【0013】
以下、本発明の実施形態を挙げて本発明の詳細を説明する。
本実施形態の人工大理石は、後述するプラスチック材料からなる基材の表面に所定厚さの撥水・撥油コートが被覆された構成を有する。
人工大理石の基材としては、SMC(シートモールディングコンパウンド)、BMC(バルクモールディングコンパウンド)、TMC(シックモールディングコンパウンド)等の熱硬化系繊維強化材料を加熱加圧成形法にて成形したものや、主原料としてメタクリル酸メチル等、充填材としてシリカ等が含有された材料を注入成形にて成形したものなどを使用することができる。
人工大理石の基材を構成するプラスチック材料は、不飽和ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂など、人工大理石の基材用として知られているプラスチック材料を適宜用いることができ、これらの材料に強化繊維が混入されたもの、シリカ等の充填材が含有されたものが好適に用いられる。
撥水・撥油コートの材料としては、特に制限はないが、人工大理石の基材との密着性が良好であり、安価であるシリコーン変性アクリルウレタン塗料を用いることが好ましい。
撥水・撥油コートの材料としてその他、アクリルシリコーン樹脂系塗料、シリコーン樹脂系塗料、フッ素樹脂系塗料等の熱硬化性塗料を用いることができる。
【0017】
第1工程で使用する洗浄液は、特に制限は無いが人工大理石を変質させないアルコール系溶剤が好ましい。第2工程で熱硬化塗料を塗布する方法としては、特に制限はないがスポンジ、ローラー等に塗料を染み込ませ、塗り広げることができる。
第3工程で塗料を拭取る方法としては、特に制限は無いが、紙タオル、綿など塗料を吸収できるもので人工大理石上の塗料を軽い力で拭取ることができる。
この第3工程では余分な塗料を除去して薄く均一な塗膜を得ることを目的に拭き取り作業を行う。第3工程においては塗布された塗料の90〜98質量%を拭き取ることが好ましい。
また、拭き取り作業の終盤に紙タオル、綿などの新しい面で拭き上げることで目視した場合に未コートの人工大理石と同等の外観を得ることができる。
この第3工程は人工大理石基材表面の光沢や外観を損なわない程度に薄く均一な塗膜を得るために行う。拭き取り前の塗膜の塗布量として5〜25cc/m
2の範囲とすることが好ましい。
第4工程で塗料を硬化させる方法としては、乾燥炉など熱を発生する装置で、熱硬化系塗料の硬化が完了するまで前述した如く90〜120℃程度に必要時間加熱することで硬化した塗膜を得ることができる。
【実施例】
【0018】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は以下の実施例の記載に制限されるものではない。各実施例において使用した人工大理石基材には、BMCを成形材料とするキッチンカウンターを使用した。
(実施例1)
熱硬化系塗料としてシリコーン変性アクリルウレタン塗料KTT−01(公進ケミカル株式会社製、商品名)100質量部、高沸点溶剤としてソルフィットAC(株式会社クラレ製、商品名、沸点174℃)300質量部、イソシアネート硬化剤としてKTT−01用硬化剤(公進ケミカル株式会社製、商品名)33.3部を配合、混合し撥水・撥油塗料を作製した。
次に、人工大理石基材の表面をエタノールで洗浄し(第1工程)、洗浄後の表面に前記撥水・撥油塗料を10cc/m
2になるように滴下し、メラミンスポンジで塗り広げた(第2工程)。
【0019】
塗り広げた後、室温で約5分間放置し、プロワイプソフトタオル(大王製紙株式会社製、商品名)を使用し、約3g/cm
2の軽い力で前記塗り広げた塗料を拭取り、完全に拭取る前にプロワイプソフトタオルの新しい面で人工大理石と同等の外観になるまで拭きあげた(第3工程)。
その後、前記人工大理石を90℃の乾燥炉に1時間入れ、前記撥水・撥油塗料を硬化させ(第4工程)、撥水・撥油コートを表面に塗布した人工大理石を得た。
(実施例2)
高沸点溶剤ソルフィットACの添加量を200質量部にした以外は実施例1と同様にして撥水・撥油コートを塗布した人工大理石を得た。
(実施例3)
高沸点溶剤ソルフィットACの添加量を100質量部にした以外は実施例1と同様にして高沸・撥油コートを塗布した人工大理石を得た。
【0020】
(比較例1)
