特許第6652461号(P6652461)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6652461
(24)【登録日】2020年1月27日
(45)【発行日】2020年2月26日
(54)【発明の名称】橋梁用防護柵
(51)【国際特許分類】
   E01F 15/04 20060101AFI20200217BHJP
   E01D 19/10 20060101ALI20200217BHJP
【FI】
   E01F15/04 B
   E01D19/10
【請求項の数】7
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-151850(P2016-151850)
(22)【出願日】2016年8月2日
(65)【公開番号】特開2018-21330(P2018-21330A)
(43)【公開日】2018年2月8日
【審査請求日】2019年3月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002462
【氏名又は名称】積水樹脂株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100074332
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100114432
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 寛昭
(74)【代理人】
【識別番号】100138416
【弁理士】
【氏名又は名称】北田 明
(72)【発明者】
【氏名】中野 圭祐
【審査官】 彦田 克文
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−045162(JP,A)
【文献】 特開平08−028095(JP,A)
【文献】 特開平11−117245(JP,A)
【文献】 特開2012−154027(JP,A)
【文献】 特開2005−188031(JP,A)
【文献】 特開2013−256777(JP,A)
【文献】 実開昭62−105274(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01F 15/04
E01D 19/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路用橋梁の地覆上面にアンカーボルトを介して固定されるベース部材と、
筒状の支柱本体と、
該支柱本体の下部に内挿される中柱と、
前記ベース部材と前記中柱との間に取付けられ前記支柱本体を前記ベース部材に対して上方に離間した位置で支持する離間支持部を有した支持部材と、
を備えたことを特徴とする橋梁用防護柵。
【請求項2】
前記支柱本体は前記支持部材に一体的に立設されている請求項1に記載の橋梁用防護柵。
【請求項3】
前記中柱は、前記支持部材に貫通されている請求項1または請求項2に記載の橋梁用防護柵。
【請求項4】
前記支持部材は、前記ベース部材に固定されるとともに上方に向けて延びた板状に形成された第一部分と、該第一部分の上部から後方に向けて延びた板状に形成されるとともに、前記離間支持部を有する第二部分とを一体的に備え、
前記ベース部材の上面に対して前記第二部分の延びる方向のなす角度は、前方から後方へ向かって下り勾配となる角度10度と、前方から後方へ向かって登り勾配となる角度30度との間の角度とされている請求項1ないし請求項3の何れか1項に記載の橋梁用防護柵。
【請求項5】
前記第一部分と前記第二部分とは、90度以上の角度で交差している請求項4に記載の橋梁用防護柵。
【請求項6】
前記支持部材は第三部分をさらに備え、
該第三部分は、前記ベース部材に固定されるとともに、前記第二部分の下方に配置され前記ベース部材に対して後方に向けて延びた板状部分を備え、
前記中柱は前記第二部分を貫通して、下端が前記第三部分に支持されている請求項4または請求項5に記載の橋梁用防護柵。
【請求項7】
