(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記水溶性溶剤が、プロピレングリコール、グリセリン、ジエチレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、及びジエチレングリコールモノブチルエーテルからなる群より選ばれた少なくとも1種である請求項1に記載の基紙及び感圧接着剤層を有する再剥離性圧着記録用紙の感圧接着剤層用の水性インクジェット用インク組成物。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の基紙及び感圧接着剤層を有する再剥離性圧着記録用紙の感圧接着剤層用の水性インクジェット用インク組成物は、アニオン性基含有樹脂被覆顔料、エマルジョン、水溶性溶剤、及び水を含有する。
以下、本発明の基紙及び感圧接着剤層を有する再剥離性圧着記録用紙の感圧接着剤層用の水性インクジェット用インク組成物に含まれる各成分について説明する。
【0019】
<アニオン性基含有樹脂被覆顔料>
本発明のアニオン性基含有樹脂被覆顔料は、アニオン性基含有樹脂に被覆された顔料である。
【0020】
<顔料>
本発明の顔料としては、特に限定されるものではないが、一般にインクジェット記録液で使用される各種の無機顔料や有機顔料を挙げることができる。無機顔料としては、例えば、カーボンブラック、チタンブラック、チタンホワイト、硫化亜鉛、ベンガラなどが挙げられ、有機顔料としては、例えば、キナクリドン系顔料、ジオキサジン系顔料、フタロシアニン系顔料、アントラピリミジン系顔料、アンサンスロン系顔料、インダンスロン系顔料、フラバンスロン系顔料、ペリレン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、ペリノン系顔料、キノフタロン系顔料、アントラキノン系顔料、チオインジゴ系顔料、ベンツイミダゾロン系顔料、イソインドリノン系顔料、アゾメチン系顔料、アゾ系顔料などを挙げることができる。顔料は、少なくとも1種を用いればよく、2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0021】
<アニオン性基含有樹脂>
本発明のアニオン性基含有樹脂としては、通常のインキや塗料の顔料分散用やバインダーとして利用できるアニオン性基含有樹脂であって、塩基性化合物の存在下で水性媒体中に溶解できるものであれば特に制限はないが、カルボキシル基、スルホン酸基、ホスホノ基(−P(=O)(OH
2))などのアニオン性基の1種又は2種以上を含有する樹脂が好ましい。
【0022】
前記アニオン性基含有樹脂は、さらに、主に顔料との吸着性を向上させるための疎水性部分、及び/又は、主に水性媒体中での凝集防止に有効な作用を得るための親水性部分を分子中に有することが好ましい。分子内に導入する疎水性部分としては、長鎖アルキル基、脂環族又は芳香族の環状炭化水素基などの疎水性基が挙げられ、分子内に導入する親水性部分としては、(ポリ)オキシアルキレン鎖、塩基性含窒素基、水酸基、エポキシ基などの親水性基が挙げられる。
【0023】
前記アニオン性基含有樹脂の酸価は、アニオン性基含有樹脂被覆顔料の分散液の分散安定性を高める観点から、40mgKOH/g以上が好ましく、70mgKOH/g以上がより好ましい。アニオン性基含有樹脂の酸価は、アニオン性基含有樹脂の親水性を抑えて、アニオン性基含有樹脂被覆顔料の貯蔵安定性を高める、及び印刷物の耐水性を高める観点から、350mgKOH/g以下が好ましく、300mgKOH/g以下がより好ましい。
【0024】
前記酸価は、アニオン性基含有樹脂を合成するために用いる単量体の組成に基づいて、アニオン性基含有樹脂1gを中和するのに理論上要する水酸化カリウムのmg数を算術的に求めた理論酸価である。
【0025】
前記アニオン性基含有樹脂のガラス転移温度は、樹脂被覆顔料の取扱い容易性の観点から、0℃以上が好ましく、50℃以上がより好ましい。前記アニオン性基含有樹脂のガラス転移温度は、樹脂合成時の取扱い容易性の観点から、150℃以下が好ましく、120℃以下がより好ましい。
【0026】
前記アニオン性基含有樹脂のガラス転移温度は、アニオン性基含有樹脂がアクリル系共重合体樹脂の場合、下記のwoodの式により求めた理論ガラス転移温度である。
Woodの式:1/Tg=W1/Tg1+W2/Tg2+W3/Tg3+・・・・・+Wx/Tgx
[式中、Tg1〜Tgxはアニオン性基含有樹脂を構成する単量体1、2、3・・・xのそれぞれの単独重合体のガラス転移温度、W1〜Wxは単量体1、2、3・・・xのそれぞれの重合分率、Tgは理論ガラス転移温度を表す。ただし、woodの式におけるガラス転移温度は絶対温度である。]
前記アニオン性基含有樹脂のガラス転移温度は、アニオン性基含有樹脂がアクリル系共重合体樹脂以外の場合、熱分析により求めた理論ガラス転移温度である。熱分析の方法としては、JIS K7121(プラスチックの転移温度測定方法)に準じ、一例として、パーキンエルマー社製Pyris1 DSCを用いて、昇温速度20℃/分、窒素ガス流速20ミリリットル/分の条件下でガラス転移温度を測定する事ができる。
