特許第6652778号(P6652778)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6652778改善された結晶化速度を有するポリエステル組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6652778
(24)【登録日】2020年1月28日
(45)【発行日】2020年2月26日
(54)【発明の名称】改善された結晶化速度を有するポリエステル組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 67/00 20060101AFI20200217BHJP
   C08K 3/22 20060101ALI20200217BHJP
   C08K 3/26 20060101ALI20200217BHJP
   C08K 3/30 20060101ALI20200217BHJP
   C08K 3/34 20060101ALI20200217BHJP
   C08K 5/10 20060101ALI20200217BHJP
   C08K 7/14 20060101ALI20200217BHJP
   C08L 67/02 20060101ALI20200217BHJP
   H01L 33/60 20100101ALI20200217BHJP
【FI】
   C08L67/00
   C08K3/22
   C08K3/26
   C08K3/30
   C08K3/34
   C08K5/10
   C08K7/14
   C08L67/02
   H01L33/60
【請求項の数】15
【外国語出願】
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2013-244600(P2013-244600)
(22)【出願日】2013年11月27日
(65)【公開番号】特開2014-105337(P2014-105337A)
(43)【公開日】2014年6月9日
【審査請求日】2016年10月27日
【審判番号】不服2018-14208(P2018-14208/J1)
【審判請求日】2018年10月26日
(31)【優先権主張番号】61/731,051
(32)【優先日】2012年11月29日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】13155500.5
(32)【優先日】2013年2月15日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】512323929
【氏名又は名称】ソルベイ スペシャルティ ポリマーズ ユーエスエー, エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ボンジョヴァンニ, アレッサンドロ
【合議体】
【審判長】 佐藤 健史
【審判官】 井上 猛
【審判官】 大▲わき▼ 弘子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/141967(WO,A1)
【文献】 特表平11−511500(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 67/00-67/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマー組成物(C)であって、
−少なくとも1つの脂環式基を含む繰り返し単位を少なくとも50モル%含む、少なくとも1種のポリエステル(P)、
−TiO、ZnS、ZnO、CeOおよびBaSOからなる群から選択される、少なくとも1種の白色顔料、
−少なくとも1種の無機核形成剤、および
−前記ポリマー組成物(C)の全重量に基づいて、少なくとも1重量%および最大で4重量%の量で存在し、かつフタル酸エステル、トリメリット酸エステル、安息香酸エステル、テレフタル酸エステル、クエン酸エステル、およびシクロヘキサン二酸エステルからなる群から選択される、少なくとも200℃の沸点を有する少なくとも1種の可塑剤
を含むポリマー組成物(C)。
【請求項2】
ポリマー組成物(C)であって、
−少なくとも1つの脂環式基を含む繰り返し単位を少なくとも50モル%含む、少なくとも1種のポリエステル(P)、
−TiO、ZnS、ZnO、CeOおよびBaSOからなる群から選択される、少なくとも1種の白色顔料、
−少なくとも1種の無機核形成剤、および
−前記ポリマー組成物(C)の全重量に基づいて、少なくとも1重量%および最大で3.6重量%の量で存在し、かつフタル酸エステル、トリメリット酸エステル、安息香酸エステル、テレフタル酸エステル、クエン酸エステル、シクロヘキサン二酸エステル、およびエーテルのオリゴマー/ポリマーのエステルからなる群から選択される、少なくとも200℃の沸点を有する少なくとも1種の可塑剤
を含むポリマー組成物(C)。
【請求項3】
前記ポリエステル(P)が、前記組成物の全重量に基づいて、45〜60重量%の量で存在する、請求項1又は2に記載のポリマー組成物(C)。
【請求項4】
前記ポリエステル(P)の繰り返し単位の少なくとも50モル%が、テレフタル酸と1,4−シクロヘキシレンジメタノールの重縮合によって得られる、請求項1から3のいずれか一項に記載のポリマー組成物(C)。
【請求項5】
前記ポリエステル(P)が、ポリ(1,4−シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート)である、請求項1からの何れか一項に記載のポリマー組成物(C)。
【請求項6】
前記少なくとも1種の無機核形成剤が、シリカ、タルク、クレー、アルミナ、マイカ、ジルコニア、チタニア、酸化スズ、酸化スズインジウム、酸化アンチモンスズ、炭酸カルシウムおよびゼオライトからなる群から選択される、請求項1からの何れか一項に記載のポリマー組成物(C)。
【請求項7】
前記少なくとも1種の無機核形成剤が、前記ポリマー組成物(C)の全重量に基づいて、1から5重量%の量で存在する、請求項1からの何れか一項に記載のポリマー組成物(C)。
【請求項8】
前記少なくとも1種の可塑剤が、トリメリット酸エステル、安息香酸エステル、およびエーテルのオリゴマー/ポリマーのエステルからなる群から選択される、請求項から6の何れか一項に記載のポリマー組成物(C)。
