(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
基板と、基板上に配置されたマイクロニードルと、マイクロニードル上に形成されたコーティング層と、を備え、コーティング層は生理活性物質を含む、マイクロニードルデバイスを製造する方法であって、
塗布チャンバー内において、マイクロニードルにコーティング用組成物を浸漬法により塗布する工程であって、
コーティング用組成物は水及びプロピレングリコールを含み、
塗布チャンバーは水蒸気及びプロピレングリコール蒸気を導入するラインを備え、又は水蒸気を導入するライン及びプロピレングリコール蒸気を導入するラインを備え、
塗布チャンバー内のプロピレングリコール濃度は、50〜500ppmである、工程
を備える方法。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
【0013】
図1は、本発明のマイクロニードルデバイス製造方法を実施するための、マイクロニードルデバイス製造用システム(以下、場合により単に「システム」ともいう。)の第一実施形態を示すブロック構成図である。第一実施形態では、システム100は、気体圧縮装置10及び流量調節装置12、湿度調節装置14、プロピレングリコール(以下、PGともいう。)濃度調節装置16及び塗布チャンバー18が、送風ラインLを介して接続されることによって構成されている。気体圧縮装置10によって外部から吸入された気体媒体は、送風ラインLを通って流量調節装置12へと送られる。流量調節装置12には2本の独立した送風ラインLが接続されており、一方の送風ラインLは湿度調節装置14へ、もう一方の送風ラインLはPG濃度調節装置16へと接続されている。流量調節装置12を通過した気体媒体は、湿度調節装置14及びPG濃度調節装置16へ、それぞれ所定の流量で送風ラインLを通して供給される。湿度調節装置14で所定の湿度(すなわち、所定の水蒸気濃度)に調整された水蒸気含有気体及びPG濃度調節装置16で所定のPG蒸気濃度に調整されたPG蒸気含有気体は、送風ラインLを通り塗布チャンバー18へと送られる。塗布チャンバー18では、マイクロニードルにコーティング用組成物が塗布される。
【0014】
気体媒体は特に限定されず、例えば、空気(大気)、窒素ガス、二酸化炭素ガス若しくは希ガス、又はこれらの混合気体であってよいが、空気を用いることが好ましい。
【0015】
気体圧縮装置10は、所望の流速の気流を発生することのできるものであればよく、気体圧縮装置10の圧縮比は特に制限されない。流速は、気体媒体が途中で停滞することなく塗布チャンバー18に到達し、後述する塗布チャンバー18に設けられた開口部から排出されるために十分であればよい。
【0016】
湿度調節装置14及びPG濃度調節装置16は、例えば、イオン交換樹脂を中空糸状に形成したものを用いることができる。湿度調節装置14及びPG濃度調節装置16としては、種々の形態が考えられるが、例えば、中空糸モジュールと液体供給装置とを備えるものが挙げられる。液体供給装置としては、任意の温度に高精度で調整が可能である恒温槽を用いることができる。
【0017】
中空糸モジュールは中空糸状に形成された膜が多数束状に固定されたものであり、市販のものを用いることができる。中空糸モジュールは、流量調節装置12から流れてきた気体媒体が中空糸膜の内部を通過するように、送風ラインLを介して流量調節装置12と接続されている。中空糸膜の外部には、液体供給装置から供給された液体が接するように流れ、中空糸膜と液体供給装置との間を循環するように構成されていることが好ましい。中空糸膜は、液体を透過させず、気体は透過させるため、中空糸膜を介して一定の温度の液体と所定範囲の温度の気体が接した場合、気化された液体成分を含む気体が中空糸モジュールから導出される。中空糸モジュールから導出される気体中の気化された液体成分の含有量は、中空糸膜の内部を流れる気体媒体の温度、流量、圧力及び中空糸膜の外部を流れる液体の温度、流量等によって調整することができる。
【0018】
