特許第6652572号(P6652572)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6652572炭素ナノ構造体プレブレンド及びその用途
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6652572
(24)【登録日】2020年1月27日
(45)【発行日】2020年2月26日
(54)【発明の名称】炭素ナノ構造体プレブレンド及びその用途
(51)【国際特許分類】
   C08J 3/22 20060101AFI20200217BHJP
   C08J 3/20 20060101ALI20200217BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20200217BHJP
   C08L 23/08 20060101ALI20200217BHJP
   C08L 23/16 20060101ALI20200217BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20200217BHJP
   C08K 9/02 20060101ALI20200217BHJP
   C01B 32/168 20170101ALI20200217BHJP
   C01B 32/159 20170101ALI20200217BHJP
【FI】
   C08J3/22CEQ
   C08J3/20 B
   C08L101/00
   C08L23/08
   C08L23/16
   C08K3/04
   C08K9/02
   C01B32/168
   C01B32/159
【請求項の数】59
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2017-545400(P2017-545400)
(86)(22)【出願日】2016年2月23日
(65)【公表番号】特表2018-518541(P2018-518541A)
(43)【公表日】2018年7月12日
(86)【国際出願番号】US2016019173
(87)【国際公開番号】WO2016138024
(87)【国際公開日】20160901
【審査請求日】2017年9月27日
(31)【優先権主張番号】14/633,458
(32)【優先日】2015年2月27日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504005091
【氏名又は名称】ゲイツ コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100090169
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 孝
(74)【代理人】
【識別番号】100124497
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 洋樹
(72)【発明者】
【氏名】バーレット,ドナルド ジェームス
(72)【発明者】
【氏名】リクター,ヘニング
(72)【発明者】
【氏名】シヴァラジャン,ラメシュ
(72)【発明者】
【氏名】ヴェジンズ,ヴィクター
【審査官】 藤田 雅也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−045034(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/034635(WO,A1)
【文献】 国際公開第2010/008014(WO,A1)
【文献】 特開2014−177722(JP,A)
【文献】 特開2014−001266(JP,A)
【文献】 特表2005−502792(JP,A)
【文献】 特開2015−214450(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第103642198(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 3/00− 3/28
99/00
C01B32/00− 32/991
C08K 3/00− 13/08
C08L 1/00−101/14
JSTPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマー中に炭素ナノ構造体を分散させる方法であって:
前記炭素ナノ構造体及び微粒子固体を含むブレンドを有機液体中で湿式混合すること;
前記ブレンドを乾燥させて、通常の配合プロセスにおいてポリマーに添加するのに適した炭素ナノ構造体と微粒子とのプレブレンドを形成すること
を含み、
前記炭素ナノ構造体が単層カーボンナノチューブを含む方法。
【請求項2】
前記有機液体がアルコール、置換された芳香族分子、アルキル置換された芳香族炭化水素、ハロゲン化置換された分子、ハロゲン化アルカン、部分的に水素化された芳香族炭化水素、アルキルアミン、環状エーテル、o−ジクロロベンゼン、キシレン、ベンゼン、ジメチルホルムアミド、塩化エチレン、クロロホルム、1,2,4−トリメチルベンゼン、1,2,3,4−テトラメチルベンゼン、テトラヒドロフラン、1,2−ジブロモベンゼン、1,1,2,2−テトラクロロエタン、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン、オクタデシルアミン、アセトン及びそれらの混合物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記微粒子固体がカーボンブラックである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
記プレブレンドがカーボンナノチューブ(「CNT」)のネットワークと混和された微粒子固体の粒子を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記プレブレンドをポリマー組成物中に混合することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記ポリマー組成物中の主ポリマーがエチレン−α−オレフィンエラストマーである、請求項に記載の方法。
【請求項7】
前記エチレン−α−オレフィンエラストマーのα−オレフィンがプロピレン、ブチレン又はオクテンである、請求項に記載の方法。
【請求項8】
前記ポリマー組成物を含むゴム製品を製造することをさらに含む、請求項に記載の方法。
【請求項9】
前記ゴム製品がベルト、ホース、タイヤ、又は制振部品である、請求項に記載の方法。
【請求項10】
エラストマー中にカーボンナノチューブ(「CNT」)を分散させる方法であって:
有機液体中でCNTとカーボンブラックとを湿式混合した後乾燥させることによって形成されたCNTとカーボンブラックとのプレブレンドを得ること;
他の成分と共に前記エラストマー中に前記プレブレンドを混合してエラストマー組成物を形成すること
を含み、
前記プレブレンド中のカーボンブラック対CNTの重量比が4:1〜20:1の範囲内にある方法。
【請求項11】
