(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記フランジ接合部の全周を覆うハウジング型補強部材は、前記鋼管の管軸方向からみて、径方向で分割された複数の円弧状セグメントで構成されていることを特徴とする、請求項1に記載したハウジング型補強部材。
前記フランジ接合部の前記一部を覆うハウジング型補強部材は、前記鋼管の管軸方向からみて、円弧状に形成された1つ又は複数の円弧状ピースで構成されていることを特徴とする、請求項1に記載したハウジング型補強部材。
前記略コ字形溝を形成する両側面部における前記フランジ接合部にボルト接合する部位は、他の部位よりも前記鋼管の管軸方向からみて径方向に長い深溝部に形成されていることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一に記載したハウジング型補強部材。
前記フランジ付き鋼管のフランジに補強リブが設けられている場合、前記略コ字形溝に、当該補強リブと干渉を生じないスリットが形成されていることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一に記載したハウジング型補強部材。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記したように、鋼製スリットダムを構築する際に多用されるフランジ接合であるが、特に鋼製スリットダムの上流側で実施する場合、
図8と
図9に示したように、巨礫がフランジ接合部又は鋼管の中間部に衝突(直撃)することによる衝撃等(図中の矢印参照)により、前記フランジ接合部が開いたり、芯ずれしたり(ずり動いたり)して強度・剛性が(急激に)低下する懸念がある。更に他のフランジ接合部にも悪影響を及ぼし、ひいては鋼製スリットダム自体が倒壊する等、その用をなさない懸念もある。
前記特許文献1には、
図12に示すように、鞘管(36)を用いた接合手段が開示されてはいるものの、取り付け及び取り外しが容易で熟練工を必要としない機械的接合に非常に優れたフランジ接合について、改良した技術は今のところ見当たらない。
【0005】
本発明は、上述した背景技術の課題に鑑みて案出されたものであり、その目的とするところは、前記フランジ接合部を巨礫の直撃から護ることはもとより、せん断抵抗力および曲げ抵抗力を高めることにより、巨礫の衝撃等による開き、又は芯ずれを極力防止でき、ひいては所定の耐用年数まで強度・剛性を保持した安定性、安全性に優れた鋼製スリットダムを実現し、近年の増大する土石流規模や想定外規模の土石流・巨礫の衝突にも対応できる、ハウジング型補強部材ならびに同部材を用いた鋼製スリットダムのフランジ接合部の補強方法および補強構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための手段として、請求項
1に記載した発明に係るハウジング型補強部材は、
河川の横断方向両岸のコンクリート堤体間に設けられる鋼製スリットダムを構成するフランジ付き鋼管同士のフランジ接合部を補強するハウジング型補強部材であって、
前記フランジ接合部の全周又はその一部を覆う略コ字形溝を備え、
前記略コ字形溝を形成する両側面部が前記鋼管のフランジ孔を利用して前記フランジ接合部にボルト接合される構成であること
、
前記両側面部における前記フランジ接合部にボルト接合される部位は、前記フランジ接合部に直接又はスペーサを介して当接されて前記フランジ接合部および前記両側面部の4つ全てを共締めでボルト接合可能な深溝に形成されていることを特徴とする。
【0008】
請求項
2に記載した発明は、請求項
1に記載したハウジング型補強部材において、前記フランジ接合部の全周を覆うハウジング型補強部材は、前記鋼管の管軸方向からみて、径方向で分割された複数の円弧状セグメントで構成されていることを特徴とする。
請求項
3に記載した発明は、請求項
