特許第6652486号(P6652486)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6652486テスト運転をテストベンチ上で実行するための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6652486
(24)【登録日】2020年1月27日
(45)【発行日】2020年2月26日
(54)【発明の名称】テスト運転をテストベンチ上で実行するための方法
(51)【国際特許分類】
   G01M 17/007 20060101AFI20200217BHJP
   G01M 15/02 20060101ALI20200217BHJP
   G07C 5/08 20060101ALI20200217BHJP
【FI】
   G01M17/007 A
   G01M17/007 B
   G01M15/02
   G07C5/08
【請求項の数】11
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-528541(P2016-528541)
(86)(22)【出願日】2014年7月25日
(65)【公表番号】特表2016-525217(P2016-525217A)
(43)【公表日】2016年8月22日
(86)【国際出願番号】EP2014065996
(87)【国際公開番号】WO2015011251
(87)【国際公開日】20150129
【審査請求日】2017年7月24日
【審判番号】不服2019-1367(P2019-1367/J1)
【審判請求日】2019年2月1日
(31)【優先権主張番号】A50472/2013
(32)【優先日】2013年7月26日
(33)【優先権主張国】AT
(73)【特許権者】
【識別番号】398055255
【氏名又は名称】アー・ファウ・エル・リスト・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100173521
【弁理士】
【氏名又は名称】篠原 淳司
(72)【発明者】
【氏名】プフィスター・フェリックス
(72)【発明者】
【氏名】ライッツェ・クレーメンス
【合議体】
【審判長】 福島 浩司
【審判官】 三崎 仁
【審判官】 渡戸 正義
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−140178(JP,A)
【文献】 特開2011−112601(JP,A)
【文献】 特開平5−340846(JP,A)
【文献】 特開2009−186267(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第2246686(EP,A1)
【文献】 米国特許第4393695(US,A)
【文献】 特開2011−232047(JP,A)
【文献】 特開2012−93276(JP,A)
【文献】 特開2001−165816(JP,A)
【文献】 特開2009−68929(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M15/00, G01M17/00, G01M17/007, G06F17/50, G07C5/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
仮想車両(1)用のテスト運転をテストベンチ(20)上で実行するための方法において、
・1つの仮想区間(A−B)を、データファイル(6)として1つのデータ記録装置(4)から読み取り、この仮想区間(A−B)が、連続する複数の地理座標(P)並びにこれらの地理座標(P)に付随して関連する前記車両(1)のデータ(D)及び/又は運転手のデータ(D)及び/又は前記車両(1)の環境のデータ(D)として記録されていて、
前記テストベンチ(20)の複数の構成要素のための複数の目標値が、前記データファイル(6)の前記複数の地理座標(P)とこれらの地理座標(P)に関連するデータ(D)から生成され、前記テストベンチ(20)の前記複数の構成要素が、前記テスト運転を実行するために前記複数の目標値によって制御されることによって、前記仮想車両(1)用の前記テスト運転を実行するために、前記テスト運転が前記複数の地理座標(P)に関連させて記録されている前記仮想区間(A−B)の前記データファイル(6)を使用し、