中空糸膜は、内部に連続的な空洞を備えた円筒状であり、空洞は一方の開口端から他方の開口端まで連通しており、途中で分岐していてもよいが、膜外への直接の開口を有しない。中空糸膜は、例えば、ポリエステル、ナイロン、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリオレフィン、ポリエーテルスルホン、フッ素化されたポリオレフィン若しくはこれらの誘導体又はこれらの混合物であってよく、特に、フッ素化されたポリオレフィンであることが好ましい。中空糸膜の内径及び外径はいずれも0.1μm〜4000μmが好ましい。中空糸膜の膜壁は多孔性であってもよく、非多孔性であってもよい。中空糸膜の長さは5〜10000mであってよい。中空糸膜の膜内圧力は膜外圧力と異なっていてよく、膜外圧力より高くてもよい。中空糸膜の総面積と中空糸膜の内部を通過する気体の総風量との関係は、0.00046〜4.6L/min・cm
2であってよく、0.0023〜0.46L/min・cm
2であってもよい。
【0019】
湿度調節装置14において、恒温槽から中空糸モジュールの中空糸膜の外部に供給される液体は水であり、特に無菌純水であることが好ましい。中空糸モジュールに導入される水の温度は、中空糸膜の仕様にもよるが、通常1〜100℃であってよく、5〜50℃が好ましく、10〜30℃がより好ましい。湿度調節装置14に導入される気体媒体の温度は、中空糸膜の仕様にもよるが、1〜100℃であってよく、10〜30℃であることが好ましい。水温と気体媒体の温度をこのような温度範囲内にすることで、湿度調節装置14から導出される気体の水蒸気濃度を所望の値とすることができ、コーティング用組成物の塗布量のばらつきをより抑えやすくなる。また、湿度調節装置14に導入される気体媒体を露点以下に冷却することで、気体媒体の除湿を行ってもよい。湿度調節装置14に導入される気体媒体の流量は、中空糸膜の仕様にもよるが、1〜10000L/minであってよく、導入気圧は500〜5000hPaであってよい。湿度調節装置14によって所定の湿度に調整された気体媒体は、必要であれば温度、流量及び圧力を調整してから、塗布チャンバー18へと供給される。また、必要であれば気体媒体で希釈してもよい。
【0020】
PG濃度調節装置16において、恒温槽から中空糸モジュールの中空糸膜の外部に供給される液体はPGである。中空糸モジュールに導入されるPGの温度は、中空糸膜の仕様にもよるが、0〜100℃であってよく、30〜95℃が好ましく、60〜90℃がより好ましい。PG濃度調節装置16に導入される気体媒体の温度は、中空糸膜の仕様にもよるが、−20〜200℃であってよく、70〜90℃であることが好ましい。液温と気体媒体の温度をこのような温度範囲内にすることで、PG濃度調節装置16から導出される気体のPG濃度を所望の値とすることができ、コーティング用組成物の塗布量のばらつきをより抑えやすくなる。PG濃度調節装置16に導入される気体媒体の導入流量は、中空糸膜の仕様にもよるが、1〜10000L/minであってよく、導入気圧は500〜5000hPaであってよい。PG濃度調節装置16から導出された気体の分圧はPGの飽和蒸気圧であってもよい。PG濃度調節装置16によって所定のPG濃度に調整された気体媒体は、必要であれば温度、流量及び圧力を調整してから、塗布チャンバー18へと供給される。また、必要であれば気体媒体で希釈してもよい。
【0021】
送風ラインLは、その材質を問わず、気体の漏出入のないものであればどのような形態のものを用いてもよい。送風ラインLは断熱効果を有するものであることが好ましい。
【0022】
塗布チャンバー18の大きさは、例えば、50〜5000cm