2に記載したハウジング型補強部材において、前記フランジ接合部の全周を覆うハウジング型補強部材は、一対の円弧状セグメントで構成されていることを特徴とする。
請求項
4に記載した発明は、請求項
1に記載したハウジング型補強部材において、前記フランジ接合部の前記一部を覆うハウジング型補強部材は、前記鋼管の管軸方向からみて、円弧状に形成された1つ又は複数の円弧状ピースで構成されていることを特徴とする。
【0009】
請求項
5に記載した発明は、請求項
1〜4のいずれか一に記載したハウジング型補強部
材において、前記略コ字形溝を形成する両側面部における前記フランジ接合部にボルト接合する部位は、他の部位よりも前記鋼管の管軸方向からみて径方向に長い深溝部に形成されていることを特徴とする。
請求項
6に記載した発明は、請求項
5に記載したハウジング型補強部材において、前記深溝部は、前記鋼管の管軸方向からみて周方向両端部にのみ設けられていることを特徴とする。
【0010】
請求項
7に記載した発明は、請求項
1〜4のいずれか一に記載したハウジング型補強部材において、前記略コ字形溝は、鋼管同士のフランジ接合に用いたボルト等の接合部材を覆う均等断面形状に形成されていることを特徴とする。
【0011】
請求項
8に記載した発明は、請求項
1〜7のいずれか一に記載したハウジング型補強部材において、前記フランジ付き鋼管のフランジに補強リブが設けられている場合、前記略コ字形溝に、当該補強リブと干渉を生じないスリットが形成されていることを特徴とする。
【0013】
請求項
9に記載した発明に係る鋼製スリットダムのフランジ接合部の補強方法は、前記請求項
1に記載のハウジング型補強部材を用いて前記鋼製スリットダムを構成するフランジ付き鋼管同士のフランジ接合部を補強する方法であって、
接合する鋼管同士のフランジを突き合わせ、前記ハウジング型補強部材を接合するフランジ孔以外のフランジ孔を利用してフランジ接合した後、前記ハウジング型補強部材をフランジ接合部に当てがい、当該フランジ接合部に用いられるボルトよりも長尺のボルトを前記ハウジング型補強部材用のフランジ孔を利用してボルト接合することにより当該ハウジング型補強部材をフランジ接合部に固定することを特徴とする。
【0014】
請求項
10に記載した発明に係る鋼製スリットダムのフランジ接合部の補強方法は、前記請求項
1に記載のハウジング型補強部材を用いて前記鋼製スリットダムを構成したフランジ付き鋼管同士の既存のフランジ接合部を補強する方法であって、
前記既存のフランジ接合部における前記ハウジング型補強部材を接合するフランジ孔に接合されているボルトを撤去した後、前記ハウジング型補強部材をフランジ接合部に当てがい、前記ボルトよりも長尺のボルトを前記フランジ孔を利用してボルト接合することにより当該ハウジング補強部材をフランジ接合部に固定することを特徴とする。
【0015】
請求項
11に記載した発明に係る鋼製スリットダムのフランジ接合部の補強構造は、前記請求項
1に記載のハウジング型補強部材を用いて前記鋼製スリットダムを構成するフランジ付き鋼管同士のフランジ接合部を補強した構造であって、
接合する鋼管同士のフランジが突き合わされ、前記ハウジング型補強部材を接合するフランジ孔以外のフランジ孔を利用してフランジ接合されていること、
前記フランジ接合部に前記ハウジング型補強部材が当てがわれ、当該フランジ接合部に用いられるボルトよりも長尺のボルトが前記ハウジング型補強部材用のフランジ孔を利用してボルト接合されることにより当該ハウジング型補強部材がフランジ接合部に固定されていることを特徴とする。
【0016】
請求項
12に記載した発明は、請求項
11に記載した鋼製スリットダムのフランジ接合部の補強構造において、前記ハウジング型補強部材は、前記フランジ接合部の上流側と下流側とに対向する配置で設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、フランジ接合部に対するハウジング型補強部材の保護効果および接合(挟持)効果により、フランジ接合部を巨礫の直撃から護ることはもとより、フランジ接合部のせん断抵抗力および曲げ抵抗力を高めることができるので、巨礫の衝撃等による開き、又は芯ずれを極力防止できる。
