特許第6652785号(P6652785)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6652785
(24)【登録日】2020年1月28日
(45)【発行日】2020年2月26日
(54)【発明の名称】LED照明の分光分布設計方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 33/50 20100101AFI20200217BHJP
   F21S 2/00 20160101ALI20200217BHJP
   H01L 33/00 20100101ALI20200217BHJP
   F21Y 113/00 20160101ALN20200217BHJP
【FI】
   H01L33/50
   F21S2/00 100
   H01L33/00 L
   F21Y113:00
【請求項の数】9
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2015-80285(P2015-80285)
(22)【出願日】2015年4月9日
(65)【公開番号】特開2016-201451(P2016-201451A)
(43)【公開日】2016年12月1日
【審査請求日】2018年3月1日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】506209422
【氏名又は名称】地方独立行政法人東京都立産業技術研究センター
(74)【代理人】
【識別番号】100093230
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 利夫
(72)【発明者】
【氏名】岩永 敏秀
(72)【発明者】
【氏名】中村 広隆
【審査官】 小濱 健太
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−007142(JP,A)
【文献】 特表2009−544805(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/00−33/64
F21S 2/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
青色LEDと、緑色蛍光体と黄色蛍光体と赤色蛍光体1と赤色蛍光体2とを混合して得られる混合蛍光体とによって構成される白色LEDを用いて白色光を得る方法であって、
次式の係数kを負数とならない範囲で任意に変化させた(ただし、k=1−Σk(j=2,3,4,5)である)ときの白色光の分光分布P(λ)を下記式(1)で表し、設計する白色LEDの光源効率η(lm/W)を下記式(2)で表したとき、
【数1】
のうち、JIS Z8726に規定されている演色評価数の算出に用いられる試験色(以下、JIS試験色とする)No.1〜No.15を前記白色光で照らしたときと前記JIS試験色No.1〜No.15を基準光で照らしたときのCIECAM02−UCSの各色差△E’〜△E’15、またはL表色系の各色差△Eab1〜△Eab15について、色みえ効果に関する視覚評価実験による印象評価との比較を行い、その結果から色みえの違いがないときの閾値をそれぞれ求め、CIECAM02−UCSの各色差△E’〜△E’15を求めた閾値より小さい値に設定するか、またはL表色系の各色差△Eab1〜△Eab15を求めた閾値より小さい値に設定し、かつη最大値となるようにすることを特徴とするLED照明の分光分布設計方法。
上記式において、
P(λ):求めたい白色光の分光分布(分光放射束)
(λ)青色LEDの分光分布(分光放射束)
(λ):緑色蛍光体の分光分布(分光放射束)
(λ):黄色蛍光体の分光分布(分光放射束)
r1(λ):赤色蛍光体1の分光分布(分光放射束)
r2(λ):赤色蛍光体2の分光分布(分光放射束)
λ:波長380nm〜780nm
:青色LEDの混色比
:緑色蛍光体の混色比
:黄色蛍光体の混色比
:赤色蛍光体1の混色比
:赤色蛍光体2の混色比
η:求めたい白色LEDの光源効率(lm/W)
Φ:求めたい白色LEDの全光束(lm)
p:求めたい白色LEDの消費電力(W)
である。
【請求項2】
青色LEDと、緑色蛍光体と黄色蛍光体と赤色蛍光体1と赤色蛍光体2とを混合して得られる混合蛍光体とによって構成される白色LEDを用いて白色光を得る方法であって、
次式の係数k〜kを負数とならない範囲で任意に変化させた(ただし、k=1−2k(j=2,3,4,5)である)ときの白色光の分光分布P(λ)を下記式(1)で表し、設計する白色LEDの光源効率η(lm/W)を下記式(2)で表したとき、
【数2】
のうち、JIS試験色No.1〜No.15を前記白色光で照らしたときと前記JIS試験色No.1〜No.15を基準光で照らしたときのCIECAM02−UCSのブライトネス差△Q〜△Q15、カラフルネス差△M〜△M15またはL表色系のCIE1976明度差△L〜△L15、abクロマ差△Cab1〜Cab15について、色みえ効果に関する視覚評価実験による印象評価との比較を行い、その結果から計算した△QM=a△Q+a△M(n=1〜15)、または△Labn=a’△L+a’△Cabn(n=1〜15)の昼光に比べて鮮やかかつ明るく感じるときの閾値をそれぞれ求め、CIECAM02−UCSの△QM=a△Q+a△M(n=1〜15)のいずれかを求めた閾値より大きい値に設定しかつCIECAM02−UCSの色相角の差△h〜△h15の積和を設定値より小さくするか、または表色系の△Labn=a’△L+a’△Cabn(n=1〜15)のいずれかを求めた閾値より大きい値に設定しかつL表色系のab色相角の差△hab1〜△hab15の積和を設定値より小さくし、さらにη最大値となるようにすることを特徴とするLED照明の分光分布設計方法。
上記式において、
P(λ):求めたい白色光の分光分布(分光放射束)
(λ)青色LEDの分光分布(分光放射束)
(λ):緑色蛍光体の分光分布(分光放射束)
(λ):黄色蛍光体の分光分布(分光放射束)
r1(λ):赤色蛍光体1の分光分布(分光放射束)
r2(λ):赤色蛍光体2の分光分布(分光放射束)
λ:波長380nm〜780nm
:青色LEDの混色比
:緑色蛍光体の混色比
:黄色蛍光体の混色比
:赤色蛍光体1の混色比
:赤色蛍光体2の混色比