前記有機液体がアルコール、置換された芳香族分子、アルキル置換された芳香族炭化水素、ハロゲン化置換された分子、ハロゲン化アルカン、部分的に水素化された芳香族炭化水素、アルキルアミン、環状エーテル、o−ジクロロベンゼン、キシレン、ベンゼン、ジメチルホルムアミド、塩化エチレン、クロロホルム、1,2,4−トリメチルベンゼン、1,2,3,4−テトラメチルベンゼン、テトラヒドロフラン、1,2−ジブロモベンゼン、1,1,2,2−テトラクロロエタン、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン、オクタデシルアミン、アセトン及びそれらの混合物を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記エラストマー組成物を含むエラストマー製品を製造することをさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記エラストマー製品がベルト、ホース、タイヤ、又は制振部品である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記エラストマー製品が動力伝達ベルトである、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記プレブレンドがCNTのネットワーク内に混和されたカーボンブラックの粒子を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項16】
前記プレブレンドがナノチューブネットワークとその中に分散されたカーボンブラック粒子とを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項17】
有機液体中の湿式混合によって調製された炭素ナノ構造体及び微粒子固体を含み、
前記炭素ナノ構造体が単層カーボンナノチューブを含むプレブレンド組成物。
【請求項18】
前記有機液体がアルコール、置換された芳香族分子、アルキル置換された芳香族炭化水素、ハロゲン化置換された分子、ハロゲン化アルカン、部分的に水素化された芳香族炭化水素、アルキルアミン、環状エーテル、o−ジクロロベンゼン、キシレン、ベンゼン、ジメチルホルムアミド、塩化エチレン、クロロホルム、1,2,4−トリメチルベンゼン、1,2,3,4−テトラメチルベンゼン、テトラヒドロフラン、1,2−ジブロモベンゼン、1,1,2,2−テトラクロロエタン、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン、オクタデシルアミン、アセトン及びそれらの混合物を含む、請求項17に記載のプレブレンド組成物。
【請求項19】
前記プレブレンドがナノチューブネットワークとその中に分散されたカーボンブラック粒子とを含む、請求項17に記載のプレブレンド組成物。
【請求項20】
前記プレブレンドがナノチューブで被覆されたカーボンブラック粒子を含む、請求項17に記載のプレブレンド組成物。
【請求項21】
前記プレブレンドが炭素ナノ構造体で被覆された黒鉛質炭素粒子を含む、請求項17に記載のプレブレンド組成物。
【請求項22】
前記プレブレンドがコア−シェル材料を形成する炭素ナノ構造体のシェルで被覆された固体コア粒子を含む、請求項17に記載のプレブレンド組成物。
【請求項23】
前記コア粒子が規則的又は不規則的な形状であり20nm〜20μmの範囲の大きさの平均最長寸法を有する、請求項22に記載のプレブレンド組成物。
【請求項24】
前記コア粒子が黒鉛質炭素、ガラス状炭素又は構造のない炭素である、請求項22に記載のプレブレンド組成物。
【請求項25】
前記コア粒子を被覆するシェルが当該コア粒子の全表面積の50〜100%の範囲の表面積を被覆している、請求項22に記載のプレブレンド組成物。
【請求項26】
有機液体中の湿式混合によって調製された炭素ナノ構造体及び微粒子固体を含むプレブレンド組成物であって、前記プレブレンドがナノチューブで被覆されたカーボンブラック粒子を含むプレブレンド組成物。
【請求項27】
有機液体中の湿式混合によって調製された炭素ナノ構造体及び微粒子固体を含むプレブレンド組成物であって、前記プレブレンドが炭素ナノ構造体で被覆された黒鉛質炭素粒子を含むプレブレンド組成物。
【請求項28】
有機液体中の湿式混合によって調製された炭素ナノ構造体及び微粒子固体を含むプレブレンド組成物であって、前記プレブレンドがコア−シェル材料を形成する炭素ナノ構造体のシェルで被覆された固体コア粒子を含むプレブレンド組成物。
【請求項29】
前記コア粒子が規則的又は不規則的な形状であり20nm〜20μmの範囲の大きさの平均最長寸法を有する、請求項28に記載のプレブレンド組成物。
【請求項30】
前記コア粒子が黒鉛質炭素、ガラス状炭素又は構造のない炭素である、請求項28に記載のプレブレンド組成物。
【請求項31】
前記炭素ナノ構造体がフラーレン、単層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブ、及びそれらの化学的誘導体からなる群からの1種又は2種以上からなる、請求項28に記載のプレブレンド組成物。
【請求項32】
前記コア粒子を被覆するシェルが当該コア粒子の全表面積の50〜100%の範囲の表面積を被覆している、請求項28に記載のプレブレンド組成物。
【請求項33】
前記有機液体がアルコール、置換された芳香族分子、アルキル置換された芳香族炭化水素、ハロゲン化置換された分子、ハロゲン化アルカン、部分的に水素化された芳香族炭化水素、アルキルアミン、環状エーテル、o−ジクロロベンゼン、キシレン、ベンゼン、ジメチルホルムアミド、塩化エチレン、クロロホルム、1,2,4−トリメチルベンゼン、1,2,3,4−テトラメチルベンゼン、テトラヒドロフラン、1,2−ジブロモベンゼン、1,1,2,2−テトラクロロエタン、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン、オクタデシルアミン、アセトン及びそれらの混合物を含む、請求項26〜32のいずれか一項に記載のプレブレンド組成物。
【請求項34】
炭素ナノ構造体及び微粒子固体を含むプレブレンド組成物を製造する方法であって、
炭素ナノ構造体及び微粒子固体を含むブレンドを有機液体中で湿式混合すること、及び
混合されたブレンドを乾燥させることを含み、
前記炭素ナノ構造体が単層カーボンナノチューブを含む製造方法。
【請求項35】
前記有機液体がアルコール、置換された芳香族分子、アルキル置換された芳香族炭化水素、ハロゲン化置換された分子、ハロゲン化アルカン、部分的に水素化された芳香族炭化水素、アルキルアミン、環状エーテル、o−ジクロロベンゼン、キシレン、ベンゼン、ジメチルホルムアミド、塩化エチレン、クロロホルム、1,2,4−トリメチルベンゼン、1,2,3,4−テトラメチルベンゼン、テトラヒドロフラン、1,2−ジブロモベンゼン、1,1,2,2−テトラクロロエタン、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン、オクタデシルアミン、アセトン及びそれらの混合物を含む、請求項34に記載の製造方法。
【請求項36】
前記プレブレンドがナノチューブネットワークとその中に分散されたカーボンブラック粒子とを含む、請求項34に記載の製造方法。
【請求項37】
前記プレブレンドがナノチューブで被覆されたカーボンブラック粒子を含む、請求項34に記載の製造方法。
【請求項38】
前記プレブレンドが炭素ナノ構造体で被覆された黒鉛質炭素粒子を含む、請求項34に記載の製造方法。
【請求項39】
前記プレブレンドがコア−シェル材料を形成する炭素ナノ構造体のシェルで被覆された固体コア粒子を含む、請求項34に記載の製造方法。
【請求項40】
前記コア粒子が規則的又は不規則的な形状であり20nm〜20μmの範囲の大きさの平均最長寸法を有する、請求項39に記載の製造方法。
【請求項41】
前記コア粒子が黒鉛質炭素、ガラス状炭素又は構造のない炭素である、請求項39に記載の製造方法。
【請求項42】
前記コア粒子を被覆するシェルが当該コア粒子の全表面積の50〜100%の範囲の表面積を被覆している、請求項39に記載の製造方法。
【請求項43】
炭素ナノ構造体及び微粒子固体を含むプレブレンド組成物を製造する方法であって、
炭素ナノ構造体及び微粒子固体を含むブレンドを有機液体中で湿式混合すること、及び
混合されたブレンドを乾燥させること
を含み、
前記プレブレンドがナノチューブで被覆されたカーボンブラック粒子を含む製造方法。
【請求項44】
炭素ナノ構造体及び微粒子固体を含むプレブレンド組成物を製造する方法であって、
