(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
エタノールを含む原料を、マグネシウムシリケート構造を有する化合物とスズを含む含酸素無機化合物との組み合わせからなる触媒に接触させることにより1,3−ブタジエンを得ることを特徴とする1,3−ブタジエンの製造方法。
前記マグネシウムシリケート構造を有する化合物におけるマグネシウムとケイ素の元素比(モル比:Mg/Si)が0.5〜2.0である請求項1記載の1,3−ブタジエンの製造方法。
前記触媒が、マグネシウム化合物及び/又はスズ化合物とケイ素化合物とを含む酸性水溶液を、尿素とともに加圧下で加熱して調製される化合物を含む請求項1〜4の何れか1項に記載の1,3−ブタジエンの製造方法。
前記触媒が、(1)マグネシウム化合物、スズ化合物及びケイ素化合物から水熱合成法により得られるシリケート構造を有する化合物の粉粒体からなる触媒、(2)マグネシウム化合物及びケイ素化合物から水熱合成法により得られるマグネシウムシリケート構造を有する化合物の粉粒体の表面に、酸化スズが担持された触媒、(3)マグネシウム化合物及びケイ素化合物から水熱合成法により得られるマグネシウムシリケート構造を有する化合物の粉粒体と、スズ化合物及びケイ素化合物から水熱合成法により得られるスズシリケート構造を有する化合物の粉粒体との組み合わせからなる触媒、又は(4)マグネシウム化合物及びケイ素化合物から水熱合成法により得られるマグネシウムシリケート構造を有する化合物の粉粒体と、酸化スズを含む粉粒体との組み合わせからなる触媒である請求項1〜5の何れか1項に記載の1,3−ブタジエンの製造方法。
前記触媒が、該触媒を構成する元素として、マグネシウム、ケイ素、スズ以外の金属又は半金属元素を含有する請求項1〜6の何れか1項に記載の1,3−ブタジエンの製造方法。
前記マグネシウム、ケイ素、スズ以外の金属又は半金属元素が、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ガリウム、銀及びインジウムからなる群より選択される少なくとも1種である請求項7記載の1,3−ブタジエンの製造方法。
前記コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ガリウム、銀及びインジウムからなる群より選択される少なくとも1種の元素の総含有量が、触媒全体の0.1〜5重量%である請求項8記載の1,3−ブタジエンの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明に係る1,3−ブタジエンの製造方法は、エタノールを含む原料を、マグネシウムシリケート構造を有する化合物とスズを含む含酸素無機化合物との組み合わせからなる触媒に接触させることにより1,3−ブタジエンを得ることを特徴とする。
【0020】
本発明の1,3−ブタジエンの製造方法は、下記反応工程を経ると考えられる。
【化1】
【0021】
[原料]
本発明の原料は少なくともエタノールを含む。前記エタノールとしては、特に限定されることが無く、例えば、サトウキビやトウモロコシなどのバイオマス由来のエタノールや、石油若しくは天然ガス由来のエタノールなどを挙げることができる。本発明においては、特に、バイオマス由来のエタノールを使用することが、多くの産業分野において重要な合成ゴムの原料である1,3−ブタジエンを、地球温暖化の主な原因とされている温室効果ガスの排出量を抑制しつつ製造することができる点で好ましい。
【0022】
また、本発明の原料は、エタノールと共にアセトアルデヒドを含有していてもよい。エタノールと共にアセトアルデヒドを含有することにより、より一層選択的かつ高収率に1,3−ブタジエンを得ることができる。
【0023】
本発明の原料(100重量%)におけるエタノールの含有量は、例えば50重量%以上、好ましくは70〜100重量%である。なお、上記「原料」には、不活性ガス(液相反応の場合は、反応に不活性な溶媒)は含まれない。
【0024】
[触媒]
本発明の製造法で用いる触媒(以下、「本発明の触媒」と称する場合がある)は、マグネシウムシリケート構造を有する化合物とスズを含む含酸素無機化合物との組み合わせからなる。
【0025】
前記マグネシウムシリケート構造とは、ブルサイト(Mg(OH)
2)層をシリカ(SiO
