特許第6652641号(P6652641)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エプコス アクチエンゲゼルシャフトの特許一覧

<>
  • 特許6652641-圧電トランス 図000002
  • 特許6652641-圧電トランス 図000003
  • 特許6652641-圧電トランス 図000004
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6652641
(24)【登録日】2020年1月27日
(45)【発行日】2020年2月26日
(54)【発明の名称】圧電トランス
(51)【国際特許分類】
   H01L 41/107 20060101AFI20200217BHJP
   H01L 41/04 20060101ALI20200217BHJP
   H01L 41/047 20060101ALI20200217BHJP
   H02M 3/24 20060101ALI20200217BHJP
   H05H 1/24 20060101ALI20200217BHJP
【FI】
   H01L41/107
   H01L41/04
   H01L41/047
   H02M3/24 Y
   H05H1/24
【請求項の数】15
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2018-526087(P2018-526087)
(86)(22)【出願日】2016年11月15日
(65)【公表番号】特表2019-503069(P2019-503069A)
(43)【公表日】2019年1月31日
(86)【国際出願番号】EP2016077719
(87)【国際公開番号】WO2017085055
(87)【国際公開日】20170526
【審査請求日】2018年7月10日
(31)【優先権主張番号】102015120160.7
(32)【優先日】2015年11月20日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】300002160
【氏名又は名称】ティーディーケイ・エレクトロニクス・アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】TDK ELECTRONICS AG
(74)【代理人】
【識別番号】110002664
【氏名又は名称】特許業務法人ナガトアンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】ヴァイルグニ,ミヒャエル
(72)【発明者】
【氏名】プフ,マルクス
(72)【発明者】
【氏名】クデラ,パヴォル
(72)【発明者】
【氏名】デルガスト,ベルンハルト
【審査官】 宮本 博司
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−223938(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0069911(US,A1)
【文献】 特開平08−151265(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 41/107
H01L 41/04
H01L 41/047
H02M 3/24
H05H 1/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマを生成するための圧電トランス(1)であって、
1つの入力領域(2)および1つの出力領域(3)を備え、
前記入力領域(2)は、印加された交流電圧を機械的振動に変換するように構成されており、
前記出力領域(3)は、機械的振動を電圧に変換するように構成されており、
前記圧電トランス(1)は、1つの最も長いエッジ(13)および1つの最も短いエッジ(14)を備え、当該最も長いエッジ(13)は、最大で当該最も短いエッジ(14)の長さの20倍の長さとなっており、
前記最も短いエッジ(14)の長さに対する前記最も長いエッジ(13)の長さの比によって、前記最も長いエッジ(13)に沿った前記出力領域(3)におけるプラズマ点火を避けることができる、
ことを特徴とする圧電トランス。
【請求項2】
前記最も長いエッジ(13)は、45mmより小さい長さを備えることを特徴とする、請求項1に記載の圧電トランス。
【請求項3】
前記最も長いエッジ(13)は、35mmより小さい長さを備えることを特徴とする、請求項1または2に記載の圧電トランス。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の圧電トランスにおいて、
