(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6652800
(24)【登録日】2020年1月28日
(45)【発行日】2020年2月26日
(54)【発明の名称】フィルムロール端面保護具
(51)【国際特許分類】
B65D 85/66 20060101AFI20200217BHJP
B65H 75/02 20060101ALI20200217BHJP
【FI】
B65D85/66
B65H75/02 E
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-163607(P2015-163607)
(22)【出願日】2015年8月21日
(65)【公開番号】特開2017-39534(P2017-39534A)
(43)【公開日】2017年2月23日
【審査請求日】2018年6月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001339
【氏名又は名称】グンゼ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101823
【弁理士】
【氏名又は名称】大前 要
(74)【代理人】
【識別番号】100117293
【弁理士】
【氏名又は名称】板東 義文
(72)【発明者】
【氏名】若林 稔也
【審査官】
新田 亮二
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2008/123124(WO,A1)
【文献】
米国特許第03352410(US,A)
【文献】
米国特許出願公開第2009/0020045(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 85/66
B65H 75/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルムロールの端面に配置され、該フィルムロールを鉛直方向に立ててその端面を保護するフィルムロール端面保護具であって、
前記フィルムロールのコアの空洞部に嵌りこむ突出部を挿入するための孔を中央に有する板状支持部材を備え、
前記板状支持部材の表面に、前記孔を中心とする同心円状に、その外周が塀で囲まれたリング状溝が形成されており、
前記リング状溝の外周側の径は前記フィルムロールの径よりも大きく、かつ前記リング状溝の内周側の径は前記フィルムロールの径よりも小さく、
前記板状支持部材は、木材またはプラスチックからなる剛性体で構成され、その厚み部分に厚み方向に貫通する空間部が複数、放射線状に設けられてなる、フィルムロール端面保護具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般にフィルムロール端面保護具に関するものであり、より特定的にはフィルムロールの側面にしわを発生させないように改良されたフィルムロール端面保護具に関する。
【背景技術】
【0002】
図6は、従来のフィルムロール端面保護具を説明する図である。まず、
図6(A)に示すようなフィルムロールの端面を保護する端面保護具1を一対準備する。端面保護具1は、フィルムロールのコアの空洞部に嵌りこむ突出部2と、突出部2を挿入するための孔3を中央に有する板状支持部材4を備える。突出部2は例えばプラスチックで形成される。
図6(B)に示すように、端面保護具1は、突出部2をフィルムロール5のコア6の空洞部に挿入することにより、フィルムロール5の両端面に緩衝部材(図示せず)を介して配置される。フィルムロール5は、例えば熱収縮性筒状ラベル、ストレッチラベルあるいはその他のフィルムがコアを中心にロール状に巻かれたものである。端面保護具1は、フィルムロール5のコア6の両端部を受け止める。
【0003】
その状態で、フィルムロール5は鉛直方向に立てられて倉庫などに保管され、段ボール箱に詰められて、トラックなどで顧客に搬送される。端面保護具1を付けていないと、フィルムロール5が段ボール箱内で動いて、フィルムロール5の端面が損傷を受けることがあるが、端面保護具1を付けていると、フィルムロール5の段ボール箱内での動きが規制されて、フィルムロール5の損傷を防ぐ。
【0004】
しかし、従来のフィルムロール搬送具1は上述の利点を有するが、
図6(C)に示すように、倉庫の保管時あるいは流通過程において、フィルムロール5が傾いた場合、フィルムロール5の端面の外周部が板状支持部材4に押し付けられて、フィルムロールの壁面にしわ7が発生するという問題点があった。
【0005】
このような問題点を解決するために、特許文献1は、
図7(A)に示すフィルムロール端面保護具を提案している。特許文献1の開示の端面保護具1は、フィルムロール5のコアの空洞部に嵌りこむ突出部を挿入するための孔を中央に有する板状支持部材を備え、突出部をフィルムロール5のコアの空洞部に挿入することにより、フィルムロール5の両端面に緩衝部材12を介して配置される。
