特許第6652394号(P6652394)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6652394防汚性能を有する人工大理石とその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6652394
(24)【登録日】2020年1月27日
(45)【発行日】2020年2月19日
(54)【発明の名称】防汚性能を有する人工大理石とその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/00 20060101AFI20200210BHJP
   B32B 27/40 20060101ALI20200210BHJP
   C04B 41/63 20060101ALI20200210BHJP
   C04B 41/64 20060101ALI20200210BHJP
【FI】
   B32B27/00 101
   B32B27/40
   C04B41/63
   C04B41/64
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-14707(P2016-14707)
(22)【出願日】2016年1月28日
(65)【公開番号】特開2017-132157(P2017-132157A)
(43)【公開日】2017年8月3日
【審査請求日】2019年1月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】301050924
【氏名又は名称】株式会社ハウステック
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100139686
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 史朗
(74)【代理人】
【識別番号】100126893
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 哲男
(74)【代理人】
【識別番号】100196058
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 彰雄
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100134544
【弁理士】
【氏名又は名称】森 隆一郎
(72)【発明者】
【氏名】本田 則夫
(72)【発明者】
【氏名】細野 覚
【審査官】 春日 淳一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−273944(JP,A)
【文献】 特開2014−180839(JP,A)
【文献】 特開2006−088122(JP,A)
【文献】 特開2002−146294(JP,A)
【文献】 特開2001−329087(JP,A)
【文献】 特開2014−043530(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/034030(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0218329(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B1/00−43/00
B05D1/00−7/26
C04B41/00−41/72
C09D1/00−10/00
101/00−201/10
C09K3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
撥水・撥油コートが表面に形成された人工大理石であって、前記撥水・撥油コートが熱硬化系塗料であるシリコーン変性アクリルウレタン塗料の硬化物からなり、硬化後の膜厚が0.3〜1μmである人工大理石。
【請求項2】
前記人工大理石をエタノールに24時間浸漬した後、水の接触角が90度以上でかつオレイン酸の接触角が40度以上である請求項1記載の人工大理石。
【請求項3】
前記熱硬化系塗料に沸点120℃以上の高沸点溶剤が添加された請求項1または請求項2に記載の人工大理石。
【請求項4】
未コートの人工大理石の塗布面を洗浄する第1工程と、前記塗布面に前記熱硬化系塗料であるシリコーン変性アクリルウレタン塗料を塗布する第2工程と、前記塗布した塗料の90〜98質量%を拭き取り、前記未コートの人工大理石の外観と略等しくなるまで塗料を拭き上げる第3工程と、前記拭き上げた塗料を熱で硬化させる第4工程と、を含む請求項1乃至請求項のいずれか一項に記載の人工大理石の製造方法。
【請求項5】
前記第2工程によりシリコーン変性アクリルウレタン塗料の塗布量を5〜25cc/mとすることを特徴とする請求項に記載の人工大理石の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水や油を弾き、汚れを落としやすい人工大理石及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
