特許第6652415号(P6652415)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6652415
(24)【登録日】2020年1月27日
(45)【発行日】2020年2月26日
(54)【発明の名称】排水栓装置
(51)【国際特許分類】
   E03C 1/22 20060101AFI20200217BHJP
   E03C 1/23 20060101ALI20200217BHJP
【FI】
   E03C1/22 B
   E03C1/22 C
   E03C1/23 Z
【請求項の数】2
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-49434(P2016-49434)
(22)【出願日】2016年3月14日
(65)【公開番号】特開2017-166130(P2017-166130A)
(43)【公開日】2017年9月21日
【審査請求日】2019年1月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】392028767
【氏名又は名称】株式会社日本アルファ
(74)【代理人】
【識別番号】100111095
【弁理士】
【氏名又は名称】川口 光男
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 弘貴
【審査官】 立澤 正樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−032030(JP,A)
【文献】 特開2010−255282(JP,A)
【文献】 特開平09−316957(JP,A)
【文献】 特開2016−017382(JP,A)
【文献】 特開2015−048697(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0255054(US,A1)
【文献】 実開昭54−099947(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03C 1/22
E03C 1/23
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
槽体の排水口において上下動可能な状態で支持された棒状の支持軸と、
前記支持軸の先端部に取付けられた、前記排水口を開閉するための栓蓋とを備え、
前記支持軸の上下動に伴い前記排水口が開閉される排水栓装置であって、
前記栓蓋は、
円板状の本体部と、
前記支持軸の先端部が挿通可能な穴部を具備し、前記本体部の背面中央部分に設けられた筒状の取付用筒部とを有し、
前記取付用筒部の内周には、
前記穴部の開口側に位置する小径部と、
自身の内径が前記小径部の内径よりも大きくされるとともに、前記穴部の開口とは反対側において前記小径部と隣接する大径部とが形成されており、
前記支持軸の先端部には、環状の溝部が形成されるとともに、当該溝部に対し、径方向に弾性変形可能な樹脂製のCリングが配置されており、
前記Cリングは、径方向内側に弾性変形した状態となることで、前記小径部を通過可能に構成されており、
前記穴部に前記支持軸の先端部及び前記Cリングが挿通され、前記Cリングが前記大径部に配置された状態となることにより、前記穴部からの前記支持軸の抜けが規制された状態で前記支持軸の先端部に対し前記栓蓋が取付けられており、
前記大径部は、前記穴部の深さ方向に沿った中心よりも前記穴部の開口側に形成され、
前記支持軸の先端部に前記栓蓋が取付けられている状態において、前記支持軸の先端面が前記本体部に接触又は近接するように構成されていることを特徴とする排水栓装置。
【請求項2】
前記取付用筒部は、自身の軸方向に延び、先端部にて開口するスリットを備えるとともに、弾性変形可能な樹脂からなり、
前記取付用筒部の弾性変形に伴い前記スリットが拡幅することで、少なくとも前記小径部における内径が拡大可能に構成されていることを特徴とする請求項1に記載の排水栓装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、槽体の排水口に設けられる排水栓装置に関する。
【背景技術】
【0002】
排水栓装置は、槽体(例えば、浴槽や洗面器など)の排水口を開閉するためのものである。排水栓装置は、排水口において上下動可能な状態で設けられた支持軸と、当該支持軸の先端部に取付けられた栓蓋とを備えている。そして、支持軸の下動に伴い、栓蓋が槽体又はこれに取付けられた部材に接触することにより排水口が閉鎖され、支持軸の上動に伴い、栓蓋が槽体等から離間することにより排水口が開放される。
【0003】