炭素ナノ構造体及び微粒子固体を含むブレンドを有機液体中で湿式混合すること、及び
混合されたブレンドを乾燥させること
を含み、
前記プレブレンドが炭素ナノ構造体で被覆された黒鉛質炭素粒子を含む製造方法。
【請求項45】
炭素ナノ構造体及び微粒子固体を含むプレブレンド組成物を製造する方法であって、
炭素ナノ構造体及び微粒子固体を含むブレンドを有機液体中で湿式混合すること、及び
混合されたブレンドを乾燥させること
を含み、
前記プレブレンドがコア−シェル材料を形成する炭素ナノ構造体のシェルで被覆された固体コア粒子を含む製造方法。
【請求項46】
前記コア粒子が規則的又は不規則的な形状であり20nm〜20μmの範囲の大きさの平均最長寸法を有する、請求項45に記載の製造方法。
【請求項47】
前記コア粒子が黒鉛質炭素、ガラス状炭素又は構造のない炭素である、請求項45に記載の製造方法。
【請求項48】
前記炭素ナノ構造体がフラーレン、単層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブ、及びそれらの化学的誘導体からなる群からの1種又は2種以上からなる、請求項45に記載の製造方法。
【請求項49】
前記コア粒子を被覆するシェルが当該コア粒子の全表面積の50〜100%の範囲の表面積を被覆している、請求項45に記載の製造方法。
【請求項50】
前記有機液体がアルコール、置換された芳香族分子、アルキル置換された芳香族炭化水素、ハロゲン化置換された分子、ハロゲン化アルカン、部分的に水素化された芳香族炭化水素、アルキルアミン、環状エーテル、o−ジクロロベンゼン、キシレン、ベンゼン、ジメチルホルムアミド、塩化エチレン、クロロホルム、1,2,4−トリメチルベンゼン、1,2,3,4−テトラメチルベンゼン、テトラヒドロフラン、1,2−ジブロモベンゼン、1,1,2,2−テトラクロロエタン、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン、オクタデシルアミン、アセトン及びそれらの混合物を含む、請求項43〜49のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項51】
有機液体中に炭素ナノ構造体を分散させて分散体を形成すること;
前記分散体を微粒子固体とブレンディングしてブレンドを形成すること
を含み、
前記炭素ナノ構造体が単層カーボンナノチューブを含む方法。
【請求項52】
前記有機液体がアルコール、置換された芳香族分子、アルキル置換された芳香族炭化水素、ハロゲン化置換された分子、ハロゲン化アルカン、部分的に水素化された芳香族炭化水素、アルキルアミン、環状エーテル、o−ジクロロベンゼン、キシレン、ベンゼン、ジメチルホルムアミド、塩化エチレン、クロロホルム、1,2,4−トリメチルベンゼン、1,2,3,4−テトラメチルベンゼン、テトラヒドロフラン、1,2−ジブロモベンゼン、1,1,2,2−テトラクロロエタン、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン、オクタデシルアミン、アセトン及びそれらの混合物を含む、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記ブレンドを乾燥させてプレブレンドを形成することをさらに含む、請求項51に記載の方法。
【請求項54】
前記プレブレンドが、前記炭素ナノ構造体のシェルで被覆された前記固体粒子のコアを含むコア−シェル材料を含む、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
配合プロセスにおいてポリマーに前記プレブレンドを添加することをさらに含む、請求項53に記載の方法。
【請求項56】
前記プレブレンドを電池電極の一部として又は電解質媒体の一部として又はスーパーキャパシタの一部として使用することをさらに含む、請求項53に記載の方法。
【請求項57】
電解質媒体、塗料、コーティング、又はスラリーに前記プレブレンドを使用することをさらに含む、請求項51に記載の方法。
【請求項58】
有機液体中に炭素ナノ構造体を分散させて分散体を形成すること;
前記分散体を微粒子固体とブレンディングしてブレンドを形成すること
を含み、
前記プレブレンドが、前記炭素ナノ構造体のシェルで被覆された前記固体粒子のコアを含むコア−シェル材料を含む方法。
【請求項59】
前記有機液体がアルコール、置換された芳香族分子、アルキル置換された芳香族炭化水素、ハロゲン化置換された分子、ハロゲン化アルカン、部分的に水素化された芳香族炭化水素、アルキルアミン、環状エーテル、o−ジクロロベンゼン、キシレン、ベンゼン、ジメチルホルムアミド、塩化エチレン、クロロホルム、1,2,4−トリメチルベンゼン、1,2,3,4−テトラメチルベンゼン、テトラヒドロフラン、1,2−ジブロモベンゼン、1,1,2,2−テトラクロロエタン、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン、オクタデシルアミン、アセトン及びそれらの混合物を含む、請求項58に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は概して、ポリマー中に炭素ナノ構造体、例えば、ナノチューブなどを分散させて、例えば、エラストマー組成物を製造する方法、当該エラストマー組成物のための炭素ナノ構造体プレブレンドを形成する方法、及び得られたプレブレンド及び組成物の用途に関する。
【背景技術】
【0002】
カーボンナノチューブ(「CNT」)は繊維の絡合した束として生成されるので、それをポリマー中に分散させることはそれを補強用添加剤として用いる際の重要な段階である。カーボンナノチューブが分散されたポリマーを得るために多くのアプローチが用いられてきた。これらの方法には、熱可塑性樹脂中へのCNTの溶融ブレンディング、CNTの存在における重合、高剪断混合、CNTの化学修飾、及び界面活性剤の使用がある。
【0003】
ゴム又は弾性ポリマー中へのカーボンナノチューブの混合に関して、大部分のエラストマー又はゴムが有しているような高い粘度を持ったマトリクス材料中にCNTを分散させることは極めて難しい。熱を加えることは、プラスチック中に溶融ブレンディングする際の加熱のように有意に充分にはポリマーの粘度を下げない。必要なことはゴム中でのCNTの分散性を改善する方法である。
【0004】
米国特許公報第7,785,701B2号明細書は、エラストマーがカーボンナノファイバーに対する親和性を持つ不飽和結合又は基を有する、エラストマー及びエラストマー中に分散されたカーボンナノファイバーを含有する炭素繊維複合材料を開示している。エラストマーのナノファイバーに対する親和性が高い場合、分散は、例えば、開放形ロール機における、混合の剪断力によって容易であると報告されている。分散は、EPDMなどの非極性エラストマーについてそのように容易ではないと報告されている。結果として得られるロール機混合された組成物は、ナノファイバーを有しない組成物と比べて、モジュラス及び強度の増加を示すが、多くの補強充填剤に特有であるように伸びの減少を示す。
【0005】
欧州特許公報第2,138,535B1号明細書は、特有の水素化カルボキシル化ニトリルゴム(HXNBR)、架橋剤及びカーボンナノチューブを含有する加硫可能な組成物並びにかかる組成物の製造方法を開示している。そこには、溶媒混合、溶融混合及び噴霧乾燥法が一部のゴム/CNT複合材料を製造するための加工方法として用いられてきたと報告されている。HXNBR中の多層(multi-wall)カーボンナノチューブ(「MWCNT」)の例は密閉式ミキサー及び二本ロール機で通常に混合された。得られた組成物はモジュラス及び強度の増加を示したが本質的には同じ伸びを示した。
【0006】
