(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
例えば鉄筋コンクリートなどのコンクリート構造物における鋼材の腐食が社会的な問題となっている。鋼材の腐食原因には、例えば、海岸近くの飛来塩分、寒冷地での凍結防止剤の散布などがある。コンクリート構造物内の鋼材が腐食すると、腐食部における鋼材の膨張圧によってかぶりコンクリートにひび割れが発生したり、錆汁が漏出したりすることによって、はじめて鋼材腐食状態が露見する。しかし、鋼材の腐食状態が露見した段階でのコンクリート構造物の補修・改修工事には大きな費用を要する。そこで、鋼材腐食が露見されていない段階で鋼材腐食状態を非破壊的に測定する技術が注目を集めつつある。
【0003】
コンクリート構造物の鋼材腐食状態を非破壊的に測定する方法のひとつとして自然電位測定法がある。自然電位測定法とは、コンクリート構造物中の鋼材が腐食することによって変化する鋼材表面の電位を測定する方法であり、一般的には鋼材の腐食がすすむほど鋼材の電位は卑な方向(−側)に変化する。自然電位測定法では、照合電極と呼ばれる電極体と電位差計とが用いられ、電位差計の+端子を鋼材に結線し、−端子に照合電極のリード線を接続して、この照合電極をコンクリート面に当接させたり、コンクリート躯体内に埋め込んだりして測定が行われる。コンクリート面に当接されるタイプの照合電極は可搬式照合電極と呼ばれ、コンクリート躯体内に埋め込まれるタイプの照合電極は埋込式照合電極と呼ばれる(例えば特許文献1)。
【0004】
なお、自然電位測定法は、既成のコンクリート構造物の鋼材の腐食状態を測定する目的の他、電気防食工法の効果を確認するためにも用いられる(例えば特許文献2)。
【0005】
また、細線状の貴金属被覆チタンワイヤを照合電極としてコンクリート構造物中に埋設して測定を行う技術も知られている(例えば特許文献3)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、可搬式照合電極を用いた測定法では、現場に作業者用の足場を架設する必要があるため、作業性が悪い。また、コンクリート表面に照合電極を当てて測定が行われるので、コンクリート表面部分の含水率の影響を受けやすい。また、電位差計の+端子を鋼材に結線するために、鋼材をコンクリート躯体からはつり出す必要がある。
【0008】
埋込式照合電極を用いた測定法では、照合電極の液絡部近傍と鋼材との電位差しか測定できない。このため局所的に進んだ鋼材の腐食状態の測定漏れが生じる可能性がある。測定漏れを抑えるためには多数の照合電極をピッチを狭めて埋め込む必要があり、手間とコストが増大する。また、日本国内で入手できる埋込式照合電極は、鉛製や二酸化マンガン製のものが主流であり、これらは高価であるとともに、直径20mm、長さ120mm〜150mmとサイズが大きいため、コンクリート躯体に狭ピッチで埋め込むことは困難である。
【0009】
そこで、1本の照合電極を測定対象である鉄筋の方向に沿って鉄筋の略全長に近接対応してコンクリート躯体内に埋め込むことによって、鉄筋の全体的な自然電位を測定する方法が検討されている。この方法は、一回の測定で、鉄筋の全体的な腐食状態を測定できるという優れた利点を有するものの、鉄筋の腐食状態を部分毎に測定することができない。つまり、鉄筋において腐食が進んだ部分と腐食が進んでいない部位とを分けて特定することができない。このためコンクリート構造物の補修・改修を行うにあたって局所的な腐食部位を考慮した工事計画を立てることが困難であった。
【0010】
本発明の目的は、コンクリート構造物内の鋼材の全体的な自然電位の測定および鋼材の部分毎の自然電位の測定を行うことができ、検出漏れが発生しにくく、測定作業を効率的に行うことのできる鋼材電位測定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するために、本発明に係る一形態の鋼材電位測定方法は、コンクリート構造物内の鋼材の電位を自然電位測定法により測定するにあたり、
測定対象である前記鋼材に沿って、互いに導通接続された複数の線状の照合電極を、前記鋼材の略全長に対応して前記コンクリート構造物内に埋め込む電極埋設段階と、
前記互いに導通接続された複数の照合電極と前記鋼材との電位差を前記鋼材の全体的な自然電位として測定する第1測定段階と、
