特許第6652359号(P6652359)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6652359
(24)【登録日】2020年1月27日
(45)【発行日】2020年2月19日
(54)【発明の名称】インクジェット印刷装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/17 20060101AFI20200210BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20200210BHJP
【FI】
   B41J2/17 103
   B41J2/01 305
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-193672(P2015-193672)
(22)【出願日】2015年9月30日
(65)【公開番号】特開2017-65089(P2017-65089A)
(43)【公開日】2017年4月6日
【審査請求日】2018年9月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000250502
【氏名又は名称】理想科学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(72)【発明者】
【氏名】大江 朋久
【審査官】 村田 顕一郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−154985(JP,A)
【文献】 特開2015−123643(JP,A)
【文献】 特開2010−111507(JP,A)
【文献】 特開2012−240294(JP,A)
【文献】 特開2005−219434(JP,A)
【文献】 特開2015−067379(JP,A)
【文献】 米国特許第06254092(US,B1)
【文献】 中国実用新案第202346452(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01−2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズル面からインクを吐出するインクジェットヘッドと、
前記ノズル面に対向して配置され、複数のベルト穴を有し、用紙を前記ベルト穴に吸着保持して搬送する搬送ベルトと、
前記搬送ベルトを摺動可能に支持し、前記搬送ベルト側の面である表面から裏面に向かって掘り下げられた複数の凹部、および前記凹部の底面の一部から前記裏面に貫通する複数の吸引穴を有するプラテンプレートと、
前記プラテンプレートの前記裏面側から前記吸引穴、前記凹部、および前記ベルト穴を介して空気を吸引し、用紙を前記搬送ベルトに吸着させる吸引部とを備え、
前記プラテンプレートには、前記吸引穴とは異なる位置に、前記凹部の前記底面の一部から前記プラテンプレートの前記裏面に貫通するインク落とし穴が形成されており、
前記プラテンプレートの前記裏面側に、前記インク落とし穴の周囲および下方を覆う遮蔽部が配置されていることを特徴とするインクジェット印刷装置。
【請求項2】
ノズル面からインクを吐出するインクジェットヘッドと、
前記ノズル面に対向して配置され、複数のベルト穴を有し、用紙を前記ベルト穴に吸着保持して搬送する搬送ベルトと、
前記搬送ベルトを摺動可能に支持し、前記搬送ベルト側の面である表面から裏面に向かって掘り下げられた複数の凹部、および前記凹部の底面の一部から前記裏面に貫通する複数の吸引穴を有するプラテンプレートと、
前記プラテンプレートの前記裏面側から前記吸引穴、前記凹部、および前記ベルト穴を介して空気を吸引し、用紙を前記搬送ベルトに吸着させる吸引部とを備え、
前記プラテンプレートには、前記吸引穴とは異なる位置に、前記凹部の前記底面の一部から前記プラテンプレートの前記裏面に貫通するインク落とし穴が形成されており、
前記プラテンプレートの前記裏面側に、前記インクジェットヘッドの前記ノズル面に重複する領域以外の領域に配置された前記インク落とし穴の周囲および下方を覆う遮蔽部が配置されていることを特徴とするインクジェット印刷装置。
【請求項3】