【請求項9】
前記少なくとも1種の可塑剤が、トリメリット酸トリオクチル、ジ安息香酸ネオペンチルグリコールおよびジ−2−エチルヘキサン酸PEG−400からなる群から選択される、請求項に記載のポリマー組成物(C)。
【請求項10】
前記白色顔料が、TiOである、請求項1からの何れか一項に記載のポリマー組成物(C)。
【請求項11】
ガラス繊維およびウォラストナイトからなる群から選択される少なくとも1種の強化充填剤を更に含む、請求項1から10の何れか一項に記載のポリマー組成物(C)。
【請求項12】
前記強化充填剤が、前記ポリマー組成物(C)の全重量に基づいて、5〜40重量%で存在する、請求項11に記載のポリマー組成物(C)。
【請求項13】
請求項1から12の何れか一項に記載のポリマー組成物(C)を含む少なくとも1つの部品を備える物品。
【請求項14】
前記物品が、発光ダイオード(LED)デバイスである、請求項13に記載の物品。
【請求項15】
前記部品が、反射板である、請求項13に記載の物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この出願は、2012年11月29日に出願された特許文献1および2013年2月15日に出願された特許文献2に対して優先権を主張し、これらの出願のそれぞれの全内容は、すべての目的のために参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、非常に良好な結晶化速度および優れた光反射率の保持率を特徴としている、ある種のポリエステル、少なくとも1種の無機核形成剤、および少なくとも1種の可塑剤を含むポリマー組成物に関する。
【0003】
本発明は更に、本発明の組成物からなる物品、例えば、発光ダイオード(LED)デバイスの部品を提供する。
【背景技術】
【0004】
LEDは、それらが従来の光源を上回って与える多くの利点のために、多数の用途で光源としてますます使用されている。LEDは、一般に他の光源よりもかなり少ない電力を消費し、動作させるために低い電圧を必要とし、機械的衝撃に耐性である。結果として、それらは、多くの用途で白熱および他の光源に取って代わっており、交通信号、屋内および屋外照明、携帯電話ディスプレイ、自動車ディスプレイおよびフラッシュライトのような異種の領域で用途を見出している。
【0005】
反射板などのLED部品は、優れた色と改善された物理的特性との特に要求の厳しい組合せを必要とする。それらの用途でセラミックスが有利に使用され得るが、依然として極めて高価であり、要求の厳しい加工技術を必要とする。従って、セラミックスをより低いコストの材料と置き換えるためにポリマーが広範囲に研究および開発されている。熱可塑性ポリマーの大きな利点は、それらが射出成形されることができ、従って、相当の設計融通性を与えることである。LED部品の製造に使用されるポリマー組成物に関して留意される問題の一つは、それらが光および高温に曝露される場合に黄色になり易いことである。例えば、製造の間に、LED部品は、エポキシまたはシリコン封止材をキュアするために約180℃に加熱される。LED部品は、はんだ付け操作が行われる間に260℃を超える温度にも曝露される。更に、使用中に、LED部品は、光および80℃を超える温度下に日常的に置かれる。更に、最近のより高い電圧のLEDの開発は、一般に100℃を超える、より高い作業温度さえももたらす。この光および高温への同時曝露は、LED部品を形成するために使用されるポリマー組成物の黄変を引き起こす。
【0006】
望ましくは、LEDの反射板、結局、それらが製造されるポリマー組成物は、所望の形状に容易に加工される一方で、とりわけ、光の高い反射率、高い白色度、高い寸法安定性、高い機械的強度、高い熱変形温度、および高い耐熱性(高温に曝露される場合の低い退色および低い反射率損失)を含む、広い一連の要求を満たさなければならない。
【0007】
フィルム、シート、異形材、ボトルなどを含む、広範な用途で使用される成形物品を製造するために、ポリエステルがしばしば用いられる。最も一般に用いられるポリエステルは、テレフタル酸または2,6−ナフタレンジカルボン酸に基づき、例えば、ポリ(エチレンテレフタレート)(「PET」)、ポリ(1,4−ブチレンテレフタレート)(「PBT」)、ポリ(シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート)(「PCT」)、ポリ(シクロヘキシレンジメチレンナフタレート)(「PCN」)、ポリ(エチレンナフタレート)(「PEN」)およびそれらのコポリエステルを含む。これらのポリエステルは、比較的安価で、広く利用でき、それらの芳香族含有量のために、高いガラス転移温度(Tg)を有し、これにより、それらから製造された成形物品に耐熱性、剛性および強靭性を与える。
【0008】
これらの肯定的な特性にもかかわらず、ある種のポリエステル(PETおよびPCTなど)は、ある限界を有する。最も重要な限界の一つは、それらの低い結晶化の速度である。射出成形過程の間、成形されているポリマーの結晶化速度は、サイクル時間、最小必要成形温度、および型からの部品の突出しの容易さ(亀裂および/または変形を避ける)を決定する。高い結晶化度も、それと関連するより高い熱的および機械的安定性のために、成形部品でしばしば望ましい。従って、結晶化度は、LEDデバイスの部品などの成形部品が高温下に置かれる場合、特に望ましい。
【0009】
ポリエステルの結晶化の速度を増加させる従来技術の方法は、核形成剤の組み込みに向けられてきた。無機化合物などのある種の核形成剤は、結晶化速度をいくらか増加させるが、射出成形などのある加工条件は、更により高い結晶化速度を必要とする。有機塩などの他の種類の核形成剤は、必要とされるより高い結晶化速度を与えるが、LED製造方法の高温に曝露される場合、色体(color body)を生成する傾向がある。
【0010】
当業者は、熱安定性、成形性能および反射率におけるさらなる改善が、LEDデバイスの開発にとって有利であることを理解する。
【0011】
特許文献3には、二酸化チタン、無機強化剤または充填剤、および酸化安定剤を含むPCT組成物からなる発光ダイオード組立筐体が開示されている。それらの組成物は、非常に温和な熱処理後でさえも非常に低い白色度の欠点をもつ。
