(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の一実施の形態を図面に基づいて説明する。なお、以下に説明する部材,配置等は本発明を限定するものでなく、本発明の趣旨の範囲内で種々改変することができる。
【0026】
<<第1の実施形態>>
(第1の実施形態に係るアームレスト装置の全体構成、及び機能について)
まず、第1の実施形態に係るアームレスト装置2の全体構成、及び機能について
図1及び
図2を参照して説明する。
ここで、
図1は、ドアトリム基材1aに取り付けたられた状態における本発明の第1の実施形態に係るアームレスト装置2の全体構成を示す図、
図2Aは、アームレスト2aの高さが変化している状態を示す模式図、
図2Bは、アームレスト2aのシート幅方向の位置が変化している状態を示す模式図である。
【0027】
なお、
図2A及び
図2BにおけるTの矢視方向は、上下方向のうち上側である。
図2AにおけるFの矢視方向は、車両前後方向のうち前側であり、
図2BにおけるWの矢視方向は、シート幅方向のうちシートの中心側である。また、車両前後方向とは、車両の進行、後退方向であり、シート幅方向とは、車両幅方向と概ね一致し、車両前後方向に垂直な方向である。
【0028】
車両用内装材としてのドアトリム1は、
図1に示すように、自動車ドアの内側を内装する部材であり、ドアトリム基材1aとアームレスト装置2とを備えて構成されている。
ドアトリム基材1aは、ポリプロピレン(PP)等の硬質の合成樹脂から形成されている。
アームレスト装置2は、詳細については
図3を参照して後述するが、アームレスト2aと、アームレスト2aの位置を変更する変更機構7と、体格情報検出センサ4と、変更機構7を制御する制御部Cと、から構成される。アームレスト2aは、ドアトリム基材1aに配設され、車室側に張り出し、車体前後方向に長尺な形状を有する。
【0029】
アームレスト装置2の特徴的な機能は、
図2A及び
図2Bに示すように、乗員が腕を置きやすくすることで疲労を低減するために、乗員の体格に応じてアームレスト2aの位置又は形状を変更するというものである。ここで、乗員とは、車両の乗員を意味し、アームレスト2a近傍の車両用のシートSに着座した者をいう。
【0030】
(第1の実施形態に係るアームレスト装置の構成について)
上記機能を実現するためのアームレスト装置2の構成について、
図3を参照して説明する。
図3は、アームレスト2aを制御する制御部Cのブロック図である。
【0031】
アームレスト装置2は、乗員の体格に応じた適切な位置又は形状にアームレスト2aを変更する機能を有するが、この機能を実現するための乗員の体格に関する情報(以下、体格情報という。)を検出する体格情報検出センサ4を備える。詳細については後述するが、体格情報検出センサ4は、スライド位置検出センサ4a、シートウェイトセンサ4b、シートベルトセンサ4c又はカメラ4dの少なくとも一つによって構成されるものである。
【0032】
判定部としてのCPU3aは、体格情報検出センサ4から検出されてRAM3cに格納される乗員の体格情報に基づいて、乗員の体格を判定し、ROM3bに格納されたプログラムに従い、駆動回路30を介してコンプレッサ7aを制御する。
CPU3aの制御によってアームレスト2aの位置又は形状を変更するものとして、詳細については後述するが、コンプレッサ7aによって生成される圧縮空気が用いられる。
上記の構成によって、乗員の体格情報に合わせて、アームレスト2aの位置又は形状が自動で変更することとなる。
【0033】
さらに、アームレスト装置2は、コンプレッサ7aからアームレスト2aへの圧縮空気の供給を調整可能なマニュアルスイッチ5bと、上記のアームレスト2aの位置又は形状の自動的な変更を無効にして、マニュアルスイッチ5bを操作可能な状態に切り換える切換スイッチ5aとを備える。
乗員は、自動で変更されたアームレスト2aの位置又は形状を手動で変更する場合、又は上記の自動的な変更を無効とする場合には、マニュアルスイッチ5bに切り換える切換スイッチ5aを押すようにすればよい。このようにすることで、個人の好みに合わせて、アームレスト2aの位置又は形状を調整することができる。
さらに、アームレスト装置2は、シートバックS2に所定距離近づいた場合に制御信号をCPU3aに送信する後述する近接センサ6を備える。
【0034】
(アームレスト装置による乗員の体格情報検出について)
次に、アームレスト装置2による乗員の体格情報を検出する体格情報検出センサ4としてのスライド位置検出センサ4a、シートウェイトセンサ4b、シートベルトセンサ4c又はカメラ4dについて、
図4〜
図6を参照して詳細に説明する。
ここで、
図4は、アッパーレール8bに固定プレート9を介して取り付けられたスライド位置検出センサ4aを示す模式図、
図5は、アッパーレール8bに取り付けられたシートウェイトセンサ4bを備えるクッションフレームS1aを示す斜視図、
図6は、シートベルトセンサ4c及びカメラ4dを示す模式図である。
【0035】
(スライド位置検出センサによる体格情報の取得)
図4に示す、スライド位置検出センサ4aは、シートSのスライド位置を検出するセンサである。本実施形態におけるスライド位置検出センサ4aは、公知のリニアエンコーダであり、固定プレート9に固定されている。
具体的には、固定プレート9は、ロアレール8aの上方に位置するアッパーレール8bの上部に取り付けられており、ロアレール8aの側方に延在している。スライド位置検出センサ4aは、ロアレール8aの側面と、固定プレート9の間に配設されて、固定プレート9におけるロアレール8a側の側面に上下に2個固定されている。なお、ロアレール8aとアッパーレール8bとによってスライドレール8が構成されている。
【0036】
