【実施例1】
【0023】
次に、本発明の実施例を示す。但し、本発明は実施例に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で各部の構成や形状を任意に変更して実施することもできる。
【0024】
図1〜
図8に示す実施例1の可変動弁機構1は、カムシャフト10と、メインアーム20と、第一サブアーム30と、第二サブアーム40と、切替装置50とを含み構成されている。なお、以下では、メインアーム20の揺動軸線Rの長さ方向を「アーム幅方向」といい、該アーム幅方向にみたものを「側面視」という。
【0025】
[カムシャフト10]
図2,
図3,
図5等に示すカムシャフト10は、内燃機関が2回転する毎に1回転する。カムシャフト10に、1つの第一カム13(大リフトカム)と2つの第二カム14,14(小リフトカム)とが突設されている。詳しくは、
図5等に示すように、第一カム13よりもアーム幅方向一方側に一方の第二カム14が設けられ、第一カム13よりもアーム幅方向他方側に他方の第二カム14が設けられている。第一及び第二のいずれものカム13,14も、ベース円13a,14aと、ベース円から突出したノーズ13b,14bとを備えている。第一カム13(大リフトカム)のノーズ13bの方が、第二カム14(小リフトカム)のノーズ14bよりも、作用角及びリフト量が大きい。
【0026】
なお、以下および上記の「図面の簡単な説明」では、両カムのベース円13a,14aが作用するとき、すなわち、第一カムのベース円13aが第一サブアーム30に作用し、且つ、第二カムのベース円14aが第二サブアーム40に作用する時を「ベース円時」といい、両カムのノーズ13b,14bが作用するとき、すなわち、第一カムのノーズ13bが第一サブアーム30に作用し、且つ、第二カムのノーズ14bが第二サブアーム40に作用する時を「ノーズ時」という。
【0027】
[メインアーム20]
メインアーム20は、
図3等に示すように、その後部の下面に半球状凹部21を備えている。半球状凹部21が、ピボット9の上端にある半球部9aの上に載置されることで、メインアーム20がピボット9に揺動可能に支持されている。半球部9aの求心を通る直線が、メインアーム20の揺動軸線Rとなっている。メインアーム20は、前端部にバルブ7のステムエンドに当接する押圧面22を備えており、揺動時には押圧面22でバルブ7を駆動する。メインアーム20の前部には、
図1等に示すように、支持シャフト24が取り付けられている。支持シャフト24は、メインアーム20の前部をアーム幅方向に貫通することで、メインアーム20の前部からアーム幅方向両側に突出している。メインアーム20の前端部には、掛止突起27が前方に突出する形で設けられている。メインアーム20のアーム幅方向中間部には、
図1等に示すように、空所29が形成されている。メインアーム20のアーム幅方向両側の各側面には、
図2等に示すように、該空所29にまで貫通した長孔23が設けられている。長孔23は、メインアーム20に対する第一サブアーム30の相対揺動方向に延びている。
【0028】
メインアーム20の後部には、
図3,
図4等に示すように、第一ピン穴25と第二ピン穴26とがアーム幅方向に貫通する形で設けられている。第一ピン穴25及びそれに挿入される第一切替ピン51は、
図2等に示すように、その一部が少なくともベース円時に側面視でメインアーム20の揺動軸線Rと第一サブアーム30のローラ34との間Mにかかる位置に配置されている。第二ピン穴26及びそれに挿入される第二切換ピン61は、その全体が常時側面視でメインアーム20の揺動軸線Rよりも上方にくる位置に配置されている。第一及び第二の両切替ピン51,61は、常時側面視で重ならない。
【0029】
[第一サブアーム30]
第一サブアーム30は、
図1等に示すように、メインアーム20よりもアーム幅方向一方側に設置された一方部31と、メインアーム20よりもアーム幅方向他方側に設置された他方部32とを備えたアウタアームである。一方部31の前端部は、支持シャフト24のアーム幅方向一方に突出した部分に軸支されている。他方部32の前端部は、支持シャフト24のアーム幅方向他方に突出した部分に軸支されている。それにより、メインアーム20に対して第一サブアーム30が前端部を軸に相対揺動可能に支持されている。第一サブアーム30の前後中間部には、メインアーム20の長孔23及び空所29を通過して一方部31から他方部32にまで延びるローラシャフト33が設置されている。ローラシャフト33における空所29内に位置する部位に、第一カム13に当接するローラ34が回転可能に軸支されている。ローラ34が、