前記支柱本体はアルミニウムにより形成され、前記中柱は鋼管により形成されている請求項1ないし請求項6の何れか1項に記載の橋梁用防護柵。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路用橋梁の地覆に立設される橋梁用防護柵に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の橋梁用防護柵が、特許文献1に提案されている。特許文献1の橋梁用防護柵は、道路用橋梁の地覆の上面にアンカーボルトを介して固定されるベース部材と、ベース部の上面に立設される支柱部材とを備えている。この支柱部材には、横梁が取付けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015−45162号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種の橋梁用防護柵では、車両の衝突時などに発生する衝撃荷重によって、支柱部材を介してアンカーボルトに抜き方向の大きな力が働き、地覆のアンカーボルト埋設部が破損する場合がある。
【0005】
アンカーボルトに抜き方向の大きな力を働かせないようにするためには、衝撃荷重に対して橋梁用防護柵を塑性変形させることが考えられる。
【0006】
そこで本発明は、車両の衝突などによる衝撃荷重に対して適度に塑性変形させ得る橋梁用防護柵の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の橋梁用防護柵は、道路用橋梁の地覆上面にアンカーボルトを介して固定されるベース部材と、筒状の支柱本体と、該支柱本体の下部に内挿される中柱と、前記ベース部材と前記中柱との間に取付けられ前記支柱本体を前記ベース部材に対して上方に離間した位置で支持する離間支持部を有した支持部材とを備えたことを特徴としている。
【0008】
上記構成において、支柱本体は、ベース部材と中柱との間にある支持部材において、支柱本体をベース部材に対し上方に離間した位置で支持する離間支持部により支持されている。このため支柱本体は、支持部材を介して且つベース部材に対し上方に離間した位置で支持され、筒状の支柱本体の強度を支持部材の強度に比べて高くし、支柱本体を中柱に強固に固定しておくことで、支柱本体への衝撃荷重を支持部材が受けると、支持部材を塑性変形させられる。
【0009】
本発明の橋梁用防護柵では、前記支柱本体は前記支持部材に一体的に立設された構成を採用できる。
【0010】
上記構成の橋梁用防護柵のように、支柱本体および支持部材が一体であれば、支柱本体が受ける衝撃荷重を支持部材に伝え易い。
【0011】
本発明の橋梁用防護柵では、前記中柱は、前記支持部材に貫通された構成を採用できる。
【0012】
上記構成の橋梁用防護柵では、中柱を支持部材に貫通させたことにより、中柱と支持部材との接合強度を確保して、中柱による支柱本体の支持力を確保できる。
【0013】
本発明の橋梁用防護柵では、前記支持部材は、前記ベース部材に固定されるとともに上方に向けて延びた板状に形成された第一部分と、該第一部分の上部から後方に向けて延びた板状に形成されるとともに、前記離間支持部を有する第二部分とを一体的に備え、
前記ベース部材の上面に対して前記第二部分の延びる方向のなす角度は、前方から後方へ向かって下り勾配となる角度10度と、前方から後方へ向かって登り勾配となる角度30度との間の角度とされた構成を採用できる。
【0014】
上記構成の橋梁用防護柵では、ベース部材に固定された第一部分、および第一部分の上部から後方に向けて延びた第二部分を備えることで、支柱本体が受けた衝撃荷重により支持部材を塑性変形させられる。
【0015】
本発明の橋梁用防護柵では、前記第一部分と前記第二部分とは、90度以上の角度で交差している構成を採用できる。
【0016】
上記構成の橋梁用防護柵では、ベース部材に固定された第一部分、および第一部分の上部から後方に向けて延びた第二部分が90度以上の角度で交差し、支柱本体が離間支持部を有する第二部分に支持されていることで、支柱本体が受けた衝撃荷重により支持部材を塑性変形させられる。
【0017】
