(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 5/02 M, B23Q 11/00 D, B30B 15/00 C, F16P 3/14 ,F16P5/00 ,B30B13/00
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上部テーブルの左右方向の一方の側に投光部、他方の側に受光部を備える安全装置は次のような問題点を有する。第1の問題点として、投光部と受光部との間の距離であるワーキングディスタンスが長いと、暖房器具またはエアコンディショナ等による気流の影響でレーザ光が揺らぎ、侵入物がないにもかかわらず動作を停止させるという誤動作が発生することがある。
【0006】
第2の問題点として、レーザ光が揺らぎまたは回折によって上部金型、下部金型、または曲げ加工しようとする板金の影が肥大化することにより、レーザ光を誤って遮って動作を停止させるという誤動作が発生することがある。
【0007】
投光部及び受光部は上部テーブルの左右側面にアームを介して取り付けられている。第3の問題点として、上部テーブルが下降するときの加減速によってアームが振動してレーザ光の光軸がぶれることにより、受光部がレーザ光を受光できず、侵入物がないにもかかわらず動作を停止させるという誤動作が発生することがある。アームの振動を抑えるためにアームを高強度の構造とするとコストが増大する。
【0008】
本発明は、誤動作の発生を低減させることができる加工機の安全装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、
上部テーブルが
下部テーブルへと移動して
、前記上部テーブルに装着された金型と前記下部テーブルに装着された金型とで材料を
挟んで曲げ加工する加工機における前記
上部テーブルにおける、前記
上部テーブルの移動方向と直交する方向の第1の側に取り付けられた侵入物検出装置を備え、前記侵入物検出装置は、所定の周波数を有する高周波信号に基づいて
パルス状の高周波光を生成し、前記
上部テーブルと前記
下部テーブルとの間に前記高周波光を投光する投光部と、入射される
パルス状の高周波光に基づいて受光信号を生成する受光部と、前記
上部テーブルと前記
下部テーブルとの間に侵入物が存在するときに、前記
投光部が投光した高周波光と
、前記
投光部が投光した高周波光が前記侵入物で反射し
て前記受光部が受光したパルス状の反射光との位相差、または、前記高周波信号と
、前記投光部が投光した高周波光が前記侵入物で反射して前記受光部が受光したパルス状の反射光に基づいて生成した受光信号との位相差に基づいて、前記侵入物検出装置から前記侵入物までの距離を算出する距離算出部と、
前記上部テーブルまたは前記下部テーブルに金型を装着可能な最大範囲における前記侵入物検出装置から前記第1の側とは反対側の第2の側の端部までの最長端部距離と、前記侵入物検出装置から前記材料の曲げ加工時に前記上部テーブルまたは前記下部テーブルに実際に装着されている金型の前記第2の側の端部までの距離と、前記上部テーブルまたは前記下部テーブルの前記第2の側の端部までの距離とのうちのいずれかを基準距離とし、前記距離算出部が算出した距離が
前記基準距離以内でなければ、前記加工機
による曲げ加工の動作を許可する動作許可信号を出力し、前記距離算出部が算出した距離が
前記基準距離以内であれば、前記動作許可信号の出力を停止する動作許可信号出力部とを備える加工機の安全装置を提供する。
【0010】
本発明は、
上部テーブルが
下部テーブルへと移動して
、前記上部テーブルに装着された金型と前記下部テーブルに装着された金型とで材料を
挟んで曲げ加工する加工機における前記
上部テーブルにおける、前記
上部テーブルの移動方向と直交する方向の第1の側に取り付けられた侵入物検出装置と、前記
上部テーブルにおける前記第1の側とは反対側の第2の側に取り付けられ
た反射板とを備え、前記侵入物検出装置は、所定の周波数を有する高周波信号に基づいて
パルス状の高周波光を生成し、前記
上部テーブルと前記
下部テーブルとの間に前記高周波光を投光する投光部と、入射される
パルス状の高周波光に基づいて受光信号を生成する受光部と、前記
投光部が投光した高周波光と
、前記
投光部が投光した高周波光が前記反射板で反射し
て前記受光部が受光したパルス状の反射光との位相差、または、前記高周波信号と