前記インク落とし穴は、前記凹部の端部に配置されていることを特徴とする請求項1または2に記載のインクジェット印刷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットヘッドからインクを吐出して印刷するインクジェット印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
用紙を搬送しつつ、インクジェットヘッドから用紙へインクを吐出して印刷するライン型のインクジェット印刷装置が知られている。ライン型のインクジェット印刷装置では、用紙を搬送するために、いわゆるエア吸引方式の搬送機構が広く用いられている。
【0003】
特許文献1には、複数のベルト穴を有する搬送ベルトと、表面から掘り下げられた凹部および凹部に形成された吸引穴を有するプラテンプレートと、ファンとを備えるエア吸引方式の搬送機構が開示されている。この搬送機構は、ファンにより、吸引穴、凹部、およびベルト穴を介して空気を吸引することで、ベルト穴に発生する吸着力で用紙を搬送ベルト上に吸着保持しつつ、搬送ベルトを周回させて用紙を搬送する。
【0004】
ところで、インクジェット印刷装置では、インクジェットヘッドからのインクの吐出により、インクミストが発生する。インクミストは、装置内や用紙の汚れを招く。上述のエア吸引方式の搬送機構では、搬送ベルト上に用紙が載置されていない領域において、吸引穴、凹部、およびベルト穴を介して、空気とともにインクミストが吸引される。これにより、搬送機構内にインクミストを回収している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−089290号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した搬送機構では、インクミストが凝集したインクが凹部に溜まる。そして、この凹部に溜まったインクがベルト穴を介して搬送ベルトの表面まで上り、用紙を汚すことがあった。
【0007】
本発明は上記に鑑みてなされたもので、用紙の汚れを軽減できるインクジェット印刷装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明に係るインクジェット印刷装置の第1の特徴は、ノズル面からインクを吐出するインクジェットヘッドと、前記ノズル面に対向して配置され、複数のベルト穴を有し、用紙を前記ベルト穴に吸着保持して搬送する搬送ベルトと、前記搬送ベルトを摺動可能に支持し、前記搬送ベルト側の面である表面から裏面に向かって掘り下げられた複数の凹部、および前記凹部の底面の一部から前記裏面に貫通する複数の吸引穴を有するプラテンプレートと、前記プラテンプレートの前記裏面側から前記吸引穴、前記凹部、および前記ベルト穴を介して空気を吸引し、用紙を前記搬送ベルトに吸着させる吸引部とを備え、前記プラテンプレートには、前記吸引穴とは異なる位置に、前記凹部の前記底面の一部から前記プラテンプレートの前記裏面に貫通するインク落とし穴が形成されていることにある。
【0009】
本発明に係るインクジェット印刷装置の第2の特徴は、前記インク落とし穴は、前記凹部の端部に配置されていることにある。
【0010】
本発明に係るインクジェット印刷装置の第3の特徴は、前記プラテンプレートの前記裏面側に配置され、前記インクジェットヘッドの前記ノズル面に重複する領域以外の領域に配置された前記インク落とし穴の周囲および下方を覆う遮蔽部をさらに備えることにある。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係るインクジェット印刷装置の第1の特徴によれば、プラテンプレートには、吸引穴とは異なる位置に、凹部の底面の一部からプラテンプレートの裏面に貫通するインク落とし穴が形成されている。これにより、インクミストの凝集により凹部に溜まったインクをインク落とし穴から排出し、凹部に溜まったインクを低減できる。このため、凹部に溜まったインクがベルト穴を介して搬送ベルトの表面に達することを抑制できるので、用紙の汚れを軽減できる。
【0012】
本発明に係るインクジェット印刷装置の第2の特徴によれば、インク落とし穴は、凹部の端部に配置されている。これにより、凹部に溜まったインクを、インク落とし穴を介して凹部の端部から排出できる。このため、インクが凹部の端の壁を伝って上昇し、ベルト穴を介して搬送ベルトの表面に達することを効果的に抑制できる。この結果、用紙の汚れをより軽減できる。
【0013】