本発明の橋梁用防護柵は、前記支持部材は第三部分をさらに備え、該第三部分は、前記ベース部材に固定されるとともに、前記第二部分の下方に配置され前記ベース部材に対して後方に向けて延びた板状部分を備え、前記中柱は前記第二部分を貫通して、下端が前記第三部分に支持された構成を採用できる。
【0018】
上記構成の橋梁用防護柵では、中柱の途中部分が第二部分に支持され、中柱の下端が第三部分に支持されることで、中柱が確実に支持される。
【0019】
本発明の橋梁用防護柵では、前記支柱本体はアルミニウムにより形成され、前記中柱は鋼管により形成された構成を採用できる。
【0020】
上記構成の橋梁用防護柵では、橋梁用防護柵全体の軽量化や長寿命化等の要望に応じられる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の橋梁用防護柵では、支柱本体をベース部材とは別の支持部材で支持した構成として、支持部材を、車両の衝突などによる衝撃荷重に対して適度に塑性変形させられる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の第一の実施形態に係る橋梁用防護柵のうちベースユニットを示す左側面図である。
図2】同ベースユニットを示し、(a)は平面図、(b)は底面図である。
図3】同ベースユニットを示し、(a)は正面図、(b)は背面図である。
図4】同ベースユニットと柱部とを示す斜視図である。
図5】同ベースユニット、柱部、横梁(二点鎖線表示)を示す斜視図である。
図6】ベースユニットを示し、外力を受けて中柱が後方に移動した場合を示す左側面図である。
図7】本発明の第一の実施形態に係る橋梁用防護柵のうちベースユニット、および柱部を示す左側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の第一の実施形態に係る橋梁用防護柵を、図1ないし図6を参照しつつ説明する。第一の実施形態に係る橋梁用防護柵は、既設の道路用橋梁Kに付設する場合、新設の道路用橋梁Kに付設する場合の、何れにも適用可能である。
【0024】
橋梁用防護柵は、図1に示すように、道路用橋梁Kの地覆Wに設けられる。地覆Wは、道路用橋梁Kの幅員方向両側端部のそれぞれに、橋長方向に沿うよう配置されている。橋梁用防護柵は、地覆Wの上面に固定されるベースユニット1と、ベースユニット1から上方に向けて延びる柱部とを備える。
【0025】
ベースユニット1は、各地覆W上の、橋長方向(横方向として特定する)に所定間隔を置いて配置されることで、複数個設けられている。柱部は、ベースユニット1毎に設けられている。橋梁用防護柵は、各柱部に亘るように固定される複数本の横梁6(図5に、二点鎖線で三本を表している)を、さらに備える。各ベースユニット1、および各柱部は同様の構成であるから、図1ないし図6では、一個のベースユニット1および柱部を表し、各ベースユニット1および各柱部の説明を代用する。
【0026】
ベースユニット1は、ベース部材2、支持部材4、および中柱3を備える。このベースユニット1は、全体を鋼材から形成されている。ベース部材2は、地覆Wの上面(平面である)に載置固定される。図2に示すように、ベース部材2は、平面視長方形の板状に形成されている。ベース部材2には、複数(4箇所)にアンカーボルト取付孔21が形成されている。アンカーボルト取付孔21は、後述する前方支持部4Fの前第一部分41に対しその前方の二箇所の位置、前第一部分41の左右の側方の二箇所の位置に形成されている。各アンカーボルト取付孔21は、道路用橋梁Kの幅員方向に長い長孔、すなわち地覆Wの幅方向(前後方向として特定する)に長い長孔とされている。ベース部材2は、地覆Wに埋め込まれたアンカーボルトB1をアンカーボルト取付孔21に挿通し、ベース部材2に対するアンカーボルトB1の突出部分にナットNを締結することで、地覆Wに固定されている。
【0027】
図1、3、4に示すように、支持部材4は、ベース部材2に固定される。支持部材4は、ベース部材2と中柱3との間に取付けられ、後述する支柱本体5を、ベース部材2に対して上方に離間した位置で支持するよう構成されている。支持部材4は、互いにベース部材2の前後位置に固定される前方支持部4F、および第三部分に相当する後方支持部4Rを備え、さらに中間補強部4Cを備える。