上記構成を備えるスライド位置検出センサ4aによって、体格情報としてのシートSの前後方向のスライド位置を特定する情報が取得されることとなる。そして、このように取得されてRAM3cに格納されたスライド位置情報から、CPU3aは、ROM3bに記憶されたプログラムに基づいて、シートSの位置を特定する。
【0037】
CPU3aは、例えば予め定められた基準位置よりもシートS(アッパーレール8b)が前方にあることを特定することによって、定められた基準の体格よりも小柄な乗員であると判定した場合には、アームレスト2aが標準位置よりも前方、シート幅方向におけるシートの内側に若しくは下方又はこれらの複数の方向に移動/変形するように制御する。なお、本実施形態に係る標準位置とは、アームレスト2aの前後方向の移動限界の中間部分にある任意の位置とする。
一方、CPU3aは、例えばシートSが後方にあることを特定することによって、定められた基準の体格よりも大柄な乗員であると判定した場合には、アームレスト2aが標準位置よりも後方、シート幅方向におけるシートの外側に若しくは上方又はこれらの複数の方向に移動/変形するように制御する。
なお、アームレスト2aの移動/変形方法の詳細については後述する。
【0038】
(シートウェイトセンサによる体格情報の取得)
図5に示す、シートウェイトセンサ4bは、ストレインゲージを備え、乗員の荷重を電気信号として検出するセンサである。シートウェイトセンサ4bは、クッションフレームS1aを構成するシート両側にあるサイドフレームS1bの下面と、アッパーレール8bの上面との間に、前後左右に4箇所配設されている。
上記構成を備えるシートウェイトセンサ4bによって、体格情報としての乗員の荷重に係る情報が取得される。
【0039】
CPU3aは、ROM3bに記憶されたプログラムに基づいて、シートウェイトセンサ4bによって得られた荷重に係る情報が予め定められた基準値以下であり、小柄な乗員であると判定した場合には、アームレスト2aが標準位置よりも前方、シート幅方向におけるシートの内側に若しくは下方又はこれらの複数の方向に移動/変形するように制御する。
一方、CPU3aは、シートウェイトセンサ4bによって得られた荷重に係る情報が予め定められた基準値よりも大きく、大柄な乗員であると判定した場合には、アームレスト2aが標準位置よりも後方、シート幅方向におけるシートの外側に若しくは上方又はこれらの複数の方向に移動/変形するように制御する。
【0040】
(シートベルトセンサによる体格情報の取得)
図6に示す、シートベルトセンサ4cは、シートベルト40の引き出し量を検出するものである。本実施形態のおけるシートベルトセンサ4cは、公知のロータリエンコーダであり、不図示のシートベルト巻取装置内にある不図示のリールシャフトに組み込まれている。シートベルト40は、乗員の胸部から腰部にかけて掛け渡されるため、乗員の体格によってその引き出される量が異なる。このことから、シートベルト40の引き出し量を検出できるシートベルトセンサ4cを、乗員の体格の特定する検出器として用いることが可能である。
【0041】
なお、乗員の使用に最も好適なアームレスト2aの位置・形状を考慮した場合に、大きく関与するのは身長の大小の体格情報である。そして、この体格情報が最も直接的に得られる検出器は、カメラ4dであり、次に直接的に得られる検出器は、スライド位置検出センサ4aである。よってこれらを検出器として用い、これらの検出器から得られた情報を基に、アームレスト2aを乗員の体格に適した位置又は形状に変更すると好適である。
【0042】
一方、シートウェイトセンサ4bから得られる体格情報は、直接的には着座者の体重の大小の情報であり、シートベルトセンサ4cについても着座者の胸囲及び腹囲の大小が関与することが多く、アームレスト2aの位置に関与しやすい身長の大小の判定としては、信頼性は低い。
但し、例えば、スライド位置検出センサ4a又はカメラ4dが車内に設けられていないが、シートウェイトセンサ4b及びシートベルトセンサ4cは既存の装備としてシートに設けられている場合には、シートウェイトセンサ4b又はシートベルトセンサ4cを用いるようにしてコストを抑えることができる。
【0043】
(アームレストの具体的な構成について)
まず、上記体格情報に基づいてアームレスト2aの一部の位置を変更するための変更機構7について説明する前に、アームレスト2aの具体的な構成について
図1、
図7A及び
図7Bを参照して説明する。
ここで、
図7Aは、エアー袋7cが収縮した状態時におけるアームレスト装置2を示す、
図1のA−A断面矢視図、
図7Bは、エアー袋7cが膨張した状態時におけるアームレスト装置2を示す、
図1のA−A断面矢視図である。
【0044】
アームレスト装置2のアームレスト2aは、
図1、
図7A及び
図7Bに示すように、下側支持部2cと、下側支持部2c上に配設され、前側にある前側部2b、及び後ろ側にある後側部2dと、後側部2dに対して移動可能である可動部2eと、から主に構成されている。
【0045】
下側支持部2cは、具体的には、ドアトリム基材1aに対して一体的に形成され車両内側に突出して車両の前後方向に延出している。下側支持部2cは、下側支持部2cの上面に配設された可動部2eを摺動可能に下方から支持している。
【0046】
前側部2bは、その下面が下側支持部2cの上面と一致する位置でドアトリム基材1aに固定されており、図示せぬパワーウィンドウを開閉するための図示せぬスイッチ等が上面に配設されている。
【0047】
後側部2dは、ドアトリム基材1aから車両幅方向における車両の内側に水平に突出して、前後方向に延在する板状の部材である。後側部2dは、後側部2dの上面が前側部2bの上面と面一となる位置に配設されている。
【0048】
可動部2eは、断面コの字状に形成されて車両前後方向に延出している。可動部2eは、可動部2eにおける水平に延在する下部が下側支持部2cの上面を摺動し、可動部2eにおける水平に延在する上部が後側部2dの上面に摺動する位置に配設されている。