不飽和ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂などのプラスチック材料からなる人工大理石は、プレス成形や注型成形などの成形方法で製造されているが、前記人工大理石をキッチンや浴室などの水周りで使用する場合、汚れや水垢などが付着し易く、外観や清潔さに問題点があった。
上記問題点を解決する為、前記プラスチック材料にシリコーン等の撥水・撥油性を有する材料を添加する方法が考えられている。しかし、人工大理石の基材に撥水・撥油材料を添加すると撥水・撥油性能が必要な基材表面だけでなく、基材中にも撥水・撥油材料を添加させなければならずコスト増となり経済上好ましくない。また、基材表面に低表面自由エネルギー層を有する塗膜をスプレー塗装により付与することで水垢や汚れの付着力を小さくする方法が考えられる。しかし、前記方法では人工大理石の模様、色調、光沢を損ない、また塗膜への異物混入やその補修により多くの時間を費やし加工コストが増え、また異物混入対策として生産設備の投資も増え、生産上、経済上好ましくない。
【0003】
そこで、人工大理石の基材表面に厚さ0.01〜0.2μm程度の塗膜を設けることで人工大理石の外観を損なうことがなく、基材表面に低表面エネルギー層を形成した技術が開示されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−329087号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の人工大理石では、基材表面に塗布する塗料が常温乾燥タイプでありアルコールなどの溶剤に弱く、また塗膜の膜厚が薄すぎるため清掃時の磨耗など実使用上の耐久性に課題があった。
【0006】
本発明は、前記の課題に鑑みなされたものであって、本発明の目的は、人工大理石表面の外観を損なわず、安価で実使用上の耐久性がある防汚膜を付加させた人工大理石とその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決する手段として、以下の構成を有する。
(1)本発明の人工大理石は、撥水・撥油コートが表面に形成された人工大理石であって、前記撥水・撥油コートが熱硬化系塗料であるシリコーン変性アクリルウレタン塗料の硬化物からなり、硬化後の膜厚が0.3〜1μmであることを特徴とする。
膜厚0.3〜1μmの熱硬化系塗料の硬化物からなる撥水・撥油コートが表面に形成されているならば、表面に汚れが付着し難く、防汚性能に優れる人工大理石を提供できる。また、膜厚0.3〜1μmの撥水・撥油コートであるならば、必要な厚さを有し、繰り返しの清掃作業に耐えて撥水・撥油性が低下することがなく、また、膜が厚すぎることもないので大理石としての表面模様や色調などの外観を損なうこともなく、膜形成中に異物の巻き込みを起こすおそれもない。膜形成中に異物の巻き込みを無くすることで補修の必要が無くなり、製造時の加工コストの上昇も起こり難い人工大理石を提供できる。
シリコーン変性アクリルウレタン塗料を硬化させた撥水・撥油コートであるならば人工大理石の基材に対する密着性に優れ、安価な特徴を有する。
【0008】
(2)本発明の人工大理石において、エタノールに24時間浸漬後の水の接触角が90度以上でかつオレイン酸の接触角が40度以上であることが好ましい。
水の接触角とオレイン酸の接触角の両方が高いことで水の弾きが強く、植物油の弾きも良好な撥水・撥油コートを備えた人工大理石であるならば、実使用上拭き取り性が高く、防汚性能の優れた人工大理石を提供できる。
【0010】
)本発明において、前記熱硬化系塗料に沸点120℃以上の高沸点の溶剤が添加されていることが好ましい。
高沸点の溶剤を添加した熱硬化系塗料が熱硬化された撥水・撥油コートであるならば人工大理石の基材表面に塗装し易く、熱硬化後に人工大理石の基材に密着し易い特徴を有する。
【0011】
)本発明の撥水・撥油コートを表面に塗布した人工大理石の製造方法は、未コートの人工大理石の塗布面を洗浄する第1工程と、前記塗布面に前記熱硬化系塗料であるシリコーン変性アクリルウレタン塗料を塗布する第2工程と、前記塗布した塗料の90〜98質量%を拭き取り、前記未コートの人工大理石の外観と略等しくなるまで塗料を拭き上げる第3工程と、前記拭き上げた塗料を熱で硬化させる第4工程と、を含むことを特徴とする。
第3工程を行うことにより、余分な塗料を除去して必要な厚さの塗料を残し、硬化後に目的の膜厚を有する熱硬化系塗料の硬化物を得ることができる。
)本発明において、前記第2工程により塗料の塗布量を5〜25cc/mの範囲とすることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、膜厚0.3〜1μmの熱硬化系塗料であるシリコーン変性アクリルウレタン塗料の硬化物からなる撥水・撥油コートが表面に形成されているので、表面に汚れが付着し難く、防汚性能に優れる人工大理石を提供できる。また、膜厚0.3〜1μmの撥水・撥油コートであるならば、繰り返しの清掃作業に耐えて撥水・撥油性が低下することがなく、表面模様や色調などの外観も綺麗な人工大理石を提供できる。