【0028】
前方支持部4Fは、後方支持部4Rに対して前方側(幅員方向中心側)に配置され、後方支持部4Rは、前方支持部4Fに対して後方側(幅員方向外側)に配置される。前方支持部4Fは、板状の鋼材を折り曲げて形成されており、前第一部分41と前第二部分42を一体的に備える。この板状の鋼材の横方向長さは、ベース部材2の横方向長さよりも小さく、中柱3および後述する支柱本体5の横方向長さに比べて長く設定されている。なお、前第一部分41と前第二部分42は、同じ長さに設定されている。
【0029】
前第一部分41は、ベース部材2の上面22に、上方に向けて延びるよう(上下方向に沿うよう)固定されている。具体的には、前第一部分41の下端面が、ベース部材2の上面22の横方向中心部、且つ前後方向略中心部に、熔接により固定されている。
【0030】
前第二部分42は、前第一部分41の上端から、前第一部分41に対して、角度θ1で示す鈍角をもって延長されている。前第二部分42は、角度θ2で示す傾斜をもって、後方ほど上方となるよう傾斜して延長されている。すなわち、第一の実施形態では、前第二部分42は、後方ほどベース部材2の上面22に対して離れるように傾斜されている。また、前第二部分42の後端位置は、ベース部材2の後端面23を越えて、さらに後方に位置付けられている。
【0031】
前第二部分42に、前方支持部4Fとは別体の中柱3を挿通可能として、中柱3を支持する離間支持部43が形成されている。離間支持部43は、中柱3を挿通させる矩形の挿通孔部であり、ベース部材2に対して上方に離間した位置で、中柱3の長手方向途中部分を支持する部分である。中柱3を前第二部分42に貫通させたことにより、中柱3と前第二部分42との接合強度を確保でき、中柱3による支柱本体5(後述する)の支持力を確保している。この離間支持部43は、前第二部分42のうち後方寄り、すなわち、ベース部材2の後端面23に対して、さらに後方に位置ずれした位置に形成されている。
【0032】
後方支持部4Rは、前方支持部4Fと、ベース部材2に対して横方向において同じ位置に配置されている。後方支持部4Rは、板状の鋼材を折り曲げて形成されており、後第一部分410と後第二部分420を一体的に備える。この板状の鋼材は、前方支持部4Fを構成する鋼材に比べて肉厚である。後方支持部4Rの横方向長さは、ベース部材2の横方向長さよりも小さく、中柱3および支柱本体5の横方向長さに比べて長く設定されている。後第一部分410と後第二部分420は、同じ長さに設定されている。
【0033】
後第一部分410は、ベース部材2の後端面23に、上方に向けて延びるよう(上下方向に沿うよう)固定されている。具体的には、後第一部分410の下端部が、ベース部材2の後端面23の横方向中心部に、熔接により固定されている。後第一部分410の上端位置は、前第一部分41の上端位置に比べて低い位置にある。
【0034】
後第二部分420は、後第一部分410の上端から後方へ向け、且つ斜め上方へ向けて延長されている。すなわち後第二部分420は、ベース部材2の上面22に対して後方ほど離れるように傾斜し、後第一部分410に対して鈍角をもって延長されている。後第二部分420の後端位置は、前第二部分42の後端位置と略一致している。後第二部分420は、前第二部分42に比べて低い位置にある。
【0035】
後第二部分420の傾斜上面は、離間支持部43を挿通した中柱3の下端を当接支持する支持面である。具体的に、中柱3の下端面が、後第二部分420の傾斜上面に熔接されている。したがって、中柱3の下端面は、後第二部分420の傾斜上面の傾斜角度と同じ傾斜角度とされている。この構成により、中柱3は、ベース部材2に対して後方へ外れた位置に配置されている。また、中柱3は、ベース部材2よりも上方に位置して、前方支持部4Fおよび後方支持部に保持されている。
【0036】
