(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6652556
(24)【登録日】2020年1月27日
(45)【発行日】2020年2月26日
(54)【発明の名称】減圧エンジンブレーキの特徴を備えたヘビーデューティバルブトレイン
(51)【国際特許分類】
F01L 13/06 20060101AFI20200217BHJP
F01L 13/00 20060101ALI20200217BHJP
【FI】
F01L13/06 A
F01L13/00 301V
【請求項の数】11
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2017-513326(P2017-513326)
(86)(22)【出願日】2015年5月19日
(65)【公表番号】特表2017-519157(P2017-519157A)
(43)【公表日】2017年7月13日
(86)【国際出願番号】EP2015060967
(87)【国際公開番号】WO2015177127
(87)【国際公開日】20151126
【審査請求日】2018年4月27日
(31)【優先権主張番号】62/001,276
(32)【優先日】2014年5月21日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】516350330
【氏名又は名称】イートン ソチエタ・レスポンサビリタ・リミタータ
【氏名又は名称原語表記】Eaton SRL
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】マヨ チェクール
【審査官】
二之湯 正俊
(56)【参考文献】
【文献】
中国実用新案第203097985(CN,U)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0037854(US,A1)
【文献】
特開2001−041012(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01L 1/00− 1/46
F01L 9/00− 9/04
F01L 13/00−13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンドライブモード及びエンジンブレーキモードで操作可能であり、第1の排気バルブ(50)と第2の排気バルブ(52)とを選択的に開放する、デュアル排気バルブロッカーアームアセンブリ(26)であって、
ロッカーシャフト(34)と、
前記ロッカーシャフト(34)を収容し、前記ロッカーシャフト(34)を中心として回転するように構成された排気ロッカーアーム(40)を有する排気バルブロッカーアームアセンブリ(22)であって、前記排気ロッカーアーム(40)はさらに、所定の内径(190)を有する孔を有している、排気バルブロッカーアームアセンブリ(22)と、
エンジンブレーキロッカーアーム(60)を有するエンジンブレーキロッカーアームアセンブリ(24)と、
前記排気ロッカーアーム(40)の前記孔の前記内径(190)に沿って摺動可能に収容されたエンジンブレーキカプセル(46)と、
を備え、
前記エンジンブレーキカプセル(46)は、エンジンブレーキカプセルピストン(80)と、エンジンブレーキカプセルボディ(82)とを含み、前記エンジンブレーキカプセルピストン(80)と前記エンジンブレーキカプセルボディ(82)との間に加圧オイルチャンバ(78)が形成されており、前記エンジンブレーキロッカーアーム(60)は前記エンジンブレーキカプセルピストン(80)に作用するように構成されていて、前記エンジンブレーキカプセルピストン(80)は前記エンジンブレーキカプセルボディ(82)に作用し、前記エンジンブレーキカプセルボディ(82)は最終的に、前記第1及び第2の排気バルブ(50,52)のうちの一方に作用し、
前記エンジンブレーキカプセル(46)は選択的に、前記エンジンブレーキロッカーアーム(60)によって付勢されて並進可能であって、前記エンジンブレーキカプセル(46)は、エンジンブレーキモードの間に前記第1及び第2の排気バルブ(50,52)のうちの一方を開放させ、
前記エンジンブレーキカプセル(46)の作動のために、加圧オイル供給部(74)からオイル流を提供するオイルコントロールバルブ(70)をさらに備えていて、
