特許第6652232号(P6652232)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6652232
(24)【登録日】2020年1月27日
(45)【発行日】2020年2月19日
(54)【発明の名称】基板収納容器
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/673 20060101AFI20200210BHJP
【FI】
   H01L21/68 T
【請求項の数】8
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-218370(P2015-218370)
(22)【出願日】2015年11月6日
(65)【公開番号】特開2017-92172(P2017-92172A)
(43)【公開日】2017年5月25日
【審査請求日】2018年10月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000190116
【氏名又は名称】信越ポリマー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100144048
【弁理士】
【氏名又は名称】坂本 智弘
(74)【代理人】
【識別番号】100186679
【弁理士】
【氏名又は名称】矢田 歩
(74)【代理人】
【識別番号】100189186
【弁理士】
【氏名又は名称】大石 敏弘
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 壮紀
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 晃裕
【審査官】 井上 和俊
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−010574(JP,A)
【文献】 特開2000−021966(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/673
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1以上の基板を収納する基板収納容器であって、
前記基板を収納可能な収納棚を設け、前記基板の取り出し及び収納が可能な開口部を設けた容器本体と、
前記開口部を密閉可能な蓋体と、
前記容器本体の底面に設けられ、少なくとも容器位置決め部を有するボトムプレートと、を有し、
前記容器本体及び前記ボトムプレートのいずれか一方にはスライド嵌合部及び係止部を設け、
他方には、スライド被嵌合部及び被係止部を設け、
前記ボトムプレートが、スライド嵌合の終端位置で、前記係止部と前記被係止部とが嵌合された状態でロックされて係止されており
前記スライド嵌合部及び前記スライド被嵌合部は、前記ボトムプレートを、前記容器本体の底面をスライドして摺動するように規制し、前記容器位置決め部を長さ方向、幅方向、及び高さ方向に位置決めする、基板収納容器。
【請求項2】
前記容器本体の底面には、前記被係止部である係止爪及び/又は係止孔が少なくとも1つ設けられるとともに、ボトムプレートには、前記係止爪及び/又は前記係止孔に嵌合する、前記係止部であるフックが少なくとも1つ設けられ、
前記容器本体と前記ボトムプレートとを終端位置までスライド嵌合させ、前記係止爪及び/又は前記係止孔と、前記フックとを嵌合させることで、前記ボトムプレートを固定する、請求項1に記載の基板収納容器。
【請求項3】
前記ボトムプレートが、前記容器位置決め部に加えて、容器固定部及び容器識別部からなる群から選ばれる少なくとも一種を有する、請求項1又は2に記載の基板収納容器。
【請求項4】
前記ボトムプレートが、容器識別部、RF−ID保持部、及びラベル貼り付け部からなる群から選ばれる少なくとも一種を有する識別部材保持部材を連結可能な連結部を有する請求項1からのいずれかに記載の基板収納容器。
【請求項5】
前記ボトムプレートを構成する材料が、前記容器本体を構成する材料よりも摩擦係数の低い材料である、請求項1からのいずれかに記載の基板収納容器。
【請求項6】
前記ボトムプレートを構成する材料が、
1)ポリカーボネート樹脂にフッ素樹脂を分散させた複合材料、
2)ポリブチレンテレフタレート、及び
3)熱可塑性樹脂に、前記熱可塑性樹脂よりも摩擦係数の低い樹脂成分からなるコア部分とこれを被覆するシェル部分とを有する微粒子を分散させた複合材料、
からなる群から選ばれる少なくとも一種である、請求項に記載の基板収納容器。
【請求項7】
前記ボトムプレートの前記容器位置決め部を前記ボトムプレートの他の部位から着脱可能な部材として構成する、請求項1からのいずれかに記載の基板収納容器。
【請求項8】
1以上の基板を収納する基板収納容器であって、