【0049】
前側部2bと後側部2d及び可動部2eとの間には隙間があり、その隙間にドアトリム1を把持するためのプルポケット2fが形成されている。
また、
図7A及び
図7Bに示すように、後側部2dの車両幅方向における車両の内側の端部と、この端部に対向する可動部2eにおける部位とには、次に説明する変更機構7の動作に関わる1本の引張ばね20fが固定されている。
【0050】
(アームレスト装置の変更機構について)
次に、アームレスト装置2の変更機構7について、
図7A及び
図7Bを参照して具体的に説明する。
変更機構7は、圧縮空気を生成するコンプレッサ7aと、コンプレッサ7aからエアー袋7cに送り出される空気量を調整する三方弁型のバルブ7bと、コンプレッサ7aより生成された圧縮空気がバルブ7bを介して流入・流出することによって、膨張・収縮するエアー袋7cとから構成される。変更機構7は、制御部Cによるコンプレッサ7a及びバルブ7bの動作制御によって制御される。
【0051】
変更機構7によるアームレスト2aの具体的な動作について、次に説明する。
制御部Cは、例えばエンジンの始動を契機に、コンプレッサ7aに制御信号を送信し、コンプレッサ7aを動作させ、所定の量(圧力)の圧縮空気を生成させる。次に、制御部Cは、体格情報検出センサ4によって着座者の体格情報を取得する。
【0052】
制御部Cは、
図7Aに示す状態(換言すると、ドアトリム基材1aから可動部2eが突出していない状態。)にある場合に、体格情報検出センサ4によって取得された情報により着座者が小柄な乗員であると判定したときには、可動部2eを車両の幅方向における車両の内側に移動させる。つまり、乗員が小柄であるときは乗員とアームレスト2aの距離が離れるため、アームレスト2a(可動部2e)を車両幅方向における車両の内側に突出した状態にすることで、乗員がアームレスト2aを利用しやすくできる。
【0053】
詳細には、制御部Cは、コンプレッサ7aとエアー袋7cとを連通させる制御信号を閉塞状態にあるバルブ7bに送信してバルブ7bを開通状態とし、エアー袋7c内に圧縮空気を送る。
圧縮空気が導入されて内圧が高まりエアー袋7cが膨張することで、エアー袋7cが可動部2eの車両幅方向における車両の外側の面に当接して、可動部2eを車両の幅方向における車両の内側に押し込むこととなる。この押込荷重が加えられた可動部2eは、下側支持部2cの上面、及び前側部2bの上面を滑るようにして、
図7Bに示す車両の幅方向における車両の内側に移動することとなる。
【0054】
一方、制御部Cは、
図7Bに示す状態(換言すると、ドアトリム1から可動部2eが突出している状態。)にある場合に、体格情報検出センサ4によって取得された情報により着座者が大柄な乗員であると判定したときには、可動部2eを車両の幅方向における車両の外側に移動させる。
【0055】
詳細には、制御部Cは、エアー袋7cと外気とを連通させる制御信号をバルブ7bに送信して、エアー袋7cの内部から圧縮空気を排出する。そうすると、圧縮空気が排出されて内圧が低められたエアー袋7cからの可動部2eへの押圧力は弱まる。この押圧力が、弾性変形した状態の引張ばね20fの復元力よりも小さくなることで、可動部2eが車両の幅方向における車両の外側に引っ込むこととなる。これによって、可動部2eが、下側支持部2cの上面、及び前側部2bの上面を滑るようにして、車両の幅方向における車両の外側に移動することとなり、
図7Aに示すドアトリム1から可動部2eが突出していない状態に戻ることとなる。
【0056】
上記のようにして、着座者の体格情報を取得することにより、自動的に着座者の体格(具体的には腕)に合った位置にアームレスト2aの可動部2eの位置を変更することができる。特に、変更機構7は、エアー袋7cの内表面に取り付けられた図示せぬ圧力センサを備えるようにし、この圧力センサから制御部Cに伝送される圧力信号からエアー袋7cの膨張度合いを検出するようにしてもよい。
なお、自動的に調整された可動部2eの位置が合わない場合には、その位置を修正できるようにすると好適である。
例えば、
図7Bに示すように、可動部2eについてのドアトリム1から車両幅方向における車両の内側に突出した位置は、小柄な着座者であっても、例えば痩せているが体格の大きい人である場合等、着座者が腕を置くのに適当な位置ではない場合がある。この場合には着座者の操作により、図示せぬスイッチを操作することにより、制御部Cに直接、可動部2eを車両の幅方向における車両の外側に移動させる信号を送信するようにしてもよい。
【0057】
なお、可動部2eよりも車両幅方向における車両の外側にある後側部2dの上方に覆い被さるように可動部2eが配置されており、両者の段差は、車両幅方向における車両の外側にあるドアトリム基材1aの近傍にある。
このため、乗員は、ドアトリム基材1aから離間する位置に突出する可動部2eに腕をのせるため、可動部2eと後側部2dの段差に触れにくく、段差に触れることによる違和感に伴う不快感を乗員に生じさせることを防ぐことができる。
【0058】
<第1の変形例>
次に、第1の変形例に係るアームレスト装置20について、
図8及び
図9A〜
図9Cを参照して説明する。
ここで、
図8は、ガイド溝20c及びフリーボールベアリング20bを備えるアームレスト装置20を示す
図9CのB−B断面矢視図、
図9Aは、アームレスト20aの動作前の状態を示す図、
図9Bは、アームレスト20aが車両幅方向における車両の中央側に動作した状態を示す図、
図9Cは、アームレスト20aが車両幅方向における車両の中央側及び標準位置よりも前方側に動作した状態を示す図である。
なお、以下の説明においては、重複する構成部分については同一符号を付し、重複する構成部分及びその機能の説明を省略し、異なる構成部分及びその機能の特徴を明確にする。
【0059】