エンジンドライブモードの場合に、前記オイルコントロールバルブ(70)は閉鎖されて、前記エンジンブレーキカプセルボディ(82)は完全に引き込まれて、前記第1及び第2の排気バルブ(50,52)に影響を与えない、デュアル排気バルブロッカーアームアセンブリ。
【請求項2】
前記排気バルブのうちの一方と前記エンジンブレーキカプセルボディ(82)との間に位置するバルブ先端(83)をさらに備える、請求項1記載のデュアル排気バルブロッカーアームアセンブリ。
【請求項3】
ボールロック(152)とボールロックばね(154)とを含むロックボールアセンブリ(150)をさらに備え、前記ボールロックばね(154)は前記ボールロック(152)を、前記エンジンブレーキカプセルボディ(82)に設けられた溝(160)内へと付勢する、請求項1記載のデュアル排気バルブロッカーアームアセンブリ。
【請求項4】
前記排気ロッカーアーム(40)に形成されたC字形クリップ(180)をさらに備え、前記C字形クリップ(180)は、前記エンジンブレーキカプセルボディ(82)の行程を制限し、ハードストッパを提供する、請求項3に記載のデュアル排気バルブロッカーアームアセンブリ。
【請求項5】
伸長位置及び引込み位置間で前記エンジンブレーキカプセル(46)を動かすように構成されたアクチュエータアセンブリ(100)をさらに備える、請求項1に記載のデュアル排気バルブロッカーアームアセンブリ。
【請求項6】
前記アクチュエータアセンブリ(100)と前記オイルコントロールバルブ(70)とは、前記エンジンブレーキカプセル(46)とは別個に前記排気ロッカーアーム(40)内に構成されている、請求項5記載のデュアル排気バルブロッカーアームアセンブリ。
【請求項7】
前記アクチュエータアセンブリ(100)は、アクチュエータボディ(102)と、アクチュエータチェックボール(104)と、アクチュエータニードル(106)と、アクチュエータ戻しばね(108)と、アクチュエータロックナット(110)とを含み、前記アクチュエータニードル(106)は、前記アクチュエータチェックボール(104)を開放位置に維持し、前記エンジンブレーキカプセル(46)内に油圧が形成されるのを阻止するように形成されている、請求項5記載のデュアル排気バルブロッカーアームアセンブリ。
【請求項8】
前記アクチュエータチェックボール(104)は、前記加圧オイルチャンバ(78)内への一方向の補充を各サイクルで可能にする、請求項7記載のデュアル排気バルブロッカーアームアセンブリ。
【請求項9】
エンジンブレーキモードにおいて、前記オイルコントロールバルブ(70)は通電されて開放され、油圧により前記アクチュエータニードル(106)は対応する座部(107)から離れるように動かされ、これにより前記エンジンブレーキカプセル(46)は所定の距離だけ伸長される、請求項7記載のデュアル排気バルブロッカーアームアセンブリ。
【請求項10】
前記オイルコントロールバルブ(70)への通電をやめることにより、前記アクチュエータニードル(106)は、前記加圧オイルチャンバ(78)からのオイルの流出を可能にし、前記エンジンブレーキカプセル(46)は、燃焼を可能にする前記引込み位置へと移動させられる、請求項9記載のデュアル排気バルブロッカーアームアセンブリ。
【請求項11】
前記エンジンブレーキロッカーアーム(60)に設けられた第1の調節ねじ(210)と、
前記排気ロッカーアーム(40)に設けられた第2の調節ねじ(212)と、をさらに備え、
前記第1及び第2の調節ねじ(210,212)の両方は、前記デュアル排気バルブロッカーアームアセンブリのためのラッシュ設定を選択的に提供するように調節可能に位置している、
請求項1記載のデュアル排気バルブロッカーアームアセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願とのクロスリファレンス
本願は、2014年5月21日に出願された米国特許出願第62/001276号明細書の利益を請求する。上記出願の開示は引用により本明細書に編入される。
【0002】
技術分野
本開示は概して、バルブトレインアセンブリで使用するためのロッカーアームアセンブリに関し、特に、エンジンブレーキ機能を行うシングル排気バルブに作用する専用のロッカーアームに組み込まれるロッカーアームアセンブリに関する。