図6〜
図8等に示すように、第一カム13(大リフトカム)に押圧されることで、第一サブアーム30が揺動する。第一サブアーム30の前後中間部には、アーム幅方向両側に突出する掛止突起37が設けられている。一方部31及び他方部32の各後部には、
図4等に示すように、アーム幅方向内側(メインアーム20側)に開口したピン穴35が設けられている。そのピン穴35は、ベース円時にメインアーム20の第一ピン穴25と連通する。
【0030】
第一サブアーム30に対して、
図1等に示すように、ロストモーションスプリング39が取り付けられている。ロストモーションスプリング39は、平面視で後方に開いたコ字形の形状をしており、2つのコイル部39a,39aを備えている。一方のコイル部39aは、支持シャフト24のアーム幅方向一方に突出した部分に外嵌され、他方のコイル部39aは、支持シャフト24のアーム幅方向他方に突出した部分に外嵌されている。ロストモーションスプリング39の前端部の中央部は、メインアーム20の掛止突起27に下方から当接している。ロストモーションスプリング39の2つの後端部は、第一サブアーム30の2つの掛止突起37にそれぞれ下方から当接している。
【0031】
[第二サブアーム40]
第二サブアーム40は、
図1等に示すように、メインアーム20よりもアーム幅方向一方側に設置された一方部41と、メインアーム20よりもアーム幅方向他方側に設置された他方部42とを備えたアウタアームである。一方部41の先端部は、支持シャフト24のアーム幅方向一方に突出した部分に、第一サブアーム30の一方部に並べて軸支されている。他方部42の先端部は、支持シャフト24のアーム幅方向他方に突出した部分に、第一サブアーム30の他方部32に並べて軸支されている。それにより、メインアーム20に対して第二サブアーム40が前端部を軸に相対揺動可能に支持されている。一方部41は、第一サブアーム30の一方部31と一方の第二カム14との間に介装されている。他方部42は、第一サブアーム30の他方部32と他方の第二カム14との間に介装されている。詳しくは、一方部41は、第一サブアーム30の一方部31と平面視で重なる位置に上方にずらして設置され、他方部42は、第一サブアーム30の他方部32と平面視で重なる位置に上方にずらして設置されている。一方部41及び他方部42の各上面に、第二カム14,14に摺接するスリッパ44,44が設けられている。
図7,
図8等に示すように、各スリッパ44が各第二カム14に押圧されることで、一方部41及び他方部42(第二サブアーム40)が揺動する。一方部41及び他方部42の各後部には、
図4等に示すように、アーム幅方向内側(メインアーム20側)に開口したピン穴46が設けられている。そのピン穴46は、ベース円時にメインアーム20の第二ピン穴26と連通する。
【0032】
[切替装置50]
切替装置50は、
図4等に示すように、第一及び第二切替ピン51,61と、第一及び第二バネ55,65と、油圧機構71とを含み構成されている。
【0033】
第一切替ピン51は2つあり、いずれもメインアームの第一ピン穴25内に設けられている。各第一切替ピン51は、第一ピン穴25と第一サブアームのピン穴35との間を跨ぐ相対的にアーム幅方向外側の第一連結位置P1と、該間を跨がない(第一ピン穴25内に退入する)相対的にアーム幅方向内側の第一非連結位置Q1とに変位可能に構成されている。第一切替ピン51は、第一連結位置P1に配されると、メインアーム20に対して第一サブアーム30を相対揺動不能に連結し、第一非連結位置Q1に配されると、その連結を解除する。
【0034】
第二切替ピン61は2つあり、いずれもメインアームの第二ピン穴26内に設けられている。各第二切替ピン61は、第二ピン穴26と第二サブアームのピン穴46との間を跨ぐ相対的にアーム幅方向外側の第二連結位置P2と、該間を跨がない(第二ピン穴26内に退入する)相対的にアーム幅方向内側の第二非連結位置Q2とに変位可能に構成されている。第二切替ピン61は、第二連結位置P2に配されると、メインアーム20に対して第二サブアーム40を相対揺動不能に連結し、第二非連結位置Q2に配されると、その連結を解除する。第二切替ピン61の径は、第一切替ピン51の径よりも大きい。よって、第二切替ピン61の端面の面積は、第一切替ピン51の端面の面積よりも大きい。よって、油圧が同じなら、