また、一般に栓蓋は、円板状の本体部と、当該本体部の背面中央部分に設けられた筒状の取付用筒部とを備えている。そして、取付用筒部の内周に支持軸の先端部が嵌合されることで、支持軸に対し栓蓋が取付けられる。ここで、支持軸に対する栓蓋の取付手法として、柔軟な材質からなる環状の弾性部材を用いた手法が提案されている(例えば、特許文献1等参照)。
【0004】
当該取付手法について具体的に説明すると、支持軸の先端部には、環状の凹溝が形成されている一方、取付用筒部の内周には、内周側部分が取付用筒部の内周面から突出した状態で前記弾性部材が埋設されている。そして、支持軸の先端部を取付用筒部の内周へと押し込み、前記凹溝に前記弾性部材の内周側部分を配置することで、支持軸に対し栓蓋が取付けられることとなる。また、取付時とは逆に、取付用筒部から支持軸を引抜くことで、支持軸から栓蓋が取外されることとなる。尚、弾性部材としては、ゴム製のOリングが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3928144号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記手法では、支持軸から栓蓋を着脱する際に、支持軸の外周面と弾性部材との間で比較的大きな摩擦力が生じてしまうおそれがある。そのため、支持軸に対する栓蓋の着脱を容易に行うことができないおそれがある。
【0007】
また、着脱時に生じる摩擦力によって、凹溝から弾性部材が外れてしまったり、弾性部材自体に破損が生じてしまったりする可能性がある。
【0008】
さらに、支持軸に栓蓋を取付ける際に、前記凹溝に対し弾性部材の内周側部分が配置されたか否か(つまり、支持軸に対し栓蓋が正常に取付けられたか否か)については、例えば、手に加わる負荷などに基づいて判断する他なく、取付が正常に行われたか否かを判断することが難しい。従って、取付作業に係る利便性が良好であるとは言い難い。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、支持軸に対する栓蓋の着脱を容易に行うことができるとともに、破損防止や取付作業に係る利便性向上を図ることができる排水栓装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
以下、上記目的を解決するのに適した各手段につき、項分けして説明する。なお、必要に応じて対応する手段に特有の作用効果を付記する。
【0011】
手段1.槽体の排水口において上下動可能な状態で支持された棒状の支持軸と、
前記支持軸の先端部に取付けられた、前記排水口を開閉するための栓蓋とを備え、
前記支持軸の上下動に伴い前記排水口が開閉される排水栓装置であって、
前記栓蓋は、
円板状の本体部と、
前記支持軸の先端部が挿通可能な穴部を具備し、前記本体部の背面中央部分に設けられた筒状の取付用筒部とを有し、
前記取付用筒部の内周には、
前記穴部の開口側に位置する小径部と、
自身の内径が前記小径部の内径よりも大きくされるとともに、前記穴部の開口とは反対側において前記小径部と隣接する大径部とが形成されており、
前記支持軸の先端部には、環状の溝部が形成されるとともに、当該溝部に対し、径方向に弾性変形可能な樹脂製のCリングが配置されており、
前記Cリングは、径方向内側に弾性変形した状態となることで、前記小径部を通過可能に構成されており、
前記穴部に前記支持軸の先端部及び前記Cリングが挿通され、前記Cリングが前記大径部に配置された状態となることにより、前記穴部からの前記支持軸の抜けが規制された状態で前記支持軸の先端部に対し前記栓蓋が取付けられており、
前記大径部は、前記穴部の深さ方向に沿った中心よりも前記穴部の開口側に形成され、
前記支持軸の先端部に前記栓蓋が取付けられている状態において、前記支持軸の先端面が前記本体部に接触又は近接するように構成されていることを特徴とする排水栓装置。
【0012】
上記手段1によれば、穴部に対しCリングの装着された支持軸の先端部を押し入れることで、Cリングは、小径部への接触に伴い径方向内側に弾性変形した状態で小径部を通過する。そして、Cリングは、大径部に到達することで、自身の弾性変形が完全に又はある程度解除され、大径部に配置される。その結果、栓蓋は、穴部からの支持軸の抜けが規制された状態で、支持軸の先端部に取付けられることとなる。つまり、上記手段1によれば、穴部に対しCリングの装着された支持軸の先端部を押し入れるという簡易な手法により、穴部からの支持軸の抜けが規制された状態で支持軸の先端部に対し栓蓋を取付けることができる。
【0013】
