(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
下記一般式(1)で表される繰り返し構造を含み、重合性モノマーを重合することで形
成され、主鎖の炭素原子にフルオレン構造中の(アザ)ベンゼン環が直接結合した構造を
有するアミノフルオレンポリマー。
【化1】
上記一般式(1)において、
R
1〜R
3は、互いに独立して、水素原子、置換もしくは無置換の炭素数1〜10のア
ルキル基、または置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30のアリール基であり、
mは、1〜20の整数であり、
FおよびF’は、互いに独立して、アザフルオレンを含むフルオレン構造を有する置換
基であり、
Aは、下記一般式(2)で表される置換基であり、
R
4は、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、置
換もしくは無置換のシリル基、置換もしくは無置換の炭素数1〜20のアルキル基、置換
もしくは無置換の環形成炭素数3〜16のシクロアルキル基、置換もしくは無置換の環形
成炭素数6〜30のアリール基、置換もしくは無置換の炭素数1〜20のアルコキシ基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数3〜16のシクロアルコキシ基、置換もしくは無置換
の環形成炭素数6〜30のアリールオキシ基、置換もしくは無置換の炭素数7〜40のア
ラルキル基、置換もしくは無置換の環形成炭素数5〜30のヘテロアリール基、置換もし
くは無置換の炭素数1〜20のアルキルアミノ基、置換もしくは無置換の環形成炭素数6
〜30のアリールアミノ基である。
【化2】
上記一般式(2)において、
L
1およびL
2は、互いに独立して、単結合、置換もしくは無置換の炭素数1〜20の
アルキレン基、置換もしくは無置換の環形成炭素数3〜16のシクロアルキレン基、置換
もしくは無置換の環形成炭素数6〜30のアリーレン基、置換もしくは無置換の炭素数1
〜20のオキシアルキレン基、置換もしくは無置換の環形成炭素数3〜16のオキシシク
ロアルキレン基、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30のオキシアリーレン基、置
換もしくは無置換の炭素数7〜40のアラルキレン基、置換もしくは無置換の環形成炭素
数5〜30のヘテロアリーレン基、置換もしくは無置換の炭素数1〜20のアミノアルキ
レン基、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30のアミノアリーレン基、またはアル
キル基もしくはアリール基で置換されたシリレン基であり、
Ar
1は、水素原子、置換もしくは無置換の炭素数1〜20のアルキル基、置換もしく
は無置換の環形成炭素数3〜16のシクロアルキル基、置換もしくは無置換の環形成炭素
数6〜30のアリール基、置換もしくは無置換の炭素数1〜20のアルコキシ基、置換も
しくは無置換の環形成炭素数3〜16のシクロアルコキシ基、置換もしくは無置換の環形
成炭素数6〜30のアリールオキシ基、置換もしくは無置換の炭素数7〜40のアラルキ
ル基、置換もしくは無置換の環形成炭素数5〜30のヘテロアリール基、置換もしくは無
置換の炭素数1〜20のアルキルアミノ基、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30
のアリールアミノ基、またはこれらの置換基とL
1もしくはL
2とが結合して形成された
環状置換基であり、
*は、他の置換基との結合部位である。
下記一般式(4)で表される化合物由来の構成単位を有する、請求項4に記載のアミノ
フルオレンポリマー。
【化6】
上記一般式(4)において、
R
17〜R
19は、互いに独立して、水素原子、置換もしくは無置換の炭素数1〜10
のアルキル基、または置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30のアリール基であり、
R
20〜R
24は、互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アミノ
基、ニトロ基、シアノ基、置換もしくは無置換のシリル基、置換もしくは無置換の炭素数
1〜20のアルキル基、置換もしくは無置換の環形成炭素数3〜16のシクロアルキル基
、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30のアリール基、置換もしくは無置換の炭素
数1〜20のアルコキシ基、置換もしくは無置換の環形成炭素数3〜16のシクロアルコ
キシ基、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30のアリールオキシ基、置換もしくは
無置換の炭素数7〜40のアラルキル基、置換もしくは無置換の環形成炭素数5〜30の
ヘテロアリール基、置換もしくは無置換の炭素数1〜20のアルキルアミノ基、置換もし
くは無置換の環形成炭素数6〜30のアリールアミノ基、または隣接したこれらの置換基
が互いに結合して形成された環状置換基であり、
L
3は、単結合、置換もしくは無置換の炭素数1〜20のアルキレン基、置換もしくは
無置換の環形成炭素数3〜16のシクロアルキレン基、置換もしくは無置換の環形成炭素
数6〜30のアリーレン基、置換もしくは無置換の炭素数1〜20のオキシアルキレン基
、置換もしくは無置換の環形成炭素数3〜16のオキシシクロアルキレン基、置換もしく
は無置換の環形成炭素数6〜30のオキシアリーレン基、置換もしくは無置換の炭素数7
〜40のアラルキレン基、置換もしくは無置換の環形成炭素数5〜30のヘテロアリーレ
ン基、置換もしくは無置換の炭素数1〜20のアミノアルキレン基、置換もしくは無置換
の環形成炭素数6〜30のアミノアリーレン基、またはアルキル基もしくはアリール基で
置換されたシリレン基であり、
前記R
20〜R
24のうち、少なくとも1つ以上は、前記架橋基群から選択された架橋
基である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記の特許文献1〜10に開示された有機EL素子用材料を用いて溶液塗布法にて製造した有機EL素子は、発光寿命が十分ではないという問題があった。
【0008】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、有機EL素子の発光寿命を向上させることが可能な、新規かつ改良されたアミノフルオレンポリマー、該ポリマーを含む有機エレクトロルミネッセンス素子用材料、および該材料を用いた有機エレクトロルミネッセンス素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、下記一般式(1)で表される繰り返し構造を含み、重合性モノマーを重合することで形成されたアミノフルオレンポリマーが提供される。
【化1】
上記一般式(1)において、R
1〜R
3は、互いに独立して、水素原子、置換もしくは無置換の炭素数1〜10のアルキル基、または置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30のアリール基であり、mは、1〜20の整数であり、FおよびF’は、互いに独立して、アザフルオレンを含むフルオレン構造を有する置換基であり、Aは、下記一般式(2)で表される置換基であり、R
4は、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、置換もしくは無置換のシリル基、置換もしくは無置換の炭素数1〜20のアルキル基、置換もしくは無置換の環形成炭素数3〜16のシクロアルキル基、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30のアリール基、置換もしくは無置換の炭素数1〜20のアルコキシ基、置換もしくは無置換の環形成炭素数3〜16のシクロアルコキシ基、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30のアリールオキシ基、置換もしくは無置換の炭素数7〜40のアラルキル基、置換もしくは無置換の環形成炭素数5〜30のヘテロアリール基、置換もしくは無置換の炭素数1〜20のアルキルアミノ基、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30のアリールアミノ基である。
【化2】
上記一般式(2)において、L
1およびL
2は、互いに独立して、単結合、置換もしくは無置換の炭素数1〜20のアルキレン基、置換もしくは無置換の環形成炭素数3〜16のシクロアルキレン基、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30のアリーレン基、置換もしくは無置換の炭素数1〜20のオキシアルキレン基、置換もしくは無置換の環形成炭素数3〜16のオキシシクロアルキレン基、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30のオキシアリーレン基、置換もしくは無置換の炭素数7〜40のアラルキレン基、置換もしくは無置換の環形成炭素数5〜30のヘテロアリーレン基、置換もしくは無置換の炭素数1〜20のアミノアルキレン基、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30のアミノアリーレン基、またはアルキル基もしくはアリール基で置換されたシリレン基であり、Ar
