特許第6652321号(P6652321)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6652321
(24)【登録日】2020年1月27日
(45)【発行日】2020年2月19日
(54)【発明の名称】フッ素樹脂製包みガスケット
(51)【国際特許分類】
   F16J 15/10 20060101AFI20200210BHJP
   B29C 63/34 20060101ALI20200210BHJP
【FI】
   F16J15/10 L
   F16J15/10 G
   B29C63/34
【請求項の数】4
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2014-259754(P2014-259754)
(22)【出願日】2014年12月24日
(65)【公開番号】特開2016-14467(P2016-14467A)
(43)【公開日】2016年1月28日
【審査請求日】2017年8月4日
(31)【優先権主張番号】特願2013-273676(P2013-273676)
(32)【優先日】2013年12月28日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2014-122789(P2014-122789)
(32)【優先日】2014年6月13日
(33)【優先権主張国】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000229564
【氏名又は名称】株式会社バルカー
(73)【特許権者】
【識別番号】514004828
【氏名又は名称】株式会社新晃製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100141472
【弁理士】
【氏名又は名称】赤松 善弘
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 菜央子
(72)【発明者】
【氏名】宇井 潤一
(72)【発明者】
【氏名】大渕 啓矢
(72)【発明者】
【氏名】西村 和也
(72)【発明者】
【氏名】山田 茂人
【審査官】 谷口 耕之助
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭56−141251(JP,U)
【文献】 特開平05−269847(JP,A)
【文献】 特開平11−272169(JP,A)
【文献】 特開平03−143677(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16J 15/10
B29C 63/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状の中芯および当該中芯の上面と内周面と下面とを覆う外皮を有する包みガスケットであって、前記中芯が充填材を含有するフッ素樹脂からなるフッ素樹脂製ガスケットであり、前記充填材が、平均粒子径が1〜100μmである粒子状の充填材であり、前記フッ素樹脂製ガスケットにおける粒子状の充填材の含有率が3〜80質量%であり、前記粒子状の充填材が炭素系粒子、クレー、シリカ粒子、アルミナ粒子、炭化珪素粒子、ガラス粒子および金属粒子からなる群より選ばれた無機粒子であり、前記外皮が非多孔質フッ素樹脂製外皮であり、当該フッ素樹脂製ガスケットと当該外皮とが融着されて一体化され、当該フッ素樹脂製ガスケットと当該外皮との熱圧着強度が0.5N/mm以上であることを特徴とするフッ素樹脂製包みガスケット。
【請求項2】
前記外皮が充填材を含有する請求項1に記載のフッ素樹脂製包みガスケット。
【請求項3】
環状の中芯および当該中芯の上面と内周面と下面とを覆う外皮を有する包みガスケットの製造方法であって、前記中芯として平均粒子径が1〜100μmである粒子状の充填材を3〜80質量%の含有率で含有し、前記粒子状の充填材が炭素系粒子、クレー、シリカ粒子、アルミナ粒子、炭化珪素粒子、ガラス粒子および金属粒子からなる群より選ばれた無機粒子であるフッ素樹脂製ガスケットを用い、前記外皮として非多孔質フッ素樹脂製外皮を用い、当該外皮でフッ素樹脂製ガスケットの上面と内周面と下面とを覆い、当該フッ素樹脂製ガスケットと当該外皮とを熱圧着によって融着させて一体化させ、当該ガスケットと当該外皮との熱圧着強度を0.5N/mm以上に調整することを特徴とするフッ素樹脂製包みガスケットの製造方法。
【請求項4】
前記外皮が充填材を含有する請求項3に記載のフッ素樹脂製包みガスケットの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フッ素樹脂製包みガスケットに関する。さらに詳しくは、例えば、配管同士の接続部における配管用シール材などとして好適に使用することができるフッ素樹脂製包みガスケットおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
耐薬品性に優れたガスケットとして、フッ素樹脂からなるガスケットが提案されている。しかし、フッ素樹脂からなるガスケットは、高温時における応力緩和が大きいという欠点がある。
【0003】
耐熱性および耐薬品性に優れているガスケットとして、中芯材を有し、当該中芯材の外周がフッ素樹脂フィルムからなる外皮で被覆されている包みガスケットが知られている。当該包みガスケットは、例えば、配管同士の接続部における配管用シール材などとして用いられている。しかし、当該包みガスケットは、配管同士を接続する際に、その外皮が剥離しやすいため、配管などに装着する際の作業性に劣り、外皮と配管との接続部との間隙から配管内の内容物が漏洩するおそれがある。
【0004】
