(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記標的変異部位が、1つもしくはいくつかのヌクレオチドの置換、1つもしくはいくつかのヌクレオチドの欠失、または1つもしくはいくつかのヌクレオチドの挿入を含む、請求項1に記載の方法。
前記ブロッキングオリゴヌクレオチド配列が、それが競合する前記プライマーオリゴヌクレオチドより高い融解温度(Tm)を有するように設計され、かつ/または高い濃度で添加される、請求項1から7のいずれかに記載の方法。
前記ブロッキングオリゴヌクレオチドが、それが競合する前記プライマーオリゴヌクレオチドの濃度より少なくとも4または5倍高い濃度で添加される、請求項1から8のいずれかに記載の方法。
核酸試料において標的変異を検出および/または決定するための方法であって、請求項1から13のいずれかに記載の増幅方法に、少なくとも1つの標的変異部位において参照DNA配列とは異なる少なくとも1つの標的DNA配列を含むことが疑われる核酸試料を供するステップ、ならびに増幅された前記標的DNA配列の前記標的変異を検出および/または決定するステップを含む、方法。
MALDI−TOF、HR−融解、ジデオキシシークエンシング、単一分子シークエンシング、パイロシークエンシング、第2世代ハイスループットシークエンシング、SSCP、RFLP、dHPLC、デジタルPCR、ARMS−PCRおよび定量的PCRからなる群から選択される方法のうちの1つまたは複数を使用することによって、増幅された前記標的DNA配列の前記標的変異を決定するステップを含む、請求項14に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0020】
定義
本明細書で使用する場合、用語、標的配列を「増幅する」とは、標的配列の量を増加させることを指す。用語「選択的に増幅する」とは、その標的配列のみ(または実質的にそれのみ)が増幅されることを意味する。用語「富化する」とは、より具体的に、試料中の対応する参照配列に対する標的配列の比率を増加させることを意味する。例えば、標的配列対参照配列の比率が、最初に試料中で5パーセント〜95パーセントである場合、この標的配列は、70パーセントの標的配列対30パーセントの参照配列の比率を生じるように、増幅反応において優先的に増幅され得る。従って、参照配列に対する標的配列の14倍の富化があり得る。
【0021】
本明細書で使用する場合、用語「標的配列」とは、検出および増幅される目的の配列を指す。この標的配列は、典型的には、対応する参照配列に対して少なくとも50パーセント相同、好ましくは少なくとも60%相同、なお好ましくは少なくとも70%相同であるが、参照配列とは少なくとも1つのヌクレオチドが異なるべきである。標的配列は、参照配列に対して使用されるのと同じ対のプライマーを用いるPCRを介して増幅可能である。特定の一実施形態では、この標的配列は、対応する参照配列よりも、核酸試料においてあまり普遍的でない。この標的配列は、好ましくは、試料中の参照配列+標的配列の総量の50パーセント未満を構成する。この標的配列は、変異体対立遺伝子であり得る。例えば、試料(例えば、血液試料)は、多数の正常細胞および僅かながん性細胞を含み得る。これらの正常細胞は、非変異体または野生型の対立遺伝子を含むが、少数のがん性細胞は、体細胞変異を含む。この場合、変異体が標的配列であり、野生型配列が参照配列である。
【0022】
本明細書で使用する場合、用語「参照配列」とは、標的配列に対するのと同じプライマー対を用いて増幅され得るが、その増幅が所望されない配列を意味する。かかる配列は、非バリアントまたは野生型の配列を包含する。好ましくは、この「参照配列」は、完全に、または少なくとも部分的に、既知である。特定の一実施形態では、用語「参照配列」とは、対応する標的配列よりも、核酸試料においてより普遍的でない核酸を指す。この参照配列は、好ましくは、試料中の合計参照配列+標的配列の50パーセント超を構成する。好ましくは、この参照配列は、標的配列よりも、10×、15×、20×、25×、30×、35×、40×、45×、50×、60×、70×、80×、90×、100×、150×、200×またはそれ超のRNAおよび/またはDNAレベルで発現される。