図6に示す端面保護具と異なる点は、板状支部材の外周部に斜面を形成し、空隙9を設けることにより、
図7(B)に示すように、フィルムロール5が傾いたときに、フィルムロール5の端面の外周部が逃げられる場所を形成し、フィルムロール5の壁面に、しわが発生するのを防止する点である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−187199号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1の開示技術では、
図7(C)に示すように、フィルムロール5を複数個並列させた場合、隣り合うフィルムロール5同士が擦れ合い、互いに損傷15を受けるという課題があった。
【0008】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、保管時にフィルムロールが傾いた場合にその壁面にしわを発生させることなく、さらにフィルムロールを複数個並列させた場合にも、隣り合うフィルムロール同士が擦れ合うことがないように改良されたフィルムロール端面保護具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、フィルムロールの端面に配置され、該フィルムロールを鉛直方向に立ててその端面を保護するフィルムロール端面保護具に係り、上記フィルムロールのコアの空洞部に嵌りこむ突出部を挿入するための孔を中央に有する板状支持部材を備える。上記板状支持部材の表面に、上記孔を中心とする同心円状に、その外周が塀で囲まれたリング状溝が形成されている。上記リング状溝の外周側の径は上記フィルムロールの径よりも大きく、かつ上記リング状溝の内周側の径は上記フィルムロールの径よりも小さい。板状支持部材は
木材またはプラスチックからなる剛性体で
構成されており、板状支持部材には、その厚み部分
に厚み方向に貫通する空間部が複数、放射線状に設けられて
なる。
【0010】
本発明によれば、上記リング状溝が、フィルムロールが傾いたときに、フィルムロールの端面の外周部が逃げる場所になる。リング状溝の外周を取り囲む塀が、フィルムロールが複数個並列した場合の、隣り合うフィルムロール同士の擦れ合いを防ぐ。
【0011】
本発明の好ましい実施態様によれば、上記リング状溝の内周側の壁面は、上記塀に向かう方向に下る斜面にされている。
【0012】
上記リング状溝の底面は、下に半円形状に凹む半丸にされていてもよい。
【0013】
上記リング状溝の上記外径、内径及びその深さは、上記フィルムロールが傾いたときに、該フィルムロールの端面の外周部が逃げられる空間が形成できるように選ばれているのが好ましい。
【0014】
上記フィルムロールの端面保護具は、木材あるいはプラスチックで形成されるのが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、リング状溝が、フィルムロールが傾いたときに、フィルムロールの端面の外周部が逃げる場所になり、フィルムロールの壁面にしわが発生することを防止する。リング状溝の外周を取り囲む塀が、隣り合うフィルムロール同士が擦れ合うことを防止し、隣り合うフィルムロールの擦れ合いによる損傷を防止する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】(A)は本発明の実施例1に係るフィルムロール端面保護具の斜視図であり、(B)は、
図1(A)におけるB−B線に沿う断面図であり、(C)はその分解図である。
【
図2】(A),(B)は実施例1に係るフィルムロール端面保護具の動作を説明する図である。
【
図3】フィルムロールに実施例1に係る端面保護具を装着して、複数個並列させたときの概念図である。
【
図4】実施例2に係るフィルムロール端面保護具の一対をフィルムロールに装着した時の断面図である。
【
図5】実施例3に係るフィルムロール端面保護具の斜視図である。
【
図6】(A)は従来のフィルムロール端面保護具の斜視図であり、(B)はフィルムロールに従来の端面保護具を装着したときの斜視図であり、(C)はその問題点を示す図である。
【
図7】(A)は他の従来例に係る端面保護具をフィルムロールに装着したときの断面図であり、(B)はその動作を説明する概念図であり、(C)はその課題を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