【0003】
背景
圧縮エンジンブレーキは、例えばトラックのような、ヘビーデューティ又はミディアムデューティディーゼルエンジンによって駆動される比較的大型の車両において、ホイールブレーキに付加的に、補助ブレーキとして使用することができる。圧縮エンジンブレーキシステムは、作動させる場合、エンジン気筒内のピストンが、その圧縮行程の上死点位置近くにあるとき、その気筒の排気バルブを付加的に開放させ、これにより圧縮空気を排気バルブから解放することができるように配置されている。これによりエンジンは、出力を消費する空気圧縮機として機能し、車両を減速させる。
【0004】
圧縮エンジンブレーキと共に使用される通常のバルブトレインアセンブリでは、排気バルブは、バルブブリッジによって排気バルブに係合するロッカーアームによって作動される。ロッカーアームは、カムシャフトの回転時にカムに応じて揺動し、バルブブリッジを押し下げて、バルブブリッジ自体は排気バルブを押し下げて開放する。バルブトレインアセンブリの構成部分間に形成されるラッシュ又はギャップをなくすために、バルブトレインアセンブリには液圧的なラッシュ調節装置が設けられていてもよい。
【0005】
ここに提供される背景の説明は、開示の内容を概略的に示すという目的のものである。この背景セクションにおいて説明される範囲でここに挙げた発明者たちの業績、並びに出願時に従来技術として認められないであろう説明の態様は、本開示に対する従来技術として明示的にも、暗示的にも認められない。
【0006】
概要
本開示の一態様によるデュアル排気ロッカーアームアセンブリは、燃焼エンジンモード及びエンジンブレーキモードで操作可能である。前記デュアル排気バルブロッカーアームアセンブリは第1の排気バルブ及び第2の排気バルブを選択的に開放し、さらに、ロッカーシャフトと、排気バルブロッカーアームアセンブリと、エンジンブレーキロッカーアームアセンブリと、エンジンブレーキカプセルとを含む。前記排気バルブロッカーアームアセンブリは、前記ロッカーシャフトを収容し、前記ロッカーシャフトを中心として回転するように構成された排気ロッカーアームを有する。前記排気ロッカーアームはさらに、所定の内径を有する孔を有している。前記エンジンブレーキロッカーアームアセンブリは、エンジンブレーキロッカーアームを有している。前記エンジンブレーキカプセルは、前記排気バルブロッカーアームの孔の内径に沿って摺動可能に収容されている。前記エンジンブレーキカプセルは選択的に、前記エンジンブレーキロッカーアームによって付勢されると並進可能である。今度は、エンジンブレーキカプセルが、エンジンブレーキモードの間に、第1及び第2の排気バルブのうちの1つを開放するように付勢する。
【0007】
付加的な特徴によれば、デュアル排気バルブロッカーアームアセンブリは、エンジンブレーキカプセルの作動のために、加圧オイル供給部からオイル流を提供するオイルコントロールバルブをさらに有している。エンジンブレーキカプセルは、エンジンブレーキカプセルピストンとエンジンブレーキカプセルボディとを含んでいる。エンジンブレーキカプセルピストンとエンジンブレーキカプセルボディとの間に、加圧オイルチャンバが形成されている。エンジンブレーキロッカーアームはエンジンブレーキカプセルピストンに作用するように構成されていて、エンジンブレーキカプセルピストンはエンジンブレーキカプセルボディに作用して、最終的にエンジンブレーキカプセルボディはエンジンブレーキ排気バルブのうちの1つに作用する。
【0008】
別の特徴によれば、デュアル排気バルブロッカーアームアセンブリは、エンジンブレーキ排気バルブのうちの一方とエンジンブレーキカプセルボディとの間に位置するバルブ先端をさらに有している。ロックボールアセンブリが、ボールロックとボールロックばねとを有していてもよい。ボールロックばねは、ボールロックを、エンジンブレーキカプセルボディに形成された溝内へと押すことができる。ロッカーアームアセンブリ上にC字形クリップが形成されてもよい。C字形クリップは、エンジンブレーキカプセルの行程を制限し、ハードストッパを提供する。
【0009】