中間補強部4Cは、垂直方向に沿う矩形の板状体である。中間補強部4Cは、前方支持部4Fと後方支持部4Rとの間、且つ中柱3の前方に配置されている。中間補強部4Cの四辺は、ベース部材2の上面22、前第一部分41の後面、前第二部分42の下面、後第一部分410の前面、および中柱3の前面に連結するよう溶接されている。この構成によると、中間補強部4Cで前方支持部4Fと後方支持部4Rとが補強されているため、支持部材4全体の強度を高めることができる。第一の実施形態では、上記のように、ベース部材2と中柱3との間に、支持部材4が設けられている。
【0037】
中柱3は、横断面視略正方形の一本の角型鋼管である。中柱3は、離間支持部43に、上下方向(垂直方向)に沿うよう挿通されている。中柱3の上端部には、前後方向に延びる補強板31が設けられている。補強板31により、車両の衝突等による衝撃荷重によって中柱3が前後方向で潰されないよう補強されている。衝撃荷重を受けても中柱3が潰されない(変形しない)ことで、中柱3に対する支柱本体5の嵌合状態の緩みを抑制でき、したがって、衝撃荷重を支持部材4側に伝えられる。図3(a)(b)に示すように、中柱3の前面下部には前方支柱固定ボルト孔33が二箇所に貫通し、後面上部には後方支柱固定ボルト孔34が二箇所に貫通している。そして、中柱3の前後面の一箇所には同一高さで、横梁固定ボルト孔35が貫通している。
【0038】
前記柱部は、このような中柱3、および前記支柱本体5を備える。したがって、第一の実施形態では、中柱3は、ベースユニット1および柱部に兼用の部材である。支柱本体5には、アルミニウム合金製の横梁6が取付けられる。
【0039】
支柱本体5は、中柱3に対して上方から外嵌される角筒状に形成されている。中柱3および支柱本体5の上下方向における重なり寸法は、中柱3による支柱本体5の支持を確実にするために、中柱3の前後の断面寸法、または左右の断面寸法以上とすることが好ましい。例えば、この重なり寸法として、前記断面寸法の倍以上、2倍以下とされている。支柱本体5の座屈強度は、支持部材4の座屈強度に比べて高く設定されている。支柱本体5は、中柱3のうち、前方支持部4Fにおける前第二部分42の傾斜上面よりも上方へ突出した突出部分30に上方から嵌合して、これを外方で覆う。すなわち、中柱3は支柱本体5の下部に内挿されている。
【0040】
支柱本体5は、中柱3のうち突出部分30に比べて充分に長尺に形成されている。支柱本体5は上下方向に沿うよう、下端が、前方支持部4Fにおける前第二部分42の傾斜上面に当接され、下部が、取付ボルトB2によって突出部分30に強固に固定されている。したがって、支柱本体5の下端面は、前第二部分42の傾斜上面の傾斜角度と同じ傾斜角度とされている。このように構成されることで、支柱本体5は支持部材4に一体化されている。
【0041】
支柱本体5は、中柱3に外嵌しており、中柱3はベース部材2に対して後方へ外れた位置に配置されているから、支柱本体5は、ベース部材2に対して後方へ外れた位置に配置されている。支柱本体5は、前方支持部4Fにおける前第二部分42の傾斜上面において、離間支持部43の近傍に載置支持されている。ベースユニット1の全体が鋼材から形成されているのに対し、支柱本体5はアルミニウム合金製とされる。
【0042】
支柱本体5は、前方支柱固定ボルト孔33および後方支柱固定ボルト孔34を用いて、図5に示すように、外部から取付ボルトB2を取付けてなされる。また、支柱本体5には横梁6が固定される。横梁6のうちの下側の一本は、不図示のボルトが支柱本体5および中柱3を貫通することで、支柱本体5に取付けられる。
【0043】
上記構成の橋梁用防護柵では、支持部材4を前方支持部4F、後方支持部4R、中間補強部4C、および中柱3により構成してこれらを一体化させ、このような支持部材4を介して、支柱本体5をベース部材2に対し上方且つ後方に離して離間支持部43で支持させている。このため、支柱本体5や横梁6に車両が衝突して支柱本体5に衝撃荷重が働くと、この衝撃荷重は支持部材4に伝わり易い。
【0044】
支持部材4は、前方支持部4F、後方支持部4R、中間補強部4C、および中柱3の組合せで構成されているから、支持部材4が1部材から構成される場合に比べてその強度を確保し易く、したがって、支柱本体5を確実に支持できる。