η:求めたい白色LEDの光源効率(lm/W)
Φ:求めたい白色LEDの全光束(lm)
p:求めたい白色LEDの消費電力(W)
、a、a’、a’:回帰定数
である。
【請求項3】
青色発光素子と黄色蛍光体とによって構成される白色LEDと、青色LEDと、青緑色LEDと、緑色LEDと、赤色LED1と、赤色LED2を用い、前記白色、青色、青緑色、緑色、赤色1、赤色2それぞれのLEDからの光を加法混色して白色光を得る方法であって、
次式の係数kを負数とならない範囲で任意に変化させたときの白色光の分光分布P(λ)を下記式(3)で表し、設計する白色LEDの光源効率η(lm/W)を下記式(2)で表したとき、
【数3】
のうち、JIS試験色No.1〜No.15を前記白色光で照らしたときと前記JIS試験色No.1〜No.15を基準光で照らしたときのCIECAM02−UCSの各色差△E’〜△E’15、またはL表色系の各色差△Eab1〜△Eab15について、色みえ効果に関する視覚評価実験による印象評価との比較を行い、その結果から色みえの違いがないときの閾値をそれぞれ求め、CIECAM02−UCSの各色差△E’〜△E’15を求めた閾値より小さい値に設定するか、またはL表色系の各色差△Eab1〜△Eab15を求めた閾値より小さい値に設定し、かつη最大値となるようにすることを特徴とするLED照明の分光分布設計方法。
上記式において、
P(λ):求めたい白色光の分光分布
(λ):白色LEDの分光分布(定格出力時の分光放射束)
(λ):青色LEDの分光分布(定格出力時の分光放射束)
bg(λ):青緑色LEDの分光分布(定格出力時の分光放射束)
(λ):緑色LEDの分光分布(定格出力時の分光放射束)
r1(λ):赤色LED1の分光分布(定格出力時の分光放射束)
r2(λ):赤色LED2の分光分布(定格出力時の分光放射束)
λ:波長380nm〜780nm
:白色LEDの放射束比(白色LEDの定格出力時を1とする)
:青色LEDの放射束比(青色LEDの定格出力時を1とする)
:青緑色LEDの放射束比(青緑色LEDの定格出力時を1とする)
:緑色LEDの放射束比(緑色LEDの定格出力時を1とする)
:赤色LED1の放射束比(赤色LED1の定格出力時を1とする)
:赤色LED2の放射束比(赤色LED2の定格出力時を1とする)
η:求めたい白色LEDの光源効率(lm/W)
Φ:求めたい白色LEDの全光束(lm)
p:求めたい白色LEDの消費電力(W)
である。
【請求項4】
青色発光素子と黄色蛍光体とによって構成される白色LEDと、青色LEDと、青緑色LED、緑色LEDと、赤色LED1と、赤色LED2を用い、前記白色、青色、青緑色、緑色、赤色1、赤色2それぞれのLEDからの光を加法混色して白色光を得る方法であって、
次式の係数kを負数とならない範囲で任意に変化させたときの白色光の分光分布P(λ)を下記式(3)で表し、設計する白色LEDの光源効率η(lm/W)を下記式(2)で表したとき、
【数4】
のうち、JIS試験色No.1〜No.15を前記白色光で照らしたときと前記JIS試験色No.1〜No.15を基準光で照らしたときのCIECAM02−UCSのブライトネス差△Q〜△Q15、カラフルネス差△M〜△M15またはL表色系のCIE1976明度差△L〜△L15、abクロマ差△Cab1〜△Cab15について、色みえ効果に関する視覚評価実験による印象評価との比較を行い、その結果から計算した△QM=a△Q+a△M(n=1〜15)、または△Labn=a’△L+a’△Cabn(n=1〜15)の昼光に比べて鮮やかかつ明るく感じるときの閾値をそれぞれ求め、CIECAM02−UCSの△QM=a△Q+a△M(n=1〜15)のいずれかを求めた閾値より大きい値に設定しかつCIECAM02−UCSの色相角の差△h〜△h15の積和を設定値より小さくするか、または表色系の△Labn=a’△L+a’△Cabn(n=1〜15)のいずれかを求めた閾値より大きい値に設定しかつL表色系のab色相角の差△hab1〜△hab15の積和を設定値より小さくし、さらにη最大値となるようにすることを特徴とするLED照明の分光分布設計方法。
上記式において、
P(λ):求めたい白色光の分光分布
(λ):白色LEDの分光分布(定格出力時の分光放射束)
(λ):青色LEDの分光分布(定格出力時の分光放射束)
bg(λ):青緑色LEDの分光分布(定格出力時の分光放射束)
(λ):緑色LEDの分光分布(定格出力時の分光放射束)
r1(λ):赤色LED1の分光分布(定格出力時の分光放射束)
r2(λ):赤色LED2の分光分布(定格出力時の分光放射束)
λ:波長380nm〜780nm
:白色LEDの放射束比(白色LEDの定格出力時を1とする)
:青色LEDの放射束比(青色LEDの定格出力時を1とする)
:青緑色LEDの放射束比(青緑色LEDの定格出力時を1とする)
:緑色LEDの放射束比(緑色LEDの定格出力時を1とする)
:赤色LED1の放射束比(赤色LED1の定格出力時を1とする)
:赤色LED2の放射束比(赤色LED2の定格出力時を1とする)
η:求めたい白色LEDの光源効率(lm/W)
Φ:求めたい白色LEDの全光束(lm)
p:求めたい白色LEDの消費電力(W)
、a、a’、a’:回帰定数
である。
【請求項5】
青色LEDと、青緑色LEDと、青色LEDと緑色蛍光体とによって構成される緑色LEDと、青色LEDと黄色蛍光体とによって構成される黄色LEDと、青色LEDと赤色蛍光体1とによって構成される赤色LED1と、青色LEDと赤色蛍光体2とによって構成される赤色LED2を用い、前記青色、青緑色、緑色、黄色、赤色1、赤色2それぞれのLEDからの光を加法混色して白色光を得る方法であって、
次式の係数kを負数とならない範囲で任意に変化させたときの白色光の分光分布P(λ)を下記式(4)で表し、設計する白色LEDの光源効率η(lm/W)を下記式(2)で表したとき、
【数5】
のうち、JIS試験色No.1〜No.15を前記白色光で照らしたときと前記JIS試験色No.1〜No.15を基準光で照らしたときのCIECAM02−UCSの各色差△E’〜△E’15またはL表色系の各色差△Eab1〜△Eab15について、色みえ効果に関する視覚評価実験による印象評価との比較を行い、その結果から色みえの違いがないときの閾値をそれぞれ求め、CIECAM02−UCSの各色差△E’〜△E’15を求めた閾値より小さい値に設定するか、またはL表色系の各色差△Eab1〜△Eab15を求めた閾値より小さい値に設定し、かつη最大値となるようにすることを特徴とするLED照明の分光分布設計方法。
