特許第6652444号(P6652444)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6652444
(24)【登録日】2020年1月27日
(45)【発行日】2020年2月26日
(54)【発明の名称】筆記具
(51)【国際特許分類】
   B43K 19/00 20060101AFI20200217BHJP
   B43K 19/02 20060101ALI20200217BHJP
【FI】
   B43K19/00 E
   B43K19/00 F
   B43K19/02 Z
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-94524(P2016-94524)
(22)【出願日】2016年5月10日
(65)【公開番号】特開2017-202598(P2017-202598A)
(43)【公開日】2017年11月16日
【審査請求日】2019年3月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005957
【氏名又は名称】三菱鉛筆株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100118315
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 博道
(74)【代理人】
【識別番号】100120488
【弁理士】
【氏名又は名称】北口 智英
(72)【発明者】
【氏名】遠見 英明
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 徳広
【審査官】 藤井 達也
(56)【参考文献】
【文献】 特公平7−33113(JP,B2)
【文献】 特開2014−40074(JP,A)
【文献】 特開平9−314804(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/191058(WO,A1)
【文献】 特開平4−53800(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B43K 1/00−21/26
B43K 24/00−24/18
B43K 27/00−27/12
B44C 1/17
B32B 3/30
B32B 27/00
B41M 5/382
B41M 5/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸の表面に転写層を有する筆記具であって、
該転写層の表面には目視困難な断裂による情報記録部が形成されていることを特徴とする筆記具。
【請求項2】
前記断裂は前記転写層の表面側から施された刻印により形成されていることを特徴とする請求項1記載の筆記具。
【請求項3】
前記断裂は前記転写層の裏面側から施された刻印により形成されていることを特徴とする請求項1記載の筆記具。
【請求項4】
前記軸は鉛筆の木軸であることを特徴とする請求項1、2又は3記載の筆記具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸表面に主に品質管理上の情報が記録されている鉛筆等の筆記具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鉛筆は、下記特許文献1に開示されるような工程で製造されるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−62061号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
鉛筆などの筆記具の軸表面には、ロット番号等の品質管理上の情報が打刻されていることが多い。鉛筆は通常断面六角形(又は断面円形)であり側面を6面有する(又は円柱状の側面を1面有する)。そのため、製造ライン上、特定面に打刻するためには打刻面の位置設定が必要となり、制御が複雑になるため、偶々打刻装置に面している側面に打刻されているのが現状である。
【0005】
他方で、鉛筆の表面に、主にデザイン上の要請で、絵柄が表示されているような場合がある。通常は、絵柄(たとえば、漫画やアニメ等のキャラクタなど)が印刷されている転写フィルムを鉛筆の表面に貼付することで絵柄の表示が行われる。この場合、デザイン上の重要部分(たとえば、キャラクタの顔など)に打刻がされると商品価値が減じてしまうことから、ロット番号等の打刻は行っていないのもまた現状である。しかしながら、このような場合でも、トレーサビリティーの観点から何らかの品質管理情報は記録することが望ましい。
【0006】
そこで本発明は、たとえば鉛筆のような筆記具の表面に、たとえば転写フィルム等による転写層が形成されているような場合であっても、デザイン性を損なわないようにロット番号等の品質管理情報を記録することができるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題に鑑み、本発明は、軸20の表面に転写層26を有する筆記具10であって、該転写層26の表面には目視困難な断裂28による情報記録部27が形成されていることを特徴とする。
【0008】
「転写層26」とは、たとえば、転写フィルム30を利用して軸20の表面に貼付されて形成される層をいう。
【0009】
この「目視困難な断裂28」は、たとえばその貼付前の転写フィルム30に(又は貼付後に生じた転写層26に直接)物理的な刻印35のような力を加えることで、転写層26に物理的な変形に伴う断裂28を生じさせることで形成される。ここで、「断裂28」が「目視困難」であることとは、目視では全くあるいはほとんど見えないものの、たとえば、鉛筆の芯で軽く擦ると文字等が浮かび上がって可視化する程度の凹凸を生じさせるように表面が断裂していることをいう。
【0010】
ここで、前記断裂28は前記転写層26の表面側から施された刻印35により形成されていることとしてもよい。また、前記断裂28は前記転写層26の裏面側から施された刻印35により形成されていることとしてもよい。このような構成は、たとえば、転写フィルム30の表面又は裏面からあらかじめ刻印35を施しておくことで実現可能である。
【0011】
本発明では、軸20の表面に貼付される転写層26にあらかじめ刻印35による断裂28を施しておくことで、デザイン上支障のないような任意の箇所にロット番号等の情報の記録を行うことができる。
