出素子
42 検出面
X,Y 方向
T 橈骨動脈
10 内圧センサ
11 ポンプ
12 制御部
13 表示部
14 操作部
15 メモリ
F1 圧力変換曲線
T1,T2 期間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7