・前記テスト運転中に前記仮想車両(1)の測定データ(M)を取得し、当該取得された測定データ(M)を前記複数の地理座標(P)に関連させて記録する各ステップから成る当該方法。
【請求項2】
実際の区間(A−B)が、実際の車両(1)によって走行され、前記実際の区間(A−B)に沿った走行中に、前記地理座標(P)並びに前記車両(1)のデータ(D)及び/又は前記運転手のデータ(D)及び/又は前記車両(1)の前記環境のデータ(D)が、取得されて仮想区間(A−B)として前記地理座標(P)に関連させて記録されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
1つの区間(A−B)の地理座標(P)が、デジタル3次元地図データから取得され、仮想区間(A−B)として記録され、前記車両(1)のデータ(D)及び/又は前記運転手のデータ(D)及び/又は前記車両(1)の前記環境のデータ(D)が追加されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
記録された連続する複数の地理座標(P)が、テスト運転として走行されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
記録された速度(v)又は記録された時間が、前記テスト運転中に前記仮想車両(1)を操縦するために使用されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記仮想車両(1)は、前記テスト運転を実行するために仮想の運転手によって運転手モデルに基づいて操縦されることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記仮想車両(1)は、前記テスト運転を実行するために実際の運転手によって操縦されることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
実際の区間(A−B)のビデオデータが、連続するビデオフレーム(f)としてさらに取得され、それぞれの前記地理座標(P)に対応するビデオフレーム(f)が、前記テスト運転中に前記テストベンチ(20)で取得され表示されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項9】
実際の区間(A−B)のオーディオデータがさらに取得され、前記地理座標に関連させて記録され、それぞれの前記地理座標(P)に対応するオーディオデータが、前記テスト運転中に前記テストベンチ(20)で再生されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項10】
それぞれの前記地理座標(P)に対する提供可能なデータ(D)又は提供可能な測定データ(M)が、前記テスト運転中に呼び出され表示されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項11】
データ(D)又は測定データ(M)が、それらの地理座標(P)によって前記テスト運転の後の処理中に検索され、確認され、比較されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、仮想車両用のテスト運転をテストベンチ上で実行するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
今日では、一方では、車両又は例えばパワートレイン、内燃機関、変速装置等のような車両の構成要素のテストベンチ試験用のテスト運転が、実際の試験走行から取得される。実際の試験区間が、実際の車両によって走行される。この場合、測定データが取得され、例えば交通等のような道路及び車両の環境も取得され、道路標識、交通信号灯、横断歩道等のような特定の事象が取得される。道路のプロフィール(傾き、勾配、カーブ等)、車両の表面(幾何構造、材料の特性等)及び車両の動的データ(速度、加速度、燃料消費、内燃機関の燃焼の指標データ、燃料噴射等)及び環境(交通、横風、温度、気圧、湿度等)が、GPS及びその他の測定技術によって取得され得る。この場合、同様に、車両挙動、例えば加速度挙動及び制動挙動も取得され得る。シミュレーションが、当該取得されたデータから作成される。当該取得された又は当該データから導き出された試験区間を当該テストベンチ上でバーチャルに走行させるため、当該テストベンチが、当該シミュレーションによって制御される。この場合、一般に、式v=v(x)又はv=v(t)(v=速度、x=道のり又は道路の円弧の長さ、t=時間)の一次元のプロフィールが作成される。当該一次元のプロフィールは、走行される区間を特徴付ける。このとき、当該一次元のプロフィールは、当該テストベンチでなぞられる。例えば、ローラテストベンチ上に配置された車両が、当該取得された試験区間を走行するように、当該ローラテストベンチは制御される。この場合、当該試験区間は、グラフオブジェクトを用いたシミュレーションによってグラフ的に視覚化されてもよい。このようなシステムは、例えば欧州特許出願公開第2246686号明細書から公知である。