、前記投光部が投光した高周波光が前記反射板で反射して前記受光部が受光したパルス状の反射光に基づいて生成した受光信号との位相差に基づいて、前記侵入物検出装置から前記反射板までの基準距離を算出する距離算出部と、前記距離算出部が前記基準距離を算出する通常状態であれば、前記加工機
による曲げ加工の動作を許可する動作許可信号を出力し、
前記距離算出部が前記基準距離よりも短い距離を算出するか距離を算出できない異常状態であれば、前記動作許可信号の出力を停止する動作許可信号出力部とを備える加工機の安全装置を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の加工機の安全装置によれば、誤動作の発生を低減させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、各実施形態の加工機の安全装置について、添付図面を参照して説明する。各実施形態は、安全装置が加工機の一例としてプレスブレーキに設けられている場合を示す。
【0014】
<第1実施形態>
図1において、プレスブレーキは、上部テーブル1と、下部テーブル2とを備える。上部テーブル1には上部金型Tpが装着され、下部テーブル2には下部金型Tdが装着されている。上部金型Tpはパンチとも称され、下部金型Tdはダイとも称される。上部テーブル1は、油圧シリンダ等を含む図示していない昇降機構によって上下動するように構成されている。オペレータが、下部金型Td上に加工対象の材料である板金Wを載置して、上部テーブル1を下部テーブル2へと下降させると、板金Wは上部金型Tpと下部金型Tdとで挟まれて折り曲げられる。
【0015】
上部テーブル1の移動方向と直交する方向である左右方向の第1の側には、L字状のアーム11が取り付けられている。アーム11の先端には侵入物検出装置20が取り付けられている。侵入物検出装置20は第1実施形態の安全装置を構成する。後述するように、侵入物検出装置20は、上部テーブル1(上部金型Tp)と下部テーブル2(下部金型Td)との間に、侵入物の有無を検出するための高周波光L0を投光する。高周波光L0は、上部テーブル1の下端面、下部テーブル2の上端面と平行(即ち、水平方向)に進行するように投光される。
【0016】
侵入物検出装置20は、上部金型Tpと下部金型Tdとの間に人の手等の侵入物があるか否かを検出する。侵入物検出装置20は、侵入物がないことを検出すれば、プレスブレーキ制御装置30にプレスブレーキの動作を許可する動作許可信号を供給する。侵入物検出装置20は、侵入物があることを検出すれば、プレスブレーキ制御装置30への動作許可信号の供給を停止する。
【0017】
プレスブレーキ制御装置30は、プレスブレーキ全体の動作を制御する。プレスブレーキ制御装置30は、板金Wの加工開始が指示されて上部テーブル1の下降を開始させた後、侵入物検出装置20から供給される動作許可信号の受信が停止すれば、上部テーブル1の下降を停止させる。
【0018】
図2を用いて侵入物検出装置20の具体的な構成例を説明する。
図2に示すように、侵入物検出装置20は、高周波発生部21、投光部22、受光部23、距離算出部24、動作許可信号出力部25を備える。高周波発生部21は高周波信号を発振する回路で構成することができる。距離算出部24及び動作許可信号出力部25は、マイクロコンピュータの中央処理装置(CPU)で構成することができる。距離算出部24及び動作許可信号出力部25を回路で構成してもよい。
【0019】
侵入物検出装置20は、プレスブレーキ制御装置30が板金Wの加工を開始するようプレスブレーキを制御したら動作を開始し、板金Wの加工を完了したら動作を停止すればよい。
【0020】
高周波発生部21は、矩形波パルスよりなる所定の周波数を有する高周波信号を発生し、投光部22及び距離算出部24に供給する。高周波信号の周波数は設計的な事項として設定される。投光部22は、入力された高周波信号に基づいて、
図3に示すような矩形波パルス状の高周波光L0を生成して投光する。投光部22は、光源としてレーザ光源または発光ダイオード(LED)を備え、高周波信号に基づいてレーザ光源またはLEDをオン・オフさせることによって、高周波光L0を生成することができる。
【0021】