1は、水素原子、置換もしくは無置換の炭素数1〜20のアルキル基、置換もしくは無置換の環形成炭素数3〜16のシクロアルキル基、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30のアリール基、置換もしくは無置換の炭素数1〜20のアルコキシ基、置換もしくは無置換の環形成炭素数3〜16のシクロアルコキシ基、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30のアリールオキシ基、置換もしくは無置換の炭素数7〜40のアラルキル基、置換もしくは無置換の環形成炭素数5〜30のヘテロアリール基、置換もしくは無置換の炭素数1〜20のアルキルアミノ基、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30のアリールアミノ基、またはこれらの置換基とL
1もしくはL
2とが結合して形成された環状置換基であり、*は、他の置換基との結合部位である。
【0010】
この観点によれば、有機EL素子の発光寿命を向上させることが可能である。
【0011】
前記フルオレン構造を有する置換基は、下記一般式(3)で表される置換基であり、いずれかの置換位置にて他の置換基と結合してもよい。
【化3】
上記一般式(3)において、R
5〜R
8は、互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、置換もしくは無置換のシリル基、置換もしくは無置換の炭素数1〜20のアルキル基、置換もしくは無置換の環形成炭素数3〜16のシクロアルキル基、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30のアリール基、置換もしくは無置換の炭素数1〜20のアルコキシ基、置換もしくは無置換の環形成炭素数3〜16のシクロアルコキシ基、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30のアリールオキシ基、置換もしくは無置換の炭素数7〜40のアラルキル基、置換もしくは無置換の環形成炭素数5〜30のヘテロアリール基、置換もしくは無置換の炭素数1〜20のアルキルアミノ基、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30のアリールアミノ基、または隣接したこれらの置換基が互いに結合して形成された環状置換基であり、aおよびbは、互いに独立して、1〜4の整数であり、Y
1〜Y
8は、互いに独立して、炭素原子、または窒素原子のいずれかである。
【0012】
この観点によれば、有機EL素子の発光寿命をさらに向上させることが可能である。
【0013】
前記一般式(3)で表される置換基は、以下の置換基群から選択されるいずれかの置換もしくは無置換の置換基であってもよい。
【化4】
【0014】
この観点によれば、有機EL素子の発光寿命をさらに向上させることが可能である。
【0015】
前記アミノフルオレンポリマーは、下記の架橋基群から選択された架橋基を少なくとも1つ以上有する重合性コモノマーをさらに共重合することで形成されてもよい。
【化5】
上記の架橋基群において、R
10〜R
16は、水素原子、または置換もしくは無置換の炭素数1〜10のアルキル基であり、pは、1〜10の整数である。
【0016】
この観点によれば、アミノフルオレンポリマーを含む有機層上にさらに他の層を積層することが可能になる。
【0017】
前記重合性コモノマーは、下記一般式(4)で表される化合物であってもよい。
【化6】
上記一般式(4)において、R
17〜R
19は、互いに独立して、水素原子、置換もしくは無置換の炭素数1〜10のアルキル基、または置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30のアリール基であり、R
20〜R
24は、互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、置換もしくは無置換のシリル基、置換もしくは無置換の炭素数1〜20のアルキル基、置換もしくは無置換の環形成炭素数3〜16のシクロアルキル基、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30のアリール基、置換もしくは無置換の炭素数1〜20のアルコキシ基、置換もしくは無置換の環形成炭素数3〜16のシクロアルコキシ基、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30のアリールオキシ基、置換もしくは無置換の炭素数7〜40のアラルキル基、置換もしくは無置換の環形成炭素数5〜30のヘテロアリール基、置換もしくは無置換の炭素数1〜20のアルキルアミノ基、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30のアリールアミノ基、または隣接したこれらの置換基が互いに結合して形成された環状置換基であり、L
3は、単結合、置換もしくは無置換の炭素数1〜20のアルキレン基、置換もしくは無置換の環形成炭素数3〜16のシクロアルキレン基、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30のアリーレン基、置換もしくは無置換の炭素数1〜20のオキシアルキレン基、置換もしくは無置換の環形成炭素数3〜16のオキシシクロアルキレン基、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30のオキシアリーレン基、置換もしくは無置換の炭素数7〜40のアラルキレン基、置換もしくは無置換の環形成炭素数5〜30のヘテロアリーレン基、置換もしくは無置換の炭素数1〜20のアミノアルキレン基、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30のアミノアリーレン基、またはアルキル基もしくはアリール基で置換されたシリレン基であり、前記R
20〜R
24のうち、少なくとも1つ以上は、前記架橋基群から選択された架橋基である。
【0018】
この観点によれば、有機EL素子の発光寿命をさらに向上させることが可能である。
【0019】
前記L
3は、下記一般式(5)で表される置換基であってもよい。
【化7】
上記一般式(5)において、A’は、前記一般式(2)で表される置換基であり、F”は、前記一般式(3)で表される置換基であり、qは、1〜20の整数であり、*は、R
20およびR
21によって置換されたフルオレニレン基との結合部位である。
【0020】
この観点によれば、有機EL素子の発光寿命をさらに向上させることが可能である。
【0021】
前記L
3は、前記一般式(2)で表される置換基であってもよい。
【0022】
この観点によれば、有機EL素子の発光寿命をさらに向上させることが可能である。
【0023】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、前記アミノフルオレンポリマーを含む有機エレクトロルミネッセンス素子用材料が提供される。
【0024】
この観点によれば、発光寿命が向上した有機EL素子を提供することができる。
【0025】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、一対の電極と、前記電極間に配置され、前記アミノフルオレンポリマーを含む少なくとも1層以上の有機層と、を備える、有機エレクトロルミネッセンス素子が提供される。
【0026】
この観点によれば、発光寿命が向上した有機EL素子を提供することができる。
【0027】
前記有機層のうち少なくとも1層は、塗布法により形成されてもよい。
【0028】
この観点によれば、より効率的に大面積の有機EL素子を製造することが可能である。
【0029】
前記有機EL素子は、前記電極間に配置され、三重項励起子からの発光が可能な発光材料を含む発光層をさらに備えてもよい。
【0030】
この観点によれば、発光寿命がさらに向上した有機EL素子を提供することができる。
【発明の効果】
【0031】
以上説明したように本発明によれば、有機EL素子の発光寿命を向上させることが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0034】
<1.アミノフルオレンポリマー>
まず、本発明の一実施形態に係るアミノフルオレンポリマー(aminofluorene polymer)について説明する。本実施形態に係るアミノフルオレンポリマーは、有機EL素子の電極間に配置された有機層に含まれ、溶液塗布法により成膜可能な有機EL素子用材料である。
【0035】
一般的に、有機EL素子における有機層の形成方法としては、例えば、真空蒸着法および溶液塗布法が知られている。このうち、溶液塗布法は、材料の利用効率が高く、容易に大面積を成膜することができ、かつ高価な真空装置が不必要であるため、より効率的な有機EL素子の製造方法として期待されている。
【0036】
溶液塗布法に用いられる有機EL素子用材料に対しては、溶媒に対する溶解性が高く、塗布後の膜安定性が高いことが求められる。したがって、このような特性を備えつつ、かつ有機EL素子の発光特性を向上させることが可能な有機EL素子用材料が求められていた。特に、有機EL素子の発光寿命を向上させることが可能な有機EL素子用材料が求められていた。
