【実施例】
【0027】
  図1は本発明に係る温度制御装置12の概略構成を示すものである。なお、実施例では、エンジン試験システム10に適用した場合を一例としているが、本発明はエンジン試験システム10に限定されるものではなく、広く一般の温度制御装置に適用することができるものである。
【0028】
  図1のエンジン試験システム10は、試験対象の負荷装置であるエンジン11の性能を測定・評価するシステムであり、試験対象の負荷装置であるエンジン11と、エンジン11に供給する冷却水24の温度を調整する温度制御装置12で構成される。
【0029】
  エンジン11の出力軸には、シャフト14を介してダイナモメータ13が接続される。ダイナモメータ13は、エンジン11に所定の負荷トルクを与える機器であり、電流・電圧を可変させることで負荷トルクを設定できるようになっている。ダイナモメータ13としては、低慣性ダイナモを用いて、低速回転から高速回転までの急激な回転数の変化においても安定した出力が得られるようになっている。
【0030】
  また、エンジン11は、その周囲がジャケット(不図示)で覆われており、ジャケットの内部にエンジン冷却液である冷却水24を流すことによりエンジン11が冷却するように構成されている。エンジン11の内部にはポンプ15(以下、「内蔵ポンプ15」という)が設けられており、内蔵ポンプ15を駆動することによってジャケット内の冷却水24を強制的に循環させることができる。この内蔵ポンプ15は、通常、エンジン11の回転数に応じて吐出量が変動し、エンジン11の回転数が増加するに伴って吐出量が増加するようになっている。
【0031】
  エンジン11には、温度制御装置12が接続されており、この温度制御装置12からエンジン11のジャケット内に冷却水24が供給される。温度制御装置12の構成は、特に限定するものではないが、例えば冷熱媒体である冷熱源25に工業用水を使用し、この冷熱源25で冷却水24を冷却する熱交換器17を備える。
【0032】
  熱交換器17は、一次冷媒流路17aと二次冷媒流路17bとを有している。熱交換器17の一次冷媒流路17aには、工業用水配管18が接続されており、この工業用水配管18を介して冷熱源25が熱交換器17の一次冷媒流路17aに流される。一方、熱交換器17の二次冷媒流路17bには、冷却水配管19が接続されており、この冷却水配管19を介してエンジン11のジャケット内で昇温して流出されて来る冷却水24が熱交換器17の二次冷媒流路17bに流される。そして、熱交換器17では、冷熱源25と冷却水24が熱交換することによって、冷却水24が冷却されてエンジン11のジャケット内に循環供給される。
【0033】
  冷却水配管19のうち、エンジン11内を通る冷却水24が流出するジャケット出口11aの近傍にはセンサ20が配設され、冷却水24が流入するジャケット入口11bの近傍にはヒータ21が配設されている。さらに、冷却水配管19において、熱交換器17の手前には第1の3方制御弁22が配設されている。
【0034】
  センサ20では、エンジン11のジャケット出口11aから流出した直後の冷却水24の温度が測定される。そのセンサ20は、温度制御装置12の温度制御部12aに接続されており、測定値の信号が温度制御部12aに出力される。
【0035】
  ヒータ21は、温度制御装置12の温度制御部12aに接続されており、温度制御部12aの制御により、エンジン11のジャケット出口11aから流出する冷却水24の温度を略一定の温度に調節する。
【0036】
  第1の3方制御弁22は、エンジン11のジャケット出口11aから流出した冷却水24を、熱交換器17の二次冷媒流路17bを流れる第1の循環冷媒24aと、熱交換器17の二次冷媒流路17bをバイパスして流れる第2の循環冷媒24bとに分流させ、その後、第1の循環冷媒24aと第2の循環冷媒24bとを混合し、ヒータ21を通ってエンジン11のジャケット入口11bに流す制御を行うものである。そして、第1の3方制御弁22において第1の循環冷媒24aと第2の循環冷媒24bの流量及び混合割合とヒータ21での加熱量を細かく制御することにより、エンジン11のジャケット入口11bからジャケット内に流入する冷却水(冷媒)の温度が調整される。
【0037】
  第1の3方制御弁22は、温度制御装置12の温度制御部12aで制御されるバルブコントローラ23に接続されており、このバルブコントローラ23によって第1の3方制御弁22の開度が調節される。
【0038】
  工業用水配管18のうち、熱交換器17の一次冷媒流路17aの上流側入口の近傍には、熱交換器17側からセンサ26とポンプ27が順に配設され、一次冷媒流路17aの下流側出口の近傍には第2の3方制御弁28が配設されている。