図4は、投光部22がレーザ光源221を備える場合の構成を示している。投光部22がレーザ光源221を用いる場合には、レーザ光源221が射出するレーザ光を平凸レンズ222等の光学素子を用いて面状態平行光とするのがよい。投光部22がLEDを用いる場合には、LEDが射出する光をコリメートレンズ等の光学素子を用いてコリメート光とするのがよい。LEDは非コヒーレント光源であるので、気流の影響による光の揺らぎまたは回折による光のむらが発生しにくい。
【0022】
図1に示すように、上部金型Tpと下部金型Tdとの間に侵入物がなければ、高周波光L0は上部テーブル1と下部テーブル2との間を通過していく。上部金型Tpと下部金型Tdとの間に侵入物として例えば手50が浸入すると、
図2に示すように、高周波光L0の一部が反射して反射光L1が侵入物検出装置20に向かう。
図2においては、図示の都合上、高周波光L0及び反射光L1に角度を持たせて図示しているが、高周波光L0及び反射光L1は水平方向に進行する。
【0023】
受光部23は反射光L1を受光する。受光部23は、フォトダイオードまたは2次元撮像素子で構成することができる。受光部23としてフォトダイオードを用いる場合にはフォトダイオードを2つ以上設けるのがよい。2次元撮像素子は例えばCCD(Charge Coupled Device)であり、受光部23として2次元撮像素子を用いると、反射光L1を高精度に受光することができる。
【0024】
受光部23は、受光した反射光L1に基づいて矩形波パルスよりなる受光信号を生成して距離算出部24に供給する。
図3に示すように、高周波光L0と反射光L1との間には、位相差Dpが生じている。高周波発生部21より供給される高周波信号と受光部23より供給される受光信号との間にも位相差Dpが生じている。
【0025】
距離算出部24は、式(1)に基づき、TOF(Time Of Flight)方式を用いて、侵入物検出装置20(投光部22)から手50までの距離D50を算出する。光速を3×10
8(m/s)とする。距離算出部24は、算出した距離D50を示す距離データを動作許可信号出力部25に供給する。
D50=(3×10
8×Dp)/2 …(1)
【0026】
図2に示す構成においては、距離算出部24は、高周波発生部21より供給される高周波信号と受光部23より供給される受光信号との間の位相差Dpを検出して距離D50を算出しているが、高周波光L0と反射光L1との間の位相差Dpを検出して距離D50を算出してもよい。両者の距離D50の算出結果にほとんど差はなく、あっても無視できる程度の差である。
【0027】
ところで、距離算出部24は、常時、高周波信号と受光信号との位相差Dpを算出する動作と、TOF方式に基づく侵入物検出装置20から手50等の対象物までの距離を算出する動作を実行している。しかしながら、第1実施形態の構成においては、上部金型Tpと下部金型Tdとの間に侵入物が存在しない通常状態では、受光部23には反射光L1がほとんど入射されない。よって、受光信号のレベルは所定のレベル未満であり、距離算出部24は距離を算出できない。
【0028】
動作許可信号出力部25は、
図1に示す上部金型Tpまたは下部金型Tdの最長端部距離DTmaxを保持している。最長端部距離DTmaxは、上部テーブル1または下部テーブル2に金型を装着可能な最大範囲における、侵入物検出装置20から第1の側とは反対側の第2の側の端部までの距離である。即ち、最長端部距離DTmaxよりも第2の側の領域には、金型が存在することがない。動作許可信号出力部25は、距離算出部24から供給された距離データが示す距離D50が最長端部距離DTmax以内であるか否かを判定する。最長端部距離DTmaxは、侵入物検出装置20から上部テーブル1または下部テーブル2の第2の側の端部までのテーブル端部距離よりも長いことがあってもよい。
【0029】
最長端部距離DTmaxは、動作許可信号出力部25に予め設定される基準距離の一例である。動作許可信号出力部25は、最長端部距離DTmaxの代わりに、実際に上部テーブル1または下部テーブル2に装着されている金型の第2の側の端部までの距離を基準距離としてもよい。実際に装着されている金型の位置は、プレスブレーキ制御装置30から供給される金型の装着位置情報に基づいて取得できる。テーブル端部距離を基準距離とすることも可能である。
【0030】