【0012】
特許文献4は、PCT、白色顔料および反応性粘度安定剤(フェノキシ樹脂または非芳香族エポキシ樹脂など)を含む、LED反射板の成形に適した組成物に関する。特許文献4には、その実施例において、二酸化チタン、チョップドガラス繊維、2重量%のタルクおよび8種類の他の添加剤を含むPCT組成物が開示されている。それらの組成物は、200℃で4時間後に最高約84%の白色度保持率を達成するのみである。
【0013】
特許文献5には、ある種の白色PCT系ポリマー組成物が開示されている。残念なことに、例示された組成物はいずれも、それらをLED用途に適したものにさせる許容できる老化後反射率データを示さない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】米国仮出願第61/731051号明細書
【特許文献2】欧州出願第13155500.5号明細書
【特許文献3】国際公開第2007/033129号パンフレット
【特許文献4】米国特許出願公開第2012/0262927号明細書
【特許文献5】国際公開第2012/141967号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
従って、高い結晶化速度、ならびに熱および光曝露後でさえ反射率/白色度の良好な保持率を示す一方で、ポリエステルの利点のすべてを特徴としているポリエステル組成物に対する当技術分野における必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者らは、2種の特定の添加剤の存在が、熱および光曝露後の優れた反射率を維持する一方で、結晶化速度の点ではある種の白色顔料ポリエステル組成物の挙動を大きく向上させることを発見した。
【0017】
従って、本発明のポリエステル組成物は、上述の要件を満たし、以後に詳細に説明される。
【0018】
第1の態様において、本発明は、ポリマー組成物(C)であって、
− 少なくとも1つの脂環式基を含む繰り返し単位を少なくとも50モル%含む、少なくとも1種のポリエステル(P)、
− TiO、ZnS、ZnO、CeOおよびBaSOからなる群から選択される、少なくとも1種の白色顔料、
− 少なくとも1種の無機核形成剤、および
− ポリマー組成物(C)の全重量に基づいて、少なくとも1重量%および最大で4重量%の量で存在し、かつフタル酸エステル、トリメリット酸エステル、安息香酸エステル、テレフタル酸エステル、クエン酸エステル、シクロヘキサン二酸エステル、およびエーテルのオリゴマー/ポリマーのエステルからなる群から選択される、少なくとも200℃の沸点を有する少なくとも1種の可塑剤
を含むポリマー組成物(C)に関する。
【0019】
第2の態様において、本発明は、本発明ポリマー組成物(C)からなる少なくとも1つの部品を備える物品、特にこのようなポリマー組成物(C)から製造されたLEDデバイスの部品に関する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、型温の関数として実施例CE1、CE2、CE3、E6、E7およびE8の結晶化度を描くグラフを示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明によるポリマー組成物(C)は、以下に詳細に説明される4種の必須成分を含む:
【0022】
ポリエステル(P)
「ポリエステル」という用語は、「コポリエステル」を含むことが意図され、かつ少なくとも1つのエステル部分(一般に式:R−(C=O)−OR’で記載される)を含む繰り返し単位を、少なくとも50モル%、好ましくは少なくとも85モル%含むポリマーを意味すると理解される。ポリエステルは、少なくとも1つのエステル部分を含む環状モノマー(M)の開環重合によって;少なくとも1つのヒドロキシル基と少なくとも1つのカルボン酸基とを含むモノマー(M)の重縮合によって、または少なくとも2つのヒドロキシル基を含む少なくとも1種のモノマー(M)(ジオール)と少なくとも2つのカルボン酸基を含む少なくとも1種のモノマー(M)(ジカルボン酸)との重縮合によって得ることができる。本明細書で使用される場合、ジカルボン酸という用語は、ジカルボン酸、およびジカルボン酸の任意の誘導体(それらの関連する酸のハロゲン化物、エステル、半エステル、塩、半塩、無水物、混合無水物、またはそれらの混合物を含む)を包含することが意図される。
【0023】
ポリエステル(P)は、少なくとも1つのエステル部分に加えて、少なくとも1つの脂環式基を含む繰り返し単位を、少なくとも50モル%、好ましくは少なくとも60モル%、より好ましくは少なくとも70モル%、更により好ましくは少なくとも80モル%、最も好ましくは少なくとも90モル%含む。ポリエステル(P)が少なくとも1つのエステル部分および少なくも1つの脂環式基を含む繰り返し単位から本質的になる場合、優れた結果が得られた。脂環式基は、脂肪族と環状の両方ともである少なくとも1つの基を含むモノマー(M)、モノマー(M)、モノマー(M)またはモノマー(M)から誘導してもよい。
【0024】
モノマー(M)の非限定的な例としては、ラクチドおよびカプロラクトンが挙げられる。
【0025】
モノマー(M)の非限定的な例としては、グリコール酸、4−ヒドロキシ安息香酸および6−ヒドロキシナフタレン−2−カルボン酸が挙げられる。
【0026】
モノマー(M)の非限定的な例としては、1,4−シクロヘキサンジメタノール、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,10−デカンジオール、2,2,4−トリメチル1,3−ペンタンジオール、2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール、およびネオペンチルグリコールが挙げられるが、1,4−シクロヘキサンジメタノールおよびネオペンチルグリコールが好ましい。
【0027】
モノマー(M)の非限定的な例としては、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、コハク酸、セバシン酸、およびアジピン酸が挙げられるが、テレフタル酸および1,4−シクロヘキサンジカルボン酸が好ましい。
【0028】