【0012】
本発明に係る筆記具10は、特に種類を問わず、たとえば、ボールペン12の表面に前記のような転写層26を有するものであってもよい。しかし、筆記具10が鉛筆11である場合に本発明は最も有用である。すなわち、前記軸20が鉛筆11の木軸21であるような場合に、その表面に転写層26を設けることがよく行われるが、そのような転写層26に、前記のような物理的な断裂28を生じさせる刻印35を施すことで、事後的に打刻を行わずとも、ロット番号等の情報の記録を行うことが可能となっている。
【発明の効果】
【0013】
本発明は以上のように構成されているので、たとえば鉛筆のような筆記具の表面に、たとえば転写フィルム等による転写層が形成されているような場合であっても、デザイン性を損なわないような任意の箇所に、ロット番号等の品質管理情報を打刻して記録することが可能となる。また、ロットの管理ばかりではなく、たとえば真正品の表面にのみ、隠し文字のようなものをこのような打刻により記録することで、模造品に対する真贋判定に役立てることも可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の第1の実施の形態に係る筆記具としての鉛筆を(A)斜視図、(B)側面図及び(C)側面断面図にて示す。
図2】情報記録部の一部を模式的に断面図にて示す。
図3図2に対応する転写フィルムの2例を模式的に断面図にて示す。
図4図1の鉛筆の製造工程であって、(A)打刻前の転写フィルム、(B)打刻後の転写フィルム、(C)転写フィルムを木軸に貼付する前及び(D)転写フィルムを木軸に貼付した後をそれぞれ模式的に斜視図にて示したものである。
図5】本発明の第2の実施の形態に係る筆記具としてのボールペンを斜視図にて示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態を説明する。
(1)第1の実施の形態
第1の実施の形態に係る筆記具10は、図1に示すように鉛筆11である。この鉛筆11は、通常の鉛筆と同様に断面六角形の軸20としての木軸21(図1(A)参照)の中心に芯25を収容するものである(図1(A)及び(C)参照)。
【0016】
木軸21の表面の一部には、ロット番号等の情報を示す情報記録部27が設けられている(図1(A)及び(B)参照)。この情報記録部27における情報は、特別な処置を施さない限りは目に見えないほどの微細な断裂28で記録されているため、目視困難である。そして、たとえば、この断裂28の上から鉛筆の芯等で軽く擦るような特別な処置を施すことで、文字(あるいは図形、模様など)が浮かび上がってきて可視化するものである。なお、図1中では、この情報記録部27は便宜上目に見えるような文字で表示してある。
【0017】
図1(A)及び(B)に示す情報記録部27は、具体的には図2に示すような構造を有する。軸20としての木軸21の表面には、転写層26が形成されている。この転写層26は下層から接着層33、印刷層32及び剥離層31の順となっている。剥離層31は、ベースフィルム34(図3参照)からの剥離を容易にすることで転写層26の転写性を構造させるとともに、印刷層32を保護するためのアクリル樹脂で形成された樹脂シートである。印刷層32は、剥離層31の裏側からインクにより模様、イラスト、色彩等のデザインが施されたものである。接着層33は、熱可塑性アクリル樹脂の層である。そして情報記録部27となる領域においては、転写層26に物理的な変形に伴う断裂28が生じている。この断裂28を生じさせる方法については後述する。
【0018】
転写層26は、図3に示すような転写フィルム30を木軸21の表面に貼付することで形成される。転写フィルム30は、前記した剥離層31の上層にベースフィルム34が付着しているものである。逆に言えば、ベースフィルム34の下層に剥離層31が位置し、その下に印刷層32、さらにその下に接着層33が位置することとなっている。木軸21への転写フィルム30の貼付については後述する。
【0019】
そして、図3(A)に示すように転写フィルム30の表面側(すなわち、ベースフィルム34の側)から打刻することで、表面側が陥凹した刻印35が形成され、これに伴い剥離層31、印刷層32及び接着層33に断裂28が生ずる。あるいは、図3(B)に示すように転写フィルム30の裏面側(すなわち、接着層33の側)から打刻することで、裏面側が陥凹した刻印35が形成され、これに伴い接着層33、印刷層32及び剥離層31に断裂28が生ずる。これらのいずれかを木軸21に貼付することで、図2に示すような、表面側に生じた断裂28による情報記録部27が形成されることとなる。
【0020】
転写フィルム30の刻印35から木軸21への貼付までの概要を図4を参照しつつ説明する。図4(A)は刻印35が施される前の転写フィルム30である。この転写フィルム30には図示はしないが印刷層32において所定のデザインが施されている。次に、図4(B)に示すように、刻印35が施される。この状態から、図4(C)そして図4(D)に示すような順で、表面のベースフィルム34を転写フィルム30から剥離しつつ、木軸21の表面に接着層33を加熱により付着させつつ貼付して、転写層26が形成されることになる。この貼付に際して、貼付前の転写フィルム30における刻印35に伴う剥離層31、印刷層32及び接着層33の変形(図3(A)及び(B)参照)は解消してほぼ平坦な状態に復する(図2参照)。しかし、刻印35に伴う断裂28の箇所はそのまま残り、それが情報記録部27となる(図2参照)。
【0021】
(2)第2の実施の形態
第2の実施の形態に係る筆記具10は、図5に示すようにボールペン12である。このボールペン12の軸20としての軸筒22の表面に、先述の図3に示すような転写フィルム30を貼付することで、軸筒22の所定の箇所に、前記第1の実施の形態と同様に情報記録部27が形成されることとなる。なお、転写フィルム30、転写層26及び情報記録部27の構造については前記第1の実施の形態と同様である。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明は、鉛筆等の筆記具の表面へのロット番号等の情報記録に利用可能である。
【符号の説明】
【0023】
10 筆記具 11 鉛筆 12 ボールペン
20 軸 21 木軸 22 軸筒
25 芯 26 転写層 27 情報記録部
28 断裂
30 転写フィルム 31 剥離層 32 印刷層
33 接着層 34 ベースフィルム 35 刻印
図1
図2
図3
図4
図5