本発明に係るインクジェット印刷装置の第3の特徴によれば、ノズル面に重複する領域以外の領域に配置されたインク落とし穴の周囲および下方を覆う遮蔽部を備えるので、ノズル面に重複する領域以外の領域では、インク落とし穴を介した空気の吸引は生じない。これにより、ノズル面に重複する領域における吸引効率の低下を抑えることができる。この結果、インクジェットヘッドの直下における用紙の浮きを抑制し、用紙のインクジェットヘッドへの接触を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施の形態に係るインクジェット印刷装置の概略構成図である。
図2図1に示すインクジェット印刷装置の平面図である。
図3図2のA−A線に沿った搬送部の部分拡大断面図である。
図4】上側プラテンプレートの平面図である。
図5】搬送部の部分拡大平面図である。
図6図5のB−B線に沿った断面図である。
図7図1に示すインクジェット印刷装置の凹部に溜まったインクの挙動の説明図である。
図8】比較例の凹部に溜まったインクの挙動の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。各図面を通じて同一もしくは同等の部位や構成要素には、同一もしくは同等の符号を付している。
【0016】
以下に示す実施の形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置等を例示するものであって、この発明の技術的思想は、各構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。この発明の技術的思想は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
【0017】
図1は、本発明の実施の形態に係るインクジェット印刷装置の概略構成図である。図2は、図1に示すインクジェット印刷装置の平面図である。図3は、図2のA−A線に沿った搬送部の部分拡大断面図である。図4は、上側プラテンプレートの平面図である。図5は、搬送部の部分拡大平面図である。図6は、図5のB−B線に沿った断面図である。以下の説明において、図1の紙面に直交する方向を前後方向とし、紙面表方向を前方とする。また、図1における紙面の上下左右を上下左右方向とする。図1において、左から右へ向かう方向が用紙の搬送方向である。
【0018】
図1図2に示すように、本実施の形態に係るインクジェット印刷装置1は、印刷部2と、搬送部3とを備える。
【0019】
印刷部2は、搬送部3により搬送される用紙Pに画像を印刷する。印刷部2は、複数のインクジェットヘッド11と、ヘッドホルダ12とを備える。
【0020】
インクジェットヘッド11は、用紙Pにインクを吐出して画像を印刷する。インクジェットヘッド11は、下面であるノズル面11aに開口する複数のノズル(図示せず)を有し、ノズルからインクを吐出する。図2に示すように、複数のインクジェットヘッド11は、千鳥状に配置されている。すなわち、それぞれ前後方向に沿って等間隔で配置された3つのインクジェットヘッド11からなるヘッド列が、隣り合うヘッド列間で前後方向に半ピッチ分だけずれるように配置されている。
【0021】
ヘッドホルダ12は、インクジェットヘッド11を保持する。ヘッドホルダ12は、中空状の略直方体形状に形成されている。ヘッドホルダ12の底面12aには、各インクジェットヘッド11が取り付けられる複数の開口部が形成されている。ヘッドホルダ12は、その開口部からインクジェットヘッド11の下端部を下方に突出させて、インクジェットヘッド11を保持している。
【0022】
搬送部3は、給紙部(図示せず)から給紙された用紙Pを、エア吸引により吸着保持しつつ搬送する。搬送部3は、印刷部2の下方に配置されている。搬送部3は、搬送ベルト21と、駆動ローラ22と、従動ローラ23〜25と、上側プラテンプレート(請求項のプラテンプレートに相当)26と、下側プラテンプレート27と、吸引防止壁28と、チャンバ29と、ファン(請求項の吸引部に相当)30とを備える。
【0023】
搬送ベルト21は、用紙Pを吸着保持して搬送する。搬送ベルト21は、駆動ローラ22および従動ローラ23〜25に掛け渡された環状のベルトである。搬送ベルト21は、インクジェットヘッド11のノズル面11aに対向して配置されている。
【0024】
