特許第6652645号(P6652645)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6652645信号伝送単相トランス内で誘導される妨害電圧の補償のための装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6652645
(24)【登録日】2020年1月27日
(45)【発行日】2020年2月26日
(54)【発明の名称】信号伝送単相トランス内で誘導される妨害電圧の補償のための装置
(51)【国際特許分類】
   H01F 27/42 20060101AFI20200217BHJP
   H01F 30/10 20060101ALI20200217BHJP
【FI】
   H01F27/42 150
   H01F30/10 A
【請求項の数】13
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2018-529578(P2018-529578)
(86)(22)【出願日】2016年10月13日
(65)【公表番号】特表2019-503582(P2019-503582A)
(43)【公表日】2019年2月7日
(86)【国際出願番号】EP2016074573
(87)【国際公開番号】WO2017102134
(87)【国際公開日】20170622
【審査請求日】2018年6月7日
(31)【優先権主張番号】102015122244.2
(32)【優先日】2015年12月18日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】300002160
【氏名又は名称】ティーディーケイ・エレクトロニクス・アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】TDK ELECTRONICS AG
(74)【代理人】
【識別番号】110002664
【氏名又は名称】特許業務法人ナガトアンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】フォースター, ミヒャエル
(72)【発明者】
【氏名】ノイデッカー, マルテイン
【審査官】 木下 直哉
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第04473811(US,A)
【文献】 特開2005−136314(JP,A)
【文献】 米国特許第07268658(US,B1)
【文献】 特開昭52−082011(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0197511(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 17/00−21/12
H01F 27/00
H01F 27/02
H01F 27/23
H01F 27/26−27/30
H01F 27/32−27/42
H01F 30/00−38/12
H01F 38/16
H01F 38/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
信号伝送単相トランス内で誘導された妨害電圧の補償のための装置であって、
トランスコイル(1280)を備える信号伝送単相トランス素子(1)と、
前記トランスコイル(1280)と直列に接続された補助コイル(32)を備える補助装置(2)と、を備え、
前記補助装置(2)は、前記信号伝送単相トランス素子(1)内で誘導された妨害電圧(21)が、前記補助装置(2)内で誘導された逆電圧(31)によって低減されるように配置され構成されており、
前記補助コイル(32)は、前記信号伝送単相トランス素子(1)の周囲に配置されている、装置。
【請求項2】
信号伝送単相トランス内で誘導された妨害電圧の補償のための装置であって、
トランスコイル(1280)を備える信号伝送単相トランス素子(1)と、
前記トランスコイル(1280)と直列に接続された補助コイル(32)を備える補助装置(2)と、を備え、
前記補助装置(2)は、前記信号伝送単相トランス素子(1)内で誘導された妨害電圧(21)が、前記補助装置(2)内で誘導された逆電圧(31)によって低減されるように配置され構成されており、
前記補助コイル(32)は、前記トランスコイル(1280)の周囲を巡って導かれている、装置。
【請求項3】
信号伝送単相トランス内で誘導された妨害電圧の補償のための装置であって、
トランスコイル(1280)を備える信号伝送単相トランス素子(1)と、
前記トランスコイル(1280)と直列に接続された補助コイル(32)を備える補助装置(2)と、を備え、