包みガスケットの外皮の剥離を抑制することができるガスケットとして、環状の芯材と当該芯材を覆うフッ素樹脂製の外皮材とから構成され、前記外皮材が、環状芯材の上面内周面、内周面および底面内周面を連続して覆い、環状芯材の上面および底面に部分的に接合されているガスケットが提案されている(例えば、特許文献1の請求項5参照)。しかし、前記ガスケットには、外皮材が環状芯材の上面および底面に概略線状に縫合によって接合されているため、当該ガスケットを製造するのに煩雑な縫合操作を必要とするのみならず、環状芯材がフッ素樹脂で構成されている場合、当該環状芯材が硬いため、当該環状芯材と外皮材とを縫合することが困難である。そこで、ガスケットの外皮材と環状芯材の上面および底面との縫合を容易にするために、環状芯材の上面および底面に延伸多孔質ポリテトラフルオロエチレンを用いることが提案されているが(例えば、特許文献1の請求項8)、当該ガスケットには多孔質ポリテトラフルオロエチレンが用いられていることから、応力緩和が著しいという欠点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−258212号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、多孔質のフッ素樹脂を使用する必要がなく、環状の中芯と、当該中芯の上面と内周面と下面とを覆う外皮とが縫合によらずに一体化され、応力緩和が小さく、シール性に優れた包みガスケットを提供することを目的とする。また、本発明は、多孔質のフッ素樹脂を使用する必要がなく、また環状の中芯と、当該中芯の上面と内周面と下面とを覆う外皮とが縫合によらずに一体化され、応力緩和が小さく、シール性に優れた包みガスケットを効率よく製造することができる包みガスケットの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、
(1) 環状の中芯および当該中芯の上面と内周面と下面とを覆う外皮を有する包みガスケットであって、前記中芯が充填材を含有するフッ素樹脂からなるフッ素樹脂製ガスケットであり、前記充填材が、平均粒子径が1〜100μmである粒子状の充填材であり、前記フッ素樹脂製ガスケットにおける粒子状の充填材の含有率が3〜80質量%であり、前記粒子状の充填材が炭素系粒子、クレー、シリカ粒子、アルミナ粒子、炭化珪素粒子、ガラス粒子および金属粒子からなる群より選ばれた無機粒子であり、前記外皮が非多孔質フッ素樹脂製外皮であり、当該フッ素樹脂製ガスケットと当該外皮とが融着されて一体化され、当該フッ素樹脂製ガスケットと当該外皮との熱圧着強度が0.5N/mm以上であることを特徴とするフッ素樹脂製包みガスケット、
(2) 前記外皮が充填材を含有する前記(1)に記載のフッ素樹脂製包みガスケット、
(3) 環状の中芯および当該中芯の上面と内周面と下面とを覆う外皮を有する包みガスケットの製造方法であって、前記中芯として平均粒子径が1〜100μmである粒子状の充填材を3〜80質量%の含有率で含有し、前記粒子状の充填材が炭素系粒子、クレー、シリカ粒子、アルミナ粒子、炭化珪素粒子、ガラス粒子および金属粒子からなる群より選ばれた無機粒子であるフッ素樹脂製ガスケットを用い、前記外皮として非多孔質フッ素樹脂製外皮を用い、当該外皮でフッ素樹脂製ガスケットの上面と内周面と下面とを覆い、当該フッ素樹脂製ガスケットと当該外皮とを熱圧着によって融着させて一体化させ、当該ガスケットと当該外皮との熱圧着強度を0.5N/mm以上に調整することを特徴とするフッ素樹脂製包みガスケットの製造方法、および
(4) 前記外皮が充填材を含有する前記(3)に記載のフッ素樹脂製包みガスケットの製造方法
に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、従来のように多孔質のフッ素樹脂を使用する必要がなく、環状の中芯と、当該中芯の上面と内周面と下面とを覆う外皮とが縫合によらずに一体化され、応力緩和が小さく、中芯と外皮との間のシール性に優れた包みガスケットが提供される。また、本発明によれば、多孔質のフッ素樹脂を使用する必要がなく、また環状の中芯と、当該中芯の上面と内周面と下面とを覆う外皮とが縫合によらずに一体化され、応力緩和が小さく、中芯と外皮との間のシール性に優れた包みガスケットを効率よく製造することができる包みガスケットの製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明のフッ素樹脂製包みガスケットの一実施態様を示す概略断面図である。
図2】本発明のフッ素樹脂製包みガスケットの他の一実施態様を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明のフッ素樹脂製包みガスケットは、前記したように、環状の中芯および当該中芯の上面と内周面と下面とを覆う外皮を有する包みガスケットであり、前記中芯が充填材を含有するフッ素樹脂からなるフッ素樹脂製ガスケットであり、前記外皮がフッ素樹脂製外皮であり、フッ素樹脂製ガスケットとフッ素樹脂製外皮とが熱圧着されていることを特徴とする。
【0011】
本発明のフッ素樹脂製包みガスケットは、例えば、フッ素樹脂製外皮でフッ素樹脂製ガスケットの上面と内周面と下面とを覆い、フッ素樹脂製ガスケットとフッ素樹脂製外皮とを熱圧着によって一体化させることによって製造することができる。
【0012】
環状の中芯として用いられるフッ素樹脂製ガスケットは、充填材を含有するフッ素樹脂で構成される。フッ素樹脂ガスケットは、例えば、フッ素樹脂および充填材を含有するガスケット形成用樹脂組成物を所定形状のシートに成形することによって製造することができる。
【0013】
フッ素樹脂製ガスケットに用いることができるフッ素樹脂としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体(ETFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、クロロトリフルオロエチレン−エチレン共重合体(ECTFE)などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのフッ素樹脂は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。これらのフッ素樹脂のなかでは、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)は、成形性および加工性に優れていることから好ましい。
【0014】
充填材は、無機充填材と有機充填材とに大別することができる。無機充填材および有機充填材は、それぞれ単独で用いてもよく、併用してもよい。
【0015】