図4(a)等に矢印の長さで示すように、第二切替ピン61が受ける力の方が、第一切替ピン51が受ける力よりも大きい。
【0035】
第一バネ55は、第一サブアームのピン穴35の底面と第一切替ピン51との間に設置されており、第一介在ピン56を介して、第一切替ピン51をアーム幅方向内側の第一非連結位置Q1に付勢している。
【0036】
第二バネ65は、第二サブアームのピン穴46の底面と第二切替ピン61との間に設置されており、第二介在ピン66を介して、第二切替ピン61をアーム幅方向内側の第二非連結位置Q2に付勢している。第二バネ65のバネ定数は、本実施例では、第一バネ55のバネ定数と同じである。
【0037】
油圧機構71は、シリンダヘッド内油路73と、ピボット内油路74と、メインアーム20内の第一及び第二油路75,76とを含み構成されている。シリンダヘッド内油路73は、シリンダヘッド6内に設けられている。ピボット内油路74は、ピボット9内に設けられており、シリンダヘッド内油路73から半球部9aの上端にまで延びている。第一油路75は、ピボット内油路74から第一ピン穴25にまで延びている。第二油路76は、第一ピン穴25から第二ピン穴26にまで延びている。よって、第一ピン穴25内と第二ピン穴26内とは、同じ油圧系統の油で満たされ、略同じ油圧になる。
【0038】
この油圧系統の油圧を、
図4(a)に示すように高圧にすることで、第一切替ピン51をアーム幅方向外側の第一連結位置P1に配し、第二切替ピン61もアーム幅方向外側の第二連結位置P2に配する。なお、ここでいう「高圧」は、第一ピン穴25内の油圧による第一切替ピン51の押圧力が第一バネ55の付勢力よりも大きくなり、第二ピン穴26内の油圧による第二切替ピン61の押圧力も第二バネ65の付勢力よりも大きくなる大きさの油圧である。それにより、
図5(a)(α)及び
図6に示すように、3本のアーム20,30,40が第一カム13(大リフトカム)のプロフィールに従い揺動軸線Rを軸に揺動してバルブ7を駆動する大リフト状態(両連結状態)に切り替わる。
【0039】
また、油圧系統の油圧を、
図4(b)に示すように中圧にすることで、第一切替ピン51をアーム幅方向内側の第一非連結位置Q1に配する一方、第二切替ピン61はアーム幅方向外側の第二連結位置P2に配する。なお、ここでいう「中圧」は、第一ピン穴25内の油圧による第一切替ピン51の押圧力が第一バネ55の付勢力よりも小さくなる一方、第二ピン穴26内の油圧による第二切替ピン61の押圧力は第二バネ65の付勢力よりも大きくなる大きさの油圧である。それにより、
図5(b)(β)及び
図7に示すように、メインアーム20と第二サブアーム40とが、第二カム14(小リフトカム)のプロフィールに従い揺動軸線Rを軸に揺動してバルブ7を駆動する小リフト状態(片連結状態)に切り替わる。このとき、ロストモーションスプリング39は、第一サブアーム30を第一カム13(大リフトカム)に付勢する。そのため、第一サブアーム30は、第一カム13のプロフィールに従い支持シャフト24を軸に揺動(空振)する。なお、
図5(b)(c)に示す破線の矢印は、空振であることを示している。
【0040】
また、油圧系統の油圧を、
図4(c)に示すように低圧にすることで、第一切替ピン51をアーム幅方向内側の第一非連結位置Q1に配し、第二切替ピン61もアーム幅方向内側の第二非連結位置Q2に配する。なお、ここでいう「低圧」は、第一ピン穴25内の油圧による第一切替ピン51の押圧力が第一バネ55の付勢力よりも小さくなり、第二ピン穴26内の油圧による第二切替ピン61の押圧力も第二バネ65の付勢力よりも小さくなる大きさの油圧である。それにより、
図5(c)(γ)及び
図8に示すように、メインアーム20が揺動しない休止状態(非連結状態)に切り替わる。このとき、ロストモーションスプリング39は、第一サブアーム30を第一カム13に付勢すると共に、少なくともベース円時を含む区間では、第一サブアーム30を介して第二サブアーム40を第二カム14に付勢する。そのため、第一サブアーム30は、第一カム13のプロフィールに従い支持シャフト24を軸に揺動(空振)し、第二サブアーム40も支持シャフト24を軸に揺動(空振)する。