ひいては所定の耐用年数まで強度・剛性を保持した安定性、安全性に優れた鋼製スリットダムを実現し、近年の増大する土石流規模や想定外規模の土石流・巨礫の衝突にも対応することができる。
また、請求項
7によれば、フランジ接合部だけでなく、ボルト及びナットのフランジ接合部材をも保護できるので、巨礫の衝撃等による開き、又は芯ずれを更に防止できる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は、河川の横断方向両岸のコンクリート堤体間に設けられる鋼製スリットダムのフランジ付き鋼管継手構造において、そのフランジ接合部の補強(強化)、具体的には以下の実施例で逐一説明するが、要するに前記フランジ接合部(特には外周面部、及び両側面の一部)をハウジング型補強部材で覆うことで巨礫の直撃から護ることはもとより、当該フランジ接合部のせん断抵抗力および曲げ抵抗力を高める技術的思想に立脚している。
前記ハウジング型補強部材は、主として金属製で実施されるが、所要の剛性を備えていれば樹脂製でも実施できる。
【0020】
前記ハウジング型補強部材の諸寸法は、使用するフランジの大きさに応じて適宜設計され、当該フランジも使用する鋼管の大きさに応じて適宜設計変更される。使用する鋼管の大きさ(形態)も構造設計に応じて適宜設計変更されるが、外径(φ)400〜600mm程度、板厚(t)9〜22mm程度が一般的である。もとより、フランジ接合する鋼管1、2同士の外径、内径(中空断面形状)は一致させておくことが構造力学上好ましい。
以上を踏まえ、本実施例では、一例として、フランジ付き鋼管は、外径400mm程度、板厚9mm程度の大きさで実施している。当該鋼管の接合端縁に設けるフランジは、一例として、外径600mm程度、板厚36mm程度の大きさで実施している。よって、本実施例にかかる前記ハウジング型補強部材は、一例として、板厚72mm程度のフランジ接合部を覆うことができる幅寸で、厚み(板厚)が9〜16mm程度の略コ字形溝状を備え、所要の強度・剛性を有する形態で実施している。
【0021】
なお、本発明にかかるハウジング型補強部材は、鋼製スリットダムにおけるすべてのフランジ接合部に取り付けて実施しても良いし、要所(例えば、上流側に位置するフランジ接合部)に限定して取り付けて実施しても良い。実施のバリエーションは多様に考えられる。
以下、
参考例と実施例を図面に基づいて説明する。
<参考例>
【実施例1】
【0022】
参考例にかかるハウジング型補強部材は、
図1A〜Dに示したように、河川の横断方向両岸のコンクリート堤体間に設けられる鋼製スリットダム(図示省略)を構成するフランジ付き鋼管1、2同士のフランジ接合部Fを補強するハウジング型補強部材10(5、6)であり、前記フランジ接合部Fの全周を覆う略コ字形溝5a、6aを備え、前記鋼管1、2の管軸方向からみて、径方向で分割された複数(図示例では2つ)の円弧状セグメント5、6からなり、前記フランジ接合部Fの全周を覆うように突き合わせ接合される構成で実施されている。
ちなみに図中の符号3、4は、鋼管1、2の外方に突き出る一対の円盤状のフランジを示し、符号7はフランジ接合に用いるボルトを示し、符号8は同ナットを示している。なお、前記円盤状のフランジ3、4の代わりに環状のフランジを用いてもよい。
【0023】
一方のフランジ付き鋼管1の接合端縁には、円盤状のフランジ3が当該鋼管1と芯が一致するように溶接(全周溶接)により固着(固定)されている。他方のフランジ付き鋼管2の接合端縁には、同様に、円盤状のフランジ4が当該鋼管2と芯が一致するように溶接により固着されている。