さらに付加的な特徴によれば、デュアル排気ロッカーアームアセンブリは、伸長位置及び引込み位置間でエンジンブレーキカプセルを動かすように構成されたアクチュエータアセンブリをさらに有している。アクチュエータアセンブリとオイルコントロールバルブは、エンジンブレーキカプセルとは別個に排気ロッカーアーム内に構成されている。アクチュエータアセンブリは、アクチュエータボディと、アクチュエータチェックボールと、アクチュエータニードルと、アクチュエータ戻しばねと、アクチュエータロックナットとを含む。アクチュエータニードルは、アクチュエータチェックボールを開放位置に維持し、エンジンブレーキカプセル内に油圧が形成されるのを阻止するように形成されている。アクチュエータチェックボールは、加圧オイルチャンバ内への一方向の補充を各サイクルで可能にする。エンジンブレーキモードにおいて、オイルコントロールバルブは通電されて開放され、油圧によりアクチュエータニードルは対応する座部から離れるように動かされ、これによりエンジンブレーキカプセルは所定の距離だけ伸長される。オイルコントロールバルブへの通電をやめることにより、アクチュエータニードルは、加圧オイルチャンバからのオイルの流出を可能にし、エンジンブレーキカプセルは、燃焼を可能にする引込み位置へと移動させられる。付加的な特徴では、デュアル排気ロッカーアームアセンブリは、エンジンブレーキロッカーアームに設けられた第1の調節ねじと、排気ロッカーアームに設けられた第2の調節ねじとを含む。第1及び第2の調節ねじの両方は、デュアル排気ロッカーアームアセンブリのためのラッシュ設定を選択的に提供するように調節可能である。
【0010】
本開示は、詳細な説明および添付の図面からより完全に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本開示の一態様により構成された、吸気ロッカーアームと、排気ロッカーアームと、エンジンブレーキロッカーアームとを含むロッカーアームアセンブリに組み込まれた部分的なバルブトレインアセンブリを上方から見た図である。
【
図2】
図1のバルブトレインアセンブリの排気ロッカーアームとエンジンブレーキロッカーアームとを側方から見た図である。
【
図3】一態様による
図2の排気ロッカーアームとエンジンブレーキロッカーアームとを概略的に示す図である。
【
図4】
図2の排気バルブロッカーアームアセンブリを、完全に伸長したエンジンブレーキカプセルと共に概略的に示す図である。
【
図5】
図2の排気バルブロッカーアームアセンブリを、最大リフト時のエンジンブレーキと共に概略的に示す図である。
【
図6】一態様による、
図2の排気バルブロッカーアームアセンブリのカプセルボディの外径に形成された溝に向かってボールを押し付けるボールばねとボールロックとを詳細に示した断面図である。
【
図7】
図6のカプセルボディの外径に設けられた溝に係合しているボールを側方から見た図である。
【
図8】本開示の一態様による、バルブラッシュ設定を提供するために設けられた、エンジンブレーキロッカーアームにおける第1の調節ねじと、排気アームにおける第2の調節ねじと、吸気アームにおける第3の調節ねじとを示す斜視図である。
【
図9】完全に引き込まれたエンジンブレーキカプセル及び完全に拡張されたエンジンブレーキカプセルの行程長さを示す、
図2の排気ロッカーアームアセンブリを示した断面図である。
【
図10】カムシャフトの基礎円上にある排気ロッカーアームとエンジンブレーキロッカーアームと共に示す排気バルブロッカーアームアセンブリを側方から見た図である。
【
図11】
図10の排気バルブロッカーアームアセンブリを概略的に示す図である。
【
図12】最大リフト時の排気ロッカーアームとカムシャフトの基礎円上にあるエンジンブレーキロッカーアームと共に示す排気バルブロッカーアームアセンブリを側方から見た図である。
【
図13】
図12の排気バルブロッカーアームアセンブリを概略的に示す図である。
【
図14】カムシャフトの基礎円上にある排気ロッカーアームとエンジンブレーキロッカーアームと共に示す排気バルブロッカーアームアセンブリを側方から見た図である。
【
図15】
図14の排気バルブロッカーアームアセンブリを概略的に示す図である。
【
図16】カムシャフトの基礎円上にある排気ロッカーアームと、カムシャフトの突出部分との係合により反時計回りに所定の距離だけ回転されたエンジンブレーキロッカーアームと共に示す排気バルブロッカーアームアセンブリを側方から見た図である。
【
図17】
図16の排気バルブロッカーアームアセンブリを概略的に示す図である。
【