2)層で挟んだ形状であり、電気的に中性な各層が弱いファンデルワールス力でいくつも積み重なって形成されるタルク状の構造である。本発明の触媒は前記構造を有するため、正反応の活性点であるマグネシウムが反応基質との接触面に効率的に配置され、かつ、副反応を促進する強い酸点、塩基点がほとんど存在しないことにより、エタノールから1,3−ブタジエンを選択的に製造することができる。なお、マグネシウムシリケート構造は、X線回折により確認することができる。
【0026】
前記マグネシウムシリケート構造を有する化合物におけるマグネシウムとケイ素の元素比(モル比:Mg/Si)は、例えば0.5〜2.0、好ましくは0.7〜1.8、特に好ましくは0.9〜1.5である。Mg/Si元素比を2.0以下とすることで、触媒の比表面積を大きくでき、エタノール転化率を高くすることができる。また、Mg/Si元素比を0.5以上とすることで、触媒上の酸点の量を少なくし、エタノールからエチレンへの脱水反応(副反応)を抑制できる。
【0027】
前記マグネシウムシリケート構造を有する化合物は、例えば、マグネシウム化合物及びケイ素化合物から水熱合成法により製造できる。より具体的には、圧力容器中において、均一沈殿剤の存在下でマグネシウムおよびケイ素を含む水溶液(例えば、酸性水溶液)を加熱することにより製造される。
【0028】
前記マグネシウム化合物としては、例えば、水酸化マグネシウム、硝酸マグネシウム、蓚酸マグネシウム等を挙げることができる。これらは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0029】
前記ケイ素化合物としては、例えば、ケイ酸(例えば、コロイダルシリカ、ヒュームドシリカ等)、テトラエチルオルソシリケート等を挙げることができる。これらは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0030】
前記均一沈殿剤としては、例えば、尿素、ヘキサミン等を挙げることができる。これらは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0031】
前記均一沈殿剤の使用量としては、マグネシウム化合物1モルに対して、例えば1.2モル以上、好ましくは1.5モル以上である。均一沈殿剤を上記範囲で使用することにより、pHを均一な状態でスイングさせ、結晶核を一様に発生させることができる。
【0032】
上記マグネシウム化合物とケイ素化合物の水熱合成は酸性水溶液(例えば、硝酸水溶液、硫酸水溶液等)の存在下で行うことが好ましく、酸性水溶液の使用量としては、マグネシウム化合物とケイ素化合物の総重量の例えば1〜3重量倍程度、好ましくは1〜1.5重量倍である。
【0033】
上記マグネシウム化合物とケイ素化合物の水熱合成時の反応温度は、例えば80℃以上、好ましくは100℃以上である。反応時の圧力は、例えば0.3MPa以上、好ましくは0.5MPa以上である。反応時間は、例えば24時間以上、好ましくは48時間以上である。
【0034】
水熱合成終了後は、例えば、乾燥、焼成(例えば、120〜200℃で0.5〜3.0時間程度加熱し、更に450〜600℃で1〜5時間程度加熱)、粉砕等を施すことにより、前記マグネシウムシリケート構造を有する化合物を製造することができる。
【0035】
前記スズを含む含酸素無機化合物としては、例えば、スズシリケート構造を有する化合物、酸化スズなどが挙げられる。
【0036】
前記スズシリケート構造を有する化合物におけるスズとケイ素の元素比(モル比:Sn/Si)は、例えば0.01〜10、好ましくは0.02〜2、さらに好ましくは0.04〜1である。Sn/Si元素比を10以下とすることで、触媒の比表面積を大きくでき、エタノール転化率を高くすることができる。また、Sn/Si元素比を0.1以上とすることで、触媒上の酸点の量を少なくし、エタノールからエチレンへの脱水反応(副反応)を抑制できる。
【0037】
前記スズシリケート構造を有する化合物は、例えば、スズ化合物及びケイ素化合物から水熱合成法により製造できる。より具体的には、圧力容器中において、均一沈殿剤の存在下でスズおよびケイ素を含む水溶液(例えば、酸性水溶液)を加熱することにより製造される。
【0038】