【0003】
上記試験走行では、同時に、ビデオ又は上記走行区間、上記運転手の活動若しくは上記車両のオーディオデータ及び当該車両の環境も記録され得る。国際公開第2009/083944号明細書が、例えば、車両に配置されているセンサの測定データの取得を記載している。この場合、当該走行区間のビデオも、カメラによって取得され記録される。しかし、ここでは、これらのビデオデータのその他の使用は説明しない。
【0004】
上記の従来の技術では、試験走行中に取得された測定データの当該取得、管理及び表示が、共通の1つの時間軸(すなわち、時間同期)、共通の1つの一次元の道のり軸(すなわち、道のり同期)又はクランク角度信号(すなわち、角度同期)によって実行される。しかしながら、この処理方式は、幾つかの問題を引き起こす。一方では、様々な複数のテスト運転の測定データは、当該測定データの一部が、(区間ごとに)同じ試験区間に基づくとしても、互いにほとんど比較され得ない。何故なら、時間同期(t)、道のり同期(x)又は角度同期中に管理されるデータの重複部分を発見することがほとんど不可能であるからである。他方では、実際の試験走行から導き出された1つの試験走行が、実際の試験走行と決して完全に等しくない。何故なら、例えば、当該仮想走行では、運転手が、カーブを異なって曲がるからである。すなわち、当該試験走行では、時間的又は空間的な分散が、実際又は別の仮想試験走行の測定データ内と、当該テスト運転の測定データ内とで常に発生する。同じ区間が、異なる複数の運転手のプロフィール(運転手の特性)によって走行されるときに、このことは、強く認め得る。これらのテスト運転も、直接に比較不可能である。このことは、通常は、比較可能な複数のテスト運転を構成する場合と複数の測定データを比較する場合に、著しく困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】欧州特許出願公開第2246686号明細書
【特許文献2】国際公開第2009/083944号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
それ故に、本発明の課題は、複数の測定結果を、複数のテスト運転から著しくより効果的に、より速く且つより良好に構成すること、テスト運転の重要な結果を取得するために、当該複数の測定結果を「重ね合わせて」比較することが可能になる方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題は、1つの仮想区間が、1つのデータ記録装置から読み取られ、この仮想区間が、連続する複数の地理座標並びにこれらの地理座標に付随して関連する前記車両のデータ及び/又は運転手のデータ及び/又は前記車両の環境のデータとして記録され、仮想車両用のテスト運転を実行するために使用され、当該仮想車両の複数の測定データが、当該テスト運転中に取得され、当該複数の地理座標に関連させて記録されることによって、本発明にしたがって解決される。したがって、全てのデータが、複数の地理座標に関連させて取得され記録されることによって、記載されている全ての従来からの一次元の道のり−時間プロフィールが解消される。この場合、当該仮想試験区間は、当該テスト運転を実行するために使用される地理座標に対して格納されたデータを有する当該地理座標方式の三次元の軌跡として存在する。このことは、当該地理座標によって当該テスト運転からデータ及び/又は測定データを呼び出すこと及び比較することを可能にする。
【0008】
実際の区間に沿った走行中に、複数の地理座標並びに車両の複数のデータ、運転手の複数のデータ及び/又は車両の環境複数のデータが取得され、時間的に連続するデータとして複数の地理座標に関連させて記録されることによって、テスト運転用の仮想区間が、特に実際の車両を有する実際の区間を走行することによって作成され得る。このことは、特に複数の地理座標の時間シーケンスとしての仮想区間の自動的な作成を可能にする。この場合、当該仮想区間は、実際の区間に非常に近い。