ポリエステル(P)がコポリマーである場合、モノマー(M)および(M)が好ましく用いられる。このような場合、モノマー(M)は、好ましくは1,4−シクロヘキサンジメタノールであり、モノマー(M)は、好ましくはテレフタル酸と1,6−ナフタレンジカルボン酸との混合物である。
【0029】
ポリエステル(P)がホモポリマーである場合、それは、ポリ(シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート)(「PCT」)およびポリ(シクロヘキシレンジメチレンナフタレート)(「PCN」)から選択されてもよい。最も好ましくは、それは、PCT(即ち、テレフタル酸と1,4−シクロヘキシレンジメタノールとの重縮合によって得られるホモポリマー)である。
【0030】
ポリエステル(P)は、有利には約30℃で60:40フェノール/テトラクロロエタン混合物または同様の溶媒中で測定して、約0.4から約2.0dl/gの固有粘度を有する。本発明に特に適したポリエステル(P)は、0.5から1.4dl/gの固有粘度を有する。
【0031】
ポリエステル(P)は、ISO−11357−3に従ってDSCで測定して、有利には少なくとも250℃、好ましくは少なくとも260℃、より好ましくは少なくとも270℃、最も好ましくは少なくとも280℃の融点を有する。更に、その融点は、有利には最大で350℃、好ましくは最大で340℃、より好ましくは最大で330℃、最も好ましくは最大で320℃である。280℃から320℃の範囲の融点を有するポリエステル(P)によって、優れた結果が得られた。
【0032】
ポリエステル(P)は、ポリマー組成物(C)の全重量に基づいて、好ましくは少なくとも40重量%、より好ましくは少なくとも45重量%、更により好ましくは少なくとも47重量%、最も好ましくは少なくとも48重量%の量で存在する。
【0033】
ポリエステル(P)はまた、ポリマー組成物(C)の全重量に基づいて、有利には最大で80重量%、好ましくは最大で75重量%、より好ましくは最大で70重量%、更により好ましくは最大で65重量%、最も好ましくは最大で60重量%の量で存在する。
【0034】
ポリエステル(P)が、ポリマー組成物(C)の全重量に基づいて、約45から約60重量%、好ましくは約48から約58重量%の量でポリマー組成物(C)中に存在する場合、優れた結果が得られた。
【0035】
白色顔料
ポリマー組成物(C)はまた、TiO、ZnS、ZnO、CeOおよびBaSOからなる群から選択される少なくとも1種の白色顔料を含む。
【0036】
白色顔料は、有利には、好ましくは1μm未満の重量平均サイズ(等価直径)を有する粒子の形態である。好ましくは、粒子の重量平均サイズは、0.8μm未満である。更に、それは、好ましくは0.1μmを超える。
【0037】
粒子の形状は、特に限定されない;それらは、とりわけ、円形、薄片状、扁平状などであってもよい。
【0038】
白色顔料は、好ましくは二酸化チタン(TiO)である。二酸化チタンの型は、特に限定されず、様々な結晶型、例えば、アナターゼ型、ルチル型、および単斜晶型が用いられ得る。しかしながら、ルチル型が、その比較的高い屈折率およびその優れた光安定のために好ましい。二酸化チタンは、表面処理剤で処理されていても、いなくてもよい。好ましくは、二酸化チタンの重量平均粒径は、0.15μmから0.35μmの範囲である。
【0039】
二酸化チタン粒子の表面は、好ましくは被覆されている。二酸化チタンは、好ましくは最初に無機コーティング、次いで有機コーティングで被覆される。二酸化チタン粒子は、当技術分野で公知の任意の方法を用いて被覆され得る。好ましい無機コーティングとしては、金属酸化物が挙げられる。有機コーティングとしては、カルボン酸、ポリオール、アルカノールアミン、および/またはシリコン化合物の1種以上が挙げられ得る。
【0040】
白色顔料は、好ましくは、ポリマー組成物(C)の全重量に基づいて、少なくとも1重量%、好ましくは少なくとも6重量%、より好ましくは少なくとも8重量%、更により好ましくは少なくとも10重量%、最も好ましくは少なくとも15重量%の量で存在する。更に、白色顔料はまた、好ましくは、ポリマー組成物(C)の全重量に基づいて、最大で50重量%、好ましくは最大で40重量%、より好ましくは最大で35重量%、更により好ましくは最大で30重量%、最も好ましくは最大で25重量%の量で存在する。
【0041】
二酸化チタンが、ポリマー組成物(C)の全重量に基づいて、10〜40重量%、好ましくは15〜25重量%の量で用いられる場合、優れた結果が得られた。
【0042】
無機核形成剤
ポリマー組成物(C)は、上に詳述された白色顔料と異なる、少なくとも1種の無機核形成剤を更に含む。
【0043】
「無機核形成剤」という用語は、少なくとも1μmの重量平均サイズ(等価直径)を有する鉱物粒子を意味することが意図される。好ましくは、粒子の重量平均サイズは、少なくとも2μmである。更に、それは、好ましくは最大で10μmである。
【0044】
無機核形成剤は、好ましくはシリカ、タルク、クレー、アルミナ、マイカ、ジルコニア、酸化スズ、酸化スズインジウム、酸化アンチモンスズ、カオリン、ケイ酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ゼオライトなどからなる群から選択される。タルクを用いる場合、優れた結果が得られた。
【0045】
無機核形成剤は、好ましくは、ポリマー組成物(C)の全重量に基づいて、少なくとも0.5重量%、好ましくは少なくとも1重量%、より好ましくは少なくとも1.5重量%、更により好ましくは少なくとも2重量%、最も好ましくは少なくとも2.5重量%の量で存在する。更に、無機核形成剤はまた、好ましくは、最大で10重量%、好ましくは最大で8重量%、より好ましくは最大で7重量%、更により好ましくは最大で6重量%、最も好ましくは最大で5重量%の量で存在する。
【0046】
無機核形成剤が、ポリマー組成物(C)の全重量に基づいて、1〜5重量%、好ましくは2〜4重量%の量で用いられる場合、優れた結果が得られた。
【0047】
可塑剤
ポリマー組成物(C)は、少なくとも1種の可塑剤を更に含む。「可塑剤」という用語は、ポリマー組成物(C)の粘度を低下させる任意の添加剤を意味することが意図される。ポリマー組成物(C)の可塑剤は、有利にはフタル酸エステル、トリメリット酸エステル、安息香酸エステル、テレフタル酸エステル、クエン酸エステル、シクロヘキサン二酸エステルおよびポリエーテルエステルからなる群から選択される。