【0027】
前記アニオン性基含有樹脂の重量平均分子量は、アニオン性基含有樹脂被覆顔料の水性分散液の分散安定性を高める観点から、3,000以上が好ましく、7,000以上がより好ましい。前記アニオン性基含有樹脂の重量平均分子量は、水性媒体への溶解性を高める観点から、200,000以下が好ましく、100,000以下がより好ましい。
【0028】
前記重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法によって測定することができる。一例として、GPC装置としてWater2690(ウォーターズ社製)、カラムとしてPLgel、5μ、MIXED−D(Polymer Laboratories社製)を使用して、展開溶媒としてテトラヒドロフラン、カラム温度25℃、流速1ミリリットル/分、RI検出器、試料注入濃度10ミリグラム/ミリリットル、注入量100マイクロリットルの条件下、クロマトグラフィーを行ない、ポリスチレン換算の重量平均分子量として求めることができる。
【0029】
前記アニオン性基含有樹脂としては、例えば、アクリル系共重合樹脂、マレイン酸系共重合樹脂、縮重合反応によって得られるポリエステル樹脂、及びポリウレタン樹脂などが挙げられる。この様なアニオン性基含有樹脂を合成するための材料については、例えば、特開2000−94825号公報に開示されており、該公報に記載されている材料を使用して得られるアクリル系共重合樹脂、マレイン酸系共重合樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂などが利用可能である。さらには、もちろんその他の材料を用いて得られた樹脂も利用可能である。アニオン性基含有樹脂は、少なくとも1種を用いればよく、2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0030】
前記アクリル系共重合樹脂としては、例えば、アニオン性基含有単量体と共重合可能な他の単量体の混合物を通常のラジカル発生剤(例えば、ベンゾイルパーオキサイド、ターシャリブチルパーオキシベンゾエート、アゾビスイソブチロニトリルなど)の存在下、溶媒中で重合して得られるものが使用できる。
【0031】
前記アニオン性基含有単量体としては、例えば、カルボキシル基、スルホン酸基、ホスホノ基よりなる群から選ばれる少なくとも1種のアニオン性基を有する単量体が挙げられ、これらの中でもカルボキシル基を有する単量体が特に好ましい。
【0032】
前記カルボキシル基を有する単量体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマール酸、2−カルボキシエチル(メタ)アクリレート、2−カルボキシプロピル(メタ)アクリレート、無水マレイン酸、無水フマール酸、マレイン酸ハーフエステルなどが挙げられる。
【0033】
前記スルホン酸基を有する単量体としては、例えば、スルホエチルメタクリレートなどが挙げられる。
【0034】
前記ホスホノ基を有する単量体としては、例えば、ホスホノエチルメタクリレートなどが挙げられる。
【0035】
前記アニオン基含有単量体と共重合可能な他の単量体としては、顔料との吸着性を向上させる観点から、疎水性基含有単量体を含むことが好ましい。
【0036】
前記疎水性基含有単量体としては、例えば、長鎖アルキル基を有する単量体として、(メタ)アクリル酸などのラジカル重合性不飽和カルボン酸の炭素数が8以上のアルキルエステル類(例えば、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシステアリル(メタ)アクリレートなど)、炭素数が8以上のアルキルビニルエーテル類(例えば、ドデシルビニルエーテルなど)、炭素数が8以上の脂肪酸のビニルエステル類(例えば、ビニル2−エチルヘキサノエート、ビニルラウレート、ビニルステアレートなど);脂環族炭化水素基を有する単量体として、シクロヘキシル(メタ)アクリレートなど;芳香族炭化水素基を有する単量体として、ベンジル(メタ)アクリレート、スチレン、α−スチレン、ビニルトルエンなどのスチレン系単量体などが挙げられる。
【0037】
前記アニオン性基含有単量体と共重合可能な他の単量体としては、水性媒体中でアニオン性基含有樹脂の凝集を抑制する観点から、親水性基含有単量体を含むことが好ましい。
【0038】
