【文献】
カプトン総合カタログ,東レ・デュポン株式会社[オンライン],2012年 5月,[検索日 2018.08.10]インターネット,URL,<http://www.td-net.co.jp/products/download/documents/kapton2007.pdf>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記粘着材層は、JIS K0237に準拠して測定されるシリコンウエハに対する粘着力が0.1〜10N/25mmである請求項1又は2に記載の電子部品の製造方法。
前記基層は、ポリイミド、ポリエチレンナフタレート及びポリエチレンテレフタレートの群から選ばれる1又は2以上の樹脂を含む請求項1乃至3のうちのいずれかに記載の電子部品の製造方法。
開口部を有する枠体の前記開口部を覆うように、前記枠体の一面に、電子部品保護フィルムの粘着材層を貼着して電子部品保護部材を形成する電子部品保護部材形成工程と、
前記開口部に露出された前記粘着材層の表面に、複数の半導体部品を離間させた状態に貼着する半導体部品貼着工程と、
前記粘着材層の表面及び前記半導体部品を封止剤で覆う封止剤被覆工程と、
加熱したチャックテーブルに前記電子部品保護フィルムの基層の側を吸着固定して、前記封止剤を加熱硬化してアレイ状に封止された電子部品を得る加熱硬化工程と、を備え、
前記電子部品保護フィルムは、前記基層と前記粘着材層とを有し、
前記基層は、厚さが15μm以上50μm以下であり、160℃における引張弾性率E’(160)と、50℃における引張弾性率E’(50)と、の比RE(=E’(160)/E’(50))が0.05<RE<1であり、1×108≦E’(50)≦1×1010であることを特徴とする電子部品の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献2では、粘着フィルムを介してリングフレームに半導体ウエハを接着保持する過程を備えたマウント方法が開示されている。この文献における粘着フィルムは、いわゆるダイシングフィルムであり、ダイシングフィルムから被保持物を剥離し易くするために、粘着層に熱発泡性の粘着剤が利用されている。
一方、上記特許文献1に開示されている通り、上述の電子部品の製造方法では、半導体部品をキャリア上に再配置する際に、粘着フィルム等を介してキャリアに固定する必要がある。近年、この特許文献1の技術に利用される粘着フィルムとして、上記特許文献2に開示されるような、熱発泡性の粘着剤を利用した粘着フィルムが利用されている。
【0005】
そして、特許文献1の方法によれば、個片化した複数の半導体部品を粘着フィルム上に再配置した後、封止剤を用いて一体的に封止する封止工程を備える。この際、利用される封止剤としては、熱硬化性の封止剤が汎用される。そのため、上記特許文献2の熱発泡性の粘着剤を利用した粘着フィルム上で封止を行うと、熱硬化の際に粘着層の発泡も始まってしまうおそれがある。この問題を避けるため、昨今の封止剤では、硬化温度を低く調整し、封止剤の硬化温度で粘着剤の発泡が始まらないようにする対策が取られている場合がある。
しかしながら、封止剤の硬化温度を低くすると、封止剤の硬化が不十分となり、得られる電子部品の耐久信頼性が低下することが危惧される。即ち、封止剤の熱硬化温度を下げるという要請と、電子部品の耐熱性を十分に得るという要請と、が相反するという問題を生じている。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、個片化された半導体部品を再配置したのち封止剤でアレイ状に封止する際に利用される電子部品保護フィルムであって、封止剤の硬化温度を低く調整する必要がない電子部品保護フィルム、電子部品保護部材、電子部品の製造方法及びパッケージの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明には以下の事項が含まれる。
[1]開口部を有する枠体の前記開口部を覆うように、前記枠体の一面に、電子部品保護フィルムの粘着材層を貼着するフィルム貼着工程と、
前記開口部に露出された前記粘着材層の表面に、複数の半導体部品を離間させた状態に貼着する半導体部品貼着工程と、
前記粘着材層の表面及び前記半導体部品を封止剤で覆う封止剤被覆工程と、
加熱したチャックテーブルに前記電子部品保護フィルムの基層の側を吸着固定して、前記封止剤を加熱硬化してアレイ状に封止された電子部品を得る加熱硬化工程と、を備え、
前記電子部品保護フィルムは、前記基層と前記粘着材層とを有し、
前記基層は、
厚さが15μm以上50μm以下であり、160℃における引張弾性率E’(160)と、50℃における引張弾性率E’(50)と、の比R
E(=E’(160)/E’(50))が0.05<R
E<1であ
り、1×108≦E’(50)≦1×1010であることを要旨とする電子部品の製造方法。
[2]前記粘着材層を構成する粘着材は、150℃における貯蔵弾性率G’(150)が1×10
4〜500×10
4Paである[1]に記載の電子部品の製造方法。
[3]前記粘着材層は、JIS K0237に準拠して測定されるシリコンウエハに対する粘着力が0.1〜10N/25mmである[1]又は[2]に記載の電子部品の製造方法。
[4]前記基層は、ポリイミド、ポリエチレンナフタレート及びポリエチレンテレフタレートの群から選ばれる1又は2以上の樹脂を含む[1]乃至[3]のうちのいずれかに記載の電子部品の製造方法。
[5]更に、前記アレイ状に封止された電子部品に配線層を形成する配線層形成工程を備える[1]乃至[4]のうちのいずれかに記載の電子部品の製造方法。
[6]前記配線層が形成された前記アレイ状に封止された電子部品を個片化する個片化工程を備える[1]乃至[5]のうちのいずれかに記載の電子部品の製造方法。
[7][6]に記載された前記電子部品を、基板に実装する実装工程を備えることを要旨とするパッケージの製造方法。
【0009】
[