【0048】
可塑剤は、少なくとも150g/mol、好ましくは少なくとも200g/mol、より好ましくは少なくとも250g/molの分子量を有する有機化合物である。
【0049】
可塑剤は、少なくとも200℃、好ましくは少なくも240℃、より好ましくは少なくとも280℃、更により好ましくは少なくとも300℃の沸点を有する。
【0050】
第1の具体的な実施形態において、可塑剤は、少なくとも1つの芳香族基および少なくとも2つのエステル部分(R−C(=O)−OR’)を含む有機化合物である。このような可塑剤としては、フタル酸エステル、トリメリット酸エステル、安息香酸ジ−およびトリ−エステル、ならびにテレフタル酸エステルが挙げられる。
【0051】
フタル酸エステル可塑剤の非限定的な例としては、フタル酸ビス(2−エチルヘキシル)、フタル酸ジイソノニル、フタル酸ジ−n−プロピル、フタル酸ジ−n−ブチル、フタル酸ブチルベンジル、フタル酸ジイソデシル、フタル酸−ジ−n−オクチル、フタル酸ジイソオクチル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジイソブチル、フタル酸ジ−n−ヘキシル、フタル酸ジイソヘプチル、フタル酸ジ−n−ペンチル、フタル酸ジシクロヘキシル、フタル酸ブチルデシル、フタル酸n−オクチルn−デシル、フタル酸ジ(2−プロピルヘプチル)、フタル酸ジウンデシル、フタル酸ジトリデシルおよびフタル酸ジイソトリデシルが挙げられる。
【0052】
トリメリット酸エステル可塑剤の非限定的な例としては、トリメリット酸トリメチル、トリメリット酸トリ−(2−エチルヘキシル)、トリメリット酸トリヘキシル、トリメリット酸トリヘプチル、トリメリット酸トリオクチル、トリメリット酸トリノニル、トリメリット酸トリデシルが挙げられる。トリメリット酸トリオクチルを用いる場合、優れた結果が得られた。
【0053】
安息香酸ジ−およびトリ−エステル可塑剤の非限定的な例としては、ジ安息香酸ジ−およびトリエチレングリコール、ジ安息香酸ネオペンチルグリコールおよびジ安息香酸ジプロピレングリコールが挙げられる。ジ安息香酸ネオペンチルグリコールを用いる場合、優れた結果が得られた。
【0054】
テレフタル酸エステル可塑剤の非限定的な例としては、テレフタル酸ジ−(2−エチルヘキシル)およびテレフタル酸ジ−オクチルが挙げられる。
【0055】
第2の具体的な実施形態において、可塑剤は、少なくとも1つの芳香族基および少なくとも1つのエステル部分(−R−C(=O)−OR’−)を含む有機化合物である。このような可塑剤としては、安息香酸モノエステル、例えば、安息香酸ブチル、安息香酸イソデシルおよび安息香酸イソノニルが挙げられる。
【0056】
第3の具体的な実施形態において、可塑剤は、少なくとも1つのエステル部分(−R−C(=O)−OR’−)を含む有機脂肪族化合物である。このような可塑剤としては、クエン酸エステルおよびシクロヘキサン二酸エステルが挙げられる。
【0057】
クエン酸エステル可塑剤の非限定的な例としては、クエン酸トリブチル、クエン酸アセチルトリブチル、クエン酸トリエチル、クエン酸アセチルトリエチルおよびクエン酸トリ−2−エチルヘキシルが挙げられる。
【0058】
シクロヘキサン二酸エステル可塑剤の非限定的な例としては、シクロヘキサンジカルボン酸ジ−イソノニルおよびシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ビス(2−エチルヘキシル)が挙げられる。
【0059】
第4の具体的な実施形態において、可塑剤は、ポリエーテルエステルである。ポリエーテルエステルは、少なくとも3つのエーテル部分(R−C−O−C−R’)を含む、アルキルグリコールのエステルを意味することが意図される。
【0060】
このようなポリエーテルエステル可塑剤の非限定的な例としては、ジヘキサン酸トリエチレングリコール、ジヘプタン酸テトラエチレングリコール、ジ−2−エチルヘキサン酸ポリ(エチレングリコール)およびジラウリン酸ポリ(エチレングリコール)が挙げられる。ジ−2−エチルヘキサン酸PEG−400(約400g/molの低分子量ジ−2−エチルヘキサン酸ポリ(エチレングリコール))を用いる場合、優れた結果が得られた。
【0061】
可塑剤は、好ましくは、ポリマー組成物(C)の全重量に基づいて、少なくとも1重量%、好ましくは少なくとも2重量%、より好ましくは少なくとも2.5重量%、更により好ましくは少なくとも2.8重量%、最も好ましくは少なくとも3重量%の量で存在する。更に、可塑剤はまた、好ましくは、ポリマー組成物(C)の全重量に基づいて、最大で4重量%、好ましくは最大で3.8重量%、より好ましくは最大で3.6重量%、更により好ましくは最大で3.4重量%、最も好ましくは最大で3.2重量%の量で存在する。
【0062】
可塑剤が、ポリマー組成物(C)の全重量に基づいて、1〜5重量%、好ましくは2〜4重量%の量で用いられる場合、優れた結果が得られた。
【0063】
任意選択成分
ポリマー組成物(C)はまた、ポリグリコシドまたはポリグリコール酸(PGA)、ポリ乳酸(PLA)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリエチレンアジペート(PEA)、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリプロピレンテレフタレート(PPT)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンナフタレート(PBN)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、および液晶ポリエステル(LCP)からなる群から選択され得る、上述のポリエステル(P)と異なる、少なくとももう1種のポリマーを更に含み得る。それは、好ましくはPBT、PTT、PEN、PETおよびLCPからなる群から選択される。より好ましくは、それは、PBTおよびLCPからなる群から選択される。
【0064】