2014年4月2日に出願の、Method for Rubber Reinforced With Carbon Nanotubesと題された、本出願人の同時係属の米国特許出願第14/243,634号を参照されたい。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、炭素ナノ構造体を含有するプレブレンド組成物の形成を通じてエラストマー中に炭素ナノ構造体、例えば、ナノチューブなどを分散させる改良方法及び得られたエラストマー組成物及びそれから製造された製品に関する。
【0008】
溶媒中にCNT又は他の炭素ナノ構造化材料を懸濁又は溶解し、カーボンブラックなどの担体粒子とブレンディングした後に乾燥させることによって、担体粒子とその周囲にCNTを分散させることができ、又はCNTネットワークの全体にわたって担体粒子を分散させることができる。かかるプレブレンドはCNTがゴム、とりわけ、エチレン−α−オレフィンエラストマーなどの非極性エラストマー中に分散するのに役立つことが見出された。結果として、モジュラス、伸び及び引裂強さの改善が実現されることができる。CNTが破断点伸び及び引裂強さの特性を同時に増加させながらモジュラスを増加させることができるという事実は新規かつ好都合な結果であると考えられる。担体微粒子固体としてのカーボンブラックの使用は既存のゴム加工に容易に組み込まれることができ費用効果を高めることができる。
【0009】
本発明は、液体媒体中に炭素ナノ構造体を分散させ、微粒子固体、例えば、カーボンブラックなどと混合し、そして乾燥させて液体を除去し、結果としてナノ構造体と粒子とのプレブレンド、例えば、CNTとカーボンブラックとのプレブレンドを得ることによってカーボンプレブレンドを形成する段階を含む方法を対象とする。次いで、プレブレンドはポリマーマトリクス中、例えば、エラストマーなどのマトリクス中に分散されることができる。本発明は得られたポリマー又はエラストマー又はゴム組成物、及び当該組成物から製造される製品、例えば、タイヤ、動力伝達ベルト、運搬用ベルト材料(transport belting)、又はホースなども対象とする。
【0010】
本発明の方法は、溶媒中にCNT及びカーボンブラックなどの担体粒子の両方を懸濁又は溶解し、混合しそして最終的にそれを乾燥させることを含んでいることができる。本発明の方法は、プレブレンドを形成するための独創的なCNT被覆粒子又は他の炭素ナノ構造化材料で被覆された粒子をもたらすことができる。
【0011】
CNT及び担体粒子の両方の寸法及び量に応じて、CNTで被覆された粒子の代わりに、粒子が分散されているCNTネットワークからなる構造が形成されることができる。
【0012】
CNT/カーボンブラックのプレブレンドは、エチレン−α−オレフィンゴム組成物中の単層(single-wall)カーボンナノチューブ(「SWCNT」)のとりわけ改善された分散体を与えて、SWCNTから改善された補強をもたらすことができる。
【0013】
本発明のエラストマー組成物中のCNT又は他のナノ構造化された炭素の量は0.5重量%、1重量%又は2重量%から2重量%、3重量%、4重量%又は5重量%までであることができる。プレブレンド中のCNTの量はプレブレンドの重量に基づいて1重量%、又は5重量%、又は7重量%から約20重量%、又は30重量%、又は50重量%までであることができる。
【0014】
本発明のエラストマー組成物は有用なゴム製品、例えば、タイヤ、ベルト、ホース、又は制振部品(vibration control component)などに形成されることができる。動力伝達ベルトとして、Vベルト、マルチVリブドベルト、同期ベルト、平ベルトなどを限定なしに挙げることができる。
【0015】
或る量のCNTプレブレンドを含有する改良されたエラストマー組成物は、モジュラスの改善と破断点伸びの改善とを同時に示すことができる。本発明の組成物は引裂強さ、切傷又は亀裂生長速度及び耐疲労性における改善を示すこともできる。
【0016】
前述したことは、以下の発明の詳細な説明がよりよく理解され得るように、本発明の特徴及び技術的な利点をやや広く概説したものである。本発明のさらなる特徴及び利点は以下に説明され本発明の特許請求の範囲の主題を形成する。当業者であれば、開示された概念及び特定の実施形態は、本発明の同じ目的を実行するために他の構造体をモディファイ又は設計するための基礎として容易に用いられることができることを理解されよう。当業者であれば、かかる同等の構成は別紙の特許請求の範囲に記載された発明の範囲から逸脱していないことも理解されよう。さらなる目的及び利点と共に、その機構及び操作方法の両方について、本発明の特徴であると考えられる新規な特徴は、添付の図面と関連して考慮されれば、以下の説明からより良く理解されるであろう。しかしながら、各図面は例示及び説明のためだけに設けられているのであり、本発明の範囲の定義として意図されるものではないことは明確に理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0017】
同様の数字は同様の部分を示す、本明細書に組み込まれて本明細書の一部を成す添付の図面は、本発明の実施形態を説明するものであり、本明細書の記載と一緒になって本発明の原理を説明するように働く。
【0018】
図1】本発明の方法の実施形態のフローチャートである。
【0019】
図2】エタノール中に混合された13:1比のN550カーボンブラックとSWCNTとからなるプレブレンド材料の785nmで測定されたラマンスペクトルである。
【0020】
図3A】エタノール中に混合された後にろ過され60℃で一晩乾燥された13:1比のN550カーボンブラックとSWCNTとからなるプレブレンド材料の×2,500まで拡大された走査型電子顕微鏡法(SEM)画像である。
【0021】
図3B図3Aの材料の×35,000まで拡大されたSEMである。
【0022】
図3C図3Aの材料の×120,000まで拡大されたSEMである。
【0023】
図3D】本発明の実施形態に係る図3Aの材料の×120,000まで拡大された別のSEMである。
【0024】
図4】本発明の実施形態に従って単層の(single-walled)カーボンナノチューブで被覆されたポリマービーズのSEMである。
【0025】
図5】ゴムにカーボンブラックだけが添加された対照のゴム配合物の×35,000に拡大されたFE−SEM画像である。
【0026】
図6】ゴムにN550カーボンブラックとSWCNTとが別々に添加されることによって調製された対照のゴム配合物の×35,000に拡大されたFE−SEM画像である。
【0027】
図7】本発明の実施形態に従ってエタノール中で湿式混合されたN550カーボンブラック/SWCNTプレブレンドがゴムに添加されたゴム配合物の×35,000に拡大されたFE−SEM画像である。
【0028】
図8】o−ジクロロベンゼン中でN220カーボンブラック/SWCNT(5:1)を混合することによって調製されたカーボンブラック/SWCNTプレブレンドの×40,000に拡大されたSEM画像である。
【0029】
図9】o−ジクロロベンゼン中でN220カーボンブラック/SWCNT(7:1)を混合することによって調製されたカーボンブラック/SWCNTプレブレンドの×40,000に拡大されたSEM画像である。
【0030】
図10A】o−ジクロロベンゼン中でN550カーボンブラック/SWCNT(5:1)を混合することによって調製されたカーボンブラック/SWCNTプレブレンドの×25,000に拡大されたSEM画像である。
【0031】
図10B図10Aのプレブレンドの×70,000に拡大されたSEM画像である。
【0032】
図11A】o−ジクロロベンゼン中でN550カーボンブラック/SWCNT(7:1)を混合することによって調製されたカーボンブラック/SWCNTプレブレンドの×25,000に拡大されたSEM画像である。
【0033】