【0009】
この代わりに、上記仮想区間は、デジタル3次元地図データからも取得され得る。この場合、車両、運転手及び/又は当該車両の環境のデータを追加することができる。
【0010】
特に好ましくは、テスト運転−特にテストベンチのアクチュエータに関連する、例えば気圧、湿度、道路勾配及びカーブ等のような変数−も、記録された連続する複数の地理座標として走行される。したがって、当該記録された地理座標が、連続して走行されることによって、当該テスト運転が、当該仮想区間から直接に生成され得る。当該テスト運転に対して必要なさらなるデータが、地理座標に関連させて当該仮想区間のデータファイルから簡単に取り出され得る。さらに、当該地理座標に関連させて記録された速度又は記録された時間が、当該仮想車両を当該テスト運転中に制御することが提唱され得る。
【0011】
上記テスト運転を実行するため、仮想車両が、仮想運転手によって運転手モデルによって操縦され得る。このことは、異なる複数の運転手モデルに基づいて、同じ仮想区間を異なる方法で走行すること及び異なる複数の測定データを生成することを可能にする。これらの測定データは、その後に当該複数の地理座標によって簡単に比較可能である。この代わりに、当該テスト運転を実行するための仮想車両が、実際の運転者によっても操縦され得る。
【0012】
特に、上記試験区間の追加のビデオデータが、連続するビデオフレームとして取得され、それぞれの地理座標に対応するビデオフレームが、上記テスト運転中に当該テストベンチで取得され表示されることが有益である。こうして、実際の走行のビデオが、上記テストベンチで簡単に上映され得る。実際のビデオは、当該テストベンチでテスト運転を視覚化するために使用されない。このことは、一方では、ビデオデータが、記憶容量を非常に必要とし、ビデオデータが、その管理及び処理(カット、繋ぎ合わせ、時間軸等)において経費がかかり、当該ビデオデータと当該テストベンチでのテスト運転との同期が困難である点にある。しかしながら、運転手は、当該テストベンチで当該テスト運転の実際の視覚化を望む。このことは、実際のビデオ、管理、制御、及び地理座標によるビデオプレーヤーの同期に基づいて簡単に可能である。
【0013】
こうして、上記試験区間のオーディオデータも取得され、上記地理座標に関連させて記録され、当該オーディオデータが、上記テスト運転中に上記テスト運転中に再生され得る。
【0014】
それぞれの地理座標に対するデータ又は測定データが、上記テスト運転中に呼び出され表示されるときに、既に存在する複数のデータ又は複数の測定データとの直接の比較が、当該テスト運転の実行中にオンラインで簡単に実行され得る。
【0015】
同様に、データ又は測定データが、それらの地理座標によって上記テスト運転の後の処理中に検索され、確認され、比較され得る。このことは、当該テスト運転のその後の処理を簡単にする。
【0016】
以下に、例示的に、概略的に、且つ限定して本発明の好適な構成を示す図1及び2に基づいて、本発明を詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】バーチャル区間の取得を示す。
図2】バーチャル車両によってテスト運転を実行するためのテストベンチを示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の可能な構成では、図1に示されたように、車両1が、所定の区間A−Bを実際に走行する。センサ2が、車両1に配置されている。この場合、既知の少なくとも1つの装置、例えば全地球測位システム(GPS)又はガリレオが、現在の時間(又は単調に増大する変数)と現在の地理的位置とを測定するために設けられていて、少なくとも1つの別のセンサが、車両(速度、加速度、燃料消費量、内燃機関の燃焼の指標データ、燃料噴射、空間内の車両の3次元方向等)又は運転手(加速度挙動又は制動挙動、ギアチェンジ挙動、追い越し挙動等)又は環境(ビデオ、雑音、交通、横風、温度、気圧、湿度、道路状態)のパラメータを取得するために設けられている。このようなセンサ2は、周知であり、様々な構成で得られる。それ故に、当該構成に関しては、ここでは詳しく説明しない。同様に、例えば、道路標識3、交通信号灯、別の道路使用者のような、その他の事象が、走行中に取得されることが考えられる。車両1の走行中にこうして取得されたデータDが、当該地理的位置に関連させてデータ記録装置4内に格納される。その後に、こうして取得された仮想区間A−B又はこれから生成されたデータファイル6が、道路条件(凍結、道路表面の穴、路幅、わだち)、交通標識、交通信号灯等のようなデータDを追加若しくは変更するために又は不必要なデータDを削除するためにさらに処理され得る。