3であってよい。塗布チャンバー18は、その壁面の一部に開口部を有していてもよい。開口部は、常に開口していてもよく、適宜又は一定の条件下開口されてもよい。この開口部は塗布チャンバー18に流入してきた気体の排出口としてだけでなく、コーティング用組成物が塗布されるマイクロニードルデバイスの搬入口の役割も有していてもよい。塗布チャンバー18内を所望の気体環境で十分に満たすために、塗布チャンバー18に気体を導入する送風ラインLと開口部とは十分の離れていることが好ましい。塗布チャンバー18に流入する気体の流量は、十分に高く保たれていることが望ましい。この流量を十分に高く保つことで、塗布チャンバー18内を外部に対し陽圧に保ち、外部の気体が開口部から塗布チャンバー18内に流入することを防ぐことができる。
【0023】
塗布チャンバー18の内部又は塗布チャンバー18に接続されている送風ラインLの内部には、湿度センサー及びPG濃度検出センサーを設置することが好ましい。これらセンサーは、塗布チャンバー18の内部と塗布チャンバー18に接続されている送風ラインLとのいずれにも設けられていてもよい。これらセンサーによって、塗布チャンバー18内の気体の湿度及びPG濃度を随時把握することができる。PG濃度検出センサーには、揮発性有機化合物の測定機器を利用することができる。そのような測定機器として、光イオン検出器(PID)、水素炎イオン化検出器(FID)及び非分散型赤外線分析器(NDIR)が挙げられる。必要に応じて気体圧縮装置10、流量調節装置12、湿度調節装置14、PG濃度調節装置16及びその他図示していない装置を操作し、温度、流量、圧力を調整することによって、塗布チャンバー18内の温度、湿度及びPG濃度を制御することができる。さらに、これらセンサーによって得た情報を信号化し、上記操作及び調整の一部又は全部を自動化した、フィードバックシステムを設けてもよい。
【0024】
塗布チャンバー18内の湿度は10〜100%(RH)に、好ましくは5〜50%(RH)に保ち、PG濃度は0.1〜5000ppmに、好ましくは10〜1000ppmに、より好ましくは50〜500ppmに、保つことができる。
【0025】
塗布チャンバー18内は所定範囲の湿度及びPG濃度が保たれ、且つ、好ましくは無菌状態の環境下にあるため、コーティング用組成物に含まれる揮発成分の気化、及び気体中の成分の液化反応は制御され、コーティング用組成物の物性の変化が抑制される。これによって、マイクロニードルに塗布されるコーティング用組成物の塗布量の時間経過に伴うばらつきを抑制することができる。
【0026】
以下、マイクロニードルにコーティング用組成物を塗布し、マイクロニードル上にコーティング層が形成されたマイクロニードルデバイスを製造する方法について説明する。
【0027】
図2は、本実施形態に係る方法により製造されるマイクロニードルデバイスの一例を示す斜視図である。マイクロニードルデバイス40は、基板42と、基板42上に二次元状に配置された複数のマイクロニードル44と、マイクロニードル44上に形成されたコーティング層46とを備えている。コーティング層46は、本実施形態に係る所定の湿度及びPG濃度に調整された気体が供給された塗布チャンバー18内で、マイクロニードルにあらかじめ用意しておいたコーティング用組成物を塗布することによって形成される。
【0028】
基板42及びマイクロニードル44の材質、形状、寸法等は特に限定されず、従来用いられてきたものを用いてよい。一例として、基板42の面積は、0.5〜10cm
2、1〜5cm
2又は1〜3cm
2であってよい。マイクロニードル44の高さは、50〜600μm又は300〜500μmであってよい。マイクロニードル44は凸状構造物であって、広い意味での針形状、又は針形状を含む構造物を意味する。マイクロニードル44が円錐状構造である場合には、その基底における直径は50〜200μm程度であってよい。マイクロニードル44は、典型的には、針の横列について1mm当たり約1〜10本の密度となるように間隔を空けて設けられる。一般に、隣接する横列は横列内の針の空間に対して実質的に等しい距離だけ互いに離れており、1cm