一方、穴部から支持軸を引抜く方向に沿って支持軸や栓蓋へと力を加えることで、Cリングは、小径部への接触に伴い径方向内側に弾性変形した状態で小径部を通過し、その結果、支持軸から栓蓋が取外すことができる。つまり、穴部から支持軸を引抜く方向に沿って支持軸等に力を加えるという簡易な手法により、支持軸から栓蓋を取外すことができる。
【0014】
そして、上記手段1によれば、Cリングは樹脂製であるため、Cリングが小径部を通過する際に、Cリング及び小径部間で生じる摩擦力を比較的小さくすることができる。従って、穴部において支持軸をスムーズに移動させることができ、支持軸に対する栓蓋の着脱(取付・取外)を容易に行うことができる。
【0015】
また、上述の通り、Cリング及び小径部間で生じる摩擦力を小さくできることによって、着脱時にCリングに加わる負荷を小さくすることができる。その結果、着脱に伴う装置の破損をより確実に防止することができる。
【0016】
さらに、上記手段1によれば、取付時において、大径部にCリングが到達し、Cリングの弾性変形が解除された際には、弾性変形の解除に伴い生じた反発力により、音や衝撃(クリック感)を生じさせることができる。従って、この音や衝撃に基づいて、支持軸に対し栓蓋が正常に取付けられたか否かを容易に把握することができる。その結果、取付作業に係る利便性を高めることができる。
【0017】
ところで、大径部が穴部の奥に形成されている場合には、支持軸に対する栓蓋の取付時に、穴部の奥へとCリングを押し入れる必要が生じる。しかしながら、この場合には、大径部に到達するまでのCリングの移動距離が比較的大きくなるため、取付作業中のある程度の時間、小径部の内周にCリングの配置されている状態が維持されることとなる。そして、この状態では、小径部に対しCリングが圧接しているため、支持軸に対し栓蓋がある程度安定した状態となる。そのため、実際にはCリングが大径部に配置されておらず、支持軸に対し栓蓋が正常に取付けられていないにも関わらず、取付が正常に完了したものと勘違いしてしまうおそれがある。すなわち、取付ミスが生じやすくなってしまうおそれがある。
【0018】
この点、上記手段によれば、大径部は、穴部の開口側(手前側)に形成されている。従って、取付作業時に、Cリングが小径部を通過する距離を比較的小さくすることができる。そして、この点と、上記作用効果(Cリングは樹脂製であり、Cリング及び小径部間で生じる摩擦力を小さくできる点)とが相俟って、取付作業時には、通常、Cリングは小径部を瞬時に通過することとなる。そのため、通常、取付作業中に、小径部の内周にCリングが配置されている状態のまま維持されるといった事態は生じないこととなる。その結果、支持軸に対し栓蓋をより確実に正常な状態で取付けることが可能となり、取付ミスの発生防止をより確実に図ることができる。
【0019】
さらに、上記手段によれば、取付用筒部の開口部にCリングを接触させた状態で、Cリングを穴部へとほんの少しだけ押し込めば、支持軸に対し栓蓋を正常に取付けることができる。従って、支持軸に対する栓蓋の着脱をより容易に行うことができる。
【0020】
また、上記手段によれば、支持軸に対し栓蓋が正常に取付けられていない状態(単に支持軸の一部が穴部に入っている状態)では、通常、Cリングが穴部に入っておらず、外部に露出した状態となる。従って、外部からCリングを確認できるか否かに基づき、支持軸に対する栓蓋の取付が正常に行われているかを判断することができる。これにより、取付ミスの発生をより効果的に防止することができる。
【0021】
加えて、上記手段によれば、支持軸の先端部に栓蓋が取付けられている状態(Cリングが大径部に配置された瞬間を含む)において、支持軸の先端面が本体部に接触又は近接するように構成されている。そのため、取付作業に際し、支持軸を穴部に押し入れたときに、支持軸の先端面が本体部に接触することで、穴部に対し支持軸が過度に挿入されてしまうことを防止できる。これにより、Cリングが大径部を通過してしまうことをより確実に防止でき、取付ミスの発生防止効果を一段と高めることができる。
【0022】
手段.前記取付用筒部は、自身の軸方向に延び、先端部にて開口するスリットを備えるとともに、弾性変形可能な樹脂からなり、
前記取付用筒部の弾性変形に伴い前記スリットが拡幅することで、少なくとも前記小径部における内径が拡大可能に構成されていることを特徴とする手段1に記載の排水栓装置。
【0023】
上記手段によれば、着脱時に、Cリングによって小径部を押し広げることができる。そのため、Cリングが小径部をより通過しやすくなり、支持軸に対する栓蓋の着脱を一層容易に行うことができる。
【0024】
また、上記手段によれば、取付用筒部は、弾性変形可能な樹脂からなるとともに、スリットを具備しているため、柔軟性を有することとなる。従って、栓蓋に外力が加わったときに、取付用筒部が破損しにくくなり、耐久性の向上を図ることができる。
【0025】
