(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
潤滑油が貯留される容器と、前記容器内に収納された筒状のシリンダと、前記シリンダの開口部を閉塞して、前記シリンダとともにシリンダ室を形成する閉塞板と、前記シリンダ室内で偏心回転するローラと、前記ローラの回転方向で前記シリンダ室内を分割するとともに、前記ローラの偏心回転に伴い前記シリンダ室内に進退可能とされたブレードと、前記ブレードのうち、前記閉塞板と対向する対向面に形成され、前記ブレードの移動方向に沿って直線状に延びるとともに、第1端部が前記容器内に連通し、前記第1端部と反対側に位置する第2端部が前記ブレード内で終端する給油溝と、を備え、前記給油溝は、前記第1端部側に位置し、全体に亘って溝深さが同一である直線延在部と、前記直線延在部から前記第2端部に連なるとともに溝深さが前記第2端部に向かうに従い浅くなるとともに、前記第2端部で傾斜して終端する傾斜部を有し、前記ブレードが前記シリンダ室内に最も突出したときに前記第2端部が前記シリンダ室内に位置する、回転式圧縮機の製造方法において、
互いの回転軸が離間しており、両者の間が前記ブレードの高さよりも狭い隙間をあけて配置される一対の円板状のカッターと前記ブレードとが近付く方向に相対的に移動させ、前記カッターと前記ブレードとの接触面が前記ブレードの先端面に到達しない程度に移動させることで、前記ブレードの両端面に給油溝を同時に形成する工程と、
前記一対のカッターと前記ブレードが、離れる方向に相対的に移動させる工程を備えた、
回転式圧縮機の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態の回転式圧縮機及び冷凍サイクル装置を、図面を参照して説明する。 (第1の実施形態) 始めに、冷凍サイクル装置について簡単に説明する。
図1に示すように、本実施形態の冷凍サイクル装置1は、回転式圧縮機2と、回転式圧縮機2に接続された凝縮器3と、凝縮器3に接続された膨張装置4と、膨張装置4と回転式圧縮機2との間に接続された蒸発器5と、を備えている。
【0011】
回転式圧縮機2は、いわゆるロータリ式の圧縮機である。回転式圧縮機2は、内部に取り込まれる低圧の気体冷媒を圧縮して高温、かつ高圧の気体冷媒とする。なお、回転式圧縮機2の具体的な構成については後述する。 凝縮器3は、回転式圧縮機2から送り込まれる高温、かつ高圧の気体冷媒から熱を放熱させ、高温、かつ高圧の気体冷媒を高圧の液体冷媒にする。
【0012】
膨張装置4は、凝縮器3から送り込まれる高圧の液体冷媒の圧力を下げ、高圧の液体冷媒を低温、かつ低圧の液体冷媒にする。 蒸発器5は、膨張装置4から送り込まれる低温、かつ低圧の液体冷媒を気化させ、低温、かつ低圧の液体冷媒を低圧の気体冷媒にする。そして、蒸発器5において、低圧の液体冷媒が気化する際に周囲から気化熱を奪い、周囲が冷却される。なお、蒸発器5を通過した低圧の気体冷媒は、上述した回転式圧縮機2内に取り込まれる。
【0013】
このように、本実施形態の冷凍サイクル装置1では、作動流体である冷媒が気体冷媒と液体冷媒とに相変化しながら循環する。
【0014】
次に、上述した回転式圧縮機2について説明する。 本実施形態の回転式圧縮機2は、圧縮機本体11とアキュムレータ12とを備えている。 アキュムレータ12は、いわゆる気液分離器である。アキュムレータ12は、上述した蒸発器5と圧縮機本体11との間に設けられている。アキュムレータ12は、吸い込みパイプ21を通して圧縮機本体11の後述するシリンダ41に接続されている。アキュムレータ12は、蒸発器5で気化された気体冷媒、及び蒸発器5で気化されなかった液体冷媒のうち、気体冷媒のみを圧縮機本体11に供給する。
【0015】
圧縮機本体11は、回転軸31と、電動機部32と、圧縮機構部33と、密閉容器(容器)34と、を備えている。 電動機部32は、回転軸31を回転させる。圧縮機構部33は、回転軸31の回転により気体冷媒を圧縮する。密閉容器34は、回転軸31、電動機部32及び圧縮機構部33を収納する。なお、密閉容器34は筒状とされている。密閉容器34の内部には、潤滑油Jが収容されている。潤滑油J内には、圧縮機構部33の一部が浸漬されている。