無機充填材としては、例えば、黒鉛粒子、膨張黒鉛粒子、カーボンブラック粒子、活性炭粒子などの炭素系粒子、タルク、クレー、マイカ粒子、炭酸マグネシウム粒子、炭酸カルシウム粒子、酸化マグネシウム粒子、シリカ粒子、アルミナ粒子、炭化珪素粒子、窒化硅素粒子、窒化硼素粒子、珪酸カルシウム粒子、珪酸アルミニウム粒子、硫酸カルシウム粒子、硫酸バリウム粒子、ガラス粒子、金属粒子などの無機粒子;カーボンナノチューブ、ガラス繊維、炭素繊維、ロックウール、セラミック繊維、ジルコニア繊維などの無機繊維などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの無機充填材は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0016】
有機充填材としては、例えば、ポリエステル系樹脂粒子、ポリアミド系樹脂粒子、アクリル樹脂系樹脂粒子、ポリスチレン系樹脂粒子、塩化ビニル樹脂系樹脂粒子、酢酸ビニル樹脂系樹脂粒子、フェノール樹脂系樹脂粒子、エポキシ樹脂系樹脂粒子、シリコーン系樹脂粒子、ポリウレタン系樹脂粒子、ポリフェニレンサルファイド(PPS)粒子などの樹脂粒子;アラミド繊維、フッ素樹脂繊維、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、アクリル樹脂繊維、ポリオレフィン繊維などの樹脂繊維などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの有機充填材は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0017】
粒子状の充填材の平均粒子径は、特に限定されないが、フッ素樹脂製ガスケットの機械的強度を向上させる観点から、好ましくは1μm以上、より好ましくは2μm以上、さらに好ましくは3μm以上であり、フッ素樹脂製ガスケットの応力緩和性を向上させる観点から、好ましくは100μm以下、より好ましくは80μm以下、さらに好ましくは30μm以下である。粒子状の充填材の平均粒子径は、コールターカウンター法で測定したときの体積平均粒子径を意味する。前記コールターカウンター法は、充填材を懸濁させた電解質を細孔(アパチャ−)に通過させ、そのときに充填材の体積に比例して発生する電圧パルスの変化を読み取って粒子径を測定する方法であり、電圧パルスの高さを1つずつ計測することにより、充填材の体積分布ヒストグラムが得られる。
【0018】
繊維状の充填材の繊維長は、特に限定されないが、通常、フッ素樹脂製ガスケットの機械的強度および応力緩和性を向上させる観点から、好ましくは15mm以下、より好ましくは3〜10mmである。
【0019】
フッ素樹脂製ガスケットにおける充填材の含有率は、フッ素樹脂製ガスケットの機械的強度を向上させる観点から、好ましくは3質量%以上、より好ましくは5質量%以上、さらに好ましくは10質量%以上であり、フッ素樹脂製ガスケットの応力緩和性を向上させる観点から、好ましくは80質量%以下、より好ましくは75質量%以下、さらに70質量%以下である。
【0020】
フッ素樹脂製ガスケットには、本発明の目的が阻害されない範囲内で、例えば、テルペン樹脂、テルペン−フェノール樹脂、クマロン樹脂、クマロン−インデン樹脂、ロジンなどの粘着性付与剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、顔料などの着色剤などが適量で含まれていてもよい。
【0021】
フッ素樹脂製ガスケットの原料として用いられるガスケット形成用樹脂組成物は、フッ素樹脂、充填材、必要により、加工助剤、添加剤などを任意の順序で一度に、または少量ずつ複数回に分けて均一な組成を有するように混合することによって調製することができる。なお、均一な組成を有するガスケット形成用樹脂組成物を得るために、ガスケット形成用樹脂組成物に加工助剤を過剰量で添加し、十分に撹拌した後に、過剰の加工助剤を、例えば、濾過、揮散などの手段によって除去してもよい。
【0022】
フッ素樹脂製ガスケットは、例えば、ガスケット形成用樹脂組成物を押出成形などにより、所定形状のシートに成形することによって製造することができる。得られたフッ素樹脂製ガスケットは、必要により、常温で放置するか、あるいは適宜加熱することにより、当該フッ素樹脂製ガスケットに含まれている加工助剤などを揮散除去することができる。
【0023】
また、フッ素樹脂製ガスケットは、フッ素樹脂の融点以上の温度で加熱することによって焼成することができる。フッ素樹脂製ガスケットの加熱温度は、フッ素樹脂の種類によって異なるので一概には決定することができないが、フッ素樹脂製ガスケット全体を均一に焼成する観点およびフッ素樹脂の分解を回避する観点から、通常、340〜370℃程度であることが好ましい。
【0024】
以上のようにして得られるフッ素樹脂製ガスケットは、そのままの状態で用いてもよく、あるいは所望の形状に裁断した後に用いてもよい。
【0025】
フッ素樹脂製ガスケットの厚さは、応力緩和が小さく、シール性に優れた包みガスケットを得る観点から、好ましくは0.5〜5mm、より好ましくは1〜3mmである。
【0026】
本発明のフッ素樹脂製包みガスケットでは、環状の中芯としてフッ素樹脂製ガスケットが用いられ、当該フッ素樹脂製ガスケットの上面と内周面と下面とを覆うための外皮としてフッ素樹脂製外皮が用いられている。
【0027】
前記フッ素樹脂製外皮に用いられるフッ素樹脂としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体(ETFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、クロロトリフルオロエチレン−エチレン共重合体(ECTFE)などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのフッ素樹脂は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。これらのフッ素樹脂のなかでは、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)は、成形性および加工性の観点から好ましい。
【0028】