さらに、大径部はいわゆるアンダーカット形状となるため、型成形により栓蓋を製造する場合に、大径部に対応する型を取付用筒部から引き抜くことが難しく、型を無理に引抜くことで、取付用筒部(栓蓋)に破損が生じてしまうおそれがあるが、上記手段によれば、取付用筒部にスリットが形成され、取付用筒部が柔軟に変形しやすいため、大径部に対応する型を取付用筒部から容易に引き抜くことができる。これにより、製造時における栓蓋の破損を効果的に抑制することができ、生産性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】排水栓装置の一部破断正面図である。
図2】支持軸及び栓蓋等の拡大断面図である。
図3】Cリングの斜視図である。
図4】支持軸の先端部に栓蓋と取付ける際の一過程を説明するための栓蓋等の正面模式図である。
図5】支持軸の先端部に栓蓋を取付ける際の一過程を説明するための栓蓋等の断面模式図である。
図6】支持軸の先端部に栓蓋を取付ける際の一過程を説明するための栓蓋等の断面模式図である。
図7】別の実施形態における取付用筒部を示す栓蓋の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に、一実施形態について図面を参照しつつ説明する。図1に示すように、排水栓装置1は、槽体としての洗面器100に取付けられており、排水管2と、栓蓋側機構部3と、排水口装置4と、ヘアキャッチャー5とを備えている。尚、洗面器100は、その底面を構成する底壁部101を備えるとともに、底壁部101には排水口102が形成されている。また、洗面器100には、水の溢れ出しを防止するためのオーバーフロー口(図示せず)が設けられている。
【0028】
排水管2は、主管21と、枝分かれ管22と、取付管23とを備えている。
【0029】
主管21は、鉛直方向に沿って延びる筒状をなし、例えば、ねじ止め等により、自身の内部空間が排水口102と連通するようにして底壁部101の背面に取付けられている。洗面器100内の水は、主管21の内部を通って排出されるようになっている。尚、主管21の上端部と底壁部101との間には、弾性変形可能な材料からなる環状のシール部材6が配置されており、当該シール部材6によって排水管2及び底壁部101間が水密にシールされている。
【0030】
枝分かれ管22は、主管21の外周から主管21の延びる方向と交差する方向に沿って延びている。さらに、枝分かれ管22は、その内部空間が主管21の内部空間に連通するとともに、前記オーバーフロー口に対し所定の連結管7を介して接続されている。これにより、前記オーバーフロー口を通過した排水は、連結管7を通って主管21内へと流れ込むようになっている。
【0031】
取付管23は、主管21の外周から主管21の延びる方向と直交する方向に沿って延びており、その内部空間が主管21の内部空間に連通している。取付管23は、栓蓋側機構部3の被取付部として機能する。
【0032】
栓蓋側機構部3は、その一部が取付管23に挿通された状態で、取付管23に取付けられている。栓蓋側機構部3は、水平方向に延びる回動軸にて回動可能な回動部32と、当該回動部32の外周から突出する棒状の支持突起31とを備えている。支持突起31は、主管21内に突出しており、排水口装置4を支持するものである。尚、本実施形態において、支持突起31は、主管21の中心軸に至らない程度の短いものとされている。
【0033】
また、栓蓋側機構部3には、筒状のチューブ部材8が接続されており、当該チューブ部材8内には、伝達部材9(例えば、ワイヤー等)が配置されている。伝達部材9は、チューブ部材8内にて往復移動可能となっており、図示しない所定の操作部材(例えば、往復移動可能な操作ボタンや回動可能な操作ハンドルなど)を変位させることで、往復移動するようになっている。そして、伝達部材9の往復移動に伴い、前記回動部32が回動し、ひいては支持突起31が上下動するようになっている。
【0034】
排水口装置4は、通水部材41と、支持軸42と、栓蓋43とを備えている。
【0035】
通水部材41は、主管21内において上下動可能な状態で配置されており、環状の外周壁部41Aと、当該外周壁部41Aの内周から内側に向けて延びる下部捕集部41Bとを備えている。
【0036】
外周壁部41Aは、主管21の内周面に沿うようにして主管21内に配置されている。また、外周壁部41Aの下端面が前記支持突起31に載置状態とされることで、通水部材41ひいては排水口装置4は、支持突起31により主管21内で支持されるようになっている。
【0037】
下部捕集部41Bは、その内周部分が支持軸42に固定されており、外周壁部41Aの径方向に沿って延びる複数のリブを有している。下部捕集部41Bにおいて、排水管2を流れる排水は前記リブ間に形成された隙間を通って流れ落ち、その一方で、排水に含まれるゴミ等は捕集されることとなる。