前記親水性基含有単量体としては、例えば、(ポリ)オキシアルキレン鎖を有する単量体として、メトキシポリエチレングリコール、メトキシポリエチレンポリプロピレングリコール、エトキシポリエチレングリコール、エトキシポリエチレンポリプロピレングリコール、プロポキシポリエチレングリコール、プロポキシポリエチレンポリプロピレングリコールなどの片末端アルキル封鎖(ポリ)アルキレングリコールと(メタ)アクリル酸などのラジカル重合性不飽和カルボン酸とのエステル化物や、(メタ)アクリル酸などのラジカル重合性不飽和カルボン酸へのエチレンオキシド付加物及び/又はプロピレンオキシド付加物など;塩基性基含有単量体として、例えば、1−ビニル−2−ピロリドン、1−ビニル−3−ピロリドンなどのビニルピロリドン類、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、5−メチル−2−ビニルピリジン、5−エチル−2−ビニルピリジンなどのビニルピリジン類、1−ビニルイミダゾール、1−ビニル−2−メチルイミダゾールなどのビニルイミダゾール類、3−ビニルピペリジン、N−メチル−3−ビニルピペリジンなどのビニルビペリジン類、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸第3ブチルアミノエチル、(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−メトキシ(メタ)アクリルアミド、N−エトキシ(メタ)アクリルアミド、N−ジメチルアクリルアミド、N−プロピルアクリルアミド等の(メタ)アクリル酸の含窒素誘導体類など;水酸基を有する単量体として、例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸のヒドロキシアルキルエステル類など;エポキシ基を有する単量体として、例えば、グリシジル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0039】
前記疎水性基含有単量体及び親水性基含有単量体以外の共重合可能な他の単量体としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシルなどの(メタ)アクリル酸の炭素数が8未満のアルキルエステル類などが挙げられる。
【0040】
前記アニオン性基含有樹脂被覆顔料中のアニオン性基含有樹脂の含有量は、顔料100質量部に対して、アニオン性基含有樹脂被覆顔料の分散液の分散安定性を高める観点から、10質量部以上が好ましく、20質量部以上がより好ましく、30質量部以上がさらに好ましい。前記アニオン性基含有樹脂の含有量は、顔料100質量部に対して、本発明の水性インクジェット用組成物の粘度を低下させる観点から、100質量部以下が好ましく、80質量部以下がより好ましく、60質量部以下がさらに好ましい。
【0041】
<アニオン性基含有樹脂による顔料の被覆方法>
本発明のアニオン性基含有樹脂被覆顔料は、前記アニオン性基含有樹脂を塩基性化合物存在下に水性媒体中に溶解後、前記顔料を加え、ミル型分散機、高圧分散機などの分散機で顔料分散物(インクベース前駆体ともいう)を得、これを必要に応じて希釈し、酸析法やイオン交換手段などにより、塩基性化合物を除去して得られるものである。
【0042】
<塩基性化合物>
前記塩基性化合物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムのような無機塩基性化合物や、アンモニア、メチルアミン、エチルアミン、モノエタノールアミン、N、N−ジメチルエタノールアミン、N、N−ジエチルエタノールアミン、N、N−ジブチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モルホリン、N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリンのような有機塩基性化合物などが挙げられる。これら塩基性化合物は、単独または2種以上を混合して用いることができる。中でも、顔料分散の点からモノエタノールアミン、N、N−ジメチルエタノールアミン、N、N−ジエチルエタノールアミン、N、N−ジブチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどのアルカノールアミンが好適である。
【0043】
前記塩基性化合物の使用量は、アニオン性基含有樹脂を水性媒体中に溶解させる量であればよいが、通常アニオン性基含有樹脂を中和できる量の40〜100%の範囲で使用される。樹脂被覆顔料の分散安定性や印刷物の耐水性を高める観点から、50〜90%で使用するのが好ましい。もとより、この範囲を超える量で使用可能である。
【0044】
<水性媒体>
前記水性媒体としては、水、又は水と水混和性有機溶剤との混合物が使用できる。水混和性有機溶剤としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n−プロピルアルコールなどの低級アルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリンなどの多価アルコール類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルなどの(ポリ)アルキレングリコールのモノアルキルエーテル類、エチレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールモノアセテートなどの(ポリ)アルキレングリコールのモノ脂肪酸エステル類などが挙げられる。水混和性有機溶剤は単独または2種以上を混合して使用できる。