上記式において、
P(λ):求めたい白色光の分光分布(分光放射束)
(λ):青色LEDの分光分布(定格出力時の分光放射束)
bg(λ):青緑色LEDの分光分布(定格出力時の分光放射束)
(λ):緑色LEDの分光分布(定格出力時の分光放射束)
(λ):黄色LEDの分光分布(定格出力時の分光放射束)
r1(λ):赤色LED1の分光分布(定格出力時の分光放射束)
r2(λ):赤色LED2の分光分布(定格出力時の分光放射束)
λ:波長380nm〜780nm
:青色LEDの放射束比(青色LEDの定格出力時を1とする)
:青緑色LEDの放射束比(青緑色LEDの定格出力時を1とする)
:緑色LEDの放射束比(緑色LEDの定格出力時を1とする)
:黄色LEDの放射束比(黄色LEDの定格出力時を1とする)
:赤色LED1の放射束比(赤色LED1の定格出力時を1とする)
:赤色LED2の放射束比(赤色LED2の定格出力時を1とする)
η:求めたい白色LEDの光源効率(lm/W)
Φ:求めたい白色LEDの全光束(lm)
p:求めたい白色LEDの消費電力(W)
である。
【請求項6】
青色LEDと、青緑色LEDと、青色LEDと緑色蛍光体とによって構成される緑色LEDと、青色LEDと黄色蛍光体とによって構成される黄色LEDと、青色LEDと赤色蛍光体1とによって構成される赤色LED1と、青色LEDと赤色蛍光体2とによって構成される赤色LED2を用い、前記青色、青緑色、緑色、黄色、赤色1、赤色2それぞれのLEDからの光を加法混色して白色光を得る方法であって、
次式の係数kを負数とならない範囲で任意に変化させたときの白色光の分光分布P(λ)を下記式(4)で表し、設計する白色LEDの光源効率η(lm/W)を下記式(2)で表したとき、
【数6】
のうち、JIS試験色No.1〜No.15を前記白色光で照らしたときと前記JIS試験色No.1〜No.15を基準光で照らしたときのCIECAM02−UCSのブライトネス差△Q〜△Q15、カラフルネス差△M〜△M15またはL表色系のCIE1976明度差△L〜△L15、abクロマ差△Cab1〜△ab15について、色みえ効果に関する視覚評価実験による印象評価との比較を行い、その結果から計算した△QM=a△Q+a△M(n=1〜15)、または△Labn=a’△L+a’△Cabn(n=1〜15)の昼光に比べて鮮やかかつ明るく感じるときの閾値をそれぞれ求め、CIECAM02−UCSの△QM=a△Q+a△M(n=1〜15)のいずれかを求めた閾値より大きい値に設定しかつCIECAM02−UCSの色相角の差△h〜△h15の積和を設定値より小さくするか、または表色系の△Labn=a’△L+a’△Cabn(n=1〜15)のいずれかを求めた閾値より大きい値に設定しかつL表色系のab色相角の差△hab1〜△hab15の積和を設定値より小さい値に設定し、さらにη最大値となるようにすることを特徴とするLED照明の分光分布設計方法。
上記式において、
P(λ):求めたい白色光の分光分布(分光放射束)
(λ):青色LEDの分光分布(定格出力時の分光放射束)
bg(λ):青緑色LEDの分光分布(定格出力時の分光放射束)
(λ):緑色LEDの分光分布(定格出力時の分光放射束)
(λ):黄色LEDの分光分布(定格出力時の分光放射束)
r1(λ):赤色LED1の分光分布(定格出力時の分光放射束)
r2(λ):赤色LED2の分光分布(定格出力時の分光放射束)
λ:波長380nm〜780nm
:青色LEDの放射束比(青色LEDの定格出力時を1とする)
:青緑色LEDの放射束比(青緑色LEDの定格出力時を1とする)
:緑色LEDの放射束比(緑色LEDの定格出力時を1とする)
:黄色LEDの放射束比(黄色LEDの定格出力時を1とする)
:赤色LED1の放射束比(赤色LED1の定格出力時を1とする)
:赤色LED2の放射束比(赤色LED2の定格出力時を1とする)
η:求めたい白色LEDの光源効率(lm/W)
Φ:求めたい白色LEDの全光束(lm)
p:求めたい白色LEDの消費電力(W)
、a、a’、a’:回帰定数
である。
【請求項7】
青色LEDと、緑色蛍光体と黄色蛍光体と赤色蛍光体1と赤色蛍光体2とを混合して得られる混合蛍光体とによって構成される照明器具において、請求項1または2に記載の分光分布を有することを特徴とする照明器具。
【請求項8】
青色発光素子と黄色蛍光体とによって構成される白色LEDと、青色LEDと、青緑色LEDと、緑色LEDと、赤色LED1と、赤色LED2から構成される照明器具において、請求項3または4に記載の分光分布を有することを特徴とする照明器具。
【請求項9】
青色LEDと、青緑色LEDと、青色LEDと緑色蛍光体とによって構成される緑色LEDと、青色LEDと黄色蛍光体とによって構成される黄色LEDと、青色LEDと赤色蛍光体1とによって構成される赤色LED1と、青色LEDと赤色蛍光体2とによって構成される赤色LED2から構成される照明器具において、請求項5または6に記載の分光分布を有することを特徴とする照明器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LED照明の分光分布設計方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本出願人らは、特許文献1において、LED照明について、基準光との色みえの差を最小とする分光分布設計方法および色みえの鮮やかさと明るさを最大にする分光分布設計方法を提案した。
【0003】
この方法は、例えば、青色発光素子と黄色蛍光体とによって構成される白色LEDと、青色LEDと、青緑色LEDと、緑色LEDと、赤色LEDを用い、前記LEDからの光を加法混色して白色光を得て、視感評価実験の結果に、より忠実で、色の鮮やかさと明るさを総合的に評価できる演色評価方法を規定し、かつこの演色評価方法に基づくLED照明の分光分布設計を行うものである。
【0004】