2当たり100〜10000本、200〜5000本、300〜2000本又は400〜850本の針密度を有する。基板42又はマイクロニードル44の材質としては、シリコン、二酸化ケイ素、セラミック、金属(ステンレス、チタン、ニッケル、モリブテン、クロム、コバルト等)及び合成又は天然の樹脂素材等が挙げられる。かかる樹脂素材としては、ポリ乳酸、ポリグリコリド、ポリ乳酸−co−ポリグリコリド、プルラン、カプロノラクトン、ポリウレタン、ポリ無水物等の生分解性ポリマー、又は非分解性ポリマーであるポリカーボネート、ポリメタクリル酸、エチレンビニルアセテート、ポリテトラフルオロエチレン、ポリオキシメチレン等が挙げられる。また、多糖類であるヒアルロン酸、ヒアルロン酸ナトリウム、プルラン、デキストラン、デキストリン又はコンドロイチン硫酸でもよい。
【0029】
基板42又はマイクロニードル44の製法としては、シリコン基板を用いたウエットエッチング加工又はドライエッチング加工、金属若しくは樹脂を用いた精密機械加工(放電加工、レーザー加工、ホットエンボス加工、射出成型加工等)、機械切削加工等が挙げられる。これらの加工法により、基板42とマイクロニードル44は、一体に成型される。
【0030】
マイクロニードルへのコーティング用組成物の塗付方法としては、噴霧コーティング及び浸漬コーティング等が挙げられ、浸漬コーティングが好ましい。
図2では、コーティング層46はマイクロニードル44の先端部分だけに形成されているが、マイクロニードル44の全体を覆うように形成されていてもよい。さらには、コーティング層46は基板42の上に形成されていてもよい。
【0031】
図3は
図2のV−V線断面図である。
図3に示すように、マイクロニードルデバイス40は、基板42と、基板42上に設けられた、マイクロニードル44と、マイクロニードル44上に形成されたコーティング層46と、を備えるものである。マイクロニードル上に付着しているコーティング層46は、生理活性物質を含有するものであり、例えば上述した工程を経て製造することができる。
【0032】
上述のようにして塗布を行った後、必要であれば風乾、真空乾燥、又はそれらの組み合わせの既知の方法により、マイクロニードル44上のコーティング用組成物50の揮発成分を除去する。これにより、マイクロニードル44上にコーティング層46が強固に付着し、典型的にはガラス質又は固形状になり、マイクロニードルデバイス40が製造される。
【0033】
コーティング用組成物50は生理活性物質と担持成分及び必要に応じてその他の成分を含有していてもよい。生理活性物質とは、薬物や化粧用成分等生体に何らかの影響を及ぼすものであり、副甲状腺ホルモン(PTH)及び卵胞刺激ホルモン(FSH)等のペプチド、タンパク質及びDNA、RNA等高分子化合物が考えられるが特に限定されず、日本脳炎及びインフルエンザ等のワクチン、低分子ペプチド、糖及び核酸等の低分子化合物であってもよい。
【0034】
担持成分とは、コーティング用組成物50にある程度の粘性を付与し、コーティング用組成物50をマイクロニードル44表面に担持させることができるものであれば、特に限定されない。
【0035】
その他の成分としては、溶解補助剤、吸収促進剤安定化剤、抗酸化剤、乳化剤、界面活性剤、塩類等が挙げられ、他の既知の製剤補助物質は、それらがコーティング用組成物50の塗布に必要な溶解性及び粘度の特徴、並びに乾燥されたコーティング層46の性状及び物性に有害な影響を及ぼさない限り、コーティング用組成物50に添加されてもよい。
【0036】
その他の成分は揮発性成分を含んでいてもよい。揮発性成分としては、アルコール、多価アルコール、水等が挙げられる。多価アルコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等が挙げられる。多価アルコールは、生理活性物質の可溶化に優れ、優れた流動性及び溶媒の揮発性を有するコーティング用組成物50を得ることができる。また、揮発性成分として、多価アルコールと水との混合溶媒を含むことにより、コーティング用組成物50の揮発性、流動性及び生理活性物質の溶解度を目的に沿って適宜調整しやすくなる。さらに、多価アルコールと水との混合溶媒を含むことにより、コーティング層をマイクロニードルの先端に形成させやすくなり、それにより生理活性物質のバイオアベイラビリティの向上にもつながる。
【0037】