人工大理石基材表面に何も塗布していない人工大理石基材を使用した。
(比較例2)
溶剤に酢酸ブチル(沸点124℃)を使用した以外は実施例1と同様にして撥水・撥油コートを塗布した人工大理石を得た。
(比較例3)
高沸点溶剤ソルフィットACの添加量を500質量部にした以外は実施例1と同様にして撥水・撥油コートを塗布した人工大理石を得た。
(比較例4)
実施例2と同様の撥水・撥油塗料を作製し、人工大理石基材の表面をエタノールで洗浄した後、前記撥水・撥油塗料を小形スプレーガンW101(アネスト岩田株式会社、商品名)で塗布した。塗布後、室温で約5分間放置し、90℃の乾燥炉に入れ前記撥水・撥油塗料を硬化させ、撥水・撥油コートを表面に塗布した人工大理石を得た。
(比較例5)
人工大理石用として市販されているシリコーン系撥水・撥油剤マーブルワックス(トクラス株式会社製、商品名)を人工大理石基材表面中央に少量滴下し、メラミンスポンジ、または軟らかい乾いた布で薄く延ばすように塗り広げた。塗り広げてから約5分間そのまま放置し、マーブルワックスを基材表面に浸透させる。その後、軟らかい乾いた布でから拭きした後、室温に8時間放置して完全に乾燥させ撥水・撥油コートを表面に塗布した人工大理石を得た。溶剤はIPA(イソプロピルアルコール:沸点82.4℃)を用い、その他は実施例1と同等組成の塗料を用いた。
【0021】
(評価方法)
得られた撥水・撥油コートを表面に塗布した人工大理石を用いて、膜厚、接触角、色調の測定、外観、耐エタノール性の評価を以下に記載する方法で行った。
以上の結果を以下の表1に記載する。
【0022】
【表1】
【0023】
「1」膜厚
撥水・撥油コートした人工大理石を切断し断面部をデジタルマイクロスコープVHX−5000(株式会社キーエンス製、装置名)にて拡大し観察するか、撥水・撥油コートしたシリコンウエハーを破断し断面部を走査型電子顕微鏡S−4500(株式会社日立ハイテクノロジーズ製、装置名)にて拡大観察し膜厚を測定した。
「2」外観
人工大理石表面の光沢を光沢度計で評価した。また、目視にて、異物の有無、塗料の斑を確認した。
「3」接触角
人工大理石上に1μLの水、1μLのオレイン酸を滴下し、θ/2法でそれぞれの接触角を測定した。
「4」耐エタノール性
切断した人工大理石をエタノール(99.5)(和光純薬工業株式会社製)に24時間全漬し、人工大理石をエタノールより取り出した後24時間風乾させ接触角にて評価した。
「5」耐繰り返し洗浄性
試験片に水を含ませた綿100%の布巾を当て、5g/cm
2の荷重をかけたまま7000回往復摩擦操作を行い、試験後24時間風乾させて摩擦部分の接触角にて評価した。
【0024】
「6」
表1に示した結果から、実施例1〜3の人工大理石は、硬化後の膜厚を0.3〜1.0μmにすることで、初期の接触角と同様にエタノール浸漬後及び繰り返し洗浄試験後の接触角が撥水・撥油性を有する人工大理石となる。
加えて、得られた実施例1〜3の人工大理石は未コートの人工大理石(比較例1)と外観は変わらず、異物の混入も無く補修の必要が無い人工大理石であった。
【0025】
一方、比較例2の人工大理石では高沸点の溶剤を添加していない為、拭き上げる際の塗膜の斑を低減させることができず外観を損ねる結果となった。比較例3の人工大理石では、塗膜が薄すぎる為、繰り返し洗浄試験で撥水・撥油性が低下する。
比較例4では膜厚が厚く光沢が出たことにより人工大理石の外観を損ない、生産上、基材の光沢に合わせ都度塗料を調整する必要性があること、また異物の混入が確認されたことから補修が必要であり人工大理石を生産する上で経済的に好ましくない。
比較例5では塗膜が硬化物で無いためエタノール浸漬後や繰り返し洗浄試験後に撥水・撥油性が低下し、経年使用や除菌アルコールなどのアルコール系洗浄剤の使用により、次第に撥水・撥油性能が低下していき、実使用上耐久性のある人工大理石とは言えない。
【0026】
これら実施例相当の人工大理石であるならば、人工大理石をキッチンカウンターとして適用した場合、調理で使用した油や食品の油汚れによる汚れが付きにくく、防汚性に優れるとともに、汚れを落とし易い人工大理石のキッチンカウンターを提供できる。また、実施例相当の人工大理石であるならば、模様や色調などの外観に優れた人工大理石を提供できる。