【0023】
本明細書で使用する場合、用語「野生型」とは、集団中の特定の遺伝子に関して最も一般的なポリヌクレオチド配列または対立遺伝子を指す。一般に、野生型対立遺伝子は、正常細胞から得られる。
【0024】
本明細書で使用する場合、用語「標的変異」とは、核酸配列中のヌクレオチド変化(即ち、単一のまたは複数のヌクレオチドの置換、欠失または挿入)を指す。変異を有する核酸は、対応する野生型ポリヌクレオチド配列のものとは配列が異なる核酸配列(変異体対立遺伝子)を有する。本発明は、体細胞変異および多型に広く関する。本発明の方法は、1〜10のヌクレオチド位置において変化を含む変異体対立遺伝子を選択的に増幅または富化することにおいて特に有用であるが、より多くの数の配列変化であっても有用である。変異体対立遺伝子は、典型的には、罹患組織または罹患細胞から得られ、疾患状態と関連している。用語「標的変異部位」とは、標的変異を含むまたは標的変異を含むことが疑われるかもしくは標的変異を含む可能性が高いDNA配列の領域を意味する。標的変異自体の性質または正確な場所は未知であり得るが、この標的変異部位は、規定または予め決定される。一般に、これは、標的変異を含む約5〜約30ヌクレオチドの領域である。特定の一実施形態では、この変異は、その正確な位置が既知である単一のヌクレオチド置換であり得、その結果、この標的変異部位は、変異したヌクレオチド自体の位置であり得る。
【0025】
本明細書で使用する場合、用語「融解温度」または「T
m」とは、ポリヌクレオチドがその相補的配列から解離する温度を指す。一般に、このT
mは、二本鎖核酸分子中のワトソン−クリック塩基対の半分が、破壊または解離される(即ち、「融解される」)が、ワトソン−クリック塩基対のもう半分が、二本鎖高次構造においてインタクトなままである温度として定義され得る。言い換えると、このT
mは、2つの相補的配列のヌクレオチドの50パーセントがアニーリングし(二本鎖)、ヌクレオチドの50パーセントが変性している(一本鎖)温度として定義される。従って、T
mは、二本鎖核酸分子から一本鎖核酸分子への移行(または逆に、一本鎖核酸分子から二本鎖核酸分子への移行)における中点を定義する。このT
mは、いくつかの方法によって、例えば、Wetmur、1991年による最近接計算(nearest−neighbor calculation)によって、ならびにOligo(商標)Primer Designを含む市販のプログラム、およびインターネット上で利用可能なプログラムによって、概算され得る。あるいは、このT
mは、実際の実験を介して決定され得る。例えば、二本鎖DNA結合性色素またはインターカレート性色素、例えばエチジウムブロマイドまたはSYBR−green(Molecular Probes)が、核酸の実際のT
mを決定するために、融解曲線アッセイにおいて使用され得る。核酸のT
mを決定するためのさらなる方法は、当該分野で周知である。
【0026】
本明細書で使用する場合、「相同性」とは、2つのポリマー性分子、例えば、2つのポリヌクレオチド間のサブユニット配列類似性を指す。パーセント配列同一性および配列類似性を決定するのに適切なアルゴリズムの例は、BLASTおよびBLAST2.0アルゴリズムであり、これらは、それぞれ、Altschulら、1997年およびAltschulら、1990年中に記載されている。BLAST分析を実施するためのソフトウェアは、National Center for Biotechnology Information(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)を介して公に入手可能である。
【0027】
核酸試料