【0037】
本発明の発明者らは、カチオンラジカル(cation radical)状態におけるビニルポリマー(vinyl polymer)の炭素同士の結合解離エネルギー(energy)を計算することにより、溶液塗布法に好適な有機EL素子用材料を鋭意検討した。その結果、本発明者らは、重合部位にフェニル(phenyl)基を有するビニルポリマーよりも、重合部位にフルオレニル(fluorenyl)基を有するビニルポリマーのほうが、炭素同士の結合解離エネルギーが3倍程度高いことを見出した。そこで、本発明者らは、ポリマーの重合部位にフルオレニル基を直接導入することにより、有機EL素子の発光寿命を向上させることが可能な有機EL素子用材料となり得るという着想を得、本発明を完成させるに至った。
【0038】
本発明の一実施形態は、ポリマーの側鎖にフルオレン(fluorene)構造を直接結合し、導入したフルオレン構造に対して、アミン(amine)構造を有する置換基と、フルオレン構造を有する置換基とを置換させたアミノフルオレンポリマーである。このようなアミノフルオレンポリマーは、高い溶解性および塗布膜安定性を有し、かつ有機EL素子の発光寿命を向上させることができる。
【0039】
具体的には、本実施形態に係るアミノフルオレンポリマーは、重合性モノマー(monomer)を重合させることで形成されたポリマー(polymer)化合物であり、下記一般式(1)で表される繰り返し構造を含むポリマー化合物である。
【0041】
上記一般式(1)において、
R
1〜R
3は、互いに独立して、水素原子、置換もしくは無置換の炭素数1〜10のアルキル(alkyl)基、または置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30のアリール(aryl)基であり、
mは、1〜20の整数であり、
FおよびF’は、互いに独立して、アザフルオレン(azafluorene)を含むフルオレン構造を有する置換基であり、
Aは、アミン構造を有する置換基であり、
R
4は、水素原子、ハロゲン(halogen)原子、ヒドロキシ(hydroxy)基、アミノ(amino)基、ニトロ(nitro)基、シアノ(cyano)基、置換もしくは無置換のシリル(silyl)基、置換もしくは無置換の炭素数1〜20のアルキル(alkyl)基、置換もしくは無置換の環形成炭素数3〜16のシクロアルキル(cycloalkyl)基、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30のアリール(aryl)基、置換もしくは無置換の炭素数1〜20のアルコキシ(alkoxy)基、置換もしくは無置換の環形成炭素数3〜16のシクロアルコキシ(cycloalkoxy)基、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30のアリールオキシ(aryloxy)基、置換もしくは無置換の炭素数7〜40のアラルキル(aralkyl)基、置換もしくは無置換の環形成炭素数5〜30のヘテロアリール(heteroaryl)基、置換もしくは無置換の炭素数1〜20のアルキルアミノ(alkylamino)基、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30のアリールアミノ(arylamino)基である。
【0042】
具体的には、FおよびF’は、互いに独立して、下記一般式(3)で表される置換基である。
【0044】
上記一般式(3)において、
R
5〜R
8は、互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、置換もしくは無置換のシリル基、置換もしくは無置換の炭素数1〜20のアルキル基、置換もしくは無置換の環形成炭素数3〜16のシクロアルキル基、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30のアリール基、置換もしくは無置換の炭素数1〜20のアルコキシ基、置換もしくは無置換の環形成炭素数3〜16のシクロアルコキシ基、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30のアリールオキシ基、置換もしくは無置換の炭素数7〜40のアラルキル基、置換もしくは無置換の環形成炭素数5〜30のヘテロアリール基、置換もしくは無置換の炭素数1〜20のアルキルアミノ基、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30のアリールアミノ基、または隣接したこれらの置換基が互いに結合して形成された環状置換基であり、
aおよびbは、互いに独立して、1〜4の整数であり、
Y
1〜Y
8は、互いに独立して、炭素原子、または窒素原子のいずれかである。
【0045】
なお、一般式(3)で表される置換基と、主鎖、A、およびR
4などの他の置換基との結合部位は、任意であり、いずれかの置換位置にて結合していてもよい。
【0046】
より具体的には、一般式(3)で表される置換基は、以下の置換基群から選択されるいずれかの置換もしくは無置換の置換基であってもよい。
【0048】
また、Aは、具体的には、下記一般式(2)で表される置換基である。
【0050】
上記一般式(2)において、
L
1およびL
2は、互いに独立して、単結合、置換もしくは無置換の炭素数1〜20のアルキレン(alkylene)基、置換もしくは無置換の環形成炭素数3〜16のシクロアルキレン(cycloalkylene)基、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30のアリーレン(arylene)基、置換もしくは無置換の炭素数1〜20のオキシアルキレン(oxyalkylene)基、置換もしくは無置換の環形成炭素数3〜16のオキシシクロアルキレン(oxycycloalkylene)基、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30のオキシアリーレン(oxyarylene)基、置換もしくは無置換の炭素数7〜40のアラルキレン(aralkylene)基、置換もしくは無置換の環形成炭素数5〜30のヘテロアリーレン(heteroarylene)基、置換もしくは無置換の炭素数1〜20のアミノアルキレン(aminoalkylene)基、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30のアミノアリーレン(aminoarylene)基、またはアルキル基もしくはアリール基で置換されたシリレン(silylene)基であり、
Ar
1は、水素原子、置換もしくは無置換の炭素数1〜20のアルキル基、置換もしくは無置換の環形成炭素数3〜16のシクロアルキル基、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30のアリール基、置換もしくは無置換の炭素数1〜20のアルコキシ基、置換もしくは無置換の環形成炭素数3〜16のシクロアルコキシ基、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30のアリールオキシ基、置換もしくは無置換の炭素数7〜40のアラルキル基、置換もしくは無置換の環形成炭素数5〜30のヘテロアリール基、置換もしくは無置換の炭素数1〜20のアルキルアミノ基、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30のアリールアミノ基、またはこれらの置換基とL
1もしくはL
2とが結合して形成された環状置換基であり、
*は、他の置換基との結合部位である。
【0051】
なお、一般式(2)で表される置換基は、例えば、脂肪族アミノ基または芳香族アミノ基であってもよく、Ar
1とL
1またはL
2とが結合した環状構造を形成してもよい。
【0052】
また、一般式(2)において、L
1およびL
2は、置換もしくは無置換のフルオレニレン基であってもよく、置換もしくは無置換のアミノアルキレン基、または置換もしくは無置換のアミノアリーレン基であってもよい。すなわち、本実施形態に係るアミノフルオレンポリマーは、フルオレン構造を有する置換基と、アミン構造を有する置換基とが交互に結合した構造であってもよく、フルオレン構造またはアミン構造を有する置換基が連続して結合した構造であってもよい。
【0053】
上述した構造を有するアミノフルオレンポリマーは、ポリマーの側鎖部分にフルオレン構造が直接結合しているため、ポリマーの炭素同士の結合解離エネルギーが高くなり、通電耐久性および電子耐性が高くなる。そのため、本実施形態に係るアミノフルオレンポリマーを用いた有機EL素子は、発光寿命を向上させることができる。
【0054】
なお、本実施形態に係るアミノフルオレンポリマーの数平均分子量は、例えば、10000以上100000以下であってもよい。また、アミノフルオレンポリマーの分散度(重量平均分子量/数平均分子量)は、例えば、1.5以上2.5以下であってもよい。
【0055】
ここで、本実施形態に係るアミノフルオレンポリマーが有する構成単位(繰り返し単位)の具体例を以下に示す。ただし、本実施形態に係るアミノフルオレンポリマーが有する構成単位が以下に例示する構造に限定されるわけではない。なお、以下において、mは、例えば、1〜10の整数である。