前記入力領域(2)の1つの第1の側面(6)上には、1つの第1の外部電極(8)が配設されており、
前記入力領域(2)の、前記第1の側面(6)の反対側にある1つの第2の側面(7)上には、1つの第2の外部電極が配設されており、
前記入力領域(2)は、積層方向(S)で上下に重なって積層された複数の圧電層(5)および複数の電極(4)を備え、当該複数の電極(4)は、当該積層方向(S)において前記第1の外部電極(8)かまたは前記第2の外部電極と交互に接続されており、
前記出力領域(3)は1つのモノリシックな圧電層(9)を備える、
ことを特徴とする圧電トランス。
【請求項5】
前記最も長いエッジ(13)は、前記入力領域(2)から前記出力領域(3)まで延在していることを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の圧電トランス。
【請求項6】
前記最も短いエッジ(14)は、前記最も長いエッジ(13)に対して垂直であることを特徴とする、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の圧電トランス。
【請求項7】
前記圧電トランス(1)は100kHzより高い共振周波数を備えることを特徴とする、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の圧電トランス。
【請求項8】
前記最も長いエッジ(13)は、最大で前記圧電トランス(1)の前記最も短いエッジ(14)の15倍の長さとなっていることを特徴とする、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の圧電トランス。
【請求項9】
前記最も短いエッジ(14)は、10mm〜1mmの長さを備えることを特徴とする、請求項1に記載の圧電トランス。
【請求項10】
前記最も短いエッジ(14)の長さに対する前記最も長いエッジ(13)の長さの比によって、前記出力領域(3)における圧電材料の機械的応力を低減することができることを特徴とする、請求項1乃至のいずれか1項に記載の圧電トランス。
【請求項11】
前記最も短いエッジ(14)の長さに対する前記最も長いエッジ(13)の長さの比によって、オゾン発生の同等または改善された効率が実現されることを特徴とする、請求項1乃至10にいずれか1項に記載の圧電トランス。
【請求項12】
請求項1乃至11のいずれか1項に記載の圧電トランスを備えるプラズマ発生器。
【請求項13】
前記圧電トランス(1)は、前記圧電トランスの前記出力領域(3)の端面と、前記圧電トランスの周囲との間に、プロセスガスをイオン化する強い電界を生成するために十分な高い電位差が発生するように構成されていることを特徴とする、請求項1に記載の圧電トランス。
【請求項14】
前記圧電トランス(1)は、医療アプリケーションに使用されることを特徴とする、請求項1に記載の圧電トランス。
【請求項15】
前記圧電トランス(1)は、プラズマ切断を用いた組織の切断に使用されることを特徴とする、請求項1に記載の圧電トランス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は圧電トランスに関する。
この圧電トランスは、プラズマの発生、具体的には非熱大気圧プラズマの発生に使用することができる。
【背景技術】
【0002】
公知の直方体形状の圧電トランスでは、プラズマ点火が出力領域の長手方向側面のエッジ(複数)で生じることが見られた。このようなプラズマ点火は、この出力領域の圧電材料における機械的応力が生成される、望ましくないフィードバックをもたらす。この機械的応力は、この材料における亀裂をもたらし得る。これによりこの圧電トランスの寿命が短くなり得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
したがって本発明の課題は、1つの改善された圧電トランスを提供することであり、この圧電トランスはたとえばより長い寿命を有し得るものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この課題は本願請求項1に記載の圧電トランスによって解決される。
【0005】
本発明は1つの圧電トランスを提示し、この圧電トランスは、1つの入力領域および1つの出力領域を備え、ここでこの入力領域は、印加された交流電圧を機械的振動に変換するように構成されており、この出力領域は、機械的振動を電圧に変換するように構成されている。さらにこの圧電トランスは、1つの最も長いエッジおよび1つの最も短いエッジを備え、ここでこの最も長いエッジは、最大でこの最も短いエッジの長さの20倍の長さとなっている。
【0006】