前記ハウジング型補強部材10を構成する円弧状セグメント5、6は、略コ字形溝5a、6aを内径方向に設けた環状リングを半割りにしたに等しい一対の構成で実施されている。前記略コ字形溝5a、6aは、前記フランジ接合部Fの外周面部、及び両側面の一部に略密着する形状で実施されている。
【0024】
よって、接合する前記鋼管1、2同士のフランジ3、4を突き合わせてフランジ接合した後、当該フランジ接合部Fに前記円弧状セグメント5、6からなるハウジング型補強部材10を当てがうと(
図1A、B参照)、フランジ接合部Fの外周面部に円弧状セグメント5、6が略密着し、フランジ接合部Fの外周面部、及び両側面の一部を覆う(言い換えると、ボルト7及びナット8を露出させた)構成となる(
図1C、D参照)。その後、円弧状セグメント5、6同士の突き合わせ部を溶接接合することにより、当該円弧状セグメント5、6(ハウジング型補強部材10)がフランジ接合部Fに固定される。
【0025】
上記構成のハウジング型補強部材10によれば、フランジ接合部Fに対するハウジング型補強部材10の保護効果および接合(挟持)効果により、フランジ接合部Fを巨礫の直撃から護ることはもとより、フランジ接合部Fのせん断抵抗力および曲げ抵抗力を高めることができるので、巨礫の衝撃等による開き、又は芯ずれを極力防止できる。ひいては所定の耐用年数まで強度・剛性を保持した安定性、安全性に優れた鋼製スリットダムを実現し、近年の増大する土石流規模や想定外規模の土石流・巨礫の衝突にも対応することができる。
【0026】
なお、本
参考例では、2つの円弧状セグメント5、6でハウジング型補強部材10を構成しているが、3つ以上の円弧状セグメントの組み合わせでも同様に実施することができる。複数の円弧状セグメントは、要は突き合わせた状態で環状に形成できる形態であればよく、周方向の長さが異なる組合せでももちろん実施できる。
また、本
参考例では、前記円弧状セグメント5、6を溶接接合して一体化しているがこれに限定されず、
図2に示したように、両端縁部に鍔部を延設させた一対の円弧状セグメント5’、6’を互いに突き合わせ、当該突き合わせた鍔部に設けたボルト通し孔を利用してボルト接合することにより一体化して実施することもできる。
[実施例1]
【実施例2】
【0027】
実施例
1(
図3)にかかるハウジング型補強部材20(15、16)は、上記
参考例と比し、フランジ付き鋼管1、2のフランジ孔を利用してフランジ接合部Fに固定する構成で実施している点が相違する。その他の構成要素は上記
参考例と同一なので同一の符号を付してその説明を適宜省略する。
【0028】
すなわち、実施例
1にかかるハウジング型補強部材20(15、16)は、
図3A〜Dに示したように、前記フランジ接合部Fの全周を覆う略コ字形溝15a、16aを備え、
前記略コ字形溝15a、16aを形成する両側面部が前記鋼管1、2のフランジ孔を利用して前記フランジ接合部Fにボルト接合される構成で実施されている。
具体的には、前記両側面部における前記フランジ接合部Fにボルト接合される部位は、前記フランジ接合部Fに直接(又はスペーサを介して)当接されて前記フランジ接合部Fおよび前記両側面部の4つ全てを共締めでボルト接合可能な深溝に形成されている。
【0029】
このハウジング型補強部材20は、前記鋼管1、2の管軸方向からみて、径方向で分割された複数(図示例では2つ)の円弧状セグメント15、16で構成されている。
前記円弧状セグメント15、16は、略コ字形溝15a、16aを内径方向に設けた略環状リングを半割りにしたに等しい一対の構成で実施されている。前記略コ字形溝15a、16aは、前記フランジ接合部Fの外周面部、及び両側面の一部に略密着する形状で実施されている。
また、円弧状セグメント15、16は、略コ字形溝15a、16aを形成する両側面部における前記フランジ接合部Fにボルト接合する部位(図示例では周方向両端部)15b、16bを、他の部位よりも前記鋼管1、2の管軸方向からみて径方向に長い深溝部に形成して実施している。当該深溝部15b、16bの形状は特に限定されず、例えば、