【0016】
密閉容器34及び回転軸31は、軸線Oに沿って同軸上に配置されている。なお、以下の説明では、軸線Oに沿う方向を単に軸方向といい、軸方向のうち電動機部32寄りを上側といい、圧縮機構部33寄りを下側という。また、軸方向に直交する方向を径方向、軸線O周りの方向を周方向という。
【0017】
電動機部32は、いわゆるインナーロータ型のDCブラシレスモータである。具体的に、電動機部32は、筒状の固定子35と、固定子35の内側に配置された円柱状の回転子36と、を備えている。 固定子35は、密閉容器34の内壁面に焼嵌め等により固定されている。回転子36は、回転軸31の上部に固定されている。回転子36は、固定子35の内側に径方向に間隔をあけて配置されている。
【0018】
圧縮機構部33は、筒状のシリンダ41と、シリンダ41の両端開口部を各別に閉塞する主軸受(閉塞板)42及び副軸受(閉塞板)43と、を備えている。 シリンダ41内には、回転軸31が貫通している。主軸受42及び副軸受43は回転軸31を回転可能に支持している。シリンダ41、主軸受42、及び副軸受43により形成された空間は、シリンダ室46(
図2参照)を構成している。シリンダ室46内には、アキュムレータ12で気液分離された気体冷媒が上述した吸い込みパイプ21を通して取り込まれる。
【0019】
上述した回転軸31のうち、シリンダ室46内に位置する部分には、軸線Oに対して径方向に偏心する偏心部51が形成されている。 偏心部51にはローラ53が外嵌されている。ローラ53は、回転軸31の回転に伴い、外周面がシリンダ41の内周面に摺接しながら、軸線Oに対して偏心回転可能に構成されている。
【0020】
図1、
図2に示すように、シリンダ41には、径方向の外側に向けて窪むブレード溝54が形成されている。ブレード溝54は、シリンダ41の軸方向の全体に亘って形成されている。ブレード溝54は、径方向の外側端部(後端部)において、密閉容器34内に連通している。
【0021】
ブレード溝54内には、径方向に沿ってスライド移動可能なブレード55が設けられている。ブレード55は、付勢手段57(付勢装置)により径方向の内側に向けて付勢されている。ブレード55における径方向の内側端面(以下、先端面(第2端面)という)は、シリンダ室46内においてローラ53の外周面に当接している。これにより、ブレード55は、ローラ53の回転動作に応じてシリンダ室46内に進退可能に構成されている。 なお、軸方向から見た平面視において、ブレード55の先端面は、径方向の内側に向けて凸の円弧状とされている。また、ブレード55の具体的な構成については後述する。
【0022】
シリンダ室46は、ローラ53及びブレード55によって吸込室と圧縮室とに区画(分割)されている。そして、圧縮機構部33では、ローラ53の回転動作及びブレード55の進退動作により、シリンダ室46内で圧縮動作が行われる。
【0023】
シリンダ41において、ローラ53の回転方向(
図2中の矢印参照)に沿うブレード溝54の奥側(
図2中、ブレード溝54の左側)に位置する部分には、吸込孔56が形成されている。吸込孔56は、シリンダ41を径方向に貫通している。吸込孔56における径方向の外側端部には、上述した吸い込みパイプ21(
図1参照)が接続される。一方、吸込孔56における径方向の内側端部は、シリンダ室46内に開口している。 シリンダ41の内周面において、ローラ53の回転方向に沿うブレード溝54の手前側(
図2中、ブレード溝54の右側)に位置する部分には、吐出溝58が形成されている。吐出溝58は、後述する吐出孔64に連通している。吐出溝58は、軸方向から見た平面視で半円形状に形成されている。
【0024】
図1に示すように、主軸受42は、シリンダ41の上端開口部を閉塞するとともに、回転軸31のうち、シリンダ41よりも上方に位置する部分を回転可能に支持している。具体的に、主軸受42は、回
転軸31が挿通された筒部61と、筒部61の下端部から径方向の外側に向けて突設されたフランジ部62と、を備えている。フランジ部62は、シリンダ室46を上方から閉塞している。