上記の最も短いエッジの長さに対する上記の最も長いエッジの長さの比は、アスペクト比とも呼称される。20:1以下の小さいアスペクト比を備える圧電トランスでは、上記の出力領域における長手方向側面のエッジに沿った望ましくないプラズマ点火を避けることができることが見出された。この結果このような圧電トランスでは、出力領域における圧電材料の大きな機械的応力が生じず、こうしてこの出力領域には亀裂が全く発生せず、そして寿命は短くならない。
【0007】
本発明による圧電トランスは、たとえば1つのローゼン型のトランスであってよい。さらにこの圧電トランスは、上記のアスペクト比が2:1以上となるように、好ましくは5:1以上となるように構築されていてよい。
【0008】
ここでエッジとは、この圧電トランスの2つの側面が互いにぶつかるラインを意味している。
【0009】
本圧電トランスは1つのほぼ直方体形状の外形とすることができる。この際このトランスのエッジ(複数)は丸められていてよい。具体的にはこれらのエッジは非常に小さな半径で丸められており、この半径はたとえば0.5mm以下となっている。
【0010】
上記の最も長いエッジは、長手方向において入力領域から出力領域まで延在している。上記の最も短いエッジは、出力領域の端面の1つのエッジであってよい。この出力領域の端面は、入力領域から離れた終端面である。
【0011】
上述したように、20:1以下のアスペクト比を有する上記の圧電トランスは、より長い寿命を備える。これは出力領域の大きな機械的応力が生じないからである。さらに加えてこのトランスはさらなる利点を有する。上記の20:1以下の好ましいアスペクト比は、オゾン発生の改善された効率をもたらす。特に、上記の20:1以下のアスペクト比で、この圧電トランスの単位体積当たりの一定の入力パワーで、より多くのオゾンを生成することができる。このオゾン発生の効率の改善は、この圧電トランスの出力インピーダンスの、プラズマにより生成されるインピーダンスへのマッチングに基づくものであり、これは20:1以下のアスペクト比で調整されるものである。
【0012】
上記の圧電トランスは、プラズマを生成するための圧電トランスであってよい。ここでこのプラズマは、好ましくは非熱大気圧プラズマである。
【0013】
好ましくは上記の最も長いエッジは、45mmより小さい長さを備える。好ましくはこの最も長いエッジは、35mmより小さい長さを備える。この最も長いエッジは、10mmの最小の長さを備え得る。
【0014】
このような短くされた形状の圧電トランスは多くの利点を備える。このような圧電トランスの分極に必要な分極電圧は、ほぼこの圧電トランスの長さに依存する。この結果、その最も長いエッジの長さが45mmより小さい、あるいは35mmより小さいトランスの分極のためには、ほんの小さな電圧が必要となる。以上によりこれらのそれぞれの圧電トランスの製造方法が簡単なものとなる。
【0015】
さらに上記のそれぞれの圧電トランスの共振周波数は、その最も長いエッジの長さに依存している。この最も長いエッジを短くすることは、高い共振周波数を有する圧電トランスを製造することを可能とする。たとえば35mmより短い、最も長いエッジによって、100kHzより高い共振周波数を達成することができる。このような共振周波数は、特に医療アプリケーションに使用されるプラズマ発生器で有利である。
【0016】
さらにもっと高い共振周波数は、出力電圧のより急峻なスロープをもたらし、これも上記のオゾン発生に有利に作用する。
【0017】
上記の入力領域の1つの第1の側面上には、1つの第1の外部電極が配設されていてよい。この入力領域の、この第1の側面の反対側にある1つの第2の側面上には、1つの第2の外部電極が配設されていてよい。この入力領域は、積層方向で上下に重なって積層された圧電層(複数)および電極(複数)を備えてよい。これらの電極は、この積層方向において上記の第1の外部電極かまたは上記の第2の外部電極と交互に接続されていてよい。上記の出力領域は1つのモノリシックな圧電層を備えてよい。この出力領域における圧電層の圧電材料は、上記の入力領域における圧電層の圧電材料と同一であってよい。
【0018】
上記の最も長いエッジは、上記の入力領域から上記の出力領域まで延在してよい。上記の最も短いエッジは、この最も長いエッジに対して垂直であってよい。
【0019】
上記の圧電トランスは100kHzより高い共振周波数を備えてよい。この周波数は、特に医療分野におけるアプリケーションに有利である。
【0020】
上記の最も長いエッジは、最大で上記の圧電トランスの最も短いエッジの15倍の長さを有してよい。これに応じて15:1以下のアスペクト比に調整されてよい。このように小さなアスペクト比の選択により、上記の最も長手方向側面のエッジに沿ったプラズマ点火が生じないことを確実にすることができる。このようにすることによって上記のオゾン発生の効率も高めることができる。