なお、フッ素樹脂製外皮には、応力緩和が小さく、シール性に優れた包みガスケットを得る観点から、充填材が含有されていてもよい。
【0029】
充填材としては、前記フッ素樹脂製ガスケットに用いられる無機充填材および有機充填材と同様のものを例示することができる。無機充填材および有機充填材は、それぞれ単独で用いてもよく、併用してもよい。
【0030】
フッ素樹脂製外皮における充填材の含有率は、フッ素樹脂製外皮の機械的強度を向上させる観点から、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは15質量%以上であり、フッ素樹脂製外皮の応力緩和性を向上させる観点から、好ましくは30質量%以下、より好ましくは25質量%以下、さらに好ましくは20質量%以下である。
【0031】
フッ素樹脂製外皮には、フッ素樹脂製ガスケットと同様に、本発明の目的が阻害されない範囲内で、例えば、テルペン樹脂、テルペン−フェノール樹脂、クマロン樹脂、クマロン−インデン樹脂、ロジンなどの粘着性付与剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、顔料などの着色剤などが適量で含まれていてもよい。
【0032】
フッ素樹脂製外皮の厚さは、フッ素樹脂製ガスケットと当該フッ素樹脂製外皮とを一体化させ、応力緩和が小さく、シール性に優れた包みガスケットを得る観点から、好ましくは50〜600μm、より好ましくは100〜400μmである。
【0033】
フッ素樹脂製外皮は、例えば、所定の大きさを有するフッ素樹脂製スリーブを旋盤などで切削することによって製造することができる。より具体的には、フッ素樹脂製外皮は、例えば、所定厚さを有する円筒状のフッ素樹脂製スリーブの外周面の所定位置に切削バイトを当てて切削し、フッ素樹脂製ガスケットの形状に対応する溝部を形成することによって得ることができる。前記操作によって得られるフッ素樹脂製外皮は、フッ素樹脂製ガスケットの上面と内周面と下面とを覆う形状を有する。
【0034】
また、本発明においては、フッ素樹脂製外皮としてフッ素樹脂製シートを用いることができる。フッ素樹脂製外皮としてフッ素樹脂製シートを用いる場合、リング状のフッ素樹脂製シートでフッ素樹脂製ガスケットの上面と内周面と下面とを覆うことにより、後述する図2に示される断面形状を有するフッ素樹脂製包みガスケットを得ることができる。
【0035】
本発明のフッ素樹脂製包みガスケットは、例えば、フッ素樹脂製ガスケットの形状に対応する溝部を有するフッ素樹脂製外皮を用い、当該フッ素樹脂製外皮の溝部にフッ素樹脂製ガスケットを装着した後、フッ素樹脂製ガスケットとフッ素樹脂製外皮とを熱圧着することによって製造することができる。フッ素樹脂製ガスケットとフッ素樹脂製外皮との熱圧着の程度は、フッ素樹脂製ガスケットとフッ素樹脂製外皮とが強固に一体化する程度であることが好ましい。
【0036】
フッ素樹脂製ガスケットとフッ素樹脂製外皮との熱圧着は、例えば、2枚の加熱プレートの間にフッ素樹脂製外皮の溝部にフッ素樹脂製ガスケットを装着したものを挟み、当該加熱プレートを加熱し、押圧することによって行なうことができる。
【0037】
フッ素樹脂製ガスケットとフッ素樹脂製外皮との熱圧着する際の加熱温度は、フッ素樹脂製ガスケットおよびフッ素樹脂製外皮に用いられるフッ素樹脂の種類などによって異なるので一概には決定することができないが、フッ素樹脂製ガスケットとフッ素樹脂製外皮とを強固に一体化させるとともにフッ素樹脂の熱劣化を抑制する観点から、前記フッ素樹脂の融点〜当該フッ素樹脂の分解温度の範囲内であることが好ましく、前記フッ素樹脂の融点よりも10℃高い温度〜当該フッ素樹脂の分解温度よりも10℃低い温度の範囲内であることがより好ましく、前記フッ素樹脂の融点よりも15℃高い温度〜当該フッ素樹脂の分解温度よりも15℃低い温度の範囲内であることがさらに好ましい。例えば、フッ素樹脂としてポリテトラフルオロエチレンを用いる場合、フッ素樹脂製ガスケットとフッ素樹脂製外皮との熱圧着する際の加熱温度は、327℃(ポリテトラフルオロエチレンの融点)〜370℃(ポリテトラフルオロエチレンの分解温度)の範囲内の温度であることが好ましく、337〜370℃であることがより好ましく、350〜370℃であることがさらに好ましい。
【0038】
フッ素樹脂製ガスケットとフッ素樹脂製外皮とを熱圧着する際の圧力は、フッ素樹脂製ガスケットとフッ素樹脂製外皮とを熱圧着する際の加熱温度、加熱時間などによって異なるので一概には決定することができないことから、フッ素樹脂製ガスケットとフッ素樹脂製外皮とが強固に一体化され、フッ素樹脂製ガスケットおよびフッ素樹脂製外皮に変形や変質が生じない範囲内で適宜調整することが好ましい。通常、フッ素樹脂製ガスケットとフッ素樹脂製外皮との熱圧着する際の圧力は、フッ素樹脂製ガスケットとフッ素樹脂製外皮とを強固に一体化させるとともに、フッ素樹脂製ガスケットおよびフッ素樹脂製外皮に変形や変質が生じないようにする観点から、好ましくは0.03〜0.2MPa、より好ましくは0.08〜0.12MPaである。
【0039】
フッ素樹脂製ガスケットとフッ素樹脂製外皮とを熱圧着させるとき、フッ素樹脂製外皮がフッ素樹脂製ガスケットの上面および下面で熱圧着される面積は、それぞれ、フッ素樹脂製ガスケットとフッ素樹脂製外皮とを強固に一体化させる観点から、フッ素樹脂製外皮がフッ素樹脂製ガスケットの上面および下面で接触している部分の面積の10〜100%であることが好ましい。
【0040】
フッ素樹脂製ガスケットとフッ素樹脂製外皮との熱圧着を数カ所に分けて行なう場合、フッ素樹脂製ガスケットとフッ素樹脂製外皮とが熱圧着される箇所は、等間隔ではなく、偏在していてもよい。しかし、フッ素樹脂製ガスケットとフッ素樹脂製外皮とを均一に一体化させる観点から、フッ素樹脂製ガスケットおよびフッ素樹脂製外皮の周端部で4〜8カ所にて等間隔でフッ素樹脂製ガスケットとフッ素樹脂製外皮とが熱圧着されていることが好ましい。
【0041】
以上のようにしてフッ素樹脂製ガスケットとフッ素樹脂製外皮とを熱圧着させることにより、フッ素樹脂製ガスケットとフッ素樹脂製外皮とが一体化したフッ素樹脂製包みガスケットを得ることができる。
【0042】