以上、本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されず、様々な変形態様が可能である。例えば、上記実施形態では、湿度調節装置14とPG濃度調節装置16とは並列的に接続されているが、直列的に接続されていてもよい。すなわち、
図4のように、気体圧縮装置10、流量調節装置12、湿度調節装置14、PG濃度調節装置16及び塗布チャンバー18が、それぞれ送風ラインLを介してこの順に接続される構成をとっていてもよい。この構成によれば、先に気体媒体を加湿し、その後加湿した気体にPGを含有させることとなる。また、湿度調節装置14とPG濃度調節装置16の配置は逆転していてもよい。この構成によれば、先に気体媒体にPGを含有させ、その後PGを含有した気体を加湿することとなる。
【0038】
気体媒体の圧力があらかじめ調整されていて、塗布チャンバー18まで到達するのに十分な流速を有している場合は、気体圧縮装置10を設けなくてもよい。
【0039】
必要に応じて、気体圧縮装置10の下流、且つ、湿度調節装置14の上流の任意の位置に、圧力調節装置を設けてもよい。湿度調節装置14に導入される気体媒体の圧力を圧力調節装置によって制御することによって、塗布チャンバー18内に供給される気体の湿度を、より精密に制御することができる。また、圧力調節装置は、気体圧縮装置10の下流、且つ、PG濃度調節装置16の上流の任意の位置に設けてもよい。PG濃度調節装置16に導入される気体媒体の圧力を圧力調節装置によって制御することによって、塗布チャンバー18内に供給される気体のPG濃度を、より精密に制御することができる。
【0040】
上記実施形態では、気体圧縮装置10の下流側に流量調節装置12を接続することで、流量をより高度に調節しているが、気体圧縮装置10からの気体媒体の流量は気体圧縮装置10自体の機能によって調節することも可能である。
【0041】
湿度調節装置14は気体媒体中に水を直接噴霧することで湿度を調節するような構成のものであっても構わない。
【0042】
湿度調節装置14とPG濃度調節装置16とが並列的に接続された実施形態において、湿度調節装置14から導出される加湿された気体と、PG濃度調節装置16から導出されるPG蒸気含有気体とは、それぞれ独立した別々の送風ラインLを通って塗布チャンバー18へと供給されるが、これらの独立した送風ラインLを塗布チャンバー18の上流で合流させ、1本の送風ラインLとしてもよい。また、必要であれば送風ラインLから輸送されてきた気体同士が良く混合されるように、湿度調節装置14及びPG濃度調節装置16の下流で且つ塗布チャンバー18の上流の位置に気体混合装置を設けてもよい。
【0043】
気体圧縮装置10の上流又は下流で且つ塗布チャンバー18の上流の任意の位置に、例えば、フィルター等、無菌化及び無塵化又は無菌化若しくは無塵化のための、気体清浄装置及び液体清浄装置又は気体清浄装置若しくは液体清浄装置を設けてもよい。液体清浄装置は、例えば、液体供給装置と中空糸モジュールとの間に設けることができる。また、気体清浄装置は、例えば、中空糸モジュールの下流且つ塗布チャンバー18の上流の任意の位置に設けることができ、この配置は、フィルターの上流と下流との間で圧力損失が大きい場合に、好適である。
【0044】
フィルターとしては、例えば、シリコーン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリビニリデンジフルオライド(PVDF)、ポリエチレン、ポリプロピレン(PP)、フッ素化ポリオレフィン、ポリエーテルスルホン(PES)、セルロース誘導体等から選ばれる少なくとも1種を含み微多孔膜を有する、エアフィルターが挙げられる。フィルターの表面は、疎水性であってもよく、撥水化処理又は親水化処理されていてもよい。フィルターの面積は、1〜20000cm
2であってもよい。
【実施例】
【0045】
以下、実施例に基づき発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0046】
(実施例1及び比較例1〜2)