【0038】
支持軸42は、棒状をなし、その先端部に栓蓋43が取付けられるとともに、その下端側部分に通水部材41(下部捕集部41B)が固定されている。そのため、支持突起31が上下動することで通水部材41が上下動した際には、通水部材41とともに支持軸42及び栓蓋43が上下動するようになっている。尚、支持軸42及び栓蓋43の取付に係る構造については後に説明する。
【0039】
栓蓋43は、樹脂等からなる円板状の本体部43Aと、当該本体部43Aの背面外周側に取付けられた、弾性変形可能な材料(例えば、ゴムや樹脂等)からなる環状のパッキン部43Bとを備えている。本実施形態では、支持突起31の下動に伴い排水口装置4が自重により下動したときに、パッキン部43Bの外周部分全域が底壁部101に接触することで、排水口102が閉鎖されるようになっている。一方で、支持突起31の上動に伴い排水口装置4が上動したときに、パッキン部43Bが底壁部101から離間することで、排水口102が開放されるようになっている。
【0040】
また、本実施形態では、排水口102の開放時において、支持突起31は外周壁部41Aの下端面に接触しているが、排水口102の閉鎖時において、支持突起31は外周壁部41Aの下端面から離間可能となっている。これにより、排水口102の閉鎖時において、栓蓋43(パッキン部43B)を確実に底壁部101へと接触させることができ、良好な水密性を得ることができるようになっている。
【0041】
尚、本実施形態においては、洗面器100の表側から栓蓋43や支持軸42を引き上げることで、排水口装置4及びヘアキャッチャー5を排水管2から一度に取外すことができる。そして、排水口装置4及びヘアキャッチャー5を排水管2から取外したとき、排水管2(主管21)内においては、支持突起31のみが僅かに突出した状態となる。そのため、メンテナンス性や清掃性の向上を図ることができる。
【0042】
ヘアキャッチャー5は、全体として皿状をなしており、複数の通水孔が貫通形成された捕集部51と、最外周に位置する外環部52とを備えている。捕集部51は、排水に含まれる異物を捕集するものである。外環部52は、主管21の内周に形成された段差部分に載置されることにより、ヘアキャッチャー5を主管21内にて保持するものである。尚、ヘアキャッチャー5は、基本的には、支持軸42が上下動しても、主管21の前記段差部分に対し外環部52の全周が載置された状態で維持されるようになっている。これにより、異物のより確実な捕集が図られている。
【0043】
次いで、支持軸42に対する栓蓋43の取付に係る構造について説明する。
【0044】
まず、栓蓋43側の構造について説明する。図2に示すように、栓蓋43において、本体部43Aの背面中央部分には、筒状の取付用筒部43Cが下方に向けて突出形成されている。取付用筒部43Cは、栓蓋43の中心軸に沿って延び、支持軸42の先端部が挿通可能に構成された穴部43Dを備えている。
【0045】
また、取付用筒部43Cの内周には、穴部43Dの下端部開口側に位置する小径部43Eと、穴部43Dの下端部開口とは反対側において小径部43Eと隣接する大径部43Fとが形成されている。
【0046】
小径部43Eは、支持軸42の最先端部(後述する溝部42Aよりも先端側の部位)の外径とほぼ同一の内径を有している。尚、穴部43Dのうち大径部43Fよりも奥に位置する部位の内径は、小径部43Eの内径と同一とされている。
【0047】
大径部43Fは、自身の内径が小径部43Eの内径よりも大きなものとされており、大径部43Fによって、取付用筒部43Cの内周には、その周方向に延びる環状の溝が形成されている。また、本実施形態では、大径部43Fのうち小径部43Eに隣接する部分には、穴部43Dの奥に向けて徐々に内径が大きくなるテーパ状の拡径部43Gが設けられている。一方、大径部43Fのうち小径部43Eとは反対側に位置する部分には、穴部43Dの奥に向けて徐々に内径が小さくなるテーパ状の縮径部43Hが設けられている。
【0048】
さらに、大径部43Fは、穴部43Dの深さ方向に沿った中心よりも穴部43Dの下端部開口側に形成されている。これにより、小径部43Fは比較的短いものとなっている。
【0049】
次に、支持軸42側の構造について説明する。支持軸42の先端部には、環状の溝部42Aが形成されており、当該溝部42Aに対し、Cリング44が配置されている。
【0050】