アームレスト装置20は、アームレスト20aと、アームレスト20aの位置を変更する変更機構70と、前述した体格情報検出センサ4と、変更機構70を制御する制御部Cと、から構成される。アームレスト20aは、ドアトリム基材1aに配設され、車室側に張り出し、車体前後方向に長尺に延在する形状を有する。
【0060】
アームレスト20aは、下側支持部2cと、下側支持部2c上に配設され、前側にある前側部2b、及び後ろ側にある後側部20dと、後側部2dに対して移動可能である可動部20eと、から主に構成されている。
【0061】
ここで、アームレスト装置20において、第1の実施形態に係るアームレスト装置2との構成の違いは、後側部20d及び可動部20eの形状の一部が異なることにあり、これについて次に説明する。
【0062】
後側部20dは、ドアトリム基材1aから水平に延出するように突出する板状の部材であり、その上面には、後述する可動部20eの移動をガイドするガイド溝20cが形成されている。
このガイド溝20cは、車両幅方向における車両の外側から内側に直線的に延出し、車両前方に向かうように円弧状に曲がって延出し、車両前方に直線的に延出するように2本形成されている。この2本のガイド溝20cは、相似形を成し、所定間隔でオフセットされて形成され、大きい方のガイド溝20cが車内側に配置されている。
具体的には、2本のガイド溝20cの車両前方への延出方向は、エアー袋7cから可動部20eへの押圧方向に対して垂直な方向から、前方にかけて車両幅方向における車両の内側に傾いている。このように、エアー袋7cからの押圧方向に対してガイド溝20cが傾斜していることで、エアー袋7cの押圧力を調整することで、ガイド溝20cに沿って動作する可動部20eの車両幅方向への動作量を調整することができる。
【0063】
可動部20eは、断面コの字状に形成されて車両前後方向に延出している。可動部20eは、可動部20eにおける水平に延在する下部が下側支持部2cの上面に摺動し、可動部20eにおける水平に延在する上部が後側部20dの上面に摺動する位置に配設されている。
特に、可動部20eにおける水平に延在する上部における下面には、フリーボールベアリング(ボールトランスファ)20bが2個固定されている。2個のフリーボールベアリング20bは、下側にボールが位置する向きで、2本のガイド溝20cの間隔と略同一の間隔で可動部20eに固定されている。
また、後側部20dの車両幅方向における車両の内側の端部と、この端部に対向する可動部20eにおける部位とに、次に説明する変更機構70の動作に関わる1本の引張ばね20fが固定されている。
【0064】
上記のように、後側部20dにガイド溝20cが形成されており、可動部20eにフリーボールベアリング20bが固定されていることで、ガイド溝20c内においてフリーボールベアリング20bを転動させることができる。このようにして、可動部20eを所望の移動方向に動作させることができる。
【0065】
(第1の変形例に係る変更機構について)
アームレスト装置20の変更機構70が上記実施形態に係る変更機構7と異なる点は、後側部20dにガイド溝20cが形成され、可動部20eにガイド溝20cに沿って転動するフリーボールベアリング20bが形成されていることにある。
このような構成を変更機構70が備えることにより、例えば、着座者が小柄であると制御部Cが判定したときには、可動部20eをガイド溝20cに沿って車両幅方向における車両の内側及び車両の前側に移動させることができる。
【0066】
詳細には、制御部Cは、コンプレッサ7aを動作させてバルブ7bの開度を調整してコンプレッサ7aとエアー袋7cを連通させることでエアー袋7cを膨張させる。そして、膨張したエアー袋7cが可動部20eを押圧することで、押圧された可動部20eは、ガイド溝20cに沿って移動するフリーボールベアリング20bと共に、
図9Cに示す車両幅方向における車両の内側及び車両の前側に移動することとなる。
【0067】
可動部20eは、先に車両幅方向における車両の内側に移動し、その後、車両前方向に移動するように、ガイド溝20cによってガイドされる。このため、可動部20eは、プルポケット2fを塞ぐことなく、また、前側部2b上面に設けられた図示せぬスイッチを覆わずに移動することとなる。
【0068】
一方で、
図9Cに示す状態から、可動部20eを、車両の後ろ側及び車両の幅方向における車両の外側に移動させる場合には、制御部Cは、コンプレッサ7aとエアー袋7cと外気とを連通させる制御信号をバルブ7bに送信して、エアー袋7cの内部から圧縮空気を排出する。上記の実施例の形態と同様に、弾性変形した状態の引張ばね20fの復元力により、可動部20eが車両の後ろ側に移動した後、車両幅方向における車両の外側に引っ込むこととなる。
そして、変形例においては、可動部20eが、ガイド溝20cに沿って下側支持部2cの上面、及び前側部2bの上面を滑るようにして、車両の幅方向における車両の外側に移動することとなり、
図9Aに示す可動部20eが突出していない状態に戻ることとなる。
このようにして、アームレスト20aは、可動部20eが車両幅方向に移動することによって、その位置が変わることとなる。
【0069】
このようなアームレスト20aを変形する制御を、体格情報に対応付けるようにすることで、体格の異なる乗員の各人にとってアームレスト20aの利便性の高めることができる。
つまり、乗員が小柄であるときは、ハンドルの操作のためにシートSを車両前側に出すことが多く、アームレスト20aの位置が実際の腕の位置よりも後方になってしまうことが多い。また、乗員とアームレスト20aの距離が離れるため、アームレスト20aを車両幅方向における車両の内側に突出した状態にすることが好ましい。
【0070】
本実施形態に係るアームレスト装置2,20において、体格情報検出センサ4によって、乗員が小柄であることを示す情報を検出した場合に、制御部Cが、上記のようにバルブ7bの開通の向き及びコンプレッサ7aの圧力を制御して、圧縮空気をエアー袋7cに送ってエアー袋7cを膨張させることで、アームレスト20aを車両幅方向における車両の内側、車両前側に移動させることができる。