本明細書で使用する場合、「試料」とは、目的の核酸(標的および/もしくは参照配列)を含むもしくは含むと推測される任意の物質、またはそれ自体、目的の標的核酸を含むもしくは含むと推測される核酸を指す。従って、用語「試料」には、例えば、血漿、血清、脊髄液、リンパ液、滑液、尿、涙液、糞便、皮膚、呼吸器、小腸および泌尿生殖器の外分泌物、唾液、血球、腫瘍、臓器、組織、in vitro細胞培養物構成成分の試料、天然単離体(飲用水、海水、固形材料など)、微生物検体、および核酸トレーサー分子で「マークされた」対象または検体が含まれるがこれらに限定されない、核酸、細胞、生物、組織、体液または物質の試料が含まれる。ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)組織が包含される。
【0028】
この標的(および参照配列)は、ゲノムDNA、相補的DNA(cDNA)、ウイルスDNA、哺乳動物DNA、胎仔DNAまたは細菌DNAを含む種々の供給源から得られ得る。一実施形態では、本発明の方法において利用される核酸試料は、一般に、ゲノムDNA、例えば、標的および参照配列を有するゲノムDNAを含む。ゲノムDNAは、周知の方法に従って、例えば、市販のキット(例えば、FFPEまたは血液からの抽出のための、QiagenによるQIAmp DNA抽出キット)を使用することによって、血液、組織または細胞から単離され得る。別の一実施形態では、この核酸供給源は、RNAであり得、そこから、cDNAが、標準的な方法によって生成される。
【0029】
特定の一実施形態では、本発明の方法の核酸試料は、核酸増幅反応において予め増幅された標的および/または参照配列を含む。当業者は、核酸を増幅するための多くの方法が利用可能であることを理解する。
【0030】
この参照配列は一般に野生型対立遺伝子であり、標的配列は変異体対立遺伝子であるが、逆もまた真であり得る。この変異体対立遺伝子は、任意の1つまたは複数のヌクレオチドの欠失、挿入または変更を含み得る。一部の実施形態では、この変異体対立遺伝子は、体細胞変異である。
【0031】
反応混合物
本発明の方法は、PCR反応の間に増幅産物を形成するように、標的配列および参照配列の対向する鎖にアニーリングする2つのプライマーを使用する。そのアンプリコンサイズは、典型的には、約60〜約500bpの間、好ましくは約80〜約250bpの間である。
【0032】
これらのプライマーオリゴヌクレオチドは、一般に、10〜40ヌクレオチド、好ましくは10〜30ヌクレオチド、なお好ましくは15〜25ヌクレオチドを含む。これらのプライマーオリゴヌクレオチドは、好ましくは、56〜64℃周囲のTmを有する。これらのプライマーオリゴヌクレオチドは、参照配列および標的配列の一部分と100%相補的である。一般に、これらのプライマーは、3’末端または5’末端において改変されない。
【0033】
これらのプライマーオリゴヌクレオチドのうちの1つは、本発明では「競合性」プライマーまたは「競合」プライマーであり、即ち、参照配列または標的配列への結合について、ブロッキングオリゴヌクレオチドと競合することを意図する。従って、競合性プライマーは、少なくとも部分的に、以下に説明するように、ブロッキングオリゴヌクレオチド配列と重複する。
【0034】
本明細書で使用する場合、「ブロッキングオリゴヌクレオチド」は、操作された一本鎖核酸配列である。このブロッキングオリゴヌクレオチドは、一本鎖DNA、RNA、ペプチド核酸またはロックト核酸のうちの1つであり得る。好ましくは、これは、DNAオリゴヌクレオチドである。このブロッキングオリゴヌクレオチドは、一般に、10〜40ヌクレオチド、好ましくは15〜30ヌクレオチドを含む。
【0035】
このブロッキングオリゴヌクレオチドは、ポリメラーゼによって伸長できないように改変される。
【0036】
好ましい一実施形態では、ブロッキングオリゴヌクレオチドの3’末端は、ポリメラーゼによる伸長を阻害するように改変される。
【0037】