保管時にフィルムロールが傾いた場合にもその壁面にしわを発生させることなく、さらにフィルムロールを複数個並列させた場合にも、隣り合うフィルムロール同士が擦れ合うことがないように改良されたフィルムロール端面保護具を得るという目的を、フィルムロールの端面を保護する板状支持部材の表面に、フィルムロールが傾いたときに、フィルムロールの端面の外周部が逃げる場所を設け、さらに複数のフィルムロールを並列させたときに隣り合うフィルムロールが接触するのを遮る塀を設けることによって実現した。以下、本発明の実施例を、図を用いて説明する。各図中、同一又は相当する部分には同一の参照番号を付し、その説明を繰り返さない。
【実施例1】
【0019】
図1(A)、(B)、(C)を参照して、本発明に係るフィルムロール端面保護具1は、フィルムロールの端面に配置され、該フィルムロールを鉛直方向に立ててその端面を保護するものである。フィルムロール端面保護具1は、フィルムロール5のコアの空洞部に嵌りこむ突出部2を挿入するための孔3を中央に有する板状支持部材4を備える。板状支持部材4は例えばポリプロピレンによる硬化性プラスチックで形成される。板状支持部材4の表面に、孔3を中心とする同心円状に形成され、その外周が塀10で囲まれた、平面視でリング状に掘り込まれた溝11(以下、リング状溝11と略する)が形成されている。塀10の高さは、板状支持部材4の厚みに等しくされているが、これに限定されるものではない。リング状溝11の外周側の径 M はフィルムロール5の径よりも大きく、かつリング状溝11の内周側の径 N はフィルムロール5の径よりも小さい。板状支持部材4の、床面に接する部分には、例えばゴム製の滑り止め部材が設けられてもよい。
【0020】
リング状溝11の底面は平坦にされている。リング状溝11の内周側の壁面13は、塀10に向かう方向に下る斜面にされている。リング状溝11の外周側の壁面は、実施例では、板状支持部材4の表面に対して垂直にされているが、内周側に向かう方向に下る斜面にされていてもよい。リング状溝11の外径 M、内径 N及びその深さは、フィルムロール5が傾いたときに、該フィルムロール5の端面の外周部8が逃げられる空間が形成できるように選ばれている。
【0021】
次に動作について説明する。
【0022】
図2(A)に示すように、端面保護具1は、突出部2をフィルムロール5のコア6の空洞部に挿入することにより、フィルムロール5の両端面に緩衝部材12を介して配置される。本発明によれば、
図2(B)に示すように、リング状溝11が、フィルムロール5が傾いたときに、フィルムロール5の端面の外周部8が逃げる場所になり、フィルムロール5の壁面に圧力がかからないので、
図6(C)に示す従来例に見られたしわは発生しない。
【0023】
また、
図3に示すように、フィルムロール5が複数個並べられた場合にも、リング状溝11の外周を取り囲む塀10が、隣り合うフィルムロール5同士が擦れ合うことを防止し、隣り合うフィルムロール5の擦れ合いによる損傷を防止する。
【実施例2】
【0024】
図4に示すように、板状支持部材4の表面に形成されるリング状溝11の底は、その断面形状が、下に半円形状に凹む半丸であってもよい。その他の構成は、実施例1と同様である。このような構成であっても、リング状溝11が、フィルムロール5が傾いたときに、フィルムロール5の端面の外周部8が逃げる場所になり、フィルムロール5の壁面に圧力がかからない。
【実施例3】
【0025】
図5は、実施例3に係るフィルムロール端面保護具の斜視図である。板状支持部材4に、厚み部分を貫通する空間部14を設けた点のみが実施例1にかかるフィルムロール端面保護具と異なる。板状支持部材4はポリプロピレンによる硬化性プラスチックにより加工形成されており、全体として剛性体となっている。板状支持部材4を剛性体とすることにより、静置状態においてフィルムロールの支持を安定に保つことができる。そして、板状支持部材4には、その厚み部分に応力集中を回避するための空間部14が設けられている。外周部方向の空間部14の占める割合は、内周部方向よりもやや多い構成となっている。空間部14は、放射線状に例えば15°おきに設けられる。また、このような空間部14を整列して配置することにより板状支持部材4自体の自重を軽減することができる。さらに、ポリプロピレンのような流動性に富む材料は成形時に冷却を十分に行わないと歪みが生じるが、空間部14を設けることにより冷却効率が上がり板状支持部材4の変形を防止することができる。
【0026】
今回開示された実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明のフィルムロール端面保護具は、フィルムロールの壁面にしわが発生することを防止する。リング状溝の外周を取り囲む塀が、隣り合うフィルムロール同士が擦れ合うことを防止し、隣り合うフィルムロールの擦れ合いによる損傷を防止する。
【符号の説明】
【0028】
1 端面保護具
2 突出部
3 孔
4 板状支持部材
5 フィルムロール
6 コア
7 しわ
8 フィルムロールの端面の外周部
9 空隙
10 塀
11 リング状溝
12 緩衝部材
13 内周側の壁面
14 空間部
15 損傷