前記基板を収納可能な収納棚を設け、前記基板の取り出し及び収納が可能な開口部を設けた容器本体と、
前記開口部を密閉可能な蓋体と、
前記容器本体の底面に設けられ、少なくとも容器位置決め部を有するボトムプレートと、を有し、
前記容器本体及び前記ボトムプレートのいずれか一方にはスライド嵌合部及び係止部を設け、
他方には、スライド被嵌合部及び被係止部を設け、
前記ボトムプレートが、スライド嵌合の終端位置で、前記係止部と前記被係止部とが嵌合された状態でロックされて係止されており、
前記ボトムプレートの前記容器位置決め部を前記ボトムプレートの他の部位から着脱可能な部材として構成する、基板収納容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウェハ等の精密基板の収納、貯蔵、保管、輸送のための基板収納容器であって、半導体製造工程の各種装置に対する自動位置決めシステムを利用可能な基板収納容器に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウェハは、その製造過程を通じて、金属イオン等による汚染や塵等の付着を防止する必要があり、保管や輸送にあたっては、清浄性の維持された密閉可能な容器に収納することが必要である。半導体ウェハを収納するそのような容器としては、例えば、特許文献1に、開口部を有し基板を整列して収納する容器本体と、開口部を密閉可能な蓋体とを有する基板収納容器が開示されている。
【0003】
ところで、半導体製造の分野においては、生産性を向上させる目的から、半導体製造工程の各種装置を無人化、自動化するための様々な技術が開発されており、上述の基板収納容器についても、自動化された搬送機で各工程の装置間を搬送され、基板の取り出し・収納がなされている。このため、このような自動化された半導体製造工程において、基板収納容器を使用するためには、半導体製造工程に配置された各種装置の適切な位置に基板収納容器を載置しなければならない。したがって、各種装置上の適切な位置上に基板収納容器を載置する際のガイドとなる、容器位置決め部を基板収納容器の底部に設けることが一般的であるが、この容器位置決め部には、基板収納容器と収納された基板の全重量がかかるため、半導体製造工程において基板収納容器を使用する際に、容器位置決め部が損傷する可能性があった。
【0004】
しかしながら、基板収納容器は、半導体ウェハ等の汚染を防止する目的から、各種金属イオンの混入を最大限低減した特殊な材料を使用して製造されており、容器位置決め部が損傷した際に基板収納容器の全体を取り替える場合には、取り替えにより生じるコストが嵩んでしまうという問題点があった。このため、特許文献1の基板収納容器においては、容器本体の底面にガイド部材を着脱可能に装着し、このガイド部材に容器位置決め部を設けて、容器位置決め部が損傷した際には、ガイド部材のみを取り替えて、取り替えに伴い生じるコストを低減可能にしていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−010574号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の発明においては、上述のガイド部材を容器本体に取り付けるにあたり、容器本体の底面に突設形成されたボス部と、ガイド部材に形成された外嵌用ボス孔とを嵌合させる必要があり、ガイド部材の着脱に相応の応力を要するものであり、容易に着脱できないという問題があった。本発明は以上の課題に鑑みてなされたものであり、容器本体の底面に着脱可能なボトムプレートに容器位置決め部を設けることにより、半導体製造工程において使用される各種装置上の適切かつ正確な位置に載置される基板収納容器であって、容器本体からのボトムプレートの着脱が容易である基板収納容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を行った。その結果、容器本体及びボトムプレートのいずれか一方に所定のスライド嵌合部及び係止部を、他方に、所定のスライド被嵌合部及び被係止部を設けることにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的には、本発明は以下のものを提供する。
【0008】
(1) 本発明の第一の態様は、1以上の基板を収納する基板収納容器であって、上記基板を収納可能な収納棚を設け、上記基板の取り出し及び収納が可能な開口部を設けた容器本体と、上記開口部を密閉可能な蓋体と、上記容器本体の底面に設けられ、少なくとも容器位置決め部を有するボトムプレートと、を有し、上記容器本体及び上記ボトムプレートのいずれか一方にはスライド嵌合部及び係止部を設け、他方には、スライド被嵌合部及び被係止部を設け、上記ボトムプレートが、スライド嵌合の終端位置で、前記係止部と前記被係止部とが嵌合された状態でロックされて係止されている、基板収納容器。