さらに、各乗員の体格の違いに応じて、コンプレッサ7a及びエアー袋7cに繋がる流路にあるバルブ7bを制御して、エアー袋7c内の圧力を調整することにより、車両幅方向における車両の内側への突出量を調整することができる。
なお、図示せぬ車両のドアミラーやルームミラーの角度を検出する図示せぬセンサを備え、このセンサから得られた信号から制御部Cが車両の前後方向の位置を特定して、乗員の体格を特定するようにしてもよい。
【0071】
<第2の変形例>
次に、第2の変形例に係るアームレスト装置21について、
図10A、
図10B及び
図11を参照して説明する。
なお、
図10Aは、複数のエアー袋を備える第2の変形例に係るアームレスト装置21を示す図、
図10Bは、
図10AのC−C断面矢視図であり、複数のエアー袋を備えるアームレスト装置21の構成を示す図、
図11は、第2の変形例に係る変更機構71を模式的に示す構成図である。
【0072】
アームレスト装置21は、アームレスト21aと、アームレスト21aの位置を変更する変更機構71と、前述した体格情報検出センサ4と、変更機構71を制御する制御部Cと、から構成される。ここで、アームレスト装置21において、第1の実施形態に係るアームレスト装置2との構成の違いは、後側部21bの構成が異なることと可動部2eを有しないことにあり、これついて次に説明する。
【0073】
後側部21bは、アームレスト21aにおける変形する部分であり、エアー袋群21cとエアー袋群21cを覆う表皮材21hとから構成されており、下側支持部2c上にあり、前側部2bの後方に配設されている。
エアー袋群21cは、具体的には、ドアトリム基材1a近傍にある外側エアー袋21dと、外側エアー袋21dの車両幅方向における車両の内側にある内側エアー袋21eと、内側エアー袋21eの下側にある下側エアー袋21fと、これらの後方に配設された後側エアー袋21gとから構成されている。
【0074】
(第2の変形例に係る変更機構について)
アームレスト装置21の変更機構71は、圧縮空気を生成するコンプレッサ7aと、コンプレッサ7aからエアー袋群21cに送り出される空気量を調整するバルブ群71bと、コンプレッサ7aより生成された圧縮空気がバルブ群71bを介して流入・流出することによって、膨張・収縮するエアー袋群21cとから構成される。
ここで、バルブ群71bは、
図11に示すように、コンプレッサ7aからエアー袋群21cとに繋がる流路に配設されており、三方弁型のバルブ71d,71e,71f,71gから構成されるものである。具体的には、バルブ群は、外側エアー袋21dに繋がる流路に配設され、バルブ71eは、内側エアー袋21eに繋がる流路に配設され、バルブ71fは、下側エアー袋21fに繋がる流路に配設され、バルブ71gは、後側エアー袋21gに繋がる流路に配設されている。
変更機構71は、制御部Cによるコンプレッサ7a及びバルブ群71bの動作制御によって制御される。
【0075】
変更機構71によるアームレスト21aの具体的な動作について、小柄な乗員と大柄な乗員とが着座した場合で場合分けして、次に説明する。
(a)小柄な乗員が着座した場合
体格情報検出センサ4によって得られた情報が、小柄な乗員がシートSに着座したことを示す情報である場合には、制御部Cは、
図10に示す変更機構71の後側部21bを、車両の幅方向における車両の内側に突出させるように変形させる。
具体的には、制御部Cは、エアー袋群21cが膨張状態にあるときには、その状態を維持し、エアー袋群21cが収縮状態にあるときには、膨張状態に変形させる。
つまり、制御部Cは、エアー袋群21cが収縮状態にあるときには、制御信号を閉塞状態にあるバルブ群71bに送信してバルブ群71bの開き方向を変更してコンプレッサ7aとエアー袋群21cとを連通状態とし、エアー袋群21c内に圧縮空気を送る。圧縮空気が導入されて内圧が高まりエアー袋群21cが膨張し、アームレスト21aの後側部21bが車両幅方向における車両の中央側に張り出すこととなる。制御部Cは、エアー袋群21c内に封入した圧縮空気が所定の圧力になると、バルブ群71bを閉塞させて、その状態を保つように制御する。
また、制御部Cは、エアー袋群21cが膨張状態にあるときには、バルブ群71bに制御信号を送信せずに、その状態を維持する。
【0076】
このようにして、アームレスト21aは、ドアトリム基材1aから張り出し量が大きい形状に変化し、体の幅の小さな乗員が腕を置くのに適した形状となる。
また、例えばカメラ4dにより乗員の背が低いという情報が得られた場合には、制御部Cがエアー袋群21cのうち、上側に配された外側エアー袋21d及び内側エアー袋21eを収縮させるように制御信号をバルブ群71bに送信すると好ましい。このようにすることで、アームレスト21aは、その高さが低くなり、背の低い乗員が腕を置くのに適した形状となる。
【0077】
(b)大柄な乗員が着座した場合
体格情報検出センサ4によって得られた情報が、大柄な乗員がシートSに着座したことを示す情報である場合には、制御部Cは、
図10に示す後側部21bが車両幅方向における車両の外側に位置するように変形させる。
具体的には、制御部Cは、エアー袋群21cが膨張状態にあるときには、収縮状態に変形させ、エアー袋群21cが収縮状態にあるときには、その状態を維持する。
つまり、制御部Cは、エアー袋群21cが膨張状態にあるときには、バルブ群71bに制御信号を送信し、バルブ群71bの開き方向を変更してエアー袋群21cと外気とを連通させ、エアー袋群21c内に封入されている圧縮空気を減らす。制御部Cは、エアー袋群21c内に封入されている圧縮空気が所定の圧力になると、バルブ群71bを閉塞させて、その状態を保つように制御する。
また、変更機構71の制御部Cは、エアー袋群21cが収縮状態にあるときには、バルブ群71bに制御信号を送信せずに、その状態を維持する。