<実施例1>
コンプレッサー、並列的に接続された湿度調節装置及びPG濃度調節装置、塗布チャンバーを、この順に、送風ラインLを介して接続した。湿度調節装置及びPG濃度調節装置としては、中空糸モジュール及び恒温槽を組み合わせたものを用いた。具体的には、流量調節装置に並列的に接続された2本の送風ラインを、それぞれ中空糸状膜内部を空気が通過するように中空糸モジュールに接続し、一方の中空糸モジュールの中空糸状膜の外部には恒温水槽から循環的に供給される一定温度(13℃)の水が接触するように接続し、もう一方の中空糸モジュールの中空糸状膜の外部には恒温PG槽から循環的に供給される一定温度(80℃)のPGが接触するように接続した。気流が停滞なく一方向に流れるように、塗布チャンバーには、チャンバー内の気体が外部に開放されるための開口部を設けた。使用した各種装置の詳細は以下のとおりである。
コンプレッサー:制御圧力0.6〜0.8MPa、吐出し気体量15L/min
恒温水槽、恒温PG槽:循環恒温水槽
中空糸モジュール:内径1mm、外形1.3mm、長さ300mmのフッ素系イオン交換樹脂製の中空糸を230本内蔵した、円筒形モジュール
コンプレッサーによって取り込んだ常温、常圧の空気は、湿度調節装置とPG濃度調節装置への気体の流量がそれぞれ3L/min、12L/minとなるように分配し、塗布チャンバー内に加湿されたPG含有空気が供給されるように調整した。この時、塗布チャンバー内の湿度は15%(RH)、PG濃度は225ppmであった。塗布チャンバー内で、以下の通り、マイクロニードルデバイスへの塗布試験を行った。
【0047】
(塗布試験)
マイクロニードル:材質ポリ乳酸、高さ500μm、密度625本/cm
2、コーティング面積1cm
2/デバイス
コーティング用組成物:副甲状腺ホルモン(PTH)33.3質量%、プロプレングリコール56%及びその他の成分(アルカリ金属水酸化物、金属塩化物、酸化防止剤)10.7質量%を含む組成物
マイクロニードルへのコーティング用組成物の塗布を、浸漬法で行った。具体的には、塗布チャンバー内に設置した、マイクロニードルに対応する位置に微小孔の配列を備えるリザーバーに、コーティング用組成物をヘラにより掃引し、リザーバーの開口部に充填した。充填した開口部にマイクロニードルを挿入させた後引き出すことにより、マイクロニードルにコーティング用組成物を塗布した。塗布後のマイクロニードルを風乾させ、マイクロニードル上のPTHを定量した。具体的には、マイクロニードルをリン酸緩衝液に浸漬することでPTHを抽出し、高速液体クロマトグラフ法によりPTHを定量した。
【0048】
経時的にコーティング用組成物の塗布及びPTH定量を行い、コーティング用組成物を調製してからマイクロニードルに塗布するまでの時間に対するPTH量の関係を調べた。結果を
図5に示す。調製後6時間経過したコーティング用組成物を塗布した場合でも、マイクロニードルへのPTH塗布量を一定に保つことができた。
【0049】
<比較例1〜2>
湿度調節装置の中空糸状膜の外部を流れる水の温度と、湿度調節装置及びPG濃度調節装置への気体の流量を表1に示すように変更した以外は実施例1と同じ方法で、塗布試験を行った。
【0050】
【表1】
【0051】
比較例1及び比較例2ともに、コーティング用組成物は、調製後2時間程度で乾燥し、マイクロニードルへの塗布ができなくなった。
【0052】
(実施例2)
湿度調節装置とPG濃度調節装置とをこの順に直列に接続した以外は実施例1と同じ方法で、塗布試験を行ったところ、実施例1と同様、良好に塗布を行うことができた。
【0053】
(実施例3)
湿度調節装置の中空糸状膜の外部を流れる水を13℃とし、湿度調節装置及びPG濃度調節装置への気体の流量を0L/minから15L/minの範囲で変動させた以外は実施例1と同じ方法で塗布チャンバー内の空気環境を調節し、塗布チャンバー内のPG濃度を測定した。結果を
図6に示す。塗布チャンバーに供給する加湿空気とPG含有空気の比率を調節することにより、塗布チャンバー内のPG濃度を調節することができた。