ポリマー組成物(C)に添加される場合、ポリエステル(P)と異なる他のポリエステルは、好ましくはポリマー組成物(C)の全重量に基づいて、少なくとも1重量%、好ましくは少なくとも2重量%、より好ましくは少なくとも3重量%、更により好ましくは少なくとも4重量%、最も好ましくは少なくとも5重量%の量で存在する。更に、他のポリエステルはまた、好ましくは、ポリマー組成物(C)の全重量に基づいて、最大で20重量%、好ましくは最大で15重量%、より好ましくは最大で10重量%、更により好ましくは最大で9重量%、最も好ましくは最大で8重量%の量で存在する。
【0065】
ポリマー組成物(C)はまた、上述のポリエステル以外の他のポリマー、例えば、ポリカーボネート、ポリエチレングリコール、ポリスルホン、PEEK、PTFEおよびポリフタルアミドを含んでもよい。
【0066】
ポリマー組成物(C)はまた、少なくとも1種の強化充填剤を更に含み得る。
【0067】
強化充填剤は、好ましくは繊維状である。より好ましくは、強化充填剤は、ガラス繊維、炭素繊維、合成ポリマー繊維、アラミド繊維、アルミニウム繊維、チタン繊維、マグネシウム繊維、炭化ホウ素繊維、ロックウール繊維、スチール繊維、ウォラストナイトなどから選択される。更により好ましくは、それは、ガラス繊維、炭素繊維およびウォラストナイトから選択される。
【0068】
繊維状充填剤の特定のクラスは、ウィスカー、即ち、Al、SiC、BC、FeおよびNiなどの様々な原料から作られた単結晶繊維からなる。繊維状充填剤のうちで、ガラス繊維が好ましい;それらには、Additives for Plastics Handbook、第2版、John Murphy、第5.2.3章、43〜48頁に記載されたとおりの、チョップドストランドA−、E−、C−、D−、S−、T−およびR−ガラス繊維が含まれる。
【0069】
本発明の好ましい実施形態において、強化充填剤は、ウォラストナイトおよびガラス繊維から選択される。ウォラストナイトおよび/またはガラス繊維が用いられる場合、優れた結果が得られた。ガラス繊維は、円形断面または楕円形断面(扁平繊維とも呼ばれる)を有していてもよい。
【0070】
存在する場合、強化充填剤は、好ましくは、ポリマー組成物(C)の全重量に基づいて、少なくとも2重量%、より好ましくは少なくとも4重量%、更により好ましくは少なくとも5重量%、最も好ましくは少なくとも10重量%の量で存在する。存在する場合、強化充填剤はまた、ポリマー組成物(C)の全重量に基づいて、好ましくは最大で40重量%、より好ましくは最大で30重量%、更により好ましくは最大で25重量%、最も好ましくは最大で20重量%の量で存在する。
【0071】
強化充填剤が、ポリマー組成物(C)の全重量に基づいて、約5から約40重量%、好ましくは約5から約25重量%、より好ましくは約10から約20重量%の量で組成物中に存在する場合、優れた結果が得られた。
【0072】
ポリマー組成物(C)は、1種以上の衝撃改質剤を更に含み得る。衝撃改質剤は、ポリエステル(P)と反応性または非反応性であり得る。ある種の具体的な実施形態において、ポリマー組成物(C)は、少なくとも1種の反応性衝撃改質剤および少なくとも1種の非反応性衝撃改質剤を含む。
【0073】
用いられてもよい反応性衝撃改質剤としては、エチレン−無水マレイン酸コポリマー、エチレン−アルキル(メタ)アクリレート−無水マレイン酸コポリマー、エチレン−アルキル(メタ)アクリレート−グリシジル(メタ)アクリレートコポリマーなどが挙げられ得る。このような反応性衝撃改質剤の一例は、エチレン、メタクリレートおよびグリシジルメタクリレートのランダムターポリマーである。
【0074】
ポリマー組成物(C)中にブレンドされてもよい非反応性衝撃改質剤としては、一般に様々なゴム材料、例えば、アクリルゴム、ASAゴム、ジエンゴム、オルガノシロキサンゴム、EPDMゴム、SBSまたはSEBSゴム、ABSゴム、NBSゴムなどが挙げられる。非反応性衝撃改質剤の特定の例としては、エチルブチルアクリレート、エチル(メチル)アクリレートまたは2−エチルヘキシルアクリレートコポリマーが挙げられる。
【0075】
存在する場合、衝撃改質剤は、ポリマー組成物(C)の全重量に基づいて、好ましくは少なくとも2重量%、より好ましくは少なくとも4重量%、更により好ましくは少なくとも5重量%、最も好ましくは少なくとも10重量%の量で存在する。存在する場合、衝撃改質剤はまた、ポリマー組成物(C)の全重量に基づいて、好ましくは最大で20重量%、より好ましくは最大で15重量%、更により好ましくは最大で10重量%、最も好ましくは最大で5重量%の量で存在する。
【0076】
ポリマー組成物(C)は、最大約3重量%までの紫外線安定剤またはUV遮断剤を任意選択で更に含んでもよい。例としては、トリアゾールおよびトリアジン、オキサニリド、ヒドロキシベンゾフェノン、ベンゾエート、およびα−シアノアクリレートが挙げられる。存在する場合、紫外線安定剤は、好ましくは、ポリマー組成物(C)の全重量の、約0.1から約3重量%、または好ましくは約0.1から約1重量%、またはより好ましくは約0.1から約0.6重量%の量で存在する。
【0077】
ポリマー組成物(C)はまた、上に記載されたものと異なる、他の任意選択成分、例えば、離型剤、潤滑剤、蛍光増白剤および他の安定剤を含んでもよい。しかしながら、ポリマー組成物(C)は、好ましくはいずれの酸化ポリエチレンワックスも含まない。
【0078】
上に記載されたとおりに、ポリマー組成物(C)は、優れた反射特性を有する。例えば、ポリマー組成物(C)は、10°オブザーバとともにD65光源を用いてASTM E−1331−09に従って測定して、約85%より大きい、好ましくは約86%より大きい、より好ましくは約88%より大きい、更により好ましくは約90%より大きい460nmでの初期反射率を有し得る。
【0079】
ポリマー組成物(C)はまた、ASTM E−313−10に従って測定して、約85%より大きい、好ましくは約86%より大きい、より好ましくは約87%より大きい初期白色度を有し得る。特に有利には、このポリマー材料は、ASTM E313−10に従って測定して、約70%より大きい、好ましくは約75%より大きい、より好ましくは約78%より大きい、更により好ましくは約80%より大きい、200℃で4時間老化後の白色度を有し得る。
【0080】
ポリマー組成物(C)はまた、ASTM E313−10に従って測定して、約80%より大きい、好ましくは約85%より大きい、より好ましくは約90%より大きい、200℃で4時間老化後の白色度保持率を有し得る。