【0045】
その一方で、各構成部材、特に前方支持部4F、および後方支持部4Rに衝撃荷重を分担させることができる。このため、1部材で衝撃荷重を負担させる場合に比べて、衝撃荷重に対する座屈強度の設定について、自由度の高い設定が可能になった。
【0046】
これにより、所定の衝撃荷重が支柱本体5に働いた際に、支柱本体5を座屈させることなく、また、ベース部材2を地覆Wに固定しているアンカーボルトB1を引抜くことなく、支持部材4を座屈させて衝撃荷重を吸収させられる。ここで、座屈強度とは、部材が塑性変形を開始する際の応力に対応した強度である。
【0047】
具体的に、車両衝突時等による所定の衝撃荷重が働いた場合に、上下方向に沿う支柱本体5が後方に傾く場合を想定する。まず、第一の実施形態における橋梁用防護柵では、支持部材4を構成する前方支持部4F、および後方支持部4Rはベース部材2に一体化され、前方支持部4F、および後方支持部4Rは中柱3を介して一体化されている。また、支柱本体5は中柱3に一体化されるとともに、前方支持部4Fに一体化されている。さらに、前方支持部4F、後方支持部4Rにおけるベース部材2への固定端は、中柱3に対して前方に位置ずれしている。そして、支柱本体5の座屈強度は、支持部材4の座屈強度に比べて高く設定されている。
【0048】
この条件下において、支柱本体5が所定の衝撃荷重を受けて後方に傾き、支持部材4が座屈して衝撃荷重を吸収する場合を説明する。前方支持部4Fにおいては、図6に示すように、前第一部分41と前第二部分42の両方が後方に向けて引っ張られる。すなわち、前第二部分42が後方へ向けて引かれ、上下方向に沿っている前第一部分41が、ベース部材2への固定端を支点として後方へ向けて傾く。そして、離間支持部43が前第二部分42のうち後方寄りに配置されている分だけ、前第一部分41からの離間距離が大きいから、支柱本体5の傾きに伴う曲げモーメントが、前第一部分41の、ベース部材2への固定端に大きく働く。
【0049】
その結果、前第一部分41と前第二部分42との交差部分の角度(この場合は鈍角)が広がるように、前方支持部4Fが座屈する。そして、前第二部分42は、後方ほどベース部材2の上面22に対して離れるように傾斜され、前第一部分41に対して鈍角をもって延長されていることから、交差部分が広がり易い。また、中柱3は、前第二部分42のうち後方寄りに形成された離間支持部43に挿通されている。そして、離間支持部43は孔部であるから、前第二部分42のうち離間支持部43が形成されている領域では、応力集中が生じて座屈し易い。図6では、前第二部分42の長手方向途中部分が折れるように変形した状態を表している。
【0050】
中柱3は、ベース部材2に対して後方へ外れた位置にあって後方支持部4Rの後第二部分420に載置固定されるとともに、前方支持部4Fに一体化され、支柱本体5と一体化されている。このため、後方支持部4Rの後第二部分420には、支柱本体5の傾きに伴う曲げモーメントが、ベース部材2への固定端に働く。そして、後方支持部4Rは、中柱3の直下の位置に存在し、前第二部分42のうち離間支持部43が形成されている領域では応力集中が生じて座屈し易いことから、この領域を中柱3(支柱本体5)の傾きの支点とすると、中柱3が後方へ傾くと中柱3の下部は前方へ移動する。このため、後方支持部4Rは、後第一部分410の、ベース部材2への固定端を中心とする曲げモーメント受け、中間補強部4Cの支持に抗って、後第一部分410と後第二部分420の交差部分の角度が狭まる(ベース部材2に対する傾斜が浅くなる)ように座屈が生じ、且つ後第一部分410がその固定端を中心として、前方へ向く座屈が生じる。
【0051】
後方支持部4Rは、前方支持部4Fに比べて肉厚に形成されており、中間補強部4Cはベース部材2と中柱3とを連結しているから、中柱3が後方に傾く場合に、その過剰な傾きが抑制される。しかしながら、後方支持部4Rの後方下側には、補強部材はなく空間部Sとされている。このため、後方支持部4Rの座屈は過度に規制されない。
【0052】