かかるブロッキング配列は、任意の公知の方法によって合成され得る。最初に、参照ブロッキング配列が、配列の3’末端の改変を可能にする標準的なオリゴヌクレオチド合成方法を使用する直接的合成によって作製され得る。この3’末端は、ホスフェート基、アミノ基、ジデオキシヌクレオチド、または5’から3’へのポリメラーゼ伸長をブロックする任意の他の部分を含み得る。あるいは、この参照ブロッキング配列は、最終産物として一本鎖DNAを生成するPCR反応の間のポリメラーゼ合成によって作製され得る。
【0038】
ブロッキングオリゴヌクレオチドの3’末端をブロックすることは、当業者に周知のいくつかの方法において達成され得る。例えば、末端デオキシヌクレオチドトランスフェラーゼ(TdT)を用いた反応が、一本鎖参照ブロッキング配列の末端に単一のddNTPを付加するために、溶液中でジデオキシヌクレオチド(ddNTP)の存在下で使用され得る。ddNTPは、ポリメラーゼ伸長をブロックするように機能する。あるいは、ブロッキング配列の3’末端と相補的なオリゴヌクレオチド鋳型が、一過的な二本鎖構造を提供するために使用され得る。次いで、ポリメラーゼが、ハイブリダイズしたオリゴヌクレオチドと対向する参照ブロッキング配列の3’末端において単一のddNTPを挿入するために使用され得る。
【0039】
例えば、ブロッキングオリゴヌクレオチドの3’末端は、C3スペーサー、C6アミンまたはホスフェート基を含み得る。
【0040】
この「C3スペーサー」改変は、オリゴヌクレオチドの3’末端に3炭素スペーサーを付加し、例えば、
【化1】
になる。
【0041】
C6アミン改変は、オリゴヌクレオチドの3’末端においてアミン官能性を取り込む。
【0042】
このブロッキングオリゴヌクレオチドは、プライマーオリゴヌクレオチドのうちの1つと競合するように設計される。
【0043】
従って、ブロッキングオリゴヌクレオチドの配列は、プライマーオリゴヌクレオチドのうちの1つの配列と重複する。この重複(即ち、競合プライマーとブロッキングオリゴヌクレオチドとの間の共通配列)は、ブロッキングオリゴヌクレオチドの少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%もしくは85%を含み得る、またはブロッキングオリゴヌクレオチドの少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%もしくは85%からなり得る。あるいは、この重複は、少なくとも5、6、7、8、9、10、11、12、13もしくは14ヌクレオチドを含み得る、または少なくとも5、6、7、8、9、10、11、12、13もしくは14ヌクレオチドからなり得る。この重複は、標的変異部位を含まない。
【0044】
このブロッキングオリゴヌクレオチド配列は、少なくとも部分的に、それが競合するプライマーオリゴヌクレオチドと重複するが、それが競合するプライマーオリゴヌクレオチドより高い融解温度(Tm)(例えば、約1〜約15℃高い、好ましくは約1〜約10℃高い)を有するように設計され、かつ/または高い濃度で添加される。
【0045】
例えば、このブロッキングオリゴヌクレオチドは、それが競合する前記プライマーオリゴヌクレオチドの濃度より少なくとも2倍、好ましくは少なくとも3倍、少なくとも4倍または少なくとも5倍高い濃度で添加される。
【0046】
このブロッキングオリゴヌクレオチドは、参照DNA配列の一部分と相補的であり、この一部分は、標的変異部位に対応する(非変異または野生型)ヌクレオチド(複数可)を含む。この参照DNA配列の前記一部分は、標的変異部位を除いて、標的DNA配列の対応する一部分と同一である。
【0047】
好ましい一実施形態では、このブロッキングオリゴヌクレオチドは、その配列の中心部分が参照または標的DNA配列の標的変異部位に結合するように設計される。
【0048】
競合性プライマーは、標的変異部位に隣接するいくつかの塩基がブロッキングオリゴヌクレオチドと重複する。
【0049】