図3Eに示す形状でも実施できる。
【0030】
よって、接合する前記鋼管1、2同士のフランジ3、4を突き合わせ、前記ハウジング型補強部材20(15、16)を接合するフランジ孔以外のフランジ孔を利用してフランジ接合した後、当該フランジ接合部Fに前記ハウジング型補強部材20(15、16)を当てがうと(
図3A参照)、フランジ接合部Fの外周面部に円弧状セグメント15、16が略密着し、フランジ接合部Fの外周面部、及び両側面の一部を覆う構成となる(
図3B参照)。その後、前記円弧状セグメント15、16の周方向両端部の深溝部15b、16bに設けたボルト通し孔と、対応するフランジ孔との芯を一致させ、前記ボルト7よりも長尺のボルト17を通してナット8で締結してボルト接合することにより、当該ハウジング型補強部材20がフランジ接合部Fに固定される。
【0031】
上記構成のハウジング型補強部材20によれば、フランジ接合部Fに対するハウジング型補強部材20の保護効果および接合効果により、フランジ接合部Fを巨礫の直撃から護ることはもとより、フランジ接合部Fのせん断抵抗力および曲げ抵抗力を高めることができるので、巨礫の衝撃等による開き、又は芯ずれを極力防止できる。ひいては所定の耐用年数まで強度・剛性を保持した安定性、安全性に優れた鋼製スリットダムを実現し、近年の増大する土石流規模や想定外規模の土石流・巨礫の衝突にも対応することができる。
【0032】
なお、本実施例では、2つの円弧状セグメント15、16でハウジング型補強部材20を構成しているが、3つ以上の円弧状セグメントの組み合わせでも同様に実施することができる。複数の円弧状セグメントは、要は突き合わせた状態で環状に形成できる形態であればよく、周方向の長さが異なる組合せでももちろん実施できる。
また、本実施例にかかる前記円弧状セグメント15、16は、その周方向両端部のみ深溝部15b、16bに形成しているがこれに限定されず、
図4A、Bに示したように、周方向全体にわたって均等断面形状の深溝部に形成した円弧状セグメント15’、16’を用いて実施することもできる。この場合、フランジ接合に用いるボルトは長尺のボルト17(図示例では8本)のみを用いることになる。
すなわち、
図4にかかる実施例によれば、接合する前記鋼管1、2同士のフランジ3、4を突き合わせた後、所謂フランジ接合を行うことなく、前記円弧状セグメント15’、16’をフランジ接合部Fの全体を覆うように略隙間なく密着させて位置決めし、各両端部に長尺のボルト17を2本ずつ(1本ずつでも可)接合することによりハウジング型補強部材20を当該フランジ接合部Fに固定して実施する。
この
図4にかかる実施例によれば、前記円弧状セグメント15’、16’がフランジ接合部Fをきっちり拘束するので、所謂フランジ接合と同等の効果を発揮できる。よって、上記作用効果(段落[0031]参照)に加え、ボルトの部材点数および接合作業の省力化を図ることができ、効率的、かつ経済的である。
[実施例2]
【実施例3】
【0033】
実施例
2(
図5)にかかるハウジング型補強部材30(25、26)は、上記実施例
1と比し、フランジ接合部Fの全周ではなく、その一部を覆う構成で実施している点が相違する。その他の構成要素は上記実施例
1と同一なので同一の符号を付してその説明を適宜省略する。
【0034】
すなわち、実施例
2にかかるハウジング型補強部材30(25、26)は、
図5A〜Dに示したように、前記フランジ接合部Fの全周のうち、その一部を覆う略コ字形溝25a、26aを備え、前記鋼管1、2の管軸方向からみて、円弧状に形成された1つ又は複数(図示例では1対)の円弧状ピース25、26で構成され、前記鋼管1、2のフランジ孔を利用して前記フランジ接合部Fにボルト接合される構成で実施されている。
【0035】
前記略コ字形溝25a、26aは、上記実施例