8]開口部を有する枠体の前記開口部を覆うように、前記枠体の一面に、電子部品保護フィルムの粘着材層を貼着して電子部品保護部材を形成する電子部品保護部材形成工程と、
前記開口部に露出された前記粘着材層の表面に、複数の半導体部品を離間させた状態に貼着する半導体部品貼着工程と、
前記粘着材層の表面及び前記半導体部品を封止剤で覆う封止剤被覆工程と、
加熱したチャックテーブルに前記電子部品保護フィルムの基層の側を吸着固定して、前記封止剤を加熱硬化してアレイ状に封止された電子部品を得る加熱硬化工程と、を備え、
前記電子部品保護フィルムは、前記基層と前記粘着材層とを有し、
前記基層は、
厚さが15μm以上50μm以下であり、160℃における引張弾性率E’(160)と、50℃における引張弾性率E’(50)と、の比R
E(=E’(160)/E’(50))が0.05<R
E<1であ
り、1×108≦E’(50)≦1×1010であることを要旨とする電子部品の製造方法。
[
9]前記粘着材層を構成する粘着材は、150℃における貯蔵弾性率G’(150)が1×10
4〜500×10
4Paである
8に記載の電子部品の製造方法。
[
10]前記粘着材層は、JIS Z0237に準拠して測定されるシリコンウエハに対する粘着力が0.1〜10N/25mmである[
8]又は[
9]に記載の電子部品の製造方法。
[
11]前記基層は、ポリイミド、ポリエチレンナフタレート及びポリエチレンテレフタレートの群から選ばれる1又は2以上の樹脂を含む[
8]乃至[
10]のうちのいずれかに記載の電子部品の製造方法。
[
12]更に、前記アレイ状に封止された電子部品に配線層を形成する配線層形成工程を備える[
8]乃至[
11]のうちのいずれかに記載の電子部品の製造方法。
[
13]前記配線層が形成された前記アレイ状に封止された電子部品を個片化する個片化工程を備える[
8]乃至[
12]のうちのいずれかに記載の電子部品の製造方法。
[
14][
13]に記載された前記電子部品を、基板に実装する実装工程を備えることを要旨とするパッケージの製造方法。
【0010】
尚、本明細書には下記[1]〜[22]に関する説明が含まれる。
[1]電子部品の製造方法に用いられ、基層と粘着材層とを備える電子部品保護フィルムであって、
前記製造方法は、開口部を有する枠体の、前記開口部を覆うように前記枠体の一面に前記電子部品保護フィルムの粘着材層を貼着した後、前記開口部に露出された前記粘着材層の表面に、複数の半導体部品を離間させた状態に貼着し、次いで、前記粘着材層の表面及び前記半導体部品を封止剤で覆った後、前記封止剤を加熱硬化してアレイ状に封止された電子部品を得る方法であり、
前記基層の160℃における引張弾性率E’(160)と、50℃における引張弾性率E’(50)と、の比RE(=E’(160)/E’(50))が0.05<RE<1であることを要旨とする電子部品保護フィルム。
[2]前記粘着材層を構成する粘着材は、150℃における貯蔵弾性率G’(150)が1×104〜500×104Paであることを要旨とする[1]に記載の電子部品保護フィルム。
[3]前記粘着材層は、JIS K0237に準拠して測定されるシリコンウエハに対する粘着力が0.1〜10N/25mmであることを要旨とする[1]又は[2]に記載の電子部品保護フィルム。
[4]前記基層は、ポリイミド、ポリエチレンナフタレート及びポリエチレンテレフタレートの群から選ばれる1又は2以上の樹脂を含むことを要旨とする[1]乃至[3]のうちのいずれかに記載の電子部品保護フィルム。
[5]開口部を有する枠体の前記開口部を覆うように、前記枠体の一面に、電子部品保護フィルムの粘着材層を貼着するフィルム貼着工程と、
前記開口部に露出された前記粘着材層の表面に、複数の半導体部品を離間させた状態に貼着する半導体部品貼着工程と、
前記粘着材層の表面及び前記半導体部品を封止剤で覆う封止剤被覆工程と、
前記封止剤を加熱硬化してアレイ状に封止された電子部品を得る加熱硬化工程と、を備え、
前記電子部品保護フィルムは、基層と前記粘着材層とを有し、
前記基層は、160℃における引張弾性率E’(160)と、50℃における引張弾性率E’(50)と、の比RE(=E’(160)/E’(50))が0.05<RE<1であることを要旨とする電子部品の製造方法。
[6]前記粘着材層を構成する粘着材は、150℃における貯蔵弾性率G’(150)が1×104〜500×104Paであることを要旨とする[5]に記載の電子部品の製造方法。
[7]前記粘着材層は、JIS K0237に準拠して測定されるシリコンウエハに対する粘着力が0.1〜10N/25mmであることを要旨とする[5]又は[6]に記載の電子部品の製造方法。
[8]前記基層は、ポリイミド、ポリエチレンナフタレート及びポリエチレンテレフタレートの群から選ばれる1又は2以上の樹脂を含むことを要旨とする[5]乃至[7]のうちのいずれかに記載の電子部品の製造方法。
[9]更に、前記アレイ状に封止された電子部品に配線層を形成する配線層形成工程を備えることを要旨とする[5]乃至[8]のうちのいずれかに記載の電子部品の製造方法。
[10]前記配線層が形成された前記アレイ状に封止された電子部品を個片化する個片化工程を備えることを要旨とする[5]乃至[9]のうちのいずれかに記載の電子部品の製造方法。
[11][10]に記載された前記電子部品を、基板に実装する実装工程を備えることを要旨とするパッケージの製造方法。
[12]電子部品の製造方法に用いられる電子部品保護部材であって、開口部を有する枠体と、前記開口部を覆うように前記枠体の一面に貼着された電子部品保護フィルムと、を備え、
前記電子部品保護フィルムは、基層と粘着材層とを備えるとともに、前記枠体の一面に前記粘着材層が貼着されており、
前記製造方法は、前記電子部品保護部材の前記開口部に露出された前記粘着材層の表面に、複数の半導体部品を離間させた状態に貼着し、次いで、前記粘着材層の表面及び前記半導体部品を封止剤で覆った後、前記封止剤を加熱硬化してアレイ状に封止された電子部品を得る方法であり、