前記鋼材の全体的な自然電位の測定結果が次の第2測定段階への移行を決定するための条件を満足した後、前記複数の照合電極間の導通を解除し、個々の前記照合電極と前記鋼材の電位差を、前記鋼材の前記個々の照合電極に対応する部分毎の自然電位として測定する第2測定段階とを有する。
【0012】
本発明によれば、第1測定段階で鋼材の全体的な自然電位を測定し、照合電極間の導通を解除することによって、第2測定段階で鋼材の部分毎の自然電位を測定することができる。このようにコンクリート構造物における鋼材の自然電位を段階的に測定することができるので、必要最小限の測定回数で、検出漏れが発生しにくく効率的な測定が可能になる。
【0013】
前記電極埋設段階で、隣り合う前記照合電極間を前記コンクリート構造物の外側で切断が可能な導通手段により接続しておき、前記導通手段を切断して前記照合電極間の導通を解除するようにしてもよい。
これにより、コンクリート躯体をはつることなく、照合電極間の導通を容易に解除することができ、作業効率が向上する。
【発明の効果】
【0014】
以上のように、本発明によれば、コンクリート構造物内の鋼材の全体的な自然電位の測定および鋼材の部分毎の自然電位の測定を行うことができ、検出漏れが発生しにくく効率的な測定作業が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明に係る第1の実施形態である鉄筋腐食測定方法を説明するためにコンクリート構造物を側面方向から見た概略断面図である。
【
図2】
図1のコンクリート構造物のA−A'断面図である。
【
図3】第1の実施形態の鉄筋腐食測定方法において第1測定段階を示す概略断面図である。
【
図4】第1の実施形態の鉄筋腐食測定方法において第2測定段階を示す概略断面図である。
【
図5】本実施形態の鋼材電位測定方法で用いられる照合電極10の例を示す図である。
【
図6A】本発明に係る第1の実施形態および第2の実施形態の測定方法に関する第1の試験による最初の試験結果を示すグラフである。
【
図6B】最初の試験から約半年後に実施された2回目の試験の結果を示すグラフである。
【
図7】第1の試験における第1の実施形態の測定方法の試験条件を示す図である。
【
図8】第1の試験における第2の実施形態の測定方法の試験条件を示す図である。
【
図9】本発明に係る第1の実施形態および第2の実施形態の測定方法に関する第2の試験による試験結果を示すグラフである。
【
図10】第2の試験における第1の実施形態の測定方法の試験条件を示す図である。
【
図11】第2の試験における第2の実施形態の測定方法の試験条件を示す図である。
【
図12】第2の試験における第2の実施形態の測定方法の別の試験条件を示す図である。
【
図13】新設のコンクリート構造物1に照合電極10を埋め込む方法の例を説明するためにコンクリート構造物1を側面方向から見た断面図である。
【
図15】鉄筋腐食測定方法の変形例を説明するための概略断面図である。
【
図16】
図15の鉄筋腐食測定方法の変形例において、新設のコンクリート構造物1に照合電極10を埋め込む方法の例を説明するために主筋方向からコンクリート構造物1を見た断面図である。
【
図18】埋込式照合電極を用いた典型的な測定方法を説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る実施形態を、図面を参照しながら説明する。
<第1の実施形態>
図1は本発明の鋼材電位測定方法を採用した鉄筋腐食測定方法の第1の実施形態を説明するためにコンクリート構造物を側面方向から見た概略断面図、
図2は
図1のコンクリート構造物のA−A'断面図である。
【0017】
本実施形態の鉄筋腐食測定方法は、コンクリート構造物1内の腐食測定対象である鉄筋2に沿って、複数本の線状の照合電極10(10a,10b,10c,10d,10e)を該鉄筋2の略全長に対応してコンクリート構造物1のコンクリート躯体5内に互いに導通接続された状態で一列に埋め込む電極埋設段階と、互いに導通接続された複数の照合電極10とコンクリート躯体5内の鋼材との電位差を測定して鉄筋2の全体的な自然電位を測定する第1測定段階と、照合電極10間の導通を解除し、個々の照合電極10と鋼材との電位差を順次測定することによって、鉄筋2の部分毎の自然電位を測定する第2測定段階とを有する。
【0018】
なお、第1測定段階および第2測定段階において、照合電極10との電位差測定の対象となる鋼材は