また、適切な膜厚の撥水・撥油コートを備えることで膜形成中に異物の巻き込みを引き起こすおそれもなく、製造時の補修の必要が無くなり、製造時の加工コストの上昇を生じることのない人工大理石を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を挙げて本発明の詳細を説明する。
本実施形態の人工大理石は、後述するプラスチック材料からなる基材の表面に所定厚さの撥水・撥油コートが被覆された構成を有する。
人工大理石の基材としては、SMC(シートモールディングコンパウンド)、BMC(バルクモールディングコンパウンド)、TMC(シックモールディングコンパウンド)等の熱硬化系繊維強化材料を加熱加圧成形法にて成形したものや、主原料としてメタクリル酸メチル等、充填材としてシリカ等が含有された材料を注入成形にて成形したものなどを使用することができる。
人工大理石の基材を構成するプラスチック材料は、不飽和ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂など、人工大理石の基材用として知られているプラスチック材料を適宜用いることができ、これらの材料に強化繊維が混入されたもの、シリカ等の充填材が含有されたものが好適に用いられる。
撥水・撥油コートの材料としては、特に制限はないが、人工大理石の基材との密着性が良好であり、安価であるシリコーン変性アクリルウレタン塗料を用いることが好ましい。
撥水・撥油コートの材料としてその他、アクリルシリコーン樹脂系塗料、シリコーン樹脂系塗料、フッ素樹脂系塗料等の熱硬化性塗料を用いることができる。
【0014】
前記塗料に使用する溶剤としては、塗料の塗布のし易さ、拭き上げる際の塗膜の斑を低減させることを考慮し、塗料が乾燥し難い、沸点が120℃以上の溶剤が好ましく、さらに好ましくは沸点が150℃以上の溶剤を選択できる。
撥水・撥油コートの接触角としては、水の接触角が90度以上、オレイン酸の接触角が40度以上であることが好ましい。水の接触角が90度以下では水の弾きが弱く、またオレイン酸の接触角が40度以下では植物油などの弾きが弱く、実使用上、拭取り性などの効果が実感し難い。
撥水・撥油コートの膜厚としては、硬化後の膜厚で0.3〜1μmであることが好ましい。膜厚が0.3μm以下であると繰り返しの洗浄作業による撥水・撥油の機能の低下が著しく、実使用では使用できない。1.0μm以上の膜厚では人工大理石の模様や色調などの外観を損ない、また塗膜形成中に異物を巻き込み易く、その補修により多くの時間を費やし加工コストが増え生産上、経済上好ましくない。
【0015】
塗料の硬化条件としては、特に制限はないが、シリコーン変性アクリルウレタン塗料にイソシアネートを硬化剤として使用した場合、塗膜の表面性能を確保する上で90℃以上の硬化温度が必要である。これにより塗膜の耐溶剤性が向上し、除菌アルコール等のアルコール系洗剤を使用可能となる。一方、加熱温度を120℃以上に上げると基材である人工大理石の色調が黄変して人工大理石の外観を損ねてしまう。
【0016】
塗料の塗布方法は、未コートの人工大理石の塗布面を洗浄する第1工程と、前記塗布面に前記熱硬化系塗料を塗布する第2工程と、前記塗布した塗料の90〜98質量%を拭き取り、前記未コートの人工大理石の外観と略等しくなるまで塗料を拭き上げる第3工程と、前記拭き上げた塗料を熱で硬化させる第4工程とからなる。
【0017】
第1工程で使用する洗浄液は、特に制限は無いが人工大理石を変質させないアルコール系溶剤が好ましい。第2工程で熱硬化塗料を塗布する方法としては、特に制限はないがスポンジ、ローラー等に塗料を染み込ませ、塗り広げることができる。
第3工程で塗料を拭取る方法としては、特に制限は無いが、紙タオル、綿など塗料を吸収できるもので人工大理石上の塗料を軽い力で拭取ることができる。
この第3工程では余分な塗料を除去して薄く均一な塗膜を得ることを目的に拭き取り作業を行う。第3工程においては塗布された塗料の90〜98質量%を拭き取ることが好ましい。
また、拭き取り作業の終盤に紙タオル、綿などの新しい面で拭き上げることで目視した場合に未コートの人工大理石と同等の外観を得ることができる。
この第3工程は人工大理石基材表面の光沢や外観を損なわない程度に薄く均一な塗膜を得るために行う。拭き取り前の塗膜の塗布量として5〜25cc/mの範囲とすることが好ましい。
第4工程で塗料を硬化させる方法としては、乾燥炉など熱を発生する装置で、熱硬化系塗料の硬化が完了するまで前述した如く90〜120℃程度に必要時間加熱することで硬化した塗膜を得ることができる。
【実施例】
【0018】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は以下の実施例の記載に制限されるものではない。各実施例において使用した人工大理石基材には、BMCを成形材料とするキッチンカウンターを使用した。
(実施例1)
熱硬化系塗料としてシリコーン変性アクリルウレタン塗料KTT−01(公進ケミカル株式会社製、商品名)100質量部、高沸点溶剤としてソルフィットAC(株式会社クラレ製、商品名、沸点174℃)300質量部、イソシアネート硬化剤としてKTT−01用硬化剤(公進ケミカル株式会社製、商品名)33.3部を配合、混合し撥水・撥油塗料を作製した。