本発明によれば、このブロッキングオリゴヌクレオチドはさらに、参照または標的DNA配列上の対応するヌクレオチドと相補的でない少なくとも1つのヌクレオチドを含む。当然、前記ヌクレオチドは、標的変異部位には位置しないことを理解すべきである。
【0050】
参照または標的DNA配列上の対応するヌクレオチドと相補的でないヌクレオチドは、好ましくは、GまたはCヌクレオチドではなく、AまたはTヌクレオチドである。
【0051】
ブロッキングオリゴヌクレオチド中のこのミスマッチ(即ち、参照配列上の対応するヌクレオチド(複数可)と相補的でない前記ヌクレオチド(複数可))は、好ましくは、標的変異部位の上流に位置する。
【0052】
なお好ましくは、このミスマッチは、競合性プライマーと重複するブロッキングオリゴヌクレオチドの部分中に位置し得る。
【0053】
このブロッキングオリゴヌクレオチドの結合は、競合プライマーの結合に対して、参照(または野生型)配列に関して支配的である。従って、参照配列のPCR伸長は生じ得ない。
【0054】
標的DNA配列中の変異の存在下で、変異体またはバリアント配列に対するこのブロッキングオリゴヌクレオチドの親和性は、ミスマッチに起因して顕著に減少され、PCR伸長を可能にする競合プライマーの優先的結合が存在する。従って、プライマー対による標的(変異体またはバリアント)配列の選択的増幅が存在する(
図1を参照のこと)。
【0055】
いずれの機構によっても関連付けられることなく、本発明者らは、かかるミスマッチが、ブロッキングオリゴヌクレオチドの結合を不安定化し、これが、標的配列に対する競合性プライマーの優先的な結合、従って、標的配列のより識別性の高い増幅を生じると考えている。
【0056】
この反応混合物は、典型的には、酵素、塩基(例えば、A、T、G、C)または増幅もしくは検出を実行するのに有用なオリゴヌクレオチドなどのさらなる成分を含む。
【0057】
特に、この反応混合物は、ヌクレオシド三リン酸の重合を触媒する酵素である核酸ポリメラーゼを含み得る。一般に、この酵素は、標的配列にアニーリングしたプライマーの3’末端において合成を開始し、鋳型に沿って5’方向で進行する。公知のDNAポリメラーゼには、例えば、E.coli DNAポリメラーゼI、T7 DNAポリメラーゼ、Thermus thermophilus(Tth)DNAポリメラーゼ、Bacillus stearothermophilus DNAポリメラーゼ、Thermococcus litoralis DNAポリメラーゼ、Thermus aquaticus(Taq)DNAポリメラーゼおよびPyrococcus furiosus(Pfu)DNAポリメラーゼが含まれる。用語「核酸ポリメラーゼ」は、RNAポリメラーゼもまた包含する。核酸鋳型がRNAである場合、「核酸ポリメラーゼ」とは、RNA依存的重合活性、例えば逆転写酵素を指す。
【0058】
例えば、前記反応混合物は、核酸検出色素、例えば蛍光色素(例えば、DAPI、Hoechst Dyes、PicoGreen、RiboGreen、OliGreenおよびシアニン色素、例えばYO−YO、エチジウムブロマイドならびにSybrGreen)をさらに含み得る。
【0059】
好ましい一実施形態では、前記反応混合物は、プローブ、好ましくは標識されたプローブをさらに含み得る。
【0060】
このプローブは、有利には、プライマーまたはブロッキングオリゴヌクレオチドと重複しない。
【0061】
これは、定量的PCR(qPCR)に特に有用である。
【0062】
このプローブは、フォワード(5’)PCRプライマー結合部位とリバース(3’)PCRプライマー結合部位との間に見出される標的DNA上の配列にアニーリングするオリゴヌクレオチドである。プローブのTmは、一般に、プライマーのTmより高い。加水分解プローブ、例えばTaqmanプローブが特に有利である。かかるプローブは、PCRの伸長ステップの間にハイブリダイズした伸長不能なDNAプローブを分解する、Taqポリメラーゼの5’−3’エキソヌクレアーゼ活性に依存する。このプローブは、アンプリコン内の領域にハイブリダイズするように設計され、レポーター色素およびクエンチング色素で二重標識される。このクエンチャーが近位にあると、レポーター色素の蛍光が抑制される。Taqポリメラーゼのエキソヌクレアーゼ活性がプローブを分解すると、レポーターの蛍光は、存在する鋳型の量と比例する比率で増加する。