図11B図11Aのプレブレンドの×70,000に拡大されたSEM画像である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明に係る方法及びエラストマー組成物は、CNTなどの炭素ナノ構造体とカーボンブラックなどの微粒子固体とのプレブレンドの形成方法及びさらにエラストマー中でのプレブレンドの分散方法を含む。炭素ナノ構造体は、少なくとも1つの寸法が1ナノメートル未満から数ナノメートルのオーダーにある炭素系材料である。炭素ナノ構造体として、構造化されたナノカーボン、例えば、単層の、二層の、数層の又は多層のカーボンナノチューブ、グラフェン、数層のグラフェン、グラフェン酸化物、フラーレン(fullerenic)及び構造化された炭素及びそれらの化学的誘導体の形態を挙げることができるがそれらに限定されるものではない。炭素ナノ構造体は、C60、C70、C84等などのフラーレン分子、及びフラーレンケージの内外に別の原子1種若しくは複数種又は1若しくは2以上の官能基を含有するフラーレン分子を含む。他の炭素ナノ構造体は実質的なフラーレン特性を有する湾曲した炭素シート又は層で構成された炭素の回転楕円体又は小球体を含む。フラーレン特性は、五員炭素環が六員環および場合により七員環の間に存在して炭素の湾曲シートを生じることによって示される。炭素ナノ構造体の化学的誘導体は、上記の炭素系材料が、例えば、付加反応によって官能化された、すなわち、付加された基を有する任意のものを含む。また、炭素ナノ構造体は、上記の構造化されたいずれかのナノカーボンの構造化された断片を含む。プレブレンドは別の混合工程、例えば、ゴム組成物混合工程よりも前に製造される材料の混合物である。それゆえに、プレブレンドは他の望ましい成分と一緒にエラストマー中に混合されて、有用なエラストマー製品を成形するのに適したエラストマー組成物を形成する。図1は、本発明の実施形態に係る方法のフローチャートを示す。プレブレンドは「プレ分散体」又は単に「ブレンド」と称されることもある。
【0035】
図1において、方法100はブレンディング112、混合120、及び製品の製造124の各段階を含む。ブレンディング段階112はインプットとしてカーボンブラックなどの担体粒子102、カーボンナノチューブ104、キャリア液体媒体(carrier liquid medium)106及び場合により他の添加剤105を含む。湿式ブレンディング112段階は添加及び/又は混合の種々の順序を含んでいることができる。一つの好ましい実施形態において、最初にCNT104が液体媒体106中に分散され、次いで微粒子固体102が添加される。別の実施形態においては、CNT104及び微粒子固体106がそれぞれ別々の液体媒体106中に分散され、次いでこの2つの分散体が合せられる。湿式ブレンディング112の後に乾燥118が続く。ブレンディング段階及び乾燥段階の後、得られたCNTプレブレンド119は望ましいポリマー又はゴム成分122と一緒に混合段階120に導入されて製品124を製造するのに適したゴム配合物を得ることができる。混合段階120は場合により複数の混合プロセス段階及び/又は複数の成分添加を含んでいることができる。他の実施形態において、図1中のCNTは、上記に定義された何れかの炭素ナノ構造体又はそれらの混合物によって置き換えられることができる。
【0036】
カーボンナノチューブ(CNT)は繊維を横切る小さな寸法及びかなり大きなL/D比を有する極めて強い分子繊維である。幾つかの合成方法が可能であり、使用されるより一般的な方法の中では、例えば、米国特許第7,887,775号明細書及び米国特許第7,396,520号明細書に開示されている、化学気相成長(CVD)、電気アーク放電(electric arc discharge)(EAD)及び燃焼がある。寸法は製造プロセスに依存する。単層カーボンナノチューブ(SWCNT)は直径が0.5〜6ナノメートル(nm)の範囲であることができ、長さが0.1〜5ミクロン(μm)、好ましくは、長さが0.5〜5μmの範囲の長さを有していることができる。単層カーボンナノチューブは円筒に折り込まれた単一のグラフェンシートから形成される。多層カーボンナノチューブ(MWCNT)は直径が2〜110nmの範囲、そして長さが0.1〜1000μm、好ましくは、0.1〜50μmの範囲であり、それ自体の上に巻き上げられた複数層のグラフェンからなり管状を形成する。これらの大きさの変化はプロセス及び製造業者に依存する。本発明の方法及び組成物において単層カーボンナノチューブ又は多層カーボンナノチューブのいずれも用いられることができるが、単層カーボンナノチューブが好ましい。
【0037】
カーボンナノチューブプレブレンドはカーボンナノチューブ及びカーボンブラックなどの微粒子固体を含む。とりわけ有用な微粒子固体はポリマー又はエラストマー組成物において補強充填剤又は非補強充填剤として一般的に用いられているものであり、例えば、シリカ、カーボンブラック、クレー、白亜、種々の金属酸化物及び水酸化物などを挙げることができる。カーボンブラックはゴムにおけるその広範な使用及びカーボンナノチューブとの化学的相溶性の理由によって好ましい。本発明の方法に用いるのに適したカーボンブラックの種類としてASTM D1765に特定されたものを挙げることができる。以下の記載から理解されるように、2つの適切な例としてN550及びN220を挙げることができる。
【0038】
プレブレンド中のCNTの量は、プレブレンドの重量を基準にして1重量%、又は5重量%、又は7重量%から約50重量%まで、又は30重量%まで、又は20重量%までであることができる。プレブレンド中のCNTの量は、粒子対カーボンナノチューブの比として表されることができ、その比は重量で約4:1から99:1まで若しくは20:1まで、又は6:1から15:1まで、又は約9:1から約14:1までであることができる。CNTは本明細書に記載の方法に従ってカーボンブラックと容易にブレンドされることができ、そしてCNT/カーボンブラックのプレブレンドはEPDMなどのエチレン−α−オレフィンエラストマーと大変に相溶性がある。
【0039】
用語「キャリア液体」又は「液体媒体」とはカーボンナノチューブが溶解され、分散され又は懸濁されることができる液体をいう。キャリア液体は蒸発又は乾燥によって除去されて、カーボンブラックを被覆した又はカーボンブラックと混和されたナノチューブを残すことができる。適当なキャリア液体として、水又は有機溶媒、例えば、アルコール、塩素化された脂肪族又は芳香族溶媒、ケトン、他の酸素含有又はハロゲン含有炭化水素液体、置換された芳香族分子、アルキル置換された芳香族炭化水素、ハロゲン化置換された分子、ハロゲン化アルカン、部分的に水素化された芳香族炭化水素、アルキルアミン、環状エーテル、o−ジクロロベンゼン、トルエン、キシレン、ベンゼン、ジメチルホルムアミド(「DMF」)、塩化エチレン、クロロホルム、1,2,4−トリメチルベンゼン、1,2,3,4−テトラメチルベンゼン、テトラヒドロフラン、1,2−ジブロモベンゼン、1,1,2,2−テトラクロロエタン、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン、オクタデシルアミン、アセトンを挙げることができる。使用されることができる他の液体は、例えば、界面活性剤によって安定化された水、に基づく系を含み、かかる界面活性剤は、コール酸ナトリウム、(「NaDDBS」;C1225SONa)、オクチルベンゼンスルホン酸ナトリウム(NaOBS;C17SONa)、ブチルベンゼンスルホン酸ナトリウム(「NaBBS」;CSONa)、安息香酸ナトリウム(CCONa)、ドデシル硫酸ナトリウム(「SDS」;CH(CH11−OSONa)、トリトン(ダウ・ケミカル社(Dow Chemical Co.)の商標)X−100(「TX−100」;C17(OCHCH−OH;n〜10)、ドデシルトリメチルアンモニウムブロミド(「DTAB」;CH(CH11N(CHBr)、デキストリン、及びポリスチレン−ポリエチレン−オキシドジブロックコポリマー(「PS−PEO」)からなる群から選択される少なくとも1つの構成員である。例えば、国際特許出願第PCT/US2010/045391号及び米国特許出願第13/725,080号明細書に概説されているような他の非イオン性の分散助剤は、水系又は溶媒系に用いられることができる。分散性又は溶解性を高めるために水系又は溶媒系において温度調節が用いられることもできる。下記から理解されるように、2つの適切な例としてエタノール及びo−ジクロロベンゼンを挙げることができる。