【0019】
不可避な測定誤差又は可能な次ぎの処理に起因して、取得された区間A−Bは、実際の区間A−Bに正確に一致しない。それ故に、ここでは、仮想区間は、「」が付記されたA−Bによって示される。
【0020】
さらに、以下では、地理的位置が、地理座標Pとも略記される。したがって、例えばGPSの場合は、1つの位置座標Pが、地上の任意の1つの位置を経度、緯度及び海抜で一義的に示す。
【0021】
別の構成では、実際の区間A−Bが、地理座標Pとして、取得可能なデジタル3次元地図からも取り出され、仮想区間A−Bが、実際の区間A−Bから取得され得る。この場合、時間や車両又は環境のパラメータのような別の変数が、同様に(例えば道路標識のような)3次元地図データから取り出され得るか又は後で追加され得る。
【0022】
地理座標Pは、経度LG,緯度BG及び海抜Hとして、例えば既定の時間間隔後に、例えば0.5秒ごとに取得される。このため、現在の速度v、気圧p、オイル温度Toel、周囲温度T又は可能な交通標識Sのような、さらに取得されたデータがそれぞれ格納又は追加される。基本的には、ここでは、ここで全て一緒に表示され得ない、車両1、運転手及び/又は環境の任意のデータが格納され得る。この場合、当該追加のデータが、全て一緒に同様に地理座標Pに関連させて取得され記録されることが重要である。
【0023】
さらに、車両1の走行が、ビデオVとして記録され得る。この場合、上記環境だけが記録されるのではなくて、例えばシャーシ又はブレーキのような車両1の構成要素も記録され得る。さらに、記録されたビデオVに対するリファレンスFが、例えば、それぞれの地理座標Pに対するビデオフレームナンバーfP1又はビデオ時間として、地理座標Pごとにデータ記録装置4内に記録され得る。この場合、記録されたビデオVは、映像メモリ5内に記録される。記録されたビデオVは、図1に地理座標Pに対して示されている。
【0024】
デジタル地図から導き出された仮想区間A−Bの場合でも、ビデオVが、地理座標Pに関連させて取得され記録され得る。このため、乗車者は、区間A−B又は区間A−Bの一部に対するビデオVを読み込んで記録できる。例えば、グーグルアース(登録商標)内の1つの区間が走行され、生成されたビデオファイルが、仮想区間A−B用のビデオとして使用され得る。
【0025】
こうして、図1に示されているように、地理座標Pに関連される多数の区間の複数のデータファイルが、例えば、異なる季節、異なる気象条件、異なる運転手、異なる交通等のような、多数の条件下で生成され記録され得る。このとき、これらのこうして生成されたデータファイル6は、オンラインで(リアルタイムでも)又はオフラインで呼び出され得る。
【0026】
この場合、例えば、2つの区間が、一致する地理的位置で結合されることによって、新しい区間、すなわち新しいデータファイル6も、複数のデータファイル6から生成され得る。同様に、1つの区間が、特定の部分を切断することによって短くされてもよい。当該区間の切断は、好ましくはオフラインのデータ評価中に実行される。
【0027】
図2に関連して詳しく説明されるように、仮想区間A−Bの、地理座標Pに関連されるこのようなデータファイル6は、仮想車両1に対するテスト運転中に又は構成要素(パワートレイン、内燃機関、変速装置等)のテスト運転中に、テストベンチ20上で、例えば、車両用のローラテストベンチ、パワートレインテストベンチ又はエンジンテストベンチ上で様々な方法で利用され得る。この場合、特筆すべきは、テストベンチ20は、システムを意味する点である。当該システムでは、試験対象物21(試験すべき装置)、例えば、車両、パワートレイン、バッテリ、内燃機関等が、テストベンチ上に実際に存在していて且つ実際に稼働されるが、試験対象物21自体が実際に存在しなく、適切なシミュレーションモデル27に基づいてシミュレートもされるシステムである。
【0028】
