【文献】
MA H. et al.,Gene,58(1987),p.201-216
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記直鎖状核酸が、前記宿主細胞と接触されるさらなる直鎖状核酸の相同性領域と組み換わることができる相同性領域を含み、2つの該直鎖状核酸の相同組換えによって、前記選択マーカーを発現する前記環状の染色体外核酸が形成される、請求項1に記載の方法であって、
必要に応じて、さらに、該直鎖状核酸が、該選択マーカーの部分的なコード配列、中断されたコード配列および/または不連続のコード配列を含み、該選択マーカーは、該直鎖状核酸から発現され得ず、該環状の染色体外核酸の該形成によって、該選択マーカーの完全なコード配列が形成され、該選択マーカーは、該環状の染色体外核酸から発現され得る、方法。
工程(b)の前記選択する工程が、視覚的検出法、比色法または蛍光検出法によって前記選択マーカーの発現を検出する工程を含む、請求項1または2のいずれかに記載の方法。
ESが、第1の相同性領域(HR1)および第2の相同性領域(HR2)を含み、ここで、HR1およびHR2は、相同組換えを介して、それぞれ第3の相同性領域(HR3)および第4の相同性領域(HR4)と組み換わることができ、HR3およびHR4は各々、TSに存在する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法であって、
必要に応じて、さらに、
(a)Nが、TSに一本鎖断裂または二本鎖断裂をもたらすことができるか;または、
(b)ESが、直鎖状である、方法。
前記環状の染色体外核酸が、前記ヌクレアーゼのコード配列をさらに含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法であって、必要に応じて、さらに、該ヌクレアーゼが、RNAガイドDNAエンドヌクレアーゼであり、必要に応じて、さらに、該ヌクレアーゼが、Cas9エンドヌクレアーゼである、方法。
前記環状の染色体外核酸が、前記RNAガイドDNAエンドヌクレアーゼによるTSの部位特異的な認識および切断を可能にする、crRNA活性およびtracrRNA活性をコードする配列をさらに含む、請求項8に記載の方法であって、
必要に応じて、さらに、該crRNA活性および該tracrRNA活性が、単一の連続したRNA分子として発現される、方法。
前記ヌクレアーゼが、エンドヌクレアーゼ、ジンクフィンガーヌクレアーゼ、TAL−エフェクターDNA結合ドメイン−ヌクレアーゼ融合タンパク質(TALEN)、トランスポザーゼおよび部位特異的リコンビナーゼからなる群より選択される、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法であって、必要に応じて、さらに、
(a)該ジンクフィンガーヌクレアーゼが、操作されたジンクフィンガー結合ドメインに融合されたタイプIIS制限エンドヌクレアーゼの切断ドメインを含む融合タンパク質であり、該タイプIIS制限エンドヌクレアーゼが、HOエンドヌクレアーゼおよびFokIエンドヌクレアーゼからなる群より選択され、該ジンクフィンガー結合ドメインが、3、5または6つのジンクフィンガーを含むか;あるいは、
(b)該エンドヌクレアーゼが、
(i)LAGLIDADGホーミングエンドヌクレアーゼ、HNHホーミングエンドヌクレアーゼ、His−Cysボックスホーミングエンドヌクレアーゼ、GIY−YIGホーミングエンドヌクレアーゼおよびシアノバクテリアホーミングエンドヌクレアーゼからなる群より選択されるホーミングエンドヌクレアーゼであるか;
(ii)H−DreI、I−SceI、I−SceII、I−SceIII、I−SceIV、I−SceV、I−SceVI、I−SceVII、I−CeuI、I−CeuAIIP、I−CreI、I−CrepsbIP、I−CrepsbIIP、I−CrepsbIIIP、I−CrepsbIVP、I−TliI、I−PpoI、Pi−PspI、F−SceI、F−SceII、F−SuvI、F−CphI、F−TevI、F−TevII、I−AmaI、I−AniI、I−ChuI、I−CmoeI、I−CpaI、I−CpaII、I−CsmI、I−CvuI、I−CvuAIP、I−DdiI、I−DdiII、I−DirI、I−DmoI、I−HmuI、I−HmuII、I−HsNIP、I−LlaI、I−MsoI、I−NaaI、I−NanI、I−NclIP、I−NgrIP、I−NitI、I−NjaI、I−Nsp236IP、I−PakI、I−PboIP、I−PcuIP、I−PcuAI、I−PcuVI、I−PgrIP、I−PobIP、I−PorI、I−PorIIP、I−PbpIP、I−SpBetaIP、I−ScaI、I−SexIP、I−SneIP、I−SpomI、I−SpomCP、I−SpomIP、I−SpomIIP、I−SquIP、I−Ssp68031、I−SthPhiJP、I−SthPhiST3P、I−SthPhiSTe3bP、I−TdeIP、I−TevI、I−TevII、I−TevIII、i−UarAP、i−UarHGPAIP、I−UarHGPA13P、I−VinIP、I−ZbiIP、PI−MgaI、PI−MtuI、PI−MtuHIP、PI−MtuHIIP、PI−PfuI、PI−PfuII、PI−PkoI、PI−PkoII、PI−Rma43812IP、PI−SpBetaIP、PI−SceI、PI−TfuI、PI−TfuII、PI−ThyI、PI−TliIまたはPI−TliIIからなる群より選択されるか;または
(iii)内在性ゲノム配列に特異的に結合するように改変されており、該改変されたエンドヌクレアーゼは、もはやその野生型エンドヌクレアーゼ認識配列に結合せず、該エンドヌクレアーゼは(i)または(ii)の野生型エンドヌクレアーゼに由来する、方法。
ESが、目的の核酸Dをさらに含む、請求項12または13に記載の宿主細胞であって、必要に応じて、さらに、Dが、選択マーカー、プロモーター、エピトープタグをコードする核酸配列、目的の遺伝子、レポーター遺伝子、および終止コドンをコードする核酸配列からなる群より選択される、宿主細胞。
前記環状の染色体外核酸が、前記ヌクレアーゼのコード配列をさらに含む、請求項12〜14のいずれか1項に記載の宿主細胞であって、必要に応じて、さらに、該ヌクレアーゼが、RNAガイドDNAエンドヌクレアーゼであり、必要に応じて、さらに、該ヌクレアーゼが、Cas9エンドヌクレアーゼである、宿主細胞。
前記環状の染色体外核酸が、前記RNAガイドDNAエンドヌクレアーゼによるTSの部位特異的な認識および切断を可能にする、crRNA活性およびtracrRNA活性をコードする配列をさらに含む、請求項15に記載の宿主細胞であって、必要に応じて、さらに、該crRNA活性および該tracrRNA活性が、単一の連続したRNA分子として発現される、宿主細胞。
前記ヌクレアーゼが、エンドヌクレアーゼ、ジンクフィンガーヌクレアーゼ、TAL−エフェクターDNA結合ドメイン−ヌクレアーゼ融合タンパク質(TALEN)、トランスポザーゼおよび部位特異的リコンビナーゼからなる群より選択される、請求項12〜16のいずれか1項に記載の宿主細胞であって、必要に応じて、さらに、
(a)該ジンクフィンガーヌクレアーゼが、操作されたジンクフィンガー結合ドメインに融合されたタイプIIS制限エンドヌクレアーゼの切断ドメインを含む融合タンパク質であり、該タイプIIS制限エンドヌクレアーゼが、HOエンドヌクレアーゼおよびFokIエンドヌクレアーゼからなる群より選択され、該ジンクフィンガー結合ドメインが、3、5または6つのジンクフィンガーを含むか;あるいは
(b)該エンドヌクレアーゼが、
(i)LAGLIDADGホーミングエンドヌクレアーゼ、HNHホーミングエンドヌクレアーゼ、His−Cysボックスホーミングエンドヌクレアーゼ、GIY−YIGホーミングエンドヌクレアーゼおよびシアノバクテリアホーミングエンドヌクレアーゼからなる群より選択されるホーミングエンドヌクレアーゼであるか;
(ii)H−DreI、I−SceI、I−SceII、I−SceIII、I−SceIV、I−SceV、I−SceVI、I−SceVII、I−CeuI、I−CeuAIIP、I−CreI、I−CrepsbIP、I−CrepsbIIP、I−CrepsbIIIP、I−CrepsbIVP、I−TliI、I−PpoI、Pi−PspI、F−SceI、F−SceII、F−SuvI、F−CphI、F−TevI、F−TevII、I−AmaI、I−AniI、I−ChuI、I−CmoeI、I−CpaI、I−CpaII、I−CsmI、I−CvuI、I−CvuAIP、I−DdiI、I−DdiII、I−DirI、I−DmoI、I−HmuI、I−HmuII、I−HsNIP、I−LlaI、I−MsoI、I−NaaI、I−NanI、I−NclIP、I−NgrIP、I−NitI、I−NjaI、I−Nsp236IP、I−PakI、I−PboIP、I−PcuIP、I−PcuAI、I−PcuVI、I−PgrIP、I−PobIP、I−PorI、I−PorIIP、I−PbpIP、I−SpBetaIP、I−ScaI、I−SexIP、I−SneIP、I−SpomI、I−SpomCP、I−SpomIP、I−SpomIIP、I−SquIP、I−Ssp68031、I−SthPhiJP、I−SthPhiST3P、I−SthPhiSTe3bP、I−TdeIP、I−TevI、I−TevII、I−TevIII、i−UarAP、i−UarHGPAIP、I−UarHGPA13P、I−VinIP、I−ZbiIP、PI−MgaI、PI−MtuI、PI−MtuHIP、PI−MtuHIIP、PI−PfuI、PI−PfuII、PI−PkoI、PI−PkoII、PI−Rma43812IP、PI−SpBetaIP、PI−SceI、PI−TfuI、PI−TfuII、PI−ThyI、PI−TliIまたはPI−TliIIからなる群より選択されるか;または
(iii)内在性ゲノム配列に特異的に結合するように改変されており、該改変されたエンドヌクレアーゼは、もはやその野生型エンドヌクレアーゼ認識配列に結合せず、該エンドヌクレアーゼは(i)または(ii)の野生型エンドヌクレアーゼに由来する、宿主細胞。
【発明を実施するための形態】
【0060】
5.実施形態の詳細な説明
5.1 定義
本明細書中で使用されるとき、ヌクレアーゼ、例えば、ホーミングエンドヌクレアーゼ、ジンクフィンガーヌクレアーゼ、TAL−エフェクターヌクレアーゼまたはRNAガイドDNAエンドヌクレアーゼ(例えば、CRISPR/Cas9)に関して、用語「切断する(cleaves)」、「切断」および/または「切断する(cleaving)」とは、特定の核酸において断裂をもたらす行為のことを指す。当業者が理解するように、その断裂は、平滑末端または粘着末端(すなわち、5’または3’オーバーハング)を残し得る。これらの用語は、一本鎖DNA断裂(「ニック」)および二本鎖DNA断裂も包含する。
【0061】
本明細書中で使用されるとき、用語「操作された宿主細胞」とは、遺伝子操作法(すなわち、組換え技術)を用いて親細胞を遺伝的に改変することによって作製された宿主細胞のことを指す。操作された宿主細胞は、親細胞のゲノムに対してヌクレオチド配列の付加、欠失および/または改変を含み得る。
【0062】
本明細書中で使用されるとき、用語「異種性」とは、通常天然には見出されないもののことを指す。用語「異種性ヌクレオチド配列」とは、所与の細胞に通常天然には見出されないヌクレオチド配列のことを指す。したがって、異種性ヌクレオチド配列は、(a)宿主細胞にとって外来のものであり得る(すなわち、その細胞にとって「外来性」であり得る)か;(b)宿主細胞に天然に見出される(すなわち、「内在性」である)が、その細胞に非天然の量(すなわち、宿主細胞に天然に見出される量よりも多いまたは少ない量)で存在し得るか;または(c)宿主細胞に天然に見出されるが、天然の遺伝子座の外側に位置し得る。
【0063】
本明細書中で使用されるとき、用語「相同性」とは、2つもしくはそれを超える核酸配列の間または2つもしくはそれを超えるアミノ酸配列の間の同一性のことを指す。配列同一性は、パーセンテージ同一性(または類似性または相同性)に関して測定され得る;パーセンテージが高いほど、それらの配列が互いにより同一に近い。核酸配列またはアミノ酸配列のホモログまたはオルソログは、標準的な方法を用いてアラインメントされたとき、比較的高い程度の配列同一性を有する。比較のために配列をアラインメントする方法は、当該分野で周知である。様々なプログラムおよびアラインメントアルゴリズムが、Smith & Waterman,Adv.Appl.Math.2:482,1981;Needleman & Wunsch,J.Mol.Biol.48:443,1970;Pearson & Lipman,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:2444,1988;Higgins & Sharp,Gene,73:237−44,1988;Higgins & Sharp,CABIOS 5:151−3,1989;Corpetら、Nuc.Acids Res.16:10881−90,1988;Huangら、Computer Appls.Biosc.8,155−65,1992;およびPearsonら、Meth.Mol.Bio.24:307−31,1994に記載されている。Altschulら、J.Mol.Biol.215:403−10,1990には、配列のアラインメントの方法および相同性の計算に関する詳細な考慮事柄が提示されている。NCBIベーシックローカルアラインメントサーチツール(BLAST)(Altschulら、J.Mol.Biol.215:403−10,1990)は、配列解析プログラムblastp、blastn、blastx、tblastnおよびtblastxに関連して使用するために、National Center for Biological Information(NCBI,National Library of Medicine,Building 38A,Room 8N805,Bethesda,Md.20894)およびインターネット上をはじめとしたいくつかの供給源から入手可能である。さらなる情報は、NCBIのウェブサイトに見出すことができる。
【0064】
本明細書中で使用されるとき、用語「マーカーレス」とは、選択マーカーの組込みを伴わない、宿主細胞ゲノム内の標的部位へのドナーDNAの組込みのことを指す。いくつかの実施形態において、この用語は、宿主細胞ゲノムへの選択マーカーの組込みに依存する選択スキームを利用しない、そのような宿主細胞の回収のことも指す。例えば、ある特定の実施形態において、エピソームまたは染色体外である選択マーカーは、ゲノム標的部位を切断することができるヌクレアーゼをコードするプラスミドを含む細胞を選択するために利用され得る。その選択マーカーが、宿主細胞のゲノムに組み込まれない限り、そのような使用は、「マーカーレス」であると考えられ得る。
【0065】
本明細書中で使用されるとき、用語「作動可能に連結された」とは、核酸配列が所望の機能をコードするようなそれらの配列間の機能的な連結のことを指す。例えば、目的の遺伝子、例えば、選択マーカーのコード配列は、連結されたプロモーターおよび/または制御領域が、そのコード配列の発現を機能的に調節するとき、そのプロモーターおよび/または制御配列と作動可能な連結状態にある。また、その用語は、コード配列が、同じ連結されたプロモーターおよび/または制御領域によって調節され得るような、それらのコード配列間の連結のことを指し;コード配列間のそのような連結は、インフレームでまたは同じコードフレームで連結されていることも指し得る。「作動可能に連結された」とは、機能的であるが非コードの配列、例えば、自律増殖(autonomous propagation)配列または複製起点の連結のことも指す。そのような配列は、それらの正常な機能を発揮できるとき、例えば、宿主細胞内にその配列を有するベクターの複製、伝播および/または分離を可能にするとき、作動可能な連結状態にある。
【0066】
本明細書中で使用されるとき、用語「選択マーカーを発現している宿主細胞を選択すること」は、選択マーカーを発現している宿主細胞を、形質転換された細胞の集団から富化することも包含する。
【0067】
本明細書中で使用されるとき、用語「選択マーカー」とは、本明細書中に記載されるようなマーカーベクターを含む宿主細胞を選択するための案内として機能する遺伝子のことを指す。選択マーカーとしては、蛍光マーカー、発光マーカーおよび薬物選択マーカーなどが挙げられ得るがこれらに限定されない。蛍光マーカーとしては、蛍光タンパク質(例えば、緑色蛍光タンパク質(GFP)、シアン蛍光タンパク質(CFP)、黄色蛍光タンパク質(YFP)、赤色蛍光タンパク質(dsRFP)など)をコードする遺伝子が挙げられ得るがこれらに限定されない。発光マーカーとしては、ルシフェラーゼなどの発光タンパク質をコードする遺伝子が挙げられ得るがこれらに限定されない。本明細書中に提供される方法および組成物とともに使用するのに適した薬物選択マーカーとしては、抗生物質(例えば、アンピシリン、ストレプトマイシン、ゲンタマイシン、カナマイシン、ハイグロマイシン、テトラサイクリン、クロラムフェニコールおよびネオマイシン)に対する耐性遺伝子が挙げられるがこれらに限定されない。いくつかの実施形態において、選択は、ポジティブ選択であり得る;すなわち、そのマーカーを発現している細胞が、集団から単離されることにより、例えば、選択マーカーを含む細胞の富化された集団がもたらされる。他の場合、選択は、ネガティブ選択であり得る;すなわち、集団がそれらの細胞から単離除去されることにより、例えば、選択マーカーを含まない細胞の富化された集団がもたらされる。分離は、使用される選択マーカーにとって適切な任意の好都合な分離法によるものであり得る。例えば、蛍光マーカーが利用されている場合、細胞は、蛍光活性化細胞分取によって分離され得るのに対して、細胞表面マーカーが挿入されている場合、細胞は、アフィニティー分離法、例えば、磁気分離、アフィニティークロマトグラフィ、固体マトリックスに結合した親和性試薬を用いた「パニング」、または他の好都合な技法によって、不均一な集団から分離され得る。
【0068】
本明細書中で使用されるとき、用語「同時」は、複数の組込みに関して使用されるとき、宿主細胞が、ヌクレアーゼ、例えば、ヌクレアーゼをコードするプラスミド、および宿主細胞ゲノムに組み込まれる1つより多いドナーDNAで共形質転換された時点から始まり、形質転換された宿主細胞またはそのクローン集団が、それぞれの標的遺伝子座におけるドナーDNAの組込みの成功についてスクリーニングされた時点で終わる、期間を包含する。いくつかの実施形態において、「同時」によって包含される期間は、少なくとも、ヌクレアーゼが宿主細胞の染色体(複数可)内のその標的配列に結合してそれを切断するのに必要な時間の量である。いくつかの実施形態において、「同時」によって包含される期間は、宿主細胞がヌクレアーゼ、例えば、ヌクレアーゼをコードするプラスミドおよび1つより多いドナーDNAで共形質転換された時点から始まる、少なくとも6、12、24、36、48、60、72、96時間または96時間を超える時間である。
5.2 外来性核酸を組み込む方法
【0069】
宿主細胞ゲノムの1つまたはそれを超える選択された標的部位に1つまたはそれを超える外来性核酸を組み込む方法が、本明細書中に提供される。ある特定の実施形態において、その方法は、1つまたはそれを超える組込みポリヌクレオチド、すなわち、ゲノム標的部位に組み込まれる外来性核酸を含むドナーDNA;ゲノム標的部位の近傍またはゲノム標的部位内に二本鎖断裂を引き起こすことができる1つまたはそれを超えるヌクレアーゼ;およびそれ自体との相同組換えまたは宿主細胞と接触される1つもしくはそれを超えるさらなる直鎖状核酸との相同組換えが可能な直鎖状核酸と宿主細胞を接触させる工程を含み、ここで、宿主細胞における直鎖状核酸の前記相同組換えによって、選択マーカーのコード配列を含む環状の染色体外核酸が形成される。いくつかの実施形態において、その後、接触された宿主細胞は、選択的条件下で成長させる。実施の理論に拘束されるものではないが、本明細書中に記載される方法に従って選択されるために、宿主細胞にHRを介して発現ベクターを環状化させることは、選択された細胞が、外来性DNAの、1つまたはそれを超える意図されたHR媒介性ゲノム組込みを首尾良く実行した可能性を高めると考えられている。
【0070】
特定の態様において、宿主細胞ゲノムの標的部位への外来性核酸のマーカーレス組込みのための方法が、本明細書中に提供され、その方法は、
(a)宿主細胞を、
(i)第1の相同性領域(HR1)および第2の相同性領域(HR2)を含む外来性核酸(ES)(ここで、(HR1)および(HR2)は、前記標的部位(TS)において、宿主細胞によって媒介される相同組換えを惹起することができる);
(ii)(TS)において切断することができるヌクレアーゼ(N)(ここで、前記切断によって、(TS)において(ES)の相同組換えがもたらされる);および
(iii)それ自体との相同組換えまたは宿主細胞と接触される1つもしくはそれを超えるさらなる直鎖状核酸との相同組換えが可能な直鎖状核酸(ここで、前記相同組換えによって、選択マーカーのコード配列を含む環状の染色体外核酸が形成される)
と接触させる工程;
ならびに
(b)その選択マーカーを発現する宿主細胞を選択する工程
を含む。いくつかの実施形態において、その方法は、(TS)において(ES)が組み込まれた宿主細胞を回収する工程を含み、ここで、前記回収する工程は、選択マーカーの組込みを必要としない。
【0071】
図1は、部位特異的ヌクレアーゼ、および宿主細胞によって媒介されるHRを介してインビボにおいてアセンブルすることにより環状マーカー発現ベクターを形成することができる組換え前の組成物を使用した外来性核酸のゲノム組込みの例示的な実施形態を提供している。ドナーポリヌクレオチドが、宿主細胞に導入され、ここで、そのポリヌクレオチドは、第1の相同性領域(HR1)および第2の相同性領域(HR2)に挟まれた目的の核酸(D)を含む。HR1およびHR2は、それぞれ、ゲノム標的部位(TS)の5’および3’領域と相同性を共有する。部位特異的ヌクレアーゼ(N)も宿主細胞に導入され、ここで、そのヌクレアーゼは、標的部位内のユニーク配列を認識して切断することができる。この例では、2つの組換え前の直鎖状分子(各々が、互いとの相同組換えが可能な2つの相同性領域を含む)を含む、組換え前の組成物も細胞に導入される。この例では、相同性領域は、各組換え前の分子の5’および3’末端に位置する。各組換え前の分子の一方の相同性領域は、選択マーカーの部分的なコード配列(それぞれGFおよびFP)を含み、その2つの相同性領域の間のHRにより、選択マーカーの完全で作動可能なコード配列(GFP)が、環状化したマーカー発現ベクター上で再構成される。一般に、そのような環状化は、選択マーカーの発現を選択する条件下で細胞を培養することによって、例えば、選択マーカーが薬物耐性マーカーである場合、培養培地に選択的作用物質(selective agent)(例えば、抗生物質)を補充することによって、または比色法もしくは蛍光検出法によって検出可能なマーカーを発現する細胞をソーティングすることによって、選択される。同時に、HRに適格性である細胞では、部位特異的ヌクレアーゼによる標的部位内の二本鎖断裂の誘導が、切断された標的部位における目的のドナー核酸のHR媒介性組込みを容易にする。選択されるために、宿主細胞がHRを介して発現ベクターを環状化することを要件とすることによって、外来性ドナーDNAのHR媒介性組込みも行った細胞の回収も増加する。この回収頻度の上昇は、組換え事象を起こした形質転換体を選択するために、選択マーカーを共組み込みする(co-integrate)必要性を取り除く。例えば、操作された微生物の構築中に、選択マーカーの必要性を無くすことによって、宿主細胞ゲノムを操作するのに必要な時間が大幅に短縮する。さらに、操作ストラテジーは、所与の宿主生物にとって利用可能なマーカーの貯蔵場所が限られていることに起因する、選択マーカーを再使用する必要性によって限定されない。
【0072】
いくつかの実施形態において、首尾良く組み込まれた外来性核酸を含む形質転換された細胞のマーカーレス回収は、スクリーニングされた1000、900、800、700、600、500、400、300、200もしくは100個の接触された宿主細胞毎またはそのクローン集団毎に約1個以内の頻度で生じる。特定の実施形態において、首尾良く組み込まれた外来性核酸を含む形質転換された細胞のマーカーレス回収は、スクリーニングされた90、80、70、60、50、40、30、20もしくは10個の接触した宿主細胞毎またはそのクローン集団毎に約1個以内の頻度で生じる。より特定の実施形態において、首尾良く組み込まれた外来性核酸を含む形質転換された細胞のマーカーレス回収は、スクリーニングされた9、8、7、6、5、4、3もしくは2個の接触した宿主細胞毎またはそのクローン集団毎に約1個以内の頻度で生じる。
【0073】
選択マーカーを使用せずに、標的部位にまたは標的部位近傍に変更されたゲノムを有する細胞を同定する種々の方法が、利用可能である。いくつかの実施形態において、そのような方法は、標的部位における任意の変化を検出しようとするものであり、その方法としては、PCR法、配列決定法、ヌクレアーゼ消化、例えば、制限酵素マッピング、サザンブロットおよびそれらの任意の組み合わせが挙げられるがこれらに限定されない。表現型の読み取り、例えば、予測される機能獲得また機能喪失もまた、意図されるゲノム改変(複数可)をもたらすことについての代用物として使用され得る。
【0074】
別の態様において、宿主細胞ゲノムに複数の外来性核酸を組み込むための方法が本明細書中に提供され、その方法は、
(a)宿主細胞を、
(i)複数の外来性核酸(ここで、外来性核酸(ES)
xの各々は、第1の相同性領域(HR1)
xおよび第2の相同性領域(HR2)
xを含み、(HR1)
xおよび(HR2)
xは、前記宿主細胞ゲノムの標的部位(TS)
xにおいて(ES)
xの宿主細胞媒介性の相同組換えを惹起することができる);
(ii)前記標的部位(TS)
xの各々に対して、(TS)
xにおいて切断することができるヌクレアーゼ(N)
x(前記切断によって、(TS)
xにおいて(ES)
xの相同組換えがもたらされる);および
(iii)それ自体との相同組換えまたは宿主細胞と接触される1つもしくはそれを超えるさらなる直鎖状核酸との相同組換えが可能な直鎖状核酸(ここで、前記相同組換えによって、選択マーカーのコード配列を含む環状の染色体外核酸が形成される)
と接触させる工程;
ならびに
(b)その選択マーカーを発現する宿主細胞を選択する工程
を含む。いくつかの実施形態において、その方法は、宿主細胞を回収する工程をさらに含み、ここで、選択された外来性核酸(ES)
xの各々は、選択された標的配列(TS)
xの各々において組み込まれており、
xは、1〜nの任意の整数であり、nは、少なくとも2である。
【0075】
図2は、複数の部位特異的ヌクレアーゼを使用した複数の外来性核酸の同時のゲノム組込みの例示的な実施形態を提供している。この例において、異なる3つのドナーポリヌクレオチドが、宿主細胞に導入されており、各ポリヌクレオチドは、目的の核酸(D)
xを含む外来性核酸(ES)
xを含み、x=1、2または3である。(D)
xの各々は、第1の相同性領域(HR1)
xおよび第2の相同性領域(HR2)
xに挟まれている。(HR1)
xおよび(HR2)
xは、ゲノムの中の合計3つのユニークな標的部位のうちの選択された標的部位(TS)
xの5’および3’領域とそれぞれ相同性を共有している。1つまたはそれを超える部位特異的ヌクレアーゼ(N)
x(例えば、ユニークな認識部位を有する1つもしくはそれを超える(例えば、「x」個の)エンドヌクレアーゼ;または1つもしくはそれを超える(例えば、「x」個の)ガイドRNAを伴うRNAガイドエンドヌクレアーゼ)もまた、宿主細胞に導入され、ここで、ヌクレアーゼ(N)
xの各々は、その対応する標的部位(TS)
xの中のユニークな配列を認識して切断することができる。この例では、2つの組換え前の直鎖状分子(各々が、互いとの相同組換えが可能な2つの相同性領域を含む)を含む組換え前の組成物も細胞に導入される。この例では、相同性領域は、各組換え前の分子の5’および3’末端に位置する。各組換え前の分子の一方の相同性領域は、選択マーカーの部分的なコード配列(それぞれGFおよびFP)を含み、その2つの相同性領域の間のHRにより、選択マーカーの完全で作動可能なコード配列(GFP)が、環状化したマーカー発現ベクター上で再構成される。そのような環状化は、選択マーカーの発現を選択する条件下で細胞を培養することによって選択される。同時に、HRに適格性である細胞では、標的部位(TS)
xの、それに対応する部位特異的ヌクレアーゼ(N)
xによる切断が、宿主細胞の内在性の相同組換え機構による(TS)
xにおける対応する目的の核酸(nucleic acid interest)(D)
xの組込みを容易にする。選択されるために、宿主細胞がHRを介して発現ベクターを環状化することを要件とすることによって、外来性ドナーDNAのHR媒介性組込みも行った細胞の回収も増加する。
【0076】
特定の実施形態において、目的の核酸(D)
xを必要に応じて含む外来性核酸(ES)
xの各々は、そのそれぞれのゲノム標的部位(TS)
xに同時に、すなわち、複数の組込みポリヌクレオチドおよび複数のヌクレアーゼによる宿主細胞の単一の形質転換によって、組み込まれる。いくつかの実施形態において、その方法は、上に記載された方法について列挙された変数に従って、任意の複数の外来性核酸(ES)
x(すなわち、xは、1〜nの任意の整数であり、nは、少なくとも2である)を同時に組み込むのに有用である。いくつかの実施形態において、本明細書中に提供される同時に組み込む方法は、選択された10個の標的部位(TS)
xに最大10個の外来性核酸(ES)
xを同時に組み込むのに有用である(すなわち、xは、1〜nの任意の整数であり、n=2、3、4、5、6、7、8、9または10である)。いくつかの実施形態において、本明細書中に提供される同時に組み込む方法は、選択された20個の標的部位(TS)
xに最大20個の外来性核酸(ES)
xを同時に組み込むのに有用である(すなわち、xは、1〜nの任意の整数であり、n=2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20である)。いくつかの実施形態において、n=2である。いくつかの実施形態において、n=3である。いくつかの実施形態において、n=4である。いくつかの実施形態において、n=5である。いくつかの実施形態において、n=6である。いくつかの実施形態において、n=7である。いくつかの実施形態において、n=8である。いくつかの実施形態において、n=9である。いくつかの実施形態において、n=10である。いくつかの実施形態において、n=11である。いくつかの実施形態において、n=12である。いくつかの実施形態において、n=13である。いくつかの実施形態において、n=14である。いくつかの実施形態において、n=15である。いくつかの実施形態において、n=16である。いくつかの実施形態において、n=17である。いくつかの実施形態において、n=18である。いくつかの実施形態において、n=19である。いくつかの実施形態において、n=20である。いくつかの実施形態において、本明細書中に提供される同時に組み込む方法は、20個を超える外来性核酸を同時に組み込むのに有用である。
【0077】
単一の標的部位における単一の外来性核酸の組込みと同様に、各外来性核酸をそのそれぞれの標的部位において首尾良く組み込んだ宿主細胞の回収は、本明細書中に記載される1つまたはそれを超える組換え前の直鎖状分子と宿主細胞を接触させずに、選択マーカーの発現について選択したときと比べて、実質的により高い頻度で生じる。いくつかの実施形態において、この組込み頻度の上昇は、複数の組換え事象を同定するために、1つまたはそれを超える選択マーカーの共組込みの必要性を取り除く。いくつかの実施形態において、首尾良く組み込まれた複数の外来性核酸を含む形質転換された細胞のマーカーレス回収は、スクリーニングされた1000、900、800、700、600、500、400、300、200もしくは100個の接触した宿主細胞毎またはそのクローン集団毎に約1個以内の頻度で生じる。特定の実施形態において、マーカーレス回収は、スクリーニングされた90、80、70、60、50、40、30、20もしくは10個の接触した宿主細胞毎またはそのクローン集団毎に約1個以内の頻度で生じる。より特定の実施形態において、マーカーレス回収は、スクリーニングされた9、8、7、6、5、4、3もしくは2個の接触した宿主細胞毎またはそのクローン集団毎に約1個以内の頻度で生じる。
5.2.1 環状マーカー発現ベクターのHR媒介性インビボアセンブリ
【0078】
本明細書中に提供される方法は、ギャップ修復を介した、宿主細胞によって媒介される環状発現ベクターのアセンブリを含む。ギャップ修復は、組換えDNA分子をインビボにおいてアセンブリするための迅速かつ効率的な方法である。この技法は、細菌(大腸菌;例えば、Dattaら、Gene 379:109−115(2006)を参照のこと)、酵母(Saccharomyces cerevisiae;例えば、Bessaら、Yeast 29:419−423(2012)を参照のこと)、昆虫(Drosophila melanogaster;例えば、Carreira−Rosarioら、J Vis Exp 77:e50346(2013)を参照のこと)および哺乳動物細胞(ヒト細胞;例えば、Adarら、Nucleic Acids Research 37(17):5737−5748(2009)を参照のこと)をはじめとしたいくつかの生物においてプラスミドをアセンブリするためおよび/または修復するために有効であると記載されている。ギャップ修復は、単一の直鎖状DNAの2つの相同領域の間、または2つもしくはそれを超える別個の直鎖状DNAフラグメントの間の相同組換えによって、環状DNA分子を生成し得る。通常、アセンブルされた環状化したDNAは、複製配列および選択的マーカーを有するベクターとして作用する。例えば、Orr−Weaverら、Methods Enzymol 101:228−245(1983)を参照のこと。
図4に概要が述べられている技法は、通常、直鎖状の「ギャップのある(gapped)」ベクターおよび直鎖状DNAフラグメント(インサート)の共形質転換から始まる(Orr−Weaverら、1983)。相同組換えに適格性である細胞では、ベクターとインサートとの間の相同配列の2対のフランキングストレッチの間で組換えが生じ、ギャップが修復されたより大きな環状ベクターがもたらされる。インサートのフランキングホモロジーを提供する単純な方法は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によるものであり、ここで、テイルドプライマー(tailed primers)が、相同性領域を提供する。
【0079】