【0057】
また、本実施形態に係るアミノフルオレンポリマーは、架橋基を少なくとも1つ以上有する重合性コモノマー(comonomer)との共重合にて形成されたコポリマーであることが好ましい。なお、重合性コモノマーが有する架橋基は、具体的には、下記の架橋基群から選択された架橋基である。
【0059】
上記の架橋基群において、
R
10〜R
16は、水素原子、または置換もしくは無置換の炭素数1〜10のアルキル基であり、pは、1〜10の整数である。
【0060】
本実施形態に係るアミノフルオレンポリマーが、架橋基を有する重合性コモノマーとのコポリマーである場合、アミノフルオレンポリマーは、成膜後に熱等によって架橋することで溶媒に不溶な膜を形成することができる。これにより、本実施形態に係るアミノフルオレンポリマーは、積層された層間での材料同士の溶解および混合を抑制することができるため、積層構造をより容易に形成することができる。
【0061】
架橋基を有する重合性コモノマーの割合は、アミノフルオレンポリマーを形成するモノマー全体に対して、1モル(mole)%以上50モル%以下であることが好ましい。架橋基を有する重合性コモノマーの割合が1モル%未満の場合、架橋反応によって溶媒に不溶な膜を形成することができないため好ましくない。一方、架橋基を有する重合性コモノマーの割合が50モル%を超える場合、有機EL素子における発光寿命の向上効果が小さくなるため好ましくない。また、架橋基を有する重合性コモノマーの割合は、アミノフルオレンポリマーを形成するモノマー全体に対して、5モル%以上15モル%以下がより好ましく、10モル%が最も好ましい。
【0062】
ここで、架橋基を少なくとも1つ以上有する重合性コモノマーは、具体的には、下記一般式(4)で表される化合物であることがより好ましい。
【0064】
上記一般式(4)において、
R
17〜R
19は、互いに独立して、水素原子、置換もしくは無置換の炭素数1〜10のアルキル基、または置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30のアリール基であり、
R
20〜R
24は、互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、置換もしくは無置換のシリル基、置換もしくは無置換の炭素数1〜20のアルキル基、置換もしくは無置換の環形成炭素数3〜16のシクロアルキル基、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30のアリール基、置換もしくは無置換の炭素数1〜20のアルコキシ基、置換もしくは無置換の環形成炭素数3〜16のシクロアルコキシ基、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30のアリールオキシ基、置換もしくは無置換の炭素数7〜40のアラルキル基、置換もしくは無置換の環形成炭素数5〜30のヘテロアリール基、置換もしくは無置換の炭素数1〜20のアルキルアミノ基、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30のアリールアミノ基、または隣接したこれらの置換基が互いに結合して形成された環状置換基であり、
L
3は、単結合、置換もしくは無置換の炭素数1〜20のアルキレン基、置換もしくは無置換の環形成炭素数3〜16のシクロアルキレン基、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30のアリーレン基、置換もしくは無置換の炭素数1〜20のオキシアルキレン基、置換もしくは無置換の環形成炭素数3〜16のオキシシクロアルキレン基、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30のオキシアリーレン基、置換もしくは無置換の炭素数7〜40のアラルキレン基、置換もしくは無置換の環形成炭素数5〜30のヘテロアリーレン基、置換もしくは無置換の炭素数1〜20のアミノアルキレン基、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30のアミノアリーレン基、またはアルキル基もしくはアリール基で置換されたシリレン基であり、
R
20〜R
24のうち、少なくとも1つ以上は、上述した架橋基群から選択された架橋基である。
【0065】
また、L
3は、具体的には、下記一般式(5)で表される置換基であってもよく、上述した一般式(2)で表される置換基であってもよい。
【0067】
上記一般式(5)において、
A’は、上述した一般式(2)で表される置換基であり、
F”は、上述した一般式(3)で表される置換基であり、
qは、1〜20の整数であり、
*は、R
20およびR
21によって置換されたフルオレニレン基との結合部位である。
【0068】
L
3が上記一般式(5)または一般式(2)で表される置換基である場合、架橋基を有する重合性コモノマーは、上述した一般式(1)で表される構造と同様の構造を有することができる。これにより、本実施形態に係るアミノフルオレンポリマーは、有機EL素子の発光寿命をさらに向上させることができる。
【0069】
ここで、架橋基を少なくとも1つ以上有する重合性コポリマーに対応する構成単位(繰り返し単位)の具体例を以下に示す。ただし、架橋基を少なくとも1つ以上有する重合性コポリマーに対応する構成単位が以下に例示する構造に限定されるわけではない。なお、以下において、m、nは、例えば、1〜10の整数である。
【0071】
以上にて説明したように、本実施形態に係るアミノフルオレンポリマーによれば、有機EL素子の発光寿命を向上させることが可能である。また、本実施形態に係るアミノフルオレンポリマーは、さらに架橋基を有する重合性コモノマーとの共重合体として形成することにより、塗布膜安定性を向上させることができるため、有機EL素子を積層構造にて形成した場合の発光特性および安定性を向上させることができる。
【0072】
なお、本実施形態に係るアミノフルオレンポリマーは、公知の有機合成方法を用いることで合成することが可能である。本実施形態に係るアミノフルオレンポリマーの具体的な合成方法は、後述する実施例を参照した当業者であれば、容易に理解することが可能である。
【0073】
<2.有機EL素子>
続いて、
図1を参照して、本実施形態に係る有機EL素子について、詳細に説明する。
図1は、本実施形態に係る有機EL素子の一例を示す模式図である。
【0074】
図1に示すように、本実施形態に係る有機EL素子100は、基板110と、基板110上に配置された第1電極120と、第1電極120上に配置された正孔注入層130と、正孔注入層130上に配置された正孔輸送層140と、正孔輸送層140上に配置された発光層150と、発光層150上に配置された電子輸送層160と、電子輸送層160上に配置された電子注入層170と、電子注入層170上に配置された第2電極180とを備える。
【0075】
ここで、本実施形態に係るアミノフルオレンポリマーは、例えば、第1電極120と第2電極180との間に配置されたいずれかの有機層中に含まれる。具体的には、本実施形態に係るアミノフルオレンポリマーは、正孔輸送材料として正孔輸送層140に含まれることが好ましい。
【0076】
また、本実施形態に係るアミノフルオレンポリマーを含む有機層は、溶液塗布法によって形成される。具体的には、本実施形態に係るアミノフルオレンポリマーを含む有機層は、スピンコート(spin coat)法、キャスティング(casting)法、マイクログラビアコート(micro gravure coat)法、グラビアコート(gravure coat)法、バーコート(bar coat)法、ロールコート(roll coat)法、ワイアーバーコード(wire bar coat)法、ディップコート(dip coat)法、スプレーコート(spry coat)法、スクリーン(screen)印刷法、フレキソ(flexographic)印刷法、オフセット(offset)印刷法、インクジェット(ink jet)印刷法等の溶液塗布法を用いて成膜される。なお、溶液塗布法に使用する溶媒は、アミノフルオレンポリマーを溶解することができるものであれば、どのような溶媒でも使用することができる。
【0077】
なお、本実施形態に係るアミノフルオレンポリマーを含む有機層以外の層の成膜方法については、特に限定されない。本実施形態に係るアミノフルオレンポリマーを含む有機層以外の層は、例えば、真空蒸着法にて成膜されてもよく、溶液塗布法にて成膜されてもよい。
【0078】
基板110は、一般的な有機EL素子で使用される基板を使用することができる。例えば、基板110は、ガラス(glass)基板、シリコン(silicon)基板などの半導体基板、または透明なプラスチック(plastic)基板等であってもよい。
【0079】
基板110上には、第1電極120が形成される。第1電極120は、具体的には、陽極であり、金属、合金、または導電性化合物等のうち仕事関数が大きいものによって形成される。例えば、第1電極120は、透明性および導電性に優れる酸化インジウムスズ(In
2O
3−SnO
2:ITO)、酸化インジウム亜鉛(In
2O
3−ZnO)、酸化スズ(SnO