まず、図2に関連して詳しく説明されるように、仮想車両1用のテストベンチ20上のテスト運転を制御するため、上記の記録又は評価された車両1によるテスト運転、すなわち仮想区間A−Bが使用される。
【0029】
したがって、仮想車両1は、上記のテスト運転用の車両を部分的に又は完全にシミュレートし、(試験対象物21として)部分的に実際に構成されている。仮想車両1は、実際の区間A−Bを走行した車両1に一致する必要はない。仮想車両1は、バッテリ、内燃機関、電気モータ、変速装置、シャーシ、タイヤ、ステアリングシステム、ブレーキ等のような、様々な複数の構成要素から構成されている。当該構成要素は、適切なシミュレーションモデル27に基づいて、例えばテストベンチ制御装置25内でシミュレートされるか又は試験対象物21としてテストベンチ20に実際に存在し得る。例えば、バッテリが、試験対象物21として実際に存在し得り、Battery−in−the−Loop(一般に、Hardware−in−the−Loop)(HIL)と呼ばれる。この場合、当該テスト運転は、仮想の構成要素から成る、場合によっては実際の構成要素から成る仮想車両1に適合される。
【0030】
この場合、テスト運転は、テストベンチ20上の実際又は仮想の試験対象物21を有する仮想車両1、例えば、ローラテストベンチ、パワートレインテストベンチ又はエンジンテストベンチを、様々な複数の走行状態に時系列順に追従させること、仮想車両1(又は試験対象物21)の希望した特定の測定変数を取得すること、必要に応じて評価することを意味する。このため、通常は、負荷機械22が、様々な負荷状態、例えば、試験対象物21の、勾配、加速度、電力、電流等をシミュレートするために、すなわち試験対象物21に負荷を印加するために設けられている。試験対象物21自体が、専らバーチャルに存在する場合は、負荷機械22は、当然に省略されてもよく又は同様にシミュレートされ得る。
【0031】
特定の媒体、例えば、オイル、水、空気等の条件をテスト運転に対して調整するため、同様に、コンディショニングシステム23が、テストベンチ20に設けられ得る。例えば、温度、圧力、天候等のような特定の環境条件をテストベンチ20でシミュレートするため、気候システム24が、テストベンチ20に設けられてもよい。取得された仮想区間A−Bが、当該テスト運転によってなぞられる。このため、テストベンチ20の全ての構成要素を当該テスト運転にしたがって制御するテストベンチ制御装置25が設けられている。
【0032】
さらに、テストベンチ制御装置25は、仮想区間A−B用のデータファイル6を受け取る。上記テスト運転が、地理座標Pに関連させて、すなわち地理的な座標に関連させてデータファイル6内に記録されていて、テストベンチ20の構成要素の目標値が、リアルタイムでデータファイル6から生成され得る。さらに、経度LG、緯度BG及び海抜Hのような位置データ並びに速度、加速度、勾配のような車両1の動的データが、テストベンチ20で、試験対象物21と負荷機械22と必要な別のアクチュエータとのための目標値に変換される。
【0033】
さらに、例えば、仮想区間A−Bのデータファイル6内に記録された、時間軸に対する仮想区間A−Bに沿った仮想車両1の速度vが、試験対象物21を制御するために使用され得る。さらに、速度vは、2つの地理座標P間で要しなければならない期間も確定し得る。この代わりに、速度を計算するため、当該記録された期間が、2つの地理座標P間の距離と一緒に使用されてもよい。負荷機械22を制御するため、又は、或る負荷状態を試験対象物21に予め設定するため、車両1の3次元方向、当該区間の地形(勾配、落差、斜面)のような記録されたデータが使用され得る。このとき、仮想又は実際の運転手が、当該テスト運転のために仮想車両1内に「座らされる」。
【0034】
実際の運転手の場合、この運転手は、データファイル6内の仮想区間A−Bの既定値(地形、道路標識、速度制限、交通信号灯、事象等)にしたがって、仮想車両1を操縦する。
【0035】