本明細書中に提供される方法および組成物の1つの態様において、宿主細胞を、組換え前のベクター中間体として働く単一の連続した直鎖状の(ギャップのある)核酸と接触させる。本明細書中で使用されるとき、句「単一の核酸」は、複数コピーの同じ核酸分子の実施形態を含む。いくつかの実施形態において、組換え前のベクターは、自己環状化し、互いとの相同組換えが可能な2つの配列特異的組換え領域を含み、組換えに適格性の宿主細胞への導入によって、環状発現ベクターが形成される。いくつかの実施形態において、それらの組換え領域は、組換え前の直鎖状のベクターの末端もしくは末端近傍(例えば、1つの組換え領域が、直鎖状のベクターの各末端に位置し、さらなる配列が、その2つの領域の間に存在する)、末端に対して内部(例えば、各組換え領域は、両端においてさらなる配列によって挟まれる)、またはそれらの組み合わせ(例えば、一方の組換えが、直鎖状のベクターの一方の末端に存在し、他方が、それに対して内部であり、両サイドにおいてさらなる配列によって挟まれる)に位置する。いくつかの実施形態において、第1および第2の組換え領域は、十分な長さの任意のヌクレオチド配列を含み得、互いとの相同組換えを可能にする任意の配列同一性を共有し得る。いくつかの実施形態において、「十分な配列同一性」とは、例えば、少なくとも15塩基対、少なくとも20塩基対、少なくとも50塩基対、少なくとも100塩基対、少なくとも250塩基対、少なくとも500塩基対の長さまたは500塩基対を超える長さにわたって、組換え領域の間に少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%または100%の同一性を有する配列のことを指す。配列同一性の程度は、本明細書中に記載されるものを含む任意のコンピュータプログラムおよび関連パラメータ(例えば、デフォルトのパラメータを用いる、BLAST2.2.2またはFASTAバージョン3.0t78)を用いて決定され得る。組換え領域の間の効果的な相同性の長さに関する考察については、Hastyら、Mol Cell Biol 11:5586−91(1991)を参照のこと。
【0080】
いくつかの実施形態において、第1および第2の組換え領域は、少なくとも25%のヌクレオチド配列同一性を共有する。いくつかの実施形態において、第1および第2の組換え領域は、少なくとも30%のヌクレオチド配列同一性を共有する。いくつかの実施形態において、第1および第2の組換え領域は、少なくとも35%のヌクレオチド配列同一性を共有する。いくつかの実施形態において、第1および第2の組換え領域は、少なくとも40%のヌクレオチド配列同一性を共有する。いくつかの実施形態において、第1および第2の組換え領域は、少なくとも45%のヌクレオチド配列同一性を共有する。いくつかの実施形態において、第1および第2の組換え領域は、少なくとも50%のヌクレオチド配列同一性を共有する。いくつかの実施形態において、第1および第2の組換え領域は、少なくとも60%のヌクレオチド配列同一性を共有する。いくつかの実施形態において、第1および第2の組換え領域は、少なくとも65%のヌクレオチド配列同一性を共有する。いくつかの実施形態において、第1および第2の組換え領域は、少なくとも70%のヌクレオチド配列同一性を共有する。いくつかの実施形態において、第1および第2の組換え領域は、少なくとも75%のヌクレオチド配列同一性を共有する。いくつかの実施形態において、第1および第2の組換え領域は、少なくとも80%のヌクレオチド配列同一性を共有する。いくつかの実施形態において、第1および第2の組換え領域は、少なくとも85%のヌクレオチド配列同一性を共有する。いくつかの実施形態において、第1および第2の組換え領域は、少なくとも90%のヌクレオチド配列同一性を共有する。いくつかの実施形態において、第1および第2の組換え領域は、少なくとも95%のヌクレオチド配列同一性を共有する。いくつかの実施形態において、第1および第2の組換え領域は、少なくとも99%のヌクレオチド配列同一性を共有する。いくつかの実施形態において、第1および第2の組換え領域は、100%のヌクレオチド配列同一性を共有する。
【0081】
ある特定の実施形態において、第1および第2の組換え領域の各々は、約50〜5,000ヌクレオチドからなる。ある特定の実施形態において、第1および第2の組換え領域の各々は、約50〜5,000ヌクレオチドを含む。ある特定の実施形態において、第1および第2の組換え領域の各々は、約100〜2,500ヌクレオチドからなる。ある特定の実施形態において、第1および第2の組換え領域の各々は、約100〜1,000ヌクレオチドからなる。ある特定の実施形態において、第1および第2の組換え領域の各々は、約250〜750ヌクレオチドからなる。ある特定の実施形態において第1および第2の組換え領域の各々は、約100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、1100、1200、1300、1400、1500、1600、1700、1800、1900、2000、2100、2200、2300、2400、2500、2600、2700、2800、2900、3000、3100、3200、3300、3400、3500、3600、3700、3800、3900、4000、4100、4200、4300、4400、4500、4600、4700、4800、4900または5,000ヌクレオチドからなる。いくつかの実施形態において、第1および第2の組換え領域の各々は、約500ヌクレオチドからなる。いくつかの実施形態において、第1および第2の組換え領域の各々は、少なくとも18ヌクレオチド塩基対を含む。いくつかの実施形態において、第1および第2の組換え領域の各々は、15〜500ヌクレオチド塩基対からなる。いくつかの実施形態において、第1および第2の組換え領域の各々は、15〜500、15〜495、15〜490、15〜485、15〜480、15〜475、15〜470、15〜465、15〜460、15〜455、15〜450、15〜445、15〜440、15〜435、15〜430、15〜425、15〜420、15〜415、15〜410、15〜405、15〜400、15〜395、15〜390、15〜385、15〜380、15〜375、15〜370、15〜365、15〜360、15〜355、15〜350、15〜345、15〜340、15〜335、15〜330、15〜325、15〜320、15〜315、15〜310、15〜305、15〜300、15〜295、15〜290、15〜285、15〜280、15〜275、15〜270、15〜265、15〜260、15〜255、15〜250、15〜245、15〜240、15〜235、15〜230、15〜225、15〜220、15〜215、15〜210、15〜205、15〜200、15〜195、15〜190、15〜185、15〜180、15〜175、15〜170、15〜165、15〜160、15〜155、15〜150、15〜145、15〜140、15〜135、15〜130、15〜125、15〜120、15〜115、15〜110、15〜105、15〜100、15〜95、15〜90、15〜85、15〜80、15〜75、15〜70、15〜65、15〜60、15〜55、15〜50、15〜45、15〜40、15〜35、15〜30、15〜25または15〜20ヌクレオチド塩基対からなる。いくつかの実施形態において、第1および第2の組換え領域の各々は、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95 96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、134、135、136、137、138、139、140、141、142、143、144、145、146、147、148、149、150、151、152、153、154、155、156、157、158、159、160、161、162、163、164、165、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、178、179、180、181、182、183、184、185、186、187、188、189、190、191、192、193、194、195、196、197、198、199または200ヌクレオチド塩基対からなる。
【0082】
本明細書中に提供される方法および組成物の好ましい実施形態において、相同性領域対の各相同性領域は、互いとの相同組換えを可能にするが、アセンブリに関与する組換え前の分子(複数可)の他の領域との相同組換えも宿主細胞のいずれのゲノム領域との相同組換えも可能にしない十分な長さおよび配列同一性のヌクレオチド配列を含む。
【0083】
いくつかの実施形態において、環状化した発現ベクターは、自己環状化する単一の組換え前の分子から形成されるが、他の実施形態では、環状化した発現ベクターは、2つまたはそれを超える組換え前の直鎖状分子のHR媒介性アセンブリによって形成される。例えば、環状化したベクターは、2つの組換え前の直鎖状分子からアセンブルされ得、ここで、第1の分子は、ギャップのあるベクターであり、第2の分子は、そのギャップのあるベクター上の2つの相同性領域と組み換わることができる2つの別個の相同領域を含むインサートである。ギャップのある直鎖状のベクターおよび直鎖状のインサートの各々に対して、組換え領域は、組換え前の直鎖状のベクターの末端もしくは末端近傍(例えば、1つの組換え領域が、各末端に位置し、さらなる配列が、その2つの領域の間に存在する)、末端に対して内部(例えば、各組換え領域は、両端においてさらなる配列によって挟まれる)、またはそれらの組み合わせ(例えば、一方の組換えが、一方の末端に存在し、他方が、それに対して内部であり、両サイドにおいてさらなる配列によって挟まれる)に位置し得る。なおも他の実施形態において、ギャップのあるベクターを修復するインサート自体が、互いに対する相同領域を含む少なくとも2つの直鎖状核酸からアセンブルされ得る。例えば、環状化したベクターは、異なる3つの組換え前の直鎖状フラグメントから形成され得、ここで、第1の直鎖状の分子は、相同性領域A
1およびB
1を含み、第2の直鎖状の分子は、B
2およびC
2を含み、第3の直鎖状の分子は、C
3およびA
3を含み、HR適格性の宿主細胞における各フラグメントの相同領域の間(すなわち、A
1とA
3、B
1とB
2およびC
2とC
3)の組換えによって、領域A→B→Cを含む環状化した発現ベクターが形成される。
【0084】
なおも他の実施形態において、環状化したベクターは、HR適格性の宿主細胞において、少なくとも4、5、6、7、8、9または10個の異なる組換え前の直鎖状フラグメントから同様の形式でアセンブルされる。実施の理論に拘束されるものではないが、2つより多い組換え前の直鎖状分子からアセンブルされる環状化した発現ベクターを必要とすることによって、相同組換えに特に長けている宿主細胞が選択されると考えられている。したがって、複数の組換え前の分子からの環状発現ベクターのアセンブリは、より高次の組込み事象が望まれるとき、例えば、多重ゲノム組込み(例えば、2つまたはそれを超えるドナー外来性DNAの多重ゲノム組込み)、または非常に低いHR率を有すると知られているかもしくは疑われている細胞型へのゲノム組込みを行うときに、好ましい場合がある。1つの例において、3つの外来性ドナー核酸を宿主細胞のそれぞれの3つのゲノム標的部位で多重(すなわち、同時)に組み込む場合、宿主細胞は、少なくとも3つの組換え前の直鎖状フラグメントをアセンブル「せざるを得なく」なることにより、環状発現ベクターが形成される。選択マーカーを発現する環状ベクターを形成するように3つのフラグメントを首尾良く組み換え得る細胞だけが、選択を生き残ることができ、すなわち、選択され得、これらの細胞は、3つの外来性ドナー核酸の各々をそれらのそれぞれのゲノム標的部位に首尾良く組み込んだ可能性が高い。いくつかの実施形態において、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10個または10個を超える外来性ドナー核酸を少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10個または10個を超えるそれぞれのゲノム標的部位に多重に組込むことが望まれるとき、宿主細胞は、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10個または10個を超える組換え前のフラグメントをアセンブルせざるを得ず、すなわち、組み換えざるを得ず、それにより、宿主細胞において選択マーカーを発現する環状発現ベクターが形成される。いくつかの実施形態において、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10個または10個を超える組換え前のフラグメントのインビボアセンブリによって、1つより多い選択マーカー(例えば、2つ、3つまたは3つより多い異なる選択マーカー)のコード配列を含む環状発現ベクターが形成される。
【0085】
好ましい実施形態において、環状化した発現ベクターは、いったんアセンブリされると、選択マーカーのコード配列、および宿主細胞においてマーカーの発現を可能にする好適な制御配列(例えば、プロモーターおよび/またはターミネーター)を含む。選択マーカーには、選択マーカーを含む宿主細胞の選択を可能にするものが含まれるが、他の実施形態は、選択マーカーを含まない細胞の選択を可能にし、それは、選択後に環状化した発現ベクターの除去が望まれる実施形態における用途が見出される(下記で論じられるように)。いくつかの実施形態において、環状発現ベクターのアセンブリの前に、組換え前の直鎖状分子、または多重フラグメントアセンブリの少なくとも1つの組換え前のフラグメントは、選択マーカーのインタクトなコード配列を、HR媒介性アセンブリに関わる相同性領域とは別個であってその相同性領域から離れて存在する制御配列と作動可能な連結状態で含む。したがって、環状発現ベクターのアセンブリは、選択マーカーのコード配列も変化させないし、発現に必要ないずれの制御配列も変化させない。そのようないくつかの実施形態において、環状化事象だけが、マーカーのコード配列の増殖およびマーカーのコード配列からの持続的な発現を可能にするのに対して、環状化していない直鎖状のベクターは、宿主細胞において増殖され得ず、かつ/または維持され得ない。好ましい実施形態において、環状化した発現ベクターを含まない宿主細胞は、本明細書中に記載される方法において、選択する工程を生き残らず、および/または選択されない。実施の理論に拘束されるものではないが、本明細書中に記載される方法に従って選択されるために、宿主細胞にHRを介して発現ベクターを環状化することを要求することによって、選択された細胞が、外来性DNAの、1つまたはそれを超える意図されたHR媒介性ゲノム組込みも首尾良く実行した可能性が高まると考えられている。
【0086】
他の実施形態において、選択マーカーをコードする配列および/または発現のために必要なその制御配列は、インタクトではなく、すなわち、任意の単一の組換え前の分子上で作動可能な連結状態ではない。そのようないくつかの実施形態において、発現ベクターが環状化したときだけ、マーカーのコード配列は、その制御エレメントと共に作動可能な連結状態になる。したがって、マーカーをコードする配列およびまたはその必須の制御配列は、構成している組換え前のフラグメント間のHRが、選択マーカーのコード配列をその制御配列と作動可能な連結状態で再構成する限り、アセンブリに関与する任意の数のフラグメントに分配された任意の数の重複する相同配列に分けられてもよい。これらの実施形態は、環状化した発現ベクターの形成が、非HR機構、例えば、非相同末端結合または一本鎖アニーリングを介した、組換え前のフラグメントの接続に起因する宿主細胞の選択を回避するのに特に有用である;選択を生き残るそのような細胞は、偽陽性を表わす。これらの望まれない事象の頻度は、ホスファターゼを使用して組換え前のフラグメント(複数可)上の5’リン酸基を除去することによって低下させることができ、これは、インビトロライゲーションに使用される標準的な方法である。ベクターの再ライゲーションは、組換え前のフラグメント(複数可)をTaq DNAポリメラーゼおよびdATPで処理することによっても回避され得る;これは、インビボにおいてベクターの再環状化を防ぎ、真の組換えクローンのスクリーニングを容易にするのに特に有効であると報告されている。Bessaら、Yeast 29:419−423(2012)を参照のこと。さらに、事前に環状化されたDNAの誤った導入が原因の偽陽性は、エンドヌクレアーゼ消化によって環状ベクターを線状化し、次いでそのフラグメントを単離するのではなく(これは、未消化の環状鋳型を持ち越す可能性がある)、組換え前のフラグメント(複数可)をPCRによってプレップすることによって、回避され得る。それにもかかわらず、実施の理論に拘束されるものではないが、選択プロセスを生き残るために、HRを介して、例えば、少なくとも2つの部分的な配列から、マーカーのコード配列を再構成することを宿主細胞に要求することによって、本明細書中に記載される方法に従って選択された細胞が、外来性DNAの1つまたはそれを超える意図されたHR媒介性ゲノム組込みも首尾良く行った可能性が高まると考えられている。
【0087】
本明細書中に提供される方法のいくつかの実施形態において、環状化した発現ベクターは、いったんアセンブルされると、本明細書中に記載される部位特異的ヌクレアーゼのコード配列、および宿主細胞においてそのヌクレアーゼの発現を可能にする好適な制御配列(例えば、プロモーターおよび/またはターミネーター)をさらに含む。いくつかの実施形態において、そのヌクレアーゼは、CRISPR/Cas関連RNAガイドエンドヌクレアーゼ、メガヌクレアーゼ、ジンクフィンガーヌクレアーゼ、TAL−エフェクターDNA結合ドメイン−ヌクレアーゼ融合タンパク質(TALEN)、トランスポザーゼおよび部位特異的リコンビナーゼからなる群より選択される。いくつかの実施形態において、ヌクレアーゼは、CRISPR関連RNAガイドエンドヌクレアーゼである。いくつかのそのような実施形態において、環状発現ベクターは、RNAガイドエンドヌクレアーゼの真正の(obligate)ガイド配列をコードする単数または複数の配列、例えば、crRNA活性およびtracrRNA活性をさらに含み、それにより、そのRNAガイドDNAエンドヌクレアーゼによる標的ゲノムDNAの部位特異的な認識および切断が可能になる。いくつかの実施形態において、crRNA活性およびtracrRNA活性は、単一の連続したRNA分子、すなわち、キメラガイドRNA(gRNA)分子として、環状発現ベクターから発現される。いくつかの実施形態において、環状発現ベクターは、またヌクレアーゼのコード配列を含まずに、RNAガイドエンドヌクレアーゼのガイド配列(複数可)(例えば、gRNA)をコードする1つまたはそれを超える配列を含む。いくつかのそのような実施形態において、RNAガイドヌクレアーゼをコードする1つまたはそれを超える配列は、別個のベクターに供給され得るか、ゲノムに組み込まれ得るか、またはそのヌクレアーゼが、例えば、インビトロにおいて発現され、精製されたタンパク質として細胞に導入され得る。
【0088】
ヌクレアーゼのコード配列、ならびに/または細胞におけるそのヌクレアーゼの発現および作動可能性に必要なさらなる配列が、環状化した発現ベクターに含められる上述のいずれかの実施形態において、これらの配列は、構成している組換え前のフラグメント間のHRが、そのヌクレアーゼのコード配列をその制御配列と作動可能な連結状態で再構成する限り、アセンブリ反応に関与する1つもしくはそれを超える組換え前の直鎖状のフラグメント(複数可)のいずれかにおいてインタクト(すなわち、作動可能な連結状態)であってもよいし、あるいは、アセンブリに関与する任意の数のフラグメントに分配された任意の数の重複する相同配列に分けられてもよい。有益なことに、ヌクレアーゼのコード配列(および/またはそのヌクレアーゼがRNAガイドヌクレアーゼである場合、ガイドRNA配列をコードする配列)を環状化した発現ベクターにつなげることは、これらの配列の発現が、HR媒介性組込み事象を助けるのに十分なレベルおよび期間において維持されることを確実にする。本明細書中に記載される方法によると、遺伝子ターゲティングの効率は、意図された組込み部位近傍に導入される標的化されたゲノム二本鎖断裂(DSB)と組み合されるとき、改善され得る。例えば、Jasin,M.,Trends Genet 12(6):224−228(1996);およびUrnovら、Nature 435(7042):646−651(2005)を参照のこと。さらに、ヌクレアーゼのコード配列および/または関連するガイド配列(複数可)を環状化した発現ベクターにつなげることは、これらの配列の発現をもたらすために複数のベクターを宿主細胞に導入する必要性を排除する。さらに、そのようにつなげることによって、所望の組込みを行った宿主細胞の選択後に、ヌクレアーゼと標識された(marked)プラスミドとを同時に除去することが可能になる。したがって、ヌクレアーゼの不必要に長期間の発現が回避され、その結果として、それに伴うあらゆる毒性が回避される(例えば、Choら、Genome Res,“Analysis of off−target effects of CRISPR/Cas−derived RNA−guided endonucleases and nickases,”(2013);Sanderら、“In silico abstraction of zinc finger nuclease cleavage profiles reveals an expanded landscape of off−target sites,” Nucleic Acids Research 41(19):e181(2013)を参照のこと)。
【0089】
本明細書中に提供される方法のいくつかの実施形態において、環状化した発現ベクターは、いったんアセンブルされると、下記の5.2.2の項に記載される1つまたはそれを超える外来性ドナー核酸をさらに含む。いくつかのそのような実施形態において、外来性ドナー核酸は、宿主細胞にも導入されたヌクレアーゼ、例えば、環状化した発現ベクターによってもコードされるヌクレアーゼの認識配列に該外来性ドナー核酸を隣接して配置することによって、環状化した発現ベクターから放出され得る。
【0090】
当業者には明らかであるように、環状化した発現ベクターは、好ましくは、その発現ベクターが、複数ラウンドの宿主細胞分裂の間に複製され、増殖され、分離されることを可能にする、自律増殖配列を含む。その自律増殖配列は、原核生物または真核生物のもののいずれかであり得、複製起点を含む。複製起点は、多量体起点結合タンパク質(multimeric origin-binding protein)によって認識され、その起点部位にDNA複製酵素をアセンブリする際に重要な役割を果たす、複数の短い反復配列を含むユニークなポリヌクレオチドである。本明細書中に提供されるエントリーベクターおよびアセンブリベクターにおいて使用するために好適な複製開始点としては、大腸菌oriC、colE1プラスミド起点、2μおよびARS(両方とも、酵母系において有用)、sfl、SV40 EBV oriP(哺乳動物系において有用)またはpSC101に見出されるものが挙げられるがこれらに限定されない。発現ベクターの特定の実施形態には、原核生物の自律増殖配列と真核生物の自律増殖配列の両方が含まれる。この配列は、構成している組換え前のフラグメント間のHRが、その自律増殖配列を再構成する限り、アセンブリ反応に関与する1つもしくはそれを超える組換え前の直鎖状のフラグメント(複数可)のいずれかにおいてインタクト(すなわち、作動可能な連結状態)であってもよいし、あるいは、アセンブリに関与する任意の数のフラグメントに分配された任意の数の重複する相同配列に分けられてもよい。特定の実施形態において、その自律増殖配列は、インタクトではなく、すなわち、任意の単一の組換え前の分子上で作動可能な連結状態ではない。いくつかのそのような実施形態において、発現ベクターが、組換え前の分子(複数可)の組換えによって環状化したときだけ、自律増殖配列は、作動可能な連結状態になる。これらの実施形態は、環状化した発現ベクターの形成が、例えば、非相同末端結合または一本鎖アニーリングによる、インタクトな自律増殖配列を含む組換え前のフラグメントの非HR結合に起因する宿主細胞の選択を回避するのに特に有用である;選択を生き残るそのような細胞は、偽陽性を表わす。
【0091】
当業者には明らかであるように、宿主細胞において環状発現ベクターの形成をもたらす、上に記載された1つまたはそれを超える直鎖状の組換え前のDNAフラグメントの間のインビボ組換えは、起始点として適切な(例えば、同じ)相同性領域を含む組換え前の環状核酸を用いても達成され得る。本明細書中に記載される任意の組換え前の組成物に対して、その組成物は、直鎖状核酸分子として宿主細胞に直接、形質転換され得るか、あるいは、組換え前の分子を含む親環状分子が、宿主細胞に導入され、1つまたはそれを超えるヌクレアーゼによってインビボにおいて切断されることにより、組換え前の分子が遊離され得る。いくつかの実施形態において、マーカーベクターのアセンブリに関与する1つまたはそれを超える直鎖状の組換え前の分子は、切断のための1つまたはそれを超えるゲノム標的部位を標的化する1つまたはそれを超えるヌクレアーゼによって、宿主細胞におけるインビボ切断を介して親環状プラスミドから遊離され得る。
【0092】
別の態様において、本明細書中に提供される組込み方法の実施において有用な組換え前の発現ベクター中間体を作製する方法が本明細書中に提供される。いくつかの実施形態において、自律増殖配列、第1のプライマー結合配列および第2のプライマー結合配列を含むベースベクターが、少なくとも第1のプライマーおよび第2のプライマーを使用して増幅される。第1のプライマーは、通常、第1の配列特異的組換え配列を有する5’部分およびベースベクターの第1のプライマー結合配列に実質的に相補的な(すなわち、所望の核酸の増幅を可能にするが他の望まれない分子の増幅を可能にしないのに十分な相補性を有する)プライミング部分を有する3’部分を含む。同様に、第2のプライマーは、第2の配列特異的組換え配列を有する5’部分およびベースベクターの第2のプライマー結合配列に実質的に相補的な(complimentary)プライミング部分を有する3’部分を含む。そのベースベクター(それは、増幅プロセスの開始前に直鎖状または環状のいずれかであり得る)の増幅によって、第1の配列特異的組換え領域を含む第1の末端および第2の配列特異的組換え領域を含む第2の末端を有する直鎖状の発現ベクター中間体が生成される。ある特定の実施形態において、ベースベクターは、プラスミド、特に、当該分野で公知であるような、様々な細菌または酵母に由来する染色体外エレメントに基づくプラスミドである。ある特定の他の実施形態において、ベースベクターは、1つまたはそれを超える選択マーカー、転写開始配列および/または転写終結配列をさらに含む。当業者が認識するように、標的核酸の中に保持されている、遺伝子の発現を制御することを目的としたエレメントは、いったんその環状発現ベクターがインビボにおいてアセンブルされたら、発現されるべき遺伝子(複数可)と機能的にまたは作動可能に会合されるように発現ベクター内に位置されるべきである。そのようなエレメントの特定のポジショニングは、使用されるエレメント、宿主細胞、発現されるべき遺伝子(複数可)、および上に記載されたような他の因子(宿主細胞における所望の組込みの数を含む)に依存する。結果として、本教示に従って作製される特定の発現ベクターの最終的なデザインは、選択できることであって、具体的な適用に依存する。
【0093】
さらに他の態様は、前述の方法に従って作製される発現ベクター中間体およびそれを含む宿主細胞に関する。なおも別の態様は、本組込み方法の実施において有用な異なる複数の発現ベクター中間体を作製する方法に関する。そのような方法では、2つまたはそれを超える発現ベクター中間体(各々が、異なるインサート核酸との相同組換えを可能にするユニークな配列特異的組換え領域を有する)を生成するために、ベースベクターが増幅される。そのような増幅反応は、異なる発現ベクター中間体を生成するために、好ましくは、別個の反応混合物中で行われる。そのようなハイスループットアプローチの特に好ましい実施形態において、必須の操作は、自動化された様式で行われ、ここで、1つまたはそれを超える工程が、コンピュータによってコントロールされるデバイスによって行われる。
【0094】
いくつかの実施形態において、本明細書中に提供されるような組換え前の分子を構築するために任意のベクターを使用してよい。特に、当該分野で公知のベクターおよび商業的に入手可能なベクター(およびそれらのバリアントまたは誘導体)は、上に記載されたような組換え領域を含むように操作され得る。そのようなベクターは、例えば、Vector Laboratories Inc.、InVitrogen、Promega、Novagen、NEB、Clontech、Boehringer Mannheim、Pharmacia、EpiCenter、OriGenes Technologies Inc.、Stratagene、Perkin Elmer、Pharmingen、Life Technologies,Inc.およびResearch Geneticsから入手され得る。特定の目的の一般的なクラスのベクターとしては、原核生物および/または真核生物のクローニングベクター、発現ベクター、融合ベクター、ツーハイブリッドまたは逆ツーハイブリッドベクター、種々の宿主において使用するためのシャトルベクター、変異誘発ベクター、転写ベクター、大きなインサートを受け入れるためのベクターなどが挙げられる。目的の他のベクターとしては、ウイルス起源のベクター(M13ベクター、細菌ファージλベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター(AAV)およびレトロウイルスベクター)、高コピー数、低コピー数および調節可能なコピー数のベクター、単一の宿主において組み合わせて使用するための適合性のレプリコンを有するベクター(PACYC184およびpBR322)、ならびに真核生物のエピソーム複製ベクター(pCDM8)が挙げられる。他の実施形態において、組換え前の分子は、クローニングされたDNA(例えば、DNA「ライブラリー」)から当該分野で公知の標準的な手順によって、化学合成によって、cDNAのクローニングによって、または所望の細胞から精製されたゲノムDNAもしくはそのフラグメントのクローニングによって、またはPCR増幅およびクローニングによって、得られ得る。例えば、Sambrookら、Molecular Cloning,A Laboratory Manual,3d.ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,New York(2001);Glover,D.M.(ed.),DNA Cloning:A Practical Approach,2d.ed.,MRL Press,Ltd.,Oxford,U.K.(1995)を参照のこと。
5.2.1.1 選択マーカー
【0095】
好ましい実施形態において、環状化した発現ベクターは、いったんアセンブルされると、選択マーカーのコード配列および宿主細胞においてそのマーカーの発現を可能にする好適な制御配列(例えば、プロモーターおよび/またはターミネーター)を含む。有用な選択マーカーとしては、ポジティブ選択系とネガティブ選択系の両方において機能するものが挙げられる。
【0096】
いくつかの実施形態において、所望の細胞の選択は、選択マーカーによってコードされる薬物耐性について選択することに基づく(
図3B)。ポジティブ選択系は、形質転換された細胞の成長を容易にするものである。ポジティブ選択系は、条件的ポジティブ選択系または非条件的ポジティブ選択系に分けられ得る。条件的ポジティブ選択系は、形質転換されていない細胞にとっては毒性である特定の基質に対する耐性を付与するかまたは形質転換された細胞の成長および/もしくは分化を促すタンパク質、通常は酵素をコードする遺伝子からなる。条件的ポジティブ選択系では、その基質は、いくつかの方法のうちの1つにおいて作用し得る。基質は、抗生物質、除草剤、薬物アナログもしくは代謝産物アナログまたは炭素供給前駆体であり得る。各場合において、その遺伝子は、形質転換された細胞の選択的な成長および増殖を促すための、基質に対して特異性を有する酵素をコードする。その基質は、形質転換されていない細胞にとって毒性または無毒性であり得る。タンパク質合成を阻害することによってカナマイシン耐性を付与するnptII遺伝子は、形質転換されていない細胞にとって毒性である系の古典的な例である。ホスホマンノースイソメラーゼをコードするmanA遺伝子は、選択基質が毒性でない条件的ポジティブ選択系の例である。この系では、基質であるマンノースは、形質転換されていない細胞に対して炭素源として作用することができないが、manAで形質転換された細胞の成長を容易にする。非条件的ポジティブ選択系は、外部の基質を必要としないが、形質転換された細胞の選択的な成長および分化を容易にする。植物における例は、内因的に植物ホルモンのレベルを改変することによって苗条(shoot)の発達を増強するipt遺伝子である。
【0097】
ネガティブ選択系は、形質転換された細胞の死をもたらす。これらは、条件的選択系および非条件的選択系として記載され得る主要な選択マーカー系である。選択系が、基質依存的でないとき、その選択系は、非条件的ネガティブ選択系である。一例は、特定の細胞型を取り除くリボヌクレアーゼなどの毒性タンパク質の発現である。その毒性遺伝子の作用に、基質が毒性を発現することが必要であるとき、その系は、条件的ネガティブ選択系である。これらには、シトシンデアミナーゼをコードする細菌のcodA遺伝子、細菌のシトクロムP450モノオキシゲナーゼ遺伝子、細菌のハロアルカンデハロゲナーゼ遺伝子またはArabidopsisのアルコールデヒドロゲナーゼ遺伝子が挙げられる。これらの各々は、無毒性作用物質(non-toxic agent)を毒性作用物質に変換して、形質転換された細胞の死をもたらす。coda遺伝子は、葉緑体の形質転換のための効果的なドミナントネガティブ選択マーカーであることも示されている。Agrobacteriumのaux2およびtms2遺伝子は、ポジティブ選択系においても使用できる点において、興味深い。ポジティブ選択は、環状発現ベクターを首尾良く組み換えた(かつ推定的に、1つまたはそれを超える意図されたHR媒介性ゲノム組込みを行った)細胞を富化するために利用することができ、ネガティブ選択は、いったん所望のゲノム組込みが確認されたら、同じ集団から発現ベクターを除去する(「取り除く」)ために使用できるので、ポジティブ−ネガティブ選択系の組み合わせは、本明細書中に提供される組込み方法にとって特に有用である。
【0098】
多種多様の選択マーカーが、当該分野で公知である(例えば、Kaufinan,Meth.Enzymol.,185:487(1990);Kaufman,Meth.Enzymol.,185:537(1990);Srivastava and Schlessinger,Gene,103:53(1991);Romanosら、DNA Cloning 2:Expression Systems,2
nd Edition,pages 123−167(IRL Press 1995);Markie,Methods Mol.Biol.,54:359(1996);Pfeiferら、Gene,188:183(1997);Tucker and Burke,Gene,199:25(1997);Hashida−Okadoら、FEBS Letters,425:117(1998)を参照のこと)。いくつかの実施形態において、選択マーカーは、薬物耐性マーカーである。薬物耐性マーカーは、それがなければ細胞を殺滅する外来性薬物をその細胞が解毒することを可能にする。薬物耐性マーカーの実例としては、抗生物質(例えば、アンピシリン、テトラサイクリン、カナマイシン、ブレオマイシン、ストレプトマイシン、ハイグロマイシン、ネオマイシン、Zeocin
TMなど)に対する耐性を付与するものが挙げられるがこれらに限定されない。他の選択マーカーとしては、ブレオマイシン耐性遺伝子、メタロチオネイン遺伝子、ハイグロマイシンB−ホスホトランスフェラーゼ遺伝子、AURI遺伝子、アデノシンデアミナーゼ遺伝子、アミノグリコシドホスホトランスフェラーゼ遺伝子、ジヒドロ葉酸レダクターゼ遺伝子、チミジンキナーゼ遺伝子、キサンチン−グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ遺伝子などが挙げられる。
【0099】