2)、酸化亜鉛(ZnO)等によって透過型電極として形成されてもよい。また、第1電極120は、上記透明導電膜に対して、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)などを積層することによって反射型電極として形成されてもよい。
【0080】
第1電極120上には、正孔注入層130が形成される。正孔注入層130は、第1電極120からの正孔の注入を容易にする層であり、具体的には、約10nm〜約1000nm、より具体的には、約10nm〜約100nmの厚さにて形成されてもよい。
【0081】
正孔注入層130は、公知の正孔注入材料にて形成することができる。正孔注入層130を形成する公知の正孔注入材料としては、例えば、トリフェニルアミン含有ポリエーテルケトン(poly(ether ketone)−containg triphenylamine:TPAPEK)、4−イソプロピル−4’−メチルジフェニルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート(4−isopropyl−4’−methyldiphenyliodonium tetrakis(pentafluorophenyl)borate:PPBI)、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス−[4−(フェニル−m−トリル−アミノ)−フェニル]−ビフェニル−4,4’−ジアミン(N,N’−diphenyl−N,N’−bis−[4−(phenyl−m−tolyl−amino)−phenyl]−biphenyl−4,4’−diamine:DNTPD)、銅フタロシアニン(copper phthalocyanine)、4,4’,4”−トリス(3−メチルフェニルフェニルアミノ)トリフェニルアミン(4,4’,4”−tris(3−methylphenylphenylamino)triphenylamine:m−MTDATA)、N,N’−ジ(1−ナフチル)−N,N’−ジフェニルベンジジン(N,N’−di(1−naphthyl)−N,N’−diphenylbenzidine:NPB)、4,4’,4”−トリス(ジフェニルアミノ)トリフェニルアミン(4,4’,4”−tris(diphenylamino)triphenylamine:TDATA)、4,4’,4”−トリス(N,N−2−ナフチルフェニルアミノ)トリフェニルアミン(4,4’,4”−tris(N,N−2−naphthylphenylamino)triphenylamine:2−TNATA)、ポリアニリン/ドデシルベンゼンスルホン酸(polyaniline/dodecylbenzenesulphonic acid)、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(4−スチレンスルホネート)(poly(3,4−ethylenedioxythiophene)/poly(4−styrenesulfonate))、およびポリアニリン/10−カンファースルホン酸(polyaniline/10−camphorsulfonic acid)等を挙げることができる。
【0082】
正孔注入層130上には、正孔輸送層140が形成される。正孔輸送層140は、正孔を輸送する機能を備えた層であり、例えば、約10nm〜約150nmの厚さにて形成されてもよい。正孔輸送層140は、本実施形態に係るアミノフルオレンポリマーを用いて溶液塗布法によって成膜されることが好ましい。この方法によれば、有機EL素子100の発光寿命を向上させることが可能なアミノフルオレンポリマーを効率的に大面積にて成膜することができる。
【0083】
ただし、有機EL素子100のいずれかの他の有機層が本実施形態に係るアミノフルオレンポリマーを含む場合、正孔輸送層140は、公知の正孔輸送材料にて形成されてもよいことはいうまでもない。公知の正孔輸送材料としては、例えば、1,1−ビス[(ジ−4−トリルアミノ)フェニル]シクロヘキサン(1,1−bis[(di−4−tolylamino)phenyl]cyclohexane:TAPC)、N−フェニルカルバゾール(N−phenylcarbazole)およびポリビニルカルバゾール(polyvinylcarbazole)などのカルバゾール(carbazole)誘導体、N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ジフェニル−[1,1−ビフェニル]−4,4’−ジアミン(N,N’−bis(3−methylphenyl)−N,N’−diphenyl−[1,1−biphenyl]−4,4’−diamine:TPD)、4,4’,4”−トリス(N−カルバゾリル)トリフェニルアミン(4,4’,4”−tris(N−carbazolyl)triphenylamine:TCTA)、ならびにN,N’−ジ(1−ナフチル)−N,N’−ジフェニルベンジジン(N,N’−di(1−naphthyl)−N,N’−diphenylbenzidine:NPB)等を挙げることができる。
【0084】
正孔輸送層140上には、発光層150が形成される。発光層150は、蛍光、りん光等によって光を発する層であり、真空蒸着法、スピンコーティング法、インクジェット法などを用いて形成される。発光層150は、例えば、約10nm〜約60nmの厚さにて形成されてもよい。発光層150の発光材料としては、公知の発光材料を用いることができる。ただし、発光層150に含まれる発光材料は、三重項励起子からの発光(すなわち、りん光発光)が可能な発光材料であることが好ましい。このような場合、有機EL素子100の発光寿命をさらに向上させることができる。
【0085】
発光層150は、ホスト材料として、例えば、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(tris(8−quinolinato)aluminium:Alq3)、4,4’−ビス(カルバゾール−9−イル)ビフェニル(4,4’−bis(carbazol−9−yl)biphenyl:CBP)、ポリ(n−ビニルカルバゾール)(poly(n−vinyl carbazole):PVK)、9,10−ジ(ナフタレン−2−イル)アントラセン(9,10−di(naphthalene)anthracene:ADN)、4,4’,4”−トリス(N−カルバゾリル)トリフェニルアミン(4,4’,4”−tris(N−carbazolyl)triphenylamine:TCTA)、1,3,5−トリス(N−フェニルベンズイミダゾール−2−イル)ベンゼン(1,3,5−tris(N−phenyl−benzimidazol−2−yl)benzene:TPBI)、3−tert−ブチル−9,10−ジ(ナフト−2−イル)アントラセン(3−tert−butyl−9,10−di(naphth−2−yl)anthracene:TBADN)、ジスチリルアリーレン(distyrylarylene:DSA)、4,4’−ビス(9−カルバゾール)−2,2’−ジメチル−ビフェニル(4,4’−bis(9−carbazole)2,2’−dimethyl−bipheny:dmCBP)などを含んでもよい。
【0086】
また、発光層150は、ドーパント材料として、例えば、ペリレン(perlene)およびその誘導体、ルブレン(rubrene)およびその誘導体、クマリン(coumarin)およびその誘導体、4−ジシアノメチレン−2−(p−ジメチルアミノスチリル)−6−メチル−4H−ピラン(4−dicyanomethylene−2−(p−dimethylaminostyryl)−6−methyl−4H−pyran:DCM)およびその誘導体、ビス[2−(4,6−ジフルオロフェニル)ピリジネート]ピコリネートイリジウム(III)(bis[2−(4,6−difluorophenyl)pyridinate]picolinate iridium(III):FIrpic)、ビス(1‐フェニルイソキノリン)(アセチルアセトネート)イリジウム(III)(bis(1−phenylisoquinoline)(acetylacetonate)iridium(III):Ir(piq)
2(acac))、トリス(2−フェニルピリジン)イリジウム(III)(tris(2−phenylpyridine)iridium(III):Ir(ppy)
3)などイリジウム(Ir)錯体、オスミウム(Os)錯体、白金錯体などを含んでもよい。
【0087】
発光層150上には、電子輸送層160が形成される。電子輸送層160は、電子を輸送する機能を備えた層であり、真空蒸着法、スピンコーティング法、インクジェット法などを用いて形成される。電子輸送層160は、例えば、約15nm〜約50nmの厚さにて形成されてもよい。
【0088】
電子輸送層160は、公知の電子輸送材料にて形成されてもよい。公知の電子輸送材料としては、例えば、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(tris(8−quinolinato)aluminium:Alq3)、および含窒素芳香環を有する化合物等を挙げることができる。含窒素芳香環を有する化合物の具体例としては、例えば、1,3,5−トリ[(3−ピリジル)−フェン−3−イル]ベンゼン(1,3,5−tri[(3−pyridyl)−phen−3−yl]benzene)のようなピリジン(pyridine)環を含む化合物、2,4,6−トリス(3’−(ピリジン−3−イル)ビフェニル−3−イル)−1,3,5−トリアジン(2,4,6−tris(3’−(pyridin−3−yl)biphenyl−3−yl)−1,3,5−triazine)のようなトリアジン(triazine)環を含む化合物、2−(4−(N−フェニルベンゾイニダゾリル−1−イル−フェニル)−9,10−ジナフチルアントラセン(2−(4−(N−phenylbenzoimidazolyl−1−yl−phenyl)−9,10−dinaphthylanthracene)のようなイミダゾール(imidazole)環を含む化合物等を挙げることができる。