【0009】
(2) 本発明の第二の態様は、(1)に記載の基板収納容器であって、上記スライド嵌合部及び上記スライド被嵌合部は、上記ボトムプレートを、上記容器本体の底面をスライドして摺動するように規制し、上記容器位置決め部を長さ方向、幅方向、及び高さ方向に位置決めすることを特徴とする。
【0010】
(3) 本発明の第三の態様は、(1)又は(2)に記載の基板収納容器であって、上記容器本体の底面には、上記被係止部である係止爪及び/又は係止孔が少なくとも1つ設けられるとともに、ボトムプレートには、上記係止爪及び/又は上記係止孔に嵌合する、上記係止部であるフックが少なくとも1つ設けられ、上記容器本体と上記ボトムプレートとを終端位置までスライド嵌合させ、上記係止爪及び/又は上記係止孔と、上記フックとを嵌合させることで、上記ボトムプレートを固定することを特徴とする。
【0011】
(4) 本発明の第四の態様は、(1)から(3)のいずれかに記載の基板収納容器であって、上記ボトムプレートが、上記容器位置決め部に加えて、容器固定部及び容器識別部からなる群から選ばれる少なくとも一種を有することを特徴とする。
【0012】
(5) 本発明の第五の態様は、(1)から(4)のいずれかに記載の基板収納容器であって、上記ボトムプレートが、容器識別部、RF−ID保持部、及びラベル貼り付け部からなる群から選ばれる少なくとも一種を有する識別部材保持部材を連結可能な連結部を有することを特徴とする。
【0013】
(6) 本発明の第六の態様は、(1)から(5)のいずれかに記載の基板収納容器であって、上記ボトムプレートを構成する材料が、上記容器本体を構成する材料よりも摩擦係数の低い材料であることを特徴とする。
【0014】
(7) 本発明の第七の態様は、(6)に記載の基板収納容器であって、上記ボトムプレートを構成する材料が、1)ポリカーボネート樹脂にフッ素樹脂を分散させた複合材料、2)ポリブチレンテレフタレート、及び3)熱可塑性樹脂に、上記熱可塑性樹脂よりも摩擦係数の低い樹脂成分からなるコア部分とこれを被覆するシェル部分とを有する微粒子を分散させた複合材料、からなる群から選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする。
【0015】
(8) 本発明の第八の態様は、(1)から(7)のいずれかに記載の基板収納容器であって、上記ボトムプレートの上記容器位置決め部を上記ボトムプレートの他の部位から着脱可能な部材として構成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明の基板収納容器は、容器本体及びボトムプレートのいずれか一方にスライド嵌合部及び係止部を設け、他方には、スライド被嵌合部及び被係止部を設けて、ボトムプレートがスライド嵌合の終端位置で、係止部及び被係止部によりロックされて係止される。このため、スライド嵌合部及びスライド被嵌合部、並びに係止部及び被係止部が、対となってボトムプレートの動きを長さ方向、幅方向、及び高さ方向に規制するので、基板収納容器を、半導体製造工程において使用される各種装置上の適切かつ正確な位置に載置することができる。さらに、本発明においては、スライド嵌合機構及び係止機構により容器本体及びボトムプレートを係合させているので、容器位置決め部が損傷したときには、容器本体からボトムプレートを取り外すことを容易にできる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の基板収納容器に使用されるボトムプレートを示す図面である。
図2】本発明の基板収納容器に使用される容器本体を示す図面である。
図3】容器本体にボトムプレートがスライド嵌合する様子を示す図面である。
図4】容器本体を側面から見た図面である。
図5】容器本体にボトムプレートがスライド嵌合された状態を示す図面である。
図6】本発明の基板収納容器に識別部材保持部材を連結した態様を示す図面である。
図7】着脱可能な容器位置決め部材を取付け可能な基板収納容器を示す図面である。
図8】着脱可能な容器位置決め部材が、基板収納容器に着脱される様子を示す図面である。
図9】ボトムプレートが容器本体の底面の支持部で支持される態様を示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、本明細書の実施形態においては、全体を通じて、同一の部材には同一の符号を付している。本実施形態において、X方向とは、基板収納容器1の幅方向を指し、容器本体2の底面2b及び開口部と平行な方向を指し、Y方向とは、基板収納容器1の長さ方向を指し、容器本体2の底面2b及び両側面と平行な方向を指し、Z方向とは、基板収納容器1の高さ方向を指し、容器本体2の底面2bから天井面に向かう、底面2bと垂直な方向を指す。
【0019】