pBRおよびpUC由来のプラスミドは、選択マーカーとして細菌の薬物耐性マーカーであるAMP
rまたはBLA遺伝子を含む(Sutcliffe,J.G.ら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.75:3737(1978)を参照のこと)。BLA遺伝子は、ベータ−ラクタマーゼとして機能し、ベータ−ラクタム抗生物質、例えば、狭域セファロスポリン、セファマイシンおよびカルバペネム(エルタペネム)、セファマンドールおよびセフォペラゾン、ならびにテモシリンを除くすべての抗グラム陰性菌ペニシリンに対する菌耐性に関与する、酵素Tem−1をコードする。
【0100】
他の有用な選択マーカーとしては、NAT1、PAT、AUR1−C、PDR4、SMR1、CAT、マウスdhfr、HPH、DSDA、KAN
RおよびSH BLE遺伝子が挙げられるがこれらに限定されない。S.nourseiのNAT1遺伝子は、ノウルセオトリシン(nourseothricin)N−アセチルトランスフェラーゼをコードし、ノウルセオトリシンに対する耐性を付与する。S.viridochromogenes Tu94由来のPAT遺伝子は、ホスフィノトリシンN−アセチルトランスフェラーゼをコードし、ビアラホス(bialophos)に対する耐性を付与する。S.cerevisiae由来のAUR1−C遺伝子は、出芽酵母S.cerevisiaeにとって毒性である、Auerobasidium pullulansによって産生される抗真菌性(antifuncal)抗生物質であるオーレオバシジン(Auerobasidin)A(AbA)に対する耐性を付与する。PDR4遺伝子は、セルレニン(cerulenin)に対する耐性を付与する。SMR1遺伝子は、スルホメツロンメチルに対する耐性を付与する。Tn9トランスポゾン由来のCATコード配列は、クロラムフェニコールに対する耐性を付与する。マウスdhfr遺伝子は、メトトレキサートに対する耐性を付与する。Klebsiella pneumoniaのHPH遺伝子は、ハイグロマイシンBホスホトランスフェラーゼをコードし、ハイグロマイシンBに対する耐性を付与する。大腸菌のDSDA遺伝子は、D−セリンデアミナーゼをコードし、唯一の窒素源としてD−セリンを含むプレート上で酵母が成長することを可能にする。Tn903トランスポゾンのKAN
R遺伝子は、アミノグリコシドホスホトランスフェラーゼをコードし、G418に対する耐性を付与する。Streptoalloteichus hindustanus由来のSH BLE遺伝子は、ゼオシン結合タンパク質をコードし、ゼオシン(ブレオマイシン)に対する耐性を付与する。
【0101】
他の実施形態において、選択マーカーは、栄養素要求性マーカーである。栄養素要求性マーカーは、必須成分(通常、アミノ酸)を欠く培地中で成長している間、細胞がその必須成分を合成することを可能にする。選択的栄養素要求性遺伝子配列としては、例えば、ヒスチジノールの存在下のヒスチジン非含有培地中での成長を可能にするhisDが挙げられる。いくつかの実施形態において、選択マーカーは、宿主株における栄養の栄養素要求性(nutritional auxotrophy)をレスキューする。そのような実施形態では、宿主株は、栄養素要求性の表現型を引き起こす、その宿主のアミノ酸生合成経路の1つもしくはそれを超える遺伝子(例えば、HIS3、LEU2、LYS1、MET15およびTRP1など)に機能的破壊を含むか、または栄養素要求性の表現型を引き起こすその宿主のヌクレオチド生合成経路の1つもしくはそれを超える遺伝子(例えば、ADE2およびURA3など)に機能的破壊を含む。特定の実施形態において、宿主細胞は、URA3遺伝子に機能的破壊を含む。栄養素要求性の表現型を引き起こす宿主細胞における機能的破壊は、点変異、部分的もしくは完全な遺伝子欠失、またはヌクレオチドの付加もしくは置換であり得る。アミノ酸またはヌクレオチドの生合成経路内の機能的破壊によって、宿主株は、原栄養性の野生型細胞とは対照的に1つまたはそれを超える栄養分の補充がない培地中では最適な成長ができない栄養素要求性変異体になる。次いで、宿主株における機能的に破壊された生合成遺伝子は、栄養素要求性遺伝子マーカーとして機能し得、その栄養素要求性遺伝子マーカーは、後で、例えば、破壊された生合成遺伝子の機能的なコピーを含む1つまたはそれを超えるプラスミドを導入すると、レスキューされ得る。
【0102】
酵母において、URA3、TRP1およびLYS2遺伝子を選択マーカーとして利用することは、ポジティブ選択とネガティブ選択の両方が可能であるので、顕著な利点がある。ポジティブ選択は、URA3、TRP1およびLYS2変異の栄養素要求性の補完によって行われるのに対して、ネガティブ選択は、原栄養菌株の成長を妨げるがそれぞれURA3、TRP1およびLYS2変異体の成長を可能にする、それぞれ特異的阻害剤である5−フルオロ−オロチン酸(FOA)、5−フルオロアントラニル酸およびa−アミノアジピン酸(aAA)に基づく。URA3遺伝子は、ウラシルの生合成に必要な酵素であるオロチジン−5’リン酸デカルボキシラーゼをコードする。FOAは、デカルボキシラーゼの作用によって毒性化合物である5−フルオロウラシルに変換されるとみられるので、Ura3−(またはura5−)細胞は、すべてのURA3+細胞を殺滅するがura3−細胞を殺滅しないFOAを含む培地上で選択され得る。FOA培地上でのネガティブ選択は、高度に識別的であり、通常、10
−2個未満のFOA耐性コロニーが、Ura+である。FOA選択手順を用いることにより、より重要なことには、URA3含有プラスミドを有しない細胞を選択するために、変異による一倍体株においてura3マーカーを生成することができる。TRP1遺伝子は、トリプトファン生合成における3番目のステップを触媒するホスホリボシルアントラニル酸イソメラーゼをコードする。5−フルオロアントラニル酸を用いる対抗選択は、アントラニル酸をトリプトファンに変換するために必要な酵素を欠くがゆえに5−フルオロアントラニル酸(fluroanthranilic acid)に耐性である株による代謝拮抗を含む。LYS2遺伝子は、リジンの生合成に必要な酵素であるアミノアジピン酸レダクターゼをコードする。Lys2−およびlys5−変異体は、通常の窒素源を欠くがリジンおよびaAAを含む培地上で成長するが、正常な株は、成長しない。明らかに、lys2およびlys5変異は、高レベルのaAAによって形成されるリジン生合成の毒性中間体の蓄積を引き起こすが、これらの変異体は、なおもaAAを窒素源として使用することができる。FOA選択手順と同様に、LYS2含有プラスミドは、lys2宿主から都合よく除去され得る。他の実施形態において、選択マーカーは、栄養素要求性(auxotophic)変異をレスキューするマーカー以外のマーカーである。
【0103】
本明細書中に記載される任意の方法および組成物に対して、レポーター遺伝子(例えば、形質転換されたコロニーのブルー/ホワイト選択を容易にするためのlacZレポーター遺伝子)または蛍光タンパク質(例えば、緑色、赤色および黄色蛍光タンパク質)を選択マーカー遺伝子として使用することにより、1つまたはそれを超える組換え前のフラグメントから環状発現ベクターを首尾良くアセンブルできるHR適格性の宿主細胞の選択を容易にすることができる(
図3Aを参照のこと)。これらの実施形態では、形質転換された細胞を、選択的化合物、例えば、抗生物質を含む培地中で成長させるのではなく、それらの細胞を、レポーターの発現を可能にするのに十分な条件下で成長させ、そのレポーターの視覚的検出、比色検出または蛍光検出を介して、選択を行うことができる。宿主細胞の薬物非含有での選択圧のない細胞維持は、いくつかの利点を提供し得る。例えば、選択薬および他の選択圧の因子は、しばしば、変異原性であるか、またはそうでない場合は、細胞の生理機能に干渉し、細胞ベースのアッセイの結果をゆがめる。例えば、選択薬は、アポトーシスに対する感受性を低下させ得(Robinsonら、Biochemistry,36(37):11169−11178(1997))、DNA修復および薬物代謝を増大し得(Deffieら、Cancer Res.48(13):3595−3602(1988))、細胞のpHを上昇させ得(Thiebautら、J Histochem Cytochem.38(5):685−690(1990);Roepeら、Biochemistry.32(41):11042−11056(1993);Simonら、Proc Natl Acad Sci USA.91(3):1128−1132(1994))、リソソームおよびエンドソームのpHを低下させ得(Schindlerら、Biochemistry.35(9):2811−2817(1996);Altanら、J Exp Med.187(10):1583−1598(1998))、原形質膜電位を低下させ得(Roepeら、Biochemistry.32(41):11042−11056(1993))、塩化物(Gillら、Cell.71(1):23−32(1992))およびATP(Abrahamら、Proc Natl Acad Sci USA.90(1):312−316(1993))に対する原形質膜コンダクタンスを上昇させ得、小胞輸送の速度を高め得る(Altanら、Proc Natl Acad Sci USA.96(8):4432−4437(1999))。したがって、本明細書中に提供される方法は、選択圧によって引き起こされるアーチファクトがないスクリーニングを可能にする、薬物を用いない選択によって実施され得る。
【0104】
フローサイトメトリーセルソーターを使用することにより、蛍光マーカー、またはフルオロフォア(fluorphores)に結合し、かつマーカータンパク質に対する親和性を有するタンパク質(例えば、抗体)の発現が陽性である細胞を単離することができる。いくつかの実施形態において、複数ラウンドのソーティングが行われ得る。1つの実施形態において、フローサイトメトリーセルソーターは、FACS装置である。ハイスループットスクリーニングに適合したものを含む他の蛍光プレートリーダーも使用することができる。MACS(磁気細胞ソーティング)を使用することによってもまた、例えば、磁気ビーズに結合され、かつマーカータンパク質に対する親和性を有するタンパク質を有する宿主細胞を選択することができる。これは、選択マーカーが、例えば、膜タンパク質、膜貫通タンパク質、膜アンカータンパク質、細胞表面抗原または細胞表面レセプター(例えば、サイトカインレセプター、免疫グロブリンレセプターファミリーメンバー、リガンド開口型(ligand−gated)イオンチャネル、タンパク質キナーゼレセプター、Gタンパク質共役レセプター(GPCR)、核ホルモンレセプターおよび他のレセプター;CD14(単球)、CD56(ナチュラルキラー細胞)、CD335(NKp46、ナチュラルキラー細胞)、CD4(Tヘルパー細胞)、CD8(細胞傷害性T細胞)、CD1c(BDCA−1、血液樹状細胞サブセット)、CD303(BDCA−2)、CD304(BDCA−4、血液樹状細胞サブセット)、NKp80(ナチュラルキラー細胞、ガンマ/デルタT細胞、エフェクター/メモリーT細胞)、「6B11」(Va24/Vb11;インバリアントナチュラルキラーT細胞)、CD137(活性化T細胞)、CD25(制御性T細胞)、またはCD138(形質細胞)枯渇、CD4枯渇、CD8枯渇、CD19枯渇、CD25枯渇、CD45RA枯渇、CD45RO枯渇)をコードする場合、特に有用である。したがって、いくつかの実施形態において、選択マーカーは、抗体、例えば、フルオロフォアに結合した抗体、または比色もしくは他の視覚的読み取りによって容易に検出可能であり得る、宿主細胞表面上にディスプレイされたタンパク質を含む。
5.2.1.2 細胞培養
【0105】
本明細書中に記載される方法のいくつかの実施形態では、1つまたはそれを超える組換え前のフラグメントで形質転換された宿主細胞を、環状化した発現ベクターからの選択マーカーの発現にとって十分な期間にわたって培養する。
【0106】
選択マーカーが薬物耐性マーカーであるいくつかの実施形態において、培養は、選択培地中での該マーカーを発現している細胞の生存を支持し得る量のマーカータンパク質を産生するのに十分な期間にわたって行われる。好ましい実施形態において、これらの条件は、選択マーカーを発現していない細胞の生存に対して選択するものである。当業者に公知である種々の化合物または処理を用いて、細胞に対して選択圧が適用され得る。理論に限定されるものではないが、選択圧は、成長、細胞周期の進行または生存能に対して最適以下であるかまたは有害である条件に宿主細胞を曝すことによって、適用され得、これらの条件に抵抗性である(tolerant)または耐性である(resistant)細胞は、これらの条件に抵抗性でないまたは耐性でない細胞と比べて選択される。選択圧を発揮するかまたは適用するために使用され得る条件としては、抗生物質、薬物、変異原、細胞成長または生物学的基本要素の合成を遅らせるかまたは停止する化合物、RNA、DNAまたはタンパク質の合成を中断する化合物、細胞成長培地または細胞培養培地からの細胞成長および生存能に必要な栄養分、アミノ酸、炭水化物または化合物の欠乏または制限、細胞成長に対して最適以下である条件下、例えば、最適以下の温度、大気条件(例えば、%二酸化炭素、酸素または窒素または湿度)または枯渇培地(deprived media)条件下での細胞の成長または維持などの処理が挙げられるがこれらに限定されない。使用される選択圧のレベルは、当業者によって決定され得る。これは、例えば、殺滅曲線(kill curve)実験を行うことによって、行われ得、その実験では、コントロール細胞および耐性マーカーまたは耐性遺伝子を含む細胞を、選択圧のレベル、用量、濃度または処理を高めながら、所望の時間範囲(例えば、1〜24時間、1〜3日間、3〜5日間、4〜7日間、5〜14日間、1〜3週間、2〜6週間)にわたって陰性細胞だけまたは陰性細胞を優先的に選択する範囲で、試験する。使用され得る選択圧の正確なレベル、濃度、用量または処理は、使用される細胞、所望の特性自体、選択圧に対して耐性または抵抗性を付与するマーカー、因子または遺伝子、ならびに選択される細胞において望まれる所望の特性のレベルに依存し、当業者は、これらの考慮すべき事柄に基づいて適切な範囲を決定する方法を容易に認識する。
【0107】
培養は、細胞培養プレート、フラスコまたは発酵槽を含むがこれらに限定されない好適な容器内の好適な培養培地中で行われ得る。いくつかの実施形態において、培養培地は、同化できる炭素源、窒素源およびリン酸源を含む水性培地である。そのような培地は、適切な塩、ミネラル、金属および他の栄養分も含み得る。いくつかの実施形態において、好適な培地には、選択剤に加えて、1つまたはそれを超えるさらなる作用物質(例えば、誘導物質(例えば、遺伝子産物をコードする1つまたはそれを超えるヌクレオチド配列が誘導性プロモーターの調節下にあるとき)、リプレッサー(例えば、遺伝子産物をコードする1つまたはそれを超えるヌクレオチド配列が抑制性プロモーターの調節下にあるとき))が補充される。細胞培養物の維持および成長のための材料および方法は、微生物学または発酵科学の分野の当業者に周知である(例えば、Baileyら、Biochemical Engineering Fundamentals,second edition,McGraw Hill,New York,1986を参照のこと)。宿主細胞、発酵およびプロセスに関する具体的な要求に応じて、適切な培養培地、pH、温度および好気的条件、微好気的条件または嫌気性条件に対する要件が考慮されなければない。いくつかの実施形態において、培養は、所望の細胞密度に達するまで、形質転換された集団が複数回の倍加を起こすのに十分な期間にわたって、行われる。いくつかの実施形態において、培養は、宿主細胞集団が、培養を行っている発酵槽または発酵容器において0.01〜400の細胞密度(OD
600)に達するのに十分な期間にわたって行われる。いくつかの実施形態において、培養は、少なくとも0.01のOD
600に達するまで行われる。いくつかの実施形態において、培養は、少なくとも0.1のOD
600に達するまで行われる。いくつかの実施形態において、培養は、少なくとも1.0のOD
600に達するまで行われる。いくつかの実施形態において、培養は、少なくとも10のOD
600に達するまで行われる。いくつかの実施形態において、培養は、少なくとも100のOD
600に達するまで行われる。いくつかの実施形態において、培養は、0.01〜100のOD
600に達するまで行われる。いくつかの実施形態において、培養は、0.1〜10のOD
600に達するまで行われる。いくつかの実施形態において、培養は、1〜100のOD
600に達するまで行われる。他の実施形態において、培養は、少なくとも12、24、36、48、60、72、84、96時間または96時間より長い期間にわたって行われる。いくつかの実施形態において、培養は、3〜20日間の期間にわたって行われる。いくつかの実施形態において、培養は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20日間または20日間より長い期間にわたって行われる。
【0108】
本明細書中に記載される方法のいくつかの実施形態において、上記方法は、例えば、選択された宿主細胞が所望のゲノム組込み(複数可)を含むと同定された後、環状化した発現ベクター、すなわち、プラスミドをその宿主細胞から除去する工程をさらに含む。プラスミドベースの系は、一般に、その細胞内に外来DNAを維持するために、プラスミドに対する選択圧を要求する。例えば、酵母細胞は、通常、各有糸分裂後に、細胞に含まれるプラスミドの10%を失うので、酵母におけるほとんどのプラスミドは、比較的不安定である。したがって、いくつかの実施形態において、選択された細胞から選択的マーカーをコードするプラスミドを除去することは、そのプラスミドが集団から効果的に希釈されるのに十分な有糸分裂を、選択された細胞が起こすのを可能にすることによって達成され得る。あるいは、プラスミドが存在しないことについて選択することによって、例えば、対抗選択マーカー(counter-selectable marker)(例えば、URA3など)に対して選択することによって、または同一のコロニーを選択培地と非選択培地の両方にプレーティングし、次いで、選択培地上では成長しないが非選択培地上で成長するコロニーを選択することによって、プラスミドを含まない細胞が選択され得る。
5.2.2.外来性ドナー核酸
【0109】
有益なことに、組込みポリヌクレオチド、すなわち、ドナーDNAは、宿主細胞ゲノムの選択された標的部位への1つまたはそれを超える外来性核酸構築物の組込みを容易にする。好ましい実施形態において、組込みポリヌクレオチドは、第1の相同性領域(HR1)
xおよび第2の相同性領域(HR2)
x、ならびに必要に応じて、(HR1)
xと(HR2)
xとの間に位置する目的の核酸を含む外来性核酸(ES)
xを含む。いくつかの実施形態において、組込みポリヌクレオチドは、直鎖状DNA分子である。他の実施形態において、組込みポリヌクレオチドは、環状DNA分子である。いくつかの実施形態において、組込みポリヌクレオチドは、一本鎖DNA分子、すなわち、オリゴヌクレオチドである。他の実施形態において、組込みポリヌクレオチドは、二本鎖DNA分子である。
【0110】
組込みポリヌクレオチドは、当業者には明らかな任意の技法によって作製され得る。ある特定の実施形態において、組込みポリヌクレオチドは、当該分野で周知のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)および分子クローニング法を用いて作製される。例えば、PCR Technology:Principles and Applications for DNA Amplification,ed.HA Erlich,Stockton Press,New York,N.Y.(1989);Sambrookら、2001,Molecular Cloning−A Laboratory Manual,3
rd edition,Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor,NY;PCR Technology:Principles and Applications for DNA Amplification,ed.HA Erlich,Stockton Press,New York,N.Y.(1989);米国特許第8,110,360号を参照のこと。
5.2.2.1 ゲノム組込み配列
【0111】
好ましい実施形態において、組込みポリヌクレオチドは、第1の相同性領域(HR1)
xおよび第2の相同性領域(HR2)
xを含む外来性核酸(ES)
xを含み、ここで、(HR1)
xおよび(HR2)
xは、宿主細胞ゲノム内の選択された標的部位(TS)
xにおいて、宿主細胞によって媒介される相同組換えを惹起することができる。相同組換えによってゲノムに外来性核酸を組み込むために、組込みポリヌクレオチドは、好ましくは、一方の末端に(HR1)
xを、他方の末端に(HR2)
xを含む。いくつかの実施形態において、(HR1)
xは、選択されたゲノム標的部位(TS)
xの5’領域と相同であり、(HR2)
xは、選択された標的部位(TS)
xの3’領域と相同である。いくつかの実施形態において、(HR1)
xは、選択されたゲノム標的部位(TS)
xの5’領域と約70%、75%、80%、85%、90%、95%または100%相同である。いくつかの実施形態において、(HR2)
xは、選択された標的部位(TS)
xの3’領域と約70%、75%、80%、85%、90%、95%または100%相同である。
【0112】
ある特定の実施形態において、(HR1)
xは、目的の核酸(D)
xに対して5’に位置する。いくつかの実施形態において、(HR1)
xは、(D)
xの5’末端のすぐ隣に位置する。いくつかの実施形態において、(HR1)
xは、(D)
xの5’に対して上流に位置する。ある特定の実施形態において、(HR2)
xは、目的の核酸(D)
xに対して3’に位置する。いくつかの実施形態において、(HR2)
xは、(D)
xの3’末端のすぐ隣に位置する。いくつかの実施形態において、(HR2)
xは、(D)
xの3’に対して下流に位置する。
【0113】
特定のゲノム遺伝子座における組込みポリヌクレオチドの組込みに影響し得る特性としては、ゲノム組込み配列の長さ、切除可能な核酸構築物の全体の長さ、およびゲノム組込み遺伝子座のヌクレオチド配列または位置が挙げられるがこれらに限定されない。例えば、ゲノム組込み配列の一方の鎖と宿主細胞ゲノムにおける特定の遺伝子座の一方の鎖との間の有効なヘテロ二重鎖形成は、ゲノム組込み配列の長さに依存し得る。ゲノム組込み配列の長さについての有効な範囲は、50〜5,000ヌクレオチドである。ゲノム組込み配列とゲノム遺伝子座との間で相同である有効な長さに関する考察については、Hastyら、Mol Cell Biol 11:5586−91(1991)を参照のこと。
【0114】
いくつかの実施形態において、(HR1)
xおよび(HR2)
xは、任意の酵母ゲノム遺伝子座において外来性核酸(ES)
xのゲノム組込みを可能にする十分な長さおよび配列同一性の任意のヌクレオチド配列を含み得る。ある特定の実施形態において、(HR1)
xおよび(HR2)
xの各々は、独立して、約50〜5,000ヌクレオチドからなる。ある特定の実施形態において、(HR1)
xおよび(HR2)
xの各々は、独立して、約100〜2,500ヌクレオチドからなる。ある特定の実施形態において、(HR1)
xおよび(HR2)
xの各々は、独立して、約100〜1,000ヌクレオチドからなる。ある特定の実施形態において、(HR1)
xおよび(HR2)
xの各々は、独立して、約250〜750ヌクレオチドからなる。ある特定の実施形態において、(HR1)
xおよび(HR2)
xの各々は、独立して、約100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、1100、1200、1300、1400、1500、1600、1700、1800、1900、2000、2100、2200、2300、2400、2500、2600、2700、2800、2900、3000、3100、3200、3300、3400、3500、3600、3700、3800、3900、4000、4100、4200、4300、4400、4500、4600、4700、4800、4900または5,000ヌクレオチドからなる。いくつかの実施形態において、(HR1)
xおよび(HR2)
xの各々は、独立して、約500ヌクレオチドからなる。
5.2.2.2 目的の核酸
【0115】
いくつかの実施形態において、組込みポリヌクレオチドは、目的の核酸(D)
xをさらに含む。目的の核酸は、当業者によって有用であるとみなされた任意のDNAセグメントであり得る。例えば、そのDNAセグメントは、宿主ゲノムに「ノックイン」され得る目的の遺伝子を含み得る。他の実施形態において、そのDNAセグメントは、宿主細胞ゲノムの標的部位に当該構築物が組み込まれたときに標的遺伝子を特異的に破壊することができる「ノックアウト」構築物として機能し、それにより、破壊された遺伝子は機能性でなくなる。目的の核酸(D)
xの有用な例としては、タンパク質コード配列、レポーター遺伝子、蛍光マーカーコード配列、プロモーター、エンハンサー、ターミネーター、転写活性化因子、転写抑制因子、転写活性化因子結合部位、転写抑制因子結合部位、イントロン、エキソン、ポリAテイル、マルチクローニングサイト(multiple cloning site)、核局在化シグナル、mRNA安定化シグナル、組込み遺伝子座、エピトープタグコード配列、分解シグナルまたは他の任意の天然に存在するDNA分子もしくは合成DNA分子が挙げられるがこれらに限定されない。いくつかの実施形態において、(D)
xは、天然起源であり得る。あるいは、(D)
xは、インビトロにおいて作製された、完全に合成起源であり得る。さらに、(D)
xは、単離された天然に存在するDNA分子の任意の組み合わせ、または単離された天然に存在するDNA分子と合成DNA分子との任意の組み合わせを含み得る。例えば、(D)
xは、タンパク質コード配列に作動可能に連結された異種性プロモーター、ポリAテイルに連結されたタンパク質コード配列、エピトープタグコード配列とインフレームで連結されたタンパク質コード配列などを含み得る。目的の核酸(D)
xは、クローニングされたDNA(例えば、DNA「ライブラリー」)から、化学合成によって、cDNAクローニングによって、または所望の細胞から精製されたゲノムDNAもしくはそのフラグメントのクローニングによって、またはPCR増幅およびクローニングによって、当該分野で公知の標準的な手順によって得てもよい。例えば、Sambrookら、Molecular Cloning,A Laboratory Manual,3d.ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,New York(2001);Glover,D.M.(ed.),DNA Cloning:A Practical Approach,2d.ed.,MRL Press,Ltd.,Oxford,U.K.(1995)を参照のこと。
【0116】
特定の実施形態において、目的の核酸(D)
xは、選択マーカーをコードする核酸を含まない。これらの実施形態において、本明細書中に記載される方法によって提供される高効率の組込みは、選択培地上での形質転換された細胞の成長を必要とせずに、組込み事象のスクリーニングおよび同定を可能にする。しかしながら、それでもなお選択培地上での成長が望まれる他の実施形態では、目的の核酸(D)
xは、宿主ゲノムへの外来性核酸の組込みを選択するために使用され得る選択マーカーを含み得る。
【0117】
目的の核酸(D)
xは、約300ヌクレオチドから最大約100万ヌクレオチド塩基対までの範囲のサイズを含む任意のサイズであり得る。目的のそのような核酸は、1つまたはそれを超える遺伝子および/またはそれらの関連する制御領域を含み得る。目的の(of interst)これらの核酸は、任意の供給源、例えば、ゲノム供給源またはcDNAライブラリー(組織特異的なcDNAライブラリー、正規化されたcDNAライブラリーおよびサブトラクティブcDNAライブラリーを含む)に由来し得る。ゲノム供給源としては、ウイルス(例えば、HIVおよび肝炎ウイルス)および細胞性病原体などの病原生物を含む様々な生物のゲノム(またはそのフラグメント)が挙げられる。さらに、目的の核酸は、任意の植物または任意の動物を含む任意の生物から得ることができ、それらは、真核生物または原核生物であり得る。ある特定の実施形態において、目的の核酸は、疾患関連遺伝子である遺伝子、すなわち、存在、非存在、発現、発現の欠如、発現レベルの変更、または疾患と相関するかもしくは疾患を引き起こす変化した形態の存在をコードする。
【0118】
いくつかの実施形態において、目的の核酸は、宿主細胞の標的化された対立遺伝子の点変異をコードし、その点変異は、標的化された対立遺伝子へのミスセンスSNPの導入(すなわち、「対立遺伝子交換(allele swap)」)のために利用され得る。いくつかのそのような実施形態において、対立遺伝子交換に向けたヌクレアーゼ(例えば、CRISPR/Cas9およびgRNA)の標的部位の選択は、欠失またはORFへの組込みよりも制約がかなり大きい。好ましい実施形態において、ヌクレアーゼ切断部位は、ゲノム内において唯一であるべきであり、組換えによって、ドナーDNAのフランキング配列ではなく変異配列が取り込まれるように、可能な限り、標的化されたヌクレオチドの近くであるべきである。これは、切断部位を修復する組換えには、所望のSNPの取り込み(incorporation)が必要でなく、それを含む可能性は、切断部位からの距離につれて減少すると予想されるからである。さらに、最適な効率のために、ドナーDNAは、それがヌクレアーゼ(例えば、CRISPR/Cas9およびgRNA)に対する標的ではないようにデザインされるべきである。したがって、ドナーDNAが切断を免れるため、および同時に、組換え事象が所望のSNPを含むチャンスを改善するために、異種ブロックアプローチが利用され得、このアプローチでは、標的部位と点変異との間のコドンにサイレント変異を作製し、所望のSNPを取り除く組換え事象の潜在性を減少させる。ドナーDNAは、中央の「異種ブロック」を取り囲むフランキングホモロジーを有してデザインされ得る。その異種ブロックは、ヌクレアーゼ標的部位を取り囲む配列にサイレント変異を導入するものであり、いくつかの目的にかなうものである。まず、異種ブロックは、ドナーDNAが切断されないように、ヌクレアーゼ(例えば、CRISPR−Cas9)の認識にとって不可欠な塩基を除去する。さらに、異種ブロックの組込みによって、PCRによって候補クローンを同定する新規のプライマー結合部位が提供される。
図15は、「異種ブロック」の状況における、CRISPR/Cas9によって媒介される点変異の導入についての概略図を提供している。標的化されているアミノ酸が、四角で囲まれており、隣接する切断部位には、切断部位およびPAM配列という注釈が付けられている(上のパネル)。サイレントコドン変化の異種ブロックおよびフランキングホモロジーの状況において所望の点変異を含むドナーDNAは、60merのオリゴをアニーリングして伸長することによって(中央のパネル)またはより大きなクローニングされた構築物を用いて、合成的に作製され得る。ドナーDNAの組込みによって、所望の点変異がもたらされる(下のパネル)。
5.2.3.ヌクレアーゼ
【0119】
本明細書中に記載される方法のいくつかの実施形態において、宿主細胞ゲノムは、選択された標的部位内の指定の領域を切断することができる、すなわち、断裂をもたらすことができる1つまたはそれを超えるヌクレアーゼと接触する。いくつかの実施形態において、断裂は、一本鎖断裂であり、つまり、標的部位のDNA鎖の両方ではなく一方の鎖が切断される(すなわち、「ニック」が入る)。いくつかの実施形態において、断裂は、二本鎖断裂である。いくつかの実施形態において、断裂誘導物質(break inducing agent)は、特異的なポリヌクレオチド認識配列を認識し、および/またはそれに結合して、その認識配列においてまたはその認識配列近傍において断裂をもたらす任意の作用物質である。断裂誘導物質の例としては、エンドヌクレアーゼ、部位特異的リコンビナーゼ、トランスポザーゼ、トポイソメラーゼおよびジンクフィンガーヌクレアーゼが挙げられるがこれらに限定されず、それらの改変された誘導体、バリアントおよびフラグメントも含む。
【0120】
いくつかの実施形態において、1つまたはそれを超えるヌクレアーゼの各々は、選択された標的部位(TS)
x内の指定の領域に断裂を引き起こすことができる。いくつかの実施形態において、ヌクレアーゼは、(HR1)
xおよび(HR2)
xとそれぞれ相同性を共有する(TS)
xの5’領域と3’領域との間に位置する領域において断裂を引き起こすことができる。他の実施形態において、ヌクレアーゼは、(TS)
xの5’および3’領域の上流または下流に位置する領域において断裂を引き起こすことができる。
【0121】
認識配列は、断裂誘導物質によって特異的に認識および/または結合される任意のポリヌクレオチド配列である。認識部位配列の長さは、変動し得、例えば、少なくとも10、12、14、16、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70ヌクレオチド長またはそれを超える長さの配列を含む。
【0122】
いくつかの実施形態において、認識配列は、パリンドロームであり、つまり、一方の鎖における配列が、相補鎖において逆方向に同じ配列を読む。いくつかの実施形態において、ニック/切断部位は、認識配列内に存在する。他の実施形態において、ニック/切断部位は、認識配列の外側に存在する。いくつかの実施形態において、切断は、平滑末端をもたらす。他の実施形態において、切断は、一本鎖オーバーハング、すなわち、「粘着末端」をもたらし、それは、5’オーバーハングまたは3’オーバーハングであり得る。
【0123】
いくつかの実施形態において、選択された標的部位内の認識配列は、宿主細胞ゲノムにとって内在性であり得るか、または外来性であり得る。認識部位が、内在性配列であるとき、それは、天然に存在する断裂誘導物質、すなわち天然の断裂誘導物質によって認識される認識配列であり得る。あるいは、内在性の認識部位は、内在性の認識配列を特異的に認識して断裂をもたらすようにデザインされたまたは選択された、改変されたまたは操作された断裂誘導物質によって認識および/または結合され得る。いくつかの実施形態において、改変された断裂誘導物質は、天然に存在する天然の断裂誘導物質に由来する。他の実施形態において、改変された断裂誘導物質は、人工的に作製されるかまたは合成される。そのような改変されたまたは操作された断裂誘導物質を選択するための方法は、当該分野で公知である。例えば、タンパク質(複数可)のアミノ酸配列バリアントは、そのDNAにおける変異によって調製され得る。変異誘発およびヌクレオチド配列の変更のための方法としては、例えば、Kunkel,(1985)Proc Natl Acad Sci USA 82:488−92;Kunkelら(1987)Meth Enzymol 154:367−82;米国特許第4,873,192号;Walker and Gaastra,eds.(1983)Techniques in Molecular Biology(MacMillan Publishing Company,New York)およびそれらの中で引用された参考文献が挙げられる。タンパク質の生物学的活性に影響する可能性が低いアミノ酸置換に関する指針は、例えば、Dayhoffら(1978)Atlas of Protein Sequence and Structure(Natl Biomed Res Found,Washington,D.C.)のモデルに見出される。保存的置換(例えば、1つのアミノ酸を、同様の特性を有する別のアミノ酸と交換すること)が、好ましいことがある。保存的な欠失、挿入およびアミノ酸置換は、タンパク質の特色に根本的な変化をもたらすとは予想されず、任意の置換、欠失、挿入またはそれらの組み合わせの影響は、日常的なスクリーニングアッセイによって評価され得る。二本鎖断裂誘導活性に対するアッセイは、公知であり、一般に、認識部位を含むDNA基質に対するその作用物質の全体的な活性および特異性を測定する。
