特許第6652821号(P6652821)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日立GEニュークリア・エナジー株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6652821-沸騰水型原子炉 図000002
  • 特許6652821-沸騰水型原子炉 図000003
  • 特許6652821-沸騰水型原子炉 図000004
  • 特許6652821-沸騰水型原子炉 図000005
  • 特許6652821-沸騰水型原子炉 図000006
  • 特許6652821-沸騰水型原子炉 図000007
  • 特許6652821-沸騰水型原子炉 図000008
  • 特許6652821-沸騰水型原子炉 図000009
  • 特許6652821-沸騰水型原子炉 図000010
  • 特許6652821-沸騰水型原子炉 図000011
  • 特許6652821-沸騰水型原子炉 図000012
  • 特許6652821-沸騰水型原子炉 図000013
  • 特許6652821-沸騰水型原子炉 図000014
  • 特許6652821-沸騰水型原子炉 図000015
  • 特許6652821-沸騰水型原子炉 図000016
  • 特許6652821-沸騰水型原子炉 図000017
  • 特許6652821-沸騰水型原子炉 図000018
  • 特許6652821-沸騰水型原子炉 図000019
  • 特許6652821-沸騰水型原子炉 図000020
  • 特許6652821-沸騰水型原子炉 図000021
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6652821
(24)【登録日】2020年1月28日
(45)【発行日】2020年2月26日
(54)【発明の名称】沸騰水型原子炉
(51)【国際特許分類】
   G21C 5/06 20060101AFI20200217BHJP
   G21C 5/00 20060101ALI20200217BHJP
   G21C 19/19 20060101ALI20200217BHJP
【FI】
   G21C5/06
   G21C5/00 A
   G21C19/19 060
【請求項の数】10
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-241512(P2015-241512)
(22)【出願日】2015年12月10日
(65)【公開番号】特開2017-106836(P2017-106836A)
(43)【公開日】2017年6月15日
【審査請求日】2018年8月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】507250427
【氏名又は名称】日立GEニュークリア・エナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】特許業務法人開知国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】綿引 直久
(72)【発明者】
【氏名】高橋 志郎
(72)【発明者】
【氏名】藤本 清志
(72)【発明者】
【氏名】細井 秀章
(72)【発明者】
【氏名】椿 正昭
(72)【発明者】
【氏名】原田 清
【審査官】 大門 清
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−093475(JP,A)
【文献】 特開2012−220325(JP,A)
【文献】 特開平05−249275(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0228362(US,A1)
【文献】 中国特許出願公開第104183279(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC G21C 5/00
G21C 19/19
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
稠密に配置された六角柱形状の燃料集合体と、互いに隣接した3体の燃料集合体の間に挿入されるY字型制御棒とを備えた沸騰水型原子炉において、
前記3体の燃料集合体を初装荷または交換する際に前記3体の燃料集合体と前記Y字型制御棒との干渉を防止する鉛直ガイドを取り外し可能に備え、
前記鉛直ガイドは、前記3体の燃料集合体の間でかつ前記Y字型制御棒を構成する3枚の翼のそれぞれの水平方向延長上に鉛直方向に延び、前記Y字型制御棒の翼の厚さよりも大きくかつ前記3体の燃料集合体の間隙幅よりも小さい幅を有することを特徴とする沸騰水型原子炉。
【請求項2】
請求項1に記載の沸騰水型原子炉において、
前記鉛直ガイドは、前記3体の燃料集合体のうち最も近接する燃料集合体の側面と平行に対向する側面を有することを特徴とする沸騰水型原子炉。
【請求項3】
請求項2に記載の沸騰水型原子炉において、
前記鉛直ガイドの水平断面が四角形であることを特徴とする沸騰水型原子炉。
【請求項4】
請求項2に記載の沸騰水型原子炉において、
前記鉛直ガイドの水平断面が六角形であることを特徴とする沸騰水型原子炉。
【請求項5】
請求項1に記載の沸騰水型原子炉において、
前記鉛直ガイドの水平断面が円形であることを特徴とする沸騰水型原子炉。
【請求項6】
請求項1に記載の沸騰水型原子炉において、
前記鉛直ガイドの少なくとも1つの側面に鉛直方向に延びる溝を設けたことを特徴とする沸騰水型原子炉。
【請求項7】
請求項1に記載の沸騰水型原子炉において、
前記鉛直ガイドと一体となって前記Y字型制御棒の外周を覆う保護板を前記鉛直ガイドに取り付けたことを特徴とする沸騰水型原子炉。
【請求項8】
請求項1に記載の沸騰水型原子炉において、
前記鉛直ガイドは、前記3体の燃料集合体を支持している燃料支持金具に取り外し可能に設置されることを特徴とする沸騰水型原子炉。
【請求項9】
請求項8に記載の沸騰水型原子炉において、
前記鉛直ガイドの下端には、先細形状に形成された挿入部が設けられており、
前記燃料支持金具の上面には、前記挿入部を挿入するための嵌合部が設けられたことを特徴とする沸騰水型原子炉。
【請求項10】
請求項8に記載の沸騰水型原子炉において、