【0045】
前記水性媒体の使用量は、アニオン性基含有樹脂100質量部に対して、アニオン性基含有樹脂の溶解性を高める観点から、500質量部以上が好ましく、1000質量部以上がより好ましい。水性媒体の使用量は、アニオン性基含有樹脂100質量部に対して、樹脂被覆顔料の分散時の粘度を高める観点から、4000質量部以下が好ましく、3000質量部以下がより好ましい。
【0046】
<酸析法>
前記酸析法としては、塩酸や酢酸などの酸性化合物を前記顔料分散物に加え、pHを中性又は酸性とすることによって、塩基性化合物を除去し、アニオン性基含有樹脂を顔料表面に析出(被覆)させる方法が挙げられる。
【0047】
前記酸析法によって得られたアニオン性基含有樹脂に被覆された顔料は、系中に沈降するか、もしくはペースト状になる。得られた沈殿物を濾過、水洗い、さらに要すれば乾燥することによりアニオン性基含有樹脂被覆顔料を得ることができる。このアニオン性基含有樹脂被覆顔料は、含水ケーキの状態又は乾燥させた状態で使用できる。
【0048】
<イオン交換手段>
前記イオン交換手段としては、イオン交換体を前記顔料分散物に直接加える方法、又はイオン交換体を充填したイオン交換塔に前記顔料分散物を通過させる方法によって、塩基性化合物のカチオンと水素とのイオン交換を行い、これにより顔料表面にアニオン性基含有樹脂を析出(被覆)させる方法が挙げられる。
【0049】
前記イオン交換体としては、有機イオン交換体、無機イオン交換体及びこれらの組み合わせが使用できる。有機イオン交換体及び無機イオン交換体としては、塩基性化合物のカチオンを水素と置換するためのイオン交換能を有すれば、いずれのものであっても良いが、例えば、イオン交換樹脂や無機イオン交換体などが利用できる。より具体的にイオン交換樹脂としては、スチレン系、アクリル系、フェノール系、脂肪族系、ピリジン系などの樹脂基体に、カルボキシル基やスルホン酸基、ホスホン基などのイオン交換基を有するもの、無機イオン交換体としては、無機層状粘土鉱物やゼオライトなどを挙げることができる。
【0050】
前記イオン交換手段の一実施態様としては、例えば、系のpHが約4未満になるまで、又は系中に存在する塩基性化合物を実質的に全て除去するまでイオン交換する。このような条件下では、前記酸析法よりも、系中のアニオン性基含有樹脂のほぼ全量を顔料表面に析出させることができ、樹脂で被覆された顔料は沈降するか、もしくはペースト状になる。得られた沈殿物を濾過、水洗い、さらに要すれば乾燥することによりアニオン性基含有樹脂被覆顔料を得ることができる。このアニオン性基含有樹脂被覆顔料は、含水ケーキの状態又は乾燥させた状態で使用できる。
【0051】
また、前記イオン交換手段の他の一実施態様としては、例えば、アニオン性基含有樹脂被覆顔料が沈降しない範囲で系中に存在する塩基性化合物の量の一部を除去する方法がある。アニオン性基含有樹脂被覆顔料が沈降しない範囲は、アニオン性基含有樹脂の疎水化度、親水化度、重量平均分子量、使用する水性媒体の種類などによって異なるが、好ましくは、分散液のpHが約4〜8になるまでイオン交換する。このような条件下では、顔料表面に析出されたアニオン性基含有樹脂のアニオン性基の一部が塩基性化合物で中和されイオン化されているので、生成したアニオン性基含有樹脂被覆顔料は分散性が優れている。この製造方法によるときは、下記の再分散という工程を経ることなく、直接顔料分散性の優れたアニオン性基含有樹脂被覆顔料の分散液を得ることができる。
【0052】
<アニオン性基含有樹脂被覆顔料の分散液>
前記含水ケーキの状態又は乾燥された状態のアニオン性基含有樹脂被覆顔料は、塩基性化合物存在下で水性媒体中に溶解後、再分散させて、アニオン性基含有樹脂被覆顔料の分散液として、本発明の水性インクジェット用インク組成物の製造に使用できる。
【0053】
前記アニオン性基含有樹脂被覆顔料の分散液製造の際の塩基性化合物、及び水性媒体は、前記アニオン性基含有樹脂による顔料の被覆方法で記載した、塩基性化合物、及び水性媒体に該当するものを用いることができる。
【0054】
前記再分散の際における塩基性化合物の使用量は、含水ケーキの状態又は乾燥された状態のアニオン性基含有樹脂被覆顔料を水性媒体に溶解させる量であればよいが、通常アニオン性基含有樹脂を中和できる量の80〜120%の範囲で使用される。
【0055】
前記再分散の際における水性媒体の使用量は、アニオン性基含有樹脂被覆顔料100質量部に対して、樹脂被覆顔料の再分散時の粘度を下げる観点から、100質量部以上が好ましく、300質量部以上がより好ましい。水性媒体の使用量は、アニオン性基含有樹脂被覆顔料100質量部に対して、樹脂被覆顔料の再分散時の粘度を高める観点から、1000質量部以下が好ましく、500質量部以下がより好ましい。尚、前記再分散の際における水性媒体の使用量は、前記含水ケーキ中に含まれる水性媒体との合計量を示す。