【0078】
このようにして、アームレスト21aは、ドアトリム基材1aから張り出し量が少ない形状に変化し、体の幅の大きな乗員が腕を置くのに適した形状となる。
また、例えばカメラ4dにより乗員の背が低いという情報が得られた場合には、制御部Cは、エアー袋群21cのうち、上側に配された外側エアー袋21d及び内側エアー袋21eを膨張させるようにすると好ましい。このようにすることで、アームレスト21aは、その高さが高くなり、背の高い乗員が腕を置くのに適した形状となる。
さらには、エアー袋群21c及びバルブ群71bの数を増やして、アームレスト21aの変形の自由度を高めるようにしてもよい。
【0079】
<<第2の実施形態>>
上記の第1の実施形態に係るアームレスト装置2,20,21においては、エアー袋7c又はエアー袋群21cを膨張又は収縮させることによって、アームレスト2a,20a,21aのドアトリム基材1aからの突出量を調整するようにしていた。しかし、本願発明はこのような実施形態に限定されるものではない。
他の実施形態としての第2の実施形態に係るアームレスト装置24は、平歯車24bとラック部1dによって、車両幅方向にアームレスト24aを移動させる構成を備えるものである。この構成について、
図12、
図13及び
図14A〜
図14Cを参照して説明する。
【0080】
なお、
図12は、第2の実施形態に係るアームレスト装置24におけるアームレスト24aを制御する制御部C周りのブロック図である。また、
図13は、平歯車24b及びラック部1dと、ガイド溝1e及びフリーボールベアリング24eとを備えるアームレスト装置24を示す
図14CのD−D断面矢視図である。また、さらに、
図14Aは、アームレスト24aの動作前の状態を示す図、
図14Bは、アームレスト24aが車両幅方向における車両の中央側に動作した状態を示す図、
図14Cは、アームレスト24aが車両幅方向における車両の中央側及び標準位置よりも前方側に動作した状態を示す図である。
【0081】
アームレスト装置24は、アームレスト24aと、アームレスト24aの位置を変更する変更機構73と、前述した体格情報検出センサ4と、変更機構73を制御する制御部Cと、から構成される。
【0082】
アームレスト24aは、下側支持部2cと、ドアトリム基材1aの一部であり車両幅方向における車両の内側に延出する後側部24dと、下側支持部2c上に配設され、断面コの字状であり車両前後方向に延在する可動部24gとから主に構成されている。
【0083】
可動部24gの上部の下面には、車両幅方向における車両の内側に設けられたステッピングモータであるモータMと、車両幅方向における車両の外側に設けられたフリーボールベアリング24eとが車両幅方向に並んで配設されて固定されている。モータMには、モータMの出力軸を軸心とする平歯車24bが固定されている。また、可動部24gの下部の上面には、モータMの駆動を制御する制御部Cが配設されている。
【0084】
後側部24dは、可動部24gに固定されたフリーボールベアリング24e及び平歯車24bに対向する位置まで車両幅方向における車両の内側に延出している。
後側部24dの上面においては、平歯車24bを収容してガイドするガイド溝1cが平歯車24bに対向する位置に形成されており、フリーボールベアリング24eを摺動させてガイドするガイド溝1eがフリーボールベアリング24eに対向する位置に形成されている。
【0085】
このガイド溝1cとガイド溝1eとは、車両幅方向における車両の外側から内側に直線的に延出し、その延出した先で車両前方に向かうように円弧状に曲がって延出し、その延出した先で車両前方に直線的に延出するように形成されている。このガイド溝1cとガイド溝1eとは、相似形を成し、所定間隔でオフセットされて形成され、ガイド溝1cが車両幅方向における車両の内側又は車両前後方向における車両の後側に配置されている。そしてガイド溝1cの車両幅方向における車両の内側の内縁面には、平歯車24bが噛合するラック部1dが形成されている。
このラック部1dと、ラック部1dに噛合する平歯車24bと、平歯車24bを回転させるモータMと、モータMを制御する制御部Cとによって、変更機構73は主に構成されている。
【0086】
(変更機構の動作について)
上記構成から成る変更機構73の動作について説明する。
可動部24gが車両幅方向における車両の外側に位置している
図14Aに示す状態において、制御部Cが制御信号をモータMに送信することによって、モータMに軸支された平歯車24bが正転(
図14Aにおいて反時計回り方向に回転)すると、平歯車24bはラック部1dに噛み合いながら車両幅方向における車両の内側に転がることとなる。そして、平歯車24bを軸支するモータMが固定された可動部24gは、
図14Bに示すように、平歯車24bの転がりに伴って車両幅方向における車両の内側に移動することとなる。
さらに、平歯車24bが正転することで、
図14Cに示すように、可動部24gは、一部が円弧状に曲がって形成されたラック部1dに沿って、車両幅方向における車両の内側に移動して、車両前後方向前側に移動することとなる。
【0087】
一方、可動部24gが車両前後方向前側及び車両幅方向における車両の内側に位置している
図14Cに示す状態において、制御部Cが制御信号をモータMに送信することによって、モータMに軸支された平歯車24bが逆転(
図14Cにおいて時計回り方向に回転)すると、平歯車24bはラック部1dに噛み合いながら車両前後方向後ろ側に転がることとなる。そして、平歯車24bを軸支するモータMが固定された可動部24gは、
図14Bに示すように、平歯車24bの転がりに伴って車両前後方向後ろ側に移動することとなる。
さらに、平歯車24bが逆転することで、
図14Aに示すように、可動部24gは、一部が円弧状に曲がって形成されたラック部1dに沿って、車両前後方向後ろ側に移動して車両幅方向における車両の外側に移動することとなる。