1で説明した略コ字形溝と同様に、前記フランジ接合部Fの外周面部、及び両側面の一部に略密着する形状で実施されている。また、円弧状ピース25、26は、略コ字形溝25a、26aを形成する両側面部における前記フランジ接合部Fにボルト接合する部位(図示例では周方向両端部)25b、26bを、他の部位よりも前記鋼管1、2の管軸方向からみて径方向に長い深溝部に形成して実施している。当該深溝部25b、26bの形状は特に限定されず、例えば、
図5Eに示す形状でも実施できる。
【0036】
よって、接合する前記鋼管1、2同士のフランジ3、4を突き合わせ、前記ハウジング型補強部材30(25、26)を接合するフランジ孔以外のフランジ孔を利用してフランジ接合した後、当該フランジ接合部Fに前記ハウジング型補強部材30(25、26)を、図示例では中央部(の上流側と下流側と)に対向する配置で当てがうと(
図5A参照)、フランジ接合部Fの外周面部に円弧状ピース25、26が略密着し、フランジ接合部Fの外周面部、及び両側面の一部を覆う構成となる(
図5B参照)。その後、前記円弧状ピース25、26の周方向両端部の深溝部25b、26bに設けたボルト通し孔と、対応するフランジ孔との芯を一致させ、前記ボルト7よりも長尺のボルト17を通してナット8で締結してボルト接合することにより、当該ハウジング型補強部材30がフランジ接合部Fに固定される。
【0037】
上記構成のハウジング型補強部材30によれば、フランジ接合部Fに対するハウジング型補強部材30の保護効果および接合効果により、フランジ接合部Fを巨礫の直撃から護ることはもとより、フランジ接合部Fのせん断抵抗力および曲げ抵抗力を高めることができるので、巨礫の衝撃等による開き、又は芯ずれを極力防止できる。ひいては所定の耐用年数まで強度・剛性を保持した安定性、安全性に優れた鋼製スリットダムを実現し、近年の増大する土石流規模や想定外規模の土石流・巨礫の衝突にも対応することができる。
【0038】
なお、本実施例では、2つの円弧状ピース25、26でハウジング型補強部材30を構成しているが、1つ又は3つ以上の円弧状ピースの組み合わせでも同様に実施することができる。前記1つの円弧状ピースで実施する場合は、前記フランジ接合部Fの上流側の部位に取り付けて実施する。
また、本実施例にかかる前記円弧状ピース25、26は、その周方向両端部のみ深溝部25b、26bに形成しているがこれに限定されず、前記
図3に対する
図4の実施例と同様に、周方向全体にわたって均等断面形状の深溝部に形成した円弧状ピース(図示省略)を用いて実施することもできる。この場合、フランジ接合に用いるボルトは長尺のボルト17のみを用いることになる。
具体的には、前記
図4の実施例と略同様に、接合する前記鋼管1、2同士のフランジ3、4を突き合わせた後、所謂フランジ接合を行うことなく、当該円弧状ピースをフランジ接合部Fの前後の側面部を覆うように略隙間なく密着させて位置決めし、長尺のボルト17をその円弧状の周方向に4本ずつの計8本(又は両端部に1本ずつの計4本でも可)接合することによりハウジング型補強部材30を当該フランジ接合部Fに固定して実施する。
この実施例によれば、前記均等断面形状の深溝部に形成した円弧状ピースがフランジ接合部Fをきっちり拘束するので、所謂フランジ接合と同等の効果を発揮できる。よって、上記作用効果(段落[0037]参照)に加え、ボルトの部材点数および接合作業の省力化を図ることができ、効率的、かつ経済的である。
[実施例3]
【実施例4】
【0039】
実施例
3(
図6)にかかるハウジング型補強部材40(35、36)は、上記実施例
1(
図3)と比し、略コ字形溝を拡幅し、且つ周方向全域を深溝とすることにより、フランジ接合部Fに用いるボルト7及びナット8をも保護する構成で実施している点が相違する。その他の構成要素は上記実施例
1と同一なので同一の符号を付してその説明を適宜省略する。
【0040】
すなわち、実施例
3にかかるハウジング型補強部材40(35、36)は、