以下に、本発明のフッ素樹脂製包みガスケットの一実施態様の概略断面図を図1に示すが、本発明は、当該実施態様のみに限定されるものではない。
【0043】
図1に示されるフッ素樹脂製包みガスケットにおいて、中芯として充填材を含有するフッ素樹脂からなるフッ素樹脂製ガスケット1が用いられている。フッ素樹脂製ガスケット1の周囲には、フッ素樹脂製ガスケット1の上面と内周面と下面とを覆うようにフッ素樹脂製外皮2が形成されている。フッ素樹脂製ガスケット1とフッ素樹脂製外皮2とは、両者の接触面で熱圧着によって一体化されている。
【0044】
図1に示されるフッ素樹脂製包みガスケットでは、環状溝3が形成されている。環状溝3は、必ずしも形成されていなくてもよい。なお、環状溝3には、必要により、フッ素樹脂製ガスケット1とフッ素樹脂製外皮2とを接着するための接着剤(図示せず)が充填されていてもよく、充填材(図示せず)が充填されていてもよい。また、環状溝3内の気体や液体などをフッ素樹脂製包みガスケットの外部に排出するために、環状溝3とフッ素樹脂製包みガスケットの外部とは、径方向に連通する貫通孔で接続されていてもよい。
【0045】
図1に示されるフッ素樹脂製包みガスケットでは、環状溝3が形成されているので、例えば、フッ素樹脂製包みガスケットをフランジ間で締付け、配管内に高圧ガスを通気することによって使用したとき、当該高圧ガスは、フッ素樹脂製外皮2を透過し、環状溝3の内圧が高くなることがある。このとき、フランジの開放時に環状溝3内のガスがフッ素樹脂製ガスケット1とフッ素樹脂製外皮2との境界面を介して外部に吹き抜けるおそれがある。
【0046】
これに対して、フッ素樹脂製ガスケットとフッ素樹脂製外皮とを強固に熱圧着させ、フッ素樹脂製ガスケットとフッ素樹脂製外皮との熱圧着強度を0.5N/mm以上となるように調整した場合には、フッ素樹脂製包みガスケットの環状溝3内のガスがフッ素樹脂製ガスケット1とフッ素樹脂製外皮2との境界面を介して外部に吹き抜けることを抑制することができる。なお、フッ素樹脂製ガスケットとフッ素樹脂製外皮との熱圧着強度は、以下の実施例に記載の方法に準じて測定したときの値である。また、環状溝3に接着剤、充填材などをあらかじめ充填しておいた場合には、環状溝3内に高圧ガスが含浸することを防止することができるので、フランジの開放時に環状溝3内からガスがフッ素樹脂製包みガスケットの外部に吹き抜けることを防止することができる。
【0047】
また、環状溝3内の気体や液体などをフッ素樹脂製包みガスケットの外部に排出するために、環状溝3とフッ素樹脂製包みガスケットの外部とは、径方向に連通する貫通孔で接続されていてもよい。このように貫通孔を形成させた場合には、当該貫通孔を介し、環状溝3内に存在している気体や液体などを随時フッ素樹脂製包みガスケットの外部に排出することができる。
【0048】
また、環状溝3内の気体や液体などをフッ素樹脂製包みガスケットの外部に排出するために、例えば、2〜4枚程度の複数枚のガスケットを重ね合せることによってフッ素樹脂製ガスケット1を形成させてもよい。このように複数枚のガスケットを重ね合せることによってフッ素樹脂製ガスケット1を形成させた場合には、重ね合わされたガスケットの接触面を介し、環状溝3内の気体や液体などを随時フッ素樹脂製包みガスケットの外部に排出することができる。この場合、重ね合わされるガスケットの接触面には、環状溝3内の気体や液体などを効率よくフッ素樹脂製包みガスケットの外部に排出するための溝や凹凸などが設けられていてもよい。
【0049】
図2は、本発明のフッ素樹脂製包みガスケットの他の一実施態様を示す概略断面図である。図2に示されるフッ素樹脂製包みガスケットは、図1に示されるフッ素樹脂製包みガスケットと同様に、中芯として充填材を含有するフッ素樹脂からなるフッ素樹脂製ガスケット1が用いられており、フッ素樹脂製ガスケット1の上面と内周面と下面とを覆うようにフッ素樹脂製外皮2が形成されている。フッ素樹脂製ガスケット1とフッ素樹脂製外皮2とは、両者の接触面で熱圧着によって一体化されている。
【0050】
図1に示されるフッ素樹脂製包みガスケットで形成されている環状溝3の断面形状は三角形であるのに対し、図2に示されるフッ素樹脂製包みガスケットで形成されている環状溝3の断面形状は四角形である点で両者は相違しているが、図2に示されるフッ素樹脂製包みガスケットは、他の点において図1に示されるフッ素樹脂製包みガスケットと同様であればよい。また、フッ素樹脂製包みガスケットに形成されている環状溝3の断面形状は、図1に示される三角形および図2に示される四角形以外に、半円形であってもよく、本発明は、当該環状溝3の断面形状によって限定されるものではない。
【0051】
以上のように構成される本発明のフッ素樹脂製包みガスケットは、中芯として充填材を含有するフッ素樹脂からなるフッ素樹脂製ガスケットが用いられているので、耐久性に優れており、応力緩和が小さいという利点を有する。また、フッ素樹脂製ガスケットの樹脂成分がフッ素樹脂であることから、当該フッ素樹脂製ガスケットが劣化しがたいので、当該フッ素樹脂製ガスケットの劣化によって配管内の内容物が漏出することを防止することができる。
【0052】
また、本発明のフッ素樹脂製包みガスケットは、フッ素樹脂製ガスケットとフッ素樹脂製外皮とがいずれも実質的に同一のフッ素樹脂で形成されているので、フッ素樹脂製ガスケットとフッ素樹脂製外皮とが熱圧着によって強固に一体化することから、フッ素樹脂製外皮がフッ素樹脂製ガスケットから剥離することを防止することができる。
【0053】
さらに、本発明のフッ素樹脂製包みガスケットは、フッ素樹脂製ガスケットとフッ素樹脂製外皮とが熱圧着によって一体化されているので、フッ素樹脂製ガスケットとフッ素樹脂製外皮とが滑ることを防止することができる。また、本発明のフッ素樹脂製包みガスケットは、フッ素樹脂製ガスケットとフッ素樹脂製外皮とが熱圧着されていないフッ素樹脂製包みガスケットと対比して、配管などに対するシール性に優れており、さらにフッ素樹脂製外皮の圧壊が生じがたいという利点を有する。
【0054】
したがって、本発明のフッ素樹脂製包みガスケットは、従来のように多孔質のフッ素樹脂を使用する必要がなく、応力緩和が小さいので、例えば、配管同士の接続部における配管用シール材などとして好適に使用することができる。