【0089】
電子輸送層160上には、電子注入層170が形成される。電子注入層170は、第2電極180からの電子の注入を容易にする機能を備えた層であり、真空蒸着法などを用いて形成される。電子注入層170は、約0.3nm〜約9nmの厚さにて形成されてもよい。電子注入層170は、電子注入層170を形成する材料として公知の材料ならば、いずれも使用することができる。例えば、電子注入層170は、(8−キノリノラト)リチウム((8−quinolinato)lithium:Liq)およびフッ化リチウム(LiF)等のリチウム(lithium)化合物、塩化ナトリウム(NaCl)、フッ化セシウム(CsF)、酸化リチウム(Li
2O)、または酸化バリウム(BaO)等にて形成されてもよい。
【0090】
電子注入層170上には、第2電極180が形成される。第2電極180は、具体的には、陰極であり、金属、合金、または導電性化合物等のうち仕事関数が小さいものによって形成される。例えば、第2電極180は、リチウム(Li)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、カルシウム(Ca)等の金属、またはアルミニウム−リチウム(Al−Li)、マグネシウム−インジウム(Mg−In)、マグネシウム−銀(Mg−Ag)等の合金で反射型電極として形成されてもよい。また、第2電極180は、上記金属材料の20nm以下の薄膜、酸化インジウムスズ(In
2O
3−SnO
2)および酸化インジウム亜鉛(In
2O
3−ZnO)などの透明導電性膜によって透過型電極として形成されてもよい。
【0091】
以上、本実施形態に係る有機EL素子100の一例について説明した。本実施形態に係る有機EL素子100は、アミノフルオレンポリマーを含む有機層を有することにより、発光寿命をより向上させることができる。
【0092】
なお、本実施形態に係る有機EL素子100の積層構造は、上記例示に限定されない。本実施形態に係る有機EL素子100は、他の公知の積層構造にて形成されてもよい。例えば、有機EL素子100は、正孔注入層130、正孔輸送層140、電子輸送層160および電子注入層170のうちの1層以上が省略されてもよく、また、追加で他の層を備えていてもよい。また、有機EL素子100の各層は、それぞれ単層で形成されてもよく、複数層で形成されてもよい。
【0093】
例えば、有機EL素子100は、励起子または正孔が電子輸送層160に拡散することを防止するために、正孔輸送層140と発光層150との間に正孔阻止層をさらに備えていてもよい。なお、正孔阻止層は、例えば、オキサジアゾール(oxadiazole)誘導体、トリアゾール(triazole)誘導体、または、フェナントロリン(phenanthroline)誘導体等によって形成することができる。
【実施例】
【0094】
以下では、実施例および比較例を参照しながら、本実施形態に係るアミノフルオレンポリマー、および該アミノフルオレンポリマーを含む有機EL素子について具体的に説明する。なお、以下に示す実施例は、あくまでも一例であって、本実施形態に係るアミノフルオレンポリマーおよび有機EL素子が下記の例に限定されるものではない。
【0095】
<アミノフルオレンポリマーの合成>
本実施形態に係るアミノフルオレンポリマーの合成方法について、以下の化合物100、101、102、および103を例示して具体的に説明する。なお、以下に述べる合成方法はあくまでも一例であって、本実施形態に係るアミノフルオレンポリマーの合成方法が下記の例に限定されるものではない。
【0096】
なお、以下の合成例では、以下で示す方法により重量平均分子量(Mw)を測定した。具体的には、合成した(共)重合体の重量平均分子量(Mw)は、ポリスチレンを標準物質として用いて、GPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー:Gel Permittion Chromatography)により下記条件で測定した。
【0097】
・分析装置:株式会社島津製作所製Prominence
・カラム:ポリマーラボラトリーズ社製PLgel MIXED−B
・カラム温度:40℃
・流量:1.0mL/min
・注入量:20μL
・溶離液:テトラヒドロフラン(濃度:約0.05質量%)
・検出器:UV−VIS検出器(株式会社島津製作所製SPD−10AV)
・標準資料:ポリスチレン
【0098】
[化合物100の合成]
(単量体Aの合成)
以下の反応式によって、単量体Aを合成した。
【0099】
【化17】
【0100】
まず、2L三口フラスコ(flask)に、2,7−ジブロモ−9,9−ジオクチルフルオレン(2,7−dibromo−9,9−dioctylfluorene)(50.00g、91.17mmol)を投入し、アルゴン(argon)置換した。次に、フラスコ内にテトラヒドロフラン(tetrahydrofuran)(750ml)を加え、アセトン/ドライアイスバス(acetone/dry ice bath)により−75℃に冷却し、15分撹拌した。次に、フラスコ内に1.6Mのn−ブチルリチウム(n−butyl lithium:n−BuLi)ヘキサン(hexane)溶液(36.12ml、95.72mmol)を滴下し、さらに1時間、撹拌した。続いて、反応溶器にトリイソプロピルボレート(triisopropylborate)(20.58ml、109.40mmol)を加え、室温で3時間、撹拌した。反応終了後、反応混合液に水を加え、酢酸エチル(ethyl acetate)を用いて抽出し、抽出した有機層を濃縮した。有機層の濃縮により得られた固体をクロロホルム(chloroform)およびヘキサン(hexane)の混合溶媒を用いた再結晶によって精製し、化合物1を得た。
【0101】
次に、500ml三口フラスコに、化合物1(15.00g、29.22mmol)、ヨードベンゼン(iodobenzene)(6.56g、32.14mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(tetrakis(triphenylphosphine)palladium(0))(1.01g、0.88mmol)、炭酸ナトリウム(sodium carbonate)(24.77g、233.75mmol)を投入し、アルゴン置換した。次に、フラスコ内にエタノール(ethanol)(15ml)、水(100ml)、トルエン(toluene)(116ml)を加え、85℃にて3時間、混合物を撹拌した。反応終了後、反応混合液を室温まで放冷し、セライト(Celite:登録商標)を用いて不純物をろ別した。ろ液に水を加えた後、トルエンを用いて抽出し、抽出した有機層を濃縮した。濃縮液をカラムクロマトグラム(column chromatogram)にて精製し、化合物2を得た。
【0102】
続いて、300ml三口フラスコに、化合物2(15.00g、27.49mmol)、ピナコールジボラン(pinacol diborane)(7.68g、30.24mmol)、1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン−パラジウム(II)ジクロライド−ジクロロメタン錯体(1,1’−Bis(diphenylphosphino)ferrocene−palladium(II)dichloride dichloromethane complex:Pd(dppf)Cl
2・CH
2Cl
2)(0.34g、0.41mmol)、酢酸カリウム(potassium acetate)(8.09g、82.47mmol)を投入し、アルゴン置換した。次に、フラスコ内に脱水1,4−ジオキサン(4−dioxane)(110ml)を加え、100℃にて1時間、混合物を撹拌した。反応終了後、反応混合液を室温まで放冷し、セライトを用いて不純物をろ別した。ろ液に活性炭(10g)を加え、100℃にて1時間撹拌した後、セライトを用いて活性炭を除去し、ろ液を濃縮した。ろ液の濃縮により得られた固体を室温下にてアセトニトリル(acetonitrile)(25ml)で洗浄することにより、化合物3を得た。
【0103】
次に、500ml三口フラスコに、化合物3(3.90g、6.59mmol)、N,N−ビス(4−ブロモフェニル)−N,N−ビス(4−メチルフェニル)−9,9−ジオクチル−9H−フルオレン−2,7−ジアミン(N,N−bis(4−bromophenyl)−N,N−bis(4−methylphenyl)−9,9−dioctyl−9H−fluorene−2,7−diamine)(6.00g、6.59mmol)、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロライド(bis(triphenylphosphine)palladium(II)dichloride)(0.23g、0.33mmol)を投入し、アルゴン置換した。次に、フラスコ内にテトラエチルアンモニウムヒドロキシド(tetraethyl ammonium hydroxide)(3.88g、26.35mmol)、脱水トルエン(300ml)を加え、100℃にて3時間、混合物を撹拌した。反応終了後、反応混合液を室温まで放冷し、セライトを用いて不純物をろ別した。ろ液に水を加えた後、トルエンを用いて抽出し、抽出した有機層を濃縮した。濃縮液をカラムクロマトグラムにて精製し、薄緑固体を得た。得られた固体をテトラヒドロフランとメタノール(methanol)の混合溶媒を用いた再結晶により精製し、化合物4を得た。