第一の実施形態では、前方支持部4Fおよび後方支持部4Rの座屈(塑性変形)により、車両衝突時等の外力が吸収されるから、ベース部材2を地覆Wに固定するアンカーボルトB1に働く引き抜き力を低減でき、地覆Wの損傷を抑制できる。地覆Wの損傷を抑制できると、地覆Wの補修は不要となるか最小限の補修で済む。そうなると、損傷したベースユニット1、支柱本体5、横梁6を交換するだけで復旧が可能であり、復旧工事のコストを抑制できる。
【0053】
支柱本体5および横梁6は、ベースユニット1とは別部材とし、アルミニウム合金製の支柱本体5および横梁6が用いられている。このように、支柱本体5および横梁6について材料選択の自由度が高い。特に近年では、橋梁用防護柵全体の軽量化や美観、あるいは長寿命化という観点において、アルミニウム合金製の支柱本体5および横梁6が顧客の要望であり、顧客の要望に対応することができる。
【0054】
この橋梁用防護柵では、前方支持部4Fに前第二部分42を設け、後方支持部4Rに後第二部分420を設けて、中柱3はベース部材2に対して後方に位置ずれさせて、前第二部分42および後第二部分420で支持された構成とした。このようにすることで、前後幅の狭い既設の地覆Wであっても、道路構造令において定められた建築限界を確保できる。
【0055】
本発明は上記第一の実施形態に限られず、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。その他、各部の具体的構成についても同様である。第一の実施形態では、支持部材4は、前方支持部4Fおよび後方支持部4Rを備えた場合を例示した。
【0056】
しかしながら、図7に示す第二の実施形態のように、支持部材は一つであってもよい。第二の実施形態における橋梁用防護柵では、一枚の鋼板を折り曲げて形成した支持部材4を用い、その第一部分41aをベース部材2の上面22に立設するよう固定し、第二部分42aを第一部分41aの上端から後方へ向けて延長させている。第二部分42aには、中柱3を挿通支持し、中柱3に挿入される支柱本体5の下端を支持固定する離間支持部43が形成されている。
【0057】
上記各実施形態では、支持部材4に中柱3を挿通支持させた場合を例示した。しかしながら、支持部材4が、支柱本体5をベース部材2の上面22に対して上方に離間した位置で支持する離間支持部を備えていれば、必ずしも中柱3は支持部材4に挿通されなくても、支持部材4に載置固定されていればよい。
【0058】
第一の実施形態では、前方支持部4Fとして、前第二部分42は、後方ほどベース部材2の上面22に対して離れるように傾斜され、前第一部分41に対して鈍角をもって延長されている場合を例示した(後方支持部4Rも同様である)。しかしながら、前第二部分42は、前第一部分41に対して鈍角をもって延長される構成に限定されない。例えば、第二の実施形態である、図7に示すように、前第一部分41と前第二部分42とのなす角度は90度であってもよい。
【0059】
あるいは、第一の実施形態では、前第二部分42は、後方ほどベース部材2の上面22に対して離れるように傾斜され、前第一部分41に対して鈍角をもって延長されている場合を例示した。しかしながら、図1を参照して、ベース部材2の上面22の面方向に対して前第二部分42(あるいは後第二部分420)の延びる方向の角度θ1は、前方から後方に向かって下り勾配となる角度10度と、前方から後方に向かって登り勾配となる角度30度との間である40度の範囲で選択できる。さらに、好ましくは、ベース部材2の上面22の面方向に対する前第二部分42(あるいは後第二部分420)の方向は、上面22に平行な方向から、後方に向かって30度以下の登り勾配となる範囲である。
【0060】
前第二部分42のベース部材2に対する角度θ1と、前第一部分41(あるいは後第一部分410)と前第二部分42(あるいは後第二部分420)との相互の角度θ2の設定とに関し、角度θ1は40度の範囲、角度θ2は鈍角という双方の条件を満たす必要はなく、いずれか一方の条件のみを満たすよう設定することができる。このため、例えば前第一部分41と前第二部分42とは鋭角で交差させてもよい。換言すれば、上記実施形態では、前第一部分41(あるいは後第一部分410)は、ベース部材2の上面22に上下方向に沿うよう立設されず、前第一部分41(あるいは後第一部分410)の上部ほど前方、あるいは後方に傾斜するよう、ベース部材2に立設させてもよい。