図1では鉄筋2としているが、コンクリート構造物1内の鉄筋であればどれでもよい。
【0019】
また、
図1において、符号3は測定対象外の主筋、符号4は帯筋である。電位差計20の+端子に接続される鋼材は、測定対象の鉄筋2、測定対象外の主筋3および帯筋4のいずれであってもよい。
【0020】
第1測定段階では、互いに導通接続された複数の照合電極10と鋼材との電位差を測定するために、電位差計20の+端子にコンクリート躯体5内の鋼材が電気的に接続され、電位差計20の−端子に照合電極10aがリード線13を介して接続される。
【0021】
複数の照合電極10を互いに導通接続するために、隣り合う2つの照合電極10は導通手段15によって互いに電気的に接続される。導通手段15は、例えば線状の導体などであってもよい。導通手段15の両端部は、隣り合う照合電極10の近接する端部同士に各々接続されている。
【0022】
第1測定段階では、測定された電位差が、第2測定段階への移行を決定するための基準値を超えたかどうかが人為的に判定される。測定された電位差が基準値を超えない場合には第2測定段階への移行は見送られる。測定された電位差が基準値を超えた場合、第2測定段階に移行するために、照合電極10間の導通を解除する作業が行われる。この導通の解除は、例えば、
図1および
図3に示すように、線状の各導通手段15の中間部分をコンクリート躯体5の表面より引き出しておくことによって、コンクリート躯体5をはつることなく、導通手段15をその中間部分で切断するだけで達成される。
【0023】
図4は、第2測定段階を示す図である。なお、
図3および
図4において、測定対象外の主筋3および帯筋4の図示は省略されている。
第2測定段階では、個々の照合電極10と鋼材との電位差測定が順次行われる。
例えば、まず、図中左端の照合電極10aと鋼材との電位差測定が行われる。この照合電極10aと鋼材との電位差測定は、第1測定段階と同様に、電位差計20の−端子に照合電極10aをリード線13を介して接続し、電位差計20の+端子に鋼材を接続して行われる。
【0024】
次に、照合電極10bに一端が接続されたままとなっている切断後の導通手段15aの他端を電位差計20の−端子に接続し、電位差計20の+端子に鋼材を接続して電位差測定が行われる。照合電極10c、10d、10eについても同様に、切断後の導通手段15aを電位差計20の−端子に接続し、電位差計20の+端子に鋼材を接続して電位差測定が行われる。
【0025】
このように第2測定段階では、個々の照合電極10と鋼材との電位差測定が順次行われる。これにより個々の照合電極10に対応する部分毎に鉄筋2の腐食状態を測定することができ、鉄筋2の腐食が進んだ部分を腐食の程度とともに検出することができる。
【0026】
また、
図1の例では、5本の照合電極10をコンクリート躯体5内に埋め込んだが、2本以上であってもよい。
【0027】
図5は、本実施形態の鉄筋腐食測定方法で用いられる照合電極10の例を示す図である。この照合電極10は、細線状のライン電極11と、リード線13と、ライン電極11とリード線13の端部同士を接続する接続部12からなる。ライン電極11はチタン(Ti)の細線と、この細線を被覆するイリジウム(Ir)、ルテニウム(Ru)、ハフニウム(Hf)又はロジウム(Rh)のいずれかからなる貴金属被覆で構成される。チタンは鉄に対して電位の高い安定した強度の大きい金属で、耐久性に富み、伸線が容易で、細線状の照合電極材料として適切である。ただし、チタンは酸化しやすいので、これを防止するために酸にもアルカリにも耐性のある上記の貴金属で被覆されることが望ましい。ライン電極11の直径は1.0〜3.0mm程度であり、その長さは測定対象である鉄筋2の長さに合わせて切断して使用される。ライン電極11の一端は接続部12によりリード線13の一端と電気的に接続されている。リード線13の他端は電位差計20の−端子と接続される。リード線13は絶縁被膜により覆われたものであることが好ましい。
【0028】
なお、
図5に示した照合電極10のライン電極11のみがコンクリート構造物1のコンクリート躯体5内に埋め込まれてもよい。
図1では、図中左端の照合電極10aとして
図5に示した接続部12およびリード線13を有する照合電極10が用いられ、その他の照合電極10b、10c、10d、10eとしてライン電極11のみが用いられている。
【0029】