前記補助装置(2)は、前記信号伝送単相トランス素子(1)内で誘導された妨害電圧(21)が、前記補助装置(2)内で誘導された逆電圧(31)によって低減されるように配置され構成されており、
前記信号伝送単相トランス素子(1)及び前記補助装置(2)は前記装置の別個の要素であり、前記補助装置はコア(33)を備え、前記補助コイル(32)は前記補助装置(2)の前記コア(33)の周囲に配置されている、装置。
【請求項4】
前記補助コイル(32)は巻回方向を有し、前記補助コイル(32)の前記巻回方向は、前記トランスコイル(1280)の巻回方向と逆向きであることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の装置。
【請求項5】
前記補助コイル(32)は、少なくとも1つの巻回を有することを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の装置。
【請求項6】
前記補助コイル(32)の巻数の前記トランスコイル(1280)の巻数に対する比率は1:10であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の装置。
【請求項7】
前記逆電圧(31)は、前記妨害電圧(21)と同一の値であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の装置。
【請求項8】
前記逆電圧(31)は、前記妨害電圧(21)と比較して180°だけ位相がずれていることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の装置。
【請求項9】
前記妨害電圧(21)は、前記逆電圧(31)によって完全に消去されることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項に記載の装置。
【請求項10】
前記補助コイル(32)は、1つのワイヤを備えることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか1項に記載の装置。
【請求項11】
前記補助コイル(32)は、前記トランスコイル(1280)の周囲を巡って導かれていることを特徴とする、請求項1、又は、請求項4〜10のいずれか1項に記載の装置。
【請求項12】
前記信号伝送単相トランス素子(1)は2つのコア半体(3a,3b)を有するコア(3)を備え、第1のコア半体(3a)は中央脚(10a)及び外部脚(11a)を備え、もう一つのコア半体(3b)は中央脚(10b)及び外部脚(11b)を備え、前記補助コイル(32)は前記コア(3)の少なくとも1つの外部脚(11a,11b)の周囲に巻き付けられていることを特徴とする、請求項1若しくは2、又は、請求項4〜11のいずれか1項に記載の装置。
【請求項13】
前記補助装置(2)は、前記信号伝送単相トランス素子(1)の接触素子(1240)と、または、別個の接触素子と、導電的に接続されていることを特徴とする、請求項1〜12のいずれか1項に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車技術における超音波エコー距離センサの回路で用いられ得る信号伝送単相トランス素子の電磁的妨害抑制のための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波エコー距離センサは、自動車技術において、駐車支援/パーキングアシストシステムでの車両と対象物の間の距離測定に用いられる。超音波エコー距離センサの回路は、信号伝送単相トランス素子(信号伝送単相トランス)を備え得る。当該信号伝送単相トランス素子により、送信フェーズにおいて交流電圧が高い値に変換され、当該高い電圧値により、超音波エコー距離センサが一時的に厚み振動へと励起される。送信フェーズに続く受信フェーズにおいて、エコー信号の高いインピーダンスは、信号伝送単相トランス素子によってセンサ回路の受信回路に適合した低いインピーダンスに変換され、それにより、当該回路の最も小さな信号でさえ、ノイズの少ない状態で検出され得る。受信モードにおいて、外部妨害は、とりわけ信号伝送単相トランス内の誘導効果を通じてシステムに影響を及ぼし得る。
【0003】
外部から信号伝送単相トランスのリングコア内へ入る妨害場は、コイル内に妨害電圧を誘導する。リングコアを用いる代わりに、通常、距離センサ用の回路においては、EP構造を有する電気的信号伝送単相トランス素子、例えばEP5/EP6信号伝送単相トランスが用いられる。コア半体間における、ここでは不可避の残余空隙により、コイル内で妨害電圧が誘導される。
【0004】
妨害電圧は、例えば信号伝送単相トランス素子内の外部交番磁界(妨害場)による誘導を通じて、生成され得る。そのような交番磁界は、例えば車両検出のための道路における誘導リングによって生成され得る。