図18】最大リフト時の排気ロッカーアームとカムシャフトの基礎円上にあるエンジンブレーキロッカーアームと共に示す排気バルブロッカーアームアセンブリを側方から見た図である。
【
図19】
図18の排気バルブロッカーアームアセンブリを概略的に示す図である。
【
図20】カムシャフトの基礎円上にある排気ロッカーアームとエンジンブレーキロッカーアームと共に示す排気バルブロッカーアームアセンブリを側方から見た図である。
【
図21】
図20の排気バルブロッカーアームアセンブリを概略的に示す図である。
【0012】
詳細な説明
シングルオーバーヘッドカム(SOHC)バルブトレインを備えたヘビーデューティ(HD)ディーゼルエンジンは、特に低エンジン速度において高いブレーキ力を必要とする。本開示は、付加運動型減圧エンジンブレーキを提供する。バルブトレインのその他の部分(特にカムシャフト)に高負荷をかけることなく高いブレーキ力を提供するために、本開示は、1つの排気バルブに作用するエンジンブレーキ専用のロッカーアームを提供する。この点に関して、2つの排気バルブを開く他の構成と比較して入力負荷の半分がかけられる。
【0013】
最初に
図1を参照するが、本開示の1つの態様により構成された部分的なバルブトレインアセンブリが示されており、全体が符号10で示されている。部分的なバルブトレインアセンブリ10は、エンジンブレーキを利用していて、6気筒エンジンの3気筒バンク部分において使用するために構成されたものが示されている。しかしながら本技術はこれに限定されるものではないことがわかるだろう。この点に関して、本開示は、エンジンブレーキを利用する全てのバルブトレインアセンブリで使用されてもよい。部分的なバルブトレインアセンブリ10は、バルブトレインキャリア12で支持されていて、1つの気筒につき3つのロッカーアームを含んでいてもよい。
【0014】
特に、各気筒は、吸気バルブロッカーアームアセンブリ20と、排気バルブロッカーアームアセンブリ22と、エンジンブレーキロッカーアームアセンブリ24とを含む。排気バルブロッカーアームアセンブリ22とエンジンブレーキロッカーアームアセンブリ24とは、排気バルブの開放を制御するために協働し、まとめてデュアル排気バルブロッカーアームアセンブリ26(
図2)と呼ばれる。吸気バルブロッカーアームアセンブリ20は、吸気バルブの動きを制御するように構成されている。排気バルブロッカーアームアセンブリ22は、ドライブモードにおいて排気バルブの動きを制御するように構成されている。エンジンブレーキロッカーアームアセンブリ24は、本明細書で説明されるようにエンジンブレーキモードにおいて2つの排気アームのうちの一方に作用するように構成されている。ロッカーシャフト34は、バルブトレインキャリア12に受容されていて、排気バルブロッカーアームアセンブリ22とエンジンブレーキロッカーアームアセンブリ24の回転を支持する。
【0015】
さらに
図2及び
図3につき、排気バルブロッカーアームアセンブリ22を以下に説明する。排気バルブロッカーアームアセンブリ22は一般的に、排気ロッカーアーム40と、バルブブリッジ42と、スピゴットアセンブリ44と、エンジンブレーキカプセル46とを有していてもよい。バルブブリッジ42は、エンジンの1つの気筒(図示せず)に関連する第1の排気バルブ50及び第2の排気バルブ52(
図2)に係合している。排気ロッカーアーム40は、カムシャフト54のリフトプロフィールに基づき、ロッカーシャフト34を中心として回転する。エンジンブレーキロッカーアームアセンブリ24は、係合部62を有するエンジンブレーキロッカーアーム60を含んでよい。エンジンブレーキロッカーアーム60は、カムシャフト54のリフト供給に基づき、ロッカーシャフト34を中心として回転する。
【0016】
特に
図3を参照して、排気バルブロッカーアームアセンブリ22とエンジンブレーキロッカーアームアセンブリ24の機能を概略的に説明する。この構成はオイルコントロールバルブ70を含み、このオイルコントロールバルブ70は、加圧オイル供給部74の作動のためにオイル流72を提供する。加圧オイルチャンバ78は、エンジンブレーキカプセル46の内側に示されている。エンジンブレーキカプセル46は、エンジンブレーキカプセルピストン80とエンジンブレーキカプセルボディ82とを含んでいてもよい。バルブ先端ピン83は、排気バルブ52とエンジンブレーキカプセルボディ82との間に位置している。C字形クリップ84は、エンジンブレーキカプセルボディ82用のハードストッパを提供することができる。エンジンブレーキロッカーアーム略