【0056】
<エマルジョン>
本発明のエマルジョンは、水系エマルジョンである。水系エマルジョンの例としては、アクリル系樹脂エマルジョン、スチレン−アクリル系樹脂エマルジョン、ポリエステル系樹脂エマルジョン、ポリウレタン系樹脂エマルジョン、ポリ酢酸ビニル系樹脂エマルジョン、ポリ塩化ビニル系樹脂エマルジョン、ポリブタジエン系樹脂エマルジョン、ポリエチレン系樹脂エマルジョン等が挙げられる。中でも、得られる印刷物の外観及び耐水性、耐溶剤性、耐擦性、耐熱性などの各種耐性に優れる事から、スチレン−アクリル系樹脂エマルジョンが好ましい。エマルジョンは、少なくとも1種を用いればよく、2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0057】
前記エマルジョンの樹脂のガラス転移温度は、−30℃〜30℃である。エマルジョンの樹脂のガラス転移温度は、印字の剥離耐性を高める又はインクの吐出安定性を高める観点から、−25℃以上が好ましく、−20℃以上がより好ましく、−15℃以上がさらに好ましい。エマルジョンの樹脂のガラス転移温度は、印字の剥離耐性を高める観点から、25℃以下が好ましく、20℃以下がより好ましく、15℃以下がさらに好ましい。
【0058】
前記エマルジョンの樹脂のガラス転移温度は、エマルジョンの樹脂がアクリル系樹脂又はスチレン−アクリル系樹脂エマルジョンの場合、下記のwoodの式により求めた理論ガラス転移温度である。
Woodの式:1/Tg=W1/Tg1+W2/Tg2+W3/Tg3+・・・・・+Wx/Tgx
[式中、Tg1〜Tgxはアニオン性基含有樹脂を構成する単量体1、2、3・・・xのそれぞれの単独重合体のガラス転移温度、W1〜Wxは単量体1、2、3・・・xのそれぞれの重合分率、Tgは理論ガラス転移温度を表す。ただし、woodの式におけるガラス転移温度は絶対温度である。]
エマルジョンの樹脂のガラス転移温度は、アクリル系以外の樹脂については、熱分析により求めた理論ガラス転移温度である。熱分析の方法としては、JIS K7121(プラスチックの転移温度測定方法)に準じ、一例として、パーキンエルマー社製Pyris1 DSCを用いて、昇温速度20℃/分、窒素ガス流速20ミリリットル/分の条件下でガラス転移温度を測定する事ができる。
【0059】
前記エマルジョンの樹脂の重量平均分子量は、耐剥離性を確保する観点から、10,000以上が好ましく、50,000以上がより好ましい。
【0060】
前記重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法によって測定することができる。一例として、GPC装置としてWater2690(ウォーターズ社製)、カラムとしてPLgel、5μ、MIXED−D(Polymer Laboratories社製)を使用して、展開溶媒としてテトラヒドロフラン、カラム温度25℃、流速1ミリリットル/分、RI検出器、試料注入濃度10ミリグラム/ミリリットル、注入量100マイクロリットルの条件下、クロマトグラフィーを行ない、ポリスチレン換算の重量平均分子量として求めることができる。
【0061】
前記エマルジョンの平均粒子径は、インクの吐出安定性を高める観点から、500nm以下が好ましく、300nm以下がより好ましい。前記エマルジョンの平均粒子径は、一例として、日機装製Microtrac粒度分布測定機 UPA−150を用いて、測定時間60秒、希釈溶媒を水として、D50値の測定によって求める事ができる。
【0062】
<水溶性溶剤>
本発明の水溶性溶剤は、本発明の水性インクジェット用インク組成物の保存安定性、インクの吐出安定性、インクの飛翔性を付与できる効果を有し、例えば、モノアルコール類、多価アルコール類、多価アルコールの低級アルキルエーテル類、窒素含有化合物類等を挙げることができる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0063】
前記モノアルコール類の具体例としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、n−ブタノール等が挙げられる。
【0064】
前記多価アルコールの具体例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ジエチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,2−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,2−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジオール、ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール等が挙げられる。