次に、自然電位測定法を用いた典型的な鉄筋腐食測定方法の課題について説明する。
コンクリート構造物内の鉄筋の腐食状態は場所によって程度に差があることが普通である。埋込式照合電極を用いた典型的な測定方法では、例えば
図18に示すように、照合電極110の先端に設けられた液絡部111の近傍と鋼材との電位差しか測定できない。このため局所的な腐食部位の検出漏れが生じる可能性がある。この検出漏れを抑えるためには多数の照合電極をピッチを狭めて埋め込む必要があるが、数多くの照合電極をコンクリート躯体に埋め込むには多大な手間とコストを要する。
【0030】
そこで、1本の照合電極を測定対象である鉄筋の方向に沿って鉄筋の略全長に近接対応してコンクリート躯体内に埋め込むことによって、鉄筋の全体的な自然電位を測定する方法が検討されている。この方法は、一回の測定で、鉄筋の全体的な腐食状態を測定できるという優れた利点を有するものの、鉄筋の腐食状態を部分毎に測定することができない。つまり、鉄筋において腐食が進んだ部分と腐食が進んでいない部位とを分けて特定することができない。このためコンクリート構造物の補修・改修を行うにあたって局所的な腐食部位を考慮した工事計画を立てることが困難であった。
【0031】
本実施形態の鉄筋腐食測定方法では、第1測定段階で鉄筋2の全体的な自然電位を測定することができる。そして、この第1測定段階で測定された電位差が基準値を超えたなら、照合電極10間の導通を解除し、第2測定段階で鉄筋2の部分毎の自然電位を測定することができる。このようにコンクリート構造物1における鉄筋2の腐食状態を段階的に測定することができるので、必要最小限の測定回数で、腐食検出漏れが発生しにくく効率的な腐食測定が可能になる。
【0032】
なお、自然電位の基準値としては、例えば、ASTM(Standard Test Method)の鉄筋腐食評価基準などを採用することができる。このASTMの鉄筋腐食評価基準では、自然電位をE(mV)として、−200>=E>−350の範囲を腐食の可能性がある範囲、−350>Eの場合を、腐食が生じしている、あるいは100%に近い確率で腐食が生じている、と定めている。これに準じて、例えば、第1測定段階の測定結果が−200よりも卑な側にある場合などに第2測定段階に移行するようにすればよい。
【0033】
(第1測定段階および第2測定段階の各測定方法の信頼性)
次に、第1測定段階および第2測定段階の各測定方法を精度的観点から2種類の試験(第1の試験および第2の試験)により検討する。
【0034】
(第1の試験)
図7は第1測定段階の試験条件を示す図である。第1測定段階の測定方法による試験では、長さ約6mの鉄筋2に沿って、長さ約6mの照合電極10を鉄筋2の略全長に対応してコンクリート躯体5内に埋め込んで測定を行った。
【0035】
図8は第2測定段階の試験条件を示す図である。第2測定段階の測定方法による試験では、同じく長さ約6mの鉄筋2に沿って、長さ約1mの6本の照合電極10を、鉄筋2の略全長に対応して連続的にコンクリート躯体5内に埋め込んで測定を行った。
【0036】
図6Aおよび
図6Bは第1の試験の結果を示すグラフであり、
図6Aは第1測定段階の測定方法と第2測定段階の測定方法による最初の試験の結果、
図6Bはその約半年後に実施された2回目の試験の結果である。
図6Aおよび
図6Bの各グラフ内の実線は第1測定段階の測定方法による試験結果、点線は第2測定段階の測定方法による試験結果を示す。
【0037】
図6Aおよび
図6Bの各グラフから、今回の試験では、第1測定段階の測定方法による測定結果において、コンクリート構造物1の特に軸方向両端部の自然電位が卑な方向(−側)に推移し、第2測定段階の測定方法により測定された自然電位も卑な方向(−側)に推移した。したがって、各段階の測定方法とも、鉄筋2の腐食の進行を自然電位の卑な方向(−側)への変化として観測できることを確認できた。
【0038】
(第2の試験)
図10は第2の試験における第1測定段階の測定方法の試験条件を示す図である。第1測定段階の測定方法による試験では、長さ約9mの鉄筋2に沿って、長さ約9mの照合電極10を鉄筋2の略全長に対応してコンクリート躯体5内に埋め込んで測定を行った。
【0039】
図11は第2の試験における第2測定段階の測定方法の試験条件を示す図である。第2測定段階の測定方法の試験では、長さ約9mの鉄筋2に沿って長さ約1mの6本の照合電極10を鉄筋2の略全長に対応して連続的にコンクリート躯体5内に埋め込んで測定を行った(試験条件A)。