図90は、カムローブブレイク92の結果として回転したエンジンブレーキロッカーアームアセンブリ24を表している。
【0017】
アクチュエータアセンブリ100は、アクチュエータボディ102と、アクチュエータチェックボール104と、アクチュエータニードル106と、アクチュエータ戻しばね108と、アクチュエータロックナット110とを含む。エンジンドライブ(燃焼)モードの場合、オイルコントロールバルブ70は閉鎖され、エンジンブレーキカプセルボディ82は完全に引き込まれて、排気バルブ50及び52に影響を与えない。アクチュエータニードル106は、チェックボール104を(対応する座部107から離れた)開放位置に維持することができ、エンジンブレーキカプセル46内に油圧が形成されることを阻止する。エンジンがドライブモードにある場合は、エンジンブレーキロッカーアーム60(
図2)の動き、又は
図3に示されたロッカーアーム略
図90の動きは、排気バルブ52の動きに影響を与えない。
【0018】
エンジンがブレーキ(非燃焼)モードにある場合、オイルコントロールバルブ70が開放されるように通電され、油圧がアクチュエータニードル106を押し戻し、例えば4mmの所定の長さとなるようにエンジンブレーキカプセル46を充填する(伸長させる)。エンジンブレーキロッカーアーム60(ロッカーアーム概略
図90)と排気バルブ50との間のギャップは補償され、これによりカムローブ92によって制御されるエンジンブレーキロッカーアーム60の動きは、排気バルブ52に付加的なリフトを与える。アクチュエータチェックボール104は、加圧オイルチャンバ78内への一方向のオイル補充を各サイクルで可能にする。オイルコントロールバルブ70への通電をやめると、ニードル106は、加圧オイルチャンバ78からのオイルの流出を可能にし、エンジンブレーキカプセル46は、再びドライブモード(燃焼)を可能にする引き込まれた位置へと戻される。エンジンブレーキロッカーアームアセンブリ24は、(ロッカーシャフト34近傍に位置する)排気バルブ52を開放し、より高いブレーキ力を可能にする好適な力の比を提供する。排気バルブ52は、カムローブ上での許容可能な負荷により圧縮行程後期(上死点近く)で開放される。
【0019】
図4には、拡張された又は伸長されたエンジンブレーキカプセル46が示されている。エンジンブレーキカプセルボディ82とバルブ先端ピン83との間のギャップはなくなっている。
図5には、最大リフト時のエンジンブレーキが示されている。排気ロッカーアーム40は基礎円上にあり、エンジンブレーキロッカーアーム60はエンジンブレーキ排気バルブ52のリフトを制御している。さらに説明されるように、エンジンブレーキロッカーアーム60はエンジンブレーキカプセルピストン80に作用して、エンジンブレーキカプセルピストン80はエンジンブレーキカプセルボディ82に作用して、エンジンブレーキカプセルボディ82はバルブ先端ピン83に作用して、バルブ先端ピン83はエンジンブレーキ排気バルブ52に作用する。
【0020】
図6及び
図7を参照して、本開示の付加的な特徴を説明する。ボールロックアセンブリ150が、ボールロック152とボールロックばね154とを有している。ボールロックばね154は、(
図7に力Fとして示されていて)ボールロック152を、エンジンブレーキカプセルボディ82の外径上に形成された溝160内へと押す。溝160は、エンジンブレーキカプセルボディ82が、慣性により、というよりもむしろエンジンブレーキモードにおけるエンジンブレーキロッカーアーム60の負荷のもとで振動しないことを保証するように構成された深さ170と半径172とを有している。ボールロックアセンブリ150は、エンジンブレーキカプセルピストン80の拡張時間又は引込み時間に影響を与えない。C字形クリップ180は、エンジンブレーキカプセルボディ82の行程を制限するために設けられている。この点に関して、C字形クリップ180は、搬送に重要なハードストッパを提供する。
【0021】
今度は
図8及び