【0063】
好ましい一実施形態では、このプローブは、5’−レポーター色素(例えば、FAM、6−カルボキシフルオレセイン)と、両方の色素が近位にあるかまたはプローブと結合している限りレポーター色素の発光スペクトルをクエンチする3’−クエンチャー色素(例えば、TAMRA、6−カルボキシテトラメチルローダミン)とで標識され得る。このプローブは、2つのプライマー認識配列間の部位において標的鋳型にアニーリングする二重標識された蛍光発生プローブのポリメラーゼ誘導性の核酸分解的分解を含むプロセスにより、PCRアンプリコンの形成を知らせる。例えば、米国特許第6,387,652号を参照のこと。
【0064】
増幅反応
本発明に従う増幅は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって実施される。
【0065】
その最も単純な形態では、PCRは、対向する鎖にハイブリダイズし、標的DNA中の目的の領域に隣接する2つのオリゴヌクレオチドプライマーを使用する、特異的DNA配列の酵素的合成のためのin vitro方法である。鋳型変性、プライマーアニーリング、およびDNAポリメラーゼによるアニーリングしたプライマーの伸長を含む、反復的な一連の反応ステップは、その末端がプライマーの5’末端によって規定された特異的断片の指数関数的蓄積を生じる。
【0066】
従って、本明細書に記載されるPCRは、2またはそれ超のサイクル、好ましくは10〜50サイクルにわたって、好ましくは反復される。
【0067】
PCRは、鋳型DNA(標的および参照配列)(少なくとも1fg;より有用には、1〜1000ng)および少なくとも7.5pmolのオリゴヌクレオチドプライマーを使用して実施される。典型的な反応混合物は以下を含む:5μlのDNA、7.5pmolのオリゴヌクレオチドプライマー、12.5μlのQuantiTect Probe PCR Kit由来の2×マスターミックスおよび25μlの総容量になるような脱イオン水。PCRは、プログラム可能なサーマルサイクラーを使用して実施される。
【0068】
本発明によれば、これらのプライマーは、約100〜約500nM、好ましくは約300nMの濃度で使用されるが、ブロッキングオリゴヌクレオチドは、約1〜約5μM、好ましくは約2μMの濃度で使用される。
【0069】
PCRサイクルの各ステップの長さおよび温度、ならびにサイクルの数は、実際のストリンジェンシー要求に従って調整される。アニーリングの温度およびタイミングは、プライマーが鋳型にアニーリングすると予測される効率および許容されるミスマッチの程度の両方によって決定される。プライマーアニーリング条件のストリンジェンシーを最適化する能力は、十分に当業者の知識の範囲内である。30℃と72℃との間のアニーリング温度が使用される。鋳型分子の最初の変性は通常、92℃と99℃との間で約15秒間、好ましくは約1または4分間から約10〜15分間で生じ、その後、単純なPCRについては、変性(94〜99℃で15秒間〜1分間)、アニーリング(上で議論したように決定した温度、例えば60℃;15秒間〜2分間)および伸長(72℃で1分間)からなる20〜50サイクル(q−PCRでは、伸長およびアニーリングは、60℃のステップで1分間にわたって同時に生じる)。必要に応じて、最終伸長ステップ(単純なPCRにおいて有用)は、一般に、72℃で約4分間実施され、その後に、4℃での不確定の(0〜24時間)ステップが続き得る。
【0070】
本発明の増幅または富化の手順は、サーモサイクラーなどPCRデバイスにおいて、またはより好ましくはリアルタイムPCRデバイスにおいてリアルタイム反応条件下で、実施される。リアルタイム反応条件は、さらに、生成された場合にPCR産物を測定/検出するために、核酸検出剤(例えば、色素またはプローブ)を利用する。