5.2.3.1 クラスター化規則性散在短パリンドローム反復(CRISPR)
【0124】
本明細書中に提供される方法のいくつかの実施形態において、ヌクレアーゼは、CRISPR/Cas由来RNAガイドエンドヌクレアーゼである。CRISPRは、タイプII原核生物CRISPR(クラスター化規則性散在短パリンドローム反復)適応免疫系に基づくゲノム編集ツールである。真正細菌および古細菌におけるCRISPRシステムは、小さいRNAおよびCRISPR関連(Cas)エンドヌクレアーゼを用いて、侵入してきた外来DNAを標的化し、切断する。例えば、Bhayaら、Annu Rev Genet 45:273−297(2011);Ternsら、Curr Opin Microbiol 14(3):321−327(2011);およびWiedenheftら、Nature 482(7385):331−338を参照のこと。細菌では、CRISPR遺伝子座は、スペーサーと呼ばれる外来性DNAのセグメント(約30bp長)によって分断された一連のリピートから構成される。リピート−スペーサーアレイは、長い前駆体として転写され、リピート配列内でプロセシングされることにより、CRISPRヌクレアーゼによって切断される標的配列(プロトスペーサーとしても知られる)を特定する小さいcrRNAを生成する。次いで、CRISPRスペーサーを用いることにより、RNAまたはDNAレベルにおいて、外来性の遺伝的エレメントが認識され、サイレンシングされる。標的領域の3’末端におけるすぐ下流の配列モチーフが、切断にとって必須であり、それは、プロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)として知られている。そのPAMは、標的DNAに存在するが、それを標的としているcrRNAには存在しない。
【0125】
最も単純なCRISPRシステムの1つは、Streptococcus pyognes由来のタイプII CRISPRシステムである。RNAにガイドされる外来DNA切断のためには、CRISPR関連Cas9エンドヌクレアーゼ、および2つの小さなRNA、すなわち標的相補性(target−complimentary)CRISPR RNA(crRNA);およびトランス作用性crRNA(tracrRNA)があれば十分である。タイプII CRISPR−Casシステムの顕著な特徴のタンパク質であるCas9タンパク質は、RuvCヌクレアーゼおよびHNHヌクレアーゼに相同な2つのヌクレアーゼドメインを含む大きなモノマーDNAヌクレアーゼである。Cas9は、crRNA:tracrRNA複合体によって、PAM(プロトスペーサー隣接モチーフ)配列モチーフに隣接したDNA標的配列にガイドされる。成熟したcrRNAは、tracrRNAと塩基対形成して、Cas9を標的DNAに向ける2−RNA構造を形成する。crRNAガイド配列に相補的な部位では、Cas9 HNHヌクレアーゼドメインが、相補鎖を切断するのに対し、Cas9 RuvC様ドメインが、非相補鎖を切断して、標的DNAに二本鎖断裂をもたらす。例えば、Deltchevaら、Nature 47(7340):602−607(2011)を参照のこと。
【0126】
最近の研究は、crRNA:tracrRNA複合体を模倣する単一のガイドRNA(gRNA)キメラを、ゲノム編集ツールとしてCas9とともに使用することにより、Cas9をガイドして部位特異的DNA二本鎖断裂をインビトロにおいて導入することができることを示している。標的ゲノム内の切断の特異性は、天然のcrRNA:tracrRNA複合体を模倣するキメラガイドRNA分子(gRNA)のスペーサー様部分によって決定される。したがって、機能的なCRISPR/Casシステムにおける構成要素の最小数は2:Cas9およびsgRNAである。その5’末端に配置されたsgRNAガイド配列は、DNA標的特異性を付与する。ゆえに、このガイド配列を改変することによって、種々の標的特異性を有するsgRNAを作製することが可能である。ガイド配列のカノニカルな長さは、20bpである。その結果として、DNA標的もまた、20bpであり、その後に、コンセンサスNGGを伴うPAM配列が続く。この改変されたCRISPRシステムの使用は、インビトロ(例えば、Jinekら、Science 337(6096):816−821(2012)を参照のこと)、哺乳動物細胞株(例えば、Maliら、Science 339(6121):823−826(2013),Jinekら、Elife 2:e00417(2013);Congら、Science 339(6121):819−823(2013);およびChoら、Nat Biotechnol 31(3):230−232(2013)を参照のこと)、細菌(例えば、Jiangら、Nat Biotechnol 31(3):233−239(2013);およびGasiunasら、Proc Natl Acad Sci USA 109(39):E2579−E2586.(2012)を参照のこと)、酵母(例えば、DiCarloら、Nucleic Acid Res 41(7):4336−4343(2013)を参照のこと)、ゼブラフィッシュ(例えば、Hwangら、Nat Biotechnol 31(3):227−229(2013);およびChangら、Cell Res 23(4):465−472(2013)を参照のこと)、マウス(例えば、Wangら、Cell 153(4):910−918(2013を参照のこと)および植物(例えば、Belhajら、Plant Methods 9:39(2013)を参照のこと)において実証されている。
【0127】
Cas9ヌクレアーゼは、(1)異種性宿主内での高発現のためのコドン最適化;(2)適切な区画化のための核局在化シグナル(NLS)への融合;および(3)ヌクレアーゼを鎖特異的ニッカーゼに変換するためのHNHまたはRuvCドメインのいずれかの部位特異的変異誘発によって改変され得る。RuvCまたはHNHモチーフいずれかにおけるCas9の部位特異的変異誘発は、鎖切断特異性を示し、それにより、野生型エンドヌクレアーゼに加えて2つの鎖特異的ニッカーゼが提供され、DNAの標的化された一本鎖断裂が可能になった。例えば、Jinekら、Science 337(6096):816−821(2012)およびGasiunasら、Proc Natl Acad Sci USA 109(39):E2579−E2586.(2012)を参照のこと。ジンクフィンガーヌクレアーゼおよびTALENについて報告されたように、一本鎖だけを断裂するニッカーゼとして機能するようにこのヌクレアーゼを改変することにより、オフターゲット切断による毒性が低下し、非HR機構、例えば、NHEJによる断裂修復の割合も低下し得る。例えば、Jinekら、Science 337(6096):816−821(2012)を参照のこと。
【0128】
当該分野で公知のいずれのCRISPR/Casシステムも、本明細書中に提供される方法および組成物におけるヌクレアーゼとしての用途が見出されている。非常に多様なCRISPR−Casシステムは、コアエレメントの内容および配列に基づいて、3つの主なタイプに分類され、それらはさらに10のサブタイプに細分される(例えば、Makarovaら、Nat Rev Microbiol 9:467−77(2011)を参照のこと)。外来核酸のcrRNA媒介性サイレンシングに関わる核タンパク質複合体の構造的な構成および機能は、異なるCRISPR/Casタイプの間で異なる(Wiedenheftら、Nature 482:331−338(2012)を参照のこと)。タイプl−Eシステムでは、大腸菌によって例証されるように、crRNAが、Cascade(抗ウイルス防御のためのCRISPR関連複合体(CRISPR−associated complex for antiviral defence))と呼ばれるマルチサブユニットエフェクター複合体に取り込まれ(Brounsら、Science 321:960−4(2008))、その複合体が、標的DNAに結合し、シグネチャーCas3タンパク質による分解を引き起こす(Sinkunasら、EMBO J 30:1335^2(2011);Beloglazovaら、EMBO J 30:616−27(2011))。Sulfolobus solfataricusおよびPyrococcus furiosusのタイプIII CRISPR/Casシステムでは、Cas RAMPモジュール(Cmr)およびcrRNA複合体が、インビトロにおいて合成RNAを認識し、切断する(Haleら、Mol Cell 45:292−302(2012);Zhangら、Mol Cell,45:303−13(2012))一方で、Staphylococcus epidermidisのCRISPR/Casシステムは、インビボにおいてDNAを標的化する(Marraffini & Sontheimer,Science.322:1843−5(2008))。タイプII CRISPR/CasシステムによるDNAサイレンシング、より詳細には、Streptococcus thermophilus DGCC7710のCRISPR3/Casシステムに関わるRNP複合体(Horvath & Barrangou,Science 327:167−70(2010))は、4つのcas遺伝子:cas9、casl、cas2およびcsn2からなり、これらは、12個のリピート−スペーサー単位の上流に位置する。Cas9(以前はcas5またはcsnlという名称だった)は、タイプIIシステムのシグネチャー遺伝子である(Makarovaら、Nat Rev Microbiol 9:467−77(2011))。
【0129】
本明細書中に提供される方法および組成物における用途が見出されるCRISPRシステムには、国際公開番号WO2013/142578A1およびWO2013/098244A1(これらの内容は、その全体が本明細書に援用される)に記載されているものも含まれる。
5.2.3.2 転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)
【0130】
本明細書中に提供される方法のいくつかの実施形態において、1つまたはそれを超える上記ヌクレアーゼは、TAL−エフェクターDNA結合ドメイン−ヌクレアーゼ融合タンパク質(TALEN)である。Xanthomonas属の植物病原菌のTALエフェクターは、宿主DNAに結合し、エフェクター特異的宿主遺伝子を活性化することによって、病気において重要な役割を果たし、すなわち、防御を引き起こす。例えば、Guら(2005)Nature 435:1122−5;Yangら(2006)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 103:10503−8;Kayら(2007)Science 318:648−51;Sugioら(2007)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 104:10720−5;Romerら(2007)Science 318:645−8;Bochら(2009)Science 326(5959):1509−12;およびMoscou and Bogdanove,(2009)326(5959):1501を参照のこと。TALエフェクターは、1つまたはそれを超えるタンデム反復ドメインを介して配列特異的様式でDNAと相互作用するDNA結合ドメインを含む。その反復配列は、通常、34アミノ酸を含み、その反復は、通常、互いに91〜100%相同である。その反復の多型が、通常12および13位に位置し、12および13位の反復可変二残基(diresidue)の同一性とTAL−エフェクターの標的配列における連続したヌクレオチドの同一性との間に1対1の対応が存在すると見られる。
【0131】
TAL−エフェクターDNA結合ドメインは、所望の標的配列に結合するように操作され得、ヌクレアーゼドメイン、例えば、タイプII制限エンドヌクレアーゼに由来するヌクレアーゼドメイン、通常、FokIなどのタイプII制限エンドヌクレアーゼ由来の非特異的な切断ドメインに融合され得る(例えば、Kimら(1996)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 93:1156−1160を参照のこと)。他の有用なエンドヌクレアーゼとしては、例えば、HhaI、HindIII、Nod、BbvCI、EcoRI、BglIおよびAlwIが挙げられ得る。したがって、好ましい実施形態において、TALENが、特異的ヌクレオチド配列内のまたは特異的ヌクレオチド配列に隣接した標的DNAを切断するように、TALENは、組み合わさってその標的DNA配列内の特異的ヌクレオチド配列に結合する複数のTALエフェクター反復配列を含むTALエフェクタードメインを含む。本明細書中に提供される方法にとって有用なTALENとしては、WO10/079430および米国特許出願公開番号2011/0145940に記載されているものが挙げられる。
【0132】
いくつかの実施形態において、標的DNA内の特異的ヌクレオチド配列に結合するTALエフェクタードメインは、10個またはそれを超えるDNA結合リピート、好ましくは、15個またはそれを超えるDNA結合リピートを含み得る。いくつかの実施形態において、各DNA結合リピートは、標的DNA配列における塩基対の認識を決定する反復可変二残基(RVD)を含み、ここで、各DNA結合リピートは、標的DNA配列における1塩基対の認識に関与し、RVDは、Cを認識するためのHD;Tを認識するためのNG;Aを認識するためのNI;GまたはAを認識するためのNN;AまたはCまたはGまたはTを認識するためのNS;CまたはTを認識するためのN
*(ここで、
*は、このRVDの2番目の位置におけるギャップを表す);Tを認識するためのHG;Tを認識するためのH
*(ここで、
*は、このRVDの2番目の位置におけるギャップを表す);Tを認識するためのIG;Gを認識するためのNK;Cを認識するためのHA;Cを認識するためのND;Cを認識するためのHI;Gを認識するためのHN;Gを認識するためのNA;GまたはAを認識するためのSN;およびTを認識するためのYGのうちの1つまたはそれを超えるものを含む。
【0133】
本明細書中に提供される方法のいくつかの実施形態において、1つまたはそれを超える上記ヌクレアーゼは、部位特異的リコンビナーゼである。リコンビナーゼとも称される部位特異的リコンビナーゼは、その適合性の組換え部位間の保存的な部位特異的組換えを触媒するポリペプチドであり、それには、天然のポリペプチドならびに活性を保持する誘導体、バリアントおよび/またはフラグメント、ならびに活性を保持するリコンビナーゼをコードする天然のポリヌクレオチド、誘導体、バリアントおよび/またはフラグメントが含まれる。部位特異的リコンビナーゼおよびそれらの認識部位の概説については、Sauer(1994)Curr Op Biotechnol 5:521−7;およびSadowski,(1993)FASEB 7:760−7を参照のこと。いくつかの実施形態において、リコンビナーゼは、セリンリコンビナーゼまたはチロシンリコンビナーゼである。いくつかの実施形態において、リコンビナーゼは、インテグラーゼファミリーまたはレゾルバーゼ(Resolvase)ファミリーに由来する。いくつかの実施形態において、リコンビナーゼは、FLP、Cre、ラムダインテグラーゼおよびRからなる群より選択されるインテグラーゼである。インテグラーゼファミリーの他のメンバーについては、例えば、Espositoら(1997)Nucleic Acids Res 25:3605−14およびAbremskiら(1992)Protein Eng 5:87−91を参照のこと。リコンビナーゼおよびバリアントの動態、補因子の相互作用および要件、発現、最適条件ならびに/または認識部位特異性を改変するための方法ならびにリコンビナーゼおよびバリアントの活性についてスクリーニングするための方法は、公知であり、例えば、Millerら(1980)Cell 20:721−9;Lange−Gustafson and Nash,(1984)J Biol Chem 259:12724−32;Christら(1998)J Mol Biol 288:825−36;Lorbachら(2000)J Mol Biol 296:1175−81;Vergunstら(2000)Science 290:979−82;Dorgaiら(1995)J Mol Biol 252:178−88;Dorgaiら(1998)J Mol Biol 277:1059−70;Yaguら(1995)J Mol Biol 252:163−7;Sclimenteら(2001)Nucleic Acids Res 29:5044−51;Santoro and Schultze,(2002)Proc Natl Acad Sci USA 99:4185−90;Buchholz and Stewart,(2001)Nat Biotechnol 19:1047−52;Voziyanovら(2002)Nucleic Acids Res 30:1656−63;Voziyanovら(2003)J Mol Biol 326:65−76;Klippelら(1988)EMBO J 7:3983−9;Arnoldら(1999)EMBO J 18:1407−14;WO03/08045;WO99/25840;およびWO99/25841を参照のこと。認識部位は、約30ヌクレオチドの最小部位から数百ヌクレオチドに及ぶ。天然に存在する部位およびバリアントを含む、リコンビナーゼについての任意の認識部位を用いることができる。バリアント認識部位は、公知である。例えば、Hoessら(1986)Nucleic Acids Res 14:2287−300;Albertら(1995)Plant J 7:649−59;Thomsonら(2003)Genesis 36:162−7;Huangら(1991)Nucleic Acids Res 19:443−8;Siebler and Bode,(1997)Biochemistry 36:1740−7;Schlake and Bode,(1994)Biochemistry 33:12746−51;Thygarajanら(2001)Mol Cell Biol 21:3926−34;Umlauf and Cox,(1988)EMBO J 7:1845−52;Lee and Saito,(1998)Gene 216:55−65;WO01/23545;WO99/25821;WO99/25851;WO01/11058;WO01/07572および米国特許第5,888,732号を参照のこと。
【0134】
本明細書中に提供される方法のいくつかの実施形態において、1つまたはそれを超える上記ヌクレアーゼは、トランスポザーゼである。トランスポザーゼは、ゲノム内の1つの位置から別の位置へのトランスポゾンの転位を媒介するポリペプチドである。トランスポザーゼは、通常、二本鎖断裂を誘導してトランスポゾンを切り取り、末端近くの反復を認識し、切り取られたトランスポゾンの末端をつなぎ合わせ、いくつかの系では、転位の間に末端をつなぎ合わせるために他のタンパク質も必要とされる。トランスポゾンおよびトランスポザーゼの例としては、トウモロコシ由来のAc/Ds、Dt/rdt、Mu−M1/MnおよびSpm(En)/dSpmエレメント、キンギョソウ由来のTamエレメント、バクテリオファージ由来のMuトランスポゾン、細菌のトランスポゾン(Tn)および挿入配列(IS)、酵母のTyエレメント(レトロトランスポゾン)、Arabidopsis由来のTa1エレメント(レトロトランスポゾン)、Drosophila由来のPエレメントトランスポゾン(Gloorら(1991)Science 253:1110−1117)、Drosophila由来のCopia、MarinerおよびMinosエレメント、イエバエ由来のHermesエレメント、Trichplusia ni由来のPiggyBackエレメント、C.elegans由来のTc1エレメント、ならびにマウス由来のIAPエレメント(レトロトランスポゾン)が挙げられるがこれらに限定されない。
5.2.3.3 ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)
【0135】
本明細書中に提供される方法のいくつかの実施形態において、1つまたはそれを超える上記ヌクレアーゼは、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)である。ZFNは、ジンクフィンガーDNA結合ドメインおよび断裂誘導物質ドメインを含む操作された断裂誘導物質である。操作されたZFNは、二量体化したときに活性になる2つのジンクフィンガーアレイ(ZFA)からなり、その各々は、非特異的なエンドヌクレアーゼの単一のサブユニット(例えば、FokI酵素由来のヌクレアーゼドメイン)に融合している。通常、単一のZFAは、3または4つジンクフィンガードメインからなり、その各々は、特定のヌクレオチドトリプレット(GGC、GATなど)を認識するようにデザインされている。したがって、2つの「3フィンガー」ZFAから構成されたZFNは、18塩基対の標的部位を認識することができ;18塩基対の認識配列は、ヒトおよび植物のゲノムなどの大きなゲノムの中でさえも、通常唯一の配列である。2つのFokIヌクレアーゼモノマーの共局在化および二量体化を誘導することによって、ZFNは、標的化された遺伝子座においてDNAに断裂をもたらす機能的な部位特異的エンドヌクレアーゼを生成する。
【0136】
有用なジンクフィンガーヌクレアーゼとしては、公知のものおよび本明細書中に記載される1つまたはそれを超える標的部位(TS)に対して特異性を有するように操作されたものが挙げられる。ジンクフィンガードメインは、例えば、宿主細胞ゲノムの標的部位内の、選択されたポリヌクレオチド認識配列に特異的に結合するポリペプチドをデザインするのに適している。ZFNは、非特異的なエンドヌクレアーゼドメイン、例えば、タイプIIsエンドヌクレアーゼ(例えば、HOまたはFokI)由来のヌクレアーゼドメインに連結された操作されたDNA結合ジンクフィンガードメインからなる。あるいは、操作されたジンクフィンガーDNA結合ドメインは、他の断裂誘導物質またはDNAニッキング/切断活性を保持するその誘導体に融合され得る。例えば、このタイプの融合を用いることにより、断裂誘導物質を異なる標的部位に向けること、ニックもしくは切断部位の位置を変更すること、その誘導物質をより短い標的部位に向けること、またはその誘導物質をより長い標的部位に向けることができる。いくつかの例において、ジンクフィンガーDNA結合ドメインは、部位特異的リコンビナーゼ、トランスポザーゼ、またはDNAニッキングおよび/もしくは切断活性を保持するそれらの誘導体に融合される。転写活性化因子ドメイン、転写抑制因子ドメインおよびメチラーゼを含むさらなる機能性が、ジンクフィンガー結合ドメインに融合され得る。いくつかの実施形態において、ヌクレアーゼドメインの二量体化が、切断活性に必要である。
【0137】
各ジンクフィンガーは、標的DNAの中の3つの連続した塩基対を認識する。例えば、3フィンガードメインは、連続した9ヌクレオチドの配列を認識するので、このヌクレアーゼの二量体化の要件によって、2セットのジンクフィンガートリプレットを用いることにより、18ヌクレオチドの認識配列に結合する。有用なデザイナージンクフィンガーモジュールとしては、様々なGNNおよびANNトリプレットを認識するもの(Dreierら(2001)J Biol Chem 276:29466−78;Dreierら(2000)J Mol Biol 303:489−502;Liuら(2002)J Biol Chem 277:3850−6)、ならびに様々なCNNまたはTNNトリプレットを認識するもの(Dreierら(2005)J Biol Chem 280:35588−97;Jamiesonら(2003)Nature Rev Drug Discov 2:361−8)が挙げられる。Duraiら(2005)Nucleic Acids Res 33:5978−90;Segal,(2002)Methods 26:76−83;Porteus and Carroll,(2005)Nat Biotechnol 23:967−73;Paboら(2001)Ann Rev Biochem 70:313−40;Wolfeら(2000)Ann Rev Biophys Biomol Struct 29:183−212;Segal and Barbas,(2001)Curr Opin Biotechnol 12:632−7;Segalら(2003)Biochemistry 42:2137−48;Beerli and Barbas,(2002)Nat Biotechnol 20:135−41;Carrollら(2006)Nature Protocols 1:1329;Ordizら(2002)Proc Natl Acad Sci USA 99:13290−5;Guanら(2002)Proc Natl Acad Sci USA 99:13296−301;WO2002099084;WO00/42219;WO02/42459;WO2003062455;US20030059767;米国特許出願公開番号2003/0108880;米国特許第6,140,466号、同第6,511,808号および同第6,453,242号も参照のこと。有用なジンクフィンガーヌクレアーゼとしては、WO03/080809;WO05/014791;WO05/084190;WO08/021207;WO09/042186;WO09/054985;およびWO10/065123に記載されているものも挙げられる。
5.2.3.4 エンドヌクレアーゼ
【0138】
本明細書中に提供される方法のいくつかの実施形態において、1つまたはそれを超える上記ヌクレアーゼは、エンドヌクレアーゼである。エンドヌクレアーゼは、ポリヌクレオチド鎖内のホスホジエステル結合を切断する酵素であり、それには、塩基を損傷せずに特定の部位においてDNAを切断する制限エンドヌクレアーゼが含まれる。制限エンドヌクレアーゼには、タイプI、タイプII、タイプIIIおよびタイプIVエンドヌクレアーゼが含まれ、それらはさらにサブタイプを含む。制限エンドヌクレアーゼは、例えば、REBASEデータベース(rebase.neb.comのウェブページ;Robertsら(2003)Nucleic Acids Res 31:418−20)、Robertsら(2003)Nucleic Acids Res 31:1805−12およびBelfortら(2002)Mobile DNA II,pp.761−783,Eds.Craigieら、ASM Press,Washington,D.Cにさらに記載され、分類されている。
【0139】
本明細書中で使用されるとき、エンドヌクレアーゼには、制限エンドヌクレアーゼのような、特定の認識配列に結合して切断するホーミングエンドヌクレアーゼも含まれる。しかしながら、ホーミングエンドヌクレアーゼの認識部位は、通常、より長く、例えば、約18bpまたはそれより長い。メガヌクレアーゼとしても知られるホーミングエンドヌクレアーゼは、保存配列モチーフに基づいて、以下のファミリー:LAGLIDADG(配列番号1)ホーミングエンドヌクレアーゼ、HNHホーミングエンドヌクレアーゼ、His−Cysボックスホーミングエンドヌクレアーゼ、GIY−YIG(配列番号2)ホーミングエンドヌクレアーゼおよびシアノバクテリアホーミングエンドヌクレアーゼに分類されている。例えば、Stoddard,Quarterly Review of Biophysics 38(1):49−95(2006)を参照のこと。これらのファミリーは、保存されたヌクレアーゼ活性部位コアモチーフおよび触媒機構、生物学的分布およびゲノム分布、ならびに非ホーミングヌクレアーゼ系とのより広い関係性が大きく異なる。例えば、Guhan and Muniyappa(2003)Crit Rev Biochem Mol Biol 38:199−248;Lucasら(2001)Nucleic Acids Res 29:960−9;Jurica and Stoddard,(1999)Cell Mol Life Sci 55:1304−26;Stoddard,(2006)Q Rev Biophys 38:49−95;およびMoureら(2002)Nat Struct Biol 9:764を参照のこと。これらのファミリー由来の有用な特定のホーミングエンドヌクレアーゼの例としては、I−CreI(Rochaixら、Nucleic Acids Res.13:975−984(1985)を参照のこと)、I−MsoI(Lucasら、Nucleic Acids Res.29:960−969(2001)を参照のこと)、I−SceI(Fouryら、FEBS Lett.440:325−331(1998)を参照のこと)、I−SceIV(Moranら、Nucleic Acids Res.20:4069−4076(1992)を参照のこと)、H−DreI(Chevalierら、Mol.Cell 10:895−905(2002)を参照のこと)、I−HmuI(Goodrich−Blairら、Cell 63:417−424(1990);Goodrich−Blairら、Cell 84:211−221(1996)を参照のこと)、I−PpoI(Muscarellaら、Mol.Cell.Biol.10:3386−3396(1990)を参照のこと)、I−DirI(Johansenら、Cell 76:725−734(1994);Johansen,Nucleic Acids Res.21:4405(1993)を参照のこと)、I−NjaI(Eldeら、Eur.J.Biochem.259:281−288(1999);De Jonckheereら、J.Eukaryot.Microbiol.41:457−463(1994)を参照のこと)、I−NanI(Eldeら、S.Eur.J.Biochem.259:281−288(1999);De Jonckheereら、J.Eukaryot.Microbiol.41:457−463(1994))を参照のこと)、I−NitI(De Jonckheereら、J.Eukaryot.Microbiol.41:457−463(1994);Eldeら、Eur.J.Biochem.259:281−288(1999)を参照のこと)、I−TevI(Chuら、Cell 45:157−166(1986)を参照のこと)、I−TevII(Tomaschewskiら、Nucleic Acids Res.15:3632−3633(1987)を参照のこと)、I−TevIII(Eddyら、Genes Dev.5:1032−1041(1991)を参照のこと)、F−TevI(Fujisawaら、Nucleic Acids Res.13:7473−7481(1985)を参照のこと)、F−TevII(Kadyrovら、Dokl.Biochem.339:145−147(1994);Kaliman,Nucleic Acids Res.18:4277(1990)を参照のこと)、F−CphI(Zengら、Curr.Biol.19:218−222(2009)を参照のこと)、PI−MgaI(Savesら、Nucleic Acids Res.29:4310−4318(2001)を参照のこと)、I−CsmI(Colleauxら、Mol.Gen.Genet.223:288−296(1990)を参照のこと)、I−CeuI(Turmelら、J.Mol.Biol.218:293−311(1991))を参照のこと)およびPI−SceI(Hirataら、J.Biol.Chem.265:6726−6733(1990)を参照のこと)が挙げられるがこれらに限定されない。
【0140】
本明細書中に記載される方法のいくつかの実施形態において、ホーミングエンドヌクレアーゼの天然に存在するバリアントおよび/または操作された誘導体が使用される。動態、補因子相互作用、発現、最適条件および/または認識部位特異性を改変するための方法、ならびに活性についてスクリーニングするための方法は、公知である。例えば、Epinatら(2003)Nucleic Acids Res 31:2952−62;Chevalierら(2002)Mol Cell 10:895−905;Gimbleら(2003)Mol Biol 334:993−1008;Seligmanら(2002)Nucleic Acids Res 30:3870−9;Sussmanら(2004)J Mol Biol 342:31−41;Rosenら(2006)Nucleic Acids Res 34:4791−800;Chamesら(2005)Nucleic Acids Res 33:e178;Smithら(2006)Nucleic Acids Res 34:e149;Gruenら(2002)Nucleic Acids Res 30:e29;Chen and Zhao,(2005)Nucleic Acids Res 33:e154;WO2005105989;WO2003078619;WO2006097854;WO2006097853;WO2006097784;およびWO2004031346を参照のこと。有用なホーミングエンドヌクレアーゼには、WO04/067736;WO04/067753;WO06/097784;WO06/097853;WO06/097854;WO07/034262;WO07/049095;WO07/049156;WO07/057781;WO07/060495;WO08/152524;WO09/001159;WO09/095742;WO09/095793;WO10/001189;WO10/015899;およびWO10/046786に記載されているものも含まれる。
【0141】
任意のホーミングエンドヌクレアーゼを、二本鎖断裂誘導物質として使用することができ、それらとしては、H−DreI、I−SceI、I−SceII、I−SceIII、I−SceIV、I−SceV、I−SceVI、I−SceVII、I−CeuI、I−CeuAIIP、I−CreI、I−CrepsbIP、I−CrepsbIIP、I−CrepsbIIIP、I−CrepsbIVP、I−TliI、I−PpoI、Pi−PspI、F−SceI、F−SceII、F−SuvI、F−CphI、F−TevI、F−TevII、I−AmaI、I−AniI、I−ChuI、I−CmoeI、I−CpaI、I−CpaII、I−CsmI、I−CvuI、I−CvuAIP、I−DdiI、I−DdiII、I−DirI、I−DmoI、I−HmuI、I−HmuII、I−HsNIP、I−LlaI、I−MsoI、I−NaaI、I−NanI、I−NclIP、I−NgrIP、I−NitI、I−NjaI、I−Nsp236IP、I−PakI、I−PboIP、I−PcuIP、I−PcuAI、I−PcuVI、I−PgrIP、I−PobIP、I−PorI、I−PorIIP、I−PbpIP、I−SpBetaIP、I−ScaI、I−SexIP、I−SneIP、I−SpomI、I−SpomCP、I−SpomIP、I−SpomIIP、I−SquIP、I−Ssp68031、I−SthPhiJP、I−SthPhiST3P、I−SthPhiSTe3bP、I−TdeIP、I−TevI、I−TevII、I−TevIII、I−UarAP、I−UarHGPAIP、I−UarHGPA13P、I−VinIP、I−ZbiIP、PI−MgaI、PI−MtuI、PI−MtuHIP PI−MtuHIIP、PI−PfuI、PI−PfuII、PI−PkoI、PI−PkoII、PI−Rma43812IP、PI−SpBetaIP、PI−SceI、PI−TfuI、PI−TfuII、PI−ThyI、PI−TliIもしくはPI−TliII、またはそれらの任意のバリアントもしくは誘導体が挙げられるがこれらに限定されない。