図6A〜Eに示したように、前記フランジ接合部Fの外周面の全周を覆うことはもとより、フランジ接合部Fに用いた接合部材(ボルト7及びナット8)を覆うことができる幅寸及び深さ寸法を有する均等断面形状に形成した略コ字形溝35a、36aを備え、前記鋼管1、2のフランジ孔を利用して前記フランジ接合部Fにボルト接合される構成で実施されている。
【0041】
このハウジング型補強部材40は、前記鋼管1、2の管軸方向からみて、径方向で分割された複数(図示例では2つ)の円弧状セグメント35、36で構成されている。
前記円弧状セグメント35、36は、略コ字形溝35a、36aを内径方向に設けた略環状リングを半割りにしたに等しい一対の構成で実施されている。
また、円弧状セグメント35、36は、略コ字形溝35a、36aを形成する両側面部における前記フランジ接合部Fにボルト接合する部位(図示例では周方向両端部)の内側面部に、ボルト接合する際に必要な間隔保持部材として、スペーサ35b、36bを予め溶接して設けている。当該スペーサ35b、36bの代わりに、
図6Fに示すワッシャ35b’、36b’でも同様に実施できる。
【0042】
よって、接合する前記鋼管1、2同士のフランジ3、4を突き合わせ、前記ハウジング型補強部材40(35、36)を接合するフランジ孔以外のフランジ孔を利用してフランジ接合した後、当該フランジ接合部Fに前記ハウジング型補強部材40(35、36)を当てがい(
図6A参照)、前記スペーサ35b、36bでフランジ接合部Fを挟持して位置決めすると、円弧状セグメント35、36がフランジ接合部Fに、ボルト7等の接合部材を覆い隠す構成で掛け留められる(
図6B参照)。その後、前記円弧状セグメント35、36の周方向両端部に設けたボルト通し孔と、対応するフランジ孔との芯を一致させ、前記ボルト7、17よりも長尺のボルト27を通してナット8で締結してボルト接合することにより、当該ハウジング型補強部材40がフランジ接合部Fに固定される。
【0043】
上記構成のハウジング型補強部材40によれば、フランジ接合部Fおよびボルト7等のフランジ接合部材に対するハウジング型補強部材40の保護効果および接合効果により、フランジ接合部Fを巨礫の直撃から護ることはもとより、フランジ接合部Fのせん断抵抗力および曲げ抵抗力を高めることができるので、巨礫の衝撃等による開き、又は芯ずれを極力防止できる。ひいては所定の耐用年数まで強度・剛性を保持した安定性、安全性に優れた鋼製スリットダムを実現し、近年の増大する土石流規模や想定外規模の土石流・巨礫の衝突にも対応することができる。
【0044】
なお、本実施例では、2つの円弧状セグメント35、36でハウジング型補強部材40を構成しているが、3つ以上の円弧状セグメントの組み合わせでも同様に実施することができる。複数の円弧状セグメントは、要は突き合わせた状態で環状に形成できる形態であればよく、周方向の長さが異なる組合せでももちろん実施できる。
[実施例4]
【実施例5】
【0045】
実施例
4(
図7)にかかるハウジング型補強部材50(45、46)は、上記実施例
34と比し、フランジ接合部Fの全周ではなく、その一部を覆う構成で実施している点が相違する。その他の構成要素は上記実施例
3と同一なので同一の符号を付してその説明を適宜省略する。
【0046】
すなわち、実施例
4にかかるハウジング型補強部材50(45、46)は、
図7A〜Fに示したように、前記フランジ接合部Fの全周のうち、その一部を覆う略コ字形溝45a、46aを備え、前記鋼管1、2の管軸方向からみて、円弧状に形成された1つ又は複数(図示例では1対)の円弧状ピース45、46で構成され、前記鋼管1、2のフランジ孔を利用して前記フランジ接合部Fにボルト接合される構成で実施されている。
【0047】
前記略コ字形溝45a、46aは、上記実施例