【0104】
続いて、50ml三口フラスコに、化合物4(4.00g、3.08mmol)、9,9−ジオクチル−7−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−9H−フルオレン−2−カルボキシアルデヒド(9,9−dioctyl−7−(4,4,5,5−tetramethyl−1,3,2−dioxaborolan−2−yl)−9H−fluorene−2−carboxaldehyde)(1.65g、3.02mmol)、パラジウム(II)アセテート(Palladium(II)acetate)(0.035g、0.15mmol)、トリス(2−メトキシフェニル)ホスフィン(tris(2−methoxyphenyl)phosphine)(0.22g、0.62mmol)を投入し、アルゴン置換した。次に、フラスコ内にテトラエチルアンモニウムヒドロキシド(1.82g、2.40mmol)、脱水トルエン(10ml)を加え、100℃にて4時間、混合物を撹拌した。反応終了後、反応混合液を室温まで放冷し、セライトを用いて不純物をろ別した。ろ液に水を加え、トルエンを用いて抽出し、抽出した有機層を濃縮した。濃縮液をカラムクロマトグラムにて精製し、化合物5を得た。
【0105】
さらに、50ml三口フラスコに、化合物5(3.80g、2.32mmol)、メチルトリフェニルホスホニウムヨージド(methyltriphenylphosphonium iodide)(1.31g、3.26mmol)を投入し、アルゴン置換した。次に、フラスコ内にテトラヒドロフラン(26ml)を加え、氷浴にて0℃に冷却し、tert−カリウムブトキシド(potassium tert−butoxide)(0.34g、3.01mmol)を加えて混合物を撹拌した。反応終了後、水を加え、トルエンを用いて抽出し、抽出した有機層を濃縮した。濃縮液をカラムクロマトグラムにて精製し、淡黄色固体を得た。得られた固体をテトラヒドロフランに溶解した後、メタノールにより再沈殿することで、単量体Aを得た。
【0106】
得られた単量体Aは、核磁気共鳴装置(H
1−NMR)によって同定した。
【0107】
(単量体Bの合成)
以下の反応式によって、単量体Bを合成した。
【0108】
【化18】
【0109】
まず、300ml三口フラスコに、化合物6(10.00g、19.03mmol)、ピナコールジボラン(5.80g、22.83mmol)、Pd(dppf)Cl
2・CH
2Cl
2(0.56g、0.68mmol)、酢酸カリウム(5.60g、57.09mmol)を投入し、アルゴン置換した。次に、フラスコ内に脱水1,4−ジオキサン(100ml)を加え、100℃にて1時間、混合物を撹拌した。反応終了後、反応混合液を室温まで放冷し、セライトを用いて不純物をろ別した。ろ液に活性炭(10g)を加え、100℃にて1時間撹拌した後、セライトを用いて活性炭を除去し、ろ液を濃縮した。ろ液の濃縮により得られた固体を室温下にてアセトニトリル(25ml)で洗浄することにより、化合物7を得た。
【0110】
次に、100ml三口フラスコに、化合物7(0.95g、1.66mmol)、N,N−ビス(4−ブロモフェニル)−N,N−ビス(4−メチルフェニル)−9,9−ジオクチル−9H−フルオレン−2,7−ジアミン(1.51g、1.66mmol)、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロライド(0.06g、0.09mmol)を投入し、アルゴン置換した。次に、フラスコ内にテトラエチルアンモニウムヒドロキシド(2.44g、16.59mmol)、脱水トルエン(47ml)を加え、100℃にて3時間、混合物を撹拌した。反応終了後、反応混合液を室温まで放冷し、セライトを用いて不純物をろ別した。ろ液に水を加えた後、トルエンを用いて抽出し、抽出した有機層を濃縮した。濃縮液をカラムクロマトグラムにて精製し、薄緑固体を得た。得られた固体をテトラヒドロフランとメタノールの混合溶媒を用いた再結晶により精製し、化合物8を得た。
【0111】
続いて、50ml三口フラスコに、化合物8(1.00g、0.60mmol)、9,9−ジオクチル−7−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−9H−フルオレン−2−カルボキシアルデヒド(0.33g、0.60mmol)、パラジウム(II)アセテート(0.007g、0.03mmol)、トリス(2−メトキシフェニル)ホスフィン(0.04g、0.20mmol)を投入し、アルゴン置換した。次に、フラスコ内にテトラエチルアンモニウムヒドロキシド(0.35g、2.40mmol)、脱水トルエン(10ml)を加え、100℃にて4時間、混合物を撹拌した。反応終了後、反応混合液を室温まで放冷し、セライトを用いて不純物をろ別した。ろ液に水を加え、トルエンを用いて抽出し、抽出した有機層を濃縮した。濃縮液をカラムクロマトグラムにて精製し、化合物9を得た。
【0112】
さらに、100ml三口フラスコに、化合物9(0.73g、0.45mmol)、メチルトリフェニルホスホニウムヨージド(0.25g、0.63mmol)を投入し、アルゴン置換した。次に、フラスコ内にテトラヒドロフラン(50ml)を加え、氷浴にて0℃に冷却し、tert−カリウムブトキシド(0.06g、0.59mmol)を加えて混合物を撹拌した。反応終了後、水を加え、トルエンを用いて抽出し、抽出した有機層を濃縮した。濃縮液をカラムクロマトグラムにて精製し、淡黄色固体を得た。得られた固体をテトラヒドロフランに溶解した後、メタノールにより再沈殿することで、単量体Bを得た。
【0113】
得られた単量体Bは、核磁気共鳴装置(H
1−NMR)によって同定した。
【0114】
(化合物100の合成)
上記で合成した単量体A、および単量体Bを用いて、下記で構造を示す化合物100を合成した。
【0115】
【化19】
【0116】
シュレンク管(Schlenk flask)に、単量体A(1000mg)、単量体B(105.0mg)、アゾビスイソブチロニトリル(azobisisobutyronitrile)(2.0mg)、トルエン(2.8ml)を入れ、バブリング(bubbling)した後、凍結脱気し、80℃にて6.5時間加熱撹拌した。反応混合液を室温まで冷却した後、良溶媒をテトロヒドロフラン、貧溶媒をメタノール/アセトンとして、再沈殿を7回行い、析出物を真空乾燥した。
【0117】
これにより、単量体Aおよび単量体Bの共重合体である化合物100(ただし、単量体A由来の構成単位Aaと、単量体B由来の構成単位Bbとの割合は、Aa:Bb=90:10とした)を0.85g得た。化合物100の数平均分子量(Mn)は、35,800であり、重量平均分子量(Mw)は、74,600であり、分散度(Mw/Mn)は、2.08であった。
【0118】
[化合物101の合成]
(単量体Cの合成)
以下の反応式によって、単量体Cを合成した。
【0119】
【化20】
【0120】
上記で合成した化合物7を用いて、化合物9の合成と同様の方法で化合物10を合成した。続いて、化合物10を用いて、単量体Bの合成と同様の方法で単量体Cを合成した。
【0121】
得られた単量体Cは、核磁気共鳴装置(H
1−NMR)によって同定した。
【0122】
上記で合成した単量体A、および単量体Cを用いて、化合物100の合成と同様の方法で、下記で構造を示す化合物101を合成した。なお、単量体A由来の構成単位Aaと、単量体C由来の構成単位Ccとの割合は、Aa:Cc=90:10とした。また、化合物101の数平均分子量(Mn)は、58,100であり、重量平均分子量(Mw)は、155,500であり、分散度(Mw/Mn)は、2.67であった。
【0123】
【化21】
【0124】
[化合物102の合成]
(単量体Dの合成)
以下の反応式によって、単量体Dを合成した。
【0125】
【化22】
【0126】
化合物11を用いて、化合物8の合成と同様の方法で化合物12を合成した。次に、化合物12を用いて、化合物9の合成と同様の方法で化合物13を合成した。続いて、化合物13を用いて、単量体Bの合成と同様の方法で単量体Dを合成した。
【0127】
得られた単量体Dは、核磁気共鳴装置(H
1−NMR)によって同定した。
【0128】
(単量体Eの合成)
以下の反応式によって、単量体Eを合成した。
【0129】
【化23】
【0130】
化合物14を用いて、化合物7の合成と同様の方法で化合物15を合成した。次に、化合物15を用いて、化合物9の合成と同様の方法で化合物16を合成した。続いて、化合物16を用いて、単量体Bの合成と同様の方法で単量体Eを合成した。
【0131】
得られた単量体Eは、核磁気共鳴装置(H
1−NMR)によって同定した。
【0132】