【0040】
用語ポリマーは熱可塑性材料、エラストマー材料及び熱硬化性高分子材料を含む。用語ゴム及びエラストマーは幾分か互換的に使用されることができるが、ゴムは一般的に架橋エラストマー材料を意味するのに対し、一部のエラストマーは一般に熱可塑性であることができ又は架橋されることができる。本明細書中で用語「ゴム」及び「エラストマー」はエラストマー材料又はゴム状材料(rubbery material)の主エラストマー成分を形成する弾性ポリマー又はゴム状ポリマーをいうように用いられ、一方、用語「ゴム組成物」及び「エラストマー組成物」は主エラストマー成分と1種又は2種以上の他の配合成分、例えば、充填剤、繊維、劣化防止剤(antidegradants)、加工助剤、硬化剤、硬化促進剤、コエージェント、軟化剤、エキステンダーなどとの混合物をいうように用いられる。任意の適当なエラストマーが用いられることができ、例として、天然ゴム(NR)、エポキシ化天然ゴム(ENR)、イソプレンゴム(IR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、ニトリルゴム(NBR)、水素化ニトリルゴム(HNBR)、クロロプレンゴム(CR)、エチレン−α−オレフィンエラストマー、例えば、エチレンプロピレンゴム(EPM又はEPDM)、エチレンブテン(EBM)又はエチレンオクテン(EOM)など、ブチルゴム(IIR)、クロロブチルゴム(CIIR)、アクリルゴム(ACM)、シリコーンゴム(Q)、フッ素ゴム(FKM)、ブタジエンゴム(BR)、エポキシ化ブタジエンゴム(EBR)、エピクロロヒドリンゴム(ECO)、注型ウレタンエラストマー(PU)、又はポリサルファイドゴム(T);熱可塑性エラストマー、例えば、オレフィン系エラストマー(TPO)、ポリ塩化ビニル系エラストマー(TPVC)、ポリエステル系エラストマー(TPEE)、ポリウレタン系エラストマー(TPU)、ポリアミド系エラストマー(TPEA)、又はスチレン系エラストマー(SBS)などを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。これらのエラストマーの混合物が用いられることができる。本発明の方法の実施形態は、EPM若しくはEPDM、EBM、又はEOMなどの難分散性、非極性のエラストマーを含むエチレン−α−オレフィンエラストマーにとりわけ有効である。
【0041】
CNT/カーボンブラックプレブレンドの製造方法は適当な液体中でそれらを湿式混合することである。混合は、回分式又は連続式のいずれかの任意の適当なミキサー、例えば、密閉式ミキサー、リボンブレードバッチミキサー、高剪断バッチミキサー、一軸スクリュー押出機、及び二軸スクリュー押出機などの中で又はそれらを用いて実施されることができる。次いで、この混合物は、回分式又は連続式のいずれかの任意の適当な乾燥装置、例えば、噴霧乾燥機、真空乾燥機、棚型乾燥機、ドラム乾燥機、コンベヤー乾燥機などを用いて乾燥されることができる。固形分を濃縮する乾燥処理にはろ過が含まれることができる。
【0042】
プレブレンド形態のプレブレンディングされた炭素ナノ構造体は、ポリマー、ゴム及びエラストマーを配合する公知の方法に従ってポリマー組成物又はエラストマー組成物に添加されることができる。例えば、ゴム及びその種々の成分は密閉式バッチミキサー、一軸スクリュー押出機、二軸スクリュー押出機、二本ロール機などを用いてプレブレンドと配合されることができる。前記種々の成分は何段階かで、又は全てを一回で添加されることができる。好ましくは、配合物はバッチミキサーによる場合、複数回に分けて混合される。
【0043】
例えば、カーボンナノチューブ、カーボンブラック、黒鉛質炭素粒子及び又はガラス状炭素粒子、を含むプレブレンディングされた炭素ナノ構造体は、エラストマー又は他のポリマーにおけるかかるプレブレンドの練込みの他に多くの他の用途にも用いられることができる。かかる広げられた用途として、特に、電池電極、とりわけ、リチウム電池電極、電池電解質組成物、及びスーパーキャパシタにおけるプレブレンドの使用を挙げることができる。
【0044】
上記のカーボンプレブレンドは、活性材料及びバインダーと種々の割合で電池電極の一部として二次電池の導電材料として用いられることができる。カーボンプレブレンドと一緒に用いられることができる一般的な活性材料の例は、所定の遷移金属イオン(Co、Ni、Fe、Mn及びV)が他の遷移金属イオンによって部分的に置換されている、LiCoO、LiNiO、LiFeO、LiMnO、LiVO、又は組み合わせである。
【0045】
バインダーの選択に限定されることなく、考えられ得る一般的なバインダーとして、とりわけ、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレン、ポリプロピレン及び合成ゴムを挙げることができる。
【0046】
例えば、電池電解質組成物において使用するために、乾燥形態のカーボンプレブレンドを他の種類の導電材料、活性材料、又は電解質材料と混合する場合、広範囲の溶媒が用いられることができる。例えば、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、メチルエチルカーボネート及びアセトニトリルが単独で又は他の溶媒と組み合わせて用いられてスラリーを形成することができる。
【0047】
薄膜電極は、ドクターブレードコーティング、印刷、ロッドコーティング又はスプレーコーティングを含むさまざまな堆積技術を用いて可撓性の高分子基板又は紙上に形成されることができる。
【0048】
CNTの大きな表面積を活かして、本発明のカーボンプレブレンドは、例えば、他の形態の炭素と組み合わせた電解質、導電材料、電解質、溶媒及び塩としての用途を含み、電気二重層キャパシタ(一般にスーパーキャパシタとして知られる)の一部として用いられることもできる。カーボンプレブレンドと共に用いられることができる電解質の一つの具体例は、単独で又はテトラエチルアンモニウムテトラフルオロボレート(CNBFなどの塩と一緒に用いられるアセトニトリルである。
【0049】
種々の詳細により本明細書を通して記載される炭素のプレブレンド形態の用途の別の例として、プレブレンド組成物は塗料(paint)、コーティング、又はスラリーの形態で種々の基材上に付与され、又は塗料、コーティング、又はスラリーの成分として用いられることができる。
【実施例】
【0050】
【0051】
最初の実施例において、N550カーボンブラック及びSWCNTを含むプレブレンドが調製されて、CNTのプレブレンドがその後EPDMエラストマー組成物中でのCNTの分散に役立つかを評価する。単層カーボンナノチューブ(SWCNT)は米国マサチューセッツ州ウェストウッド(Westwood)のナノ−C社(Nano-C, Inc.)によって供給された。SWCNTの寸法について、直径は0.8〜1.9nmの範囲であり、0.8nmと1.3nmとの間がより多い。SWCNT束の長さに関して、それは0.4〜2マイクロメートルの範囲であり、0.5〜1マイクロメートルが最も多い。本明細書中に記載の全ての他の成分は商用業者から入手され提供されたままに使用された。
【0052】