【0005】
誘導された妨害電圧は、従来技術によれば、いわゆる低減コイルによって低下される。その際、コア全体の周囲に配置された閉じた導体の形態の付加的なコイルが採用される。しかし、これは非常に多くの材料を用いるものであり、信号伝送単相トランスの高い製造コストにつながる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
解決すべき課題は、信号伝送単相トランス内で誘導された妨害電圧を効果的に補償する装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題は、請求項1による装置によって解決される。
【0008】
一つの観点によれば、信号伝送単相トランス内で誘導された妨害電圧の補償のための装置が提供される。換言すれば、装置は、信号伝送単相トランス素子内で誘導された妨害電圧を低減し、好ましくは完全に消去するために設計され、構成されている。装置は、信号伝送単相トランス素子を備えている。信号伝送単相トランス素子は、例えばEP5/EP6信号伝送単相トランスである。信号伝送単相トランス素子は、好ましくは2つのコア半体を備えるコアと、ボビンと、を備えている。ボビンは、電圧を信号伝送単相トランスに印加するための接触素子を備えている。
【0009】
装置は、さらに、補助装置を備えている。補助装置と信号伝送単相トランス素子は、好ましくは直列に接続されている。補助装置は、信号伝送単相トランス素子内で誘導された妨害電圧が、補助装置内で誘導された逆電圧によって低減されるように配置され、構成されている。誘導された逆電圧によって、容易かつ安価な方法で、信号伝送単相トランス素子の効果的な妨害抑制が達成される。
【0010】
信号伝送単相トランス素子は、トランスコイルを備えている。トランスコイルは、信号伝送単相トランスの1次及び2次コイルのワイヤを備えている。トランスコイルは、ボビンの中心パイプに巻き付けられている。補助装置は、補助コイルを備えている。好ましくは、補助コイルは1本のワイヤを備えている。その際、補助コイルのワイヤ径は、トランスコイルのワイヤ径と実質的に同一である。換言すれば、補助コイルとトランスコイルは、好ましくは同一の厚みを有する。したがって、補助コイルの製作のために、わずかな材料コストしか必要とされない。それによって、この装置のコストは低く維持される。
【0011】
補助コイルは、巻回方向を有する。補助コイルの巻回方向は、トランスコイルの巻回方向と逆である。とりわけ、補助コイルの巻回方向は、トランス主コイル(信号伝送単相トランスの1次コイル)の巻回方向と逆である。補助コイルは、トランスコイルと直列に接続されている。トランスコイル及び補助コイルの逆向きの巻回、並びに、トランスコイル及び補助コイルの逆向きの電気的接続によって、トランスコイル内で誘導される妨害電圧と逆向きの等しい電圧が、補助コイル内で生成され得る。生成された逆電圧によって、妨害電圧は、効果的に低減され、あるいは、理想的なケースでは完全に消去され得る。それによって、信号伝送単相トランスの効果的な妨害抑制が達成され得る。例えばワイヤの形態のような、補助コイルの独特の設計によって、信号伝送単相トランスの妨害抑制は、さらに、とりわけ安価に達成され得る。とりわけ、補助コイルを用いることにより、材料コストは、従来技術による妨害抑制解決策と比較して著しく低減され、これは大幅なコスト低減につながる。
【0012】
補助コイルは、少なくとも1つの巻数を有する。補助コイルの巻数は、しかしながら、1つの巻数から顕著に逸脱してもよい。例えば、補助コイルは、2、3、4、5、10、20または30の巻数を有し得る。その際、補助コイルの巻数は、好ましくはトランスコイルの巻数に適合される。トランスコイルの巻数が多いほど、補助コイルの巻数も多くなる。補助コイルの巻数のトランスコイルの巻数に対する比率は、典型的には1:10である。妨害電圧の補償のために、とりわけ、典型的には1:10である補助コイルの巻数のトランス主コイルの巻数に対する最適な比率が見出された。
【0013】
補助コイル内で生成された逆電圧は、妨害電圧と類似の値、好ましくは同一の値を有する。好ましくは、逆電圧は妨害電圧と比較して、さらに180°だけ位相がずれている。それによって、信号伝送単相トランス内での妨害電圧の完全な消去が達成され得る。
【0014】
一実施例によれば、補助コイルは信号伝送単相トランス素子の周囲に配置されている。補助コイルは、好ましくは、信号伝送単相トランスの少なくとも外側領域の周囲を導かれている。補助コイルは、さらに、トランスコイルの周囲を導かれ得る。したがって、補助コイルは、少なくとも部分的に、信号伝送単相トランス素子の内側、とりわけコアの内側を延び得る。とりわけ、補助コイルは8の字の形態で、信号伝送単相トランス素子の周囲に巻き付けられ得る。この場合、補助コイルの電気的な接続は、信号伝送単相トランス素子の接触素子を介して行われ得る。ここで、信号伝送単相トランス素子及び補助装置は、電気的な接続のために、共通の接触素子を利用する。とりわけ、補助コイルは、その内部で短絡していない。