【0142】
いくつかの実施形態において、エンドヌクレアーゼは、天然または内在性の認識配列に結合する。他の実施形態において、エンドヌクレアーゼは、非天然または外来性の認識配列に結合して天然または内在性の認識配列には結合しない改変されたエンドヌクレアーゼである。
5.2.3.5 ゲノム標的部位
【0143】
本明細書中に提供される方法では、ゲノム標的部位近傍またはゲノム標的部位内に二本鎖断裂を引き起こすことができるヌクレアーゼが宿主細胞に導入され、それによって、その切断部位またはその切断部位近傍における相同組換えの頻度が大幅に上昇する。好ましい実施形態において、ヌクレアーゼの認識配列は、宿主細胞ゲノムの中の標的部位にのみ存在し、それによって、そのヌクレアーゼによるあらゆるオフターゲットのゲノムの結合および切断が最小限になる。
【0144】
いくつかの実施形態において、ゲノム標的部位は、宿主細胞にとって内在性であり、例えば、天然の遺伝子座である。いくつかの実施形態において、天然のゲノム標的部位は、本明細書中に提供される組込みの方法において使用されるヌクレアーゼのタイプに従って選択される。
【0145】
使用されるヌクレアーゼが、CRISPR/Cas由来のRNAガイドエンドヌクレアーゼである場合、最適な標的部位は、使用される特定のCRISPR−Casエンドヌクレアーゼの標的認識に対する要件に従って選択され得る。例えば、Cas9の標的認識は、標的DNAの中の「プロトスペーサー」配列とcrRNAの中の残りのスペーサー配列との間に相補性が検出されると生じる。正しいプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)が3’末端にも存在する場合だけ、Cas9は、そのDNAを切断する。異なるタイプIIシステムは、異なるPAM要件を有する。S.pyogenesシステムは、NGG配列を必要とし、ここで、Nは、任意のヌクレオチドであり得る。S.thermophilusタイプIIシステムは、それぞれNGGNGおよびNNAGAAWを必要とする一方で、異なるS.mutansシステムは、NGGまたはNAARを許容する。バイオインフォマティクス解析によって、新しいPAMを同定するのに役立ち得、CRISPRが標的化可能な配列のセットを拡大し得る、種々の細菌におけるCRISPR遺伝子座の広範囲なデータベースが生成された。例えば、Rhoら、PLoS Genet.8,e1002441(2012);およびD.T.Prideら、Genome Res.21,126(2011)を参照のこと。S.thermophilusでは、Cas9は、プロトスペーサーの3bp上流に、平滑末端化された二本鎖断裂をもたらし、これは、Cas9タンパク質における2つの触媒ドメイン:そのDNAの相補鎖を切断するHNHドメインおよび非相補鎖を切断するRuvC様ドメインによって媒介されるプロセスである。
【0146】
使用されるヌクレアーゼが、ジンクフィンガーヌクレアーゼである場合、最適な標的部位は、いくつかの公的に入手可能なオンライン情報源を用いて選択され得る。例えば、Reyonら、BMC Genomics 12:83(2011)(これは、その全体が参照により本明細書に援用される)を参照のこと。例えば、オリゴマー化プール工学(Oligomerized Pool Engineering)(OPEN)は、高い特異性およびインビボ機能性を有するジンクフィンガーアレイを操作するための、高度にロバストで公的に入手可能なプロトコルであり、植物、ゼブラフィッシュならびにヒトの体性幹細胞および多能性幹細胞において効率的に機能するZFNを作製するために首尾良く使用されている。OPENは、選択ベースの方法であり、この方法では、予め構築され、ランダム化された候補ZFAのプールをスクリーニングすることにより、所望の標的配列に対して高い親和性および特異性を有するものが同定される。ZFNGenomeは、OPENによって作製されたZFNの潜在的な標的部位を同定するためおよび可視化するためのGBrowseベースのツールである。ZFNGenomeは、配列決定され、注釈がつけられたモデル生物のゲノムにおける潜在的なZFN標的部位の大要を提供する。ZFNGenomeは、現在、7つのモデル生物;S.cerevisiae、C.reinhardtii、A.thaliana、D.melanogaster、D.rerio、C.elegansおよびH.sapiensの完全に配列決定されたゲノム内にマッピングされた合計1160万個を超える潜在的なZFN標的部位を含んでいる。3つの植物種;Glycine max(ダイズ)、Oryza sativa(イネ)、Zea mays(トウモロコシ)および3つの動物種、Tribolium castaneum(コクヌストモドキ)、Mus musculus(マウス)、Rattus norvegicus(ドブネズミ)を含むさらなるモデル生物が、近い将来、追加される。ZFNGenomeは、潜在的なZFN標的部位の各々に関する情報(その染色体の場所および転写開始部位(複数可)に対する位置を含む)を提供する。ユーザーは、いくつかの異なる基準(例えば、遺伝子ID、転写物ID、標的部位配列)を用いてZFNGenomeに問い合わせることができる。
【0147】
使用されるヌクレアーゼが、TAL−エフェクターヌクレアーゼである場合、いくつかの実施形態において、最適な標的部位は、Sanjanaら、Nature Protocols,7:171−192(2012)(その全体が参照により本明細書に援用される)に記載されている方法に従って選択され得る。手短に言えば、TALENは、二量体として機能し、左TALENおよび右TALENと称されるTALEN対は、DNAの逆鎖上の配列を標的化する。TALENは、TALE DNA結合ドメインとモノマーのFokI触媒ドメインとの融合物として操作される。FokIの二量体化を容易にするために、左および右TALEN標的部位は、およそ14〜20塩基の間隔が空くように選択される。ゆえに、各々が20bpの配列を標的化するTALEN対の場合、最適な標的部位は、5’−TN
19N
14−20N
19A−3’の形態をとるべきであり、ここで、左TALENが、5’−TN
19−3’を標的化し、右TALENが、5’−N
19A−3’のアンチセンス鎖を標的化する(N=A、G、TまたはC)。
【0148】
本明細書中に提供される方法の他の実施形態において、ゲノム標的部位は、宿主細胞にとって外来性である。例えば、1つまたはそれを超えるゲノム標的部位は、本明細書中に記載される組込みの方法を行う前に、従来の方法、例えば、遺伝子ターゲティングを用いて、宿主細胞ゲノムへと操作され得る。いくつかの実施形態において、複数コピーの同じ標的配列が、宿主細胞ゲノムの異なる遺伝子座へと操作され、それにより、その標的配列を特異的に認識する単一のヌクレアーゼのみを使用して、同時の複数の組込み事象が促進される。他の実施形態において、複数の異なる標的配列が、宿主細胞ゲノムの異なる遺伝子座へと操作される。いくつかの実施形態において、操作された標的部位は、それが行われなければ宿主細胞の天然のゲノムに表われない標的配列を含む。例えば、ホーミングエンドヌクレアーゼは、通常、イントロンまたはインテインの中に埋もれている大きな認識部位(12〜40bp)を標的化し、したがって、それらの認識部位は、極めて稀であり、これらの部位は、哺乳動物のサイズのゲノムには全く存在しないかまたはほんのわずかしか存在しない。したがって、いくつかの実施形態において、その外来性のゲノム標的部位が、ホーミングエンドヌクレアーゼの認識配列である。いくつかの実施形態において、ホーミングヌクレアーゼは、H−DreI、I−SceI、I−SceII、I−SceIII、I−SceIV、I−SceV、I−SceVI、I−SceVII、I−CeuI、I−CeuAIIP、I−CreI、I−CrepsbIP、I−CrepsbIIP、I−CrepsbIIIP、I−CrepsbIVP、I−TliI、I−PpoI、Pi−PspI、F−SceI、F−SceII、F−SuvI、F−CphI、F−TevI、F−TevII、I−AmaI、I−AniI、I−ChuI、I−CmoeI、I−CpaI、I−CpaII、I−CsmI、I−CvuI、I−CvuAIP、I−DdiI、I−DdiII、I−DirI、I−DmoI、I−HmuI、I−HmuII、I−HsNIP、I−LlaI、I−MsoI、I−NaaI、I−NanI、I−NclIP、I−NgrIP、I−NitI、I−NjaI、I−Nsp236IP、I−PakI、I−PboIP、I−PcuIP、I−PcuAI、I−PcuVI、I−PgrIP、I−PobIP、I−PorI、I−PorIIP、I−PbpIP、I−SpBetaIP、I−ScaI、I−SexIP、I−SneIP、I−SpomI、I−SpomCP、I−SpomIP、I−SpomIIP、I−SquIP、I−Ssp68031、I−SthPhiJP、I−SthPhiST3P、I−SthPhiSTe3bP、I−TdeIP、I−TevI、I−TevII、I−TevIII、I−UarAP、I−UarHGPAIP、I−UarHGPA13P、I−VinIP、I−ZbiIP、PI−MgaI、PI−MtuI、PI−MtuHIP PI−MtuHIIP、PI−PfuI、PI−PfuII、PI−PkoI、PI−PkoII、PI−Rma43812IP、PI−SpBetaIP、PI−SceI、PI−TfuI、PI−TfuII、PI−ThyI、PI−TliIもしくはPI−TliIIまたはそれらの任意のバリアントもしくは誘導体からなる群より選択される。特定の実施形態において、外来性のゲノム標的部位は、I−SceI、VDE(PI−SceI)、F−CphI、PI−MgaIまたはPI−MtuIIの認識配列であり、これらの各々は、下記に提供される。
【表1】
5.2.3.6 送達
【0149】
いくつかの実施形態において、本明細書中に記載される方法にとって有用な1つまたはそれを超えるヌクレアーゼは、精製されたタンパク質として宿主細胞に提供され、例えば、送達される。他の実施形態において、1つまたはそれを超えるヌクレアーゼは、そのヌクレアーゼをコードする核酸を含むポリヌクレオチド(複数可)を介して提供される。他の実施形態において、1つまたはそれを超えるヌクレアーゼは、宿主細胞の核において直接翻訳され得る、精製されたRNAとして宿主細胞に導入される。
【0150】
ある特定の実施形態において、上に記載されたような組込みポリヌクレオチド(polynucletide)、ヌクレアーゼをコードするポリヌクレオチドもしくは精製されたヌクレアーゼタンパク質またはそれらの任意の組み合わせが、外来性のタンパク質および/または核酸を細胞に導入する当該分野で公知の任意の従来の技法を用いて宿主細胞に導入され得る。そのような方法としては、溶液からの細胞による当該分子の直接的な取り込み、または例えばリポソームもしくは免疫リポソームを使用するリポフェクションを介した促進された取り込み;粒子媒介性のトランスフェクションなどが挙げられるがこれらに限定されない。例えば、米国特許第5,272,065号;Goeddelら、eds,1990,Methods in Enzymology,vol.185,Academic Press,Inc.,CA;Krieger,1990,Gene Transfer and Expression−−A Laboratory Manual,Stockton Press,NY;Sambrookら、1989,Molecular Cloning−−A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,NY;およびAusubelら、eds.,Current Edition,Current Protocols in Molecular Biology,Greene Publishing Associates and Wiley Interscience,NYを参照のこと。細胞を形質転換するための特定の方法は、当該分野で周知である。Hinnenら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 75:1292−3(1978);Creggら、Mol.Cell.Biol.5:3376−3385(1985)を参照のこと。例示的な技法としては、スフェロプラスト法(spheroplasting)、エレクトロポレーション、PEG1000によって媒介される形質転換、および酢酸リチウムまたは塩化リチウムによって媒介される形質転換が挙げられるがこれらに限定されない。
【0151】
いくつかの実施形態では、微粒子銃を用いて、組込みポリヌクレオチド、ヌクレアーゼをコードするポリヌクレオチド、精製されたヌクレアーゼタンパク質またはそれらの任意の組み合わせが、宿主細胞、特に、従来の技法を用いて形質転換しにくい/トランスフェクトしにくい宿主細胞、例えば、植物に導入される。微粒子銃は、形質転換反応物を微視的金粒子に結合し、次いで、圧縮ガスを用いてそれらの粒子を標的細胞に発射することによって働く。
【0152】
いくつかの実施形態において、ヌクレアーゼをコードする核酸を含むポリヌクレオチドは、宿主細胞内でヌクレアーゼの発現を可能にする発現ベクターである。好適な発現ベクターとしては、大腸菌、酵母または哺乳動物細胞において遺伝子を発現する際に使用するための公知のものが挙げられるがこれらに限定されない。大腸菌発現ベクターの例としては、pSCM525、pDIC73、pSCM351およびpSCM353が挙げられるがこれらに限定されない。酵母発現ベクターの例としては、pPEX7およびpPEX408が挙げられるがこれらに限定されない。好適な発現ベクターの他の例としては、CEN.ARS配列および酵母選択マーカーを含む酵母−大腸菌pRSシリーズのシャトルベクター;ならびに2μプラスミドが挙げられる。いくつかの実施形態において、ヌクレアーゼをコードするポリヌクレオチドは、天然に存在するポリヌクレオチド配列と比べて宿主細胞における使用頻度がより高いコドンに置換するように改変され得る。例えば、ヌクレアーゼをコードするポリヌクレオチドは、天然に存在するポリヌクレオチド配列と比べてS.cerevisiaeにおける使用頻度がより高いコドンに置換するように改変され得る。
【0153】
ジンクフィンガーヌクレアーゼおよびTAL−エフェクターヌクレアーゼの場合のように、ヌクレアーゼが各モノマーの別個の発現を必要とするヘテロ二量体として機能するいくつかの実施形態では、ヘテロ二量体の各モノマーは、同じ発現プラスミドから発現されてもよいし、異なるプラスミドから発現されてもよい。複数のヌクレアーゼが細胞に導入されることにより、異なる標的部位に二本鎖断裂がもたらされる実施形態では、それらのヌクレアーゼは、単一のプラスミド上でコードされてもよいし、別々のプラスミド上でコードされてもよい。
【0154】
ある特定の実施形態において、ヌクレアーゼ発現ベクターは、その発現ベクターを含む宿主細胞の選択を可能にする選択マーカーをさらに含む。そのような選択は、ヌクレアーゼが出現するのに十分な量の発現に必要な期間にわたって、例えば、12、24、36、48、60、72、84、96時間または96時間を超える期間にわたって宿主細胞内にそのベクターを保持することに役立ち得、その後、その宿主細胞を、その発現ベクターがもはや保持されない条件下で成長させ得る。ある特定の実施形態において、選択マーカーは、URA3、ハイグロマイシンBホスホトランスフェラーゼ、アミノグリコシドホスホトランスフェラーゼ、ゼオシン耐性およびホスフィノトリシンN−アセチルトランスフェラーゼからなる群より選択される。いくつかの実施形態において、ヌクレアーゼ発現ベクターベクターは、1つまたはそれを超えるドナー核酸分子の組込みの後は発現ベクターを含まない宿主細胞の選択を可能にする対抗選択マーカーを含み得る。使用されるヌクレアーゼ発現ベクターは、選択マーカーを有しない一過性ベクターでもあり得るか、または選択されないベクターである。特定の実施形態において、一過性のヌクレアーゼ発現ベクターを含む宿主細胞の子孫は、時間とともにそのベクターを失う。
【0155】
ある特定の実施形態において、発現ベクターは、ヌクレアーゼをコードするヌクレオチド配列に作動可能に連結された転写終結配列およびプロモーターをさらに含む。いくつかの実施形態において、プロモーターは、構成的プロモーターである。いくつかの実施形態において、プロモーターは、誘導性プロモーターである。酵母細胞において使用するために適したプロモーターの実例としては、K.lactisのTEF1遺伝子のプロモーター、Saccharomyces cerevisiaeのPGK1遺伝子のプロモーター、Saccharomyces cerevisiaeのTDH3遺伝子のプロモーター、抑制性プロモーター、例えば、Saccharomyces cerevisiaeのCTR3遺伝子のプロモーター、および誘導性プロモーター、例えば、Saccharomyces cerevisiaeのガラクトース誘導性プロモーター(例えば、GAL1、GAL7およびGAL10遺伝子のプロモーター)が挙げられるがこれらに限定されない。
【0156】
いくつかの実施形態において、核局在化配列(NLS)を含むさらなるヌクレオチド配列が、ヌクレアーゼをコードするヌクレオチド配列の5’に連結される。NLSは、より大きなヌクレアーゼ(>25kD)の核局在化を促進し得る。いくつかの実施形態において、核局在化配列は、SV40核局在化配列である。いくつかの実施形態において、核局在化配列は、酵母核局在化配列である。
【0157】
ヌクレアーゼ発現ベクターは、当業者に明らかな任意の技法によって作製され得る。ある特定の実施形態において、そのベクターは、当該分野で周知のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)および分子クローニング法を用いて作製される。例えば、PCR Technology:Principles and Applications for DNA Amplification,ed.HA Erlich,Stockton Press,New York,N.Y.(1989);Sambrookら、2001,Molecular Cloning−A Laboratory Manual,3
rd edition,Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor,NYを参照のこと。
5.3 宿主細胞
【0158】
別の態様において、本明細書中に記載される1つまたはそれを超える外来性核酸をゲノム的に組み込むいずれかの方法によって作製された改変された宿主細胞が本明細書中に提供される。好適な宿主細胞としては、目的の核酸または「ドナーDNA」を染色体またはエピソームの遺伝子座に組み込むことが望まれる任意の細胞が挙げられる。いくつかの実施形態において、その細胞は、相同組換えを行う能力を有する生物の細胞である。いくつかの例証的な実施形態は、酵母(S.cerevisiae)において実証されるが、本明細書中に提供されるゲノム改変の方法は、機能的な組換え系を有するすべての生物学的生物において、その組換え系が酵母ほどの能力がなかったとしても、実施され得ると考えられる。機能的な相同組換え系を有する他の細胞または細胞型としては、細菌、例えば、枯草菌および大腸菌(これは、RecE RecT組換え能がある;Muyrersら、EMBO rep.1:239−243,2000);原生動物(例えば、Plasmodium、Toxoplasma);他の酵母(例えば、Schizosaccharomyces pombe);糸状菌(例えば、Ashbya gossypii);植物、例えば、蘚類のPhyscomitrella patens(Schaefer and Zryd,Plant J.11:1195−1206,1997);ならびに動物細胞、例えば、哺乳動物細胞およびニワトリDT40細胞(Diekenら、Nat.Genet.12:174−182,1996)が挙げられる。
【0159】
いくつかの実施形態において、宿主細胞は、原核細胞である。いくつかの実施形態において、宿主細胞は、真核細胞である。いくつかの実施形態において、宿主細胞は、真菌細胞、細菌細胞、植物細胞、昆虫細胞、鳥類細胞、魚類細胞および哺乳動物細胞からなる群より選択される。いくつかの実施形態において、哺乳動物細胞は、げっ歯類細胞、霊長類細胞およびヒト細胞からなる群より選択される。いくつかの実施形態において、細胞は、真菌細胞(例えば、酵母細胞)、細菌細胞、植物細胞または動物細胞(例えば、ニワトリ細胞)である。いくつかの実施形態において、宿主細胞は、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、COS−7細胞、マウス線維芽細胞、マウス胚性癌腫細胞またはマウス胚性幹細胞である。いくつかの実施形態において、宿主細胞は、昆虫細胞である。いくつかの実施形態において、宿主細胞は、S2細胞、Schneider細胞、S12細胞、5B1−4細胞、Tn5細胞またはSf9細胞である。いくつかの実施形態において、宿主細胞は、単細胞の真核生物細胞である。
【0160】
特定の実施形態において、宿主細胞は、酵母細胞である。有用な酵母宿主細胞としては、微生物寄託所(例えば、IFO、ATCCなど)に寄託された酵母細胞が挙げられ、それらの酵母宿主細胞は、とりわけ、Aciculoconidium、Ambrosiozyma、Arthroascus、Arxiozyma、Ashbya、Babjevia、Bensingtonia、Botryoascus、Botryozyma、Brettanomyces、Bullera、Bulleromyces、Candida、Citeromyces、Clavispora、Cryptococcus、Cystofilobasidium、Debaryomyces、Dekkara、Dipodascopsis、Dipodascus、Eeniella、Endomycopsella、Eremascus、Eremothecium、Erythrobasidium、Fellomyces、Filobasidium、Galactomyces、Geotrichum、Guilliermondella、Hanseniaspora、Hansenula、Hasegawaea、Holtermannia、Hormoascus、Hyphopichia、Issatchenkia、Kloeckera、Kloeckeraspora、Kluyveromyces、Kondoa、Kuraishia、Kurtzmanomyces、Leucosporidium、Lipomyces、Lodderomyces、Malassezia、Metschnikowia、Mrakia、Myxozyma、Nadsonia、Nakazawaea、Nematospora、Ogataea、Oosporidium、Pachysolen、Phachytichospora、Phaffia、Pichia、Rhodosporidium、Rhodotorula、Saccharomyces、Saccharomycodes、Saccharomycopsis、Saitoella、Sakaguchia、Saturnospora、Schizoblastosporion、Schizosaccharomyces、Schwanniomyces、Sporidiobolus、Sporobolomyces、Sporopachydermia、Stephanoascus、Sterigmatomyces、Sterigmatosporidium、Symbiotaphrina、Sympodiomyces、Sympodiomycopsis、Torulaspora、Trichosporiella、Trichosporon、Trigonopsis、Tsuchiyaea、Udeniomyces、Waltomyces、Wickerhamia、Wickerhamiella、Williopsis、Yamadazyma、Yarrowia、Zygoascus、Zygosaccharomyces、ZygowilliopsisおよびZygozyma属に属する。
【0161】
いくつかの実施形態において、酵母宿主細胞は、Saccharomyces cerevisiae細胞、Pichia pastoris細胞、Schizosaccharomyces pombe細胞、Dekkera bruxellensis細胞、Kluyveromyces lactis細胞、Arxula adeninivorans細胞またはHansenula polymorpha(現在はPichia angustaとして知られる)細胞である。特定の実施形態において、酵母宿主細胞は、Saccharomyces cerevisiae細胞である。いくつかの実施形態において、酵母宿主細胞は、Saccharomyces fragilis細胞またはKluyveromyces lactis(以前はSaccharomyces lactisと呼ばれていた)細胞である。いくつかの実施形態において、酵母宿主細胞は、Candida属に属する細胞、例えば、Candida lipolytica、Candida guilliermondii、Candida krusei、Candida pseudotropicalisまたはCandida utilisである。別の特定の実施形態において、酵母宿主細胞は、Kluveromyces marxianus細胞である。
【0162】
特定の実施形態において、酵母宿主細胞は、パン酵母細胞、CBS7959細胞、CBS7960細胞、CBS7961細胞、CBS7962細胞、CBS7963細胞、CBS7964細胞、IZ−1904細胞、TA細胞、BG−1細胞、CR−1細胞、SA−1細胞、M−26細胞、Y−904細胞、PE−2細胞、PE−5細胞、VR−1細胞、BR−1細胞、BR−2細胞、ME−2細胞、VR−2細胞、MA−3細胞、MA−4細胞、CAT−1細胞、CB−1細胞、NR−1細胞、BT−1細胞およびAL−1細胞からなる群より選択されるSaccharomyces cerevisiae細胞である。いくつかの実施形態において、宿主細胞は、PE−2細胞、CAT−1細胞、VR−1細胞、BG−1細胞、CR−1細胞およびSA−1細胞からなる群より選択されるSaccharomyces cerevisiae細胞である。特定の実施形態において、Saccharomyces cerevisiae宿主細胞は、PE−2細胞である。別の特定の実施形態において、Saccharomyces cerevisiae宿主細胞は、CAT−1細胞である。別の特定の実施形態において、Saccharomyces cerevisiae宿主細胞は、BG−1細胞である。
【0163】
いくつかの実施形態において、酵母宿主細胞は、工業発酵、例えば、バイオエタノール発酵に適した細胞である。特定の実施形態において、その細胞は、工業発酵環境のストレス条件として認識されている、高溶媒濃度、高温、幅広い基質利用、栄養制限、浸透ストレス(osmotic stress due)、酸性度、亜硫酸塩および細菌汚染、またはそれらの組み合わせの下で生存するように慣らされている。
5.4 適用
5.4.1.遺伝子治療および細胞治療
【0164】
本明細書中に記載される方法および組成物は、例えば、被験体に由来する細胞集団においてエキソビボで遺伝的欠陥を訂正しようとする治療への適用において利点を提供する。例えば、Schwankら(Cell Stem Cell 13:653−658(2013))は、最近、ヒトCF患者の培養された腸管幹細胞における相同組換えによってCFTR遺伝子座を訂正するCRISPR/Cas9ゲノム編集システムの利用を報告した。訂正された対立遺伝子は、クローン的に拡大されたオルガノイドにおいて測定されたとき、発現され、完全に機能的だったので、この報告は、単一遺伝子に遺伝的欠陥を有する患者由来の初代成体幹細胞における相同組換えによる遺伝子訂正に対する概念証明を提供する。しかしながら、培養された幹細胞におけるCFTR遺伝子座の訂正には、ドナーDNAとともにピューロマイシン耐性カセットのゲノム組込みに続くピューロマイシンにおける選択が必要だった。ヒト細胞ゲノムへのネオマイシン耐性遺伝子の組込みに続くG418における長時間の培養は、その細胞の特色に変化をもたらすことが報告され、高感度緑色蛍光タンパク質(EGFP)および他の蛍光タンパク質の発現は、免疫原性および毒性を引き起こすと報告された。例えば、Bareseら、Human Gene Therapy 22:659−668(2011);Morrisら、Blood 103:492−499(2004);およびHanazonoら、Human Gene Therapy 8:1313−1319(1997)を参照のこと。したがって、本明細書中に提供される方法および組成物を用いることにより、選択マーカーの組込みの必要無しに、初代成体幹細胞における相同組換えによって遺伝子訂正を行うことができる。
【0165】
遺伝性疾患のHR媒介性訂正の別の報告では、Wuら(Cell Stem Cell 13:659−662(2013)は、白内障の原因であるCrygc遺伝子に優性変異を有するマウスを、Cas9 mRNAおよび変異対立遺伝子を標的化する単一ガイドRNA(sgRNA)を接合子に共注入すること(coinjection)によってレスキューすることができたことを実証した。訂正は、外部から供給されたオリゴヌクレオチドまたは内在性のWT対立遺伝子に基づく相同組換え修復(HDR)を介して生じ、得られたマウスは、生殖能力があり、訂正された対立遺伝子を子孫に伝えることができた。しかしながら、HDR媒介性修復の割合は、NHEJによる修復または非修復の発生率よりもかなり低かった(Wuらの表1を参照のこと)。したがって、本明細書中に提供される方法および組成物を使用することにより、HR媒介性遺伝子改変を選択する有用な選択機構を提供することによって遺伝子訂正の効率を改善することができる。
5.4.2.代謝経路を操作するための方法
【0166】
本明細書中に記載される方法および組成物は、例えば、バイオマスをバイオ燃料、医薬品またはバイオマテリアルに変換することに対して最適化された生合成経路を含む、組換え生物を構築するための特定の利点を提供する。機能的な非天然の生物学的経路が、抗マラリア薬アルテミシニンに対する前駆体(例えば、Martinら、Nat Biotechnol 21:796−802(2003)を参照のこと;脂肪酸由来の(derives)燃料および化学物質(例えば、脂肪酸エステル、脂肪アルコールおよびろう;例えば、Steenら、Nature 463:559−562(2010)を参照のこと;ハロゲン化メチル由来の燃料および化学物質(例えば、Bayerら、J Am Chem Soc 131:6508−6515(2009)を参照のこと;コレステロール低下薬をもたらすポリケチドシンターゼ(例えば、Maら、Science 326:589−592(2009)を参照のこと;およびポリケチド(例えば、Kodumal,Proc Natl Acad Sci USA 101:15573−15578(2004)を参照のこと)を生成するために微生物宿主において首尾良く構築された。
【0167】
従来、代謝工学、特に生合成経路の構築は、1つずつの連続的な形式で進んできており、経路成分は、1回につき宿主細胞ゲノムの単一の遺伝子座に導入、すなわち、組み込まれてきた。本明細書中に提供される組込みの方法を利用することにより、新しい代謝経路、すなわち、宿主細胞が内因的に産生しない代謝産物を生成する代謝経路の酵素をコードする1つまたはそれを超える異種性ヌクレオチド配列を含むように宿主細胞、例えば、微生物細胞を操作するために通常必要な時間を短縮することができる。他の特定の実施形態では、本明細書中に提供される組込みの方法を用いることにより、宿主細胞にとって内在性の代謝経路、すなわち、宿主細胞が内因的に産生する代謝産物を生成する代謝経路の酵素をコードする1つまたはそれを超える異種性ヌクレオチド配列を含むように宿主細胞を効率的に操作することができる。1つの例において、デザインストラテジーは、宿主細胞の3つの天然の遺伝子を相補的な外来性経路で置き換えようとし得る。現在の技術水準を用いたこれらの3つの内在性遺伝子座の改変には、3つの別個の形質転換が必要である。対照的に、本明細書中に提供される同時の複数の組込みの方法は、3つすべての組込みを単一の形質転換において行うことを可能にし、ゆえに、必要とされる操作の回数が3倍減少する。さらに、その方法は、1つの宿主細胞シャーシ(chassis)の中の複数の部位に組み込まれた最適化された経路成分を含むDNAアセンブリを、第2の宿主細胞シャーシの中の類似部位に移すこと(porting)を可能にする。所望の遺伝子型を操作するのに必要な回数を減少させることによって、代謝経路の構築のペースが実質的に上昇する。
5.4.2.1 イソプレノイド経路の操作
【0168】
いくつかの実施形態において、本明細書中に提供される方法は、操作された宿主細胞の生成物プロファイルを改変するために生合成経路の1つまたはそれを超える構成要素を同時に導入するかまたは置き換えるために使用され得る。いくつかの実施形態において、生合成経路は、イソプレノイド経路である。
【0169】
テルペンは、多くの生物において産生される炭化水素の大きなクラスである。テルペンが、化学的に改変されたとき(例えば、炭素骨格の酸化または再配列によって)、得られる化合物は、一般に、テルペノイドと称され、それは、イソプレノイドとしても知られる。イソプレノイドは、多くの重要な生物学的役割を、例えば、電子伝達鎖におけるキノンとして、膜の構成要素として、タンパク質のプレニル化を介した細胞内標的化および制御において、カロテノイド、クロロフィルを含む光合成色素として、ホルモンおよび補因子として、ならびに様々なモノテルペン、セスキテルペンおよびジテルペンとともに植物防御化合物として、果たす。それらは、抗生物質、ホルモン、抗がん薬、殺虫剤および化学物質として工業的に有用である。
【0170】
テルペンは、イソプレン(C
5H
8)の単位を連結することによって得られ、存在するイソプレン単位の数によって分類される。ヘミテルペンは、単一のイソプレン単位からなる。イソプレン自体は、唯一のヘミテルペンであると考えられている。モノテルペンは、2つのイソプレン単位から構成されており、分子式C
10H
16を有する。モノテルペンの例は、ゲラニオール、リモネンおよびテルピネオールである。セスキテルペンは、3つのイソプレン単位から構成されており、分子式C
15H
24を有する。セスキテルペンの例は、ファルネセンおよびファルネソールである。ジテルペンは、4つのイソプレン単位から作られており、分子式C
20H
32を有する。ジテルペンの例は、カフェストール、カーウェオール、センブレンおよびタキサジエンである。セスタテルペンは、5つのイソプレン単位から構成されており、分子式C
25H
40を有する。セスタテルペンの例は、ゲラニルファルネソールである。トリテルペンは、6つのイソプレン単位からなり、分子式C
30H
48を有する。テトラテルペンは、8つのイソプレン単位を含み、分子式C
40H
64を有する。生物学的に重要なテトラテルペンとしては、非環式リコピン、単環式ガンマ−カロテン、ならびに二環式アルファ−およびベータ−カロテンが挙げられる。ポリテルペンは、多くのイソプレン単位の長鎖からなる。天然ゴムは、二重結合がcisであるポリイソプレンからなる。
【0171】
テルペンは、イソペンテニルピロリン酸(イソペンテニル二リン酸またはIPP)とその異性体であるジメチルアリルピロリン酸(ジメチルアリル二リン酸またはDMAPP)の縮合によって生合成される。IPPおよびDMAPPを生成する2つの経路、すなわち、真核生物のメバロン酸依存的(MEV)経路(