しかし、これらの分光分布設計方法では、LED照明の光源効率が考慮されておらず、 色みえは改善されるが、光源効率が低下してしまうという問題が残されていた。LED照明の普及では光源効率は非常に重要であり、この点でさらに改善すべき余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014−7142号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、基準光との色みえの差が十分に小さく、また特定の色の鮮やかさと明るさが十分に大きく、かつLED照明の光源効率が最大となる分光分布設計方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、[1]本発明のLED照明の分光分布設計方法は、青色LEDと、緑色蛍光体と黄色蛍光体と赤色蛍光体1と赤色蛍光体2とを混合して得られる混合蛍光体とによって構成される白色LEDを用いて白色光を得る方法であって、次式の係数kを負数とならない範囲で任意に変化させた(ただし、k=1−Σk(j=2,3,4,5)である)ときの白色光の分光分布P(λ)を下記式(1)で表し、設計する白色LEDの光源効率η(lm/W)を下記式(2)で表したとき、
【数1】
のうち、JIS Z8726に規定されている演色評価数の算出に用いられる試験色(以下、JIS試験色とする)No.1〜No.15を前記白色光で照らしたときと前記JIS試験色No.1〜No.15を基準光で照らしたときのCIECAM02−UCSの各色差△E’〜△E’15、またはL表色系の各色差△Eab1〜△Eab15について、色みえ効果に関する視覚評価実験による印象評価との比較を行い、その結果から色みえの違いがないときの閾値をそれぞれ求め、CIECAM02−UCSの各色差△E’〜△E’15を求めた閾値より小さい値に設定するか、またはL表色系の各色差△Eab1〜△Eab15を求めた閾値より小さい値に設定し、かつη最大値となるようにすることを特徴とする。
【0008】
上記式において、
P(λ):求めたい白色光の分光分布
(λ)青色LEDの分光分布(分光放射束)
(λ):緑色蛍光体の分光分布(分光放射束)
(λ):黄色蛍光体の分光分布(分光放射束)
r1(λ):赤色蛍光体1の分光分布(分光放射束)
r2(λ):赤色蛍光体2の分光分布(分光放射束)
λ:波長380nm〜780nm
:青色LEDの混色比
:緑色蛍光体の混色比
:黄色蛍光体の混色比
:赤色蛍光体1の混色比
:赤色蛍光体2の混色比
η:求めたい白色LEDの光源効率(lm/W)
Φ:求めたい白色LEDの全光束(lm)
p:求めたい白色LEDの消費電力(W)
である。
【0009】
[2]また、本発明のLED照明の分光分布設計方法は、青色LEDと、緑色蛍光体と黄色蛍光体と赤色蛍光体1と赤色蛍光体2とを混合して得られる混合蛍光体とによって構成される白色LEDを用いて白色光を得る方法であって、次式の係数k〜kを負数とならない範囲で任意に変化させた(ただし、k=1−2k(j=2,3,4,5)である)ときの白色光の分光分布P(λ)を下記式(1)で表し、設計する白色LEDの光源効率η(lm/W)を下記式(2)で表したとき、
【数2】
のうち、JIS試験色No.1〜No.15を前記白色光で照らしたときと前記JIS試験色No.1〜No.15を基準光で照らしたときのCIECAM02−UCSのブライトネス差△Q〜△Q15、カラフルネス差△M〜△M15またはL表色系のCIE1976明度差△L〜△L15、abクロマ差△Cab1〜Cab15について、色みえ効果に関する視覚評価実験による印象評価との比較を行い、その結果から計算した△QM=a△Q+a△M(n=1〜15)、または△Labn=a’△L+a’△Cabn(n=1〜15)の昼光に比べて鮮やかかつ明るく感じるときの閾値をそれぞれ求め、CIECAM02−UCSの△QM=a△Q+a△M(n=1〜15)のいずれかを求めた閾値より大きい値に設定しかつCIECAM02−UCSの色相角の差△h〜△h15の積和を設定値より小さくするか、または表色系の△Labn=a’△L+a’△Cabn(n=1〜15)のいずれかを求めた閾値より大きい値に設定しかつL表色系のab色相角の差△hab1〜△hab15の積和を設定値より小さくし、さらにη最大値となるようにすることを特徴とする。
【0010】
上記式において、
P(λ):求めたい白色光の分光分布(分光放射束)
(λ)青色LEDの分光分布(分光放射束)
(λ):緑色蛍光体の分光分布(分光放射束)
(λ):黄色蛍光体の分光分布(分光放射束)
r1(λ):赤色蛍光体1の分光分布(分光放射束)
r2(λ):赤色蛍光体2の分光分布(分光放射束)
λ:波長380nm〜780nm
:青色LEDの混色比
:緑色蛍光体の混色比
:黄色蛍光体の混色比
:赤色蛍光体1の混色比
:赤色蛍光体2の混色比
η:求めたい白色LEDの光源効率(lm/W)
Φ:求めたい白色LEDの全光束(lm)
p:求めたい白色LEDの消費電力(W)
、a、a’、a’:回帰定数
である。
【0011】
[3]また、本発明のLED照明の分光分布設計方法は、青色発光素子と黄色蛍光体とによって構成される白色LEDと、青色LEDと、青緑色LEDと、緑色LEDと、赤色LED1と、赤色LED2を用い、前記白色、青色、青緑色、緑色、赤色1、赤色2それぞれのLEDからの光を加法混色して白色光を得る方法であって、次式の係数kを負数とならない範囲で任意に変化させたときの白色光の分光分布P(λ)を下記式(3)で表し、設計する白色LEDの光源効率η(lm/W)を下記式(2)で表したとき、
【数3】
のうち、JIS試験色No.1〜No.15を前記白色光で照らしたときと前記JIS試験色No.1〜No.15を基準光で照らしたときのCIECAM02−UCSの各色差△E’〜△E’15、またはL表色系の各色差△Eab1〜△Eab15について、色みえ効果に関する視覚評価実験による印象評価との比較を行い、その結果から色みえの違いがないときの閾値をそれぞれ求め、CIECAM02−UCSの各色差△E’〜△E’15を求めた閾値より小さい値に設定するか、またはL表色系の各色差△Eab1〜△Eab15を求めた閾値より小さい値に設定し、かつη最大値となるようにすることを特徴とする。
【0012】
上記式において、
P(λ):求めたい白色光の分光分布
(λ):白色LEDの分光分布(定格出力時の分光放射束)
(λ):青色LEDの分光分布(定格出力時の分光放射束)
bg(λ):青緑色LEDの分光分布(定格出力時の分光放射束)
(λ):緑色LEDの分光分布(定格出力時の分光放射束)
r1(λ):赤色LED1の分光分布(定格出力時の分光放射束)