<基板収納容器>
本発明の基板収納容器1は、1以上の基板を収納するものであり、この基板の取り出し及び収納が可能な開口部21を有する容器本体2と、開口部21を密閉可能な蓋体と、容器本体2の底面2bに設けられ、少なくとも容器位置決め部31を有するボトムプレート3と、を有する。以下、本発明の実施形態の説明の都合上、容器本体2の底面2bを上方に配置した図面を用いて本発明の説明を行う。通常の使用状態では、図4において上下を反転させた状態となり、ボトムプレート3は、容器本体2の底面2bの下方に位置することとなる。
【0020】
[容器本体及び蓋体]
図2は、本発明の基板収納容器1に使用される容器本体2を示す図面であり、図3は、容器本体2に後述するボトムプレート3がスライド嵌合する様子を示す図面である。容器本体2には、その対向する内面に一対の支持部材が設けられ、支持部材には、基板の周縁部を水平に保持する基板支持部がZ方向に一定間隔で形成されて、基板を収納可能な収納棚を形成している。また、蓋体の裏面にも、基板の周縁部を保持する支持部材が取り付けられており、これも容器本体2の内面の支持部材と一体となって収納棚の一部を構成する。容器本体2の天井面には、ロボティックフランジが着脱自在に装着されていてもよい。容器本体2の天井面にこのロボティックフランジが装着された場合、ロボティックフランジが自動の天井搬送機に保持されることにより、基板収納容器1が工程内及び工程間を搬送される。
【0021】
図2及び図3に示すように、容器本体2の底面2bの、両側面側及び開口部21側には、スライド被嵌合部25が設けられており、これが嵌合ガイドとして機能して、後述するボトムプレート3の両側面側及び開口部21側の当接面をスライド嵌合部35として挟み込むように支持し、スライド嵌合できるようになっている。そして、容器本体2の底面2bの両側面側及び開口部21側に位置する、ボトムプレート3との当接面には、後述するボトムプレート3に設けられる係止部であるフック32と嵌合可能なように、係止爪22aや係止孔22bが設けられており、ボトムプレート3がスライド嵌合の終端位置に到達した段階で、フック32と、係止爪22a及び係止孔22b(図4も参照)とが嵌合して、ボトムプレート3がロック(固定)される。
【0022】
ここで、本実施形態の構成においては、ボトムプレート3と容器本体2の底面2bとは、一定の間隙を有する状態でスライド嵌合され、これにより、ボトムプレート3の摺動に過大な応力を要しないようになっている。しかしながら、そのような構成の場合、ボトムプレート3は、スライド嵌合部35でのみ支持されることになるため、半導体製造工程に配置される装置上に基板収納容器1を載置し、基板収納容器1及び収納された基板の重量が、後述する容器位置決め部31にかかった場合、ボトムプレート3が撓んで、基板収納容器1をZ方向に正確に位置決めができなくなる可能性がある。このため、本発明においては、スライド嵌合の終端位置で容器位置決め部31が配置される容器本体2の底面2b上の部位の近傍に、ボトムプレート3を支持する支持部が設けられていてもよい。図9は、ボトムプレート3が容器本体2の底面2bで支持される態様を示す図面である。図9に示すように、上述の支持部は、図9(b)に示すボトムプレート3がスライド嵌合の終端位置までスライドした状態で、ボトムプレートの係合部37と係合する係合リブ27であってもよい。このような構成を採用することにより、Z方向に対しても正確に、基板収納容器1の位置決めを行うことができる。
【0023】
蓋体は、例えば、蓋体本体と、蓋体本体の容器本体2側を覆うカバー部材とを有しており、蓋体が容器本体2に係合した状態で蓋体を容器本体2に固定する施錠機構が備えられていてもよい。施錠機構が設けられることにより、半導体製造工程において、半導体ウェハを容器本体2から取り出す必要があるときには、蓋体を除去して容器本体2の開口部21を開放しつつも、基板収納容器1を輸送する際等、基板収納容器1を密閉する必要がある際には、蓋体を容器本体2の開口部21に固定して、半導体ウェハの汚染等を防止することができる。
【0024】
[ボトムプレート]
図1は、本発明の基板収納容器1に使用されるボトムプレート3を示す図面であり、図4は、容器本体2を側面から見た図面であり、図5は、容器本体2にボトムプレート3がスライド嵌合された状態を示す図面である。図1及び図5に示すように、本発明の基板収納容器1は、容器本体2の底面2bに設けられ、少なくとも容器位置決め部31を有するボトムプレート3を有する。図1及び図3に示されるように、ボトムプレート3には、容器本体2の底面2bに設けられたスライド被嵌合部25と嵌合可能なスライド嵌合部35が設けられており、これらのスライド被嵌合部25及びスライド嵌合部35は、ボトムプレート3が、容器本体2の底面2bをスライドして摺動するように規制し、スライド嵌合の終端位置において、ボトムプレート3に設けられている容器位置決め部31をX方向、Y方向、及びZ方向に位置決めしている。ここで、上述したとおり、ボトムプレート3は、容器本体2の底面2bの両側面側及び開口部21側の当接面に、フック32を有しており(図1)、これが係止部として作用して、当接する容器本体2の底面2b側の被係止部である、係止爪22aや係止孔22bに嵌合してロックされ(図2図3、及び図4)、係止される状態になっている。これにより、終端位置までスライド嵌合した容器本体2とボトムプレート3とを固定することができ、スライド嵌合部35及びスライド被嵌合部25の有する機能と相俟って、容器位置決め部31の、特にY方向の効率的な位置決めに寄与している。