上記で合成した単量体D、および単量体Eを用いて、化合物100の合成と同様の方法で、下記で構造を示す化合物102を合成した。なお、単量体D由来の構成単位Ddと、単量体E由来の構成単位Eeとの割合は、Dd:Ee=90:10とした。また、化合物102の数平均分子量(Mn)は、74,000であり、重量平均分子量(Mw)は、195,000であり、分散度(Mw/Mn)は、2.60であった。
【0133】
【化24】
【0134】
[化合物103の合成]
(単量体Fの合成)
以下の反応式によって、単量体Fを合成した。
【0135】
【化25】
【0136】
まず、50ml三口フラスコに、化合物17(1.66g、2.79mmol)、ジトリルアミン(ditolylamine)(0.50g、2.53mmol)、ヨウ化銅(I)(CuI)(0.02g、0.13mmol)、trans−1,2−シクロヘキサンジアミン(cyclohexanediamine)(0.06g、0.51mmol)、tert−ナトリウムブトキシド(sodium tert−butoxide)(0.54g、5.58mmol)投入し、アルゴン置換した。次に、フラスコ内に脱水1,4−ジオキサン(5ml)を加え、100℃にて8時間、混合物を撹拌した。反応終了後、反応混合液を室温まで放冷し、セライトを用いて不純物をろ別した。ろ液を濃縮後、濃縮液をカラムクロマトグラムにて精製し、化合物18を得た。
【0137】
次に、50ml三口フラスコに、化合物18(1.00g、1.50mmol)、p−トルイジン(p−toluidine)(0.21g、1.96mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(tris(dibenzylideneacetone)dipalladium(0):Pd
2(dpa)
3)(0.07g、0.08mmol)、1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン(1,1’−Bis(diphenylphosphino)ferrocene:dppf)(0.13g、0.23mmol)、tert−ナトリウムブトキシド(0.29g、3.01mmol)投入し、アルゴン置換した。次に、フラスコ内にトルエン(2ml)を加え、100℃にて6時間、混合物を撹拌した。反応終了後、反応混合液を室温まで放冷し、セライトを用いて不純物をろ別した。ろ液に水を加えた後、トルエンを用いて抽出し、抽出した有機層を濃縮した。濃縮液をカラムクロマトグラムにて精製し、化合物19を得た。
【0138】
続いて、100ml三口フラスコに、化合物19(10.00g、14.50mmol)、1−ブロモ−4−ヨードベンゼン(1−bromo−4−iodobenzene)(4.50g、15.92mmol)、ヨウ化銅(I)(0.15g、0.80mmol)、trans−1,2−シクロヘキサンジアミン(0.33g、2.89mmol)、tert−ナトリウムブトキシド(2.78g、28.04mmol)投入し、アルゴン置換した。次に、フラスコ内に脱水1,4−ジオキサン(14ml)を加え、100℃にて8時間、混合物を撹拌した。反応終了後、反応混合液を室温まで放冷し、セライトを用いて不純物をろ別した。ろ液を濃縮後、濃縮液をカラムクロマトグラムにて精製し、化合物20を得た。
【0139】
上記で合成した化合物20を用いて、化合物9の合成と同様の方法で化合物21を合成した。次に、化合物21を用いて、単量体Bの合成と同様の方法で単量体Fを合成した。
【0140】
得られた単量体Fは、核磁気共鳴装置(H
1−NMR)によって同定した。
【0141】
上記で合成した単量体E、および単量体Fを用いて、化合物100の合成と同様の方法で、下記で構造を示す化合物103を合成した。なお、単量体E由来の構成単位Eeと、単量体F由来の構成単位Ffとの割合は、Ee:Ff=90:10とした。また、化合物103の数平均分子量(Mn)は、38,000であり、重量平均分子量(Mw)は、93,000であり、分散度(Mw/Mn)は、2.4であった。
【0142】
【化26】
【0143】
<有機EL素子の製造>
次に、以下の工程によって、本実施形態に係るアミノフルオレンポリマーを含む有機EL素子を製造した。
【0144】
(実施例1)
まず、あらかじめ第1電極(陽極)として、ストライプ(stripe)状の酸化インジウムスズ(ITO)が配置されたITO付きガラス基板上に、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(4−スチレンスルホネート)(poly(3,4−ethylene dioxythiophene)/poly(4−styrene sulfonate):PEDOT/PSS)(Sigma−Aldrich製)を乾燥膜厚が30nmになるようにスピンコート法にて塗布し、正孔注入層を形成した。
【0145】
次に、上記で合成した化合物100をキシレン(xylene)に1質量%にて溶解し、正孔輸送層塗布液を調製した。正孔注入層上に、正孔輸送層塗布液を乾燥膜厚が30nmになるようにスピンコート法にて塗布し、230℃にて1時間加熱して、正孔輸送層を形成した。
【0146】
続いて、正孔輸送層上に、ホスト(host)材料として、3,6−ビス(トリフェニルシリル)カルバゾール(3,6−bis(triphenylsilyl)carbazole:mCP)、および4,4’−ビス(カルバゾール−9−イル)ビフェニル(4,4’−bis(carbazol−9−yl)biphenyl:CBP)、ドーパント(dopant)材料として、トリス(2−(3−p−キシイル)フェニル)ピリジン イリジウム(III)を真空蒸着装置にて共蒸着し、膜厚30nmの発光層を形成した。なお、mCPおよびCBPの割合は、質量比にてmCP:CBP=7:3とし、トリス(2−(3−p−キシイル)フェニル)ピリジン イリジウム(III)(tris(2−(3−p−xylyl)phenyl)pyridine iridium)のドープ(dope)量は、発光層の総質量に対して、10質量%とした。また、リス(2−(3−p−キシイル)フェニル)ピリジン イリジウム(III)は、三重項励起子からの発光(すなわち、りん光発光)が可能な発光材料である。
【0147】
次に、発光層上に、(8−キノリノラト)リチウム(Liq)およびKLET−03(ケミプロ化成製)を真空蒸着装置にて共蒸着し、膜厚50nmの電子輸送層を形成した。また、電子輸送層上に、フッ化リチウム(LiF)を真空蒸着装置にて蒸着し、膜厚1nmの電子注入層を形成した。さらに、電子注入層上に、アルミニウム(Al)を真空蒸着装置にて蒸着し、膜厚100nmの第2電極(陰極)を形成した。以上の製造方法によって有機EL素子を製造した。
【0148】
(実施例2)
正孔輸送層を化合物101にて形成した以外は実施例1と同様の方法で、実施例2に係る有機EL素子を作製した。
【0149】
(実施例3)
正孔輸送層を化合物102にて形成した以外は実施例1と同様の方法で、実施例3に係る有機EL素子を作製した。
【0150】
(実施例4)
正孔輸送層を化合物103にて形成した以外は実施例1と同様の方法で、実施例4に係る有機EL素子を作製した。
【0151】
(比較例1)
正孔輸送層を下記の化合物c1にて形成した以外は実施例1と同様の方法で、比較例1に係る有機EL素子を作製した。なお、化合物c1は、フルオレン構造を有する置換基を構成単位中に有しないポリマーであり、nとmとの比は、モル比にて、n:m=90:10である。また、数平均分子量(Mn)は、24,000であり、重量平均分子量(Mw)は、64,000である。
【0152】
【化27】
【0153】
[評価結果]
上記で製造した実施例1〜4、および比較例1に係る有機EL素子の電流効率および発光寿命を以下の方法にて評価した。
【0154】
具体的には、まず、直流定電圧電源(KEYENCE製ソースメータ(source meter))を用いて、各有機EL素子に対して所定の電圧を加え、有機EL素子を発光させた。有機EL素子の発光を輝度測定装置(Topcom製SR−3)にて測定しつつ、徐々に電流を増加させ、輝度が1000cd/m
2になったところで電流を一定にし、放置した。
【0155】
ここで、有機EL素子の面積から単位面積あたりの電流値(電流密度)を計算し、輝度(cd/m
2)を電流密度(A/m
2)にて除算することで、電流効率(cd/A)を算出した。また、輝度測定装置で測定した輝度の値が徐々に低下し、初期輝度の80%になるまでの時間を「発光寿命」とした。なお、電流効率は、電流を発光エネルギーへ変換する効率を示し、高いほど有機EL素子の性能が高いことを示す。
【0156】
評価結果を以下の表1に示す。なお、表1では、電流効率および発光寿命は、比較例1における測定値を100としたときの相対値として示す。
【0157】
【表1】
【0158】
表1の結果を参照すると、本実施形態に係るアミノフルオレンポリマーを正孔輸送層に用いた実施例1〜4は、比較例1に対して、ほぼ同等以上の電流効率を示し、かつ大幅に発光寿命が向上していることがわかる。
【0159】
以上の結果からわかるように、本実施形態に係るアミノフルオレンポリマーは、溶液塗布法により効率的に成膜することが可能であり、かつ有機EL素子の発光寿命を向上させることが可能である。
【0160】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。