【0025】
フランジ部62の周方向の一部には、上述した吐出溝58を通してシリンダ室46内外を連通する吐出孔64(
図2参照)が形成されている。吐出孔64は、フランジ部62を軸方向に貫通している。なお、フランジ部62には、シリンダ室46(圧縮室)内の圧力上昇に伴い吐出孔64を開閉し、シリンダ室46外に冷媒を吐出する図示しない吐出弁機構が配設されている。
【0026】
主軸受42には、主軸受42を上方から覆うマフラ65が設けられている。マフラ65には、マフラ65の内外を連通する連通孔66が形成されている。上述した吐出孔64を通して吐出される高温、かつ高圧の気体冷媒は、連通孔66を通して密閉容器34内に吐出される。
【0027】
副軸受43は、シリンダ41の下端開口部を閉塞するとともに、回転軸31のうち、シリンダ41よりも下方に位置する部分を回転可能に支持している。具体的に、副軸受43は、回転軸31が挿通される筒部71と、筒部71の上端部から径方向の外側に向けて突設されたフランジ部72と、を備えている。フランジ部72は、シリンダ室46を下方から閉塞している。
【0028】
上述したブレード55は、径方向に沿って延びる直方体形状に形成されている。ブレード55と、ブレード溝54の内壁面や各軸受42,43のフランジ部62,72と、の間には、潤滑油Jが介在している。そのため、ブレード55のうち、周方向の両側を向く側面は、ブレード溝54の内壁面に対して油膜を介して摺動可能とされている。また、ブレード55の上端面は、フランジ部62の下面に対して油膜を介して摺動可能とされている。ブレード55の下端面は、フランジ部72の上面に対して油膜を介して摺動可能とされている。
【0029】
ブレード55の上下端面(フランジ部62,72との対向面)において、ブレード55の幅方向の中央部には、軸方向の内側に窪む給油溝81が径方向に延設されている。給油溝81は、軸方向から見た平面視で径方向(ブレード55の移動方向)に沿って延びる直線状に形成されている。給油溝81の幅は、全体に亘って一様(同一)とされている。具体的に、給油溝81は、径方向の外側端部(第1端部)側に位置する直線延在部82と、直線延在部82における径方向の内側端部(第2端部)に連なる傾斜部83と、を有している。直線延在部82は、全体に亘って溝深さが一様に形成されている。傾斜部83は、ブレード55の先端面に向かうに従い溝深さが漸次浅くなっている。
【0030】
直線延在部82の第1端部は、ブレード55の後端面上で開口している。直線延在部82の第1端部は、ブレード溝54を通して密閉容器34内に連通している。給油溝81内には、密閉容器34内に貯留された潤滑油Jがブレード溝54を通して供給される。 傾斜部83の底部は、周方向から見た側面視で軸方向の内側に向けて凸の円弧状とされている。傾斜部83の曲率半径は、Rとなっている。傾斜部83の第2端部は、ブレード55の先端面に近接した状態で、ブレード55内で終端している。すなわち、給油溝81は、ブレード55の先端面には到達しておらず、シリンダ室46内とは連通していない。 また、給油溝81は、ブレード55がシリンダ室46内に最も突出したときにシリンダ室46内に位置するように形成されている。
【0031】
ブレード55の上下端面において、給油溝81以外の部分は、給油溝81を径方向の外側を除く三方で取り囲むシール面として機能する。ブレード55のシール面は、油膜を介してフランジ部62,72それぞれと対向している。この場合、ブレード55のシール面とフランジ部62,72との間を通した圧縮室内及び吸込室内間の連通が、油膜によって遮断されている。本実施形態では、シール面のうち、給油溝81に対して周方向の両側に位置する部分の幅寸法S1,S2、及び給油溝81における他端縁とブレード55の先端面との間の径方向に沿う幅寸法S3はそれぞれ同等とされている。
【0032】
ここで、給油溝81の容積は、圧縮行程後半に必要な潤滑油Jの容量に合わせて設定されている。しかも、給油溝81の最大溝深さE(本実施形態では直線延在部82の深さ)の寸法は、Hよりも深くなっている。また、給油溝81の幅寸法Hは、シール面の最小幅の寸法よりも狭くなっている。