r2(λ):赤色LED2の分光分布(定格出力時の分光放射束)
λ:波長380nm〜780nm
:白色LEDの放射束比(白色LEDの定格出力時を1とする)
:青色LEDの放射束比(青色LEDの定格出力時を1とする)
:青緑色LEDの放射束比(青緑色LEDの定格出力時を1とする)
:緑色LEDの放射束比(緑色LEDの定格出力時を1とする)
:赤色LED1の放射束比(赤色LED1の定格出力時を1とする)
:赤色LED2の放射束比(赤色LED2の定格出力時を1とする)
η:求めたい白色LEDの光源効率(lm/W)
Φ:求めたい白色LEDの全光束(lm)
p:求めたい白色LEDの消費電力(W)
である。
【0013】
[4]また、本発明のLED照明の分光分布設計方法は、青色発光素子と黄色蛍光体とによって構成される白色LEDと、青色LEDと、青緑色LED、緑色LEDと、赤色LED1と、赤色LED2を用い、前記白色、青色、青緑色、緑色、赤色1、赤色2それぞれのLEDからの光を加法混色して白色光を得る方法であって、次式の係数kを負数とならない範囲で任意に変化させたときの白色光の分光分布P(λ)を下記式(3)で表し、設計する白色LEDの光源効率η(lm/W)を下記式(2)で表したとき、
【数4】
のうち、JIS試験色No.1〜No.15を前記白色光で照らしたときと前記JIS試験色No.1〜No.15を基準光で照らしたときのCIECAM02−UCSのブライトネス差△Q〜△Q15、カラフルネス差△M〜△M15またはL表色系のCIE1976明度差△L〜△L15、abクロマ差△Cab1〜△Cab15について、色みえ効果に関する視覚評価実験による印象評価との比較を行い、その結果から計算した△QM=a△Q+a△M(n=1〜15)、または△Labn=a’△L+a’△Cabn(n=1〜15)の昼光に比べて鮮やかかつ明るく感じるときの閾値をそれぞれ求め、CIECAM02−UCSの△QM=a△Q+a△M(n=1〜15)のいずれかを求めた閾値より大きい値に設定しかつCIECAM02−UCSの色相角の差△h〜△h15の積和を設定値より小さくするか、または表色系の△Labn=a’△L+a’△Cabn(n=1〜15)のいずれかを求めた閾値より大きい値に設定しかつL表色系のab色相角の差△hab1〜△hab15の積和を設定値より小さくし、さらにη最大値となるようにすることを特徴とする。
【0014】
上記式において、
P(λ):求めたい白色光の分光分布
(λ):白色LEDの分光分布(定格出力時の分光放射束)
(λ):青色LEDの分光分布(定格出力時の分光放射束)
bg(λ):青緑色LEDの分光分布(定格出力時の分光放射束)
(λ):緑色LEDの分光分布(定格出力時の分光放射束)
r1(λ):赤色LED1の分光分布(定格出力時の分光放射束)
r2(λ):赤色LED2の分光分布(定格出力時の分光放射束)
λ:波長380nm〜780nm
:白色LEDの放射束比(白色LEDの定格出力時を1とする)
:青色LEDの放射束比(青色LEDの定格出力時を1とする)
:青緑色LEDの放射束比(青緑色LEDの定格出力時を1とする)
:緑色LEDの放射束比(緑色LEDの定格出力時を1とする)
:赤色LED1の放射束比(赤色LED1の定格出力時を1とする)
:赤色LED2の放射束比(赤色LED2の定格出力時を1とする)
η:求めたい白色LEDの光源効率(lm/W)
Φ:求めたい白色LEDの全光束(lm)
p:求めたい白色LEDの消費電力(W)
、a、a’、a’:回帰定数
である。
【0015】
[5]また、本発明のLED照明の分光分布設計方法は、青色LEDと、青緑色LEDと、青色LEDと緑色蛍光体とによって構成される緑色LEDと、青色LEDと黄色蛍光体とによって構成される黄色LEDと、青色LEDと赤色蛍光体1とによって構成される赤色LED1と、青色LEDと赤色蛍光体2とによって構成される赤色LED2を用い、前記青色、青緑色、緑色、黄色、赤色1、赤色2それぞれのLEDからの光を加法混色して白色光を得る方法であって、次式の係数kを負数とならない範囲で任意に変化させたときの白色光の分光分布P(λ)を下記式(4)で表し、設計する白色LEDの光源効率η(lm/W)を下記式(2)で表したとき、
【数5】
のうち、JIS試験色No.1〜No.15を前記白色光で照らしたときと前記JIS試験色No.1〜No.15を基準光で照らしたときのCIECAM02−UCSの各色差△E’〜△E’15またはL表色系の各色差△Eab1〜△Eab15について、色みえ効果に関する視覚評価実験による印象評価との比較を行い、その結果から色みえの違いがないときの閾値をそれぞれ求め、CIECAM02−UCSの各色差△E’〜△E’15を求めた閾値より小さい値に設定するか、またはL表色系の各色差△Eab1〜△Eab15を求めた閾値より小さい値に設定し、かつη最大値となるようにすることを特徴とする。
【0016】
上記式において、
P(λ):求めたい白色光の分光分布(分光放射束)
(λ):青色LEDの分光分布(定格出力時の分光放射束)
bg(λ):青緑色LEDの分光分布(定格出力時の分光放射束)
(λ):緑色LEDの分光分布(定格出力時の分光放射束)
(λ):黄色LEDの分光分布(定格出力時の分光放射束)
r1(λ):赤色LED1の分光分布(定格出力時の分光放射束)
r2(λ):赤色LED2の分光分布(定格出力時の分光放射束)
λ:波長380nm〜780nm
:青色LEDの放射束比(青色LEDの定格出力時を1とする)
:青緑色LEDの放射束比(青緑色LEDの定格出力時を1とする)
:緑色LEDの放射束比(緑色LEDの定格出力時を1とする)
:黄色LEDの放射束比(黄色LEDの定格出力時を1とする)
:赤色LED1の放射束比(赤色LED1の定格出力時を1とする)
:赤色LED2の放射束比(赤色LED2の定格出力時を1とする)
η:求めたい白色LEDの光源効率(lm/W)
Φ:求めたい白色LEDの全光束(lm)
p:求めたい白色LEDの消費電力(W)
である。
【0017】
[6]また、本発明のLED照明の分光分布設計方法は、青色LEDと、青緑色LEDと、青色LEDと緑色蛍光体とによって構成される緑色LEDと、青色LEDと黄色蛍光体とによって構成される黄色LEDと、青色LEDと赤色蛍光体1とによって構成される赤色LED1と、青色LEDと赤色蛍光体2とによって構成される赤色LED2を用い、前記青色、青緑色、緑色、黄色、赤色1、赤色2それぞれのLEDからの光を加法混色して白色光を得る方法であって、次式の係数kを負数とならない範囲で任意に変化させたときの白色光の分光分布P(λ)を下記式(4)で表し、設計する白色LEDの光源効率η(lm/W)を下記式(2)で表したとき、