【0071】
この方法のステップは、一般に、標的配列および参照配列の十分な増幅を得るために、複数サイクル反復される。一実施形態では、この方法のステップは、5〜40サイクル、より好ましくは10〜40サイクル反復される。サイクルの最適な数は、当業者によって決定され得る。好ましくは、本発明の方法は、PCRデバイスにおいて、より好ましくは、Rotor−Gene Q 5plex HRM機械などのリアルタイム検出PCRデバイスにおいてリアルタイム反応条件下で、実施される。この実施形態では、この反応混合物は、反応の増幅産物を定量および/またはモニタリングするための核酸検出剤を含み得る。
【0072】
分析
標的配列の増幅の後には、例えば、標的配列の変異(複数可)を正確に決定するための方法による、増幅された配列の分析が続き得る。
【0073】
標的配列の増幅または富化が完了すると、試料は、さらに処理され得る、例えば、シークエンシング反応に供され得る。
【0074】
増幅された対立遺伝子は、以下を含む、当該分野で公知の種々の手順によってさらに処理され得る:MALDI−TOF、HR−融解、ジデオキシシークエンシング、単一分子シークエンシング、第2世代ハイスループットシークエンシング、パイロシークエンシング、RFLP、デジタルPCR、ARMS−PCRおよび定量的PCR。
【0075】
かかる分析方法により、増幅された標的配列の変異(複数可)の型を同定することが可能になる。
【0076】
以下の実施例は、その範囲を限定することなく、本発明を例示する。
【実施例】
【0077】
IDH1遺伝子中の変異の検出
本明細書に記載される発明は、選択された領域中にヌクレオチドバリエーションを含むDNAまたはcDNA標的配列の選択的増幅のためのPCRベースの方法である。反応混合物は、2つのジェネリックPCRプライマー(「競合PCRプライマー」および「第2のPCRプライマー」)ならびに特異的ブロッキングオリゴヌクレオチド(「オリゴブロック」)を含む。
【0078】
本発明は、IDH1遺伝子中の変異の検出によって例示される。
【0079】
コドン132におけるIDH1変異が、グリオーマおよび血液学的悪性疾患において見出されている。変異体配列と野生型配列とは、1ヌクレオチドのみの置換が異なるので(
図2を参照のこと)、野生型配列と変異配列との間の選択的識別を可能にする特異的PCR方法が必要とされる。
【0080】
材料
本発明に従うオリゴブロック(ヌクレオチドミスマッチを有する)についての異なる設計を試験し(RVS_R132Blc_d5〜RVS_R132Blc_d8、表1)、ミスマッチなしの対応するオリゴブロック(RVS_R132Blc_d1〜RVS_R132Blc_d4、表1)と比較した。全てのオリゴブロックは、3’ホスフェート改変を含んだ。
【0081】
【表1】
【0082】
競合PCRプライマー、第2のPCRプライマーおよびプローブの配列は、以下の表に示される。このプローブを、その5’末端において蛍光色素(FAM)で、その3’末端においてクエンチャー色素(TAMRA)で標識した。これらのプライマーおよびプローブを、いくつかのプライマーおよびプローブ設計から予め選択した。
【0083】
【表2-1】
【表2-2】
【0084】
PCRプライマー、オリゴブロックおよびプローブの濃度を以下に列挙する:
【化2】
【0085】
Quantitect Probe PCR Kit(QIAGEN、Ref:204345)を増幅に使用し、qPCR反応を、以下のqPCRプログラムを使用して、Rotor−Gene Q 5plex HRM機械(QIAGEN)で実施した:
【表3】
【0086】