図3)および原核生物のメバロン酸非依存的経路またはデオキシキシルロース−5−リン酸(DXP)経路が知られている。植物は、MEV経路とDXP経路の両方を用いる。IPPおよびDMAPPは、プレニル二リン酸(prenyl disphosphate)シンターゼ(例えば、それぞれGPPシンターゼ、FPPシンターゼおよびGGPPシンターゼ)の作用によって、ポリプレニル二リン酸(例えば、ゲラニル二リン酸(geranyl disphosphate)またはGPP、ファルネシル二リン酸またはFPPおよびゲラニルゲラニル二リン酸またはGGPP)に次々に縮合される。それらのポリプレニル二リン酸中間体は、テルペンシンターゼによって、より複雑なイソプレノイド構造に変換される。
【0172】
テルペンシンターゼは、複数の生成物を形成する大きな遺伝子ファミリーに分けられている。テルペンシンターゼの例としては、GPPをモノテルペンに変換するモノテルペンシンターゼ;GGPPをジテルペンに変換するジテルペンシンターゼ;およびFPPをセスキテルペンに変換するセスキテルペンシンターゼが挙げられる。セスキテルペンシンターゼの例は、FPPをファルネセンに変換するファルネセンシンターゼである。テルペンシンターゼは、代謝の分岐点において働き、細胞によって産生されるイソプレノイドのタイプを規定するので、イソプレノイドへの経路の流れの制御において重要である。さらに、テルペンシンターゼは、そのようなテルペンの高収率生成の鍵を握っている。したがって、異種性イソプレノイドの生成について操作された宿主における経路の流れを改善する1つのストラテジーは、テルペンシンターゼをコードする複数コピーの核酸を導入することである。例えば、MEV経路を含む操作された微生物において、ファルネセンなどのセスキテルペンの生成が望まれる場合、セスキテルペンシンターゼ、例えば、ファルネセンシンターゼが、その経路の終末酵素として使用され、ファルネセン生成のために最適化された株の作出に向けて、複数コピーのファルネセンシンターゼ遺伝子が宿主細胞に導入され得る。
【0173】
いずれのイソプレノイドの生合成も、プレニル二リン酸シンターゼおよびテルペンシンターゼの上流の同じ経路成分に依存するので、これらの経路成分は、いったん宿主「プラットフォーム」株に操作されたら、任意のセスキテルペンの生成に向けて利用することができ、そのセスキテルペンが何であるかは、宿主細胞に導入された特定のセスキテルペンシンターゼによって規定され得る。さらに、異なるイソプレン単位を有するテルペン、例えば、セスキテルペンの代わりにモノテルペンの生成が望まれる場合、プレニル二リン酸シンターゼとテルペンシンターゼの両方が、その経路の上流の成分をなおも利用しつつ、異なるテルペンを生成するように置き換えられ得る。
【0174】
したがって、本明細書中に提供される方法および組成物は、イソプレノイド産生経路、例えば、MEV経路を含む宿主細胞を、所望のイソプレノイドを生成するように効率的に改変するために使用され得る。いくつかの実施形態において、宿主細胞は、MEV経路を含み、本明細書中に提供される複数の同時の組込みの方法は、宿主細胞のテルペン生成物プロファイルを定義する、複数コピーのプレニル二リン酸シンターゼおよび/またはテルペンシンターゼを同時に導入するために使用され得る。いくつかの実施形態において、プレニル二リン酸シンターゼは、GPPシンターゼであり、テルペンシンターゼは、モノテルペンシンターゼである。いくつかの実施形態において、プレニル二リン酸シンターゼは、FPPシンターゼであり、テルペンシンターゼは、セスキテルペンシンターゼである。いくつかの実施形態において、プレニル二リン酸シンターゼは、GGPPシンターゼであり、テルペンシンターゼは、ジテルペンシンターゼである。他の実施形態において、宿主細胞は、MEV経路を含み、第1のタイプのテルペン、例えば、ファルネセンの生成のためのプレニル二リン酸シンターゼおよび/またはテルペンシンターゼならびに本明細書中に提供される複数の同時の組込みの方法を用いることにより、1コピーまたはそれを超えるコピー数のプレニル二リン酸シンターゼおよび/またはテルペンシンターゼを同時に置き換えて、第2のタイプのテルペン、例えば、アモルファジエンを生成することができる。これらの実施形態は、下記の実施例3および4において例証される。本明細書中に提供される方法は、複数コピーの経路成分を使用する任意の生合成経路の構築および/または改変に向けて同様に利用することができ、その生成物プロファイルが複数コピーの単一経路成分の追加または交換によって容易に改変され得る宿主細胞を操作するために特に有用である。
【実施例】
【0175】
6.実施例
6.1 実施例1:CRISPRを使用し、欠失構築物の組込みを介して3つの遺伝子を同時に欠失させるための複数のgRNA送達形式の比較
この実施例は、S.cerevisiaeにおいてRHR2、HOおよびADH5のORFを(短いリンカー配列の組込みによって)同時に欠失させるためのCRISPRの使用を実証する結果を提供する。手短に言えば、RHR2、HOおよびADH5のORFに含まれるユニーク配列を標的化するキメラgRNAを作製し、それらをStreptococcus pyogenesのタイプII細菌CRISPRシステム由来のCas9タンパク質を発現している宿主細胞において様々な配置で形質転換した。形質転換されたコロニーを、コロニーPCR(cPCR)によって、短いリンカー配列による1つ、2つまたは3つのORFの置き換えについてスクリーニングした。
6.1.1.Cas9pの構成的発現
【0176】
野生型Saccharomyces cerevisiae株(CEN.PK2、Mat a、ura3−、TRP1+、leu2−、MAL2−8C、SUC2)を、Streptococcus pyogenes由来のCas9pの構成的発現に対する宿主として使用した。中強度のFBA1プロモーター(配列番号3)の調節下にあるCas9に対する酵母コドン最適化コード配列を含む構築物のゲノム組込みを、GRE3遺伝子座に対して標的化した。
6.1.2.RHR2、HOおよびADH5のORFにおけるCRISPR標的部位の選択
【0177】
標的化されるORF内のCRISPR標的候補を、PAM配列N
(19)NGGの存在に基づいて同定した。そのNGG配列は、PAM配列と称され、PAM配列の前にある8塩基対のDNAが、特異性を強制するために特に重要である(Fuら、Nat Biotechnol 31(9):822−826(2013);Ranら、Nat Protoc 8(11):2281−2308(2013))。次いで、候補部位を、ゲノム内の標的配列のユニークさに基づいてランク付けし、オフターゲット切断のリスクを最小限にするために、ゲノム内の他の部位と最も低い類似性を有する部位を選択した。標的部位を表2に示す。
【0178】
【表2】
6.1.3.gRNAの送達様式
【0179】
Cas9pは、一般的な構造RNAおよび特異的な標的化RNAとの会合によって切断部位に標的化される。この研究では現在の標準的な「キメラ」配置を採用し、標的化RNAと構造RNAとが融合されることにより、単一のガイドRNA、すなわちgRNAが形成される(Ran,Hsuら、2013)。そのgRNA構築物(複数可)の発現は、SUP4ターミネーターとともにSNR52ポリメラーゼIIIプロモーターによって駆動された(DiCarlo,Norvilleら、2013)。RHR2、HOおよびADH5遺伝子座を標的化するgRNA構築物に対する配列は、それぞれ配列番号7、8および9として本明細書中に提供される。上記の5.2.1の項に記載されたようなおよび
図7に示されているようないくつかのgRNA送達様式を使用した。pRS4XXシリーズ2μベクター(Sikorski and Hieter 1989)からのgRNAカセットの発現を、1)Cas9を発現する酵母株への形質転換の前に、完成した環状プラスミド(
図7.1および7.2)を作製する標準的なクローニング方法、または2)線状化ベクター骨格とともに、Cas9を発現する酵母株に直接gRNAカセットを形質転換することによって(Orr−Weaver,Szostakら、1983)、インビボにおけるギャップ修復によって、そのカセットを環状化プラスミドにアセンブルすることによって達成した(
図7.4)。gRNAカセットの末端と直鎖状ベクター骨格(配列番号10)との間の相同性の領域(約500bp)は、インビボにおいて環状gRNAプラスミドのアセンブリを容易にする。あるいは、3)形質転換された細胞を選択するためにNatA(Streptomyces noursei由来のノウルセオトリシンアセチルトランスフェラーゼ)選択マーカー(配列番号11)を有する閉環状プラスミドと共に共形質転換された直鎖状カセットから直接、gRNAを発現させた(
図7.3)。最後に、第3の方法の変法として、4)NatAマーカーについての中央のコード配列を失うようにNatAマーカー内部でPCRすることによって線状化したベクター(配列番号12)と直鎖状カセットを共形質転換し;完全なNatA発現カセットを有する閉環状プラスミドを再形成するためにギャップ修復によって組み換わることができる重複する相補的なNatA ORFフラグメント(配列番号13)も共形質転換した(
図9B;下記の実施例2において論じる)。
【0180】
環状gRNAプラスミド(送達様式1)を作製するために、CRISPRシード配列およびカセットに対して20bpの上流/下流のホモロジーを含むアニールしたオリゴヌクレオチドを、大腸菌において、線状化した骨格にギャップ修復し(Mandecki 1986)、正しいクローンを同定し、完成したプラスミドを宿主株に形質転換した。線状化したベクターに対して約500bpのフランキングホモロジーを有する完全長の直鎖状gRNAカセットを調製するために(送達様式2、3および4)、PCRアセンブリ法を用いた。一般的なgRNAカセットを鋳型として使用し、カセットの半分を、ユニークなCRISPRシード配列を含む22塩基対の中央の重複を形成するプライマーを用いて増幅した。次いで、その2つのカセットの半分を、第2のPCR反応においてアセンブルすることにより、完全長gRNA発現カセットを生成した。10μlの未精製のPCRアセンブリ(DNAマーカーラダーとの比較によって決定されたとき、通常20〜60ng/μl濃度)および150ngの線状化した2μベクターを形質転換ごとに使用した。
6.1.4.直鎖状のドナーDNAの作製
【0181】
直鎖状のドナーDNAは、中央のリンカー(CGCTCGTCCAACGCCGGCGGACCT)を挟む、各ORFを標的化する500bpの上流相同性領域および下流相同性領域を含み、それらを、米国特許第8,221,982号に記載されているポリヌクレオチドアセンブリの方法によって作製した。RHR2、HOおよびADH5遺伝子座に組み込むためのドナーDNA配列は、それぞれ配列番号14、15および16として本明細書中に提供される。
6.1.5.CRISPRを用いた、ORFの同時の欠失および短いリンカー配列の組込み
【0182】
ドナーDNA(約1μg)および適切なgRNA試薬を、最適化されたLiAc法(Gietz and Woods 2002)を用いるが、30℃で細胞を30分間インキュベートした後、42℃での熱ショックを行うことを追加して、Cas9を発現する各株に共形質転換した。細胞を非選択的YPD(酵母エキスペプトンデキストロース)培地中で一晩回復させた後、gRNAまたはマーカープラスミドを維持するために、選択的抗生物質含有培地(ノウルセオトリシン、100μg/ml)にプレーティングした。5’組込み隣接部(flank)の上流および組み込まれたリンカー配列に結合するプライマー(表3)を使用するコロニーPCR(cPCR)が、標的化された組込み事象を示す結果である正しいアンプリコンを生成した場合、マーカーレス組込みを陽性とスコア付した。
【0183】
【表3-1】
【表3-2】
6.1.6.結果および考察
【0184】
ギャップ修復送達様式:4つのgRNA送達様式を、短いリンカー配列の組込みによるRHR2、HOおよびAHD5オープンリーディングフレームの同時欠失の効率について評価した。三重の組込みを評価するためのコロニーPCRの結果を
図8に示し、割合を表4に要約する。
【0185】
【表4】
【0186】
第1のgRNA送達様式において、3つのgRNA(それぞれRHR2、HOおよびADH5を標的化する)の各々を、ユニークなマーカーを有するプラスミドに供給し(NatA、URA3カセットおよびHIS3カセット;
図7.1を参照のこと)、細胞を3つすべてのプラスミドで形質転換し、各マーカーの発現について三重に選択した。非常に高い効率(91%)の三重の欠失(組込みを介して)が観察された(
図8、パネル1)。これらの高頻度は、おそらく、それらのカセットを有するプラスミドに対する三重の選択による3つすべてのgRNAの持続的な発現に起因する。対照的に、gRNAを、同じマーカー(NatA;
図7.2を参照のこと)を有する3つのプラスミドに供給した第2の様式は、いかなる三重の欠失も生成しなかった(
図8、パネル2)。代わりに、3つのプラスミドのうち1つだけを維持する選択要件と一致する単一欠失が優勢だった。第3の様式では、形質転換された細胞を選択するために含められたNatA標識された(NatA marked)プラスミドとともに、gRNAを直鎖状のカセットとして供給した(
図7.3を参照のこと)。三重の欠失は、観察されず、いずれの欠失事象も非常に低い割合で観察された(
図8、パネル3)。この送達様式は、gRNA構築物の一過性の発現をもたらすと予想され、これは、持続的な発現よりも劣るとみられる。調べた第4の送達様式は、NatAマーカーを有する線状化したベクターへの、3つのgRNAカセットのギャップ修復を必要とする(
図7.4を参照のこと)。本発明者らは、コロニーの64%が三重に欠失していたことを観察した(
図8、パネル4)。この送達様式は、第1の様式のように3つすべてのgRNAの持続的な発現を強制しないので、これは、驚くべき結果である。実際に、第2の様式の結果は、3つの類似の標識されたgRNAプラスミドの共形質転換が、効果的でないことを明らかに示し、第3の様式の結果は、直鎖状のカセットからのgRNAの一過性の発現もまた機能的でないことを示す。したがって、gRNAカセットの送達様式として、ギャップ修復に関連するCRISPR/Cas−9媒介性ゲノム組込み事象に予想外の有益な利点が存在する。
6.2 実施例2:ギャップ修復を介したHR適格性細胞の選択
【0187】
この実施例は、ヌクレアーゼ媒介性組込み事象の効率を改善するために、gRNA発現を選択する利点とは無関係のギャップ修復の利点を実証する。
【0188】
ギャップ修復が、CRISPR(または任意の部位特異的ヌクレアーゼ)によって操作されたクローンの回収を改善し得る1つの機構は、相同組換え(HR)能がある細胞についてのさらなる選択を強制することによるものである。相同組換え能は、非同調細胞集団において大きく異なり得(例えば、Branzei and Foiani,Nat Rev Mol Cell Bio 9(4):297−308(2008)を参照のこと)、選択マーカーを有するプラスミドのギャップ修復を達成し得る細胞の選択によって、特に相同組換え能がある集団が選択され得る。これは、実施例1において論じられた第4のgRNA送達様式の驚くべき成功を説明し得る(
図7.4および8.4)。上記gRNAのうちの少なくとも1つの持続的な発現の効果から、選択機構としてのギャップ修復の効果を切り離すために、本発明者らは、適切なドナーDNAおよび直鎖状のgRNAカセット(上記の実施例1に記載されたもの)および2つのマーカーベクターのうちの1つの共形質転換による、RHR2、HOおよびADH5遺伝子座のそれぞれの単一欠失の割合を評価した。第1のマーカーベクターは、閉環状であり、すなわち、形質転換された細胞におけるNatAマーカーの発現にギャップ修復は必要ない(
図9A)。第2のマーカーは、NatAマーカーの中央部が失われるように線状化されていたが、重複するフラグメントのギャップ修復によって補完されることにより、完全なNatA発現カセットを有する機能的な閉環状マーカーベクターをもたらすことができた(
図9B)。両方の場合において、gRNAの発現は、単に一過性である。3つの独立した実験にわたって、マーカープラスミドがギャップ修復を要求したとき、本発明者らは、単一遺伝子座欠失(組込み)の割合が最大8倍(平均約3〜5倍の範囲)改善したことに注目した(
図9、割合は
図10〜12に纏めた)。
【0189】
これらの結果は、ギャップ修復が、相同組換え能がある細胞のさらなる選択として機能することができ、ゆえに、ヌクレアーゼによって支援される操作、特に、標的化されたドナーDNAの組込みを最も成功させることができるという仮説を支持する。本発明者らは、S.cerevisiaeが、特にHRの能力が高いことに注目し、NHEJおよび他の不完全な修復方法を好む細胞(例えば、哺乳動物細胞)において、本発明者らは、ギャップ修復が、1つまたはそれを超える標的化された組込みを有する細胞の回収率の上昇に特に有効であり得ることを提唱する。
6.3 実施例3:マルチピースギャップ修復を介したHR適格性細胞の選択の向上
【0190】
この実施例は、ベクターをさらに断片化することによってマーカーベクターのギャップ修復の複雑さを高めることによって、ヌクレアーゼによって支援される操作の効率をさらに高めることができることを実証する。
【0191】
Cas9を発現している一倍体酵母細胞(S.cerevisiae)を、実施例1に記載されたように、Gal80、HOおよびADH5オープンリーディングフレームを同時にマーカーレス欠失させるためのドナーDNA、各遺伝子座を標的化するgRNA構築物、ならびに線状化したベクター骨格で形質転換したが、この形質転換に、ベクター骨格を2つのピースに断片化し、その各ピースが互い(47bp)ならびにgRNAカセット(約500bp)と重複した相同領域を含むという形質転換を付け加えた。これにより、gRNAカセットを組み込む環状NatAマーカープラスミドのギャップ修復を介した3ピースインビボアセンブリが可能になった。NatAマーカーORFは、2つの骨格フラグメントのうちの一方に含まれたのに対して、NatA発現を駆動するプロモーター(K.lactis Tef1プロモーター)は、もう一方に含まれ、ゆえに、NatA発現は、それらのフラグメントのHR媒介性アセンブリのときにのみ可能になる。Gal80、HOおよびADH5遺伝子座の各々をそれぞれ標的化するドナーDNAの配列;各遺伝子座を標的化するgRNA構築物;ならびに2ピースおよび3ピースインビボアセンブリのいずれかのためのマーカープラスミドフラグメントは、配列番号21〜29として本明細書中に提供される。
【0192】
Gal80、HOおよびADH5遺伝子座に対する標的部位をそれぞれ表5に示す。
【0193】
【表5】
【0194】
細胞を、実施例1に記載されたように形質転換して培養し、選択の際に出現したコロニーを、欠失構築物の外側に結合する上流順方向プライマーおよび各オープンリーディングフレームの代わりに組み込まれた短いリンカー配列に結合する逆方向プライマーを使用するcPCRによって各遺伝子座における欠失構築物の組込みについてアッセイした。11個のコロニーならびにネガティブコントロールとして働く親コロニー(「N」)を各送達様式についてアッセイした。
【0195】
【表6】
【0196】
図13に示されているように、3つすべての遺伝子座における同時の三重の組込みの割合は、マーカーベクターをアセンブリするために3つのHR事象が必要とされたとき、2つのHR事象だけが必要とされるときと比べて、実質的に高かった。特に、マーカーベクターの2ピースインビボアセンブリでは、6個/11個のコロニーが、Gal80遺伝子座に組込みを有し、10個/11個が、HO遺伝子座に組込みを有し、7個/11個のコロニーが、ADH5遺伝子座に組込みを有し、5個/11個のコロニー(45.4%)が、3つすべての遺伝子座に組込みを有した。それに比べて、マーカーベクターの3ピースインビボアセンブリでは、9個/11個のコロニーが、Gal80遺伝子座に組込みを有し、10個/11個が、HO遺伝子座に組込みを有し、10個/11個のコロニーが、ADH5遺伝子座に組込みを有し、9個/11個のコロニー(81.8%)が、3つすべての遺伝子座に組込みを有した。したがって、2ピースギャップ修復の代わりに、マーカーベクターの3ピースギャップ修復を必要とすることは、三重の組込みの割合をほぼ2倍改善した。
【0197】
多重組込みの割合のこの改善が、S.cerevisiaeの二倍体株でも見出され得るかを決定するために、二倍体酵母株CAT−1のCas9を発現している細胞を、同様に、Gal80、HOおよびADH5オープンリーディングフレームの同時の全対立遺伝子のマーカーレス欠失のためのドナーDNA、各遺伝子座を標的化するgRNA構築物、ならびに2つまたは3つの重複したピースに断片化された選択的DNAで形質転換した。コロニーを、欠失構築物の外側の上流順方向プライマーおよび各オープンリーディングフレームの代わりに組み込まれた短いリンカー配列に結合する逆方向プライマー(表6)を使用するcPCRによってアッセイした。
【0198】
図14に示されているように、二倍体株の3つすべての遺伝子座における同時の三重の組込みの割合もまた、マーカーベクターをアセンブルするために3つのHR事象が必要とされたとき、実質的により高かった。特に、マーカーベクターの2ピースインビボアセンブリでは、3個/24個のコロニーが、Gal80遺伝子座に組込みを有し、7個/24個が、HO遺伝子座に組込みを有し、2個/24個のコロニーが、ADH5遺伝子座に組込みを有し、1個/24個のコロニー(4.2%)が、3つすべての遺伝子座に組込みを有した。それに比べて、マーカーベクターの3ピースインビボアセンブリでは、3個/8個のコロニーが、Gal80遺伝子座に組込みを有し、5個/8個が、HO遺伝子座に組込みを有し、3個/8個のコロニーが、ADH5遺伝子座に組込みを有し、3個/8個のコロニー(37.5%)が、3つすべての遺伝子座に組込みを有した。したがって、2ピースギャップ修復の代わりに、マーカーベクターの3ピースギャップ修復を必要とすることは、二倍体株において、三重の組込みの割合をほぼ10倍改善した。この実験から回収されたコロニーの数もまた、3つの事象が必要とされたとき、およそ10倍少なかった(データ示さず)ことから、マーカーベクターのより高次のアセンブリが必要とされることにより、その集団の最もHR適格性の細胞だけが選択されることが示唆された。
6.4 実施例4:ギャップ修復と組み合わせてCRISPRを用いた単一および多重の点変異の導入
【0199】
この実施例は、正確な点変異または点変異に対する訂正を導入するための、実施例1に記載されたような最適化されたプロトコル(様式4:マーカーベクター骨格へのgRNAカセット(複数可)のインビボHR媒介性取り込み)の適用を実証する。
【0200】
現在、単一遺伝子座における点変異の導入は、冗長なプロセスである。Delitto Perfetto法は、点変異のマーカーレス導入を可能にするが、標的化された部位に近接して誘導性メガヌクレアーゼを含む標識されたカセットの組込みを必要とする(Storiciら、Proc Natl Acad Sci USA 100(25):14994−9(2003))。あるいは、URA3マーカーを有する複雑な組込みカセットがデザインされ、標的部位に組み込まれ得、その後の5−FOA対抗選択によるURA3のループアウトにより、点変異を含んだ遺伝子座が再構成される。これらの方法の両方が、必須の遺伝子にとって問題があり、少なくとも2回の遺伝子操作を必要とし、多重化に適していない。
【0201】
CRISPRによって点変異(すなわち、ミスセンスSNP)を導入するためには、考慮すべき事柄がいくつかある。第1に、切断に対して標的化される部位は、ゲノムの中でユニークであることに加えて、所望のSNPの部位に可能な限り近くであるべきである(
図15)。これは、切断部位を修復する組換えが、所望のSNPの取り込みを必要とせず、切断部位からの距離につれてそれを含む可能性が低くなると予想されるからである。第2に、最適な効率のために、ドナーDNAは、それがCRISPRの標的にならないようにデザインされるべきである。実際に、この問題は、DiCarloらによって引用されており、それにより、DiCarloらの実験において観察されたCRISPRによる低い割合のSNP組込みが説明された(DiCarloら、Nucleic Acids Res.,7,4336−4343(2013)))。切断を免れるためには、所望のSNPは、ドナーDNAの中のCRISPR標的部位を破壊する必要があるが、これは、ほとんどの遺伝子座において満たすことが不可能な要件である。ドナーDNAに切断を免れさせるため、および同時に、組換え事象が所望のSNPを含むチャンスを改善するために、異種ブロックアプローチが採用され、ここで、標的部位と点変異との間のコドンにサイレント変異が作製され、所望のSNPを取り除く組換え事象の潜在性を減少させた(
図15)。さらに、その異種ブロックの組込みは、PCRによって候補クローンを同定するための新規のプライマー結合部位を提供する。
【0202】
原理証明として、変異誘発を起こした酵母細胞(S.cerevisiae)の変異対立遺伝子を、上に記載されたアプローチを用いて、対応する野生型対立遺伝子での置き換えについて標的化した。その変異誘発した株は、実施例1に記載されたような中強度のFBA1プロモーターの調節下においてCas9を構成的に発現するようにさせられていた。次いで、そのCas9pを発現する株を、TRS31、CUE5、ECM38、PGD1、SMC6、NTO1およびDGA1オープンリーディングフレームの各々を標的化するドナーDNA(単一の組込み事象に対して1つずつ)ならびに各遺伝子座を標的化するgRNA構築物(その各々が直鎖状のNatAマーカープラスミド骨格と相同な重複を含む)で形質転換したところ、ギャップ修復を介した環状プラスミドのインビボアセンブリが可能だった。実施例1に記載されたように、細胞を形質転換して培養し、次いで、7つの遺伝子座の各々において点変異(復帰変異対立遺伝子(reversion allele))の導入について評価した。候補コロニーおよび親ネガティブコントロール(c)を、異種ブロックおよびフランキング配列に対するコロニーPCRによってアッセイし、選択された陽性コロニーを、組込み遺伝子座にまたがるより大きなPCR産物を配列決定することによって確認した。
【0203】
【表7-1】
【表7-2】
【0204】
TRS31、CUE5、ECM38、PGD1、SMC6、NTO1、DGA1、ADH2、SIN4およびCYS4遺伝子座の各々をそれぞれ標的化するドナーDNAの配列;各遺伝子座の標的配列、ならびに各遺伝子座を標的化するgRNA構築物は、配列番号67〜96として本明細書中に提供される。
【0205】
図16に示されているように、高い割合の異種ブロック組込みが、各遺伝子座において観察され(36.4%〜90.9%の範囲)、所望の変異にまたがるPCRフラグメントのその後の配列決定から、クローンの大部分が所望の対立遺伝子を含んだことが明らかになった。
【0206】
点変異の多重導入の実行可能性を決定するために、3つの遺伝子座(ECM38、PGD1およびADH2)を、複数のgRNAに対して最適化された送達様式を用いて異種ブロック組込み(対立遺伝子交換)のために同時に標的化した。
図17に示されているように、高い割合の三重の異種ブロック組込みが、PCRアッセイによって観察された(90.9〜100%)。より高次の多重組込みが実行可能であるかを決定するために、5つの遺伝子座(ADH2、PGD1、ECM38、SIN4およびCYS4)を類似の形式で同時に標的化した。
図18に示されているように、同時の五重の異種ブロック組込みが、cPCRアッセイによって、2個/11個のコロニー(18.2%)において確認された。
【0207】
第2の原理証明として、11個の異なる変異対立遺伝子をナイーブS.cerevisiae株に導入し、得られた株を、これらのSNPによって与えられる表現型について試験した。調べた対立遺伝子は、より速い沈降をもたらす、工業発酵に関連する1つの対立遺伝子(ACE2 S372
*)(Oud,Guadalupe−Medinaら、Proc Natl Acad Sci USA 110(45):E4223−4231,2013)、細胞分裂および分泌経路に必須の遺伝子における一連の温度感受性対立遺伝子(SEC1 G443E、SEC6 L633P、MYO2 E511K、CDC28 R283Q)(Lorincz and Reed,Mol Cell Biol 6(11):4099−4103,1986;Roumanie,Wuら、J Cell Biol 170(4):583−594,2005)ならびに高温成長の改善に関する別の対(NCS2 H71LおよびEND3 S258N)(Sinha,Davidら、Genetics 180(3):1661−1670,2008;Yang,Foulquie−Morenoら、PLoS Genet 9(8):e1003693,2013)であった。さらに、高エタノール濃度に対する耐性に関連する一連の5つの対立遺伝子を試験した(SPT15 F177S、SPT15 Y195H、SPT15 K218R、PRO1 D154NおよびPUT1欠失)(Takagi,Takaokaら、Appl Environ Microbiol 71(12):8656−8662,2005;Alper,Moxleyら、Science 314(5805):1565−1568,2006)。
【0208】
ほとんどの個別の対立遺伝子の導入に対しては、高い割合の異種ブロック組込み(>90%)が観察され(
図22)、所望の変異にまたがるPCRフラグメントのその後の配列決定から、これらの変化が確認された。温度感受性変異体を許容温度および制限温度においてアッセイすることにより、それらの意図された表現型を確認した。ACE2のトランケーションによって引き起こされた分裂中の細胞の不完全な分離は、明視野顕微鏡法によって著しい細胞集塊であることが確認された(
図23A)。CDC28、MYO2およびSEC1の温度感受性対立遺伝子は、予想どおりに37℃で成長させず(
図23B)、CDC28対立遺伝子株は、成長のG1期で停止した(
図23C)。SEC1およびSEC6変異体において制限温度での分泌欠陥を実証するために、エクソシスト複合体の構成要素SEC3を、その内在性遺伝子座においてカルボキシ末端でGFPタグ化することにより(これもCRISPRを使用して)、分泌活性のレポーターとして機能させた。SEC3は、正常には野生型細胞の芽に局在するが、その局在化は、両方の分泌変異体において明らかに乱される(
図23D)。
【0209】
多くの場合、表現型は、複数の対立遺伝子の相乗作用から生じるが、上記のような株の操作は、なおもより時間のかかるものであり、しばしば試みられていない。最適化された多重方法をこの問題に適用した。ナイーブCENPK2は、高温成長のための1つの対立遺伝子(MKT1 D30G)を有し(Yang,Foulquie−Morenoら、2013)、2つのさらなる変異が、NCS2およびEND3に導入された。一連の温度において一晩成長したとき、個々の対立遺伝子はいずれも影響を及ぼさなかった。しかしながら、一工程で組み込まれた両方のさらなる対立遺伝子を含む株は、42.7℃までの温度を生き残った(
図23E)。
【0210】
エタノール耐性対立遺伝子もまた、相乗効果を与えた。野生型CENPK2は、この実験において最大17.5%のエタノールに抵抗性であった(
図23F)。SPT15における変異は、耐性を20%のエタノールにまで高めた(
図23F)。これらの対立遺伝子の相互作用を調べるために、3つの遺伝子座に対する5つの標的化された変化をナイーブ株に同時に導入した(SPT15における3つの変異、PRO1 D154NおよびPUT1の欠失)。SPT15における3つの変異を、2つのgRNAを使用して、その3つの対立遺伝子を含む遺伝子の約150bpを切り取ることによって、単一のドナーDNAに導入した。コロニーPCRによって評価し、配列決定によって確認したとき、得られたクローンの27%が5つすべての改変を含んだ(
図22)。得られた株は、22.5%エタノールまでの、最も高いエタノール抵抗性を有した(
図23F)。これらの結果が実証するように、多重化されたCRISPRは、原因となる対立遺伝子の組み合わせに関する仮説の迅速な評価を可能にする。
【0211】
これらの結果は、本明細書中に提供されるCRISPR媒介性ゲノム組込みのために最適化された方法および組成物を用いて、正確な点変異または復帰変異が高効率かつ高多重度で達成され得ることを実証する。
6.5 実施例5:二倍体細胞の二対立遺伝子操作
【0212】
この実施例は、二倍体酵母株において同時に二対立遺伝子を組み込むための、実施例1に記載されたような最適化されたプロトコル(様式4:マーカーベクター骨格へのgRNAカセット(複数可)のインビボHR媒介性取り込み)の適用を実証する。
【0213】
二倍体の工業用SC株は、高度にヘテロ接合性であり、多くがマッピングされていないが、発酵にとって有益な形質を有する。しかしながら、これらの株は、標準的な方法では操作しにくく、遺伝子を欠失させるためまたは二対立遺伝子操作を導入するために、2つの逐次的組込み工程および異なるマーカーを必要とする。したがって、S.cerevisiaeのCAT−1およびPE−2二倍体工業用株におけるGAL80遺伝子座のCRISPR媒介性の二対立遺伝子欠失の有効性を、実施例1の最適化されたプロトコルを用いて試験した。Gal80遺伝子座を標的化するドナー配列およびgRNA配列は、実施例3に記載されている。
【0214】
図19に示されているように、ドナーDNA、およびGal80遺伝子座を標的化し、共形質転換される直鎖状のNatAマーカーベクター骨格に対して相同な末端を有する直鎖状のgRNAカセットで形質転換されたCas9を発現する株のcPCRから、CAT−1二倍体細胞において100%(
図19B)およびPE−2二倍体細胞において90%(
図19C)という二対立遺伝子ドナー組込みの割合が明らかになった。これらの割合は、一倍体CENPK2株における同じ欠失が得られた割合に匹敵する(100%;
図19A)。これらの結果は、二倍体宿主細胞を操作する場合の、本明細書中に提供されるCRISPR媒介性ゲノム組込みに対する最適化された方法および組成物の有効性を実証する。
6.6 実施例6:完全な生合成経路の多重組込み
【0215】
この実施例は、ナイーブ酵母株の生合成経路全体に同時に組み込むための、実施例1に記載されたような最適化されたプロトコルの適用(様式4:マーカーベクター骨格へのgRNAカセット(複数可)のインビボでのHR媒介性取り込み)を実証する。
【0216】
通常、代謝経路の操作は、S.cerevisiaeなどの扱いやすい宿主でさえも、時間のかかるものである。遺伝子のカセットの組込みが、薬物選択マーカーのいかなる組込みも必要とせずに、並行して実施できた場合、このタイムテーブルは、大きく改善される。ゆえに、CRISPR媒介性組込みに対する最適化されたプロトコルを、合計およそ30kbのDNAであり、ファルネセンを生成するための機能的な経路をコードする(米国特許第8,415,136号を参照のこと)12個の遺伝子カセットのS.cerevisiaeへの同時組込みに適用した。遺伝子カセットは、米国特許第8,221,982号および同第8,332,160号に記載されているポリヌクレオチドアセンブリの方法を用いて、デザインし、クローニングした。その経路を、12個の遺伝子:アセチル−CoAチオラーゼをコードするERG10;HMG−CoAシンターゼをコードするERG13;HMG−CoAレダクターゼをコードするtHMG1(2コピー);メバロン酸キナーゼをコードするERG12;ホスホメバロン酸キナーゼをコードするERG8;メバロン酸ピロリン酸デカルボキシラーゼをコードするERG19;イソペンテニルピロリン酸イソメラーゼをコードするIDI1;Artemisia annua由来のファルネセンシンターゼ(2コピー);ファルネシルピロリン酸シンテターゼをコードするERG20;および転写制御因子GAL4の組込みのために3つのドナー構築物に分けた。それらの3つの構築物を、ナイーブCENPK2 S.cerevisiaeにおけるGal80、HOおよびBUD9遺伝子座への組込みのために標的化し、ここで、中強度のFBA1プロモーター(配列番号3)の調節下のCas9をGRE3遺伝子座に標的化した。3つすべての構築物の同時のマーカーレス組込みを、実施例1に記載された最適化されたギャップ修復方法を用いて試み、組込み標的遺伝子座の5’隣接部および各ドナー構築物内の内部のリンカー配列に結合するcPCRプライマー対によって、クローンをアッセイした。