【0081】
ポリマー成分と非ポリマー成分とを混合するために任意の溶融混合方法を用いて、ポリマー組成物(C)を調製してもよい。例えば、ポリマー成分および非ポリマー成分は、例えば、単軸または二軸押出機、ブレンダまたはバンバリーミキサーなどの溶融混合機に、単一工程の添加によって1回限りで、または段階的方式で添加され、次いで、溶融混合されてもよい。段階的方式でポリマー成分および非ポリマー成分を添加する場合、ポリマー成分および/または非ポリマー成分の一部が最初に添加され、溶融混合され、残りのポリマー成分および非ポリマー成分が、その後に添加され、十分混合された組成物が得られるまで更に溶融混合される。
【0082】
本発明の態様はまた、ポリマー組成物(C)からなる少なくとも1つの部品を備える物品を提供し、これにより、従来技術の部品および物品を上回る様々な利点、特に熱および光への同時曝露に対する耐性増加が、それらの他の特性すべてを高レベルに維持しながら与えられる。
【0083】
特定の実施形態において、物品は、発光装置である。
【0084】
発光装置の非限定的な例は、自動車のキーレスエントリーシステム、冷蔵庫内照明、液晶ディスプレイ装置、自動車フロントパネル照明装置、卓上スタンド、ヘッドライト、家庭用電気製品指示器および屋外ディスプレイ装置(交通信号など)、ならびに発光ダイオードデバイス(LED)として一般に知られる、電磁放射線を放射しおよび/または送る少なくとも1つの半導体チップを備えるオプトエレクトロニクスデバイスである。好ましくは、発光装置は、LEDデバイスである。
【0085】
本明細書で使用される場合、「発光ダイオードデバイス」および「LEDデバイス」という用語は、少なくとも1つの発光ダイオードを備えるデバイス、ダイオードを電気回路に接続することができる電気的接続、およびダイオードを部分的に囲む筐体を意味することが意図される。LEDデバイスは、LEDを完全または部分的に覆うレンズを任意選択で有していてもよい。
【0086】
LEDは、好ましくはトップビューLDE(top view LED)、サイドビューLED(side view LED)およびパワーLEDの群から選択される。トップビューLEDは、とりわけ、自動車照明用途、例えば、パネルディスプレイ、ストップライトおよび方向指示器で使用される。サイドビューLEDは、とりわけ、移動電気製品、例えば、携帯電話およびPDAなどに使用される。パワーLEDは、とりわけ、フラッシュライト、自動車デイライトランニングライト、サインで、ならびにLCDディスプレイおよびTV用のバックライトとして使用される。
【0087】
本発明の物品は、交通信号、大面積ディスプレイ、ビデオスクリーン、屋内および屋外照明、携帯電話ディスプレイバックライト、自動車ディスプレイ、車両ブレーキライト、車両ヘッドライト、ラップトップコンピュータディスプレイバックライト、歩行者用床照明およびフラッシュライトなどの用途で使用されるLEDデバイスに組み込まれ得る。
【0088】
本発明の物品は、好ましくは筐体、反射板およびヒートシンクなどの、LEDデバイスの部品である。
【0089】
ポリマー組成物(C)から調製される物品は、当業者に知られた任意の適切な溶融加工方法、例えば、射出成形などによって製造され得る。
【0090】
物品は、筐体に挿入されるLEDへの電気的接続を作製するために使用され得る金属(銅、または銀被覆銅など)リードフレームの上にオーバーモールドされ得る。物品は、好ましくはLEDを囲む筐体の部分にキャビティを有し、これは、LED光を外方向に、およびレンズが存在する場合は、レンズの方向に反射させるために役立つ。キャビティは、円筒状、円錐状、放物線状または他の湾曲形状であってもよく、好ましくは滑らかな表面を有する。あるいは、キャビティの壁は、ダイオードに平行または実質的に平行であってもよい。レンズは、ダイオードキャビティの上に形成されてもよく、エポキシまたはシリコーン材料を含んでもよい。
【0091】
好ましくは、部品の少なくとも50重量%、より好ましくは80重量%超は、ポリマー組成物(C)からなる(部品は恐らくは特に金属を更に含み得る;例えば、ある種の最終用途のために、反射板として作用する部品の表面は、メッキされた金属であってもよい)。より好ましくは、部品の90重量%超が、ポリマー組成物(C)からなる。更により好ましくは、部品は、ポリマー組成物(C)から本質的になる。最も好ましくは、部品は、ポリマー組成物(C)からなる。
【0092】
参照により本明細書に組み込まれる何れかの特許、特許出願、および刊行物の開示が、用語を不明瞭にさせ得る程度に本出願の記載と矛盾する場合は、本記載が優先するものとする。
【実施例】
【0093】
本開示は、これから実施例によって説明され、これらは、本発明を説明することが意図され、本開示の範囲に対する何らの限定も制限的に意味することは意図されない。
【0094】
以下の市販の材料が使用される:
ポリエステル:Eastman(商標) Chemical ProductsからのPCTポリエステル。
ガラス繊維:OCV995としてOCV(商標) Reinforcementsから市販されているE−ガラス繊維。
二酸化チタン1:Ishihara Sangyo Kaisha,Ltdから入手可能なTIPAQUE(登録商標)PC−3−ルチル型TiO
二酸化チタン2:Ishihara Sangyo Kaisha,Ltdから入手可能なTIPAQUE(登録商標)PF691−ルチル型TiO
安定剤:同量の2種の安定剤、即ち、Clariant(商標)から両方とも市販されているHostanox(登録商標)P−EPQおよびNylostab(登録商標)S−EEDを、実験を通して使用した。
添加剤:
化学的核形成剤1:Licomont Nav 101としてClariant(商標)から市販されているモンタン酸ナトリウム。
化学的核形成剤2:Alfa Aesarから市販されているステアリン酸ナトリウム。
溶融混和性核形成剤:AClyn(登録商標)としてHoneywell Internationalから市販されているエチレン−アクリル酸ナトリウムイオノマー。
無機核形成剤:HTP4としてIMI Fabi(商標)から市販されているタルク。
可塑剤1:Uniplex(商標)512としてLanxessから市販されているジ安息香酸ネオペンチルグリコール。