【0015】
一実施例によれば、信号伝送単相トランス素子は2つのコア半体を有するコアを備え、第1のコア半体は中央脚及び外部脚を備え、もう一つのコア半体は中央脚及び外部脚を備えている。補助コイルは、コアの一方または両方の外部脚の周囲に巻き付けられている。とりわけ、補助コイルは、信号伝送単相トランス素子の一部の領域の周囲のみを導かれている。トランスコイル、あるいは、信号伝送単相トランス素子の内側領域には、補助コイルは存在しない。この場合にも、補助コイルの電気的な接続は、信号伝送単相トランス素子の接触素子を介して行われ得る。
【0016】
補助コイルのそのような配置は、信号伝送単相トランスの製造における利点、及び、信号技術的な利点を具備している。さらに、信号伝送単相トランスのための別の構造が採り入れられ、あるいは、実現され得る。
【0017】
一実施例によれば、信号伝送単相トランス素子及び補助装置は、装置の別個の又は空間的に分離された要素を構成する。その際、補助装置、特に補助コイルは、信号伝送単相トランス素子の少なくとも一つの部分領域の周囲には配置されていない。むしろ、信号伝送単相トランス素子及び補助装置は、分離して配置されている。補助装置は、コア、特にシリンダーコアを備えている。コアは、フェライトコアであり得る。補助コイルは、補助装置のコアの周囲を取り巻いて配置されている。ここでも、補助コイルの巻回方向は、トランスコイルの巻回方向と逆向きである。補助コイルの電気的接続は、例えば回路基板の別個の接触素子を介して行われる。とりわけ、ここでは、信号伝送単相トランス素子及び補助装置は、電気的接続のための共通の接触素子を利用しない。
【0018】
対応する装置は、既存の信号伝送単相トランス構造及び既存の補助要素が用いられ得るという利点を有している。したがって、既存の素子の設計変更は不要である。
【0019】
さらに、対応する装置は、信号伝送単相トランス素子内における補助装置(補助コイル)が可能でない場合に、製造技術上の利点を有する。
【0020】
さらに、この装置は、妨害場が、狙いどおりにメイン素子(信号伝送単相トランス)と分離して捉えられ得るという利点を具備している。
【0021】
一実施例によれば、この装置は、信号伝送単相トランス、変圧器及びあらゆる種類の変換器に適用可能である。とりわけ、受信時/入射時における妨害抑制のための上述した利用に加えて、妨害放射の低減を目的とする送信時/出射時における類似した利用も考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1A】従来技術によるEP信号伝送単相トランスのコア半体を示している。
図1B】従来技術によるEP信号伝送単相トランス用のボビンを示している。
図1C】従来技術による低減コイルを備えるEP信号伝送単相トランスを示している。
図1D】従来技術によるEP信号伝送単相トランス用のボビンの周囲のトランス主コイルの方向を模式的に示している。
図2】第1実施例による信号伝送単相トランス内の妨害電圧の補償のための装置を示している。
図3】一実施例による、トランス主コイルとは逆向きとされた信号伝送単相トランスの周囲の補助コイルの延在を模式的に示している。
図4】別の実施例による、信号伝送単相トランスの周囲の補助コイル32の延在を模式的に示している。
【発明を実施するための形態】
【0023】
装置が、以下において、実施例及びそれに付属する図面に基づいて詳細に説明される。
【0024】
以下に示される図面は、縮尺どおりと解釈されてはならない。むしろ、より良好な図示のために、いくつかの寸法が拡大、縮小あるいは歪曲されて示され得る。
【0025】
互いに類似した、あるいは、同一の機能を担う要素は、同一の参照符号を用いて示されている。
【0026】
図1Aは、従来技術によるEP信号伝送単相トランス用のコア3の一実施形態を示している。コア3は、2つのコア半体3a,3bを含み、第1のコア半体3aは、中央脚10a及び外部脚11aを備えている。別のコア半体3bは、中央脚10b及び外部脚11bを備えている。
【0027】
図1Bは、従来技術によるEP信号伝送単相トランス用のボビン12を示している。ボビン12は、接触装置1210及び接触装置1220を備えている。接触装置1210,1220には、図1Bには示されていない信号伝送単相トランスの1次及び2次コイル(以下では、トランスコイル1280と総称する;例えば図1C参照)のワイヤに電圧を印加するための接触素子1230があり、これらのコイルはボビン12の中心パイプ1250の上に巻き付けられ得る。トランスの1次コイルは、トランス主コイルとも称される。図1Dは、従来技術によるEP信号伝送単相トランス用のトランス主コイルの巻回方向1281を示している。