【0021】
上記の最も短いエッジは、10mm〜1mmの長さを備えてよい。好ましくはこの最も短いエッジは、5mm〜2mmの長さを備える。この最も短いエッジの長さは、20:1以下の有利なアスペクト比に調整されるように選択される。
【0022】
上記の最も短いエッジの長さに対する上記の最も長いエッジの長さの比によって、上記の最も長いエッジに沿った上記の出力領域におけるプラズマ点火を避けることができる。この結果、絶縁、たとえばこの出力領域を部分的に被覆するシュリンクチューブを省略することができる。こうして本発明による圧電トランスは、出力領域において絶縁部無しとすることができる。本発明による圧電性の絶縁体は、特にシュリンクチューブを全く備えなくともよい。
【0023】
上記の最も短いエッジの長さに対する上記の最も長いエッジの長さの比によって、上記の出力領域における圧電材料の機械的応力を低減することができる。
【0024】
上記の最も短いエッジの長さに対する上記の最も長いエッジの長さの比によって、上記のオゾン発生の改善された効率を実現することができる。特に、このアスペクト比を選択することによって、部品高を低減することを可能とし、そして同時にオゾンの発生効率を維持あるいはむしろ改善することを可能とする。
【0025】
本発明のもう1つの態様は、上述の圧電トランスを備えるプラズマ発生器に関する。このプラズマ発生器は、具体的には非熱大気圧プラズマの生成用に適合し得る。
【図面の簡単な説明】
【0026】
以下では、図を参照して、本発明を詳細に説明する。
図1】1つの圧電トランスを斜視図で示す。
図2】1つの測定の結果を示し、ここでは図1に示す圧電トランスに対しそのオゾン発生が比較例と比較されている。
図3】1つの測定の測定結果を示し、ここでは単位体積当たりのオゾン発生に着目されている。
【0027】
図1は、1つの圧電トランスを斜視図で示す。
この圧電トランス1は、具体的には、非熱大気圧プラズマの発生用の装置に使用することができる。
【0028】
圧電トランス1は、共振トランスの1つの構造形態であり、これは圧電現象に基づいたものであり、従来の磁気トランスとは対照的に、1つの電気機械システムとなっているものである。この圧電トランス1は、たとえば1つのローゼン型のトランスである。
【0029】
この圧電トランス1は、1つの入力領域2および1つの出力領域3を備える。この入力領域2において、この圧電トランス1は、電極(複数)4を備える。これらの電極には1つの交流電圧が印加されてよい。これらの電極4は、この圧電トランス1の長手方向Lに延在している。これらの電極4は、上記の長手方向Lに対して直角な積層方向Sにおいて、圧電材料5と交互に積層されている。ここでこの圧電材料5は、積層方向Sに分極されている。
【0030】
これらの電極4は、この圧電トランス1の内部に配設されており、そして内部電極とも呼ばれている。この圧電トランス1は、1つの第1の側面6、およびこの第1の側面6の反対側にある1つの第2の側面7を備える。第1の側面6上には、1つの第1の外部電極8が配設されている。第2の側面7上には、1つの第2の外部電極(不図示)が配設されている。内部にある電極(複数)4は、積層方向Sで、交互にこの第1の外部電極8かまたはこの第2の外部電極と電気的に接続されている。
【0031】
入力領域2は、上記の電極(複数)4の間に印加される1つの小さな交流電圧で制御することができる。圧電効果のために、この入力側に印加された交流電圧は、まず1つの機械的な振動に変換される。ここでこの機械的な振動の周波数は、実質的にこの圧電トランス1の幾何形状および機械的構造に依存している。
【0032】
出力領域3には、圧電材料9を備え、そして内部電極が存在していない。この出力領域における圧電材料9は、長手方向Lにおいて分極されている。この出力領域3の圧電材料9は、上記の入力領域2の圧電材料5と同じ材料であってよく、ここでこれらの圧電材料5および9は、その分極方向が異なっていてよい。この出力領域においては、上記の圧電材料は1つの単一のモノリシックな層となるように形成されており、この層は完全に上記の長手方向Lに分極されている。ここでこの出力領域における圧電材料は、ただ1つの単一の分極方向を備える。
【0033】
入力領域2における電極(複数)4に1つの交流電圧が印加されると、圧電材料5,9の内部に1つの機械的な波が形成され、この波は出力領域3における圧電効果によって1つの出力電圧を生成する。この出力領域3は、1つの出力側の端面10を備える。この出力領域3において生成された電圧は、こうしてこの端面10と、入力領域2の電極4の端部との間に印加される。ここでこの出力側の端面10には、1つの高電圧が印加される。ここでこの出力側の端面と、この圧電トランスの周囲との間に、プロセスガスをイオン化する強い電界を生成するのに十分な高い電位差が発生する。