3で説明した略コ字形溝35a、36bと同様に、前記フランジ接合部Fの外周面の全周を覆うことはもとより、フランジ接合部Fに用いた接合部材(ボルト7及びナット8)を覆うことができる幅寸及び深さ寸法を有する均等断面形状に形成して実施している。
また、円弧状ピース45、46は、略コ字形溝45a、46aを形成する両側面部における前記フランジ接合部Fにボルト接合する部位(図示例では周方向両端部)の内側面部に、ボルト接合する際に必要な間隔保持部材として、スペーサ45b、46bを予め溶接して設けている。スペーサ45b、46bの代わりに、ワッシャ(
図6Fを援用して参照)でも同様に実施できる。
【0048】
よって、接合する前記鋼管1、2同士のフランジ3、4を突き合わせ、前記ハウジング型補強部材50(45、46)を接合するフランジ孔以外のフランジ孔を利用してフランジ接合した後、当該フランジ接合部Fに前記ハウジング型補強部材50(45、46)を、図示例では中央部(の上流側と下流側と)に対向する配置で当てがい(
図7A参照)、前記スペーサ45b、46bでフランジ接合部Fを挟持して位置決めすると、円弧状ピース45、46がフランジ接合部Fに、ボルト7等の接合部材を覆い隠す構成で掛け留められる(
図7B参照)。その後、前記円弧状ピース45、46の周方向両端部に設けたボルト通し孔と、対応するフランジ孔との芯を一致させ、前記ボルト7、17よりも長尺のボルト27を通してナット8で締結してボルト接合することにより、当該ハウジング型補強部材50がフランジ接合部Fに固定される。
【0049】
上記構成のハウジング型補強部材50によれば、フランジ接合部Fおよびボルト7等のフランジ接合部材に対するハウジング型補強部材50の保護効果および接合効果により、フランジ接合部Fを巨礫の直撃から護ることはもとより、フランジ接合部Fのせん断抵抗力および曲げ抵抗力を高めることができるので、巨礫の衝撃等による開き、又は芯ずれを極力防止できる。ひいては所定の耐用年数まで強度・剛性を保持した安定性、安全性に優れた鋼製スリットダムを実現し、近年の増大する土石流規模や想定外規模の土石流・巨礫の衝突にも対応することができる。
【0050】
なお、本実施例では、2つの円弧状ピース45、46でハウジング型補強部材50を構成しているが、1つ又は3つ以上の円弧状ピースの組み合わせでも同様に実施することができる。前記1つの円弧状ピースで実施する場合は、前記フランジ接合部Fの上流側の部位に取り付けて実施する。
【0051】
以上、実施例を図面に基づいて説明したが、本発明は、図示例の限りではなく、その技術的思想を逸脱しない範囲において、当業者が通常に行う設計変更、応用のバリエーションの範囲を含むことを念のために言及する。
【0052】
例えば、前記フランジ付き鋼管1、2に、フランジ3、4を補強するための補強リブ(図示省略)が設けられている場合、前記ハウジング型補強部材10(20、30、40、50)は、前記補強リブと干渉しないようにスリットを形成して実施する。
【0053】
また、本発明は、既存の鋼製スリットダムのフランジ接合部にも適用でき
る。
上記実施例
1〜4にかかるハウジング型補強部材20〜50を用いる場合は、前記既存のフランジ接合部(
図1Aのフランジ接合部Fを援用して参照)における前記ハウジング型補強部材20〜50を接合するフランジ孔に接合されているボルト7を撤去した後、上記実施例
1〜4でそれぞれ説明した手法と同様の手法で、前記ハウジング型補強部材20〜50をフランジ接合部Fに当てがい、前記ボルト7よりも長尺のボルト17又は27で、対応するフランジ孔を利用してボルト接合することにより当該ハウジング補強部材20〜50をフランジ接合部Fに固定することにより行う。
【0054】
念のため、図示例にかかるハウジング型補強部材10〜50は、突き合わせた2枚のフランジ3、4からなるフランジ接合部Fに適用しているがこれに限定されない。フランジを外設したインナースリーブを用いる等して3枚以上のフランジを重ね合わせてなるフランジ接合部にも同様に適用できる。