【0025】
なお、本実施形態においては、係止部及び被係止部として、フック32、並びに係止爪22a及び/又は係止孔22bを挙げて説明したが、係止部及び被係止部は、これらの態様に限定されるわけではなく、スライド嵌合される容器本体2とボトムプレート3とを係止することができるいずれの手段をも用いることができる。また、フック32、係止爪22a及び/又は係止孔22bの設置数も、特に限定されるわけではなく、一対以上の数で必要に応じて増減すればよい。本実施形態においては、容器本体2の底面2bにスライド被嵌合部25及び被係止部が設けられ、ボトムプレート3にスライド嵌合部35及び係止部が設けられる態様を説明したが、本発明はこのような態様に限定されるわけではなく、容器本体2の底面2bにスライド嵌合部及び係止部が設けられ、ボトムプレート3にスライド被嵌合部及び被係止部が設けられていてもよい。
【0026】
(容器位置決め部)
本発明においては、ボトムプレート3は容器位置決め部31を有している。図1に示すように、本実施形態において、容器位置決め部31は、半導体製造装置への当接面に向けて開口したVグルーブを有する直方体の形状を有しており、これがボトムプレート3の重心を略重心とする略正三角形の頂点に放射状に計3つ設けられている。そして、基板収納容器1が半導体製造装置上に載置された場合、Vグルーブの対向する傾斜面311が半導体製造装置上に配置された位置決め誘導部を両側から挟み込むようにして係合することにより、基板収納容器1を半導体製造装置上に位置決めする。
【0027】
なお、容器位置決め手段の具体的な構成としては、直方体にVグルーブが形成された構成に限定されるものではなく、使用する半導体製造装置等の仕様に応じて、円柱形、円筒形、楕円形の筒形、又は直方体以外の角柱形であってもよく、容器位置決め手段の凹部も、開口先端部側から内底末端部側に向け徐々に狭まるものであれば、Vグルーブ等の傾斜面を有するものでなくとも、湾曲面、冠球面、又は双曲面を有するものであってもよい。また、容器位置決め部の設置数も3個に限定されず、4個以上設けてもよいが、その場合においても、ボトムプレート3の重心を略重心とする略正多角形の頂点上に配置されていることが好ましい。
【0028】
図7は、着脱可能な容器位置決め部材31aを取付け可能な基板収納容器1を示す図面であり、図8は、着脱可能な容器位置決め部材31aが、基板収納容器1に着脱される様子を示す図面である。本実施形態の以上の説明においては、容器位置決め部31をボトムプレートの他の部位と一体成形した態様を説明したが、容器位置決め部31は、ボトムプレート3の他の部から着脱可能な部材として構成されていてもよい。図7及び図8に示すように、この場合、容器位置決め部材31aに、ボトムプレート3の嵌合孔36aに設けられる係合溝36a1と係合する、横方向に張り出した、好ましくは幅方向に変位可能な弾性部を有するように構成される係合片31a1を設けるとともに、容器本体2の容器位置決め部材取付け部には、容器位置決め部材31aの嵌合凹部36a2と嵌合可能な突起26を形成し、突起26及びボトムプレートの係合溝36a1で、容器位置決め部材31aを固定すればよい。
【0029】
(容器固定部及び容器識別部)
ボトムプレート3には、さらに、容器固定部34及び図示しない容器識別部が設けられていてもよい。容器固定部34は、基板収納容器1を半導体製造装置上に固定するためのものであり、例えば、ボトムプレート3の中心部に設けられる貫通孔であって、半導体製造装置の容器載置部上の凸部に着脱可能に係合するものを挙げることができる。また、ボトムプレート3は、基板収納容器を半導体製造装置上に搭載したときに、基板収納容器の種類や、基板の収納枚数等を検出するための容器識別部を有していてもよい。このような容器識別部の具体例としては、インフォパッドを挙げることができる。なお、ここで、インフォパッドとは、基板収納容器を基板の加工装置に搭載したときに、基板収納容器の種類や、基板の収納枚数等を検出するためのもので、容器本体の所定位置に配置された貫通孔や凹部であって、基板の加工装置の所定位置に配置されたセンサをプラグ非検出とする貫通孔や凹部があるのか、あるいは、貫通孔や凹部がインフォパッドプラグにより塞がれてセンサをプラグ検出とするのか、に応じ、ON/OFFの結果を返し、このON/OFFの結果の組み合わせによって、基板収納容器の仕様を確認可能なものである。