【0028】
接触素子1240は、ワイヤを終端するために用いられ、接触装置1210,1220の内部で接触素子1230と接続されている。ボビン12は、中心パイプ1250の両端部に、側部部分/フランジ1260,1270を備える。側部部分1260,1270は、中心パイプ1250上に巻き付けられた1次及び2次コイルの別個のワイヤが、中心パイプ1250から側部側へずれ落ちることを防いでいる。
【0029】
ボビン12の中心パイプ1250に1次及び2次コイル(トランスコイル1280)が巻き付けられた後、2つのコア半体3a,3bが中央脚10a,10bによって中心パイプ1250の空洞の中へ挿入される。2つの外部脚11a,11bは、例えば互いに接着されてもよい。こうして完成したEP信号伝送単相トランスは、中央脚10a,10bを有し、例えばフェライトからなる互いに鏡面対称に実装された2つのハーフシェル形状のコア3a、3bを備え、これらは互いに結合されている。1次及び2次コイルのワイヤは、ハーフシェル形状のコア3a,3bの内側でボビン1250上に巻き付けられている。
【0030】
2分割されたハーフシェルコア3a,3bによって、妨害磁場の少なからざる部分が、フェライト材料から直接的に中央脚10a,10bを通じて導かれる。コア3の空隙は、2つの中央脚10a,10bの1つにおいて研磨加工されているが、外部脚11a,11bにおける不可避の残余空隙によって、外部脚11a,11bにおける磁気抵抗は、中央脚10a,10bにおけるそれの僅か1/10〜1/50である。それによって、妨害磁場は部分的に中央脚10a,10bを通って導かれ、トランスコイル1280内で妨害電圧が誘導される。
【0031】
図1Cは、従来技術による低減コイルを備えたEP信号伝送単相トランスを示している。外部妨害磁場による誘導電圧を低減するために、EP信号伝送単相トランスにおいては、付加的な短絡コイル/低減コイル1290が採用されている。その際、コア3全体(中央脚10a、10b及び外部脚11a,11b)の周囲に、1つの閉じた導電体が配置される(低減コイル1290;図1C上部)。その際、単一の巻回のみを有する低減コイル1290のコイル平面は、典型的には、トランスコイル1280のコイル平面と平行に配置されている(図1C下部参照)。
【0032】
短絡コイル1290は、その際、可能な限り低抵抗である必要がある。これは、相当な材料コストと結びついており、高い製造コストにつながる。
【0033】
図2は、信号伝送単相トランス1内の妨害電圧の補償のための本発明による装置を示している。
【0034】
装置は、信号伝送単相トランス1(信号伝送単相トランス素子1)を備えている。信号伝送単相トランス1は、本質的に、図1A及び1Bと関連付けて説明された信号伝送単相トランスに対応する。とりわけ、信号伝送単相トランス1は、トランスコイル(1次及び2次コイルのワイヤ)1280を有するボビン1250、並びに、中央脚10a,10bを備え互いに鏡面対称に実装された2つのハーフシェル形状のフェライトコア3a,3b(図1A参照)を備え、それらのコアは互いに接続されている。さらに、図2には、外部妨害場(磁場)20及び信号伝送単相トランス1内で妨害場20によって誘導された妨害電圧21が示されている。
【0035】
装置は、さらに、補助装置2を備えている。補助装置2は、補助コイル32(図2〜4も参照)を備えている。補助コイル32は、例示的に1本のワイヤ、例えば銅線を備え得る。代替的に、アルミニウム線または鋼線であってもよい。
【0036】
従来技術による低減コイル1290とは対照的に、補助コイル32は、比較的薄い導体を備えている。補助コイル32の直径は、好ましくは、ほんの少しだけトランスコイル1280の直径と相違している。補助コイル32及びトランスコイル1280は、好ましくは、同一の又は少なくとも類似のワイヤ厚さを有している。例えば、補助コイル32は、40μm〜150μmの直径を有している。トランスコイル1280及び補助コイル32は、互いに逆に巻かれている。従来技術に由来する低減コイル1290とは対照的に、補助コイル32はさらにその内部で短絡していない。むしろ、補助コイル32の接続は、別個の接点を介して行われている。とりわけ、補助コイル32は、以下で詳細に説明するように、接点と導体接続されている。
【0037】
補助コイル32は、図2、3及び4に示された実施例においては、1つの巻回のみを有している。しかしながら、補助コイル32は、複数の巻回をも有し得る。補助コイル32は、好ましくは1〜30の巻回、例えば5、10、20または25の巻回を有する。補助コイル32の巻数は、トランスコイル1280の巻き数に適合されている。補助コイル32及びトランスコイル1280の巻数の比率は、有利には1:10である。