【0065】
前記多価アルコールの低級アルキルエーテル類の具体例としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールイソブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル等が挙げられる。
【0066】
前記窒素含有化合物の例としては、ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン等が挙げられる。
【0067】
前記水溶性溶剤としては、保湿性の観点から、プロピレングリコール、グリセリン、ジエチレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、及びジエチレングリコールモノブチルエーテルからなる群より選ばれた少なくとも1種類が好ましい。
【0068】
<水>
本発明の水は、前記アニオン性基含有樹脂被覆顔料の分散液中に含有する水性媒体としての水、前記エマルジョンに含有する水、及び本発明の水性インクジェット用インク組成物の濃度調製のために加える水、を含むものである。
【0069】
前記水(各々の水の合計量)の使用量は、前記アニオン性基含有樹脂被覆顔料の分散液製造時の粘度を低下させる観点から、水溶性溶剤100質量部に対して、60質量部以上が好ましく、100質量部以上がより好ましい。前記水(各々の水合計量)の使用量は、前記アニオン性基含有樹脂被覆顔料の分散液の貯蔵量や輸送量を低減させる観点から、水溶性溶剤100質量部に対して、200質量部以下が好ましく、150質量部以下がより好ましい。
【0070】
<その他の添加剤>
本発明の水性インクジェット用インク組成物には、さらに、目的に応じて公知の顔料分散剤、防黴剤、防錆剤、増粘剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、保存性向上剤、消泡剤、pH調整剤等の添加剤も添加することもできる。
【0071】
<基紙及び感圧接着剤層を有する再剥離性圧着記録用紙の感圧接着剤層用の水性インクジェット用インク組成物の製造方法>
本発明の水性インクジェット用インク組成物は、前記アニオン性基含有樹脂被覆顔料の分散液に、前記エマルジョン、前記水溶性溶剤、及び前記水を加えて、製造することができる。本発明の水性インクジェット用インク組成物は、製造後の初期粘度が25℃において1〜15mPa・s、好ましくは3〜10mPa・sの範囲である。粘度は、例えば、E型粘度計(商品名:RE100L型粘度計、東機産業社製)により測定できる。
【0072】
以下、本発明の水性インクジェット用インク組成物中の各成分の割合について説明する。
【0073】
本発明の水性インクジェット用インク組成物中の前記アニオン性基含有樹脂被覆顔料の割合は、印刷物の印画濃度を高める観点から、2質量%以上が好ましく、4質量%以上がより好ましい。本発明の水性インクジェット用インク組成物中の前記アニオン性基含有樹脂被覆顔料の割合は、インクの吐出安定性を高める観点から、10質量%以下が好ましく、8質量%以下がより好ましい。
【0074】
本発明の水性インクジェット用インク組成物中の前記エマルジョンの樹脂固形分の割合は、0.7〜7質量%である。本発明の水性インクジェット用インク組成物中のエマルジョンの樹脂固形分の割合は、印字の剥離耐性を高める観点から、0.8質量%以上が好ましく、1.0質量%以上がより好ましく、1.2質量%以上がさらに好ましい。本発明の水性インクジェット用インク組成物中のエマルジョンの樹脂固形分の割合は、インクの吐出安定性を高める観点から、6質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましく、4質量%以下がさらに好ましい。尚、エマルジョンの樹脂固形分には、エマルジョンに含有する界面活性剤も含まれる。
【0075】
本発明の水性インクジェット用インク組成物中の前記水溶性溶剤の割合は、25〜55質量%である。本発明の水性インクジェット用インク組成物中の前記水溶性溶剤の割合は、インクの吐出安定性を高める観点から、30質量%が好ましく、35質量%以上がより好ましい。本発明の水性インクジェット用インク組成物中の前記水溶性溶剤の割合は、印字の剥離耐性を高める観点から、50質量%以下が好ましく、45質量%以下がより好ましい。尚、水溶性溶剤に前記水性媒体の種類が該当する場合、本発明の水性インクジェット用インク組成物中に含有する前記水性媒体を加えた合計量を、水溶性溶剤の含有量とする。
【0076】
本発明の水性インクジェット用インク組成物中の前記水(各々の水の合計量)の割合は、インクの吐出安定性を高める観点から、40質量%以上が好ましく、50質量%以上がより好ましい。本発明の水性インクジェット用インク組成物中の前記水(各々の水の合計量)の割合は、インクの吐出安定性を高める観点から、70質量%以下が好ましく、60質量%以下がより好ましい。