【数6】
のうち、JIS試験色No.1〜No.15を前記白色光で照らしたときと前記JIS試験色No.1〜No.15を基準光で照らしたときのCIECAM02−UCSのブライトネス差△Q〜△Q15、カラフルネス差△M〜△M15またはL表色系のCIE1976明度差△L〜△L15、abクロマ差△Cab1〜△ab15について、色みえ効果に関する視覚評価実験による印象評価との比較を行い、その結果から計算した△QM=a△Q+a△M(n=1〜15)、または△Labn=a’△L+a’△Cabn(n=1〜15)の昼光に比べて鮮やかかつ明るく感じるときの閾値をそれぞれ求め、CIECAM02−UCSの△QM=a△Q+a△M(n=1〜15)のいずれかを求めた閾値より大きい値に設定しかつCIECAM02−UCSの色相角の差△h〜△h15の積和を設定値より小さくするか、または表色系の△Labn=a’△L+a’△Cabn(n=1〜15)のいずれかを求めた閾値より大きい値に設定しかつL表色系のab色相角の差△hab1〜△hab15の積和を設定値より小さい値に設定し、さらにη最大値となるようにすることを特徴とする。
【0018】
上記式において、
P(λ):求めたい白色光の分光分布(分光放射束)
(λ):青色LEDの分光分布(定格出力時の分光放射束)
bg(λ):青緑色LEDの分光分布(定格出力時の分光放射束)
(λ):緑色LEDの分光分布(定格出力時の分光放射束)
(λ):黄色LEDの分光分布(定格出力時の分光放射束)
r1(λ):赤色LED1の分光分布(定格出力時の分光放射束)
r2(λ):赤色LED2の分光分布(定格出力時の分光放射束)
λ:波長380nm〜780nm
:青色LEDの放射束比(青色LEDの定格出力時を1とする)
:青緑色LEDの放射束比(青緑色LEDの定格出力時を1とする)
:緑色LEDの放射束比(緑色LEDの定格出力時を1とする)
:黄色LEDの放射束比(黄色LEDの定格出力時を1とする)
:赤色LED1の放射束比(赤色LED1の定格出力時を1とする)
:赤色LED2の放射束比(赤色LED2の定格出力時を1とする)
η:求めたい白色LEDの光源効率(lm/W)
Φ:求めたい白色LEDの全光束(lm)
p:求めたい白色LEDの消費電力(W)
、a、a’、a’:回帰定数
である。
【0019】
[7]また、本発明の照明器具は、青色LEDと、緑色蛍光体と黄色蛍光体と赤色蛍光体1と赤色蛍光体2とを混合して得られる混合蛍光体とによって構成される照明器具において、上記[1]または[2]に記載の分光分布を有することを特徴とする
【0020】
[8]また、本発明の照明器具は、青色発光素子と黄色蛍光体とによって構成される白色LEDと、青色LEDと、青緑色LEDと、緑色LEDと、赤色LED1と、赤色LED2から構成される照明器具において、上記[3]または[4]に記載の分光分布を有することを特徴とする。
【0021】
[9]また、本発明の照明器具は、青色LEDと、青緑色LEDと、青色LEDと緑色蛍光体とによって構成される緑色LEDと、青色LEDと黄色蛍光体とによって構成される黄色LEDと、青色LEDと赤色蛍光体1とによって構成される赤色LED1と、青色LEDと赤色蛍光体2とによって構成される赤色LED2から構成される照明器具において、上記[5]または[6]に記載の分光分布を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
請求項1、3、5の発明によれば、基準光源との色みえの差が十分小さくかつその内、光源効率が最大となる分光分布を得ることができる。
請求項2、4、6の発明によれば、ある特定の色を鮮やかでかつ明るく見せかつその内、光源効率が最大となる分光分布を得ることができる。
【0023】
請求項7ないし9の発明によれば、基準光源との色みえの差が十分小さくかつその内、光源効率が最大となる分光分布を得ることができ、また、ある特定の色を鮮やかでかつ明るく見せかつその内、光源効率が最大となる分光分布を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】照明ブースを使った視感評価において、基準光源および試験光源ともにD50蛍光ランプを設置したときの「違って見える」評定値の結果を示す図である。
図2】市販LEDランプ、蛍光ランプおよび白熱電球を用いた、別実験で求めた「違って見える」評定値(実験値)とCIECAM02−UCSの色差△E’(計算値)の相関関係を示す図である。
図3】実験で求めた「明るい」評定値(実験値)とCIECAM02−UCSの△QM(計算値)の相関関係を示す図である。
図4】実験で求めた「鮮やか」評定値(実験値)とCIECAM02−UCSの△QM(計算値)の相関関係を示す図である
図5】本発明の実施形態の設計方法で算出した分光分布例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明を実施の形態に基づいて詳細に説明する。
【0026】
特許文献1では、色みえの効果を最大にするように混色比k〜kを決めている。色みえの効果を最大にしようとすると、青色LEDによる発光や赤色蛍光体による発光の比率を高めなければならないが、一方、青色LEDによる発光や赤色蛍光体による発光の比率を高めるほど、光源効率は低下する。そこで本発明では、色みえの効果を確保しつつ、光源効率の最大化を行うことができる分光分布設計方法を実現する。
【0027】
請求項1および2に対する光源効率は、以下のように算出することができる。
青色LEDを励起光源とする蛍光体の分光分布P(λ)は、内部量子効率ηintを介して以下の関係がある。励起光源の分光分布のうち、蛍光体に吸収された分光分布をE(λ)とする。ただし、P(λ)およびE(λ)は、分光放射束(W/nm)の単位を持つ絶対値とする。
【数7】
ここで、nは蛍光体の分光分布の光量子数、nは励起光源の分光分布の光量子数、hはプランク常数、cは光速である。
【0028】
励起光源と蛍光体の分光分布の形状が同一であれば、ηintは保存されるため、励起光源の分光分布がE(λ)のk倍、すなわちkE(λ)のときの蛍光体の分光分布P’(λ)は、