【0088】
したがって、制御部Cは、検出された乗員の体格に応じてモータMの回転量を調整することによって、アームレスト24a(可動部24g)の移動量を調整することができる。
具体的には、体格情報検出センサ4による体格情報の検出により、制御部Cが小柄な乗員が着座したと判定し、
図14Aに示すアームレスト24aの位置がシートSの着座者の腕よりも車両幅方向における車両の外側にあると制御部Cが判定した場合には、制御部Cは、モータMを所定角度だけ正転させて、
図14Aに示す位置から
図14Bに示す位置まで、アームレスト24a(可動部24g)を車両幅方向における車両の内側に移動させることができる。さらに、アームレスト24aの位置が、シートSの着座者の腕よりも車両前後方向後ろ側にあると制御部Cが判定した場合には、制御部Cは、モータMをより大きな回転角度で正転させて、
図14Cに示す位置まで、アームレスト24aを前方に移動させることができる。
【0089】
さらに、体格情報検出センサ4による体格情報の検出により、制御部Cが大柄な乗員が着座したと判定し、
図14Cに示すアームレスト24aの位置が、シートSの着座者の腕よりも前方にあると制御部Cが判定した場合には、制御部Cは、モータMを所定角度だけ逆転させて、
図14Cに示す位置から
図14Bに示す位置まで、アームレスト24aを後方に移動させることができる。さらに、アームレスト24aの位置が、シートSの着座者の腕よりも車両幅方向における車両の内側にあると制御部Cが判定した場合には、制御部Cは、モータMをより大きな回転角度で逆転させて、
図14Aに示すようにアームレスト24aを車両幅方向における車両の外側に移動させることができる。
【0090】
<<第3の実施形態>>
第3の実施形態に係るアームレスト装置25は、
図15及び
図16に示すように、上下に伸縮自在に設けられた車両前後方向の両側に一対設けられたパンタグラフPGを備えることを特徴とする。
なお、
図15は、パンタグラフPGを備えるアームレスト装置25を示す分解斜視図、
図16は、パンタグラフPGを備えるアームレスト装置25を示す、
図1のA−A断面に相当する部位の断面図である。
【0091】
詳細には、アームレスト装置25は、アームレスト25aと、アームレスト25aの位置を変更する変更機構74とを主に備えることを特徴とする。
【0092】
アームレスト25aは、車両幅方向における車両の内側に延出する後側部26dを備え、変更機構74は、下板25bと、平歯車25dを有する本体25cと、上板25eと、上板25eと本体25cとの間にあるパンタグラフPGと、を主に備える。
【0093】
後側部26dは、他の後側部2d等と同様に、車両幅方向における車両の内側に水平に突出して、前後方向に延在する板状の部材であり、特に、後側部26dには、
図14A〜
図14Cに示すガイド溝1cと同様のガイド溝26eが一本形成されている。このガイド溝26eは、アームレスト25aの動作方向をガイドするためのものである。
ガイド溝26eには、ラック部1dと同様のラック部26fが車両幅方向における車両の外側の縁面に形成されている。
【0094】
本体25cは、断面T字状に形成されており、本体25cにおける下側の一部の外周に回転可能に取り付けられてラック部26fに噛合する平歯車25dを備える。また、本体25cは、本体25cにおける下側の一部の内部にパンタグラフPGを伸縮動作させるためのモータMを備える。
【0095】
下板25bは、
図16に示すように、本体25cの下側を後側部26dのガイド溝26eに通した後に、本体25cの下面にネジ25fによって取り付けられている。このように下板25bが本体25cに取り付けられていることにより、車両の運転状態においても、本体25cの上下位置が安定することとなる。
【0096】
パンタグラフPGは、アームレスト25aの後側部26dの上面からの突出量を調整するように、アームレスト25aの突出方向に対して斜めに延在して2本の部材が中央部分で交差してX字を成すように接続されて構成されている。
一対のパンタグラフPGの下端部は、本体25cに回動可能に取り付けられており、パンタグラフPGの上端部は、上板25eの下面を摺動可能に支持している。
そして、パンタグラフPGは、制御部Cによる制御によってモータMが回転駆動すると、上下に伸縮することとなる。
【0097】
このパンタグラフPGの上下の伸縮動作は、例えば、パンタグラフPGの下端部に図示せぬ歯車が固定されており、この歯車を回転させるようにモータMが接続されていることによって実現される。また、パンタグラフPGに沿うように図示せぬワイヤが取り付けられており、このワイヤをモータMが巻き取りや引き出しすることによって、パンタグラフPGの伸縮動作を実現するものでもよい。
【0098】
上板25eの上部に固定されたアームレスト25aと、後側部26dの間は、伸縮布26によって包囲されている。このように伸縮布26によって包囲されていることによって、アームレスト25aと後側部26dの間に異物が侵入し、その異物がパンタグラフPGの伸縮動作の妨げになることを防止できる。
【0099】
本実施形態に係るアームレスト25aは、上下方向にパンタグラフPGにより伸縮し、車両幅方向にラック部26fに沿って移動するものとして説明したが、このような構成に本願発明は限定されない。例えば、車両幅方向に伸縮するパンタグラフを備える構成を採用してもよい。
【0100】
なお、上記実施形態におけるガイド溝20c,1c,1e,26eの形状によっては、着座者の体格に応じた制御部Cの制御によって、アームレスト2a,20a,24a,25aが移動する順序は水平面内において一定である。例えば、制御部Cが小柄な着座者であると判定したときには、ドアトリム基材1aから引っ込んだ状態から、まず車両幅方向における車両の内側に移動した後に、標準位置よりも前方向に移動することとなる。