【0033】
次に、上述したブレード55に給油溝81を形成する方法について説明する。本実施形態では、円板状のカッター91,92用いた切削加工により給油溝81を形成する。
図3に示す溝形成装置90は、互いに平行な回転軸周りに回転可能とされた一対のカッター91,92と、ブレード55を搬送する図示しない搬送機構と、を有している。
【0034】
カッター91,92は、それぞれ同等の構成とされている。カッター91,92は、両者の間にブレード55の高さよりも狭い隙間をあけて配設されている。なお、本実施形態において、カッター91,92間の隙間は、ブレード55の高さと、各給油溝81の最大溝深さEと、の差分に設定されている。 搬送機構は、各カッター91,92間の隙間に対してブレード55を進退移動させる。具体的に、搬送機構は、ブレード55がカッター91,92間に進入した加工位置と、ブレード55がカッター91,92間から退避する退避位置と、の間を移動する。
【0035】
上述した溝形成装置90を用いて給油溝81を形成する場合には、まず退避位置にある搬送機構によってブレード55を保持し、カッター91,92とブレード55とを位置合わせする。そして、カッター91,92を互いに逆回転させ、搬送機構によってブレード55を第1端部から加工位置に向けて搬送する。すると、ブレード55がカッター91,92間の隙間に進入するのに伴い、ブレード55の上下端面が切削される。
【0036】
そして、ブレード55を所定量進入させた後、再び搬送機構を退避位置に移動させ、カッター91,92からブレード55を退避させる。このとき、ブレード55の進入量は、カッター91,92がブレード55の先端面に到達しない程度に設定されている。これにより、ブレード55の先端部には、カッター91,92の曲率半径に倣った円弧状の傾斜部83が形成される。 以上により、本実施形態のブレード55が完成する。
【0037】
この構成によれば、一対のカッター91,92に対してブレード55を進退移動させるだけで、ブレード55の上下端面に給油溝81を形成できる。この場合、例えばエンドミルを用いたフライス加工に比べ、給油溝81を形成するためのリードタイムを短縮できる。その結果、製造効率の向上や低コスト化を図ることができる。
【0038】
次に、上述した回転式圧縮機2の作用について説明する。
図1に示すように電動機部32の固定子35に電力が供給されると、回転軸31が回転子36とともに軸線O周りに回転する。そして、回転軸31の回転に伴い、偏心部51及びローラ53がシリンダ室46内で偏心回転する。このとき、ローラ53がシリンダ41の内周面にそれぞれ摺接することで、吸込みパイプ21を通してシリンダ室46内に気体冷媒が取り込まれるとともに、シリンダ室46内に取り込まれた気体冷媒が圧縮される。
【0039】
具体的には、シリンダ室46のうち、吸込室内に吸込孔56を通して気体冷媒が吸い込まれるとともに、圧縮室にて先に吸込孔56から吸い込まれた気体冷媒が圧縮される。圧縮された気体冷媒は、主軸受42の吐出孔64を通してシリンダ室46の外側(マフラ65内)に吐出され、その後マフラ65の連通孔66を通して密閉容器34内に吐出される。なお、密閉容器34内に吐出された気体冷媒は、上述したように凝縮器3に送り込まれる。
【0040】
ここで、ブレード55の給油溝81内は、ブレード溝54を通して密閉容器34内に連通しているため、潤滑油Jで満たされている。給油溝81内の潤滑油Jは、シール面と各フランジ部62,72との間に流れ込み、両者間に油膜を形成する。したがって、ブレード55は、フランジ部62,72との直接の接触を抑制した状態で、ローラ53の偏心回転に伴いシリンダ室46に対して径方向に進退移動する。
【0041】