試験した各オリゴブロックについて、オリゴブロックを、競合PCRプライマー、第2のPCRプライマーおよびプローブと混合した。これら全てのミックスを、IDH1 R132H変異またはIDH1 R132C変異を含むプラスミドの非存在下または存在下で、ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)組織から抽出したゲノムDNA(gDNA)を含む試料(IDH1 WT)に対して試験した。3つの試料を試験した:100%WT試料(いずれのIDH1変異についても陰性)、10%の変異レベルを有するIDH1 R132H試料、および30%の変異レベルを有するIDH1 R132C試料。qPCR反応当たりのゲノムDNA(gDNA)インプットは、25μlの最終PCR容量につき25ngであった。
【0087】
結果
1.ミスマッチなしのオリゴブロックと比較した、本発明に従うオリゴブロックを使用して得られた性能
以下の表は、ミスマッチなしのオリゴブロックと比較した、本発明に従うオリゴブロックで得られた結果を示す。
【表4】
【0088】
最良の結果は、WT試料についての最も高いCtと変異体試料についての最も低いCtとの組合せにおいて得られる。表4で見られるように、オリゴブロックにおけるヌクレオチドミスマッチの追加により、ミスマッチなしの対応するオリゴブロックと比較して、変異体試料についてのより低いCt値を得ることが可能である。例えば、本発明のd7オリゴブロックを用いてIDH1 R132C変異体について得られたCtは、d3オリゴブロックを用いた場合の40.73に対して、28.74であった。従って、オリゴブロックにおけるヌクレオチドミスマッチの追加は、WT試料と変異体試料との間のより良い識別を可能にする。
【0089】
2.本発明に従うオリゴブロックを使用した感度試験結果
次に、検出限界(LoD;NCCLSガイドラインCLSI EP17−A2)決定試験を、d7オリゴブロックを使用して実施した。
【0090】
20%、15%、10%、5%および2%の変異体レベルを有する6つのIDH1変異の連続希釈物が、以前に記載されたPCRクランピング系を用いて試験されている。
【0091】
この分析方法は、オリゴブロックを含む反応ミックスで得られたCt(Ct
変異体;変異体配列のみが増幅される)とオリゴブロックを含まない同じ反応ミックスで得られたCt試料(Ct
合計;変異体配列およびWT配列が一緒に増幅される)との間のΔCt比較に基づく。
ΔCt=Ct
変異体−Ct
合計
【0092】
ΔCtデータは、6つのIDH1変異の各々および5つの変異レベルの各々について生成されており(表5)、LoDを、CLSI/NCCLS EP17−Aガイドラインに記載されるような「精度プロファイル(precision profile)アプローチ」に基づいて決定した。表5に示すように、2.23%の低い変異レベル(変異の型に依存する)が、本発明に従うPCR方法を使用して検出され得る。
【表5】
【0093】
3.ペプチド核酸(PNA)オリゴと比較した、本発明に従うオリゴブロックを使用して得られた性能
バリアント配列を検出するためにPCRクランプを実施するための最も一般的な方法は、PNA(ペプチド核酸)オリゴを使用する。PNAオリゴは、3’改変オリゴブロックと同じ機能を有するが、より高いDNA親和性に起因して、これらは通常、WT配列とバリアント配列との間の検出のより良い識別を可能にする。
【0094】
4つのPNAオリゴが設計されている(表6を参照のこと)。これらを、以前に記載されたように、競合PCRプライマー、第2のPCRプライマーおよびプローブと混合した。試験した試料は、WT試料、ならびにR132HおよびR132C変異試料であった。
【表6】
【0095】
以下の表は、同じ試料に対する、4つのPNAオリゴを用いて得られた結果およびd7オリゴブロックを用いて得られた結果を示す。
【表7】
【0096】
最良の結果は、WT試料についての最も高いCtを変異体試料についての最も低いCtと関連させた組合せにおいて得られる。表7で見られるように、PNAオリゴの中で、d3 PNAオリゴは、WT配列とバリアント配列との間の最良の識別を可能にする、最良の性能を示すものであり、d7オリゴブロックは、d3 PNAオリゴの性能と匹敵する性能を示す(以下の表8を参照のこと)。
【表8】
【化3】