しかし、本発明によるアームレストの移動の制御については、その移動順序は限定されず、ガイド溝の形状を任意に変更することで、その順序を変更することが可能である。つまり、小柄な着座者の場合に、車両幅方向における車両の内側、標準位置よりも前側又は下側に移動し、大柄な着座者の場合には、それらの逆側に移動すればよい。
【0101】
<<第4の実施形態>>
上記の第2の実施形態に係るアームレスト装置24及び第3の実施形態に係るアームレスト装置25は、ラック部1d,26fに平歯車24b,25dを噛合させることにより、車両幅方向にアームレスト24a,25aを移動させるものであったが、本願発明は、このような構成に限定されない。
【0102】
例えば、第4の実施形態に係るアームレスト装置27は、モータMをよって、車両幅方向にアームレスト27aを移動可能な構成を備えるものである。この構成について、
図17A及び
図17Bを参照して次に具体的に説明する。なお、
図17Aは、第4の変形例に係るアームレスト装置27の
図1のA−A断面に相当する部位の矢視図、
図17Bは、アームレスト装置27の動作方向を示す斜視図である。
【0103】
アームレスト装置27は、アームレスト27aと、アームレスト27aの形状を変更する変更機構75と、前述した体格情報検出センサ4と、変更機構75を制御する制御部Cと、から構成される。
【0104】
変更機構75は、モータMの出力軸に一端が固定された支持棒27cと、支持棒27cの他端に固定されたボール27bと、ボール27b、支持棒27c及びモータMを覆う表皮材27dとにより主に構成される。
この支持棒27cとボール27bは、アームレスト装置27の上面の位置を変えることができるように、車両前後方向に2個設けられている。
表皮材27dは、合成繊維、皮革等の可撓性材料から成り、ドアトリム基材1aと下側支持部2cとに端部を固定されている。
【0105】
制御部Cは、モータMを動作させることによって、支持棒27cを上下方向及び前後方向に動作させる。
上記構成に係るアームレスト装置27によれば、モータMの出力軸を中心に支持棒27cを回動させる構成であるため、表皮材27dに加わる張力の変動を抑制しつつアームレスト27aの形状を変更することが可能である。つまり、表皮材27dに弛みの発生を抑制することができる。
なお、アームレスト25aの形状を変更するものとしては、ボール状のものに限定されず、例えば、車両前後方向に延在する棒状、筒状又は板状のものであってもよい。
【0106】
<第3の変形例>
次に第3の変形例に係るアームレスト装置22について、
図18及び
図19を参照して説明する。
なお、
図18は、第3の変形例に係るアームレスト2aを制御する制御部Cのブロック図、
図19は、近接センサ6を示す模式図である。
第3の変形例に係るアームレスト装置22は、他の変更機構76として、
図18に示すようにリニアアクチュエータAを備えるものである。
【0107】
つまり、制御部Cが、乗員の体格情報に基づいて、アームレスト2aを変更機構76としてのリニアアクチュエータAにより前後方向、上下方向又は車両幅方向に移動させるようにしてもよい。
【0108】
また、リニアアクチュエータAによって移動するアームレスト2aの移動量の規制については、例えば図示せぬ車両用シートのシートバックに当接することによって規制させるようにしてもよい。具体的には、アームレスト2aが車両用シートに当接することによって加わる反力による抵抗に係る信号に基づき制御部CがリニアアクチュエータAの移動制御を停止するようにすればよい。
【0109】
しかし、アームレスト2aが車両幅方向における車両の内側に突出しすぎると、シートクッションS1の脇にあるリクライニング調整レバー10や、不図示の座面高さ調整レバー等のレバーを操作がしづらくなることが考えられる。
この問題については、
図19に示すように、近接センサ6をアームレスト2aの車両幅方向における車両の内側の端部に設けるようにして、電気的に制限することが可能である。詳細には、近接センサ6から、例えばシートバックS2に所定の距離までアームレスト2aが近接したことを示す信号(予め定められた基準値以下の距離となったことを示す信号)を制御部Cが受信したときに、制御部Cによって、自動的にアームレスト2aの変形又は移動を停止することができる。
【0110】
その他、例えば
図7に示すアームレスト装置2においては、エアー袋7cの空気量、
図10に示すアームレスト装置21においては、エアー袋群21cのいずれかの空気量を制限して、その膨らみ量を調整するようにすればよい。
このようにすれば、リクライニング調整レバー10その他のレバーを覆い隠さないように、変形に制限することができる。
【0111】
また、例えば、
図15に示すパンタグラフPGを備えるアームレスト装置25、
図17に示す支持棒27cを備えるアームレスト装置27においては、パンタグラフPG又は支持棒27cの動作位置に図示せぬストッパーを設けるようにして、ストッパーに当接したときに動作を停止するようにしてもよい。
【0112】
また、上記実施形態においては、乗員の体格に合わせてアームレストを移動又は変形させるものとして説明したが他の部材を移動又は変形させてもよい。例えば、テーブルを乗員の体格に適した位置にドアトリム等から引き出すようにして、食事に用いる等、多目的に用いることができる。
【0113】
また、アームレストを乗員の腕の位置に合わせて配置することができるため、体格差による影響を抑制して、車両の側面衝突時に加わる衝撃ポイントをより正確に想定することができ、乗員の保護の能力を高めることができる。
【0114】
上記実施形態に係るアームレスト装置は、ドアトリムに設けられるものに限定されず、シートの一部に設けられるものでもよい。また、自動車の座席近傍に設けられるものに限られず、フォークリフト等の作業用車両その他の車両に用いることができる。