前記スズ化合物としては、例えば、塩化スズ(II)、酢酸スズ(II)、硫酸スズ(II)、硝酸スズ(II)などが挙げられる。これらは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0039】
前記ケイ素化合物、均一沈殿剤としては、前記と同様なものを挙げることができる。均一沈殿剤の使用量としては、スズ化合物1モルに対して、例えば1.2モル以上、好ましくは1.5モル以上である。
【0040】
上記スズ化合物とケイ素化合物の水熱合成は酸性水溶液(例えば、硝酸水溶液、硫酸水溶液等)の存在下で行うことが好ましく、酸性水溶液の使用量としては、スズ化合物とケイ素化合物の総重量の例えば1〜3重量倍程度、好ましくは1〜1.5重量倍である。
【0041】
上記スズ化合物とケイ素化合物の水熱合成時の反応温度、反応時間、水熱合成終了後の処理は、前記マグネシウムシリケート構造を有する化合物と同様である。
【0042】
スズシリケート構造を有する化合物は、前記マグネシウムシリケート構造を有する化合物と同時に合成することもできる。例えば、マグネシウム化合物、スズ化合物及びケイ素化合物から水熱合成法により、マグネシウムシリケート構造を有する化合物とスズシリケート構造を有する化合物を同時に合成できる。より具体的には、圧力容器中において、均一沈殿剤の存在下でマグネシウム、スズおよびケイ素を含む水溶液(例えば、酸性水溶液)を加熱することにより製造できる。
【0043】
前記酸化スズは市販のものを使用できる。酸化スズとしては、水熱合成法により調製されたものが好ましい。また、酸化スズは担体に担持された形態で使用することもできる。担体としては、特に限定されないが、前記マグネシウムシリケート構造を有する化合物を担体として用いることもできる。担体に担持された形態の酸化スズは、例えば、含浸法など慣用の触媒調製法により調製できる。この場合、スズ源としては前記スズ化合物を使用できる。
【0044】
本発明の触媒は、通常、粉粒体(成形品を含む)の形態で用いられる。本発明の触媒の粒径としては、特に限定されないが、平均粒径として、例えば、0.05〜10mm、好ましくは0.5〜5mm、さらに好ましくは0.85〜2mmである。また、本発明の触媒の粒径は、好ましくは、20メッシュ(目開き:0.85mm)以上、10メッシュ(目開き:2.0mm)以下(すなわち、10メッシュの篩を通過し、20メッシュの篩上に残る粒子の大きさ)である。
【0045】
本発明の触媒の好ましい態様としては、(1)マグネシウム化合物、スズ化合物及びケイ素化合物から水熱合成法により得られるシリケート構造を有する化合物の粉粒体からなる触媒、(2)マグネシウム化合物及びケイ素化合物から水熱合成法により得られるマグネシウムシリケート構造を有する化合物の粉粒体の表面に、酸化スズが担持された触媒、(3)マグネシウム化合物及びケイ素化合物から水熱合成法により得られるマグネシウムシリケート構造を有する化合物の粉粒体と、スズ化合物及びケイ素化合物から水熱合成法により得られるスズシリケート構造を有する化合物の粉粒体との組み合わせからなる触媒、又は(4)マグネシウム化合物及びケイ素化合物から水熱合成法により得られるマグネシウムシリケート構造を有する化合物の粉粒体と、酸化スズを含む粉粒体との組み合わせからなる触媒が挙げられる。上記(3)、(4)の2種の粉粒体の組み合わせからなる触媒は、2種の粉粒体の混合物であってもよく、各粉粒体の層を積層したものであってもよい。
【0046】
本発明の触媒は、該触媒を構成する元素として、マグネシウム、ケイ素、スズ以外の金属又は半金属元素を含有していてもよい。
【0047】
前記マグネシウム、ケイ素、スズ以外の金属又は半金属元素(以下、「他の元素」と称する場合がある)としては、例えば、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ガリウム、銀、インジウムなどが挙げられる。これらは1種であってもよいが、2種以上用いてもよい。
【0048】
前記他の元素(例えば、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ガリウム、銀及びインジウムからなる群より選択される少なくとも1種の元素)の総含有量は、例えば、触媒全体の重量の0.1〜5重量%、好ましくは0.2〜2.5重量%、さらに好ましくは0.5〜1重量%である。他の元素の総含有量が上記範囲を上回ると、前述の反応工程の特定の段階のみが促進されすぎたり、副反応が促進されたりして、1,3−ブタジエンの選択率が低下する傾向がある。