【0077】
さらに、前記アニオン性基含有樹脂被覆顔料に含まれる顔料、及びアニオン性基含有樹脂の割合、並びに前記再分散の際における塩基性化合物の割合について説明する。
【0078】
本発明の水性インクジェット用インク組成物中の前記顔料の割合は、印刷物の印画濃度を高める観点から、1質量%以上が好ましく、2質量%以上がより好ましい。本発明の水性インクジェット用インク組成物中の顔料の割合は、インクの吐出安定性を高める観点から、10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましい。
【0079】
本発明の水性インクジェット用インク組成物中の前記アニオン性基含有樹脂の割合は、アニオン性基含有樹脂被覆顔料の分散液の分散安定性を高める観点から、0.5質量%以上が好ましく、1質量%以上がより好ましい。本発明の水性インクジェット用インク組成物中のアニオン性基含有樹脂の割合は、本発明の水性インクジェット用組成物の粘度を低下させる観点から、4質量%以下が好ましく、2質量%以下がより好ましい。
【0080】
本発明の水性インクジェット用インク組成物中の前記再分散の際における塩基性化合物の割合は、インクの分散安定性を高める観点から、0.05質量%以上が好ましく、0.1質量%以上がより好ましい。本発明の水性インクジェット用インク組成物中の再分散の際における塩基性化合物の割合は、印刷物の耐水性を高める観点から、1質量%以下が好ましく、0.5質量%以下がより好ましい。
【0081】
<印刷方法>
本発明の水性インクジェット用インク組成物を用いた印刷方法について説明する。
【0082】
本発明の水性インクジェット用インク組成物の印刷用メディアとしては、基紙上に感圧接着剤層を有する、先糊式の再剥離性圧着記録用紙が挙げられる。先糊式の再剥離性圧着記録用紙の具体例としては、POSTEX(トッパン・フォームズ社製)、Wメール(北越紀州製紙社製)、リカメール(日本理科製紙社製)等が挙げられ、先糊式の再剥離性圧着記録用紙の基紙としては、アート紙、インクジェット専用紙、インクジェット光沢紙等のコート紙、ポリ塩化ビニルシートのようなプラスチック系基材等の他、普通紙やオフセット紙等の未コート紙も利用できる。
【0083】
本発明の水性インクジェット用インク組成物の印刷方法としては、例えば、本発明の水性インクジェット用インク組成物をインクカートリッジに収容し、該インクカートリッジをシングルパス方式等のインクジェット記録装置に装着して、ノズルから先糊式の再剥離性圧着記録用紙へ噴射することによりインクジェット印刷をする方法が挙げられる。
【実施例】
【0084】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「%」は「質量%」を意味するものである。
【0085】
本願以下の実施例又は比較例で使用した化合物を示す。
<顔料>
カーボンブラック(商品名プリンテックス90、デグサ社製)
イエロー顔料(商品名ノバパームイエロー4G01、クラリアント社製)
マゼンタ顔料(商品名インクジェットマゼンタE5B02、クラリアント社製)
シアン顔料(商品名ヘリオゲンブルーL7101F、BASF社製)
<アニオン性基含有樹脂>
アクリル酸/n−ブチルアクリレート/ベンジルメタクリレート/スチレン共重合体(重量平均分子量30,000、酸価185mgKOH/g)
<エマルジョン>
ネオクリルA−1092(固形分45%、ガラス転移温度9℃、スチレン−アクリル系エマルジョン、DSM Neoresins社製)
ネオクリルA−1120(固形分45%、ガラス転移温度−9℃、スチレン−アクリル系エマルジョン、DSM Neoresins社製)
ネオクリルA−1091(固形分45%、ガラス転移温度98℃、スチレン−アクリル系エマルジョン、DSM Neoresins社製)
モビニール461(固形分64%、ガラス転移温度−40℃、アクリル系エマルジョン、日本合成化学社製)
<水溶性溶剤>
グリセリン
プロピレングリコール
エチレングリコールモノブチルエーテル
【0086】
<実施例1>
<アニオン性基含有樹脂被覆顔料の製造>
アニオン性基含有樹脂(アクリル酸/n−ブチルアクリレート/ベンジルメタクリレート/スチレン共重合体)20質量部を、塩基性化合物(水酸化カリウム)2.5質量部と水性媒体(水)77.5質量部との混合溶液に溶解させて、アニオン性基含有樹脂固形分が20%の樹脂分散剤ワニスを得た。
次いで、前記樹脂分散剤ワニスの23.7質量部(アニオン性基含有樹脂4.74質量部含む)に水性媒体(水)64.3質量部を加えて混合し、アニオン性基含有樹脂固形分が4.74%の顔料分散用樹脂ワニスを得た。さらに、これに顔料(カーボンブラック)12質量部を加え、攪拌混合後、湿式サーキュレーションミルで練肉を行い、アニオン性基含有樹脂被覆顔料分散物(インクベース前駆体)を調製した。