Cリング44は、支持軸42に対しその軸方向に沿って相対移動不能で取付けられている。また、Cリング44は、摩擦係数の比較的小さな所定の樹脂(例えば、POM等)により形成されており、さらに、図3に示すように、その周方向における一部に、内周から外周に貫通する切欠部44Aを備えている。Cリング44は、切欠部44Aの幅を拡大・縮小する方向に変形することで、自身の径方向に弾性変形することができ、この弾性変形に伴い、Cリング44の外径が変化するようになっている。そして、Cリング44は、径方向内側に弾性変形した状態において小径部43Eの内周を通過可能となるように構成されている。尚、この構成は、非弾性変形時におけるCリング44の内周面と支持軸42(溝部42Aの底面を形成する部位)との間に形成される隙間の大きさや、前記切欠部44Aの幅などを適切に設定することで実現可能である。
【0051】
さらに、Cリング44の外周面には、第一縮径面44B及び第二縮径面44Cが形成されている。第一縮径面44Bは、Cリング44の最外周面からCリング44におけるその軸方向一端側の端面にかけて形成されており、前記一端側の端面に向けて外径が徐々に小さくなる形状とされている。第二縮径面44Cは、Cリング44の最外周面からCリング44におけるその軸方向他端側の端面にかけて形成されており、前記他端側の端面に向けて外径が徐々に小さくなる形状とされている。
【0052】
尚、本実施形態において、Cリング44は、上下対称の形状とされており、両縮径面44B,44Cは、同一形状となっている。また、本実施形態において、両縮径面44B,44Cは外側に凸の湾曲面状とされている。但し、両縮径面44B,44Cの形状はこれに限られるものではなく、例えば、傾斜面(テーパ面)状などであってもよい。
【0053】
さらに、Cリング44は、その軸方向に沿った厚さが取付用筒部43Cの軸方向に沿った大径部43Fの長さとほぼ同一とされている。
【0054】
そして、上記のように構成された支持軸42及び栓蓋43においては、図2に示すように、Cリング44が大径部43Fに配置されるとともに、穴部43Dに対し支持軸42の先端部が挿通された状態となることで、穴部43Dからの支持軸42の抜けが規制された状態で支持軸42の先端部に対し栓蓋43が取付けられている。尚、上記の通り、Cリング44の厚さが大径部43Fの長さとほぼ同一であるため、Cリング44は大径部43Fに対しガタのほとんどない状態で係止される。
【0055】
また、支持軸42の先端部に栓蓋43が取付けられている状態において、支持軸42の先端面が本体部43Aに接触又は近接するように、大径部43Fから穴部43Dの底までの距離と、支持軸42の先端面からCリング44までの距離とがほぼ等しいものとされている。
【0056】
尚、支持軸42に対し栓蓋43が取付けられている状態において、Cリング44が径方向内側に弾性変形した状態で維持されることにより、拡径部43Gに対し第二縮径面44Cが圧接した状態で維持され、さらに、支持軸42の先端面が本体部43Aに接触するように構成してもよい。この場合には、支持軸42の先端面が本体部43Aに対し押圧された状態となり、支持軸42の軸方向に沿った支持軸42及び取付用筒部43Cの相対移動を防止することができる。その結果、支持軸42及び栓蓋43をがたつきのない安定した状態で取付けることが可能となる。
【0057】
また、支持軸42に対し栓蓋43が取付けられている状態において、Cリング44が径方向内側に弾性変形した状態で維持されることにより、拡径部43Gに対し第二縮径面44Cが圧接し、縮径部43Hに対し第一縮径面44Bが圧接するように構成してもよい。この場合には、拡径部43G及び縮径部43HによりCリング44が挟み込まれた状態となるため、Cリング44は、取付用筒部43Cに対しその軸方向に沿って相対移動不能となる。そして、Cリング44は、上述の通り、支持軸42に対しその軸方向に沿って相対移動不能となっているため、結果的に、支持軸42の軸方向に沿った支持軸42及び取付用筒部43Cの相対移動を防止することができる。これにより、支持軸42及び栓蓋43をがたつきのない安定した状態で取付けることができる。
【0058】
次いで、支持軸42の先端部に対する栓蓋43の取付手法について説明する。まず、支持軸42の溝部42Aに対しCリング44を予め取付けておく。その上で、図4及び図5に示すように、支持軸42におけるCリング44よりも先端側の部位を穴部43Dに挿通し、Cリング44の第一縮径面44Bを取付用筒部43Cの先端部内周面(開口部)に対して接触させた状態とする。
【0059】