前記電子部品保護フィルムを構成する前記基層の160℃における引張弾性率E’(160)と、50℃における引張弾性率E’(50)と、の比RE(=E’(160)/E’(50))が0.05<RE<1であることを要旨とする電子部品保護部材。
[13]前記粘着材層を構成する粘着材は、150℃における貯蔵弾性率G’(150)が1×104〜500×104Paであることを要旨とする[12]に記載の電子部品保護部材。
[14]前記粘着材層は、JIS Z0237に準拠して測定されるシリコンウエハに対する粘着力が0.1〜10N/25mmであることを要旨とする[12]又は[13]に記載の電子部品保護部材。
[15]前記基層は、ポリイミド、ポリエチレンナフタレート及びポリエチレンテレフタレートの群から選ばれることを要旨とする[12]乃至[14]のうちのいずれかに記載の電子部品保護部材。
[16]開口部を有する枠体の前記開口部を覆うように、前記枠体の一面に、電子部品保護フィルムの粘着材層を貼着して電子部品保護部材を形成する電子部品保護部材形成工程と、
前記開口部に露出された前記粘着材層の表面に、複数の半導体部品を離間させた状態に貼着する半導体部品貼着工程と、
前記粘着材層の表面及び前記半導体部品を封止剤で覆う封止剤被覆工程と、
前記封止剤を加熱硬化してアレイ状に封止された電子部品を得る加熱硬化工程と、を備え、
前記電子部品保護フィルムは、基層と前記粘着材層とを有し、
前記基層は、160℃における引張弾性率E’(160)と、50℃における引張弾性率E’(50)と、の比R
E(=E’(160)/E’(50))が0.05<R
E<1であることを要旨とする電子部品の製造方法。
[17]前記粘着材層を構成する粘着材は、150℃における貯蔵弾性率G’(150)が1×10
4〜500×10
4Paであることを要旨とする[16]に記載の電子部品の製造方法。
[18]前記粘着材層は、JIS Z0237に準拠して測定されるシリコンウエハに対する粘着力が0.1〜10N/25mmであることを要旨とする[16]又は[17]に記載の電子部品の製造方法。
[19]前記基層は、ポリイミド、ポリエチレンナフタレート及びポリエチレンテレフタレートの群から選ばれる1又は2以上の樹脂を含むことを要旨とする[16]乃至[18]のうちのいずれかに記載の電子部品の製造方法。
[20]更に、前記アレイ状に封止された電子部品に配線層を形成する配線層形成工程を備えることを要旨とする[16]乃至[19]のうちのいずれかに記載の電子部品の製造方法。
[21]前記配線層が形成された前記アレイ状に封止された電子部品を個片化する個片化工程を備えることを要旨とする[16]乃至[20]のうちのいずれかに記載の電子部品の製造方法。
[22][21]に記載された前記電子部品を、基板に実装する実装工程を備えることを要旨とするパッケージの製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明の電子部品保護フィルム、電子部品保護部材、電子部品の製造方法及びパッケージの製造方法によれば、個片化された半導体部品を再配置したのち封止剤でアレイ状に封止する際に、封止剤の硬化温度を低く調整する必要がない。そのため、特に熱特性に優れた耐久性の高い電子部品を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を、図を参照しながら説明する。ここで示す事項は例示的なもの及び本発明の実施形態を例示的に説明するためのものであり、本発明の原理と概念的な特徴とを最も有効に且つ難なく理解できる説明であると思われるものを提供する目的で述べたものである。この点で、本発明の根本的な理解のために必要で、ある程度以上に本発明の構造的な詳細を示すことを意図してはおらず、図面と合わせた説明によって本発明の幾つかの形態が実際にどのように具現化されるかを当業者に明らかにするものである。
【0014】
[1]電子部品保護フィルム
本発明の電子部品保護フィルム1は、電子部品の製造方法に用いられる電子部品保護フィルムである。この電子部品の製造方法は、開口部71を有する枠体7の、開口部71を覆うように枠体7の一面7aに電子部品保護フィルム1の粘着材層12を貼着した後、開口部71に露出された粘着材層12の表面12aに、複数の半導体部品20を離間させた状態に貼着し、次いで、粘着材層12の表面12a及び半導体部品20を封止剤30で覆った後、封止剤30を加熱硬化してアレイ状に封止された電子部品50を得る方法である(
図2−
図3参照)。この電子部品の製造方法については後述する。
【0015】
(1)基層
電子部品保護フィルム1は、基層11と粘着材層12とを備える(
図1参照)。このうち、基層11は、160℃における引張弾性率E’(160)と、50℃における引張弾性率E’(50)と、の比R
E(=E’(160)/E’(50))が0.05<R
E<1である。
ここで、「E’(160)」は、基層11の160℃における引張弾性率を表わし、「E’(50)」は、基層11の50℃における引張弾性率を表わす。更に、比R
Eは、E’(50)に対するE’(160)の割合{E’(160)/E’(50)}を表わす。
従って、比R
Eが0.05<R
E<1であることは、基層11の160℃における引張弾性率が、基層11の50℃における引張弾性率の5%を超え100%未満であることを表わす。本発明の電子部品保護フィルム1では、基層11が、0.05<R
E<1であることによって、上述の電子部品の製造方法における封止剤の硬化温度を低く調整することなく、汎用された封止剤を用いて、半導体部品20がアレイ状に封止した電子部品50を得ることができる。
比R
Eは、0.05<R
E<1の範囲であればよいが、0.10≦R
E≦0.95が好ましく、0.20≦R
E≦0.90がより好ましく、0.30≦R
E≦0.85が特に好ましい。
【0016】
各引張弾性率E’(Pa)は特に限定されないが、引張弾性率E’(50)は、1×10
8≦E’(50)≦1×10