【0041】
本実施例1によれば、次の効果を得ることができる。
[A]
図2等に示すように、アーム幅方向にみた側面視で、第一及び第二の両切替ピン51,61が重ならない位置に相互にずらして配置されるため、両切替ピン95,96がベース円時にアーム幅方向に並ぶ従来例(
図11,
図12)とは違い、メインアーム20のアーム幅方向一方側に第一サブアーム30を設け、アーム幅方向他方側に第二サブアーム40を設けなければならないといった位置関係の制約がなくなる。そのため、3本のアーム20,30,40の位置関係の自由度が大きくなる。
【0042】
[B]
図1等に示すように、第一サブアーム30と第二サブアーム40とを、平面視で重なる位置に相互に上下にずらして配置しているので、3本のアーム20,30,40をアーム幅方向に並べる場合に比べて、3本のアーム20,30,40の体格を、アーム幅方向にコンパクトにできる。
【0043】
[C]
図1等に示すように、第一サブアーム30及び第二サブアーム40をアウタアームにすることで、3本のアーム20,30,40のアーム幅方向のバランスが良くなる。そのため、
図5等に示すどの駆動状態(両連結状態、片連結状態、非連結状態)においても、3本のアーム20,30,40は、アーム幅方向に均等に荷重を受ける。そのため、従来例(
図11,
図12)で示すような揺動ガイド99等、別体のガイド部品を必要としない。
【実施例3】
【0049】
図10に示す実施例3の可変動弁機構3は、実施例2のものと比較して、次の点で相違し、その他の点で同様である。すなわち、第一カムが小リフトカムであり、第二カムが大リフトカムである。第一切替ピン51と第一介在ピン56との位置が入れ替わっている。よって、相対的にアーム幅方向外側に第一切替ピン51があり、アーム幅方向内側に第一介在ピン56がある。第一非連結位置Q1は、第一切替ピン51がメインアームの第一ピン穴25内に退入する位置ではなく、第一サブアームのピン穴35内に退入する位置である。よって、相対的にアーム幅方向外側に第一非連結位置Q1があり、相対的にアーム幅方向内側に第一連結位置P1がある。第一バネ55は第一切替ピン51に直接当接しており、これをアーム幅方向内側の第一連結位置P1に付勢している。メインアームの第一ピン穴25内の油圧は、第一介在ピン56を介して第一切替ピン51をアーム幅方向外側の第一非連結位置Q1に押圧する。
【0050】
そして、油圧系統の油圧を、
図10(a)に示すように、高圧にすることで、第一切替ピン51をアーム幅方向外側の第一非連結位置Q1に配し、第二切替ピン61もアーム幅方向外側の第二非連結位置Q2に配する。それにより、メインアーム20が揺動しない休止状態(非連結状態)に切り替わる。
【0051】
また、油圧系統の油圧を、
図10(b)に示すように、中圧にすることで、第一切替ピン51をアーム幅方向内側の第一連結位置P1に配する一方、第二切替ピン61はアーム幅方向外側の第二非連結位置Q2に配する。それにより、メインアーム20と第一サブアーム30とが第一カム(小リフトカム)のプロフィールに従い揺動してバルブ7を駆動する小リフト状態(片連結状態)に切り替わる。
【0052】
また、油圧系統の油圧を、
図10(c)に示すように、低圧にすることで、第一切替ピン51をアーム幅方向内側の第一連結位置P1に配し、第二切替ピン61もアーム幅方向内側の第二連結位置P2に配する。それにより、3本のアーム20,30,40が第二カム(大リフトカム)のプロフィールに従い揺動してバルブ7を駆動する大リフト状態(両連結状態)に切り替わる。
【0053】
本実施例3によっても、上記の[A]〜[C]の効果を得ることができる。
【0054】
なお、本実施例1〜3は、例えば次のように変更してもよい。
[変更例1]
第一切替ピン51と第二切替ピン61との径(端面の面積)を同じにし、代わりに、第一バネ55のバネ定数を、第二バネ65のバネ定数よりも大きくしてもよい。
[変更例2]
ピボット9を、バルブクリアランスを自動で埋めるピボット(油圧式ラッシュアジャスタ等)に変更してもよい。
[変更例3]
カムシャフト10に、小リフトカム(実施例1,2の第二カム14、実施例3の第一カム)よりもリフト量及び作用角が小さい第三カムを形成し、メインアーム20に第三カムに摺接するスリッパを設けてもよい。