次いで、穴部43Dの奥へと支持軸42が入り込むように、支持軸42及び栓蓋43の少なくとも一方へと力を加える。これにより、第一縮径面44Bが取付用筒部43Cの先端部内周面を摺動しつつ、Cリング44が径方向内側に弾性変形していく。そして、Cリング44の外径が小径部43Eの内径よりも小さくなった段階で、図6に示すように、小径部43E内へとCリング44が入り込む。小径部43EへとCリング44が入り込んでしまえば、支持軸42の挿通に対する抵抗はほとんどなくなるため、前記力によって、支持軸42は穴部43Dの奥側へと一気に入ることとなる。つまり、Cリング44は、小径部43Eを瞬時に通過することとなる。そして、Cリング44が大径部43Fに至ると、Cリング44の弾性変形が完全に又はある程度解除され、大径部43Fに対しCリング44が配置される。その結果、支持軸42の先端部に対し栓蓋43が取付けられることとなる。尚、Cリング44の弾性変形が解除される際には、弾性変形の解除に伴い生じた反発力により、音や衝撃(クリック感)が生じることとなる。
【0060】
一方、支持軸42から栓蓋43を取外す際には、取付時とは逆向きの力を支持軸42及び栓蓋43の少なくとも一方へと加える。これにより、第二縮径面44Cが大径部43F(拡径部43G)を摺動しつつ、Cリング44が径方向内側に弾性変形していく。そして、Cリング44の外径が小径部43Eの内径よりも小さくなると、大径部43FからCリング44が外れるとともに、支持軸42の先端部が穴部43Dから抜ける。その結果、支持軸42から栓蓋43が取外れることとなる。
【0061】
以上詳述したように、本実施形態によれば、穴部43Dに対しCリング44の装着された支持軸42の先端部を押し入れるという簡易な手法により、穴部43Dからの支持軸42の抜けが規制された状態で支持軸42の先端部に対し栓蓋43を取付けることができる。一方、支持軸42から栓蓋43を取外す際には、穴部43Dから支持軸42を引抜く方向に沿って支持軸42等に力を加えるという簡易な手法により、支持軸42から栓蓋43を取外すことができる。
【0062】
そして、Cリング44は樹脂製であるため、Cリング44が小径部43Eを通過する際に、Cリング44及び小径部43E間で生じる摩擦力を比較的小さくすることができる。従って、穴部43Dにおいて支持軸42をスムーズに移動させることができ、支持軸42に対する栓蓋43の着脱(取付・取外)を容易に行うことができる。
【0063】
また、Cリング44及び小径部43E間で生じる摩擦力を小さくできることにより、着脱時にCリング44に加わる負荷を小さくすることができる。その結果、着脱に伴う装置の破損をより確実に防止することができる。
【0064】
さらに、取付時において、大径部43FにCリング44が到達し、Cリング44の弾性変形が解除された際には、弾性変形の解除に伴い生じた反発力により、音や衝撃(クリック感)を生じさせることができる。従って、この音や衝撃に基づいて、支持軸42に対し栓蓋43が正常に取付けられたか否かを容易に把握することができる。その結果、取付作業に係る利便性を高めることができる。
【0065】
加えて、大径部43Fは穴部43Dの開口側(手前側)に形成されているため、取付作業時に、Cリング44が小径部43Eを通過する距離を比較的小さくすることができる。そして、この点と、Cリング44及び小径部43E間で生じる摩擦力を小さくできる点とが相俟って、取付作業時には、通常、Cリング44は小径部43Eを瞬時に通過する。そのため、通常、取付作業中に、小径部43Eの内周にCリング44が配置されている状態のまま維持されるといった事態は生じないこととなる。その結果、支持軸42に対し栓蓋43をより確実に正常な状態で取付けることが可能となり、取付ミスの発生防止をより確実に図ることができる。
【0066】
さらに、本実施形態では、取付用筒部43Cの開口部にCリング44を接触させた状態で、Cリング44を穴部43Dの奥側へとほんの少しだけ押し込めば、支持軸42に対し栓蓋43を正常に取付けることができる。従って、支持軸42に対する栓蓋43の着脱をより容易に行うことができる。
【0067】
また、支持軸42に栓蓋43が正常に取付けられていない状態(単に支持軸42の一部が穴部43Dに入っている状態)では、通常、Cリング44が穴部43Dに入っておらず、外部に露出した状態(図4に示す状態)となる。従って、外部からCリング44を確認できるか否かに基づき、支持軸42に対する栓蓋43の取付が正常に行われているかを判断することができる。これにより、取付ミスの発生をより効果的に防止することができる。
【0068】
加えて、本実施形態では、支持軸42に栓蓋43が取付けられている状態(Cリング44が大径部43Fに配置された瞬間を含む)において、支持軸42の先端面が本体部43Aに接触又は近接するように構成されている。そのため、取付作業に際し、支持軸42を穴部43Dに押し入れたときに、支持軸42の先端面が本体部43Aに接触することで、穴部43Dに対し支持軸42が過度に挿入されてしまうことを防止できる。これにより、Cリング44が大径部43Fを通過してしまうことをより確実に防止でき、取付ミスの発生防止効果を一段と高めることができる。