図2図5に示すように、搬送ベルト21には、複数の貫通穴であるベルト穴21aが形成されている。搬送ベルト21は、ファン30の駆動により発生する吸着力により、用紙Pをベルト穴21aに吸着保持する。搬送ベルト21は、図1における時計回り方向に回転することで、吸着保持した用紙Pを右方向に搬送する。
【0025】
ベルト穴21aは、左右方向に沿って所定のピッチで配列されている。また、前後方向に隣り合う次段のベルト穴21aが、前段のベルト穴21aに対して左右方向に半ピッチ分だけずれるように配置されている。すなわち、ベルト穴21aは、千鳥状に配置されている。
【0026】
駆動ローラ22は、搬送ベルト21を回転させる。駆動ローラ22は、図示しないモータにより回転駆動される。従動ローラ23〜25は、駆動ローラ22とともに搬送ベルト21を支持する。従動ローラ23〜25は、搬送ベルト21を介して駆動ローラ22に従動する。従動ローラ23は、駆動ローラ22と同じ高さで、駆動ローラ22の左方に配置されている。従動ローラ24,25は、駆動ローラ22および従動ローラ23の下方において、互いに左右方向に離間して、同じ高さに配置されている。
【0027】
上側プラテンプレート26は、駆動ローラ22と従動ローラ23との間において搬送ベルト21の下側に配置され、搬送ベルト21を摺動可能に支持する。上側プラテンプレート26は、樹脂からなる。上側プラテンプレート26は、複数の凹部31と、複数の吸引穴32と、複数のインク落とし穴33とを有する。
【0028】
凹部31は、上側プラテンプレート26の搬送ベルト21側の面である表面(上面)から裏面(下面)に向かって掘り下げられて形成されている。凹部31は、平面視で左右方向に細長い長方形状に形成されている。凹部31は、左右方向に一定のピッチにより規則的に配列され、前後方向に隣り合う次段の凹部31は前段に対して半ピッチずれて左右方向に同一の一定のピッチにより規則的に配列されている。つまり、凹部31は、上側プラテンプレート26の表面に千鳥状に配置されている。凹部31の前後方向におけるピッチは、ベルト穴21aの前後方向におけるピッチと等しい。凹部31は、搬送ベルト21のベルト穴21aが通過する領域の直下に配置されている。
【0029】
吸引穴32は、凹部31の底面の一部から上側プラテンプレート26の裏面に貫通する穴である。吸引穴32は、凹部31の底面の中央部に形成されている。吸引穴32は、平面視で左右方向に細長い長円形状に形成されている。
【0030】
図4に示すように、吸引穴32は、すべての凹部31に形成されているのではなく、一部の凹部31に形成されている。具体的には、吸引穴32は、複数のインクジェットヘッド11からなるインクジェットヘッド群の上流側(左側)の領域、下流側の領域、およびインクジェットヘッド11のノズル面11aに重複する領域の凹部31に形成されている。ここで、インクジェットヘッド11のノズル面11aに重複する領域とは、ノズル面11aを垂直方向に平行に投影した上側プラテンプレート26上の領域である。換言すれば、ノズル面11aに重複する領域は、インクジェットヘッド11を真上から見てノズル面11aが重なる上側プラテンプレート26上の領域である。
【0031】
インクジェットヘッド群の上流側の領域に吸引穴32を配置しているのは、給紙された用紙Pを搬送ベルト21に吸着させるとともに、用紙Pの浮きを抑えつつインクジェットヘッド11の下に用紙Pを進入させるためである。インクジェットヘッド11のノズル面11aに重複する領域に吸引穴32を配置しているのは、インクジェットヘッド11の直下における用紙Pの浮きを抑制し、用紙Pのインクジェットヘッド11への接触を防止するためである。インクジェットヘッド群の下流側の領域に吸引穴32を配置しているのは、搬送気流によって下流側に流されるインクミストをチャンバ29へ吸引するためである。これらの領域以外の領域に吸引穴32を形成していないのは、開口面積を抑え、吸引効率を向上させるためである。
【0032】
インク落とし穴33は、インクミストの凝集により凹部31に溜まったインクを落として凹部31から排出するための穴である。図4図6に示すように、インク落とし穴33は、吸引穴32が形成された凹部31に形成されている。インク落とし穴33は、吸引穴32とは異なる位置において、凹部31の底面の一部から上側プラテンプレート26の裏面に貫通している。具体的には、インク落とし穴33は、搬送ベルト21のベルト穴21aが通過する領域の直下における凹部31の左端部および右端部に形成されている。インク落とし穴33は、吸引穴32より開口面積が小さい。