仮想の運転手の場合、実装された運転手モデルが、データファイル6内の既定値を変更する。この場合、当該運転手モデルは、例えば、どのようにカーブを走行されるか、どのように加速/制動されるか、どのように区間A−B上の交通に反応されるか、どのように事象(例えば、パンクしたタイヤ、車道上の凍結、車道上のオオツノ鹿等)に反応されるか等を確定するための進路計画及び速度計画と、アクセル、ブレーキ、クラッチ、ギア、ハンドブレーキ、ハンドル、イグニッションキー等を操作するための車両操縦とから構成される。この場合、当該運転手モデルは、その走行特性において、ディフェンシブ、アグレッシブ、ノーマル、エコノミカルのように、パラメータ化可能であり得る。この場合、当該仮想運転手は、当該運転手モデルと当該仮想区間A−Bとにしたがって、例えば、アクセルペダル又はブレーキペダルを操作することによって、変速装置をシフトアップ又はシフトダウンすることによって、ハンドルを操作すること等によって、仮想車両1に対して予め設定されている経路と速度とを変更する。
【0036】
こうして、仮想区間A−Bが、仮想車両1によってテストベンチ20でリアルタイムに走行され得る。この場合、当該区間は、もはや既知の従来の技術における1次元の経路−時間チャートとして存在するのではなくて、地理座標Pに対して格納されたデータDを有する当該地理座標Pの形態の3次元の軌道として存在する。
【0037】
データファイル6内に記録された、周囲温度、気圧、天候等のような車両環境のデータDが、目標値として気候システム24に転送され得る。油圧、オイル温度、気温等のような、車両の稼働挙動を示すデータファイル6内に記録されたデータDが、目標値としてコンディショニングシステム23に予め設定され得る。
【0038】
例えば、複数の海抜データが比較されることによって、又は、地理座標Pから算出され得るか又はデータファイル6内に直接に記録され得る仮想車両1の移動方向が考慮されることによって、例えば、橋横断地点、交差点又は高速道路入口若しくは高速道路出口のような仮想区間A−B内の特異点が解析され得る。
【0039】
例えば気候システム24又はコンディショニングシステム23のテストベンチ20の特定の構成要素のアイドル時間を考慮するため、テストベンチ制御装置25が、時間的に先行して、例えば10秒前に又は100メートル手前で、データファイル6を参照して、場合によっては起こり得るこれらの構成要素の必要な目標値の変更をフィードフォワード制御方式で実行することも考えられる。
【0040】
この場合、例えば、内燃機関の燃焼の指標データ、燃料消費量値、燃料噴射値等のような、上記テスト運転中に取得された仮想車両1の測定データMが、同様にそれぞれの地理座標Pに関連させてデータ記録装置4内に新たに記録される。測定データMを取得するため、対応する測定センサ28が、上記仮想車両の実際の構成要素、例えば試験対象物21に設けられ得る、又は、仮想車両の構成要素のシミュレーションモデル27から計算された変数も、測定データMとして使用され得る。当該記録は、データファイル6又は固有の測定データファイル7内で実行される。データファイル6内のデータDと測定データMとが、地理座標Pによって一義的に割り当て可能である。したがって、異なる複数のテスト運転の測定データMも、地理座標Pによって比較され得る。
【0041】
この場合、当然に、任意のバリエーションも、テストベンチ20で考えられる。例えば、記録された試験路(仮想区間A−B)が、テストベンチ20で、異なる1つの運転手又は複数の運転手によって、異なる走行挙動でバーチャルになぞられ得る、又は、別の天候がシミュレートされ得る。同様に、記録された試験路の一部又は全体が、テストベンチ20で車両1の別の速度でバーチャルになぞられ得る。当該車両の運転状態、例えばハイブリッド車両の電気自動車用電池の充電状態も、特定の状態を試験するために意図的に変更され得る。これらの変更は、データファイル6の適合によって生成され得る。しかし、この場合、例えば、テストベンチの運転手が、I/Oインタフェース26を通じて当該テスト運転に介入することによって、例えば、当該運転手が、手動でアクセルを踏むことによって、又は特定のパラメータを変更することによって、これらの変更は、リアルタイムでも可能である。
【0042】