図9を参照して付加的な特徴を説明する。エンジンブレーキロッカーアーム60に第1の調節ねじ210が設けられている。排気アーム40に第2の調節ねじ212が設けられている。吸気アーム20に第3の調節ねじ214が設けられている。第1の調節ねじ210、第2の調節ねじ212、第3の調節ねじ214のそれぞれは全て、本開示の一例によればバルブラッシュ設定を提供する。エンジンブレーキラッシュを設定するために、エンジンブレーキカプセル46は引込み位置(オイルなし)内へと押し下げられ(
図9参照)、排気バルブ52におけるラッシュをゼロにする。この位置から、第1の調節ねじ210は、同じバルブにおける排気ブレーキカプセル行程及びラッシュのために再びねじられる。1つの態様では、エンジンブレーキカプセル46は、完全に引き込まれた長さと完全に拡張した長さとの間の差が、(±0.05mmのような)狭い許容差220内にあるように形成される。第1、第2、第3の各調節ねじ210,212,214は、共通のねじ山とサイズを有していてもよく、これにより調節用に同じ工具を使用することができる。
【0022】
この構成は多くの利点を提供する。例えば、エンジンブレーキ機能の作動は2つのオイルコントロールバルブ70による加圧されたエンジンオイルによって制御され、オイルコントロールバルブ70は3つの気筒(
図1に例示された)のそれぞれに対して1つずつ設けられている。オイルコントロールバルブ70は独立的に操作されるように構成することができる。3つの気筒用のバルブ作動構成部品は1つのバルブトレインキャリア12に組み込まれていて、1つのシリンダヘッドにまとめることができる。この構成は、高性能のエンジンブレーキを提供し、1つの排気バルブ52に対して単独に作用することによるバルブトレイン構成部分への高い負荷を形成する必要はない。エンジンブレーキ専用のロッカーアーム(エンジンブレーキロッカーアーム60)を使用することにより、ロッカーシャフト34とカムシャフト54とに低い負荷を伝える好適なロッカーと力の比が得られる。
【0023】
さらに、エンジンブレーキカプセル46は、排気ロッカーアーム40に形成された内径190(
図6参照)に挿入され、ガイドされる。これに関して、従来技術の構成は、エンジンブレーキロッカーアーム内に構成された油圧カプセルを提供するが、本開示は、(エンジンブレーキロッカーアーム60内ではなく)排気ロッカーアーム40に形成されたエンジンブレーキカプセル46を有している。このような構成により好ましいパッケージング利点が得られる。エンジンブレーキカプセル46は、エンジンブレーキロッカーアーム60によって制御されている間、排気ロッカーアーム40内で内径190に沿って自由に動けるように構成されている。
【0024】
本開示の構成は、伸長位置及び引込み位置間でエンジンブレーキカプセル46を動かすためにアクチュエータアセンブリ100による作動制御を提供する。アクチュエータアセンブリ100とオイルコントロールバルブ70(
図3)とは、排気ロッカーアーム40内に、エンジンブレーキカプセル46とは別個に構成されている。さらには、ボールロックアセンブリ150により、ドライブモードにおけるエンジンブレーキカプセルボディ82のドライブモード保持が提供される。
【0025】
図10〜
図21につき、デュアル排気バルブロッカーアームアセンブリ26の作動シーケンスの例を以下に説明する。
図10には、カムシャフト54の基礎円上にある排気ロッカーアーム40とエンジンブレーキロッカーアーム60とが示されている。エンジンブレーキロッカーアーム60の係合部62は、エンジンブレーキカプセルピストン80に係合していない。エンジンブレーキカプセル46は引き込まれている。
図11の概略図は、
図10のデュアル排気バルブロッカーアームアセンブリ26の位置に対応するものである。オイルコントロールバルブ70は、ドレイン開放状態で閉鎖されている。チェックボール104は、座部107から離れて開放位置にある。
【0026】
図12及び
図13について説明する。
図12には、カムシャフト54の最大リフト上にある排気ロッカーアーム40と、カムシャフト54の基礎円上にあるエンジンブレーキロッカーアーム60とが示されている。エンジンブレーキロッカーアーム60の係合部62は、エンジンブレーキカプセルピストン80に係合していない。排気ブレーキロッカーアームロストモーションスプリング232は、エンジンブレーキロッカーアーム60をカムシャフト54に向かって維持している。エンジンブレーキカプセル46は引き込まれている。
図13の概略図は、