【0069】
また、本実施形態において、Cリング44は上下対称形状であるため、溝部42AへとCリング44を配置する際における、Cリング44の取付向きを別段考慮する必要がない。従って、取付作業等に係る利便性を向上させることができる。
【0070】
尚、上記実施形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施してもよい。勿論、以下において例示しない他の応用例、変更例も当然可能である。
【0071】
(a)上記実施形態において、取付用筒部43Cは、その周方向に連続する筒状をなしており、支持軸42の先端部に対する栓蓋43の取付時において、特段変形しないように構成されている。これに対し、図7図7では、パッキン部43Bを不図示)に示すように、例えば、取付用筒部43Tを弾性変形可能な樹脂により形成するとともに、当該取付用筒部43Tに対し、その軸方向に延び、先端部にて開口するスリット43Sを複数設け、取付用筒部43Tの弾性変形に伴いスリット43Sが拡幅することで、少なくとも小径部43Eにおける内径が拡大可能となるように構成してもよい。
【0072】
この場合には、支持軸42に対する栓蓋43の着脱時に、Cリング44によって小径部43Eを押し広げることができる。そのため、Cリング44が小径部43Eをより通過しやすくなり、支持軸42に対する栓蓋43の着脱を一層容易に行うことができる。
【0073】
また、取付用筒部43Tは、弾性変形可能な樹脂からなるとともに、スリット43Sを具備しているため、柔軟性を有することとなる。従って、栓蓋43に外力が加わったときに、取付用筒部43Tが破損しにくくなり、耐久性の向上を図ることができる。
【0074】
さらに、取付用筒部43Tが柔軟に変形しやすいため、型成形により栓蓋43(本体部43A及び取付用筒部43T)を製造するにあたって、大径部43Fに対応する型を取付用筒部43Tから容易に引き抜くことができる。これにより、製造時における栓蓋43の破損を効果的に抑制することができ、生産性の向上を図ることができる。
【0075】
(b)上記実施形態において、Cリング44は上下対称の形状とされているが、Cリングの形状はこれに限定されるものではなく、適宜変更可能である。従って、例えば、Cリング44の中心軸に沿った両縮径面44B,43Cの縮径割合(前記中心軸に沿った単位長さ当たりの外径の減少量)を異なるものとしてもよい。ここで、例えば、第一縮径面44Bの縮径割合を第二縮径面44Cの縮径割合よりも小さくする、つまり、第一縮径面44Bをより緩やかに外径が変化するものとする一方、第二縮径面44Cをより急激に外径が変化するものとしてもよい。この場合には、支持軸42に対する栓蓋43の取付時に、Cリング44がより容易に弾性変形しやすくなり、取付容易性を高めることができる。一方、支持軸42から栓蓋43を取外す際には、Cリング44の弾性変形が生じにくくなり、支持軸42から栓蓋43が意図せず外れてしまうことをより確実に防止できる。
【0076】
(c)上記実施形態では、槽体として洗面器100を例示しているが、本発明の技術思想を適用可能な槽体は洗面器に限定されるものではない。従って、例えば、浴槽やキッチンの流し台などに対して本発明の技術思想を適用することとしてもよい。
【0077】
(d)上記実施形態では、栓蓋43(パッキン部43B)が底壁部101に接触することで排水口102が閉鎖されるように構成されているが、栓蓋43(パッキン部43B)が洗面器100に設けられた部材(例えば、排水口102に挿通された筒状の排水口部材)に接触することで排水口102を閉鎖するように構成してもよい。
【0078】
(e)上記実施形態では、回動しつつ上下動する支持突起31によって、栓蓋43が上下動するように構成されているが、栓蓋43を上下動させる構成は、これに限定されるものではない。従って、例えば、伝達部材9の端部により支持軸を持ち上げることで、栓蓋43を上動させ、伝達部材9による支持軸の支持が解除されることで、栓蓋43が下動するように構成してもよい。
【0079】
さらに、栓蓋43は重力により下動するものである必要はなく、例えば、所定の戻り力付与部材(例えば、バネ部材など)により、支持軸42に対し下方に向けた力を付与することで、栓蓋43が下動するように構成してもよい。
【符号の説明】
【0080】
1…排水栓装置、42…支持軸、42A…溝部、43…栓蓋、43A…本体部、43C,43T…取付用筒部、43E…小径部、43F…大径部、43S…スリット、44…Cリング、100…洗面器(槽体)、102…排水口。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7