【0039】
  センサ26では、熱交換器17の一次冷媒流路17aに流入される直前の冷熱源25の温度が、一次冷媒流路17aの温度として測定される。そのセンサ26は、温度制御装置12の温度制御部12aに接続されており、測定値の信号が温度制御部12aに出力される。
【0040】
  ポンプ27は、駆動することによって熱交換器17の一次冷媒流路17a側における冷熱源25を循環させることができる。このポンプ27は、通常、温度制御装置12の起動に連動して駆動される。
【0041】
  第2の3方制御弁28は、熱交換器17の一次冷媒流路17aから流出した冷熱源25の一部25aを外部に排出するとともに、残りの一部25b(以下「第1の冷熱媒体25b」という)を新たに外部から供給される冷熱源25の一部25c(以下「第2の冷熱媒体25c」という)と混合し、ポンプ27を通って熱交換器17の一次冷媒流路17aに流す制御を行うものである。そして、第2の3方制御弁28により、冷熱源25の第1の冷熱媒体25bと冷熱源25の第2の冷熱媒体25cの混合割合を細かく制御することによって、熱交換器17の一次冷媒流路17aの入口から流入する冷熱源25(25b+25c)の温度も細かく調整される。第2の3方制御弁28は、温度制御装置12の温度制御部12aで制御されるバルブコントローラ29に接続されており、このバルブコントローラ29によって第2の3方制御弁28の開度が調節される。
【0042】
  なお、本実施例における温度制御装置12では、温度制御装置12の温度制御部12aには、熱交換器17の一次冷媒流路17aを流れる冷熱源25と第2の3方制御弁28の開度に関連したマップの他、第1の3方制御弁22の開度と第1の循環冷媒24aと第2の循環冷媒24bの流量と混合割合、及び、ヒータ21での加熱量に関連したマップ等が備えられ、それらのマップに基づいて第1の3方制御弁22及びヒータ21と、第2の3方制御弁28を制御する。
【0043】
  このように構成されたエンジン試験システムにおける温度制御装置12によれば、熱交換器17の二次冷媒流路17b側に第1の3方制御弁22を設けるとともに、熱交換器17の一次冷媒流路17a側に第2の3方制御弁28を設けている。そして、熱交換器17の一次冷媒流路17a側では、第2の3方制御弁28により、一次冷媒流路17a内で熱交換された冷熱源25の第1の冷熱媒体25bと新たに外部から供給される第2の冷熱媒体25cとを混合し、熱交換器17の一次冷媒流路17aを流れる冷熱媒体(25b+25c)の温度を、熱交換器17の二次冷媒流路17b内を通る第1の循環冷媒24aとの熱交換に適した所定の温度に、高精度に調整することができる。
【0044】
  一方、熱交換器17の二次冷媒流路17b側では、負荷装置であるエンジン11のジャケット出口11aより排出されたエンジン冷却液などである循環冷媒のうち、熱交換器の二次冷媒流路17b内を通って適正温度に熱交換された第1の循環冷媒24aと熱交換器17の二次冷媒流路17bをバイパスしてエンジン11のジャケット入口11bに向かう第2の循環冷媒24bとを混合し、適切な温度をした循環冷媒(24a+24b)に調節してエンジン11のジャケット内に流すことができる。これにより、エンジン11のジャケット出口11aから流出する循環冷媒の温度を一定の温度にするなど、高精度に調整することができる。
【0045】
  すなわち、第1の3方制御弁22と第2の3方制御弁28とにより、それぞれ混合具合を調節して、適正な温度に調整された循環媒体(冷却水24)をエンジン11のジャケット入口11bから流すことにより、エンジン11のジャケット出口11aの温度を常に一定の温度にするなど、高精度に調整することができる。また、直接混合をするので、熱交換器17の熱容量に左右されずに応答速度を高めて迅速に調整することができる。これにより、エンジン11の発熱量の変動に応じた温度管理を行うことができる。
【0046】
  また、熱交換器17の一次冷媒流路17aの上流側には冷熱源25を一次冷媒流路17aへ向けて強制的に流すポンプ27を設けている。したがって、冷熱源25を供給する側の流量が変化しても、熱交換器17での流量は一定となり、安定した運転ができる。また、ポンプ27を設けていない場合では、冷熱源25bの流れは下側から上側に向かって流れるが、ポンプ27を設けた場合では、上側から下側に向かって強制的に流すことができる。
【0047】
  なお、本発明は、本発明の精神を逸脱しない限り種々の改変を成すことができ、そして、本発明が該改変されたものに及ぶことは当然である。