ブレード55が進退移動する過程において、ブレード55及びフランジ部62,72間に介在する潤滑油Jにはブレード55寄りに位置する部分とフランジ部62,72寄りに位置する部分とで速度差が生じる。速度差が生じると、潤滑油Jには粘性に伴うせん断力が作用する。特に、給油溝81の第2端部に傾斜部83が形成されているので、圧縮行程後半ではブレード55の移動方向の後方に向かうに従いブレード55とフランジ部62,72間の隙間が狭くなる。そのため、潤滑油Jの粘性作用と傾斜部83の傾きとによって、給油溝81内の潤滑油Jが径方向の内側に引きずり込まれる(いわゆる、くさび効果が発生する)。これにより、潤滑油Jがブレード55の上下端面とフランジ部62,72との間を、ブレード55の先端面側まで入り込んでいく。これにより、ブレード55とフランジ部62,72との間に潤滑油Jを効果的に供給できる。
【0042】
一方、給油溝81の第1端部は、直線延在部82を通して開放されているため、圧縮行程前半では、上述したくさび効果は発生し難い。そのため、圧縮行程前半では、圧縮行程後半に比べて径方向の内側に潤滑油Jが流れ難い。これにより、圧縮行程前半において、給油溝81内の潤滑油Jがブレード55の先端面側に大量に流れ込むのを抑制できる。
【0043】
このように、本実施形態では、給油溝81の他端部に傾斜部83が形成されているので、圧縮行程後半でくさび効果が発生し易くなる。そのため、ブレード55(シール面)とフランジ部62,72との間において、潤滑油Jが先端面寄りに効果的に供給されることになる。そのため、ブレード55及びフランジ部62,72間の油膜が破断されるのを抑制し、ブレード55とフランジ部62,72とが直接接触するのを抑制できる。これにより、ブレード55とフランジ部62,72との摩耗を低減でき、動作信頼性を向上させることができる。 また、給油溝81は、ブレード55がシリンダ室46内に最も突出したときにシリンダ室46内に位置するように形成されているので、ブレード55及びフランジ部62,72間を通した圧縮室内及び吸込室内の連通が油膜によって遮断される。そのため、ブレード55及びフランジ部62,72間でのシール性を確保できる。そのため、ブレード55及びフランジ部62,72間を通した圧縮室及び吸込室間での冷媒のリークを抑制し、圧縮性能の向上を図ることができる。 さらに、上述したように給油溝81の第1端部が直線延在部82を通して開放されているため、圧縮行程前半において潤滑油Jがブレード55の先端面寄りに大量に流れ込むのを抑制できる。そのため、圧縮行程前半において、ブレード55とフランジ部62,72との間に潤滑油Jが過剰に介在するのを抑制し、ブレード55とフランジ部62,72との間のシール性を維持できる。これにより、ブレード55及びフランジ部62,72間に介在する余剰の潤滑油Jがシリンダ室46内に流入したり、潤滑油Jとともに冷媒がシリンダ室46内に流入したりするのを抑制し、圧縮性能の低下を抑制できる。
【0044】
しかも、本実施形態では、給油溝81の最大溝深さ寸法Eが幅寸法Hよりも深くなっているので、給油溝81内の容積を確保した上で、シール面の幅を確保できる。そのため、給油溝81内での潤滑油Jの容量を確保した上で、ブレード55及びフランジ部62,72間でのシール性を確保できる。これにより、動作信頼性及び圧縮性能の更なる向上を図ることができる。
【0045】
また、本実施形態では、給油溝81の幅寸法Hがシール面の最小幅寸法よりも狭くなっているので、シール面の幅を確保できる。この場合、公差によるブレード55及びフランジ部62,72間のクリアランスのばらつきに関わらず、ブレード55及びフランジ部62,72間でのシール性を確保できる
(いわゆる、ロバスト性を向上させることができる)。その結果、動作信頼性及び圧縮性能の更なる向上を図ることができる。
【0046】
そして、本実施形態の冷凍サイクル装置1においては、上述した回転式圧縮機2を備えているため、高性能で信頼性に優れた冷凍サイクル装置1を提供できる。
【0047】
(第2の実施形態)
図4に示すブレード155において、給油溝181の底部は、全体に亘って軸方向の内側に向けて凸の円弧状に形成されている。したがって、給油溝181は、第1端部及び第2端部の双方に向かうに従い溝深さが漸次浅くなっている。給油溝181の第1端部は、ブレード155の後端面上で開口している。給油溝181の第2端部は、ブレード155内で終端している。
【0048】