【0034】
このようにしてこの圧電トランス1は大きな電界を生成し、この大きな電界は電気的な励起によってガスまたは流体をイオン化するようになっている。この際それぞれのガスあるいはそれぞれの流体の原子または分子がイオン化されて、プラズマを形成する。この圧電トランス1の表面での電界強度がプラズマの点火電界強度を越えると、イオン化が起こる。ここでプラズマの点火電界強度とは、原子または分子のイオン化のために必要な電界強度を意味している。
【0035】
側部の長手方向エッジ(複数)11でも、また出力側の端面10のエッジ12でもプラズマの点火が起こる。この側部の長手方向エッジ11に沿ったプラズマ点火は、望ましくないフィードバックをもたらし、このフィードバックでは大きな機械的応力が出力領域3の圧電材料9に生成され、この機械的応力は、この圧電トランス1の長時間動作において亀裂をもたらし得る。これによってこの圧電トランス1の寿命が低減される。このようなプラズマ点火の結果の圧電トランス1の損傷を防止するために、この圧電トランス1は、このプラズマ点火が特に出力側の端面10で起こり、そして上記の側部の長手方向エッジ(複数)11でこのプラズマ点火が防止されるように構成されている。
【0036】
この圧電トランス1では、具体的にはこの圧電トランス1の出力領域3において電位の極大値が生じる場所でプラズマ点火が起こる。以下では、上記の側部の長手方向エッジ(複数)11でのこのプラズマ点火の可能性を防止するために、この圧電トランス1がどのように構築されているかをより詳細に説明する。
【0037】
本発明による圧電トランス1は、1つの直方体形状の外形を備え、ここでこの圧電トランス1は、最も長いエッジ13および最も短いエッジ14を備える。出力側の端面10は、1つの矩形の外形を備え、ここでこの端面10の最も短いエッジがこの圧電トランス1の最も短いエッジ14となっている。この圧電トランス1の最も長いエッジ13は、この出力側の端面10に対し垂直になっており、そして入力領域2から出力領域3まで延在している。この最も長いエッジ13は、側部の長手方向エッジ11である。
【0038】
この最も短いエッジ14の長さに対するこの最も長いエッジ13の長さの比はアスペクト比と呼称されている。圧電トランス1が、アスペクト比が20:1以下となるように構築されていると、この圧電トランス1は、プラズマをその出力側の端面10で特に強調して生成することが分った。
【0039】
このアスペクト比は、圧電トランス1の出力領域3のキャパシタンスに影響を与える。出力領域3において電位が極大値に達する場所は、今度はこの出力領域3のキャパシタンスに依存して移動する。この出力キャパシタンスは、アスペクト比が小さくなると共に増加する。実験的にもまた理論的にも、20:1以下のアスペクト比で、上記の生成された出力電位の極大値が出力側の端面10上に印加されるのに十分に大きな出力キャパシタンスが実現されることを示すことができた。このアスペクト比が20:1より大きく設定されると、出力キャパシタンスは減少し、そして出力側電位の極大値は側部の長手方向エッジ(複数)11に沿って、この出力側の端面10から離れて入力領域2の方向に向かって移動する。この場合、このエッジ11に沿って望ましくないプラズマ点火が生じる。
【0040】
1つの第1の実施形態例においては、上記の最も長いエッジ13は、41mmの長さを有する。出力側の端面10のエッジ12は、6mm〜3mmの長さを有する。これに対応してこの端面10の3mmの長さのエッジが、この圧電トランス1の最も短いエッジ14となる。以上によりアスペクト比は13.667:1となり、すなわち20:1以下の有利なアスペクト比となる。
【0041】
実験的な研究では、10個の上記の第1の実施形態例による圧電トランス1が1000時間の長時間稼働で観察され、ここでこれらのトランス1のいずれでもその出力側領域3において亀裂が発生せず、そしてこれに対応してこの圧電トランス1の故障は全く起こらなかった。
【0042】
1つの第2の実施形態例によれば、最も長いエッジ13は、35mmより短くともよい。たとえば圧電トランス1は、30mmの長さの最も長いエッジ13を備えてよい。端面10は、3mmと2.4mmのエッジ長を備えてよい。この場合にも、上記の有利な20:1以下のアスペクト比となる。具体的には12.5:1のアスペクト比となる。
【0043】
圧電トランス1の共振周波数は、最も長いエッジ13の長さに依存する。上記の第2の実施形態例は、100kHzより大きな共振周波数をもたらす。
【0044】