単層カーボンナノチューブとN550カーボンブラックとの最初のサンプルブレンドはSWCNT含量7.18重量%、又はカーボンブラック対CNT比13:1を有していた。このブレンドは最初にエタノール中でSWCNT(エタノール35mL中SWCNT1g)を混合して超音波処理を15分間行うことにより調製された。同様に、カーボンブラックはエタノール中に約30g/Lで分散され、IKA T25分散剤(IKAワークス社(IKA Works Inc.)によってIKA商標の下に販売)と混合された。次いで、CNT溶液は適切量のカーボンブラック溶液に添加され、IKA T25分散剤とさらに15分間混合された。次いで、ろ過によって溶媒が除去されそしてカーボンプレブレンド材料が単離され60℃で一晩乾燥された。次いで、この材料は得られた生成物の均質の程度及び同一性を評価して特徴づけされた。
【0053】
ラマン分光分析法の結果(図2に図示の通り)はブレンド中の両成分の存在を証明しそしてそれぞれの材料のピークにおけるほんのわずかの変化を示している。RBM(200〜300cm−1)モード及びG(約1600cm−1)モードはSWCNTに由来し、一方でDバンド(1300〜1400cm−1)はカーボンブラックの存在を示す。この観察だけではブレンドが両方の材料を含んでいることを示しているに過ぎず詳細な構造を示していないので、ブレンドは次にSEM顕微鏡法により調べられた。13:1比のN550カーボンブラック及びSWCNTからなるプレブレンド材料のSEM像は図3に示され、図3は(図3A)2500×、(図3B)35,000×、並びに(図3C)及び(図3D)120,000×の倍率を含む。図3A図3Dは両方の成分材料が混和された特有の構造を有するプレブレンド材料を示す。ここで用いられたカーボンブラック粒子はナノチューブの幅よりもはるかに大きいので、この新規の材料はカーボンブラック粒子を囲繞するナノチューブネットワーク(1又は2以上)からなり、又は換言すれば、カーボンブラック粒子がその中に分散されたナノチューブネットワークからなる。この特有のプレブレンド構造は次のエラストマー組成物中でのナノチューブの分散に改善を与えるという証拠が見出される。
【0054】
黒鉛質炭素、ガラス状炭素又は構造のない炭素からなる他の炭素系粒子は、カーボンブラックに代えて又はカーボンブラックに加えて、担体粒子固体又はその混合物として用いられることができる。担体の粒子形状は規則的又は不規則的であることができる。
【0055】
他のフラーレン又はナノ構造化された炭素材料、例えば、官能化された又はされていない、回転楕円体状フラーレン(C60、C70、・・・、C84、・・・)、グラフェンなどはカーボンナノチューブの代わりに用いられることができる。
【0056】
炭素系担体粒子がそれらが一緒に混合される材料の幅及び長さの両方より大きい場合、ナノチューブ又は他のフラーレン材料(「シェル」)が黒鉛質の、ガラス状の又は構造のない「コア」の表面を覆う特有のコア−シェル材料が形成される。被覆率は50%まで又は50〜100%であることができる。
【0057】
炭素系の又は他の微粒子コア材料の直径は20nmと20μmとの間であることができ、一方、ナノカーボンシェル材料の最長の寸法は0.7nmと2.0μmとの間であることができる。
【0058】
シェルとしてのカーボンナノチューブで覆われたコアの図が図4に与えられており、図4において単層カーボンナノチューブで覆われた直径約1μmを有するポリマービーズが示されている。
【0059】
プレブレンディングされた材料の1つの最終分析はブレンドの抵抗率の測定であった。バルク材料の抵抗率が調べられ、プレブレンドは、プレブレンド中のナノチューブが低レベルであるにもかかわらず、純粋なナノチューブ自体とほぼ同程度の導電性であった。この意外な結果は、ナノチューブネットワークが当該ネットワークを壊すことなく散在したより大きなカーボンブラック粒子によって広げられることができることを示している。
【0060】
本明細書に記載のゴム配合は内容積1571mLを持つ通常のB−バンバリーラブ(lab)ミキサーを使用した。表1に示されたゴム配合例の最初のシリーズにおいて、対照のエラストマー組成物は、エクソン・ケミカルズ社(Exxon Chemicals)によってその商品名で販売されているヴィスタロン(Vistalon)706(EPM)100重量部と;エラストマー100部当たり60部(「phr」)のN550カーボンブラック、及び過酸化物硬化剤(ヴァル・カップ(Vul-Cup)40KE)5phrであった。組成物は遅延剤0.3phr及び酸化防止剤1phrも含んでいた。この組成物(比較例1)は対照例(すなわち、CNTを有しない)として混合された。第二の比較例(比較例2)は、一緒にミキサー中に添加された、プレブレンドとしてではないN550 50phr及びCNT3.87phrと混合された。本発明の例(実施例3)は、1.25容量%のCNT充填をもたらすSWCNTとカーボンブラックとの前記7.18%プレブレンド53.87phrを用いて混合された。硬化試験は標準的なゴム・ムービング・ダイ・レオメーター(MDR)により170℃(ASTM D−5289に従う)で実施された。引張試験はASTM D−412に従い室温及び125℃で実施された。報告された結果はN/mm2による10%歪の応力である「10%モジュラス」を含む。試験は他に規定しない限り室温(「RT」)かつ列理(with-grain)(「w/g」)方向におけるものである。反列理(cross-grain)試験は「x/g」と表示される。配合表及び結果は表1に示される。ゴム組成物中へのSWCNTの混合は以下の結果を生じることが理解されよう。
【0061】
170℃において観察されたMDR最大トルク(MH)はカーボンブラック及びナノチューブを有する両方のサンプルでより低かった。同時に、この温度における最小トルク(ML)は対照よりナノチューブを有する2つのサンプルで高かった。これらの配合物についての硬化速度情報は表1にt90によって示される。ナノチューブを有する配合物の硬化時間は対照配合物のそれより有意に少なかった。この傾向は米国特許出願第14/243,634号明細書においてすでに評価されているワックス/カーボンナノチューブ分散体について見られたものと一致する。
【0062】
これらの配合物の(MDRより低温における)ムーニー粘度(ML/132℃)はカーボンナノチューブの添加により微増を示した。ナノチューブの練込み経路がいずれであっても本質的に粘度に差はない。
【0063】
ナノチューブを有する2つの配合物の動的弾性率はASTM D−6601に従ってゴムプロセス分析装置(RPA)により175℃で測定された。表1はMDRで見られたナノチューブ含有配合物について同様なより低い弾性率(G’)を示す。ここで、ナノチューブがカーボンブラックとプレブレンディングされた場合、得られる材料は2つの材料を単に別々に添加するよりわずかに剛性であった。このことはカーボンブラック/ナノチューブブレンドを用いたナノチューブ分散体による或る程度の改善を示すものである。2つの材料をプレブレンディングすることで観察された弾性率の微増は、対照のレベルまでに過ぎないがヒステリシス(tanδ)の増加によって達成される。
【0064】
室温10%モジュラスは配合物中へのナノチューブの添加によるモジュラスの増加を示し、そしてこれは配合の前に2つの材料をプレブレンディングすることでさらに増加する。それぞれの場合の最大の増加は列理方向におけるものであり反列理においてはごくわずかである。高温において、モジュラスの増加は限界的であり、RPA及びMDRデータによって示された傾向に従う。ワックス/CNTプレ分散体の先の試験で見られたように、高温において対照を超えるモジュラスの有意な低下はない。このように、CNTをカーボンブラックとプレブレンディングする方法は別の方法より大きい温度安定性を与える。
【0065】
破断点伸びは配合物にCNTを添加することで顕著な増加を示しそしてCNTがカーボンブラックとプレブレンディングされた場合にはさらなる増加を示す。この傾向は処理(processing)由来の配向の列理と一致し又は列理にわたる。高温(125℃)で、この傾向は同じであるが増加は室温の場合よりすべて小さい。靭性もCNTによって改善される。