【0049】
[1,3−ブタジエンの製造方法]
本発明の1,3−ブタジエンの製造方法では、エタノールを含む原料を、上記の触媒に接触させることにより1,3−ブタジエンを得る。
【0050】
本発明の製造方法は、回分式、半回分式、連続式等の慣用の方法により行うことができる。回分式又は半回分式を採用した場合は、原料の使用率を極めて高くすることができる。また、本発明の製造方法は上記触媒を使用するため、連続式を採用しても、従来に比べて効率よく原料のエタノールを転化することができ、更に未反応原料を反応系に再利用することにより原料のエタノールの使用率を極めて高いレベルに向上させることができる。そのため、簡便且つ効率的に1,3−ブタジエンを分離、回収することができる連続式を採用することが好ましい。
【0051】
原料を上記触媒に接触させる方法としては、例えば、懸濁床方式、流動床方式、固定床方式等を挙げることができる。また、本発明は、気相法、液相法のいずれであってもよい。本発明では、特に、大量合成が可能な点、運転作業負荷が軽い点、及び触媒の回収、再生処理が簡便な点で、上記触媒を反応管に充填して触媒層を形成し、原料をガスとして流通させて気相にて反応させる固定床式気相連続流通反応装置を用いることが好ましい。
【0052】
気相で反応を行う場合、原料ガス(例えば、エタノールガス、好ましくはエタノールガスとアセトアルデヒドガスの混合物)は、希釈することなく反応器に供給してもよく、窒素、ヘリウム、アルゴン、炭酸ガスなどの不活性ガスにより適宜希釈して反応器に供給してもよい。
【0053】
反応温度としては、例えば300〜450℃程度、好ましくは350〜400℃である。反応温度を300℃以上とすることで、高い触媒活性が得られ、反応速度を速くでき、製造効率を向上できる。一方、反応温度を450℃以下とすることで、触媒の劣化を抑制できる。
【0054】
反応圧力は、常圧から高圧までの広い範囲で適宜設定できる。製造効率や装置構成などの観点から、1MPa以下に設定することが好ましい。
【0055】
連続式を採用する場合、触媒に対する原料の仕込み速度(W/F[g・min/mL]=(触媒重量)/(原料仕込速度))は、例えば、0.001〜0.1g・min/mL、好ましくは0.01〜0.05g・min/mL、特に好ましくは0.02〜0.04g・min/mLである。
【0056】
反応終了後、反応生成物は、例えば、濾過、濃縮、蒸留、抽出等の分離手段や、これらを組み合わせた分離手段により分離精製することができる。
【0057】
本発明の触媒は触媒活性成分が反応液中に溶出しにくく、懸濁床方式や流動床方式で触媒と原料を接触させた場合であっても、反応液から濾過、遠心分離等の物理的な分離手法により容易に回収することができる。また、未反応原料は回収し、再利用してもよい。
【0058】
また、本発明の触媒は、反応器内において、例えば350〜500℃程度、好ましくは450〜500℃の加熱下において空気を流通させ、例えば1〜24時間、好ましくは3〜6時間の再生処理を行うことで、触媒活性が未使用の触媒に対して90%以上まで回復し、再利用することができる。
【0059】
本発明の1,3−ブタジエンの製造方法は、エタノールを含む原料を上記触媒に接触させるため、エタノールの転化率に優れ、且つ、優れた選択率で1,3−ブタジエンを製造することができる。また、長時間連続して運転しても、触媒が劣化しにくく、1,3-ブタジエンの選択率が低下しにくい。
【0060】
本発明の製造方法は、1,3−ブタジエンを選択的に製造することができ、例えば反応温度350℃、W/F=0.03g・min/mLの条件で反応させた際の反応開始後10分後の1,3−ブタジエンの選択率は、例えば40%以上、好ましくは60%以上、特に好ましくは75%以上である。また、本発明の製造方法はエタノールの転化率に優れ、例えば反応温度350℃、W/F=0.03g・min/mLの条件で反応させた際の反応開始後10分後のエタノールの転化率は、例えば60%以上、好ましくは70%以上、さらに好ましくは80%以上、特に好ましくは90%以上である。
【0061】
本発明の1,3−ブタジエンの製造方法は、上記のように1,3−ブタジエンの選択率が非常に高いので、未反応エタノールを反応系に再利用することにより、エタノール使用率を向上することができ、工業的に効率よく1,3−ブタジエンを製造することができる。