【実施例】
【0055】
次に本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されるものではない。
【0056】
実施例1
充填材としてクレー粉末〔昭和KDE(株)製、品番:NK−300、平均粒子径:10μm〕を用い、ガスケットにおけるクレー粉末の含有率が60質量%となるように、当該クレー粉末とポリテトラフルオロエチレン(PTFE)ファインパウダー〔ダイキン工業(株)製、品番:F104〕とを混合し、得られた混合物1350gと炭化水素系有機溶媒〔エクソンモービル(有)製、商品名:アイソパーG〕250gとをニーダーで5分間混合した後、ダイの開口部のサイズが300mm×20mmの押出機で押し出すことにより、プリフォームを作製した。
【0057】
次に、ロール速度が6m/minに、ロールの温度が40℃に調整された二軸ロール(ロールの直径:700mm、ロールの間隔:20mm)、二軸ロール(ロールの直径:700mm、ロールの間隔:10mm)、二軸ロール(ロールの直径:700mm、ロールの間隔:5mm)および二軸ロール(ロールの直径:700mm、ロールの間隔:3mm)に、前記で得られたプリフォームを順次通過させることにより、厚さ3mmのシートを作製した。
【0058】
前記で得られたシートを室温(約25℃)の雰囲気中で24時間放置することによってシートに含まれている溶媒を揮散除去した後、このシートを電気炉内に入れ、350℃で3時間焼成することにより、JIS 10K 100Aのガスケット寸法を有するフッ素樹脂製ガスケットを得た。
【0059】
前記で得られたフッ素樹脂製ガスケットに、図1に示される断面形状を有し、厚さが0.4mmのフッ素樹脂(ポリテトラフルオロエチレン)製外皮を装着し、当該外皮が装着されたフッ素樹脂製ガスケットを350℃に加熱した平坦な2枚の金属プレートの間に挟み、0.1MPaの圧力で10分間加熱し、フッ素樹脂製ガスケットの全面にフッ素樹脂製外皮を融着させることにより、フッ素樹脂製包みガスケットを作製した。
【0060】
次に、前記で得られたフッ素樹脂製包みガスケットに対し、以下の条件で熱サイクル試験を行なったところ、シール可能内圧は2.5MPa以上であったことから、前記で得られたフッ素樹脂製包みガスケットは、シール性に優れていることが確認された。
【0061】
〔熱サイクル試験〕
フッ素樹脂製包みガスケットを2つの炭素鋼(S25C)製のフランジ間に装着し、合金鋼(SNB7)製のボルトでガスケット締付け面圧が25MPaとなるように締付けることにより、供試体を作製した。前記で得られた供試体を室温から加熱し、200℃の温度で48時間保持し、室温に冷却する一連の操作を1サイクルとする熱サイクル試験を3サイクル行なった後、水没法にてフッ素樹脂製包みガスケットとフランジとの間から漏洩した空気量が1.7×10-4Pa・m3/sとなるのに要するシール可能面圧を0.5MPa刻みで上昇させて測定した。
【0062】
実施例2
実施例1において、フッ素樹脂製ガスケットにおけるクレー粉末の含有率が10質量%となるように調整したこと以外は、実施例1と同様にしてフッ素樹脂製包みガスケットを作製した。
【0063】
次に、前記で得られたフッ素樹脂製包みガスケットの熱サイクル試験を実施例1と同様にして行なったところ、シール可能内圧は2.5MPa以上であったことから、前記で得られたフッ素樹脂製包みガスケットは、シール性に優れていることが確認された。
【0064】
実施例3
実施例1において、フッ素樹脂製ガスケットにおけるクレー粉末の含有率が20質量%となるように調整したこと以外は、実施例1と同様にしてフッ素樹脂製包みガスケットを作製した。
【0065】
次に、前記で得られたフッ素樹脂製包みガスケットの熱サイクル試験を実施例1と同様にして行なったところ、シール可能内圧は2.5MPa以上であったことから、前記で得られたフッ素樹脂製包みガスケットは、シール性に優れていることが確認された。
【0066】
実施例4
実施例1において、フッ素樹脂製ガスケットにおけるクレー粉末の含有率が40質量%となるように調整したこと以外は、実施例1と同様にしてフッ素樹脂製包みガスケットを作製した。
【0067】
次に、前記で得られたフッ素樹脂製包みガスケットの熱サイクル試験を実施例1と同様にして行なったところ、シール可能内圧は2.5MPa以上であったことから、前記で得られたフッ素樹脂製包みガスケットは、シール性に優れていることが確認された。
【0068】
実施例5
実施例1において、フッ素樹脂製ガスケットにおけるクレー粉末の含有率が50質量%となるように調整したこと以外は、実施例1と同様にしてフッ素樹脂製包みガスケットを作製した。
【0069】
次に、前記で得られたフッ素樹脂製包みガスケットの熱サイクル試験を実施例1と同様にして行なったところ、シール可能内圧は2.5MPa以上であったことから、前記で得られたフッ素樹脂製包みガスケットは、シール性に優れていることが確認された。
【0070】
実施例6
実施例1において、充填材としてガラス粒子(平均粒子径:30μm)を用い、フッ素樹脂製ガスケットにおける充填材(ガラス粒子)の含有率が20質量%となるように調整したこと以外は、実施例1と同様にしてフッ素樹脂製包みガスケットを作製した。
【0071】
次に、前記で得られたフッ素樹脂製包みガスケットの熱サイクル試験を実施例1と同様にして行なったところ、シール可能内圧は2.5MPa以上であったことから、前記で得られたフッ素樹脂製包みガスケットは、シール性に優れていることが確認された。
【0072】
実施例7
実施例1において、充填材としてガラス粒子(平均粒子径:100μm)を用い、フッ素樹脂製ガスケットにおける充填材(ガラス粒子)の含有率が20質量%となるように調整したこと以外は、実施例1と同様にしてフッ素樹脂製包みガスケットを作製した。
【0073】
次に、前記で得られたフッ素樹脂製包みガスケットの熱サイクル試験を実施例1と同様にして行なったところ、シール可能内圧は2.5MPa以上であったことから、前記で得られたフッ素樹脂製包みガスケットは、シール性に優れていることが確認された。
【0074】
実施例8