10が好ましく、1×10
9≦E’(50)≦5×10
9がより好ましい。
一方、引張弾性率E’(160)は、5×10
6≦E’(160)≦1×10
10が好ましく、5×10
7≦E’(160)≦5×10
9がより好ましい。
尚、基層11の各温度における引張弾性率E’は、後述する実施例に記載の方法により測定される。
【0017】
また、基層11の厚さは、特に限定されないが、5μm以上150μm以下が好ましく、10μm以上100μm以下がより好ましく、15μm以上50μm以下が特に好ましい。
更に、熱膨張率は、特に限定されないが、温度50℃から温度150℃における熱膨張率が1ppm/K以上100ppm/K以下が好ましく、10ppm/K以上95ppm/K以下がより好ましい。
【0018】
基層11は、粘着材層12を支持でき、上述の比R
Eを有すればよく、その材質は特に限定されない。基層11を構成する材料としては、樹脂が好ましい。
樹脂としては、ポリイミド系樹脂(ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミドなど)、ポリエステル系樹脂(ポリオレフィンテレフタレート、ポリオレフィンナフタレートなど)、ポリアミド系樹脂(ナイロンなど)、ポリオレフィン系樹脂(高密度ポリオレフィン、低密度ポリオレフィン、ホモポリオレフィン、ランダムポリオレフィンなど)、ポリスルホン系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ポリウレタン樹脂(熱可塑ポリウレタンエラストマー等)などが挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0019】
これらのなかでは、ポリイミド系樹脂及び/又はポリエステル系樹脂が好ましい。
このうち、ポリイミド系樹脂としては、ポリイミド、ポリエーテルイミド及びポリアミドイミド等が挙げられる。これらのなかでは、ポリイミドが好ましい。具体的には、三井化学株式会社製「オーラム(商品名)」、東レ・デュポン社製「カプトン(商品名)」、東洋紡績株式会社製「ゼノマックス(商品名)」、宇部興産株式会社製「ユーピレックス(商品名)」、株式会社カネカ製「アピカル(商品名)」、三菱ガス化学株式会社製の「ネオプリム(商品名)」、倉敷紡績株式会社製の「ミドフィル(商品名)」等が挙げられる。
【0020】
一方、ポリエステル系樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート及びポリブチレンテレフタレート等、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート等が挙げられる。これらのなかでは、ポリエチレンテレフタレート及び/又はポリエチレンナフタレートが特に好ましい。
【0021】
また、この基層11を構成する材料は、融点が200℃以上であるか、融点を有さない(加熱分解する場合には、分解温度が200℃以上)ことが好ましい。基層11を構成する材料が融点を有する場合には、融点は200℃以上400℃以下が好ましく、210℃以上350℃以下がより好ましく、220℃以上300℃以下が特に好ましい。
【0022】
(2)粘着材層
粘着材層12は、粘着材によって形成された層であり、基層11の一面にのみ、又は、基層11の両面に備えることができる。この粘着材層12は、基層11と直接接して設けられていてもよく、他層を介して設けられていてもよい。
【0023】
粘着材層12を構成する粘着材の150℃における貯蔵弾性率G’(150)(Pa)は、特に限定されず、0.1×10
4≦G’(150)≦1000×10
4とすることができ、1×10
4≦G’(150)≦500×10
4が好ましい。粘着材層12のG’(150)が1×10
4Pa以上である場合には、糊残りを効果的に防止できる。一方、500×10
4Pa以下であることにより、十分な粘着力が得られる。G’(150)は、更に、2×10
4≦G’(150)≦2×10
6がより好ましい。
【0024】
更に、粘着材層12の粘着力は、特に限定されないが、シリコンウエハの表面に貼着して60分間放置した後、シリコンウエハの表面から剥離するときの、JIS Z0237に準拠して測定されるシリコンウエハに対する粘着力が(温度23℃、相対湿度50%の環境下にて測定)0.1〜10N/25mmであることが好ましい。粘着力が上記範囲である場合には、半導体部品との良好な接着性を確保しつつ、封止後の電子部品を剥離する際の糊残りを抑制できる。この粘着力は、更に、0.2N/25mm以上9N/25mm以下がより好ましく、0.3N/25mm以上8N/25mm以下が更に好ましい。
【0025】
また、粘着材層12の厚さ(基層11の一面側の厚さ)は特に限定されないが、0.5μm以上50μm以下が好ましく、1μm以上35μm以下がより好ましく、3μm以上25μm以下が特に好ましい。
【0026】
粘着材は、上述の特性を有すればよく、どのような材料を用いてもよい。通常、少なくとも粘着主剤を含む。粘着主剤としては、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ゴム系粘着剤等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。これらのなかでも、アクリル系粘着剤が好ましい。
【0027】
アクリル系粘着剤としては、アクリル酸エステル化合物の単独重合体、アクリル酸エステル化合物とコモノマーとの共重合体等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
また、アクリル酸エステル化合物としては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレートおよび2−エチルヘキシルアクリレート等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