【実施例】
【0062】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
【0063】
調製例1
0.1M硝酸水溶液、10mLに硝酸マグネシウム六水和物(関東化学(株)製)5.49gおよび尿素2.00gを加え溶解するまで攪拌した。得られた溶液にテトラエチルオルソシリケート(アルドリッチ製)5mLを加え、溶液が均一になるまで攪拌した。均一化した溶液を100mL圧力容器に移液し、密閉した後に、100℃で48時間加熱した。圧力容器中に形成したゲルを濾過で回収し、60℃で2日間、乾燥させ白色固体を得た。この固体を粉砕し、170℃で1時間、500℃で2時間焼成してマグネシウムシリケート結晶を得た。この粉末を打錠して固めた後に破砕し、10−20メッシュで分級して触媒(1)MgO−SiO
2(水熱合成;Mg/Si=1)を得た。
【0064】
調製例2
0.1M硝酸水溶液、10mLに硝酸マグネシウム六水和物(関東化学(株)製)5.49g、塩化スズ(II)(和光純薬工業(株)製)0.14gおよび尿素2.00gを加え溶解するまで攪拌した。得られた溶液にテトラエチルオルソシリケート(アルドリッチ製)5mLを加え、溶液が均一になるまで攪拌した。均一化した溶液を100mL圧力容器に移液し、密閉した後に、100℃で48時間加熱した。圧力容器中に形成したゲルを濾過で回収し、60℃で2日間、乾燥させ白色固体を得た。この固体を粉砕し、170℃で1時間、500℃で2時間焼成してスズ−マグネシウムシリケート結晶を得た。この粉末を打錠して固めた後に破砕し、10−20メッシュで分級して触媒(2)SnO
2−MgO−SiO
2(水熱合成;Sn/Mg/Si=4/100/100)を得た。
【0065】
調製例3
塩化スズ(II)を0.23g用いた以外は調製例2と同様にして触媒(3)SnO
2−MgO−SiO
2(水熱合成;Sn/Mg/Si=6/100/100)を得た。
【0066】
調製例4
塩化スズ(II)を0.41g用いた以外は調製例2と同様にして触媒(4)SnO
2−MgO−SiO
2(水熱合成;Sn/Mg/Si=10/100/100)を得た。
【0067】
調製例5
塩化スズ(II)を0.81g用いた以外は調製例2と同様にして触媒(5)SnO
2−MgO−SiO
2(水熱合成;Sn/Mg/Si=20/100/100)を得た。
【0068】
調製例6
硝酸マグネシウム六水和物を2.74g用いた以外は調製例2と同様にして触媒(6)SnO
2−MgO−SiO
2(水熱合成;Sn/Mg/Si=4/50/100)を得た。
【0069】
調製例7
硝酸マグネシウム六水和物を7.85g用いた以外は調製例2と同様にして触媒(7)SnO
2−MgO−SiO
2(水熱合成;Sn/Mg/Si=20/143/100)を得た。
【0070】
調製例8
イオン交換水、10mLに塩化スズ(II)(和光純薬工業(株)製)0.14gを溶解するまで攪拌した。得られた溶液に調製例(1)で得られた触媒(1)MgO−SiO
2(水熱合成;Mg/Si=1)を懸濁し、80℃で溶媒が蒸発するまで攪拌した後に60℃で2日間、乾燥させ白色粉末を得た。この粉末を、170℃で1時間、500℃で2時間焼成してスズ−マグネシウムシリケート結晶を得た。この粉末を打錠して固めた後に破砕し、10−20メッシュで分級して触媒(8)SnO
2−MgO−SiO
2(含浸;Sn/Mg/Si=4/100/100)を得た。
【0071】
調製例9
0.1M硝酸水溶液、10mLに塩化スズ(II)(和光純薬工業(株)製)4.06gおよび尿素2.00gを加え溶解するまで攪拌した。得られた溶液を100mL圧力容器に移液し、密閉した後に、100℃で48時間加熱した。圧力容器中に形成したゲルを濾過で回収し、60℃で2日間、乾燥させ白色固体を得た。この固体を粉砕し、170℃で1時間、500℃で2時間焼成して酸化スズ結晶を得た。この粉末を打錠して固めた後に破砕し、10−20メッシュで分級して触媒(9)SnO
2(水熱合成)を得た。
【0072】
調製例10
調製例(1)で得られた触媒(1)MgO−SiO
2(水熱合成;Mg/Si=1)2.15gと調製例(9)で得られた触媒(9)SnO