可塑剤2:Uniplex(商標)809としてLanxessから市販されているジ−2−エチルヘキサン酸PEG−400。
可塑剤3:Sigma−Aldrichから市販されているトリメリット酸トリオクチル。
潤滑剤1:LLDPE GRSN−9820としてDow Chemical Companyから市販されているLLDPE。
潤滑剤2:AmeriLubes,L.L.C.から市販されているLICOWAX(登録商標)PED191(高分子量酸化ポリエチレンワックス)。
【0095】
組成物の調製のための一般手順
上に記載したポリエステル樹脂を、重量フィーダにおける減少によって、12ゾーンを備えるZSK−26二軸押出機の第1バレルに供給した。バレル定値温度は、150〜300℃の範囲であり、樹脂は、ゾーン5の前で溶融させた。他の固体成分は、重量フィーダにおける減少によってサイドスタッファーを通してゾーン5で供給した。液体成分は、ゾーン7で供給した。スクリュー速度は、150〜200rpmの範囲であった。押出物を冷却し、慣用の装置を用いてペレット化した。
【0096】
使用した様々な成分の性質および分量を、表1にまとめ、各成分の量を重量パーセントで示す。
【0097】
反射率測定
LEDデバイスにおける発明組成物から作製された部品の挙動を、試料を260℃で10分間曝露することによってシミュレートした。従って、実施例E6〜実施例E8および比較実施例CE1〜比較実施例CE5のそれぞれ一つを用いて、約1.6mmの厚さを有して約50mm直径の円板を調製した。
【0098】
別の熱老化試験を、組成物CE1〜CE3およびE6〜E8から成形したISOバーで、それらを200℃で4時間曝露することによって行った。
【0099】
反射率は、10°オブザーバとともにD65光源を用いてASTM E−1331−09に従ってBKY−Gardner分光器で測定した。少なくとも3つの試料で得られた、元の成形部品、および高熱に曝露後(円板について260℃で10分間およびISOバーについて200℃で4時間)の同じ部品についての平均反射率、ならびに460nmの波長での反射率の保持率パーセントの結果を表2にまとめる。
【0100】
XYZ座標は、同じスキャンから得て、白色度は、ASTM E−313−10を用いて計算した。
【0101】
【表1】
【0102】
【表2】
【0103】
【表3】
【0104】
【表4】
【0105】
結果
表2に示されたデータからわかるとおり、本発明による組成物(E6、E7およびE8)は、驚くべきことに、比較実施例CE2、CE4およびCE5と比較して、高熱に10分間曝露後により高い反射率の保持率を示す。
【0106】
CE5は、酸化ポリエチレンワックスの存在(これは、特許文献5の最適の潤滑剤であると思われる)が、260℃で10分後の組成物の反射率保持率に悪影響を及ぼす(CE1とCE5を比較されたい)という事実を実証するために調製した。
【0107】
また、特許文献4に開示された組成物の挙動との比較のために、組成物CE1、CE2、CE3、E6、E7およびE8を、別の種類の熱処理(即ち、200℃で4時間)にもかけた。得られた白色度および反射率データを、表3にまとめる。実施例E6、E7およびE8の組成物は、少なくとも91%の優れた白色度保持率を実証する一方で、特許文献4(7頁の実施例1から実施例9を参照されたい)に開示された組成物は、白色度保持率で最高84%を特徴としている。
【0108】
表4にまとめたデータも、本発明による実施例E6、E7およびE8の優れた結晶化速度を十分に実証している(+から+++)。
【0109】
例示化合物の最小必要型温は、種々の型温で試験バーを成形することによって決定した。試験バーの寸法は、5インチ長さ×1/2インチ幅×1/32インチ厚さ(これは、LEDの最も厚い断面の典型的な厚さである)であった。次いで、最大結晶化度のパーセントを、DSC(示差走査熱量計)を用いて測定し、測定された鋼製型温に対してプロットした。結晶化度のパーセントは、式:
(1−ΔHcc/ΔH)×100
[ここで、ΔHccは、低温結晶化熱であり、ΔHは、材料の融解熱である(DSCにより測定して)]
を用いて計算した。
【0110】
融解および低温結晶化のエンタルピーは両方とも、20℃/分の加熱速度を用いてASTM D−3428に従って、成形試験バーの5〜10mg試料で測定した。試験バーが完全には結晶化されていない場合、低温結晶化ピークは、材料のTgの付近の走査で現れたのみであった。
【0111】
従って、図1は、型温の関数として実施例CE1、CE2、CE3、E6、E7およびE8について測定したとおりの結晶化度を描くグラフを示す。最低型温は、どの温度で結晶化度が最大可能結晶化度100%に達するかを実測することによってグラフから容易に決定した。組成物CE1およびCE3は、非常に低い結晶化速度を有するが、一方でCE2、E6およびE8は、110から120℃で完全な結晶化度を達成する良好な結晶化速度を特徴としている。興味深いことに、E7は、より低い温度でさえも100%結晶化度に達する優れた結晶化速度を示す。
【0112】
無機核形成剤(1重量%および3重量%で)を含む比較実施例CE1とCE3の両方は、低い結晶化速度および反射率の良好な保持率を特徴としている。
【0113】
化学的核形成剤を含む比較実施例CE2は、良好な結晶化速度および反射率の低い保持率を特徴としている。
【0114】
PETについて示されるとおりの推奨に基づく、化学的核形成剤、溶融混和性核形成剤および可塑剤を含む比較実施例CE4(Wileyにより刊行され、Timothy E.LongおよびJohn Scheirsにより編集された「Modern Polyesters」の第14章に提示されたとおりの)は、熱処理後の初期反射率と反射率保持率の両方について劇的な結果に関して非常に期待はずれであった。従って、結晶化速度は、この化合物で評価していない。
【0115】
本発明による実施例E6、E7およびE8は、前に示されたとおりの広い一連の要件(とりわけ、良好な加工性、高い寸法安定性、高い機械的強度)を満たすともに、驚くべきことに、90%超の高熱処理後の反射率を特徴としている。従って、それらの組成物は、LED部品の製造のための優れた候補である。
【符号の説明】
【0116】
5 ゾーン
7 ゾーン
CE1 組成物
CE2 組成物
CE3 組成物

図1