【0066】
引裂特性(ASTM D−624に従うダイC引裂強さ)はCNTの添加で安定した増加を示し、プレブレンディングによってさらなる増加を示す。また、異方性はCNTの添加でわずかに増加する。引裂きも高温で対照よりわずかに増加する。
【0067】
これらの配合物のショアーA硬度は基本的に同じである。
【0068】
デマチア試験は穿孔試験片を用いてASTM D−813に従って実施された。切傷生長速度は1インチ切傷幅に到るための外挿されたメガサイクルの数、すなわち、Mサイクル/インチ(Mcycles/in)として報告される。デマチア亀裂成長速度は配合物中のCNTの配向(もしあれば)にかかわらず顕著な改善を示した。これは125℃で評価されたものであり、この改善は配合物の剛性に或る程度の増加があるという事実にもかかわらず生じる。
【0069】
配合物の電気的性質は二探触子ユニットを用いて評価された。配合物中にCNTを有するサンプルは両方とも改善された導電性を示したが、2つのサンプル間に差はなかった。
【0070】
最後に、これらのシリーズについてゴムサンプルの電界放出(Field-emission)SEM(FE−SEM)顕微鏡写真が撮られた。図5図7は3つのゴム配合物の30,000×のFE−SEM像を示しており:図5はゴムにカーボンブラックだけが添加された対照を示し;図6はゴムへのカーボンブラック及びSWCNTの別々の添加を示し;そして図7はナノ−C(Nano-C)で液体中に調製されそしてゴムに添加されたカーボンブラック/SWCNTプレブレンドを示す。カーボンブラックだけを有するサンプル(図5)は表面上にカーボンブラックを示す。CNTを有する2つのサンプル(図6図7)はゴムと相互作用してクモの巣状の(web-like)表面特徴を生じるカーボンナノチューブを示す。これらの写真に基づいて、ナノチューブの分散は比較例2より実施例3の材料の方が良好であったと考えられる。
【0071】
これらの例は、カーボンブラックとプレブレンディングされたCNTが破断点伸び、モジュラス、耐亀裂成長性及び導電性などのゴムの物理的性質を改善することができ、他の性質は影響を受けないか又はわずかに改善されることを示している。
【0072】
【表1】
【0073】
表2に示された第二シリーズの実施例において、第一の実施例と同じSWCNTが用いられた。しかしながら、この実施例では、異なる液体媒体が用いられ、異なる比率の2つのプレブレンドを調製した。CNTとカーボンブラックとのこれらのプレブレンドは有機液体としてo−ジクロロベンゼンを用いて調製された。ブレンドは、最初に溶媒1リットル当たりSWCNT約30gの濃度でo−ジクロロベンゼン中でSWCNTをIKA T25ミキサーで15分間混合することにより準備された。次いで、カーボンブラックが、溶媒1リットル当たり約20〜30gの濃度でo−ジクロロベンゼン中で25分間混合された。最後に、2つの混合物の適当量が合せられ、そしてIKA T25ミキサーで約1時間攪拌された。次いで、ろ過によって溶媒が除去され、残った湿潤ブレンドが真空下に70℃で48時間乾燥された。このシリーズでは、ブレンド比及びカーボンブラックの種類の影響が調べられた。ゴム配合において、カーボンブラック対CNTの2つのブレンド比5:1及び13:1が用いられた。主に粒度が相違する2種類のカーボンブラック、N550及びN220が用いられた。得られたプレブレンドのゴム配合に使用される前のSEM画像が図8図11に与えられている。図8及び図9は5:1及び7:1の比のN220カーボンブラック/SWCNTプレブレンドをそれぞれ40,000×で示す。図10及び図11はそれぞれ5:1及び7:1の比のN550カーボンブラック/SWCNTプレブレンドを示し、図10A及び図11Aは25,000×で、そして図10B及び図11Bは70,000×で示している。ベースEPMエラストマー組成物、ゴム混合及び試験は第一シリーズについてと同じであった。用いられたゴム配合及び結果は下記表2に示される。
【0074】
図3A図3D及び図8図11のSEM画像の検査と一致して、o−ジクロロベンゼンの使用は湿式ブレンド法においてエタノールの使用より良好な最終結果を提供すると思われる。このことは、例えば、表2の実施例6、7及び10の破断点伸びを表1の前記実施例3と比較することによって理解されることができる。o−ジクロロベンゼンのブレンドはより高い伸びを与えて、より強靭な配合物を示す。カーボンブラック対CNTのより高い比率は低い比率より良好な性質を与えるように思われるが、これは、おそらくCNTネットワークがカーボンブラックによってさらに広げられることによるものであろう、エラストマー中でのより良好な分散を示唆している。デマチア亀裂成長データもo−ジクロロベンゼンのブレンドがエタノールのブレンドよりさらに良い結果を与えることを示している。
【0075】
【表2】
【0076】
実施例の配合物についての10%モジュラスにおける有意な改善と同時の破断点伸びの増加は文献に見られる傾向と逆行するということに注目されたい。例えば、10%モジュラスにおいて約20%の増加を示す実施例6及び実施例7は、破断点伸びにおける60%の増加を伴っていた。CB/SWCNTコンビネーションは引裂強さ、デマチア試験での切傷生長速度及び耐疲労性における改善も示した。モジュラスと伸びの同時の改善はエラストマー組成物中のCNTの改善された分散によるものと考えられるが、これを数値化するのは大変に難しい。従って、本発明は、CNTを有しない同じ組成物と比較してモジュラス(例えば、10%モジュラス)及び破断点伸びにおける同時の増加によって特徴づけられることができる。好ましくは、一つの又は両方の特性における増加は少なくとも20%、又は少なくとも30%、又は少なくとも50%の範囲である。
【0077】
ゴムの導電性は、充分量のCNTの存在及び用いられるカーボンブラックの種類に基づくのであり、CNTを分散させる方法に依存しているようには思われないことにも留意されたい。用いられるカーボンブラックがあまり導電性でない場合、本発明者らは導電性の差を、単にSWCNTを添加するより溶液ブレンディングされたCB/SWCNTの方が有利と考える。カーボンブラックが導電性に優れている、すなわち、N220である場合、本発明者らはずっと小さな差異と考える。
【0078】
このように、エラストマー中にカーボンブラック/CNTプレブレンドを用いてCNTを分散させる本発明の方法は従来技術の方法と比べ改善された分散をもたらし、得られるエラストマー組成物においてモジュラスと伸びとを同時に増加させる。本発明のエラストマー組成物は種々のゴム製品、例えば、ベルト、ホース、制振部品、タイヤ、シート製品などを製造するのに使用されることができる。
【0079】
本発明及びその利点が詳細に述べられてきたが、添付の特許請求の範囲によって定められる発明の範囲から逸脱することなしに本発明において種々の変化、置換、及び変更がなされ得ることを理解されたい。さらに、本願発明の適用の範囲は、明細書に記載されたプロセス、機械、製造、組成物、手段、方法、及び段階の特定の実施形態に限定されることを意図するものではない。当業者であれば本発明の開示から容易に理解できるように、本明細書に記載された対応する実施形態と実質的に同じ機能を果たす又は実質的に同じ結果を達成する既存の又は後発のプロセス、機械、製造、組成物、手段、方法又は段階が本発明に従って使用されることができる。従って、添付の特許請求の範囲は、その範囲内に、かかるプロセス、機械、製造、組成物、手段、方法又は段階を含むことを意図するものである。本明細書に開示された発明は、本明細書に具体的には開示されていない任意の要素の非存在下で適切に実施されることができる。
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図11A
図11B