2(水熱合成)0.12gを磨砕しながら乾式混合して触媒(10)SnO
2−MgO−SiO
2(物理混合;Sn/Mg/Si=4/100/100)を得た。
【0073】
調製例11
0.1M硝酸水溶液、10mLに塩化スズ(II)(和光純薬工業(株)製)0.81gおよび尿素2.00gを加え溶解するまで攪拌した。得られた溶液にテトラエチルオルソシリケート(アルドリッチ製)5mLを加え、溶液が均一になるまで攪拌した。均一化した溶液を100mL圧力容器に移液し、密閉した後に、100℃で48時間加熱した。圧力容器中に形成したゲルを濾過で回収し、60℃で2日間、乾燥させ白色固体を得た。この固体を粉砕し、170℃で1時間、500℃で2時間焼成してスズ−シリケート結晶を得た。この粉末を打錠して固めた後に破砕し、10−20メッシュで分級して触媒(11)SnO
2−SiO
2(水熱合成;Sn/Si=1/5)を得た。
【0074】
調製例12
塩化スズ(II)を2.03g用いた以外は調製例11と同様にして触媒(12)SnO
2−SiO
2(水熱合成;Sn/Si=1/2)を得た。
【0075】
調製例13
塩化スズ(II)を4.06g用いた以外は調製例11と同様にして触媒(13)SnO
2−SiO
2(水熱合成;Sn/Si=1/1)を得た。
【0076】
調製例14
塩化スズ(II)を8.12g用いた以外は調製例11と同様にして触媒(14)SnO
2−SiO
2(水熱合成;Sn/Si=1/0.5)を得た。
【0077】
調製例15
調製例(1)で得られた触媒(1)MgO−SiO
2(水熱合成;Mg/Si=1)2.15gと調製例(11)で得られた触媒(11)SnO
2−SiO
2(水熱合成;Sn/Si=1/5)0.34gを磨砕しながら乾式混合して触媒(15)SnO
2−MgO−SiO
2(物理混合;Sn/Mg/Si=4/100/120)を得た。
【0078】
調製例16
調製例(1)で得られた触媒(1)MgO−SiO
2(水熱合成;Mg/Si=1)2.15gと調製例(12)で得られた触媒(12)SnO
2−SiO
2(水熱合成;Sn/Si=1/2)0.21gを磨砕しながら乾式混合して触媒(16)SnO
2−MgO−SiO
2(物理混合;Sn/Mg/Si=4/100/108)を得た。
【0079】
調製例17
調製例(1)で得られた触媒(1)MgO−SiO2(水熱合成;Mg/Si=1)2.15gと調製例(13)で得られた触媒(13)SnO
2−SiO
2(水熱合成;Sn/Si=1/1)0.16gを磨砕しながら乾式混合して触媒(17)SnO
2−MgO−SiO
2(物理混合;Sn/Mg/Si=4/100/104)を得た。
【0080】
調製例18
調製例(1)で得られた触媒(1)MgO−SiO2(水熱合成;Mg/Si=1)2.15gと調製例(14)で得られた触媒(14)SnO
2−SiO
2(水熱合成;Sn/Si=1/0.5)0.14gを磨砕しながら乾式混合して触媒(18)SnO
2−MgO−SiO
2(物理混合;Sn/Mg/Si=4/100/102)を得た。
【0081】
実施例1〜4、比較例1
表1〜5中に記載の触媒を、固定床式気相連続流通反応装置(反応器)に接続した6mmφのSUS製反応管に充填し、100mL/minのN
2流通下で電気炉により500℃に加熱した。
1時間の前処理を行った後に電気炉温度を400℃に保持し、6.5%エタノール/N
2ガスをW/F=0.03g・min・mL
-1の速度で反応器に流通させて、反応させた。反応器出口ガスは気液分離した後にクーラーにて冷却し凝縮液を回収した。
反応開始後10分、370分の各反応器出口ガス組成をガスクロマトグラフおよびカールフィッシャー水分計にて分析した。
なお、触媒としては、比較例1は調製例1、実施例1〜6は調製例2〜7、実施例7、8は調製例8、10で得られた触媒を使用した。実施例9は調製例9(前層)と調製例1(後層)で得られた触媒を重量比で1/18.7になるように2層充填して使用した。比較例2〜5は調製例11〜14、比較例6は調製例9、実施例10〜13は調製例15〜18で得られた触媒を使用した。結果を表1〜5に示す。表中、「COx」は一酸化炭素及び二酸化炭素を示し、「ブタジエン」は1,3−ブタジエンを示し、「HTS」は水熱合成を意味する。
【0082】
【表1】
【0083】
【表2】
【0084】
【表3】
【0085】
【表4】
【0086】
【表5】