動作許可信号出力部25は、距離D50が最長端部距離DTmax以内でなければ動作許可信号を出力し、距離D50が最長端部距離DTmax以内であれば動作許可信号の出力を停止する。動作許可信号出力部25は、距離算出部24が算出した距離が基準距離を超えれば動作許可信号を出力する。動作許可信号出力部25は、距離算出部24が距離を算出できないときには動作許可信号を出力する。
【0031】
プレスブレーキ制御装置30は、侵入物検出装置20から動作許可信号を受信していれば、上部テーブル1を下降させる。プレスブレーキ制御装置30は、侵入物検出装置20から動作許可信号を受信できなくなれば、上部テーブル1の下降を停止させる。
【0032】
図5に示すフローチャートを用いて、第1実施形態における侵入物検出装置20及びプレスブレーキ制御装置30の動作を説明する。
図5において、プレスブレーキ制御装置30は、動作が開始されると、ステップS1にて、板金Wの加工開始の指示があったか否かを判定する。加工開始の指示がなければ(NO)、プレスブレーキ制御装置30はステップS1の処理を繰り返す。加工開始の指示があれば(YES)、プレスブレーキ制御装置30は、ステップS2にて、上部テーブル1を下降させる。
【0033】
距離算出部24は、ステップS3にて位相差Dpを算出し、ステップS4にて距離を算出する。但し、上記のように、距離が算出されないことがある。動作許可信号出力部25は、ステップS5にて、距離が算出されたか否かを判定する。距離が算出されなければ(NO)、高周波光L0は侵入物で反射せず、受光部23は反射光L1を受光していない状態である。そこで、動作許可信号出力部25は、ステップS10にて、動作許可信号を出力する。動作許可信号が供給されたプレスブレーキ制御装置30は、ステップS11にて、板金Wの加工を完了したか否かを判定する。
【0034】
ステップS5にて距離が算出されれば(YES)、動作許可信号出力部25は、ステップS6にて、算出された距離が基準距離以内であるか否かを判定する。算出された距離が金型の基準距離以内でなければ(NO)、同様に、動作許可信号出力部25は、ステップS10にて、動作許可信号を出力し、プレスブレーキ制御装置30は、ステップS11にて、板金Wの加工を完了したか否かを判定する。
【0035】
ステップS11にて板金Wの加工を完了していなければ(NO)、プレスブレーキ制御装置30は、処理をステップS2に戻す。ステップS11にて板金Wの加工を完了していれば(YES)、プレスブレーキ制御装置30は、ステップS12にて、上部テーブル1を上昇させて処理を終了させる。
【0036】
一方、ステップS6にて、算出された距離が金型の基準距離以内であれば(YES)、動作許可信号出力部25は、ステップS7にて、動作許可信号の出力を停止する。動作許可信号が供給されなくなったプレスブレーキ制御装置30は、ステップS8にて、上部テーブル1の下降を停止させる。
【0037】
引き続き、プレスブレーキ制御装置30は、ステップS9にて、加工再開の指示がなされたか否かを判定する。加工再開の指示がなされれば(YES)、プレスブレーキ制御装置30は、処理をステップS2に戻す。加工再開の指示がなされなければ(NO)、プレスブレーキ制御装置30は、ステップS12にて、上部テーブル1を上昇させて処理を終了させる。
【0038】
第1実施形態の安全装置によれば、TOF方式を用いて侵入物までの距離を算出する構成であるので、光の揺らぎまたは回折に起因する誤動作が発生しにくい。これは、投光部22の光源がレーザ光源221またはLEDのいずれの場合であっても、反射光L1は拡散光であるので、光の揺らぎまたは回折が距離の算出にほとんど影響を与えないからである。
【0039】
侵入物検出装置20は上部テーブル1に固定されたアーム11に取り付けられているものの、投光部22及び受光部23の双方が1つのアーム11に取り付けられているため、アーム11の振動に起因する誤動作も発生しにくい。アーム11を振動しにくい高強度の構造とする必要はないため、コストが大幅に増大することもない。
【0040】
<第2実施形態>
図6において、
図2と同一部分には同一符号を付し、その説明を省略する。
図6に示す第2実施形態における侵入物検出装置20は、
図2に示す構成に加えて、光量検出部26を備える。上記のように、高周波光L0が侵入物で反射せず、受光部23が反射光L1を受光しなければ、受光部23からの受光信号は所定のレベル未満であり、高周波光L0が侵入物で反射して受光部23は反射光L1を受光すれば、受光部23からの受光信号は所定のレベル以上となる。