【0030】
(識別部材保持部材)
図6は、本発明の基板収納容器1に識別部材保持部材5を連結した態様を示す図面である。本発明においては、ボトムプレート3は、容器識別部、RF−ID保持部、及びラベル貼り付け部からなる群から選ばれる少なくとも一種を有する、識別部材保持部材5を連結可能な連結部33を有していてもよく、これが識別部材保持部材5の連結部53と連結可能となっていてもよい。ボトムプレート3が、識別部材保持部材5を介して、識別部材を保持していることにより、半導体製造工程における工程管理を容易なものとすることができる。なお、ここで、RF−IDとは、Radio Frequency IDentificationの略称であり、電波を使用してデータの読み取り・書き込みを行うための電子デバイスである。RF−IDを使用したシステムは、基板収納容器にRF−IDタグを個別に取り付けて応答器とするとともに、半導体製造工程内に、ホストコンピュータやワークステーション、質問器(リーダ/ライタ)等を配置することにより構成される。
【0031】
(ボトムプレートを構成するプラスチック材料)
以上に説明したとおり、ボトムプレート3は、スライド嵌合部35及びスライド被嵌合部25を介して、容器本体2にスライド嵌合することにより使用され、これによりボトムプレート3上の容器位置決め部31を容器本体2の所定位置に固定することができるものである。このため、ボトムプレート3が容器本体2の底面2bを摺動可能なものとするため、ボトムプレート3を構成する材料については、容器本体2を構成する材料と比較して、摩擦係数の低い材料を使用することが好ましい。ここで、基板収納容器1の容器本体2を構成する一般的なプラスチック材料よりも摩擦係数が低い材料として使用可能なプラスチック材料としては、具体的には、1)ポリカーボネート樹脂にフッ素樹脂を分散させた複合材料、2)ポリブチレンテレフタレート、及び3)熱可塑性樹脂に、上記熱可塑性樹脂より摩擦係数の低い樹脂成分からなるコア部分と、これを被覆するシェル部分とを有する微粒子を分散させた複合材料、からなる群から選ばれる少なくとも一種を挙げることができる。このような低摩擦係数のプラスチック材料は、ボトムプレート3の全体を構成していてもよいが、少なくとも容器位置決め部31が上記材料で構成されていればよく、ボトムプレート3のうち、図7及び図8に示した容器位置決め部材31aのみを上記材料で構成していてもよい。
【0032】
<基板収納容器の製造方法>
なお、容器本体2、蓋体、ボトムプレート3等は、金型を用いた射出成形の技術を使用することにより製造することができる。このうち、容器本体2及び蓋体は、例えば、ポリカーボネート、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリブチレンテレフタレート、ポリアセタール、液晶ポリマー、シクロオレフィンポリマー等の従来公知の合成樹脂から形成することができる。また、これらの樹脂に、カーボンパウダー、カーボン繊維、カーボンナノチューブ等を添加して、導電性を付与してもよい。
【0033】
本発明の基板収納容器1は、容器本体2及びボトムプレート3のいずれか一方にスライド嵌合部35及び係止部を設け、他方には、スライド被嵌合部25及び被係止部を設けて、ボトムプレート3がスライド嵌合の終端位置で、係止部及び被係止部によりロックされて係止される。このため、スライド嵌合部35及びスライド被嵌合部25、並びに係止部及び被係止部が、対となってボトムプレート3の動きを長さ方向、幅方向、及び高さ方向に規制するので、基板収納容器1を、半導体製造工程において使用される各種装置上の適切かつ正確な位置に載置することができる。さらに、本発明においては、スライド嵌合機構及び係止機構により容器本体2及びボトムプレート3を係合させているので、容器位置決め部が損傷したときには、容器本体2からボトムプレート3を容易に取り外すことができる。
【符号の説明】
【0034】
1 基板収納容器
2 容器本体
2b 底面
21 開口部
22a 係止爪
22b 係止孔
25 スライド被嵌合部
26 突起
27 係合リブ
3 ボトムプレート
31 容器位置決め部
31a 容器位置決め部材
31a1 係合片
32 フック
33 ボトムプレートの連結部
34 容器固定部
35 スライド嵌合部
36a 嵌合孔
36a1 係合溝
36a2 嵌合凹部
37 ボトムプレートの係合部
5 識別部材保持部材
51 容器識別部
53 識別部材保持部材の連結部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9