【数8】
から、次式が成立する。
【数9】
【0029】
青色LEDと各蛍光体(緑色蛍光体、黄色蛍光体、赤色蛍光体1、赤色蛍光体2)を組み合わせた白色LEDでは、励起源である青色LEDの分光分布を各蛍光体に任意の混色比で分配すると考えることができる。すなわち青色LEDおよび各蛍光体の混色比をk(j=1,2,3,4,5)とすると、白色LEDの分光分布は、次式で表すことができる。ただし、k=1−Σk(j=2,3,4,5)である。
【数10】
【0030】
厳密には、各蛍光体からの発光による自己励起または相互励起による影響もあるが、その割合は小さいと考えられるため、ここでは無視する。
【0031】
各分光分布が分光放射束(W/nm)の単位を持つとき、設計した白色LEDの全光束Φ(lm)は、
【数11】
と表すことができる。ここで、Kは最大視感効率(lm/W)、V(λ)は標準分光視感効率である。励起源である青色LEDへの投入電力をp(W)とすると、設計した白色LEDの光源効率ηは、次式で表すことができる。
【数12】
【0032】
請求項3〜に対する光源効率は、以下のように算出することができる。
各LEDの「放射束−電力特性」(これは、LEDメーカーのスペックシートに記載されている「順方向電流−放射束特性」および「順方向電流−順方向電圧」特性から導出することができる。または、実験的に求めることができる。)を求める。ここで、放射束とはLEDから放射される単位時間当たりのエネルギー量を表す。構成する各LEDの定格出力時の放射束に対する、求める放射束の比をkで表すと、各LEDの放射束比kと各LEDへの供給電力p(W)の関係式を次式で表すことができる。
【数13】
は、各LEDの放射束と電力の関係を表す関数である。
求める白色LEDに供給する全電力は、次式で表すことができる。
【数14】
各分光分布が分光放射束(W/nm)の単位を持つとき、設計した白色LEDの全光束Φ(lm)は、
【数15】
と表すことができる。ここで、Kは最大視感効率(lm/W)、V(λ)は標準分光視感効率である。設計した白色LEDの光源効率ηは、次式で表すことができる。
【数16】
【0033】
本発明では、色みえの効果を確保するために、視感評価実験によるLEDや蛍光ランプ等の照明下での色見えの印象評価を行い、色見えモデル(CIECAM02−UCS、L表色系)を用い、色みえに関する指標の閾値を求めておき、この閾値より小さい値の範囲あるいは大きい値の範囲で、光源効率を最大にするように最適化計算を行う。
【0034】
CIECAM02−UCSは、知覚される色の見えの各属性を定量化させる色の見えモデルとしてCIE(国際照明委員会)により提案されているものである。ここで、色の見えの属性としては、色相角(H),ブライトネス(Q)、カラフルネス〔鮮やかさ〕(M)、クロマ(C)、飽和度(s)、色相(h)等がある。これらの指標を使って、様々な分光反射率を持つ物体色と照明光の組み合わせによる色の見え方を再現することができる。物体色としては、例えば、JIS Z8726に規定されている演色評価数の算出に用いられる試験色(以下、JIS試験色とする)No.1〜No.15などが利用できる。ここで、JIS試験色No.1〜No.15を色みえの度合いを求めたい試験光で照らしたときとJIS試験色No.1〜No.15を基準光で照らしたときの色差を△E’〜△E’15、ブライトネス差を△Q〜△Q15、カラフルネス差を△M〜M15、色相差を△h〜△h15、ブライトネス差とカラフルネス差の重回帰式を△QM=a△Q+a△M(n=1〜15;a、aは回帰係数である。)で表す。基準光としては、例えば、D50蛍光ランプが用いられる。
【0035】
CIECAM02−UCSによる色見え予測について述べると、この予測モデルは、CIECAM02−UCSに基づいた均等色空間を利用するもので、英国Leed大学が提案している。その計算手順は、三刺激値X,Y,Z、白色点の三刺激値Xw,Yw,Zwと、順応輝度L,順応の程度D,周囲の条件から、色順応,非線形特性,反対色性を考慮した計算を行い、色の見えの属性(H,J,C,Q,M,sなど)を求め、さらに均等色空間への変換を行うことで、色差△E’を算出する。
【0036】
また、L表色系は、CIEが1976年に推奨した均等色空間であり、物体色の表示に広く用いられる。色の見えの属性としてはCIE1976明度(L)、abクロマ(Cab)、ab色相角(hab)等がある。L表色系では、JIS試験色No.1〜No.15を試験光で照らしたときとJIS試験色No.1〜No.15を基準光で照らしたときの色差を△Eab〜△Eab15、CIE1976明度差を△L〜△L15、abクロマ差を△Cab1〜△Cab15、ab色相角の差を△hab1〜△hab15、明度差とクロマ差の重回帰式を△Lab=a’△L+a’△Cabn(n=1〜15;a’、a’は回帰係数である。)で表す。
【0037】
色みえの効果を確保するための視感評価実験は、特許文献1に記載されているように、例えば、試料光源としてLEDと電球形蛍光ランプと白熱電球を用い、試料光源用ブース(間口0.5m、奥行き0.5m、高さ1.2m)と基準光源用ブース(同サイズ)を併設させたセットで行う。
基準光源としてはD50蛍光ランプを用い、一対比較により評価を行う。
両ブースに同じ評価用色票(15色、JIS試験色に近似した分光反射率を持つ)を1枚ずつ提示し、被験者は、その見えを比較して評価する。色票の載置面の照度は500lxに設定する。評価の方法はSD法(semantic differential method)で行い、相対的な見えの印象の程度を20個の形容詞に関して、「全くそう思わない(1)」〜「非常にそう思う(7)」の7段階で被験者に答えさせる。
形容詞:違って見える、鮮やか、明るい、赤みが強い、緑みが強い、自然である、好ましい、・・・等である。
例えば、「右側の色と比べて、左側の色の方が、明るい」等の評価である。
【0038】
本発明の実施形態では、青色LEDと黄色、緑色、赤色(赤色1、赤色2)の各蛍光体を用い、加法混色して目的に適した白色光を合成する。このとき、次式で目的とする白色光の分光分布P(λ)を表すことができる。
【数17】
【0039】