【0033】
下側プラテンプレート27は、上側プラテンプレート26の下方に配置され、複数のスペーサ36を介して上側プラテンプレート26を支持する。下側プラテンプレート27は、アルミニウム合金等の金属からなる。下側プラテンプレート27には、吸引穴37が形成されている。吸引穴37は、平面視にて上側プラテンプレート26の吸引穴32と同じ位置に、同じ形状で形成されている。
【0034】
吸引防止壁28は、インクジェットヘッド11のノズル面11aに重複する領域以外の領域(ノズル面11aに重複しない領域)に配置されたインク落とし穴33を介した空気の吸引を防止するための壁である。吸引防止壁28は、上側プラテンプレート26と下側プラテンプレート27との間において、ノズル面11aに重複しない領域に配置されたインク落とし穴33の周りを周回するように形成されている。これにより、上側プラテンプレート26の裏面側において、ノズル面11aに重複しない領域に配置されたインク落とし穴33の周囲および下方が、吸引防止壁28および下側プラテンプレート27により覆われている。なお、吸引防止壁28および下側プラテンプレート27が、請求項の遮蔽部を構成する。
【0035】
吸引防止壁28には、インク流出穴28aが形成されている。インク流出穴28aは、インク落とし穴33を介して凹部31から落下して吸引防止壁28の内側に溜まるインクを、吸引防止壁28の外側に逃がすための穴である。
【0036】
チャンバ29は、搬送ベルト21のベルト穴21aに吸着力を発生させるための負圧室を形成するものである。チャンバ29は、駆動ローラ22と従動ローラ23との間において、上側プラテンプレート26の裏面側に設けられている。チャンバ29内には、インク吸収材38が配置されている。インク吸収材38は、チャンバ29内に吸引されたインクミストを吸収する。インク吸収材38は、フェルト等からなる。
【0037】
ファン30は、チャンバ29から排気する。これにより、ファン30は、チャンバ29内に負圧を発生させ、下側プラテンプレート27の吸引穴37、上側プラテンプレート26の吸引穴32、凹部31、および搬送ベルト21のベルト穴21aを介して空気を吸引する。これにより、ファン30は、ベルト穴21aに吸着力を発生させ、用紙Pを搬送ベルト21に吸着させる。
【0038】
次に、インクジェット印刷装置1の動作について説明する。
【0039】
インクジェット印刷装置1で印刷を行う際、まず、駆動ローラ22およびファン30が駆動を開始する。
【0040】
駆動ローラ22の駆動により、搬送ベルト21は、図1における時計回り方向に回転する。搬送ベルト21が回転すると、ベルト穴21aが上側プラテンプレート26の凹部31の上を右方向に通過して行く。
【0041】
一方、ファン30の駆動により、チャンバ29から下方への排気が行われると、下側プラテンプレート27の吸引穴37、上側プラテンプレート26の吸引穴32、凹部31、および搬送ベルト21のベルト穴21aを介してチャンバ29へ空気が吸引される。これにより、吸引穴32が形成された凹部31上を通過するベルト穴21aに負圧が生じ、吸着力が発生する。
【0042】
給紙部(図示せず)から用紙Pが給紙されると、搬送ベルト21は、吸引穴32が形成された凹部31上を通過するベルト穴21aに発生した吸着力により、用紙Pを吸着保持する。搬送ベルト21は、図1における時計回り方向に回転することで、吸着保持した用紙Pを右方向に搬送する。
【0043】
インクジェットヘッド11は、搬送ベルト21上を搬送される用紙Pにインクを吐出して画像を印刷する。印刷された用紙Pは、排紙部(図示せず)により排紙される。
【0044】
上述のような印刷動作中において、インクジェットヘッド11からのインクの吐出により、インクミストが発生する。発生したインクミストの一部は、搬送される用紙間の領域において、ベルト穴21a、上側プラテンプレート26の凹部31、吸引穴32、下側プラテンプレート27の吸引穴37を介してチャンバ29へ空気とともに吸引される。
【0045】
ここで、ベルト穴21aから凹部31へ吸い込まれたインクミストの一部は、凹部31の底面上に凝集する。これにより、図7に示すように、吸引穴32が形成された凹部31にインク41が溜まる。この凹部31に溜まったインク41の一部は、吸引穴32から落下する。また、吸引穴32が形成された凹部31にはインク落とし穴33が形成されているため、インク落とし穴33からもインク41が落下する。