更に、コモノマーとしては、酢酸ビニル、アクリルニトリル、アクリルアマイド、スチレン、メチル(メタ)クリレート、(メタ)アクリル酸、ヒドロキシエチルメタクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、無水マレイン酸等が挙げられる。
【0028】
更に、粘着材は、粘着主剤以外に、架橋剤を含むことができる。架橋剤としては、エポキシ系架橋剤(ペンタエリストールポリグリシジルエーテルなど)、イソシアネート系架橋剤(ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ポリイソシアネートなど)が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。粘着材に架橋剤が含まれる場合、架橋剤の含有量は、粘着材全体を100質量部として10質量部以下とすることが好ましい。また、粘着材層の粘着力は、架橋剤の含有量によって調整できる。具体的には、特開2004−115591号公報に記載の方法を利用できる。
【0029】
また、粘着剤は、エネルギー線によって硬化されるエネルギー硬化型粘着材であってもよいし、エネルギー線によって硬化されないエネルギー非硬化型粘着材であってもよい。
このうち、エネルギー硬化型粘着材である場合、粘着材に対しエネルギー線照射を行うことで、粘着材を硬化させ、その粘着力を低下させることができる。このため、得られた電子部品(半導体部品がアレイ状に封止されえた電子部品)と電子部品保護フィルムとを離間させる際に、電子部品に対する糊残りをより確実に防止できる。
エネルギー硬化型粘着材は、どのようなエネルギー線によって硬化されるものであってもよい、エネルギー線としては、紫外線、電子線、赤外線等が挙げられる。これらのエネルギー線は1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。具体的には、紫外線によって硬化される紫外線硬化型粘着剤が挙げられる。
【0030】
エネルギー硬化型粘着材である場合、粘着材は、上述の粘着主剤以外に、分子内に炭素−炭素二重結合を有する化合物(以下、単に「硬化性化合物」という)と、エネルギー線に反応して硬化性化合物の重合を開始させることができる光重合開始剤を含むことができる。この硬化性化合物は、分子中に炭素−炭素二重結合を有し、ラジカル重合により硬化可能なモノマー、オリゴマー及び/又はポリマーが好ましい。具体的には、硬化性化合物としては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。粘着材に硬化性化合物が含まれる場合、硬化性化合物の含有量は、粘着材100質量部に対して0.1〜20重量部が好ましい。
【0031】
尚、分子内の炭素−炭素二重結合は、上述の粘着主剤が分子内に有することによって含まれてもよい。即ち、例えば、粘着主剤は、側鎖に炭素−炭素二重結合を有するエネルギー硬化型ポリマー等とすることができる。このようなに、粘着主剤が分子内に硬化性構造を有する場合には、上述の硬化性化合物は配合してもよく、配合しなくてもよい。
【0032】
一方、光重合開始剤としては、エネルギー線の照射によりラジカルを生成できる化合物が好ましい。具体的には、アセトフェノン系光重合開始剤{メトキシアセトフェノンなど}、α−ケトール化合物{4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、α−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンなど}、ケタール系化合物{ベンジルジメチルケタールなど}、ベンゾイン系光重合開始剤{ベンゾイン、ベンゾインアルキルエーテル類(ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル)など}、ベンゾフェノン系光重合開始剤{ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸など}、芳香族ケタール類{ベンジルジメチルケタールなど}等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。粘着材に光重合開始剤が含まれる場合、光重合開始剤の含有量は、粘着材100質量部に対して5〜15質量部とすることが好ましい。
【0033】
(3)その他の層
本発明の電子部品保護フィルム1は、基層11及び粘着材層12のみからなってもよいが、他層を備えることができる。他層としては、貼り付け面の凹凸形状を吸収してフィルム面を平滑にできる凹凸吸収層、粘着材との界面強度を向上する界面強度向上層、基材から粘着面への低分子量成分の移行を抑制する移行防止層等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0034】
(4)電子部品保護フィルムの製造
本発明の電子部品保護フィルムは、どのような方法で製造してもよく、その方法は特に限定されない。具体的には、共押出し法、押出ラミネート法、接着ラミネート法、塗布法等の方法により製造できる。このうち、共押出し法は、基層11となる溶融樹脂と粘着材層12となる溶融樹脂とを共押出しによって積層して電子部品保護フィルムを製造する方法である。
また、押出ラミネート法は、基層11上に、粘着材層12となる溶融樹脂を押出しによって積層して電子部品保護フィルムを製造する方法である。
更に、塗布法は、基層11上に、粘着材層12となる溶融樹脂を塗布又は塗工によって積層して電子部品保護フィルムを製造する方法である。粘着材層12を構成する粘着材として、エネルギー硬化型粘着材を用いる場合は、この塗布法を用いることが好ましい。
また、接着ラミネート法は、基層11と粘着材層12とを、熱圧着、接着剤、ホットメルト等を介して積層して電子部品保護フィルムを製造する方法である。
これらの方法は、1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0035】