さらに、前記アニオン性基含有樹脂被覆顔料分散物(インクベース前駆体)を、顔料濃度が5%となるように水で希釈した後、希釈液に対して陽イオン交換樹脂(DOWEX MONOSPHERE (H)650C、ダウケミカル社製)を5%添加し攪拌して、pHが4未満となるまでイオン交換後、イオン交換樹脂をメッシュで濾過して、吸引濾過し、アニオン性基含有樹脂被覆顔料(ブラック)を含有する含水ケーキ(アニオン性基含有樹脂被覆顔料固形分25%)を得た。
【0087】
<アニオン性基含有樹脂被覆顔料の分散液の製造>
このアニオン性基含有樹脂被覆顔料を含有する含水ケーキ22.8質量部(アニオン性基含有樹脂1.6質量部、顔料4.1質量部、水性媒体(水)17.1質量部を含む)に、塩基性化合物(水酸化ナトリウム)0.2質量部(該樹脂被覆顔料に含まれるアニオン性基含有樹脂の酸価の80%の中和量)と、水性媒体(水)11質量部を加え、高圧乳化分散装置:ゴーリンホモジナイザー(A.P.V. GAULIN INK.製)で攪拌し、アニオン性基含有樹脂被覆顔料(ブラック)の分散液を得た。
【0088】
<基紙及び感圧接着剤を有する再剥離性圧着記録用紙の感圧接着剤層用水性インクジェット用インク組成物の製造>
表1に記載の通り、前記アニオン性基含有樹脂被覆顔料(ブラック)の分散液34.0質量部、エマルジョン(ネオクリルA−1092)3.3質量部、水溶性溶剤(グリセリン)40.0質量部、及び水22.7質量部を攪拌混合し、実施例1の再剥離性圧着記録用紙の感圧接着剤層用の水性インクジェット用インク組成物を得た。
【0089】
<実施例2〜9、比較例1〜6>
表1に記載の顔料に変更した以外は、実施例1に記載の方法で、実施例2〜9、及び比較例1〜6のアニオン性基含有樹脂被覆顔料を得た。さらに、表1の質量割合となるように、所定のエマルジョン、所定の水溶性溶剤、及び水を攪拌混合し、実施例2〜9、及び比較例1〜6の再剥離性圧着記録用紙の感圧接着剤層用の水性インクジェット用インク組成物を得た。
【0090】
<基紙及び感圧接着剤を有する再剥離性圧着記録用紙の感圧接着剤層用の水性インクジェット用インク組成物の印刷評価>
以下の方法により評価し、それらの結果を表1に示す。
(1)印字の剥離耐性
実施例1〜9、比較例1〜6の水性インクジェット用インク組成物を、0.1mmワイヤーバーを用いて、Wメール(北越紀州製紙社製)に展色した。30分後、展色面と非展色面を重ね合わせ、圧力15MPaで圧着し、再剥離性情報シートを得た。その後、圧着面を剥離し、圧着後の非展色面のΔEと未圧着の非展色面のΔEを測定し、それらの差を算出することで、展色面から非展色面への色移りの程度を評価した。尚、測定機器及び測定条件は以下の通りである。
[測定機器]
SpectroEye(X−rite社製)
[測定条件]
白色基準:絶対白色
光源:D50
観測視野:2°
内臓フィルター:なし
[評価基準]
○:ΔEが0.5以下である
△:ΔEが0.5を超えて1以下である
×:ΔEが1を超える
【0091】
(2)インクの吐出安定性
市販のインクジェットプリンターPM−900C(セイコーエプソン(株)製)を用いて、実施例1〜9、比較例1〜6の水性インクジェット用インク組成物を普通紙に印刷した時の吐出安定性を評価した。吐出安定性は、該水性インクジェット用インク組成物を充填し、キャップをせずに、室温30℃、相対湿度50%の環境下で3日間放置し、印字が可能となる条件によりオリフィスからの吐出安定性を評価した。尚、インクジェットプリンター及び普通紙は以下のものを用いた。
インクジェットプリンター:PM−900C(セイコーエプソン(株)製)
普通紙:Xerox L(富士ゼロックスオフィスサプライ(株)製)
[評価基準]
○:吐出オリフィスのクリーニングなしで印字可能
△:印字可能となるまでに吐出オリフィスのクリーニング回数が1〜4回必要
×:印字可能となるまでに吐出オリフィスのクリーニング回数が5回以上必要
【0092】
【表1】
【0093】
実施例1〜9の結果によると、本発明の基紙及び感圧接着剤を有する再剥離性圧着記録用紙の感圧接着剤層用の水性インクジェット用インク組成物は、印字の剥離耐性及びインクの吐出安定性が良好であるため、良好な印字の転移防止性及び良好な塗工安定性の効果を有し、さらに顔料の種類に影響されず安定したこれら性質を有することが分かる。
【0094】
比較例1の結果、ガラス転移点が98℃のエマルジョンを使用した場合、印字の剥離耐性が不十分であった。比較例2の結果、ガラス転移点が−40℃のエマルジョンを使用した場合、印字の剥離耐性及びインクの吐出安定性が不十分であった。比較例3の結果、ガラス転移点が9℃のエマルジョンを過剰に使用した場合、インクの吐出安定性が不十分であった。比較例4の結果、ガラス転移点が9℃のエマルジョンの使用量が不足した場合、印字の剥離耐性が不十分であった。比較例5の結果、水溶性溶剤を過剰に使用した場合、印字の剥離耐性とインクの吐出安定性の双方が不十分であった。比較例6の結果、水溶性溶剤の使用量が不足した場合、インクの吐出安定性が不十分であった。