実施例1において、充填材としてガラス粒子の代わりに炭化ケイ素粒子(平均粒子径:50μm)を用い、フッ素樹脂製ガスケットにおける充填材(炭化ケイ素粒子)の含有率を10質量%に調整したこと以外は、実施例1と同様にしてフッ素樹脂製包みガスケットを作製した。
【0075】
次に、前記で得られたフッ素樹脂製包みガスケットの熱サイクル試験を実施例1と同様にして行なったところ、シール可能内圧は2.5MPa以上であったことから、前記で得られたフッ素樹脂製包みガスケットは、シール性に優れていることが確認された。
【0076】
実施例9
実施例1において、充填材としてガラス粒子の代わりにアルミナ粒子(平均粒子径:50μm)を用い、フッ素樹脂製ガスケットにおける充填材(アルミナ粒子)の含有率を10質量%に調整したこと以外は、実施例1と同様にしてフッ素樹脂製包みガスケットを作製した。
【0077】
次に、前記で得られたフッ素樹脂製包みガスケットの熱サイクル試験を実施例1と同様にして行なったところ、シール可能内圧は2.5MPa以上であったことから、前記で得られたフッ素樹脂製包みガスケットは、シール性に優れていることが確認された。
【0078】
実施例10
実施例1において、充填材としてガラス粒子の代わりにシリカ粒子(平均粒子径:50μm)を用い、フッ素樹脂製ガスケットにおける充填材(シリカ粒子)の含有率を10質量%に調整したこと以外は、実施例1と同様にしてフッ素樹脂製包みガスケットを作製した。
【0079】
次に、前記で得られたフッ素樹脂製包みガスケットの熱サイクル試験を実施例1と同様にして行なったところ、シール可能内圧は2.5MPa以上であったことから、前記で得られたフッ素樹脂製包みガスケットは、シール性に優れていることが確認された。
【0080】
実施例11
実施例1において、フッ素樹脂製ガスケットの面積の10%(融着率:10%)にフッ素樹脂製外皮を融着させたこと以外は、実施例1と同様にしてフッ素樹脂製包みガスケットを作製した。
【0081】
次に、前記で得られたフッ素樹脂製包みガスケットの熱サイクル試験を実施例1と同様にして行なったところ、シール可能内圧は2.5MPa以上であったことから、前記で得られたフッ素樹脂製包みガスケットは、シール性に優れていることが確認された。
【0082】
実施例12
実施例1において、フッ素樹脂製ガスケットの面積の5%(融着率:5%)にフッ素樹脂製外皮を融着させたこと以外は、実施例1と同様にしてフッ素樹脂製包みガスケットを作製した。
【0083】
次に、前記で得られたフッ素樹脂製包みガスケットの熱サイクル試験を実施例1と同様にして行なったところ、シール可能内圧は1.5MPaであったことから、前記で得られたフッ素樹脂製包みガスケットは、シール性に優れていることが確認された。
【0084】
実施例13
実施例1において、フッ素樹脂製外皮として、図1に示される断面形状を有し、厚さが0.4mmのフッ素樹脂製外皮〔ガラス繊維(繊維長:5μm)の含有率:20質量%〕を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてフッ素樹脂製包みガスケットを作製した。
【0085】
次に、前記で得られたフッ素樹脂製包みガスケットの熱サイクル試験を実施例1と同様にして行なったところ、シール可能内圧は2.5MPa以上であったことから、前記で得られたフッ素樹脂製包みガスケットは、シール性に優れていることが確認された。
【0086】
実施例14
実施例1において、フッ素樹脂製外皮として、図1に示される断面形状を有し、厚さが0.4mmのフッ素樹脂製外皮〔炭素繊維(繊維長:5μm)の含有率:30質量%〕を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてフッ素樹脂製包みガスケットを作製した。
【0087】
次に、前記で得られたフッ素樹脂製包みガスケットの熱サイクル試験を実施例1と同様にして行なったところ、シール可能内圧は2.5MPa以上であったことから、前記で得られたフッ素樹脂製包みガスケットは、シール性に優れていることが確認された。
【0088】
実施例15
実施例1において、フッ素樹脂製外皮として、図1に示される断面形状を有し、厚さが0.4mmのフッ素樹脂製外皮〔ガラス繊維(繊維長:5μm)と炭素繊維(繊維長:5μm)との混合繊維の含有率:15質量%〕を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてフッ素樹脂製包みガスケットを作製した。
【0089】
次に、前記で得られたフッ素樹脂製包みガスケットの熱サイクル試験を実施例1と同様にして行なったところ、シール可能内圧は2.5MPa以上であったことから、前記で得られたフッ素樹脂製包みガスケットは、シール性に優れていることが確認された。
【0090】
実施例16
実施例1において、フッ素樹脂製外皮として、図1に示される断面形状を有し、厚さが0.4mmのフッ素樹脂製外皮〔銅−錫合金粒子(平均粒子径:10μm)の含有率:30質量%)〕を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてフッ素樹脂製包みガスケットを作製した。
【0091】
次に、前記で得られたフッ素樹脂製包みガスケットの熱サイクル試験を実施例1と同様にして行なったところ、シール可能内圧は2.5MPa以上であったことから、前記で得られたフッ素樹脂製包みガスケットは、シール性に優れていることが確認された。
【0092】
実施例17
実施例1において、フッ素樹脂製外皮として、図1に示される断面形状を有し、厚さが0.4mmのフッ素樹脂製外皮〔炭素繊維(繊維長:5μm)の含有率:10質量%〕を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてフッ素樹脂製包みガスケットを作製した。
【0093】
次に、前記で得られたフッ素樹脂製包みガスケットの熱サイクル試験を実施例1と同様にして行なったところ、シール可能内圧は2.5MPa以上であったことから、前記で得られたフッ素樹脂製包みガスケットは、シール性に優れていることが確認された。
【0094】
比較例1
実施例1において、フッ素樹脂製ガスケットに充填材を使用しなかったこと以外は、実施例1と同様にしてフッ素樹脂製包みガスケットを作製した。
【0095】