【0040】
図12は、第2の試験における第2測定段階の測定方法の別の試験条件を示す図である。第2測定段階の測定方法による別の試験では、長さ約9mの鉄筋2に沿って長さ約0.2mの30本の照合電極10を鉄筋2の略全長に対応して連続的にコンクリート躯体5内に埋め込んで測定を行った(試験条件B)。
【0041】
図9はコンクリート構造物1における軸方向の中央部分のみに塩害を促進するために塩を混入し、半年など所定の期間を置いて、第1測定段階の測定方法および第2測定段階の測定方法により自然電位を測定した結果を示すグラフである。
【0042】
図9のグラフにおいて、細い実線は第1測定段階の測定方法による試験結果、太線は第2測定段階の測定方法による試験条件A下での試験結果、点線は第2測定段階の測定方法による試験条件B下での試験結果である。
このグラフから明らかなように、第2測定段階の測定方法により得られた試験結果から、コンクリート構造物1において塩混入範囲で測定された自然電位は塩混入範囲以外の部分で測定された自然電位よりも卑な値(−側)であることが確認できた。そして、第1測定段階の測定方法により得られた自然電位は、第2測定段階の試験条件Aおよび試験条件Bの下での測定方法によって塩混入範囲で測定された自然電位の値に近いことが確認された。
【0043】
以上、各試験の結果から、第1測定段階および第2測定段階の各測定方法は、各々測定段階で要求される精度を満足するものであることが確認された。
【0044】
(線状の照合電極10の埋め込み方法)
図13および
図14は新設のコンクリート構造物1に照合電極10を埋め込む方法の例を説明するための断面図であり、
図13はコンクリート構造物1を側面方向から見た断面図、
図14は
図13のB−B'断面図である。
【0045】
これらの図に示すように、新設のコンクリート構造物1に照合電極10を埋め込む方法の1つとしては、コンクリート打設前、互いに平行に配された複数の鉄筋2、3の上に、鉄筋2の方向に間隔を置いて複数の棒状の支持部材17を設置し、これらの支持部材17に照合電極10を支持させることによって高さ位置を決め、コンクリート打設を行う方法がある。棒状の支持部材17は耐腐食性および非伝導性を有する材料例えばプラスチック製の部材などであることが望ましい。
【0046】
<変形例>
次に、上記の実施形態の鉄筋腐食測定方法の変形例を説明する。
図15は、本変形例の鉄筋腐食測定方法を説明するための概略断面図である。
本変形例の鉄筋腐食測定方法では、埋め込まれる複数全ての照合電極10(10a,10b,10c)として、一端にリード線13が接続されたものが用いられる。各照合電極10のリード線13は、電位差計20への接続が可能なように、コンクリート躯体5内を鉄筋2に沿って這わせてコンクリート構造物1の一端面より引き出されている。
【0047】
各照合電極10間は、上記実施形態と同様に導通手段15により互いに電気的に接続されることによって導通状態とされている。したがって、第1測定段階では、上記実施形態と同様に、互いに導通状態とされた複数の照合電極10と鋼材との電位差測定が行われる。第2測定段階では、各導通手段15を切断することによって照合電極10同士の導通を解除し、電位差計20の−端子に接続する照合電極10のリード線13を切り替えることによって、個々の照合電極10と鋼材との電位差測定が順次行われる。
【0048】
照合電極10b、10cのリード線13を、コンクリート躯体5内で鉄筋2に沿って這わせてコンクリート構造物1の一端面より引き出すために、例えば、
図16および
図17に示すように、複数の棒状の支持部材17に、各照合電極10とともに例えば硬質塩化ビニール管などの管体16を支持させ、この管体16内に照合電極10b、10cのリード線13を通してコンクリート構造物1の外に引き出すようにする方法などがある。
【0049】
また、既存のコンクリート構造物に照合電極10を埋め込む方法としては、例えば、コンクリート躯体に照合電極10を埋め込むための溝をカッターなどにより形成し、溝内に照合電極を入れてモルタルで埋める方法などがある。
【0050】
以上、新設または既設のコンクリート構造物の鉄筋腐食測定方法を述べたが、本発明の鋼材電位測定装置は、電気防食工法において、鋼材の電位を測定して効果を確認するための手段としても利用することが可能である。