(5)貼着対象の半導体部品
本発明の電子部品保護フィルム1に対して、好適に貼着できる半導体部品としては、シリコン基板、サファイア基板、ゲルマニウム基板、ゲルマニウム−ヒ素基板、ガリウム−リン基板、ガリウム−ヒ素−アルミニウム基板などを用いた半導体部品等が挙げられる。このうち、サファイア基板を用いた半導体部品とは、サファイア基板上に半導体層(GaN等)が積層された半導体部品が挙げられる。通常、これらの半導体部品は、半導体ウエハから切り出されて得られる。これらの半導体部品の表面には、回路が形成されていてもよく形成されていなくてもよい。回路としては、配線、キャパシタ、ダイオード及びトランジスタ等が挙げられる。1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
また、特に、これらの半導体部品は、バーンイン試験等のスクリーニングによって初期欠陥が取り除かれた半導体部品であることが好ましい。
【0036】
[2]電子部品保護部材
本発明の電子部品保護部材15は、電子部品の製造方法に用いられる電子部品保護部材である。この電子部品の製造方法は、電子部品保護部材15の開口部71に露出された粘着材層12の表面12aに、複数の半導体部品20を離間させた状態に貼着し、次いで、粘着材層12の表面12a及び半導体部品20を封止剤30で覆った後、封止剤30を加熱硬化してアレイ状に封止された電子部品50を得る方法である(
図2−
図3参照)。この電子部品の製造方法については後述する。
【0037】
また、本発明の電子部品保護部材15は、開口部17を有する枠体7と、開口部17を覆うように枠体7の一面7aに貼着された電子部品保護フィルム1と、を備える。そして、電子部品保護フィルム1は、基層11と粘着材層12とを備える。そして、この電子部品保護フィルム1は、枠体7の一面7aに粘着材層12によって貼着されている。電子部品保護フィルム1については、前述の本発明の電子部品保護フィルム1における記載をそのまま適用できる。
一方、枠体7としては、例えば、リングフレームを用いることができる。枠体7の概形は限定されず、適宜必要に応じた形状にできる。例えば、円形又は四角形等を採用できる。同様に、開口部71の概形も限定されず、適宜必要に応じた形状にでき、例えば、円形又は四角形等を採用できる。枠体7を構成する材質も限定されず、例えば、樹脂及び/又は金属等を用いることができる。
また、枠体7の開口部71を覆うように、枠体7の一面7aに、電子部品保護フィルム1の粘着材層12を貼着する際には、必要に応じて加熱を行うことができる。
【0038】
[2]電子部品の製造方法
本発明の電子部品の製造方法は、フィルム貼着工程(電子部品保護部材形成工程)(R1)と、半導体部品貼着工程(R2)と、封止剤被覆工程(R3)と、加熱硬化工程(R4)と、を備える。
【0039】
フィルム貼着工程(電子部品保護部材形成工程)R1(
図2参照)は、開口部71を有する枠体7の開口部71を覆うように、枠体7の一面7aに、電子部品保護フィルム1の粘着材層12を貼着する工程である。このうち、枠体7については、前述の通りである。また、この工程では、必要に応じて加熱したフィルム1を枠体7に貼着できる。
【0040】
半導体部品貼着工程R2(
図3参照)は、開口部71に露出された粘着材層12の表面12aに、複数の半導体部品20を離間させた状態に貼着する工程である。
半導体部品20については、前述([1](5))した通りである。この半導体部品20が、更に、回路等を形成する必要があるものである場合には、回路形成面(回路が形成されることとなる面)を、粘着材層12の表面12aに貼着してもよいし、回路非形成面(回路を形成しない面)を、粘着材層12の表面12aに貼着してもよい。これらのうちでは、前者が好ましい。
【0041】
封止剤被覆工程R3(
図4参照)は、粘着材層12の表面12a及び半導体部品20を封止剤30で覆う工程である。
封止剤30は、エポキシ等の公知の封止剤用の樹脂を利用できる。本発明では、加熱により硬化される加熱硬化型の封止剤30が用いられる。
この封止剤30は、液状の封止剤であってもよく、塊状の封止剤であってもよく、フィルム状の封止剤であってもよく、更には、その他の形態の封止剤であってもよい。このうち、液状の封止剤30の場合には、塗布又はスピンコート等によって、半導体部品20を封止剤30(未硬化の封止材)で覆うことができる。また、塊状の封止剤30の場合には、加圧プレート(必要に応じて加熱できる)により押圧するとによって、半導体部品20を封止剤30(未硬化の封止材)で覆うことができる。更に、フィルム状の封止剤30の場合には、フィルム状の封止剤30を貼着することにより半導体部品20を封止剤30(未硬化の封止材)で覆うことができる。
【0042】
加熱硬化工程R4(
図5参照)は、封止剤30を加熱硬化してアレイ状に封止された電子部品50を得る工程である。即ち、電子部品50は、少なくとも、半導体部品20と硬化された封止材30’とを備える。
この工程では、上述した封止剤30に応じて、必要な加熱を行い、封止剤30を硬化させる。この際の硬化温度は、通常、100℃以上であり、100℃以上180℃以下が好ましく、120℃以上150℃以下がより好ましい。
【0043】
本発明の方法では、上述した各工程以外にも他の工程を備えることができる。他の工程としては、アレイ状に封止された電子部品50に配線層を形成する配線層形成工程や、配線層が形成されたアレイ状に封止された電子部品51を個片化する個片化工程等が挙げられる。
上述の配線層としては、電子部品実装用の基板に実装するために必要となる配線層が挙げられる。具体的には、実装用のバンプ(はんだボール)、平面電極パッド、テープ電極パッド等の各種電極パッド、更には、これらの電極パッドと半導体部品の回路との接続用配線等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0044】