【0046】
本実施の形態とは異なり、凹部31にインク落とし穴33がない場合、図8に示すように、吸引穴32が形成された凹部31に溜まったインク41が凹部31の左右の端の壁を伝って搬送ベルト21まで上昇する現象が生じる。ベルト穴21aがこの凹部31の端部を通過する際、ベルト穴21aを通って搬送ベルト21の表面にまでインク41が達し、このインク41で用紙Pが汚れるおそれがある。
【0047】
これに対し、本実施の形態では、インク落とし穴33からインク41が落下するので、インク41が凹部31の左右の端の壁を伝って搬送ベルト21まで上昇することを予防できる。このため、ベルト穴21aを通って搬送ベルト21の表面にまでインク41が達することを抑制できる。
【0048】
ところで、図7に矢印で示すように、吸引穴32が形成された凹部31では、吸引穴32を介した吸引の流れに加えて、インク落とし穴33を介した吸引の流れも生じる。ただし、ノズル面11aに重複しない領域に配置されたインク落とし穴33には吸引防止壁28が配置されているので、このインク落とし穴33を介した空気の吸引は生じない。
【0049】
吸引防止壁28の内側の空間にはインク41が落下するが、図7に示すように、このインク41は、インク流出穴28aから流出する。これにより、吸引防止壁28の内側の空間およびインク落とし穴33がインク41であふれることを防止できる。吸引防止壁28の内側の空間およびインク落とし穴33がインク41であふれると、図8の例のように、インク41が凹部31の端の壁を伝って搬送ベルト21まで上昇するおそれがある。
【0050】
以上説明したように、インクジェット印刷装置1では、吸引穴32が形成された凹部31の端部にインク落とし穴33が形成されている。これにより、インクミストの凝集により凹部31に溜まったインクを、インク落とし穴33を介して凹部31の端部から排出できる。このため、インクが凹部31の端の壁を伝って上昇し、ベルト穴21aを介して搬送ベルト21の表面に達することを効果的に抑制できる。この結果、用紙Pの汚れを軽減できる。
【0051】
また、インクジェット印刷装置1では、上側プラテンプレート26の裏面側において、ノズル面11aに重複しない領域に配置されたインク落とし穴33の周囲および下方が、吸引防止壁28および下側プラテンプレート27により覆われている。このため、ノズル面11aに重複しない領域では、インク落とし穴33を介した空気の吸引は生じない。これにより、ノズル面11aに重複する領域における吸引効率の低下を抑えることができる。この結果、インクジェットヘッド11の直下における用紙Pの浮きを抑制し、用紙Pのインクジェットヘッド11への接触を低減できる。
【0052】
なお、上述した実施の形態では、凹部31の左右の端部にインク落とし穴33を配置したが、インク落とし穴33は凹部31の他の位置に配置されていてもよい。この場合でも、凹部31に溜まったインクをインク落とし穴33から排出し、凹部31に溜まったインクを低減できる。このため、凹部31に溜まったインクがベルト穴21aを介して搬送ベルト21の表面に達することを抑制できるので、用紙Pの汚れを軽減できる。ただし、凹部31の端部にインク落とし穴33を配置することで、用紙Pの汚れをより軽減できる。
【0053】
また、上述した実施の形態では、上側プラテンプレート26の一部の凹部31に吸引穴32が形成されている構成を示したが、すべての凹部31に吸引穴32が形成されていてもよい。
【0054】
本発明は上記実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施の形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施の形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。
【符号の説明】
【0055】
1 インクジェット印刷装置
2 印刷部
3 搬送部
11 インクジェットヘッド
11a ノズル面
21 搬送ベルト
21a ベルト穴
26 上側プラテンプレート
27 下側プラテンプレート
28 吸引防止壁
28a インク流出穴
29 チャンバ
30 ファン
31 凹部
32,37 吸引穴
33 インク落とし穴
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8