【0041】
光量検出部26は、受光部23からの受光信号のレベルを検出し、所定のレベル未満であるか所定のレベル以上であるかを判定する。受光部23からの受光信号のレベルは、実質的に反射光L1の光量に相当する。動作許可信号出力部25は、距離算出部24によって侵入物までの距離が基準距離以内の距離であって、かつ、反射光L1の光量が所定のレベル以上であると判定されれば、動作許可信号の出力を停止する。
【0042】
第2実施形態の安全装置によれば、第1実施形態の安全装置よりも侵入物の誤検出を低減させることができる。
【0043】
<第3実施形態>
図7において、
図1と同一部分には同一符号を付し、その説明を省略する。
図7において、侵入物検出装置20が取り付けられていない側である上部テーブル1の第2の側にはL字状のアーム12が取り付けられており、アーム12の先端には反射板40が取り付けられている。侵入物検出装置20及び反射板40は、第3実施形態の安全装置を構成する。侵入物検出装置20の構成は
図2または
図6に示す構成でよい。
【0044】
第3実施形態の安全装置においては、反射板40を備えるため、上部金型Tpと下部金型Tdとの間に侵入物がなければ、高周波光L0は反射板40で大方反射して反射光L1が侵入物検出装置20に戻る。上部金型Tpと下部金型Tdとの間に侵入物がなければ、受光部23より出力される受光信号は所定のレベル以上であり、距離算出部24は、
図7に示す侵入物検出装置20から反射板40までの距離D40を算出する。距離D40は、距離算出部24が算出する基準距離である。
【0045】
侵入物検出装置20から反射板40までの距離D40が距離算出部24によって予め算出されるか、別の方法によって予め算出または計測されており、動作許可信号出力部25に設定しておくことが好ましい。
【0046】
第3実施形態の安全装置においては、受光部23より出力される受光信号が所定のレベル以上であって、距離算出部24が距離D40を算出している状態が通常状態である。
【0047】
図7において、上部金型Tpと下部金型Tdとの間に侵入物として例えば手50が浸入すると、距離算出部24は、侵入物検出装置20から手50までの距離D50を算出する。動作許可信号出力部25には、基準距離である距離D40よりも短い距離D50を示す距離データが入力される。よって、動作許可信号出力部25は、距離算出部24が距離D40を算出しない異常状態であるので、動作許可信号の出力を停止する。
【0048】
ところで、侵入物が例えば光を吸収しやすい黒色の手袋をはめた手であると、侵入物検出装置20に反射光L1がほとんど到達せず、距離算出部24が距離を算出できないことがある。この場合も、動作許可信号出力部25は、距離算出部24が距離D40を算出しない異常状態であるので、動作許可信号の出力を停止する。
【0049】
侵入物検出装置20が
図2に示す構成であれば、動作許可信号出力部25は、距離算出部24から距離データが供給されなくなったら、通常状態とは異なる異常状態が発生したとして動作許可信号の出力を停止すればよい。侵入物検出装置20が
図6に示す構成であれば、動作許可信号出力部25は、光量検出部26が検出する受光信号のレベルが所定のレベル未満であれば、異常状態が発生したとして動作許可信号の出力を停止すればよい。
【0050】
図8に示すフローチャートを用いて、第3実施形態における侵入物検出装置20及びプレスブレーキ制御装置30の動作を説明する。ここでは、侵入物検出装置20は
図6に示す構成であるとする。
【0051】
図8において、プレスブレーキ制御装置30は、動作が開始されると、ステップS31にて、板金Wの加工開始の指示があったか否かを判定する。加工開始の指示がなければ(NO)、プレスブレーキ制御装置30はステップS31の処理を繰り返す。加工開始の指示があれば(YES)、プレスブレーキ制御装置30は、ステップS32にて、上部テーブル1を下降させる。
【0052】
光量検出部26は、ステップS33にて、受光部23からの受光信号が所定のレベル未満であるか否かを判定する。受光信号が所定のレベル未満でなければ(NO)、処理はステップS39に移行される。受光信号が所定のレベル未満であれば(YES)、動作許可信号出力部25は、ステップS34にて、動作許可信号の出力を停止する。動作許可信号が供給されなくなったプレスブレーキ制御装置30は、ステップS35にて、上部テーブル1の下降を停止させる。