次に、前記で得られたフッ素樹脂製包みガスケットの熱サイクル試験を実施例1と同様にして行なったところ、シール可能内圧は1MPaであったことから、前記で得られたフッ素樹脂製包みガスケットは、シール性に劣っていることが確認された。
【0096】
以上の結果から、各実施例で得られたフッ素樹脂製包みガスケットは、充填材を含有するフッ素樹脂製ガスケットが用いられているので、応力緩和が小さいことから、優れたシール性が維持されることがわかる。
【0097】
実施例18
充填材としてクレー粉末〔昭和KDE(株)製、品番:NK−300、平均粒子径:10μm〕を用い、ガスケットにおけるクレー粉末の含有率が60質量%となるように、当該クレー粉末とポリテトラフルオロエチレン(PTFE)ファインパウダー〔ダイキン工業(株)製、品番:F104〕とを混合し、得られた混合物1350gと炭化水素系有機溶媒〔エクソンモービル(有)製、商品名:アイソパーG〕250gとをニーダーで5分間混合した後、ダイの開口部のサイズが300mm×20mmの押出機で押し出すことにより、プリフォームを作製した。
【0098】
次に、ロール速度が6m/minに、ロールの温度が40℃に調整された二軸ロール(ロールの直径:700mm、ロールの間隔:20mm)、二軸ロール(ロールの直径:700mm、ロールの間隔:10mm)、二軸ロール(ロールの直径:700mm、ロールの間隔:5mm)および二軸ロール(ロールの直径:700mm、ロールの間隔:3mm)に、前記で得られたプリフォームを順次通過させることにより、厚さ2mmのシートを作製した。
【0099】
前記で得られたシートを室温(約25℃)の雰囲気中で24時間放置することによってシートに含まれている溶媒を揮散除去した後、このシートを電気炉内に入れ、350℃で3時間焼成することにより、JIS 10K 25Aのガスケット寸法を有するフッ素樹脂製ガスケットを得た。
【0100】
前記で得られたフッ素樹脂製ガスケットに図1に示される断面形状を有し、厚さが0.2mmのフッ素樹脂製外皮を装着し、当該外皮が装着されたフッ素樹脂製ガスケットを350℃に加熱した平坦な2枚の金属プレートの間に挟んで加熱することによってフッ素樹脂製ガスケットの全面にフッ素樹脂製外皮を融着させ、表1に示す熱圧着強度を有するフッ素樹脂製包みガスケットを作製した。なお、熱圧着強度は、以下の方法に基づいて測定した。
【0101】
〔熱圧着強度の測定方法〕
熱圧着強度の測定には、精密万能試験機〔(株)島津製作所製、商品名:オートグラフAG−50KNX型〕を用いた。
【0102】
フッ素樹脂製包みガスケットのフッ素樹脂製外皮の一部(長さ:約10mm)を剥がし、剥がしたフッ素樹脂製外皮を精密万能試験機の上チャックに掴持し、ガスケットの剥がした面をしたチャックに掴持し、30mm/minの引張速度で引張試験を行ない、10〜20mmのチャック間の移動距離における最大荷重(N)を求め、当該最大荷重(N)を、フッ素樹脂製外皮を引き剥がした距離(mm)で除することにより、熱圧着強度(N/mm)を求めた。
【0103】
次に、前記で得られたフッ素樹脂製包みガスケットの環状溝からのガスの漏出の有無を以下の方法に基づいて評価した。その結果を表1に示す。
【0104】
〔ガスの漏出の有無の評価〕
フッ素樹脂製包みガスケットを試験用プラテン(規格:JIS B2490)に装着し、面圧が20MPaとなるように圧縮荷重を負荷した後、内圧が2.0MPaとなるようにヘリウムガスを負荷し、1時間静置した後、内圧および圧縮荷重を除去した。試験用プラテンからガスケットを取り出し、フッ素樹脂製包みガスケットのフッ素樹脂製外皮とガスケットとの間に環状溝から外部に至る剥がれがあるかどうかを目視にて観察し、以下の評価基準に基づいて評価した。
【0105】
なお、フッ素樹脂製包みガスケットのフッ素樹脂製外皮とガスケットとの間に環状溝から外部に至る剥がれが認められたとき、ガスの漏出があると評価した。
(評価基準)
◎:前記剥がれが認められない。
×:前記剥がれが認められる。
【0106】
【表1】
【0107】
実施例19
実施例18において、フッ素樹脂製ガスケットのガスケット寸法をJIS 10K 25AからJIS 10K 50Aに変更したことを除き、実施例18と同様にしてフッ素樹脂製包みガスケットを作製し、熱圧着強度を調べ、ガスの漏出の有無の評価を行なった。その結果を表2に示す。
【0108】
【表2】
【0109】
実施例20
実施例18において、フッ素樹脂製ガスケットのガスケット寸法をJIS 10K 25AからJIS 10K 100Aに変更したことを除き、実施例18と同様にしてフッ素樹脂製包みガスケットを作製し、熱圧着強度を調べ、ガスの漏出の有無の評価を行なった。その結果を表3に示す。
【0110】
【表3】
【0111】
実施例21
実施例18において、フッ素樹脂製ガスケットのガスケット寸法をJIS 10K 25AからJIS 10K 150Aに変更したことを除き、実施例18と同様にしてフッ素樹脂製包みガスケットを作製し、熱圧着強度を調べ、ガスの漏出の有無の評価を行なった。その結果を表4に示す。
【0112】
【表4】
【0113】
実施例22
実施例18において、フッ素樹脂製ガスケットのガスケット寸法をJIS 10K 25AからJIS 10K 175Aに変更したことを除き、実施例18と同様にしてフッ素樹脂製包みガスケットを作製し、熱圧着強度を調べ、ガスの漏出の有無の評価を行なった。その結果を表5に示す。
【0114】
【表5】
【0115】
実施例23
実施例18において、フッ素樹脂製ガスケットのガスケット寸法をJIS 10K 25AからJIS 10K 200Aに変更したことを除き、実施例18と同様にしてフッ素樹脂製包みガスケットを作製し、熱圧着強度を調べ、ガスの漏出の有無の評価を行なった。その結果を表6に示す。
【0116】
【表6】
【0117】
実施例18〜23の結果から、図1に示される断面形状を有し、環状溝が形成されているフッ素樹脂製包みガスケットを用いる場合には、フッ素樹脂製外皮とガスケットとの熱着強度が0.5N/mm以上となるように調整することにより、フッ素樹脂製包みガスケットの環状溝からのガスの漏出を抑制することができることがわかる。
【符号の説明】
【0118】
1 フッ素樹脂製ガスケット
2 フッ素樹脂製外皮
3 環状溝
図1
図2