図12のデュアル排気バルブロッカーアームアセンブリ26の位置に対応するものである。オイルコントロールバルブ70は、ドレイン開放状態で閉鎖されている。チェックボール104は、座部107から離れて開放位置にある。
【0027】
図14及び
図15について説明する。
図14には、カムシャフト54の基礎円上にある排気ロッカーアーム40と、カムシャフト54の基礎円上にあるエンジンブレーキロッカーアーム60とが示されている。エンジンブレーキロッカーアーム60の係合部62は、エンジンブレーキカプセルピストン80に係合している。エンジンブレーキカプセル46は拡張していて、エンジンブレーキカプセルボディ82がバルブブリッジ42上のバルブ先端83に接触している。
図15の概略図は、
図14のデュアル排気バルブロッカーアームアセンブリ26の位置に対応するものである。オイルコントロールバルブ70は開放されている。ニードル106は引き込まれている。チェックボール104は、オイルコントロールバルブ70からの油圧下のみで開放される。
【0028】
図16及び
図17について説明する。
図16には、カムシャフト54の基礎円上にある排気ロッカーアーム40と、カムシャフト54の突出部分との係合により反時計回りに所定の距離だけ回転されたエンジンブレーキロッカーアーム60とが示されている。エンジンブレーキロッカーアーム60の係合部62は、エンジンブレーキカプセルピストン80に係合している。エンジンブレーキカプセル46は拡張していて、エンジンブレーキカプセルボディ82がバルブブリッジ42上のバルブ先端83に接触している。エンジンブレーキロッカーアーム60の動きが、排気バルブ52エンジンブレーキのリフト(開放)に精密に移行していることが示されている。
図17の概略図は、
図16のデュアル排気バルブロッカーアームアセンブリ26の位置に対応するものである。オイルコントロールバルブ70は開放されている。ニードル106は引き込まれている。チェックボール104は、エンジンブレーキカプセル46からの圧力により閉鎖される。
【0029】
図18及び
図19について説明する。
図18には、カムシャフト54の最大リフト上にある排気ロッカーアーム40と、カムシャフト54の基礎円上にあるエンジンブレーキロッカーアーム60とが示されている。エンジンブレーキリフトが過ぎると、排気ロッカーアームアセンブリ22は両バルブ50,52の開放を制御する。エンジンブレーキロッカーアーム60は、ロストモーションスプリング232によりカムシャフト54に対する位置を維持される。
図19の概略図は、
図18のデュアル排気バルブロッカーアームアセンブリ26の位置に対応するものである。オイルコントロールバルブ70は開放されている。ニードル106は引き込まれている。チェックボール104は、エンジンブレーキカプセル46からの圧力によってのみ開放される。エンジンブレーキカプセル46は、最大の伸長のためのハードストッパまで拡張する。
【0030】
図20及び
図21について説明する。
図20には、カムシャフト54の基礎円上にある排気ロッカーアーム40とエンジンブレーキロッカーアーム60とが示されている。両排気バルブ50,52は、排気ロッカーアームアセンブリ22によって制御されて同時に閉鎖される。エンジンブレーキカプセル46は(再び)完全に拡張される。リフト中にエンジンブレーキカプセル64から漏出したオイルが補充される。
図21の概略図は、
図20のデュアル排気バルブロッカーアームアセンブリ26の位置に対応するものである。オイルコントロールバルブ70は開放されている。ニードル106は引き込まれている。チェックボール104は、エンジンブレーキカプセル46からの圧力によってのみ開放される。エンジンブレーキカプセル46は、最大の伸長のためのハードストッパまで拡張する。
【0031】
態様の前記説明は、例示及び説明の目的のために提示されている。この説明は、本開示を網羅しようとするものではなく、又は限定するものではない。特定の態様の個々のエレメント又は特徴は、概して特定の態様に限定されるものではなく、適用可能であれば、交換可能であり、特に示されていなくても、又は説明されていなくても選択された態様で使用できる。同じものが様々な形式で変更されてもよい。このような変更は、本開示の思想および範囲からの逸脱であると見なされるものではなく、このような変化形式の全ては、本開示の範囲内に含まれるべきである。