上記式において、P(λ):求めたい白色光の分光分布、P(λ):青色LEDの分光分布、P(λ):緑色蛍光体の分光分布、P(λ):黄色蛍光体の分光分布、Pr1(λ):赤色蛍光体1の分光分布、Pr2(λ):赤色蛍光体2の分光分布、λ:波長380nm〜780nm、k〜k:青色LEDおよび各蛍光体の混色比(ただし、k=1−Σk(j=2,3,4,5)である。ここで、赤色蛍光体1と赤色蛍光体2を用いるのは、赤系統の色について、基準光との色みえの差を小さくする、または明るく、鮮やかに見せるためであり、これらは色みえの評価に使用したJIS試験色の分光反射率を基準に選択する。
【0040】
(1)式の分光分布のうち,相関色温度を一定値(ここでは、5000K)およびCIECAM02−UCSの△h〜△h15の積和またはL表色系の△hab1〜△hab15の積和を設定値より小さくする制約条件の下、(1)CIECAM02−UCSの色差△E’またはL表色系の色差△Eabを最小にする、および(2)色票番号9(高彩度の赤)のCIECAM02−UCSのブライトネス差△Qおよびカラフルネス差△Mについて、△QM=0.39△Q+0.26△MまたはL表色系のCIE1976明度差△L、abクロマ差△Cabから計算した△Lab9=0.55△L+0.06△Cab9のいずれかを最大にするように係数k〜kの最適化計算を実施するが、上記の色みえの効果を最大化すべく設計すると、発光効率が低下するという課題がある。すなわち、青色LED励起の白色LEDでは、色みえの効果を改善するために赤色成分を増加させる必要があるが、眼の視感効率という点では、赤色成分の効率は低く、本成分を多く含む白色LEDの光源効率も低くなる。本発明では、色みえの効果を確保しつ光源効率ηを最大化するように最適化計算を行い、白色LEDの分光分布を導出する。上記で、回帰係数0.39と0.26および0.55と0.06は、特許文献1に記載したような視感実験により求めた値である。
【0041】
本実施形態では、色みえだけではなく、光源効率も考慮して分光分布設計を以下のようにして行う。
【0042】
色みえの効果を確保するために、先に求めた視感評価実験結果を利用し、色みえ効果の閾値を求めた。すなわち、昼光近似または赤色の鮮やかさを増す色見えの効果を確保できる△E’(色差)と△QM(赤色の明るさ・鮮やかさ)の範囲をそれぞれ次の通り、導出した。
【0043】
(1)昼光近似の分光分布
照明ブースを使った視感評価において、基準光源および試験光源ともにD50蛍光ランプを設置したときの「違って見える」評定値(前述した段階の値)の結果を図1に示す。被験者は、大学生10名とした。その結果、「違って見える」評定値の平均値は、約4点(どちらともいえない)であった。上記の実験は、ほぼ同一の相対分光分布を比較しているため、光源の分光分布に起因する色見えの違いは生じないことが明らかである。この結果から、光源による色見えの違いがないときの闘値として、4点を採用する。一方、市販LEDランプ、蛍光ランプおよび白熱電球を用いた、別実験で求めた「違って見える」評定値(実験値)とCIECAM2−UCSの色差△E’(計算値)の相関関係を図2に示す。色差△E’の対数値と「違って見える」評定値は正の相関係にあり、評定値が4点のときの色差を外挿すると△E’≒2.2であり、これを色差△E’の閾値とする。これより、光源による色みえの違いがないときの色差△E’を閾値より小さい値、すなわち△E'<2.2とする。また、L表色系の色差△Eの対数値も「違って見える」評定値と正の相関関係にあり、評定値が4点の時の色差を外挿すると△E≒5.1であり、これを色差△Eの閾値とする。これより、光源による色みえの違いがないときの色差△Eを閾値より小さい値、すなわち△E<5.1とする。
【0044】
(2)赤色の鮮やかさを増す分光分布
試料光源として市販LEDおよび蛍光ランプを設定した際の「鮮やか」評定値と「明るい」評定値が(基準光源に対して)ともに6点(「そう思う」)以上のとき、鮮やかさおよび明るさが明らかに増加しているとする。さらに本実験で求めた「鮮やか」評定値(実験値)および「明るい」評定値とCIECAM02−UCSの△QM=a△Q+a△M(△Q)は基準光源とのブライトネス差、△Mはカラフルネス差、a、aは実験から求める定数、nは色票番号1〜15)の相関関係を図3図4に示す。ややばらつきは大きいが、△QMと「鮮やか」評定値または「明るい」評定値はそれぞれ正の相関関係にあるといえる。「鮮やか」評定値または「明るい」評定値が6点のときの△QMを内挿すると「鮮やか」評定値では△QM≒1.8、「明るい」評定値では△QM≒2.2であった。これより、昼光に比べて明らかに鮮やかかつ明るく感じるときの△QMの閾値を2.2とし、△QMを閾値より大きい値、すなわち△QM>2.2とする(図3)。また、L表色系の△L**abn=a’△L+a’△Cabn(CIE1976明度差△L、abクロマ差△Cab、a’、a’は実験から求める定数、nは色票番号1〜15)と「鮮やか」評定値または「明るい」評定値はそれぞれ正の相関関係にある。「鮮やか」評定値または「明るい」評定値が6点のときの△Labnを内挿すると「鮮やか」評定値では△Lab≒2.7、「明るい」評定値では△Lab≒3.3であった。これより、昼光に比べて明らかに鮮やかかつ明るく感じるときの△Labnの閾値を3.3とし、△Labnを閾値より大、すなわち△Labn>3.3とする。
【0045】
次に(1)または(2)の範囲で最も効率の良い分光分布を例えば、一般化簡約勾配(GRG)法を使用した最適化計算により、それぞれ算出する。最適化計算の制約条件としては、以下にまとめることができる。
(a)相関色温度を5000K(昼白色)とする。
(b)色の変化(色相角の差△hまたは△hab)を設定値より小とする。
(c)昼光近似の分光分布の場合、色差△E’を閾値より小さい値、すなわち△E’<2.2とする、または色差△Eを閾値より小さい値、すなわち△E<5.1とする。
(d)赤色の鮮やかさを増す分光分布の場合、△QMを閾値より大きい値、すなわち△QM>2.2とする、または△Labnを閾値より大きい値、すなわち△Labn>3.3とする。
【0046】
上記制約条件で、目的変数として光源効率ηを最大化するように最適化計算を行う。
以上の設計方法により算出した分光分布例を図5に示す。表1には、バランスを考慮した分光分布の効率改善例を示す。効率考慮前に比べて、(1)"昼光近似"分光分布について16%、(2)"赤色鮮やか"分光分布について25%の発光効率向上を実現している。
【0047】
【表1】

図1
図2
図3
図4
図5