【0217】
図20に示されているように、スクリーニングした47個のクローンのうち、11個のクローン(23.4%)が、ファルネセン経路全体を構成する30kbの組込みについて陽性だった(クローン22、24、29〜32、41〜43、45および46)。48番目のクローンは、親ネガティブコントロールである。続いて、すべての三重陽性候補を、各標的遺伝子座の3’隣接部におけるcPCRによって同様にアッセイし、両方の隣接部において組込みが陽性だったことを確認した。続いて、その11個のcPCR陽性クローンを、バッチスクロースプレートモデルアッセイにおいてファルネセン生成について試験した。
図21に示されているように、11個すべてのクローンが、0.1〜およそ1.5g/Lの量の範囲の量でファルネセンを生成した。まとめると、これらの結果は、本明細書中に提供されるCRISPR媒介性ゲノム組込みに対して最適化された方法および組成物の、迅速かつ多重の代謝操作に対する有効性を実証する。多重操作のために最適化されたプロトコルを適用することにより、複雑な経路を操作するためのタイムラインを大幅に短縮することができる。例えば、S.cerevisiae株において3つの点変異を同時に導入するには、およそ6週間の作業(各対立遺伝子を導入するために1週間、各マーカーを再利用するために1週間、合計3サイクル)が必要であるのに対して、本明細書中に提供される最適化された方法を用いたときは1週間で済む。節約される時間の量は、並行して標的化される遺伝子座の数に合わせて調整する(scale)ので、ここで実証された基本的なファルネセン経路を導入するためのタイムラインは、同様に6倍圧縮される。
【0218】
さらなる概念証明として、ムコン酸への新規経路をコードする3つの遺伝子座にわたって分布している24kbのDNAを含む11個の遺伝子カセットの多重組込みを、一倍体CENPK2において試みた(
図24)。ムコン酸は、ナイロン−6,6、ポリウレタンおよびポリエチレンテレフタレート(PET)をはじめとしたバイオプラスチックの生成について大きな潜在性を有する前駆体分子である。現在、ムコン酸は、石油由来の供給材料から有機合成を介して得られているが、再生可能供給源が望ましい。ムコン酸の生合成は、芳香族アミノ酸(シキミ酸)生合成経路の過剰発現によって達成される。以前には、ムコン酸の高レベル生成(36.8g/L、フェドバッチ発酵)が、大腸菌において達成された(Niu,Drathsら、Biotechnol Prog 18(2):201−211,2002)。しかしながら、S.cerevisiaeを用いたより低いpHでの発酵が、そのプロセスの下流の処理および工業化を促進する。原理証明の取り組みにおいて、最大141mg/Lの力価が、操作されたS.cerevisiae株での振盪フラスコ実験において観察された(Curran,Leavittら、Metab Eng 15:55−66,2013)。このS.cerevisiaeにおける最初の試みとは対照的に、本実験では、天然のARO1遺伝子ではなく、大腸菌のシキミ酸経路遺伝子AROF、AROBおよびARODを使用した。操作された経路を
図24Aに示す。
【0219】
組込みのために、その経路を、CENPKにおいてGAL80、HOおよびARO1遺伝子座を標的化する3つに分離した構築物(インビボでの相同組換えによる再構成のために内部重複を有する)に分けた(
図24B)。HOを中立の遺伝子座として選択し、GAL80を、ガラクトースオペロンのグルコース抑制を無くすために選択し、操作された経路を通る流れを強制するためにARO1遺伝子座を欠失させた。ARO1の欠失は、それらの株を、芳香族アミノ酸に対する栄養素要求性にもして、バイオマス生産段階(富栄養培地中)と生産段階(最少培地中)との間で単純な切替え機構をもたらす。最適化されたギャップ修復方法を用いて、3つすべての構築物の同時のマーカーレス組込みを試み、PCRによってクローンをアッセイしたところ、4.2%という割合の三重の組込みが明らかになった(n=48)。これらの3つの構築物の組込みが9つの組換え事象(遺伝子座あたり2つのフランキングおよび1つの内部事象)を必要とすることは、注目に値する。観察された割合は、多重欠失について見られた割合よりも低いが、完全な生合成経路の導入によって、適応度に欠陥がもたらされると予想され、これは、正しく組み込まれた株の回収率を制限し得る。
【0220】
ムコン酸および中間体の生成を、96ウェル振盪プレートアッセイにおいて試験し、HPLCによって解析した。1工程で組み込まれた株は、高力価のPCA(約3g/L)を示したことから、PCAをカテコールに変換するAroYにおけるボトルネックが示された(
図24A)。下流経路の機能性を確かめるために、最大1g/Lのカテコールを、生成培地のウェルに直接供給したところ、カテコールからcis−transムコン酸への定量的変換が、操作された株では観察されたが、親株では観察されなかったことから、経路デザインにおける単一の欠陥がAroYにあることが明確に特定された。
【0221】
最適化されたギャップ修復方法方法の有効性を第2の工業的に妥当な酵母において試験するために、6つの遺伝子を含むよりコンパクトなバージョンのムコン酸経路をK.lactisにおいて組み込む試みを行った。その経路を、DIT1、ADH1およびNDT80遺伝子座を標的化する3つの組込み構築物に分けた。Cas9をGAL80遺伝子座にインテグレートし、YKU80を欠失させて非相同末端結合の作用を最小限にすることによって、ナイーブK.lactis株(ATCC8585)を調製した(Kooistra,Hooykaasら、Yeast 21(9):781−792,2004;Wesolowski−Louvel,FEMS Yeast Res 11(6):509−513,2011)。3つすべての構築物のマーカーレス組込みを、同じギャップ修復方法を用いるが、pKD1安定性エレメントを含むプラスミド骨格を用いる、1工程で達成した(Chen,Wesolowski−Louvelら、J Basic Microbiol 28(4):211−220,1988)。PCRによってアッセイしたとき、三重の組込みは、2.1%の割合で生じた(n=48)。CENPKの結果と同様に、高力価のPCA(1g/L)が観察されたが、ムコン酸の生成は観察されなかった(
図24E)。カテコール供給実験によって、AROYの機能における同じ欠陥が確認された。ARO1は、このK.lactis株において欠失されておらず、この矛盾が、観察されたより低力価のPCAを説明し得ることは、注目に値する。それにもかかわらず、これらの結果は、1ヶ月未満で、2つの工業的に妥当な酵母株においてムコン酸生成をプロトタイプとし(prototype)、制限している酵素を同定する能力を実証するものであり、これは、迅速なデザイン反復を促進し、2つの有望な宿主のサンプリングを可能にしたワークフローである。
6.7 実施例7:哺乳動物細胞における組込みの改善
【0222】
この実施例は、哺乳動物宿主細胞において組込みの割合の改善を達成するための、実施例1に記載されたような最適化されたプロトコル(様式4:マーカーベクター骨格へのgRNAカセット(複数可)のインビボHR媒介性取り込み)の適用を実証する。
【0223】
S.cerevisiaeに対して上に記載されたgRNAに対するギャップ修復送達方法が、哺乳動物細胞においても組込みの割合を改善し得るかどうかを試験するために、HEK−293T細胞におけるトランスフェクション実験のために一連の試薬を作製した。概要としては、CD4エピトープタグの5’部分に2A−リンカーを介して融合されたCas9発現カセットを含む線状化したプラスミド骨格、AAVS1遺伝子座を標的化するgRNAカセットを含むフラグメント、ならびに後の診断を目的とする(ギャップ修復状態)EcoRI部位を挟む上流および下流のホモロジーを含む、相同組換えによってその遺伝子座を修復するためのドナーDNAフラグメントで細胞を共トランスフェクトした。このトランスフェクションを、閉環状プラスミドに含められたCas9−2A−CD4発現カセットおよびgRNAカセットを用いたコントロール反応(ポジティブコントロール)と比較した。さらに、gRNAを含まないプラスミドをネガティブコントロールとして使用することにより、CRISPR−Cas9の非存在下において、ドナーDNAの相同組込みが測定可能な割合で生じたかどうかを評価した。トランスフェクションの後、CD4+細胞(トランスフェクトされた細胞)を、抗体が結合した磁気ビーズを用いて単離し、細胞を溶出し、ゲノムDNA調製物において使用した。組込み部位を包含する領域のPCRを行い、PCR産物をEcoRIで消化することにより、標的部位にドナーDNAをインテグレートしていた細胞の画分を決定した。
【0224】
材料および方法
【0225】
Cas9ヌクレアーゼおよび関連するgRNAの発現。LifeTech/GeneArt CRISPR Nuclease with CD4 enrichment kit(A21175)を使用した。製造業者の指示に従って、AAVS1領域の内側の配列(AAVS1、MaliらからのT2gRNA)をコードする二本鎖オリゴヌクレオチド(オリゴCUT1216およびCUT1217をアニーリングすることによって調製される)を、提供された線状化したベクターにライゲートすることにより、pAM3473(配列番号98)を作製した。そのプラスミドをマキシプレップした(Qiagen)。
【0226】
ギャップ修復の試験に適したバージョンのpAM3473の作製。pAM3473プラスミドをBst1107IおよびNheIで消化することにより、gRNAカセット全体CD4 ORFの一部を除去した。その骨格をCIP(アルカリホスファターゼ)処理し、ゲル精製した。ユニークなClaIおよびXmaI部位を含み、直鎖状のベクターに適合したオーバーハングを有するマルチクローニングサイト(MCS)二本鎖オリゴを、CUT1214(配列番号103)オリゴおよびCUT1215(配列番号104)オリゴをアニーリングすることによって調製した。その二本鎖オリゴを精製された骨格にライゲートすることにより、pAM3472(配列番号97)を作製した。そのプラスミドをマキシプレップした(Qiagen)。使用する前に、そのプラスミドをClaIおよびNheIで消化することによって線状化し、エタノール沈殿によって精製/濃縮した。
【0227】
CD4エピトープだけを含む(およびgRNAを含まない)コントロールプラスミドの作製。pAM3473(配列番号98)をBst1107IおよびPacIで消化し、その骨格をCIP処理し、ゲル精製した。gRNAカセットを含まない骨格を再環状化するようにデザインされた二本鎖オリゴを、CUT1254(配列番号113)オリゴおよびCUT1255(配列番号114)オリゴをアニーリングすることによって調製し、ベクター骨格にライゲートすることにより、pAM15068(配列番号102;以前は「A2」として知られた)を作製した。
【0228】
線状化したpAM3472へのAAVS1 gRNAカセットのギャップ修復のためのフラグメントの調製。プライマーCUT1220(配列番号107)およびCUT1221(配列番号108)を使用して、pAM3473からの2850bpのフラグメントを増幅した。その生成物を、ギャップ修復(大腸菌)によってRYSE09アクセプターベクターにサブクローニングし、その構築物を、pAM3515(配列番号100)を作製するために、配列決定することによって検証した。トランスフェクションの前に、フランキングプライマーRYSE0(配列番号117)およびRYSE19(配列番号118)を使用するPhusion PCR増幅によって直鎖状のフラグメントを調製し、そのPCR産物を、Ampureビーズ(Axygen)を用いて精製した。トランスフェクションの前に、フランキングプライマーRYSE0およびRYSE19を使用するPhusion PCR増幅によって直鎖状のフラグメントを調製し、そのPCR産物を、Ampureビーズ(Axygen)を用いて精製した。
【0229】
線状化したpAM3472へのCD4のみのコントロールフラグメントのギャップ修復のためのフラグメントの調製。プライマーCUT1220(配列番号107)およびCUT1252(配列番号111)をPhusion PCR反応において使用し、pAM3473を鋳型として使用して、CD4 ORFの3’末端を含む上流フラグメントを増幅し、プライマーCUT1253(配列番号112)およびCUT1221(配列番号108)を使用して、gRNAカセットの下流のフランキングホモロジーを含む下流のフラグメントを増幅した。これらの2つのフラグメントをゲル精製し、第2の融合PCR反応において使用し、プライマーRYSE0およびRYSE19を約2kbの生成物の増幅のために使用した。その生成物をギャップ修復(大腸菌)によってRYSE09アクセプターベクターにサブクローニングし、その構築物を、pAM3516(配列番号101)を作製するために、配列決定することによって検証した。トランスフェクションの前に、フランキングプライマーRYSE0およびRYSE19を使用するPhusion PCR PCR増幅によってこの鋳型から直鎖状のフラグメントを調製し、そのPCR産物を、Ampureビーズ(Axygen)を用いて精製した。
【0230】
AAVS1標的遺伝子座にEcoRI部位を導入するためのドナーDNAの調製。プライマーCUT1226(配列番号119)およびCUT1223(配列番号120)を使用し、Phusionポリメラーゼを用いて、ヒトゲノムDNA(HEK−293細胞由来)からのその3’末端に合成EcoRI部位を含む約570bpの上流フラグメントを増幅した。プライマーCUT1224(配列番号109)およびCUT1227(配列番号110)を使用して、同じヒトゲノム鋳型からのその5’末端にEcoRI部位を含む約540bpの下流フラグメントを増幅した。それらのフラグメントを、フランキングプライマーRYSE0およびRYSE19とともにPhusionポリメラーゼを使用する融合PCRによってアセンブルし、約1100bpのフラグメントを、ギャップ修復(大腸菌)によって、線状化したRYSE09ベクターにサブクローニングした。その構築物を、pAM3514(配列番号99)を作製するために、配列決定することによって検証した。トランスフェクションの前に、フランキングプライマーRYSE0およびRYSE19を使用するPhusion PCR増幅によってこの鋳型から直鎖状のフラグメントを調製し、そのPCR産物を、Ampureビーズ(Axygen)を用いて精製した。
【0231】
トランスフェクション実験。製造業者の指示に従ってLipofectamine3000を使用して(LF3000に対して1.5倍のDNAという比で)、70%コンフルエントの接着性293T細胞をDNAでトランスフェクトした。表8は、各トランスフェクション(2つ組で行われた)に使用されたDNA構築物およびDNAの量を提供している。
【表8】
【0232】
48時間後、TryplE試薬(LifeTech)を用いて細胞を回収し、Dynabeads CD4 Positive Isolation Kit(LifeTech)を用いてCD4+細胞を精製した。結合した細胞を、製造業者の指示に従ってビーズから溶出し、製造業者の指示に従ってPrepgem Tissue Kit(Zygem)を使用してゲノムDNAを調製した。
【0233】
EcoRI部位の組込みについてのRFLPアッセイ。意図されるゲノム組込みの状況のドナーDNAだけが生成物をもたらすように、EcoRI組込み部位を包含するプライマーセット(CUT1297(配列番号116)およびCUT1294(配列番号115))および「外側」プライマーとともにPhusionポリメラーゼを用いて増幅されたPCRフラグメント(920bp)に対して、RFLPアッセイを行った。フラグメントを、Ampureビーズ(Axygen)を用いて精製し、EcoRIで消化した。相同組換えによって組み込まれたEcoRI部位を有するPCR産物は、348bpおよび572bpのフラグメントをもたらした。組み込まれたEcoRI部位を有する鋳型の割合は、デンシトメトリー(Image J)によって、式:消化バンド密度(348bp+572bpの密度)/総密度(348bp+572bp+920bpの密度)を用いて算出された。
【0234】
結果
【0235】
ギャップ修復を要求することによって、相同組込みの割合が高まり得るかどうかを試験するために、本発明者らは、プラスミドと直鎖状DNAとのいくつかの異なる組み合わせ(表8および
図25)でトランスフェクトしたHEK−293T細胞において、EcoRI部位のドナーDNA挿入の割合を比較した。EcoRIドナーDNAが、CRISPR−Cas9による標的化切断の非存在下において、いくらか測定可能なレベルでAAVS1遺伝子座にインテグレートし得るかを評価するために、Cas9−2A−CD4 ORFを含むがgRNAカセットを含まないプラスミドpAM15068、および直鎖状のドナーDNA(pAM3514のPCR産物)で細胞をトランスフェクトした。トランスフェクトされた細胞を、ダイナビーズを用いて精製し、ゲノム鋳型を調製し、組込み部位にまたがるPCR産物を消化したところ、消化産物は生成されなかったことから、EcoRI部位の組込みの割合は、CRISPR−Cas9の非存在下において、測定可能でないことが示された(
図25、トランスフェクション2)。完全なCD4 ORFを欠く線状化したpAM3472プラスミドがそれ自体に対してCD4+表現型を付与できないことを確認するために、この直鎖状のフラグメントだけを用いてトランスフェクションを行った。これらの精製された細胞から調製された鋳型からPCR産物が得られなかったことから、PCR反応に対する鋳型として作用するためには、トランスフェクトされた細胞のダイナビーズとの会合が不十分であることが示された(
図25、トランスフェクション3)。ギャップ修復が、CD4 ORFを再構成できることを確認するために、線状化したpAM3472プラスミドを、CD4ギャップ修復フラグメント(pAM3516のPCR産物)と共トランスフェクトしたところ、これらのトランスフェクションから精製された細胞由来の鋳型は、920bpのバンドをもたらしたが、gRNAが存在しなかったので、消化産物をもたらさなかった(
図25、トランスフェクション4)。次に、AAVS1 gRNAを含むトランスフェクションを調べた。AAVS1 gRNAを伴うCRISPR−Cas9システムの機能についてのベースラインを確立するために、本発明者らは、Cas9の発現カセット、CD4およびgRNAを含む閉環状プラスミド(pAM3473)ならびに直鎖状のドナーDNA構築物(pAM3514のPCR産物)を共トランスフェクトした。そのPCR産物のEcoRI消化は、572および348bpの脱落産物を示したことから、全PCR産物のわずかしか消化されなかったことが示された(
図25、トランスフェクション6)。Image Jソフトウェアを用いたバンド密度の定量から、全鋳型の22.5%がEcoRI部位を含んだことが明らかになった。ギャップ修復がこの割合を改善し得るかどうかを評価するために、本発明者らは、線状化したpAM3472ベクターならびにCD4の欠損部分およびgRNAカセットを含むギャップ修復フラグメント(pAM3515のPCR産物)を閉環状ベクターの代わりに用いた(
図25、トランスフェクション8)。デンシトメトリープロセスを繰り返したところ、本発明者らは、全鋳型の47.5%がEcoRI部位を含んだことを観察した。これは、閉環状プラスミドに対して観察された割合(トランスフェクション6)に対して2.1%倍の改善に相当するので、哺乳動物細胞において、ゲノム組込みに対する改善されたギャップ修復方法の有効性が確認された。
【0236】
本明細書において引用されたすべての刊行物、特許および特許出願は、各個別の刊行物または特許出願が具体的かつ個別に参照により援用されると示されたかのように、本明細書中に参照により援用される。前述の発明は、理解を明確にする目的で例証および例示のためにいくらか詳細に記載されてきたが、本発明の教示に照らして、ある特定の変更および改変が、添付の特許請求の範囲の精神または範囲から逸脱することなく本発明に対して行われ得ることは、当業者には容易に明らかである。
例えば、本発明は、以下の項目を提供する。
(項目1)
相同組換えに適格性である宿主細胞を選択する方法であって、該方法は、
(a)1つまたはそれを超える宿主細胞を、それ自体との相同組換えまたは細胞の集団と接触される1つもしくはそれを超えるさらなる直鎖状核酸との相同組換えが可能な直鎖状核酸と接触させる工程であって、ここで、該相同組換えによって、選択マーカーのコード配列を含む環状の染色体外核酸が形成される、工程;および
(b)該選択マーカーを発現する宿主細胞を選択する工程
を含む、方法。
(項目2)
宿主細胞ゲノムの標的部位に外来性核酸を組み込むための方法であって、該方法は、
(a)1つまたはそれを超える宿主細胞を、
(i)該宿主細胞ゲノムの標的部位(TS)において、相同組換えを介して組み換わることができる外来性核酸(ES);
(ii)TSに断裂を作製することができるヌクレアーゼ(N);および
(iii)それ自体との相同組換えまたは該宿主細胞と接触される1つもしくはそれを超えるさらなる直鎖状核酸との相同組換えが可能な直鎖状核酸であって、ここで、該相同組換えによって、選択マーカーのコード配列を含む環状の染色体外核酸が形成される、直鎖状核酸
と接触させる工程;
ならびに
(b)該選択マーカーを発現する宿主細胞を選択する工程
を含む、方法。
(項目3)
前記直鎖状核酸が、互いとの相同組換えが可能な2つの内部相同性領域を含み、ここで、該内部相同性領域の相同組換えによって、前記選択マーカーを発現する前記環状の染色体外核酸が形成される、項目1または2に記載の方法。
(項目4)
前記直鎖状核酸が、前記宿主細胞と接触されるさらなる直鎖状核酸の相同性領域と組み換わることができる相同性領域を含み、2つの該直鎖状核酸の相同組換えによって、前記選択マーカーを発現する前記環状の染色体外核酸が形成される、項目1または2に記載の方法。
(項目5)
前記直鎖状核酸が、前記選択マーカーの部分的なコード配列、中断されたコード配列および/または不連続のコード配列を含み、該選択マーカーは、該直鎖状核酸から発現され得ず、前記環状の染色体外核酸の前記形成によって、該選択マーカーの完全なコード配列が形成され、該選択マーカーは、該環状の染色体外核酸から発現され得る、項目1〜4のいずれか1項に記載の方法。
(項目6)
接触される前記宿主細胞(複数可)が、前記選択する工程の前に、少なくとも約12、24、36、48、72時間または72時間より長い期間にわたって培養される、項目1〜5のいずれか1項に記載の方法。
(項目7)
接触される前記細胞が、前記選択マーカーを発現しない細胞の生存に対して選択する培養条件下で培養される、項目1〜6のいずれか1項に記載の方法。
(項目8)
工程(b)という前記選択する工程が、視覚的検出法、比色法または蛍光検出法によって前記選択マーカーの発現を検出する工程を含む、項目1〜7のいずれか1項に記載の方法。
(項目9)
ESがTSにおいて相同的に組み換えられた宿主細胞を回収する工程をさらに含む、項目2〜8のいずれか1項に記載の方法。
(項目10)
前記回収する工程が、前記宿主細胞ゲノムへの選択マーカーの組込みを必要としない、項目9に記載の方法。
(項目11)
前記回収する工程が、スクリーニングされた10、9、8、7、6、5、4、3もしくは2個の接触された宿主細胞毎またはそれらのクローン集団毎に少なくとも約1回の頻度で行われる、項目9に記載の方法。
(項目12)
選択された前記宿主細胞から前記環状の染色体外核酸を除去する工程をさらに含む、項目2〜11のいずれか1項に記載の方法。
(項目13)
複数(n個)の外来性核酸が、前記宿主細胞ゲノムの複数(n個)の標的部位に組み込まれ、ここで、nは、少なくとも2であり、工程(a)は、前記宿主細胞を
(i)該複数の外来性核酸であって、ここで、
xは、1からnまで変動する整数であり、各整数xに対して、外来性核酸(ES)xの各々は、該宿主細胞ゲノムの該複数(n個)の標的部位から選択される標的部位(TS)xにおいて、相同組換えを介して組み換わることができる、外来性核酸;
(ii)該標的部位(TS)xの各々に対して、(TS)xにおいて断裂をもたらすことができるヌクレアーゼ(N)x
と接触させる工程を含む、項目2〜12のいずれか1項に記載の方法。
(項目14)
単一のヌクレアーゼが、(TS)xの各々を切断することができる、項目13に記載の方法。
(項目15)
n=3、4、5、6、7、8、9または10である、項目13または14に記載の方法。
(項目16)
ESが、第1の相同性領域(HR1)および第2の相同性領域(HR2)を含み、ここで、HR1およびHR2は、相同組換えを介して、それぞれ第3の相同性領域(HR3)および第4の相同性領域(HR4)と組み換わることができ、HR3およびHR4は各々、TSに存在する、項目2〜15のいずれか1項に記載の方法。
(項目17)
Nが、TSに一本鎖断裂または二本鎖断裂をもたらすことができる、項目2〜16のいずれか1項に記載の方法。
(項目18)
ESが、目的の核酸Dをさらに含む、項目2〜17のいずれか1項に記載の方法。
(項目19)
Dが、選択マーカー、プロモーター、エピトープタグをコードする核酸配列、目的の遺伝子、レポーター遺伝子、および終止コドンをコードする核酸配列からなる群より選択される、項目18に記載の方法。
(項目20)
ESが、直鎖状である、項目2〜19のいずれか1項に記載の方法。
(項目21)
前記環状の染色体外核酸が、前記ヌクレアーゼのコード配列をさらに含む、項目2〜20のいずれか1項に記載の方法。
(項目22)
前記ヌクレアーゼが、RNAガイドDNAエンドヌクレアーゼである、項目2〜21のいずれか1項に記載の方法。
(項目23)
前記RNAガイドDNAエンドヌクレアーゼが、Cas9エンドヌクレアーゼである、項目22に記載の方法。
(項目24)
前記環状の染色体外核酸が、前記RNAガイドDNAエンドヌクレアーゼによるTSの部位特異的な認識および切断を可能にする、crRNA活性およびtracrRNA活性をコードする配列をさらに含む、項目22または23に記載の方法。
(項目25)
前記crRNA活性および前記tracrRNA活性が、単一の連続したRNA分子として発現される、項目24に記載の方法。
(項目26)
前記ヌクレアーゼが、エンドヌクレアーゼ、ジンクフィンガーヌクレアーゼ、TAL−エフェクターDNA結合ドメイン−ヌクレアーゼ融合タンパク質(TALEN)、トランスポザーゼおよび部位特異的リコンビナーゼからなる群より選択される、項目2〜21のいずれか1項に記載の方法。
(項目27)
前記ジンクフィンガーヌクレアーゼが、操作されたジンクフィンガー結合ドメインに融合されたタイプIIS制限エンドヌクレアーゼの切断ドメインを含む融合タンパク質である、項目26に記載の方法。
(項目28)
前記タイプIIS制限エンドヌクレアーゼが、HOエンドヌクレアーゼおよびFokIエンドヌクレアーゼからなる群より選択される、項目27に記載の方法。
(項目29)
前記ジンクフィンガー結合ドメインが、3、5または6つのジンクフィンガーを含む、項目27に記載の方法。
(項目30)
前記エンドヌクレアーゼが、LAGLIDADGホーミングエンドヌクレアーゼ、HNHホーミングエンドヌクレアーゼ、His−Cysボックスホーミングエンドヌクレアーゼ、GIY−YIGホーミングエンドヌクレアーゼおよびシアノバクテリアホーミングエンドヌクレアーゼからなる群より選択されるホーミングエンドヌクレアーゼである、項目26に記載の方法。
(項目31)
前記エンドヌクレアーゼが、H−DreI、I−SceI、I−SceII、I−SceIII、I−SceIV、I−SceV、I−SceVI、I−SceVII、I−CeuI、I−CeuAIIP、I−CreI、I−CrepsbIP、I−CrepsbIIP、I−CrepsbIIIP、I−CrepsbIVP、I−TliI、I−PpoI、Pi−PspI、F−SceI、F−SceII、F−SuvI、F−CphI、F−TevI、F−TevII、I−AmaI、I−AniI、I−ChuI、I−CmoeI、I−CpaI、I−CpaII、I−CsmI、I−CvuI、I−CvuAIP、I−DdiI、I−DdiII、I−DirI、I−DmoI、I−HmuI、I−HmuII、I−HsNIP、I−LlaI、I−MsoI、I−NaaI、I−NanI、I−NclIP、I−NgrIP、I−NitI、I−NjaI、I−Nsp236IP、I−PakI、I−PboIP、I−PcuIP、I−PcuAI、I−PcuVI、I−PgrIP、I−PobIP、I−PorI、I−PorIIP、I−PbpIP、I−SpBetaIP、I−ScaI、I−SexIP、I−SneIP、I−SpomI、I−SpomCP、I−SpomIP、I−SpomIIP、I−SquIP、I−Ssp68031、I−SthPhiJP、I−SthPhiST3P、I−SthPhiSTe3bP、I−TdeIP、I−TevI、I−TevII、I−TevIII、i−UarAP、i−UarHGPAIP、I−UarHGPA13P、I−VinIP、I−ZbiIP、PI−MgaI、PI−MtuI、PI−MtuHIP PI−MtuHIIP、PI−PfuI、PI−PfuII、PI−PkoI、PI−PkoII、PI−Rma43812IP、PI−SpBetaIP、PI−SceI、PI−TfuI、PI−TfuII、PI−ThyI、PI−TliIまたはPI−TliIIからなる群より選択される、項目26に記載の方法。
(項目32)
前記エンドヌクレアーゼが、内在性ゲノム配列に特異的に結合するように改変されており、該改変されたエンドヌクレアーゼは、もはやその野生型エンドヌクレアーゼ認識配列に結合しない、項目26に記載の方法。
(項目33)
前記改変されたエンドヌクレアーゼが、LAGLIDADGホーミングエンドヌクレアーゼ、HNHホーミングエンドヌクレアーゼ、His−Cysボックスホーミングエンドヌクレアーゼ、GIY−YIGホーミングエンドヌクレアーゼおよびシアノバクテリアホーミングエンドヌクレアーゼからなる群より選択されるホーミングエンドヌクレアーゼに由来する、項目32に記載の方法。
(項目34)
前記改変されたエンドヌクレアーゼが、H−DreI、I−SceI、I−SceII、I−SceIII、I−SceIV、I−SceV、I−SceVI、I−SceVII、I−CeuI、I−CeuAIIP、I−CreI、I−CrepsbIP、I−CrepsbIIP、I−CrepsbIIIP、I−CrepsbIVP、I−TliI、I−PpoI、Pi−PspI、F−SceI、F−SceII、F−SuvI、F−CphI、F−TevI、F−TevII、I−AmaI、I−AniI、I−ChuI、I−CmoeI、I−CpaI、I−CpaII、I−CsmI、I−CvuI、I−CvuAIP、I−DdiI、I−DdiII、I−DirI、I−DmoI、I−HmuI、I−HmuII、I−HsNIP、I−LlaI、I−MsoI、I−NaaI、I−NanI、I−NclIP、I−NgrIP、I−NitI、I−NjaI、I−Nsp236IP、I−PakI、I−PboIP、I−PcuIP、I−PcuAI、I−PcuVI、I−PgrIP、I−PobIP、I−PorI、I−PorIIP、I−PbpIP、I−SpBetaIP、I−ScaI、I−SexIP、I−SneIP、I−SpomI、I−SpomCP、I−SpomIP、I−SpomIIP、I−SquIP、I−Ssp68031、I−SthPhiJP、I−SthPhiST3P、I−SthPhiSTe3bP、I−TdeIP、I−TevI、I−TevII、I−TevIII、i−UarAP、i−UarHGPAIP、I−UarHGPA13P、I−VinIP、I−ZbiIP、PI−MgaI、PI−MtuI、PI−MtuHIP
PI−MtuHIIP、PI−PfuI、PI−PfuII、PI−PkoI、PI−PkoII、PI−Rma43812IP、PI−SpBetaIP、PI−SceI、PI−TfuI、PI−TfuII、PI−ThyI、PI−TliIまたはPI−TliIIからなる群より選択されるエンドヌクレアーゼに由来する、項目32に記載の方法。
(項目35)
前記宿主細胞が、原核細胞である、項目1〜34のいずれか1項に記載の方法。
(項目36)
前記宿主細胞が、真核細胞である、項目1〜34のいずれか1項に記載の方法。
(項目37)
前記宿主細胞が、真菌細胞、細菌細胞、植物細胞、昆虫細胞、鳥類細胞、魚類細胞および哺乳動物細胞からなる群より選択される、項目1〜34のいずれか1項に記載の方法。
(項目38)
前記宿主細胞が、げっ歯類細胞、霊長類細胞およびヒト細胞からなる群より選択される哺乳動物細胞である、項目1〜34のいずれか1項に記載の方法。
(項目39)
前記宿主細胞が、ヒト細胞である、項目1〜34のいずれか1項に記載の方法。
(項目40)
前記宿主細胞が、酵母細胞である、項目1〜34のいずれか1項に記載の方法。
(項目41)
前記酵母が、Saccharomyces cerevisiaeである、項目40に記載の方法。
(項目42)
宿主細胞であって、(i)該宿主細胞ゲノムの標的部位(TS)において、相同組換えを介して組み換わることができる、外来性核酸(ES);
(ii)TSにおいて断裂をもたらすことができるヌクレアーゼ(N);および
(iii)それ自体との相同組換えまたは該宿主細胞内の1つもしくはそれを超えるさらなる直鎖状核酸との相同組換えが可能な直鎖状核酸であって、該相同組換えによって、選択マーカーのコード配列を含む環状の染色体外核酸が形成される、直鎖状核酸
を含む、宿主細胞。
(項目43)
前記直鎖状核酸が、互いとの相同組換えが可能な2つの内部相同性領域を含み、ここで、該内部相同性領域の相同組換えによって、前記選択マーカーを発現する前記環状の染色体外核酸が形成される、項目42に記載の宿主細胞。
(項目44)
前記直鎖状核酸が、前記宿主細胞内のさらなる直鎖状核酸の相同性領域と組み換わることができる相同性領域を含み、2つの該直鎖状核酸の相同組換えによって、前記選択マーカーを発現する前記環状の染色体外核酸が形成される、項目42に記載の宿主細胞。
(項目45)
前記直鎖状核酸が、前記選択マーカーの部分的なコード配列、中断されたコード配列および/または不連続のコード配列を含み、該選択マーカーは、該直鎖状核酸から発現され得ず、前記環状の染色体外核酸の前記形成によって、該選択マーカーの完全なコード配列が形成され、該選択マーカーは、該環状の染色体外核酸から発現され得る、項目42〜44のいずれか1項に記載の宿主細胞。
(項目46)
前記宿主細胞が、
(i)複数の外来性核酸であって、ここで、
xは、1からnまで変動する整数であり、各整数xに対して、外来性核酸(ES)xの各々は、該宿主細胞ゲノムの前記複数(n個)の標的部位から選択される標的部位(TS)xにおいて、相同組換えを介して組み換わることができる、外来性核酸;
(ii)該標的部位(TS)xの各々に対して、(TS)xにおいて断裂をもたらすことができるヌクレアーゼ(N)x
を含む、項目42〜45のいずれか1項に記載の宿主細胞。
(項目47)
ESが、第1の相同性領域(HR1)および第2の相同性領域(HR2)を含み、ここで、HR1およびHR2は、相同組換えを介して、それぞれ第3の相同性領域(HR3)および第4の相同性領域(HR4)と組み換わることができ、HR3およびHR4は各々、TSに存在する、項目42〜46のいずれか1項に記載の宿主細胞。
(項目48)
Nが、TSに一本鎖断裂または二本鎖断裂をもたらすことができる、項目42〜41のいずれか1項に記載の宿主細胞。
(項目49)