図5に示すように、本実施形態の溝形成装置190では、一対のカッター191,192が互いに接近離間可能に構成されている。具体的に、カッター191,192は、カッター191,192間に位置するブレード155に対して加工を行う加工位置と、カッター191,192間に位置するブレード155から離間する退避位置と、の間を移動する。 搬送機構は、一対のカッター191,192間の隙間を通してブレード155を上流から下流に向けて順次通過させる。
【0049】
上述した溝形成装置190を用いて給油溝81を形成するには、まずカッター191,192を退避位置とした状態で、搬送機構によってブレード155をカッター191,192間まで搬送する。次に、カッター191,192を互いに逆回転させるとともに、カッター191,192を加工位置に向けて移動させる。すると、ブレード155の上下端面に対してカッター191,192が進入し、ブレード155の上下端面が切削される。このとき、ブレード155へのカッター191,192の進入量は、各給油溝181の最大溝深さEに設定されている。これにより、給油溝181がカッター191,192の曲率半径に倣った円弧状に形成される。
【0050】
その後、カッター191,192を再び退避位置に移動させ、ブレード155からカッター191,192を離間させる。そして、搬送機構を駆動させ、加工されたブレード155をカッター191,192に対して下流に向けて搬送するとともに、次の加工対象となるブレード155をカッター191,192間に順次搬送する。その後、カッター191,192間に搬送されたブレード155に対して、上述した方法と同様の方法により切削加工を行う。これにより、カッター191,192間に搬送されるブレード155に対して順次給油溝181が形成される。
【0051】
この構成によれば、給油溝181の全体が軸方向の内側に向けて凸の円弧状に形成されているため、一方向に搬送されるブレード155に対してカッター191,192を往復移動させることで、給油溝181を形成することができる。これにより、更なる製造効率の向上や低コスト化を図ることができる。
【0052】
(第3の実施形態)
図6に示すブレード255において、給油溝281の底部は、第1端部から第2端部に向かうに従い軸方向の外側に向けて直線状に延設されている。給油溝281の第1端部は、ブレード255の一端面上で開口している。給油溝281の第2端部は、ブレード255内で終端している。
【0053】
図7に示すように、本実施形態の溝形成装置290では、カッター291が回転可能に支持されている。 搬送機構292は、カッター291に対して上流から下流にブレード255を搬送する。搬送機構292は、搬送方向に対して傾けた状態でブレード255を保持する。具体的に、搬送機構292は、ブレード255の第1端面を下流に向けるとともに、一方の端面を上方(カッター291を向く方向)に向けて傾けた状態で、ブレード255を保持する。
【0054】
上述した溝形成装置290を用いて給油溝281を形成するには、カッター291を回転させた状態で、搬送機構292によってブレード255を下流に向けて搬送する。すると、ブレード255の一方の端面に対してブレード255の第1端部からカッター291が進入する。そして、カッター291に対して下流にブレード255を通過させることで、ブレード255の一方の端面に対して給油溝281が形成される。なお、加工されたブレード255がカッター291を通過すると、次の加工対象となるブレード255がカッター291に順次搬送される。そして、次の加工対象となるブレード255に対して、上述した方法と同様の方法により切削加工が行われる。これにより、カッター291に向けて搬送されるブレード255の一方の端面に対して順次給油溝281が形成される。
【0055】
次に、一方の端面に給油溝281が形成されたブレード255を上下反転させ、上述した方法と同様の方法により他方の端面に対して給油溝281を形成する。これにより、上述した本実施形態のブレード255が完成する。
【0056】