【0038】
補助コイル32は、トランスコイル1280と直列に接続されている(例えば図2参照)。補助コイル32及び信号伝送単相トランス1は、とりわけ、補助コイル32内で誘導された電圧31がトランスコイル1280と直列に接続されることによって、信号伝送単相トランス1内に結合された妨害電圧21(図2参照)が抑制されるように、接続されている。補助コイル32内で誘導された電圧31は、有利には妨害電圧21と逆向きで等しい。逆向きで等しい電圧31は、好ましくは、妨害電圧21と値が同一である。逆向きで等しい電圧31は、好ましくは、妨害電圧21と比較して180°だけ位相がずれている。
【0039】
補助コイル32内では、したがって、妨害場20によって、妨害電圧21と逆向きで等しい電圧31が誘導される。逆向きで等しい電圧31によって、トランスコイル1280内で誘導される妨害電圧21が低減される。好ましくは、妨害電圧21は、逆向きで等しい電圧31によって完全に消去される。したがって、直列に接続された信号伝送単相トランス1及び補助装置2から成る装置の端子22においては、外部妨害磁場20の存在下においても、ゼロ電圧が存在する。
【0040】
図2に示された実施例において、信号伝送単相トランス1及び補助装置2は、別個の、あるいは、互いに分離して配置された要素である。この目的のために、補助装置2は、コア33、例えばフェライトコアを備えている。補助コイル32は、コア33の周囲に配置されている。その際、補助コイル32の接続は、図2には示されていない回路基板によって行われる。補助コイル32のコア33の周囲における巻回方向は、トランスコイル1280の巻回方向と逆向きである。とりわけ、コア33の周囲における補助コイル32の巻回方向は、トランス主コイルの巻回方向1281と逆向きである(これについては、図3も参照)。
【0041】
図3は、別の実施例による、ボビン12の周囲の補助コイル32の延在を模式的に示している。図2に示された装置の場合のように、補助コイル32はトランスコイル1280と逆向きに延びている(図3におけるトランス主コイルの巻回方向1281を参照)。しかしながら、図2におけるものとは異なり、補助コイル32は、別個のコアの周囲に配置されていない。この実施例において、補助コイルは、トランスコイル1280の周囲を巡って導かれている。信号伝送単相トランス1及び補助装置2は、したがって、装置の共通の要素である。とりわけ、信号伝送単相トランス1及び補助装置2は、ここでは空間的に互いに分離されていない。補助コイル32は、さらに信号伝送単相トランス1の接触素子1240を通り、これらに接続される。
【0042】
補助コイル32は、トランスコイル1280の周囲だけでなく、信号伝送単相トランス1全体の周囲を巡って延びている。補助コイル32は、有利には図1Cと関連付けて説明された低減コイル1290の傍を延びている。補助コイル32は、コア3全体(中央脚10a,10b及び外部脚11a,11b)の周囲に配置されている。補助コイル32は、コア3の下方を通って導かれ、接触素子1240と導電的に接続される。
【0043】
図4は、別の実施例による、信号伝送単相トランス1の周囲の補助コイル32の延在を模式的に示している。補助コイル32は、ここでは、信号伝送単相トランス1の外部脚11a,11bの1つまたは両方の周囲に巻き付けられている。とりわけ、この実施例においては、補助コイル32はトランスコイル1280の周囲を巡って導かれない。補助コイル32は、むしろ、信号伝送単相トランス1の外側領域の周囲のみに巻き付けられている。
【0044】
実施例においては、本発明の限られた数の可能な展開を説明し得たにすぎないが、本発明はこれらに限定されない。別の巻数を適用すること、または、要素を互いにずれた位置に配置することが、原理的に可能である。
【0045】
ここで提示された主題の記載は、少数の特定の実施形態に限定されない。むしろ、それら少数の実施形態の特徴は、技術的に意味のある限り、任意に互いに組み合わせられ得る。
【符号の説明】
【0046】
信号伝送単相トランス/信号伝送単相トランス素子
2 補助装置
3 コア
3a,3b コア半体
10a,10b 中央脚
11a,11b 外部脚
12 ボビン
1210,1220 接触装置
1230,1240 接触素子
1250 中心パイプ
1260,1270 フランジ
1280 トランスコイル
1281 トランス主コイルの巻回方向
1290 短絡コイル/低減コイル
20 妨害場
21 妨害電圧
22 端子
31 電圧/逆電圧
32 補助コイル
33 コア
図1A
図1B
図1C
図1D
図2
図3
図4