100kHzより大きな共振周波数を有する圧電トランス1は、特に医療アプリケーションに使用することができる。このような医療アプリケーションには、たとえばプラズマ切断を用いた組織の切断がある。この際神経の刺激を避けなければならない。神経のイオン伝導率は、100kHzの周波数から顕著に低下する。この結果、100kHzを越える周波数で動作するプラズマ発生器は、組織のプラズマ切断にとりわけ良好に適している。上述した上記の第2の実施形態例による圧電トランス1は、このようなプラズマ発生器に使用することができる。
【0045】
図2は、1つの比較測定の測定結果を示し、この比較測定では上記の第1の実施形態例による圧電トランス1が比較例のトランスと比較されている。この比較例のトランスは、71mmの長さおよび断面が6mm×3mmの端面を備える。この第1の実施形態例による圧電トランス1およびこの比較例のトランスでは共に空気がプロセスガスとして利用されており、そしてそれぞれの圧電トランスによってイオン化される。
【0046】
図2では、その横軸に、それぞれの圧電トランス1が駆動されたパワーがワット(W)でプロットされている。縦軸には、生成されたオゾンの量がmg/時間(h)でプロットされている。図2に示す測定結果は、オゾン生成において目立った差は見当たらないことを示している。特に上記の有利な20:1以下のアスペクト比を備える本発明による圧電トランスを用いて、同じ入力パワーで生成される量と実質的に同等な量のオゾンが生成され、ここで20:1以下のアスペクト比を有する本発明による圧電トランス1は、比較例のトランスよりも大幅に短い長さを備えている。
【0047】
図3も同様に、上記の第1の実施形態例による圧電トランスと、上記の比較例のトランスとの間の比較を表しているが、この比較例のトランスは、好ましい20:1以下のアスペクト比を備えていない。ここでは入力パワーとそれぞれのトランスの体積との積に着目されている。横軸には入力パワーと体積との積がW×cm3でプロットされている。ここでも縦軸には時間当たりに生成されるオゾンの量がmgでプロットされている。プロセスガスとしてはここでも空気が利用されている。好ましいアスペクト比を有する本発明による圧電トランス1が体積当たりでより多い量のオゾンを生成することが明瞭に見て取れる。こに結果本発明による圧電トランス1は、オゾン発生のより高い効率を備える。
【0048】
この実験的に観察された、上記の有利なアスペクト比の結果である、空気でのオゾン発生の効率の改善は、理論的にも説明することができる。このオゾン発生の効率は、圧電トランス1の出力インピーダンスのこのプラズマによって生成されるインピーダンスへのマッチング、ならびに出力電圧のスロープの急峻さに依存している。この出力電圧のスロープの急峻さは、正弦波形状の電圧では、実質的に上記の共振周波数に依存する。これに対応して、その最も長い辺13が小さな長さを有し、そしてこれに対応した高い共振周波数を備える圧電トランス1は、急峻なスロープを備え、これはここでもオゾン発生の効率に有利に作用する。
【0049】
さらに上記の有利なアスペクト比は、圧電トランス1の、プラズマによって生成されるインピーダンスへのマッチングを改善することを示すことができた。
【0050】
上記の最も長いエッジ11も、また圧電トランスの出力側の端面のエッジ12も、丸められていてよい。この丸められたエッジの曲率半径は、充分に小さく設定されると、たとえば0.5mmより小さく設定されると、この圧電トランス1は近似的に直方体として見做すことができる。
【0051】
本発明による圧電トランス1のいくつかの実施形態例では、この圧電トランスは、出力領域3に1つの絶縁性の層を備え、この層はたとえば1つのシュリンクチューブによって形成される。この絶縁性の層は、出力側の端面10を露出していてよく、そしてこの出力領域3のその他の側面を少なくとも部分的に覆っていてよい。この絶縁性の層は、上記の側部の長手方向エッジ(複数)11に沿った望ましくないプラズマ点火を防止することになり、そしてこの目的のためにこれらのエッジを覆うことになる。上記の有利なアスペクト比のおかげで、これらの側部の長手方向エッジ11に沿ったプラズマ点火は全く心配することはないので、本発明による圧電トランスは、出力領域3におけるこの絶縁性の層は無くともよい。1つの代替の実施形態例においては、この出力領域3の絶縁をさらに改善するために、1つのこのような絶縁性の層が設けられてよい。
【符号の説明】
【0052】
1 : 圧電トランス
2 : 入力領域
3 : 出力領域
4 : 電極
5 : 圧電材料
6 : 第1の側面
7 : 第2の側面
8 : 第1の外部電極
9 : 圧電材料
10 : 出力側の端面
11 : 側部の長手方向エッジ
12 : 端面のエッジ
13 : 最も長いエッジ
14 : 最も短いエッジ
L : 長手方向
S : 積層方向
図1
図2
図3