本発明のパッケージの製造方法は、配線層が形成され且つアレイ状に封止された電子部品51を個片化して得られた個片化電子部品を、基板に実装する実装工程を備えることを特徴とする。即ち、配線層が形成され且つアレイ状に封止された電子部品51をダイシングによって、必要な大きさに個片化し、得られた個片化電子部品を実装するものである。この個片化においては、1つの電子部品内に少なくとも1つの半導体部品が含まれるように個片化されるが、1つの電子部品内に2つ以上の半導体部品が含まれるように個片化される場合を含むものである。
【0045】
[3]パッケージの製造方法
本発明のパッケージの製造方法は、配線層が形成され且つアレイ状に封止された電子部品51を個片化して得られた個片化電子部品を、基板(電子部品実装用の基板)に実装する実装工程を備えることを特徴とする。即ち、配線層が形成され且つアレイ状に封止された電子部品51をダイシングによって、必要な大きさに個片化し、得られた個片化電子部品を実装するものである。この個片化においては、1つの電子部品内に少なくとも1つの半導体部品が含まれるように個片化されるが、1つの電子部品内に2つ以上の半導体部品が含まれるように個片化される場合を含むものである。
【実施例】
【0046】
以下、本発明を実施例によって具体的に説明する。
[1]電子部品保護フィルムの製造
〈実施例1〉
(1)基層
基層11として、厚さ25μmのポリイミド(PI)フィルム(東レ・デュポン株式会社製、品名「カプトン 100V」、温度50〜200℃における熱膨張率27ppm/K、密度1420kg/m
3、融点なし)を用いた。
この基層11を用い、引張弾性率E’を、動的粘弾性測定装置(DMA:Dynamic Mechanical Analysis)(製品名:RSA−3、TAインスツルメント社製)により測定した。具体的には、サンプルサイズを幅10mm、チャック間の長さ20mmとし、周波数1Hz、昇温速度5℃/分の測定条件で−20℃から200℃まで測定して得られたデータから各温度のデータを読み取った。即ち、50℃における値を引張弾性率E’(50)とし、160℃における値を引張弾性率E’(160)とした。その結果、E’(50)は3×10
9Paであり、E’(160)は2×10
9Paであった。その結果、比R
E(=E’(160)/E’(50))は0.66であった。
【0047】
(2)粘着材層
自社製の紫外線硬化型のアクリル系粘着剤を厚さ10μmに成形し、粘着材層12とした。この粘着剤層12の150℃における貯蔵弾性率G’(150)は2.8×10
4Paであった。測定は、動的粘弾性測定装置(製品名:ARES、TAインスツルメント社製)を用いて行った。具体的には、上記の紫外線硬化型のアクリル系粘着剤を厚さ500μmに成形したサンプルを動的粘弾性測定装置にセットし、直径8mmのパラレルプレート型アタッチメントを用い、−40℃から昇温速度3℃/分で200℃まで昇温しながら、測定周波数1Hzで、貯蔵弾性率の測定を行った。測定終了後、得られた貯蔵弾性率−温度曲線から150℃における貯蔵弾性率G’の値を読みとった。
【0048】
(3)基層と粘着材層との積層
上記(1)で得られた基層11の一面に、上記(2)の粘着材層12をラミネートして、実施例1の電子部品保護フィルム1を得た。
得られた実施例1の電子部品保護フィルム1を用い、JIS Z0237に準拠して、以下の方法で粘着力を測定した。即ち、得られた電子部品保護フィルムを、幅25mmの試験片とし、その粘着材層12を、4インチのシリコンエウハに約2kgゴムロールで圧力を加えながら貼り付けた。次いで、温度23℃、相対湿度50%の環境下に60分間放置した。その後、試験片を180°方向に、剥離速度300mm/分でシリコンウエハから引き剥がす際の粘着力を測定した。粘着力の測定は2回行い、平均値を「粘着力」(N/25mm)とした。その結果、実施例1の電子部品保護フィルム1による粘着力は6.2N/25mmであった。
【0049】
〈実施例2〉
基層11として、実施例1と同じポリイミド(PI)フィルムを用いた。
粘着材層12として、厚さ10μmの非硬化型のアクリル系粘着剤(A)を用いた。実施例1と同様に測定した、この粘着材層12のG’(150)は160×10
4Paであった。
実施例1の場合と同様に、基層11と粘着材層12とを積層して、実施例2の電子部品保護フィルム1を得た。得られた実施例2の電子部品保護フィルム1を用い、実施例1と同様に測定した粘着力は0.7N/25mmであった。
【0050】
〈実施例3〉
基層11として、実施例1と同じポリイミド(PI)フィルムを用いた。
粘着材層12として、厚さ10μmの非硬化型のアクリル系粘着剤(B)を用いた。実施例1と同様に測定した、この粘着材層12のG’(150)は42×10
4Paであった。
実施例1の場合と同様に、基層11と粘着材層12とを積層して実施例3の電子部品保護フィルム1を得た。得られた実験例3の電子部品保護フィルムを用い、実施例1と同様に測定した粘着力は2.7N/25mmであった。
【0051】
〈実施例4〉
基層11として、実施例1と同じポリイミド(PI)フィルムを用いた。
粘着材層12として、厚さ10μmの非硬化型のアクリル系粘着剤(C)を用いた。実施例1と同様に測定した、この粘着材層12のG’(150)は0.9×10
4Paであった。
実施例1の場合と同様に、基層11と粘着材層12とを積層して実施例4の電子部品保護フィルム1を得た。得られた実験例4の電子部品保護フィルムを用い、実施例1と同様に測定した粘着力は9.7N/25mmであった。
【0052】
〈実施例5〉
基層11として、厚さ25μmのポリエチレンナフタレート(PEN)フィルム(帝人デュポンフィルム株式会社製、品名「テオネックス」、温度50〜200℃における熱膨張率13ppm/K、密度1360kg/m
3、融点269℃)を用いた。実施例1と同様に測定した、この基層11のE’(50)は3×10
9Paであり、E’(160)は1×10