次に、人工大理石基材の表面をエタノールで洗浄し(第1工程)、洗浄後の表面に前記撥水・撥油塗料を10cc/mになるように滴下し、メラミンスポンジで塗り広げた(第2工程)。
【0019】
塗り広げた後、室温で約5分間放置し、プロワイプソフトタオル(大王製紙株式会社製、商品名)を使用し、約3g/cmの軽い力で前記塗り広げた塗料を拭取り、完全に拭取る前にプロワイプソフトタオルの新しい面で人工大理石と同等の外観になるまで拭きあげた(第3工程)。
その後、前記人工大理石を90℃の乾燥炉に1時間入れ、前記撥水・撥油塗料を硬化させ(第4工程)、撥水・撥油コートを表面に塗布した人工大理石を得た。
(実施例2)
高沸点溶剤ソルフィットACの添加量を200質量部にした以外は実施例1と同様にして撥水・撥油コートを塗布した人工大理石を得た。
(実施例3)
高沸点溶剤ソルフィットACの添加量を100質量部にした以外は実施例1と同様にして高沸・撥油コートを塗布した人工大理石を得た。
【0020】
(比較例1)
人工大理石基材表面に何も塗布していない人工大理石基材を使用した。
(比較例2)
溶剤に酢酸ブチル(沸点124℃)を使用した以外は実施例1と同様にして撥水・撥油コートを塗布した人工大理石を得た。
(比較例3)
高沸点溶剤ソルフィットACの添加量を500質量部にした以外は実施例1と同様にして撥水・撥油コートを塗布した人工大理石を得た。
(比較例4)
実施例2と同様の撥水・撥油塗料を作製し、人工大理石基材の表面をエタノールで洗浄した後、前記撥水・撥油塗料を小形スプレーガンW101(アネスト岩田株式会社、商品名)で塗布した。塗布後、室温で約5分間放置し、90℃の乾燥炉に入れ前記撥水・撥油塗料を硬化させ、撥水・撥油コートを表面に塗布した人工大理石を得た。
(比較例5)
人工大理石用として市販されているシリコーン系撥水・撥油剤マーブルワックス(トクラス株式会社製、商品名)を人工大理石基材表面中央に少量滴下し、メラミンスポンジ、または軟らかい乾いた布で薄く延ばすように塗り広げた。塗り広げてから約5分間そのまま放置し、マーブルワックスを基材表面に浸透させる。その後、軟らかい乾いた布でから拭きした後、室温に8時間放置して完全に乾燥させ撥水・撥油コートを表面に塗布した人工大理石を得た。溶剤はIPA(イソプロピルアルコール:沸点82.4℃)を用い、その他は実施例1と同等組成の塗料を用いた。
【0021】
(評価方法)
得られた撥水・撥油コートを表面に塗布した人工大理石を用いて、膜厚、接触角、色調の測定、外観、耐エタノール性の評価を以下に記載する方法で行った。
以上の結果を以下の表1に記載する。
【0022】
【表1】
【0023】
「1」膜厚
撥水・撥油コートした人工大理石を切断し断面部をデジタルマイクロスコープVHX−5000(株式会社キーエンス製、装置名)にて拡大し観察するか、撥水・撥油コートしたシリコンウエハーを破断し断面部を走査型電子顕微鏡S−4500(株式会社日立ハイテクノロジーズ製、装置名)にて拡大観察し膜厚を測定した。
「2」外観
人工大理石表面の光沢を光沢度計で評価した。また、目視にて、異物の有無、塗料の斑を確認した。
「3」接触角
人工大理石上に1μLの水、1μLのオレイン酸を滴下し、θ/2法でそれぞれの接触角を測定した。
「4」耐エタノール性
切断した人工大理石をエタノール(99.5)(和光純薬工業株式会社製)に24時間全漬し、人工大理石をエタノールより取り出した後24時間風乾させ接触角にて評価した。
「5」耐繰り返し洗浄性
試験片に水を含ませた綿100%の布巾を当て、5g/cmの荷重をかけたまま7000回往復摩擦操作を行い、試験後24時間風乾させて摩擦部分の接触角にて評価した。
【0024】
「6」
表1に示した結果から、実施例1〜3の人工大理石は、硬化後の膜厚を0.3〜1.0μmにすることで、初期の接触角と同様にエタノール浸漬後及び繰り返し洗浄試験後の接触角が撥水・撥油性を有する人工大理石となる。
加えて、得られた実施例1〜3の人工大理石は未コートの人工大理石(比較例1)と外観は変わらず、異物の混入も無く補修の必要が無い人工大理石であった。
【0025】
一方、比較例2の人工大理石では高沸点の溶剤を添加していない為、拭き上げる際の塗膜の斑を低減させることができず外観を損ねる結果となった。比較例3の人工大理石では、塗膜が薄すぎる為、繰り返し洗浄試験で撥水・撥油性が低下する。
比較例4では膜厚が厚く光沢が出たことにより人工大理石の外観を損ない、生産上、基材の光沢に合わせ都度塗料を調整する必要性があること、また異物の混入が確認されたことから補修が必要であり人工大理石を生産する上で経済的に好ましくない。
比較例5では塗膜が硬化物で無いためエタノール浸漬後や繰り返し洗浄試験後に撥水・撥油性が低下し、経年使用や除菌アルコールなどのアルコール系洗浄剤の使用により、次第に撥水・撥油性能が低下していき、実使用上耐久性のある人工大理石とは言えない。
【0026】
これら実施例相当の人工大理石であるならば、人工大理石をキッチンカウンターとして適用した場合、調理で使用した油や食品の油汚れによる汚れが付きにくく、防汚性に優れるとともに、汚れを落とし易い人工大理石のキッチンカウンターを提供できる。また、実施例相当の人工大理石であるならば、模様や色調などの外観に優れた人工大理石を提供できる。