【0053】
引き続き、プレスブレーキ制御装置30は、ステップS36にて、加工再開の指示がなされたか否かを判定する。加工再開の指示がなされれば(YES)、プレスブレーキ制御装置30は、処理をステップS32に戻す。加工再開の指示がなされなければ(NO)、プレスブレーキ制御装置30は、ステップS43にて、上部テーブル1を上昇させて処理を終了させる。
【0054】
ステップS33と並行して、距離算出部24は、ステップS37にて位相差Dpを算出し、ステップS38にて距離を算出する。動作許可信号出力部25は、ステップS39にて、距離算出部24によって距離が算出されたか否かを判定する。距離が算出されなければ(NO)、処理はステップS34に移行される。侵入物検出装置20に反射光L1がほとんど到達しなければ距離が算出されない。また、受光部23に反射光L1が入射しないが何らかの外来光が入射した場合には、受光信号が所定のレベル以上で距離が算出されないという状態が発生し得る。
【0055】
ステップS39にて距離が算出されれば(YES)、動作許可信号出力部25は、ステップS40にて、算出された距離が反射板40までの距離D40であるか否かを判定する。算出された距離が距離D40でなければ(NO)、処理はステップS34に移行される。算出された距離が距離D40であれば(YES)、動作許可信号出力部25は、ステップS41にて、動作許可信号を出力し、プレスブレーキ制御装置30は、ステップS42にて、板金Wの加工を完了したか否かを判定する。
【0056】
ステップS42にて板金Wの加工を完了していなければ(NO)、プレスブレーキ制御装置30は、処理をステップS32に戻す。ステップS42にて板金Wの加工を完了していれば(YES)、プレスブレーキ制御装置30は、ステップS43にて、上部テーブル1を上昇させて処理を終了させる。
【0057】
第3実施形態の安全装置によれば、第1実施形態及び第2実施形態の安全装置による効果に加えて、高周波光L0を吸収する侵入物が存在する異常状態であっても上部テーブル1の下降を停止させることができるという効果を奏する。
【0058】
第3実施形態の安全装置においては、侵入物検出装置20がアーム11に取り付けられ、反射板40がアーム12に取り付けられている。投光部22及び受光部23の双方がアーム11に取り付けられており、反射板40は高周波光L0を単に反射させるだけであるから、アーム11及び12が振動したとしても、受光部23は反射光L1を受光できる。よって、受光部23が光軸のぶれに起因して反射光L1を受光できないことによる誤動作はほとんど発生しない。アーム11及び12を振動しにくい高強度の構造とする必要はないため、コストが大幅に増大することもない。
【0059】
第3実施形態の安全装置において、距離算出部24が算出する距離が距離D40より短い場合であっても最長端部距離DTmaxまたはテーブル端部距離より長ければ、動作許可信号を出力するように構成することも可能である。
【0060】
本発明は以上説明した本実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能である。本実施形態においては、侵入物検出装置20は、距離算出部24が算出した距離が予め設定されている基準距離以内であるとき、または、距離算出部24が基準距離を算出しない異常状態であるとき、プレスブレーキ制御装置30への動作許可信号の供給を停止している。侵入物検出装置20は、動作許可信号の供給を停止する代わりに、プレスブレーキ制御装置30に動作停止信号を供給してもよい。プレスブレーキ制御装置30への動作停止信号の供給は、プレスブレーキ制御装置30への動作許可信号の供給の停止という概念に含まれる。
【0061】
安全装置が、加工機の他の例として、板金を切断するシャーリングマシンに設けられていてもよい。加工機がシャーリングマシンである場合には、移動体及び固定体には、金型に代わる工具として板金を切断するためのブレードが装着される。加工機がシャーリングマシンである場合には、以上の説明における金型がブレードと読み替えられ、プレスブレーキ制御装置30がシャーリングマシンの制御装置と読み替えられる。本発明は、上部テーブル1のような工具を装着する移動体が下部テーブル2のような工具を装着する固定体へと移動して材料を加工する加工機において用いることができる。