9Paであり、比R
Eは0.33であった。
粘着材層12として、実施例1と同じ粘着材層(10μm)を用いた。
実施例1の場合と同様に、基層11と粘着材層12とを積層して実施例5の電子部品保護フィルム1を得た。得られた実験例5の電子部品保護フィルムを用い、実施例1と同様に測定した粘着力は6.2N/25mmであった。
【0053】
〈実施例6〉
基層11として、厚さ50μmに押出成形したポリブチレンテレフタレート(PBT)フィルム(東レ株式会社製、品名「トレコン」、温度50〜200℃における熱膨張率94ppm/K、密度1310kg/m
3、融点224℃)を用いた。この基層11を用い、実施例1と同様に測定したE’(50)は3×10
8Paであり、E’(160)は1×10
8Paであり、比R
Eは0.33であった。
粘着材層12として、実施例1と同じ粘着材層(10μm)を用いた。
実施例1の場合と同様に、基層11と粘着材層12とを積層して実施例6の電子部品保護フィルム1を得た。得られた実験例6の電子部品保護フィルムを用い、実施例1と同様に測定した粘着力は6.2N/25mmであった。
【0054】
〈実施例7〉
基層11として、厚さ50μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東レ株式会社製、品名「ルミラー」、温度50〜200℃における熱膨張率15ppm/K、密度1400kg/m
3、融点258℃)を用いた。実施例1と同様に測定した、この基層11のE’(50)は4×10
9Paであり、E’(160)は4×10
8Paであり、比R
Eは0.1であった。
粘着材層12として、実施例1と同じ粘着材層(10μm)を用いた。
実施例1の場合と同様に、基層11と粘着材層12とを積層して実施例7の電子部品保護フィルム1を得た。得られた実験例7の電子部品保護フィルムを用い、実施例1と同様に測定した粘着力は6.2N/25mmであった。
【0055】
〈比較例1〉
基層11として、厚さ100μmに押出成形したポリプロピレンフィルム(株式会社プライムポリマー製、品名「F107BV」、温度50〜120℃における熱膨張率110ppm/K、密度910kg/m
3、融点160℃)を用いた。実施例1と同様に測定した、この基層11のE’(50)は7×10
8Paであり、E’(160)は3×10
6Paであり、比R
Eは0.004であった。
粘着材層12として、実施例1と同じ粘着材層(10μm)を用いた。
実施例1の場合と同様に、基層11と粘着材層12とを積層して比較例1の電子部品保護フィルム1を得た。得られた比較例1の電子部品保護フィルムを用い、実施例1と同様に測定した粘着力は6.2N/25mmであった。
【0056】
〈比較例2〉
基層11として、厚さ100μmに押出成形したポリエチレンフィルム(三井デュポンポリケミカル株式会社製、品名「ミラソン11P」、温度50〜100℃における熱膨張率120ppm/K、密度917kg/m
3、融点107℃)を用いた。実施例1と同様に測定した、この基層11のE’(50)は6×10
7Paであり、E’(160)は破断により測定不能であった。その結果、比R
Eは0.005未満であった。
粘着材層12として、実施例1と同じ粘着材層(10μm)を用いた。
実施例1の場合と同様に、基層11と粘着材層12とを積層して比較例2の電子部品保護フィルム1を得た。得られた比較例2の電子部品保護フィルムを用い、実施例1と同様に測定した粘着力は6.2N/25mmであった。
【0057】
【表1】
【0058】
[2]電子部品保護フィルムを用いた試験
実施例1−7及び比較例1−2を用いて、以下の2種の試験を行った。
(1)試験1(耐熱性の評価)
温度150℃に設定した真空吸着式のウエハテーブル(チャックテーブル)に、上記[1]で得られた実施例1−7及び比較例1−2の各電子部品保護フィルムの基層11の側を吸着固定し、10分経過後に、真空破壊し、各電子部品保護フィルムを、ウエハテーブルから取り外した。この際に、ウエハテーブルからの取り外し易さを以下の基準で評価し、その結果を表1に示した。
「○」・・・問題なく取り外しできた。
「×」・・・ウエハテーブルへの溶着が認められ、取り外しが容易でなかった。
【0059】
(2)試験2(糊残りの評価)
4インチサイズのシリコンウエハの鏡面に、上記[1]で得られた実施例1−7及び比較例1−2の各電子部品保護フィルムの粘着材層12の側を貼着して、150度のホットプレート上にウエハ面を設置して10分間維持した後、ホットプレートを冷却した。次いで、高圧水銀灯を用いて積算光量が1080mJ/cm
2となるように波長365nmの光を照射した後、各電子部品保護フィルムをシリコンウエハから剥離した。この際に、目視によるシリコンウエハへの糊残りを以下の基準で評価し、その結果を表1に示した。
「○」・・・目視によるシリコンウエハへの糊残りが認められなかった。
「×」・・・目視によるシリコンウエハへの糊残りが認められた。
【0060】
[3]実施例の効果
電子部品保護フィルム1の基層11における比R
Eが0.05<R
E<1であることによって、150℃に加熱したウエハテーブルを利用して電子部品を製造できることが分かる。即ち、個片化された半導体部品を再配置したのち封止剤でアレイ状に封止する際に、封止剤の硬化温度を150℃に設定できるため、封止剤の硬化を十分に行うことができ、得られる電子部品の耐久信頼性を向上させることができる。
また、粘着材層12を構成する粘着材の貯蔵弾性率G’(150)を1×10
4〜500×10
4Paとすることにより、150℃の加温を経ても糊残りを防止できることが分かる。即ち、上述のように、封止剤の硬化温度を150℃に設定したとしても、糊残りを防止して、糊残りを除去する手間を抑制して、効率よく電子部品を製造できることが分かる。
【0061】
尚、本発明においては、上記の具体的実施例に示すものに限られず、目的、用途に応じて本発明の範囲内で種々変更した実施例とすることができる。