ESが、目的の核酸Dをさらに含む、項目42〜48のいずれか1項に記載の宿主細胞。
(項目50)
Dが、選択マーカー、プロモーター、エピトープタグをコードする核酸配列、目的の遺伝子、レポーター遺伝子、および終止コドンをコードする核酸配列からなる群より選択される、項目49に記載の宿主細胞。
(項目51)
ESが、直鎖状である、項目42〜50のいずれか1項に記載の宿主細胞。
(項目52)
前記環状の染色体外核酸が、前記ヌクレアーゼのコード配列をさらに含む、項目42〜51のいずれか1項に記載の宿主細胞。
(項目53)
前記ヌクレアーゼが、RNAガイドDNAエンドヌクレアーゼである、項目42〜52のいずれか1項に記載の宿主細胞。
(項目54)
前記RNAガイドDNAエンドヌクレアーゼが、Cas9エンドヌクレアーゼである、項目53に記載の宿主細胞。
(項目55)
前記環状の染色体外核酸が、前記RNAガイドDNAエンドヌクレアーゼによるTSの部位特異的な認識および切断を可能にする、crRNA活性およびtracrRNA活性をコードする配列をさらに含む、項目53または54に記載の宿主細胞。
(項目56)
前記crRNA活性および前記tracrRNA活性が、単一の連続したRNA分子として発現される、項目55に記載の宿主細胞。
(項目57)
前記ヌクレアーゼが、エンドヌクレアーゼ、ジンクフィンガーヌクレアーゼ、TAL−エフェクターDNA結合ドメイン−ヌクレアーゼ融合タンパク質(TALEN)、トランスポザーゼおよび部位特異的リコンビナーゼからなる群より選択される、項目42〜56のいずれか1項に記載の宿主細胞。
(項目58)
前記ジンクフィンガーヌクレアーゼが、操作されたジンクフィンガー結合ドメインに融合されたタイプIIS制限エンドヌクレアーゼの切断ドメインを含む融合タンパク質である、項目57に記載の宿主細胞。
(項目59)
前記タイプIIS制限エンドヌクレアーゼが、HOエンドヌクレアーゼおよびFokIエンドヌクレアーゼからなる群より選択される、項目58に記載の宿主細胞。
(項目60)
前記ジンクフィンガー結合ドメインが、3、5または6つのジンクフィンガーを含む、項目58に記載の宿主細胞。
(項目61)
前記エンドヌクレアーゼが、LAGLIDADGホーミングエンドヌクレアーゼ、HNHホーミングエンドヌクレアーゼ、His−Cysボックスホーミングエンドヌクレアーゼ、GIY−YIGホーミングエンドヌクレアーゼおよびシアノバクテリアホーミングエンドヌクレアーゼからなる群より選択されるホーミングエンドヌクレアーゼである、項目58に記載の宿主細胞。
(項目62)
前記エンドヌクレアーゼが、H−DreI、I−SceI、I−SceII、I−SceIII、I−SceIV、I−SceV、I−SceVI、I−SceVII、I−CeuI、I−CeuAIIP、I−CreI、I−CrepsbIP、I−CrepsbIIP、I−CrepsbIIIP、I−CrepsbIVP、I−TliI、I−PpoI、Pi−PspI、F−SceI、F−SceII、F−SuvI、F−CphI、F−TevI、F−TevII、I−AmaI、I−AniI、I−ChuI、I−CmoeI、I−CpaI、I−CpaII、I−CsmI、I−CvuI、I−CvuAIP、I−DdiI、I−DdiII、I−DirI、I−DmoI、I−HmuI、I−HmuII、I−HsNIP、I−LlaI、I−MsoI、I−NaaI、I−NanI、I−NclIP、I−NgrIP、I−NitI、I−NjaI、I−Nsp236IP、I−PakI、I−PboIP、I−PcuIP、I−PcuAI、I−PcuVI、I−PgrIP、I−PobIP、I−PorI、I−PorIIP、I−PbpIP、I−SpBetaIP、I−ScaI、I−SexIP、I−SneIP、I−SpomI、I−SpomCP、I−SpomIP、I−SpomIIP、I−SquIP、I−Ssp68031、I−SthPhiJP、I−SthPhiST3P、I−SthPhiSTe3bP、I−TdeIP、I−TevI、I−TevII、I−TevIII、i−UarAP、i−UarHGPAIP、I−UarHGPA13P、I−VinIP、I−ZbiIP、PI−MgaI、PI−MtuI、PI−MtuHIP PI−MtuHIIP、PI−PfuI、PI−PfuII、PI−PkoI、PI−PkoII、PI−Rma43812IP、PI−SpBetaIP、PI−SceI、PI−TfuI、PI−TfuII、PI−ThyI、PI−TliIまたはPI−TliIIからなる群より選択される、項目58に記載の宿主細胞。
(項目63)
前記エンドヌクレアーゼが、内在性ゲノム配列に特異的に結合するように改変されており、該改変されたエンドヌクレアーゼは、もはやその野生型エンドヌクレアーゼ認識配列に結合しない、項目58に記載の宿主細胞。
(項目64)
前記改変されたエンドヌクレアーゼが、LAGLIDADGホーミングエンドヌクレアーゼ、HNHホーミングエンドヌクレアーゼ、His−Cysボックスホーミングエンドヌクレアーゼ、GIY−YIGホーミングエンドヌクレアーゼおよびシアノバクテリアホーミングエンドヌクレアーゼからなる群より選択されるホーミングエンドヌクレアーゼに由来する、項目63に記載の宿主細胞。
(項目65)
前記改変されたエンドヌクレアーゼが、H−DreI、I−SceI、I−SceII、I−SceIII、I−SceIV、I−SceV、I−SceVI、I−SceVII、I−CeuI、I−CeuAIIP、I−CreI、I−CrepsbIP、I−CrepsbIIP、I−CrepsbIIIP、I−CrepsbIVP、I−TliI、I−PpoI、Pi−PspI、F−SceI、F−SceII、F−SuvI、F−CphI、F−TevI、F−TevII、I−AmaI、I−AniI、I−ChuI、I−CmoeI、I−CpaI、I−CpaII、I−CsmI、I−CvuI、I−CvuAIP、I−DdiI、I−DdiII、I−DirI、I−DmoI、I−HmuI、I−HmuII、I−HsNIP、I−LlaI、I−MsoI、I−NaaI、I−NanI、I−NclIP、I−NgrIP、I−NitI、I−NjaI、I−Nsp236IP、I−PakI、I−PboIP、I−PcuIP、I−PcuAI、I−PcuVI、I−PgrIP、I−PobIP、I−PorI、I−PorIIP、I−PbpIP、I−SpBetaIP、I−ScaI、I−SexIP、I−SneIP、I−SpomI、I−SpomCP、I−SpomIP、I−SpomIIP、I−SquIP、I−Ssp68031、I−SthPhiJP、I−SthPhiST3P、I−SthPhiSTe3bP、I−TdeIP、I−TevI、I−TevII、I−TevIII、i−UarAP、i−UarHGPAIP、I−UarHGPA13P、I−VinIP、I−ZbiIP、PI−MgaI、PI−MtuI、PI−MtuHIP
PI−MtuHIIP、PI−PfuI、PI−PfuII、PI−PkoI、PI−PkoII、PI−Rma43812IP、PI−SpBetaIP、PI−SceI、PI−TfuI、PI−TfuII、PI−ThyI、PI−TliIまたはPI−TliIIからなる群より選択されるエンドヌクレアーゼに由来する、項目63に記載の宿主細胞。
(項目66)
(a)部位特異的ヌクレアーゼ、または部位特異的ヌクレアーゼのコード配列を含む核酸;および
(b)宿主細胞において互いとの相同組換えが可能な2つの内部相同性領域を含む直鎖状核酸であって、ここで、該内部相同性領域の相同組換えによって、選択マーカーのコード配列を含む環状核酸が形成される、直鎖状核酸
を含む、組成物。
(項目67)
前記直鎖状核酸が、前記選択マーカーの部分的なコード配列、中断されたコード配列および/または不連続のコード配列を含み、該選択マーカーは、宿主細胞において該直鎖状核酸から発現され得ず、前記環状核酸の前記形成によって、該選択マーカーの完全なコード配列が形成され、該選択マーカーは、該宿主細胞において該環状核酸から発現され得る、項目66に記載の組成物。
(項目68)
(a)部位特異的ヌクレアーゼ、または部位特異的ヌクレアーゼのコード配列を含む核酸;ならびに
(b)第1の直鎖状核酸および1つまたはそれを超えるさらなる直鎖状核酸であって、ここで、該第1および第2の直鎖状核酸は、宿主細胞において互いとの相同組換えが可能であり、該相同組換えによって、選択マーカーのコード配列を含む環状核酸が形成される、第1の直鎖状核酸および1つまたはそれを超えるさらなる直鎖状核酸
を含む、組成物。
(項目69)
各直鎖状核酸が、前記選択マーカーの部分的なコード配列、中断されたコード配列および/または不連続のコード配列を含み、該選択マーカーは、宿主細胞において各直鎖状核酸から発現され得ず、前記環状核酸の前記形成によって、該選択マーカーの完全なコード配列が形成され、該選択マーカーは、宿主細胞において該環状核酸から発現され得る、項目68に記載の組成物。
(項目70)
前記環状核酸が、部位特異的ヌクレアーゼのコード配列をさらに含む、項目66〜69のいずれか1項に記載の組成物。
(項目71)
前記部位特異的ヌクレアーゼが、RNAガイドDNAエンドヌクレアーゼである、項目66〜70のいずれか1項に記載の組成物。
(項目72)
前記RNAガイドDNAエンドヌクレアーゼが、Cas9エンドヌクレアーゼである、項目71に記載の組成物。
(項目73)
(i)crRNA活性を有するリボ核酸およびtracrRNA活性を有するリボ核酸;または
(ii)crRNA活性を有するリボ核酸をコードするデオキシリボ核酸およびtracrRNA活性を有するリボ核酸をコードするデオキシリボ核酸
をさらに含む、項目71または72に記載の組成物。
(項目74)
前記環状核酸が、crRNA活性を有するリボ核酸をコードするデオキシリボ核酸およびtracrRNA活性を有するリボ核酸をコードするデオキシリボ核酸をさらに含む、項目72または73に記載の組成物。
(項目75)
前記crRNA活性および前記tracrRNA活性をコードする前記デオキシリボ核酸が、単一の連続したRNA分子上で該活性をコードする、項目73または74に記載の組成物。
(項目76)
前記部位特異的ヌクレアーゼが、エンドヌクレアーゼ、ジンクフィンガーヌクレアーゼ、TAL−エフェクターDNA結合ドメイン−ヌクレアーゼ融合タンパク質(TALEN)、トランスポザーゼおよび部位特異的リコンビナーゼからなる群より選択される、項目66〜70のいずれか1項に記載の組成物。
(項目77)
前記ジンクフィンガーヌクレアーゼが、操作されたジンクフィンガー結合ドメインに融合されたタイプIIS制限エンドヌクレアーゼの切断ドメインを含む融合タンパク質である、項目76に記載の組成物。
(項目78)
前記タイプIIS制限エンドヌクレアーゼが、HOエンドヌクレアーゼおよびFokIエンドヌクレアーゼからなる群より選択される、項目77に記載の組成物。
(項目79)
前記ジンクフィンガー結合ドメインが、3、5または6つのジンクフィンガーを含む、項目77に記載の組成物。
(項目80)
前記エンドヌクレアーゼが、LAGLIDADGホーミングエンドヌクレアーゼ、HNHホーミングエンドヌクレアーゼ、His−Cysボックスホーミングエンドヌクレアーゼ、GIY−YIGホーミングエンドヌクレアーゼおよびシアノバクテリアホーミングエンドヌクレアーゼからなる群より選択されるホーミングエンドヌクレアーゼである、項目76に記載の組成物。
(項目81)
前記エンドヌクレアーゼが、H−DreI、I−SceI、I−SceII、I−SceIII、I−SceIV、I−SceV、I−SceVI、I−SceVII、I−CeuI、I−CeuAIIP、I−CreI、I−CrepsbIP、I−CrepsbIIP、I−CrepsbIIIP、I−CrepsbIVP、I−TliI、I−PpoI、Pi−PspI、F−SceI、F−SceII、F−SuvI、F−CphI、F−TevI、F−TevII、I−AmaI、I−AniI、I−ChuI、I−CmoeI、I−CpaI、I−CpaII、I−CsmI、I−CvuI、I−CvuAIP、I−DdiI、I−DdiII、I−DirI、I−DmoI、I−HmuI、I−HmuII、I−HsNIP、I−LlaI、I−MsoI、I−NaaI、I−NanI、I−NclIP、I−NgrIP、I−NitI、I−NjaI、I−Nsp236IP、I−PakI、I−PboIP、I−PcuIP、I−PcuAI、I−PcuVI、I−PgrIP、I−PobIP、I−PorI、I−PorIIP、I−PbpIP、I−SpBetaIP、I−ScaI、I−SexIP、I−SneIP、I−SpomI、I−SpomCP、I−SpomIP、I−SpomIIP、I−SquIP、I−Ssp68031、I−SthPhiJP、I−SthPhiST3P、I−SthPhiSTe3bP、I−TdeIP、I−TevI、I−TevII、I−TevIII、i−UarAP、i−UarHGPAIP、I−UarHGPA13P、I−VinIP、I−ZbiIP、PI−MgaI、PI−MtuI、PI−MtuHIP PI−MtuHIIP、PI−PfuI、PI−PfuII、PI−PkoI、PI−PkoII、PI−Rma43812IP、PI−SpBetaIP、PI−SceI、PI−TfuI、PI−TfuII、PI−ThyI、PI−TliIまたはPI−TliIIからなる群より選択される、項目76に記載の組成物。
(項目82)
前記エンドヌクレアーゼが、内在性ゲノム配列に特異的に結合するように改変されており、該改変されたエンドヌクレアーゼは、もはやその野生型エンドヌクレアーゼ認識配列に結合しない、項目76に記載の組成物。
(項目83)
前記改変されたエンドヌクレアーゼが、LAGLIDADGホーミングエンドヌクレアーゼ、HNHホーミングエンドヌクレアーゼ、His−Cysボックスホーミングエンドヌクレアーゼ、GIY−YIGホーミングエンドヌクレアーゼおよびシアノバクテリアホーミングエンドヌクレアーゼからなる群より選択されるホーミングエンドヌクレアーゼに由来する、項目77に記載の組成物。
(項目84)
前記改変されたエンドヌクレアーゼが、H−DreI、I−SceI、I−SceII、I−SceIII、I−SceIV、I−SceV、I−SceVI、I−SceVII、I−CeuI、I−CeuAIIP、I−CreI、I−CrepsbIP、I−CrepsbIIP、I−CrepsbIIIP、I−CrepsbIVP、I−TliI、I−PpoI、Pi−PspI、F−SceI、F−SceII、F−SuvI、F−CphI、F−TevI、F−TevII、I−AmaI、I−AniI、I−ChuI、I−CmoeI、I−CpaI、I−CpaII、I−CsmI、I−CvuI、I−CvuAIP、I−DdiI、I−DdiII、I−DirI、I−DmoI、I−HmuI、I−HmuII、I−HsNIP、I−LlaI、I−MsoI、I−NaaI、I−NanI、I−NclIP、I−NgrIP、I−NitI、I−NjaI、I−Nsp236IP、I−PakI、I−PboIP、I−PcuIP、I−PcuAI、I−PcuVI、I−PgrIP、I−PobIP、I−PorI、I−PorIIP、I−PbpIP、I−SpBetaIP、I−ScaI、I−SexIP、I−SneIP、I−SpomI、I−SpomCP、I−SpomIP、I−SpomIIP、I−SquIP、I−Ssp68031、I−SthPhiJP、I−SthPhiST3P、I−SthPhiSTe3bP、I−TdeIP、I−TevI、I−TevII、I−TevIII、i−UarAP、i−UarHGPAIP、I−UarHGPA13P、I−VinIP、I−ZbiIP、PI−MgaI、PI−MtuI、PI−MtuHIP
PI−MtuHIIP、PI−PfuI、PI−PfuII、PI−PkoI、PI−PkoII、PI−Rma43812IP、PI−SpBetaIP、PI−SceI、PI−TfuI、PI−TfuII、PI−ThyI、PI−TliIまたはPI−TliIIからなる群より選択されるエンドヌクレアーゼに由来する、項目77に記載の組成物。
(項目85)
項目66〜84のいずれか1項に記載の組成物を含む、宿主細胞。
(項目86)
前記宿主細胞が、原核細胞である、項目42〜65および85のいずれか1項に記載の宿主細胞。
(項目87)
前記宿主細胞が、真核細胞である、項目42〜65および85のいずれか1項に記載の宿主細胞。
(項目88)
前記宿主細胞が、真菌細胞、細菌細胞、植物細胞、昆虫細胞、鳥類細胞、魚類細胞および哺乳動物細胞からなる群より選択される、項目42〜65および85のいずれか1項に記載の宿主細胞。
(項目89)
前記宿主細胞が、げっ歯類細胞、霊長類細胞およびヒト細胞からなる群から選択される哺乳動物細胞である、項目42〜65および85のいずれか1項に記載の宿主細胞。
(項目90)
前記宿主細胞が、ヒト細胞である、項目42〜65および85のいずれか1項に記載の宿主細胞。
(項目91)
前記宿主細胞が、酵母細胞である、項目42〜65および85のいずれか1項に記載の宿主細胞。
(項目92)
前記酵母が、Saccharomyces cerevisiaeである、項目91に記載の宿主細胞。
(項目93)
細胞培養培地ならびに項目42〜65および85〜92のいずれか1項に記載の宿主細胞を含む、細胞培養組成物。
(項目94)
前記選択マーカーの発現について選択する化合物をさらに含む、項目93に記載の細胞培養組成物。
(項目95)
宿主細胞ゲノムの標的部位に外来性核酸を組み込むための方法であって、該方法は、
(a)1つまたはそれを超える宿主細胞を、
(i)該宿主細胞ゲノムの該標的部位(TS)において、相同組換えを介して組み換わることができる外来性核酸(ES);および
(ii)それ自体との相同組換えまたは該宿主細胞と接触される1つもしくはそれを超えるさらなる直鎖状核酸との相同組換えが可能な直鎖状核酸であって、ここで、該相同組換えによって、選択マーカーのコード配列およびTSにおいて断裂をもたらすことができるヌクレアーゼ(N)のコード配列を含む環状の染色体外核酸が形成される、直鎖状核酸
と接触させる工程;
ならびに
(b)該選択マーカーを発現する宿主細胞を選択する工程
を含む、方法。
(項目96)
前記ヌクレアーゼが、CRISPR関連RNAガイドエンドヌクレアーゼ、メガヌクレアーゼ、ジンクフィンガーヌクレアーゼ、TAL−エフェクターDNA結合ドメイン−ヌクレアーゼ融合タンパク質(TALEN)、トランスポザーゼおよび部位特異的リコンビナーゼからなる群より選択される、項目95に記載の方法。
(項目97)
前記ヌクレアーゼが、CRISPR関連RNAガイドエンドヌクレアーゼであり、前記環状の染色体外核酸が、前記RNAガイドDNAエンドヌクレアーゼによるTSの部位特異的な認識および切断を可能にするcrRNA活性およびtracrRNA活性をコードする配列をさらに含む、項目96に記載の方法。
(項目98)
宿主細胞であって、(i)該宿主細胞ゲノムの標的部位(TS)において、相同組換えを介して組み換わることができる外来性核酸(ES);および
(ii)それ自体との相同組換えまたは該宿主細胞と接触される1つもしくはそれを超えるさらなる直鎖状核酸との相同組換えが可能な直鎖状核酸であって、ここで、該相同組換えによって、選択マーカーのコード配列およびTSにおいて断裂をもたらすことができるヌクレアーゼ(N)のコード配列を含む環状の染色体外核酸が形成される、直鎖状核酸
を含む、宿主細胞。
(項目99)
前記ヌクレアーゼが、CRISPR関連RNAガイドエンドヌクレアーゼ、メガヌクレアーゼ、ジンクフィンガーヌクレアーゼ、TAL−エフェクターDNA結合ドメイン−ヌクレアーゼ融合タンパク質(TALEN)、トランスポザーゼおよび部位特異的リコンビナーゼからなる群より選択される、項目98に記載の宿主細胞。
(項目100)
前記ヌクレアーゼが、CRISPR関連RNAガイドエンドヌクレアーゼであり、前記環状の染色体外核酸が、前記RNAガイドDNAエンドヌクレアーゼによるTSの部位特異的な認識および切断を可能にするcrRNA活性およびtracrRNA活性をコードする配列をさらに含む、項目99に記載の宿主細胞。
(項目101)
第1の相同性領域(HR1)および第2の相同性領域(HR2)を含む直鎖状核酸であって、ここで、HR1およびHR2は、相同組換えを介して互いと組み換わることができ、HR1とHR2との相同組換えによって、選択マーカーのコード配列を含む環状核酸が形成される、直鎖状核酸。
(項目102)
HR1が、前記選択マーカーの第1の不完全なコード配列を含み、HR2が、該選択マーカーの第2の不完全なコード配列を含み、HR1とHR2との相同組換えによって、該選択マーカーの完全なコード配列が再構成される、項目101に記載の直鎖状核酸。
(項目103)
部位特異的ヌクレアーゼのコード配列をさらに含む、項目101または102に記載の直鎖状核酸。
(項目104)
前記部位特異的ヌクレアーゼが、RNAガイドDNAエンドヌクレアーゼである、項目103に記載の直鎖状核酸。
(項目105)
前記RNAガイドDNAエンドヌクレアーゼが、Cas9エンドヌクレアーゼである、項目104に記載の直鎖状核酸。
(項目106)
前記環状核酸が、crRNA活性およびtracrRNA活性をコードする配列をさらに含む、項目101〜105のいずれか1項に記載の直鎖状核酸。
(項目107)
前記crRNA活性および前記tracrRNA活性をコードする配列が、単一の連続したRNA分子上で該活性をコードする、106に記載の直鎖状核酸。
(項目108)
前記部位特異的ヌクレアーゼが、エンドヌクレアーゼ、ジンクフィンガーヌクレアーゼ、TAL−エフェクターDNA結合ドメイン−ヌクレアーゼ融合タンパク質(TALEN)、トランスポザーゼおよび部位特異的リコンビナーゼからなる群より選択される、項目103に記載の直鎖状核酸。
(項目109)
前記ジンクフィンガーヌクレアーゼが、操作されたジンクフィンガー結合ドメインに融合されたタイプIIS制限エンドヌクレアーゼの切断ドメインを含む融合タンパク質である、項目108に記載の直鎖状核酸。
(項目110)
前記タイプIIS制限エンドヌクレアーゼが、HOエンドヌクレアーゼおよびFokIエンドヌクレアーゼからなる群より選択される、項目109に記載の直鎖状核酸。
(項目111)
前記ジンクフィンガー結合ドメインが、3、5または6つのジンクフィンガーを含む、項目109に記載の直鎖状核酸。
(項目112)
前記エンドヌクレアーゼが、LAGLIDADGホーミングエンドヌクレアーゼ、HNHホーミングエンドヌクレアーゼ、His−Cysボックスホーミングエンドヌクレアーゼ、GIY−YIGホーミングエンドヌクレアーゼおよびシアノバクテリアホーミングエンドヌクレアーゼからなる群より選択されるホーミングエンドヌクレアーゼである、項目108に記載の直鎖状核酸。
(項目113)
前記エンドヌクレアーゼが、H−DreI、I−SceI、I−SceII、I−SceIII、I−SceIV、I−SceV、I−SceVI、I−SceVII、I−CeuI、I−CeuAIIP、I−CreI、I−CrepsbIP、I−CrepsbIIP、I−CrepsbIIIP、I−CrepsbIVP、I−TliI、I−PpoI、Pi−PspI、F−SceI、F−SceII、F−SuvI、F−CphI、F−TevI、F−TevII、I−AmaI、I−AniI、I−ChuI、I−CmoeI、I−CpaI、I−CpaII、I−CsmI、I−CvuI、I−CvuAIP、I−DdiI、I−DdiII、I−DirI、I−DmoI、I−HmuI、I−HmuII、I−HsNIP、I−LlaI、I−MsoI、I−NaaI、I−NanI、I−NclIP、I−NgrIP、I−NitI、I−NjaI、I−Nsp236IP、I−PakI、I−PboIP、I−PcuIP、I−PcuAI、I−PcuVI、I−PgrIP、I−PobIP、I−PorI、I−PorIIP、I−PbpIP、I−SpBetaIP、I−ScaI、I−SexIP、I−SneIP、I−SpomI、I−SpomCP、I−SpomIP、I−SpomIIP、I−SquIP、I−Ssp68031、I−SthPhiJP、I−SthPhiST3P、I−SthPhiSTe3bP、I−TdeIP、I−TevI、I−TevII、I−TevIII、i−UarAP、i−UarHGPAIP、I−UarHGPA13P、I−VinIP、I−ZbiIP、PI−MgaI、PI−MtuI、PI−MtuHIP PI−MtuHIIP、PI−PfuI、PI−PfuII、PI−PkoI、PI−PkoII、PI−Rma43812IP、PI−SpBetaIP、PI−SceI、PI−TfuI、PI−TfuII、PI−ThyI、PI−TliIまたはPI−TliIIからなる群より選択される、項目108に記載の直鎖状核酸。
(項目114)
前記エンドヌクレアーゼが、内在性ゲノム配列に特異的に結合するように改変されており、該改変されたエンドヌクレアーゼは、もはやその野生型エンドヌクレアーゼ認識配列に結合しない、項目108に記載の直鎖状核酸。
(項目115)
前記改変されたエンドヌクレアーゼが、LAGLIDADGホーミングエンドヌクレアーゼ、HNHホーミングエンドヌクレアーゼ、His−Cysボックスホーミングエンドヌクレアーゼ、GIY−YIGホーミングエンドヌクレアーゼおよびシアノバクテリアホーミングエンドヌクレアーゼからなる群より選択されるホーミングエンドヌクレアーゼに由来する、項目114に記載の直鎖状核酸。
(項目116)
前記改変されたエンドヌクレアーゼが、H−DreI、I−SceI、I−SceII、I−SceIII、I−SceIV、I−SceV、I−SceVI、I−SceVII、I−CeuI、I−CeuAIIP、I−CreI、I−CrepsbIP、I−CrepsbIIP、I−CrepsbIIIP、I−CrepsbIVP、I−TliI、I−PpoI、Pi−PspI、F−SceI、F−SceII、F−SuvI、F−CphI、F−TevI、F−TevII、I−AmaI、I−AniI、I−ChuI、I−CmoeI、I−CpaI、I−CpaII、I−CsmI、I−CvuI、I−CvuAIP、I−DdiI、I−DdiII、I−DirI、I−DmoI、I−HmuI、I−HmuII、I−HsNIP、I−LlaI、I−MsoI、I−NaaI、I−NanI、I−NclIP、I−NgrIP、I−NitI、I−NjaI、I−Nsp236IP、I−PakI、I−PboIP、I−PcuIP、I−PcuAI、I−PcuVI、I−PgrIP、I−PobIP、I−PorI、I−PorIIP、I−PbpIP、I−SpBetaIP、I−ScaI、I−SexIP、I−SneIP、I−SpomI、I−SpomCP、I−SpomIP、I−SpomIIP、I−SquIP、I−Ssp68031、I−SthPhiJP、I−SthPhiST3P、I−SthPhiSTe3bP、I−TdeIP、I−TevI、I−TevII、I−TevIII、i−UarAP、i−UarHGPAIP、I−UarHGPA13P、I−VinIP、I−ZbiIP、PI−MgaI、PI−MtuI、PI−MtuHIP
PI−MtuHIIP、PI−PfuI、PI−PfuII、PI−PkoI、PI−PkoII、PI−Rma43812IP、PI−SpBetaIP、PI−SceI、PI−TfuI、PI−TfuII、PI−ThyI、PI−TliIまたはPI−TliIIからなる群より選択されるエンドヌクレアーゼに由来する、項目114に記載の直鎖状核酸。
(項目117)
宿主細胞ゲノムの1つまたはそれを超える標的部位に1つまたはそれを超える外来性核酸を組み込むための方法であって、該方法は、
(a)1つまたはそれを超える宿主細胞を、
(i)該宿主細胞ゲノムの1つまたはそれを超える標的部位(TS)において、相同組換えを介して組み換わることができる1つまたはそれを超える外来性ドナー核酸(ES);(ii)RNAガイドエンドヌクレアーゼ(RGEN);
(iii)該RGENによる該1つまたはそれを超えるTSの部位特異的な認識および切断を可能にする1つまたはそれを超えるリボ核酸;および
(iv)それ自体との相同組換えまたは該宿主細胞と接触された1つまたはそれを超えるさらなる組換え前の直鎖状核酸との相同組換えが可能な組換え前の直鎖状核酸であって、ここで、該相同組換えによって、選択マーカーのコード配列を含む環状の染色体外核酸が形成される、組換え前の直鎖状核酸
と接触させる工程;
ならびに
(b)該選択マーカーを発現する宿主細胞を選択することにより、宿主細胞ゲノムの該1つまたはそれを超える標的部位に該1つまたはそれを超える外来性核酸を組み込んだ細胞を選択する工程
を含む、方法。
(項目118)
前記相同組換えによって、前記環状の染色体外核酸内に前記選択マーカーの完全なコード配列が形成される、項目117に記載の方法。
(項目119)
少なくとも1つの組換え前の直鎖状核酸が、前記RNAガイドDNAエンドヌクレアーゼによるTSの部位特異的な認識および切断を可能にする前記1つまたはそれを超えるリボ核酸をコードする配列を含む、項目117または118に記載の方法。
(項目120)
前記1つまたはそれを超えるリボ核酸が、単一の連続したガイドRNA(gRNA)分子においてcrRNA活性およびtracrRNAを含む、項目119に記載の方法。
(項目121)
少なくとも1つの組換え前の直鎖状核酸が、前記RNAガイドDNAエンドヌクレアーゼをコードする配列を含む、項目117〜120のいずれか1項に記載の方法。
(項目122)
前記RNAガイドDNAエンドヌクレアーゼが、Cas9である、項目117〜121のいずれか1項の項目に記載の方法。
(項目123)
前記環状の染色体外核酸の形成が、2つまたは3つの組換え前の直鎖状核酸の相同組換えに起因する、項目117〜122のいずれか1項に記載の方法。
(項目124)
前記1つまたはそれを超える組換え前の直鎖状核酸が、該1つまたはそれを超える組換え前の核酸を含む1つまたはそれを超える環状核酸のRGEN切断によってインビボにおいて生成される、項目117〜123のいずれか1項に記載の方法。
(項目125)
複数(n個)の外来性核酸が、前記宿主細胞ゲノムの複数(n個)の標的部位に組み込まれ、ここで、nは、少なくとも2であり、工程(a)は、前記宿主細胞を、
(i)該複数の外来性核酸であって、ここで、
xは、1からnまで変動する整数であり、各整数xに対して、外来性核酸(ES)xの各々は、該宿主細胞ゲノムの該複数(n個)の標的部位から選択される標的部位(TS)xにおいて、相同組換えを介して組み換わることができる、外来性核酸;
(ii)該標的部位(TS)xの各々に対して、前記RGENによる(TS)xの部位特異的な認識および切断を可能にするガイドRNA(gRNA)x
と接触させる工程を含む、項目117〜124のいずれか1項に記載の方法。
(項目126)
前記選択マーカーが、薬物耐性マーカー、蛍光タンパク質、または比色法もしくは蛍光検出法によって検出可能なタンパク質である、項目117〜125のいずれか1項に記載の方法。
(項目127)
ESが、目的の核酸Dをさらに含む、項目117〜126のいずれか1項に記載の方法。
(項目128)
Dが、選択マーカー、プロモーター、エピトープタグをコードする核酸配列、目的の遺伝子、レポーター遺伝子、および終止コドンをコードする核酸配列からなる群より選択される、項目127に記載の方法。
(項目129)
前記宿主細胞が、真菌細胞、細菌細胞、植物細胞、昆虫細胞、鳥類細胞、魚類細胞および哺乳動物細胞からなる群より選択される、項目117〜128のいずれか1項に記載の方法。
(項目130)
接触された前記宿主細胞(複数可)が、前記選択する工程の前に、少なくとも約12、24、36、48、72時間または72時間より長い期間にわたって培養される、項目117〜129のいずれか1項に記載の方法。
(項目131)
接触された前記細胞が、前記選択マーカーを発現しない細胞の生存に対して選択する培養条件下で培養される、項目117〜130のいずれか1項に記載の方法。
(項目132)
工程(b)という前記選択する工程が、視覚的検出法、比色法または蛍光検出法によって前記選択マーカーの発現を検出する工程を含む、項目117〜130のいずれか1項に記載の方法。
(項目133)
宿主細胞ゲノムの1つまたはそれを超える標的部位に1つまたはそれを超える外来性核酸を組み込むための組成物であって、該組成物は、
(a)宿主細胞ゲノムの1つまたはそれを超える標的部位(TS)において、相同組換えを介して組み換わることができる1つまたはそれを超える外来性ドナー核酸(ES);
(b)RNAガイドエンドヌクレアーゼ(RGEN)または該RGENをコードする核酸;
(c)該RGENによる該1つもしくはそれを超えるTSの部位特異的な認識および切断を可能にする1つもしくはそれを超えるリボ核酸、または該1つもしくはそれを超えるリボ核酸をコードする1つもしくはそれを超える核酸;および
(d)それ自体とのインビボでの相同組換えまたは該組成物中の1つもしくはそれを超えるさらなる組換え前の直鎖状核酸とのインビボでの相同組換えが可能な組換え前の直鎖状核酸であって、ここで、該インビボでの相同組換えによって、選択マーカーのコード配列を含む環状の染色体外核酸が形成される、組換え前の直鎖状核酸
を含む、組成物。
(項目134)
前記相同組換えによって、前記環状の染色体外核酸内に前記選択マーカーの完全なコード配列が形成される、項目133に記載の組成物。
(項目135)
少なくとも1つの組換え前の直鎖状核酸が、前記RNAガイドDNAエンドヌクレアーゼによるTSの部位特異的な認識および切断を可能にする前記1つまたはそれを超えるリボ核酸をコードする配列を含む、項目133〜134のいずれか1項に記載の組成物。
(項目136)
前記1つまたはそれを超えるリボ核酸分子が、単一の連続したガイドRNA(gRNA)分子においてcrRNA活性およびtracrRNA活性を含む、項目135に記載の組成物。
(項目137)
少なくとも1つの組換え前の直鎖状核酸が、前記RNAガイドDNAエンドヌクレアーゼをコードする配列を含む、項目133〜136のいずれか1項に記載の組成物。
(項目138)
前記RNAガイドDNAエンドヌクレアーゼが、Cas9である、項目133〜137のいずれか1項に記載の組成物。
(項目139)
前記組成物が、相同的に組み換わることにより前記環状の染色体外核酸を形成することができる、2つまたは3つの組換え前の直鎖状核酸を含む、項目133〜138のいずれか1項に記載の組成物。
(項目140)
前記1つまたはそれを超える組換え前の直鎖状核酸が、該1つまたはそれを超える組換え前の核酸を含む1つまたはそれを超える環状核酸のRGEN切断によってインビボにおいて生成される、項目133〜139のいずれか1項に記載の組成物。
(項目141)
前記組成物が、
(a)前記宿主細胞ゲノムの複数(n個)の標的部位に組み込むことができる複数(n個)の外来性核酸であって、ここで、nは、少なくとも2であり、xは、1からnまで変動する整数であり、各整数xに対して、外来性核酸(ES)xの各々は、該宿主細胞ゲノムの該複数(n個)の標的部位から選択される標的部位(TS)xにおいて、相同組換えを介して組み換わることができる、外来性核酸;ならびに
(b)該標的部位(TS)xの各々に対して、前記RGENによる(TS)xの部位特異的な認識および切断を可能にするガイドRNA(gRNA)x
を含む、項目133〜140のいずれか1項に記載の組成物。
(項目142)
前記選択マーカーが、薬物耐性マーカー、蛍光タンパク質、または比色法もしくは蛍光検出法によって検出可能なタンパク質である、項目133〜141のいずれか1項に記載の組成物。
(項目143)
ESが、目的の核酸Dをさらに含む、項目133〜142のいずれか1項に記載の組成物。
(項目144)
Dが、選択マーカー、プロモーター、エピトープタグをコードする核酸配列、目的の遺伝子、レポーター遺伝子、および終止コドンをコードする核酸配列からなる群より選択される、項目143に記載の組成物。
(項目145)
項目133〜144のいずれか1項に記載の組成物を含む、宿主細胞。
(項目146)
前記宿主細胞が、真菌細胞、細菌細胞、植物細胞、昆虫細胞、鳥類細胞、魚類細胞および哺乳動物細胞からなる群より選択される、項目145に記載の宿主細胞。