実際の走行の少なくとも一部の実際の走路、すなわち区間A−Bのビデオを、当該走行区間A−B上に基づくテスト運転に挿入するため、及びモニター上に表示するため、例えば、記録されたビデオファイルVが使用され得る。さらに、記録されたビデオリファレンスFによるビデオVの上映が、それぞれの地理座標Pに同期される。したがって、どのように、どんな順序で、仮想区間A−Bが、バーチャルになぞられるかに関係なく、仮想車両1の実際のそれぞれの地理座標Pに最も関係する適切なビデオフレームf、すなわちビデオフレームfが、1つの地理座標Pに対して常に表示されることが可能である。したがって、ビデオVと当該テスト運転との同期が、地理座標Pによって非常に簡単に実行され得る。例えば、2つの地理座標P間の記録された時間又は速度に基づいて補間されることによって、当該ビデオが、記録された2つの地理的位置間で簡単に続行する。この代わりに、2つの地理座標P間のビデオの上映速度を制御するビデオ制御装置が実装されてもよい。それ故に、2つの地理座標P間に存在するビデオフレームが、時間的に正確に地理座標Pに同期して上映される。テストベンチの運転手が、例えば手動でアクセルを踏むことによって、仮想車両1が、その仮想世界を通じてより高速に動作すると、これに同期して、ビデオVも、より高速に上映される。どのようにテスト運転が実行されるにしても、例えば、より高速に、より低速に、静止等によって実行されるにしても、ビデオVの正しい位置が、地理座標Pを介した当該同期によって常に表示される。
【0043】
複数のビデオVが、特定の1つの地理座標Pに対してビデオ記録装置内に存在する場合、特定の1つのビデオVを選択させるために、選択リストが、I/Oインタフェース26を通じて、例えばテストベンチ制御装置25によって上記テストベンチの運転手に提示されてもよい。仮想区間A−Bに沿った仮想走行中に、その背景内で連続するビデオ検索機が、当該存在するビデオファイル内で、それぞれの地理座標Pの領域内で撮影されたビデオVを連続して検索し、これらのビデオVを選択のために当該テストベンチの運転手に提示する。したがって、大規模なビデオファイル内での面倒な手動の検索が省略される。当該検索及び提示は、仮想走行の開始時だけで実行され得るだけではなくて、走行中にも連続して実行し得る。
【0044】
この場合、1つの仮想区間A−Bに対して、別々に記録されたビデオVが、正しい位置(地理座標P)で、特に自動的に、開始され、停止され、繋ぎ合わされ又はカットされるようにも、上記ビデオ検索機は機能する。
【0045】
こうして、当然に、記録されたオーディオデータ及びその他の測定チャネル(車両1、運転手及び環境のデータD又は測定データM)も、管理され、上記テスト運転中にテストベンチ20で上映され、挿入され又は表示され得る。
【0046】
しかし、テストベンチの運転手が、ビデオVを訓練用に取得し、当該訓練のためにシミュレートされた区間を、例えばアクセルペダル及びブレーキペダルのような適切な制御装置を用いて手動で追従することによって、ビデオVが、当該テストベンチの運転手用の基準として使用されてもよい。
【0047】
データファイル6からのデータD又は別に取得された走行の測定データファイル7からの測定データMも、走行すべき1つの仮想区間A−Bに対してリアルタイムで表示されてもよい。このため、同じ地理座標Pに対して格納されたデータファイル6又は測定データファイル7が、データ記録装置4内で検索される。したがって、複数のデータD又は測定データMが、同じ地理座標Pに対して、しかし異なる試験路で直接に比較され得る。このことは、例えば、車両1の制御装置の補正に対して有益であり得る。何故なら、こうして、運転手が、例えば、車両1の燃料噴射に対する変化の影響を直接に追跡し得るからである。
【0048】
こうして生成されたデータファイル6又は測定データファイル7は、当然に、後の処理の範囲内でもオフラインで分析され得る。データD又は測定データMが、特定の基準、例えば、第3行程における速度50km/hによる走行にしたがってフィルタリング処理され表示されることによって、特定の比較が実行され得る。又は、全ての車両の燃焼消費又は燃料噴射が、特定の1つの区間A−B上で分析され得る。
【0049】
当然に、特定の1つの地理座標Pに対して記録された全てのデータD,測定データM又はビデオVが、この地理座標Pによって表示され得る。
【0050】
さらに、仮想区間A−Bに沿って、例えば写真、交通信号灯を切り替えるためのアルゴリズム、交通量等のような別のメタデータも、地理座標Pに関連させて記録され得る。
【符号の説明】
【0051】
1 車両
仮想車両
2 センサ
3 道路標識
4 データ記録装置
5 映像メモリ
6 データファイル
7 測定データファイル
20 テストベンチ
21 試験対象物
22 負荷機械
23 コンディショニングシステム
24 気候システム
25 テストベンチ制御装置
26 I/Oインタフェース
27 シミュレーションモデル
28 測定センサ
A−B 区間
−B 仮想区間
M 測定データ
D データ
P 地理座標
図1
図2