【0061】
ベース部材2の上面22に対する前第一部分41(あるいは後第一部分410)の傾斜角度は、90度を基準に前後方向に10度の範囲内とすることが、支持部材4を適度に座屈させるために好ましい。前第一部分41と前第二部分42とを鋭角で交差させる場合で支持部材4の座屈のし易さを担保するためには、角度θ2は90度未満70度以上が好ましい。角度θ1、θ2を前記のように設定することで、支柱本体5の後方へ傾かせるために、支持部材4を適度な座屈強度に設定することが容易である。
【0062】
第一の実施形態では、前方支持部4Fの前第一部分41と後方支持部4Rの後第一部分410とは略平行とされ、前方支持部4Fの前第二部分42と後方支持部4Rの後第二部分420とは略平行とされた場合を例示した。しかし、これに限定されず、前第一部分41と後第一部分410とは平行でなくてもよく、前第二部分42と後第二部分420とは平行でなくてもよい。
【0063】
上記各実施形態では、中柱3として、横断面視略正方形である角型鋼管を用いた場合を例示した。しかし中柱3は、例えば円形管、横断面視略長方形である角型管、チャンネル材、中実材料等、種々の形状であってもよい。
【0064】
上記各実施形態では、支持部材4における第一部分41,410と第二部分42,420につき板状に形成した場合を例示した。しかし、離間支持部43を確保できることを前提に、少なくとも一方が棒状等、他の形状であってもよい。
【0065】
さらに、後方支持部4Rの後方の空間部に補強材等を配置することにより、後方支持部4Rを補強し、衝撃荷重に対する支持力調整が可能になる。なお、中間補強部4Cを省くこともできる。
【0066】
第一の実施形態において、中柱3の下端面は後方支持部4Rの後第二部分420に載置固定された構成を例示した。このように、中柱3は、後方支持部4Rの後第二部分420に貫通されないので、後第二部分420の寸法を中柱3の断面寸法に対して小さくすることは可能である。但し、強度の確保という観点からは、中柱3の下端面を、その断面寸法全域にわたって後第二部分420に固定するほうが好ましい。
【0067】
後方支持部4Rにおける後第二部分420の前端部(後第一部分410との連続部付近)に、上下方向に貫通する水抜き孔を形成することができる。この水抜き孔により、柱部の内部に浸入した雨水等を排出させられるから、ベースユニット1の腐食を抑制できる。
【0068】
上記各実施形態では、ベース部材2に形成したアンカーボルト取付孔21は、道路用橋梁Kの幅員方向に長い長孔とした場合を例示した。しかしながら、アンカーボルトB1の位置を、地覆W、あるいは道路用橋梁Kの床版(スラブ)に埋設されている鉄筋等を回避して配置させた場合に対応できるよう、アンカーボルト取付孔21は橋長方向に沿う長孔としてもよい。あるいは、アンカーボルト取付孔21は、幅員方向に沿う長孔と、橋長方向に沿う長孔の組合わせとすることもできる。
【0069】
上記各実施形態では、中柱3および支柱本体5の上下方向における重なり寸法は、中柱3による支柱本体5の支持を確実にするために、中柱3の前後の断面寸法、または左右の断面寸法の倍以上、2倍以下とした場合を例示した。しかしながら、前記重なり寸法は、前記断面寸法の倍以上、2倍以下に限定されず、中柱3による支柱本体5の支持を確実に行えることを前提として、該断面寸法の2倍を超える寸法であってもよい。
【符号の説明】
【0070】
1…ベースユニット、2…ベース部材、3…中柱、4…支持部材、4C…中間補強部、4F…前方支持部、4R…後方支持部、5…支柱本体、6…横梁、21…アンカーボルト取付孔、22…上面、23…後端面、30…突出部分、41…前第一部分、42…前第二部分、43…離間支持部、410…後第一部分、420…後第二部分、B1…アンカーボルト、S…空間部、W…地覆
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7