この構成によれば、1つのカッター291に対してブレード255を通過させるだけで給油溝281を形成できるので、溝形成装置290の簡素化及び低コスト化を図ることができる。また、ブレード255が搬送されながらカッター291による加工が行われるので、ブレード255の搬送を停止することがない。そのため、リードタイムの更なる短縮を図ることができる。
【0057】
なお、上述した実施形態では、閉塞板として主軸受42及び副軸受43を用いた場合について説明したが、これに限られない。例えば、シリンダ41の上端開口部を閉塞するとともに、回転軸31が挿通された軸受部と、シリンダ41の下端開口部を閉塞して、回転軸31の軸方向の下端面を摺動可能に支持するシリンダプレートと、を閉塞板として用いても構わない。
【0058】
また、上述した実施形態では、シリンダ室46が1つの構成について説明したが、これに限らず、シリンダ室46を複数設けても構わない。 また、上述した実施形態では、軸方向を上下方向に一致させた場合について説明したが、これに限らず、軸方向を水平方向に一致させても構わない。 さらに、上述した実施形態では、ローラ53とブレードとを別体で形成した場合について説明したが、これに限らず、ローラ53とブレードとを一体で形成しても構わない。
【0059】
また、上述した実施形態では、ブレードの上下端面に給油溝を各別に形成した場合について説明したが、これに限らず、少なくとも一方の端面に給油溝が形成された構成でも構わない。 さらに、上述した実施形態では、ブレードの端面に対して給油溝を1列形成した場合について説明したが、これに限らず、複数列の給油溝を形成しても構わない。
【0060】
また、上述した実施形態では、給油溝における第2端部が円弧状または直線状に形成した場合について説明したが、これに限られない。ブレードの先端面に向かうに従い漸次浅くなる構成であれば、例えば階段状であっても構わない。また、給油溝は少なくとも第2端部(給油溝における延在方向の中間部分よりも第2端部寄りに位置する部分)が第2端に向けて浅くなっていれば構わない。
【0061】
また、上述した実施形態では、軸方向から見た平面視で給油溝がブレードの移動方向(径方向)に沿って延びる直線状とした場合について説明したが、これに限られない。例えば、ブレードの移動方向に沿って延びていれば、給油溝は例えば波形にしたり、移動方向に対して傾斜したりしていても構わない。 また、上述した実施形態では、給油溝の幅が全体に亘って一様とされた構成について説明したが、給油溝の幅は適宜設計変更が可能である。この場合において、シール面の最小幅の寸法は給油溝の最大幅の寸法よりも狭くなっていることが好ましい。
【0062】
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、給油溝が第1端部から第2端部に向かうに従い浅くなっているので、圧縮行程後半でくさび効果が発生し易くなる。そのため、ブレードと閉塞板との間において、潤滑油が第2端面寄りに効果的に供給されることになる。 そのため、ブレード及び閉塞板間の油膜が破断されるのを抑制し、ブレードと閉塞板とが直接接触するのを抑制できる。これにより、ブレードと閉塞板との摩耗を低減できる。その結果、動作信頼性を向上させることができる。 また、ブレード及び閉塞板間を通した圧縮室内及び吸込室内の連通が油膜によって遮断されるので、ブレード及び閉塞板間でのシール性を確保できる。そのため、ブレード及び閉塞板間を通した圧縮室及び吸込室間での冷媒のリークを抑制し、圧縮性能の向上を図ることができる。 さらに、給油溝の他端部が密閉容器内に連通しているため、圧縮行程前半において潤滑油がローラの第2端面寄りに大量に流れ込むのを抑制できる。そのため、圧縮行程前半において、ブレードと閉塞板との間に潤滑油が過剰に介在するのを抑制し、ブレードと閉塞板との間のシール性を維持できる。これにより、ブレード及び閉塞板間に介在する余剰の潤滑油がシリンダ室内に流入したり、潤滑油とともに冷媒がシリンダ室内に流入したりするのを抑制し、圧縮性能の低下を抑制できる。
【0063】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。?