前記鉛直ガイドの上端部は、三又形状のガイドアームによって相互に連結されており、
前記鉛直ガイドの高さは、前記鉛直ガイドを前記燃料支持金具に設置したときに前記鉛直ガイドの上端部が前記3体の燃料集合体の上端よりも上方に突出する高さに設定されたことを特徴とする沸騰水型原子炉。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、稠密に配置された六角柱形状の燃料集合体と、互いに隣接した3体の燃料集合体の間に挿入されるY字型制御棒とを備えた沸騰水型原子炉に関する。
【背景技術】
【0002】
原子力発電では、燃料であるウランを燃焼した際に副産物として発生する長寿命の超ウラン元素が核廃棄物として蓄積するという問題に鑑み、従来の沸騰水型原子炉(BWR:Boiling Water Reactor)の技術をベースに、超ウラン元素を燃料として燃やすことができる資源再利用型BWR(RBWR:Resource−Renewable Boiling Water Reactor)が開発されている。
【0003】
このRBWRでは、従来のBWRと比較して超ウラン核種の転換比を高めており、原子炉運転時における超ウラン核種の発生量と消滅量をほぼ同一にでき、転換比を約1.0とすることが可能である。
【0004】
この炉心特性を達成するために、特許文献1に記載されたRBWRでは、六角型の水平断面を持つチャンネルボックス内に劣化ウランに超ウラン核種を富化した燃料棒を三角格子状に配置した稠密六角型燃料集合体を用いることにより、燃料密度を増加させている。また、減速材と冷却材を兼ねている軽水の流量を低減して現行BWRよりボイド率(水と蒸気の気液二相流の中で蒸気が占める体積率)を高めており、燃料集合体中の水対燃料体積比を小さくしている。このように水対燃料体積比を小さくすると、軽水による中性子減速効果が抑制され、高速中性子や共鳴領域の中性子が増加するため、超ウラン核種の転換比を高めることができる。そして、原子炉出力を制御するY字型制御棒は、燃料集合体3体に1本の割合で蜜に配置されている。
【0005】
RBWRでは、建設時又は炉内定期検査時に、Y字型制御棒を炉心に全挿入した状態で、ダミー燃料集合体又は使用済み燃料集合体を未使用の燃料集合体と交換する。この時、Y字型制御棒に隣接する燃料集合体を1体でも取り出すと、その空きスペースにY字型制御棒が倒れる恐れがあるため、燃料集合体を取り出す前にY字型制御棒を固定しておく必要がある。例えば特許文献2は、燃料棒が三角格子状に配列された六角形燃料集合体と、その間に挿入され翼の間隔がそれぞれ120度である3枚の翼を持つY字型制御棒とを有する炉心の燃料集合体交換時に用いられる燃料交換用治具であって、前記Y字型制御棒の2枚の翼の延長線上に位置する2体の六角形燃料集合体と前記Y字型制御棒とを結合する複数の嵌合部を有することを特徴とする燃料交換用治具を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−220276号公報
【特許文献2】特開2007−93475号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
燃料交換作業では、作業の確実性の観点から、燃料集合体を1体ずつ交換する必要があるが、炉心内には数百体の燃料集合体が装荷されているため、燃料交換作業には長時間を要する。作業時間を短縮するための方法としては、燃料集合体を炉心に挿入する際又は炉心から抜去する際の移動速度を上げることが考えられる。しかしながら、燃料集合体の移動速度を上げることにより、燃料集合体及びY字型制御棒の振動や揺れが大きくなるため、燃料集合体とY字型制御棒とが干渉し、Y字型制御棒が破損するおそれがある。
【0008】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、稠密に配置された六角柱形状の燃料集合体と、互いに隣接した3体の燃料集合体の間に挿入されるY字型制御棒とを備えた沸騰水型原子炉において、燃料集合体とY字型制御棒との干渉を防止することにより、燃料初装荷作業又は燃料交換作業を円滑に行うことを可能とした沸騰水型原子炉を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明は、稠密に配置された六角柱形状の燃料集合体と、互いに隣接した3体の燃料集合体の間に挿入されるY字型制御棒とを備えた沸騰水型原子炉において、前記3体の燃料集合体を初装荷または交換する際に前記3体の燃料集合体と前記Y字型制御棒との干渉を防止する鉛直ガイドを取り外し可能に備え、前記鉛直ガイドは、前記3体の燃料集合体の間でかつ前記Y字型制御棒を構成する3枚の翼のそれぞれの水平方向延長上に鉛直方向に延び、前記Y字型制御棒の翼の厚さよりも大きくかつ前記3体の燃料集合体の間隙幅よりも小さい幅を有するものとする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、稠密に配置された六角柱形状の燃料集合体と、互いに隣接した3体の燃料集合体の間に挿入されるY字型制御棒とを備えた沸騰水型原子炉において、燃料集合体とY字型制御棒との干渉を防止することができ、燃料初装荷作業又は燃料交換作業を円滑に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】沸騰水型原子炉の全体構成図である。
図2図1に示す炉心の水平断面図である。
図3図2に示す炉心のY字型制御棒近傍の水平断面図である。
図4図3に示すY字型制御棒を構成する翼の水平断面図である。
図5】本発明の第1の実施例に係る鉛直ガイドを設置した炉心のY字型制御棒近傍の鳥瞰図である。
図6】本発明の第1の実施例に係る鉛直ガイドを設置した炉心のY字型制御棒近傍の水平断面図である。
図7】本発明の第1の実施例に係る鉛直ガイドを炉心に常設する場合の燃料交換手順を示す図である。
図8】本発明の第1の実施例に係る鉛直ガイドを炉心に常設しない場合の燃料交換手順の変形例を示す図である。
図9】本発明の第2の実施例に係る鉛直ガイドを設置した炉心のY字型制御棒近傍の水平断面図である。
図10】本発明の第3の実施例に係る鉛直ガイドを設置した炉心のY字型制御棒近傍の水平断面図である。
図11】本発明の第4の実施例に係る鉛直ガイドを設置した炉心のY字型制御棒近傍の水平断面図である。
図12】本発明の第5の実施例に係る鉛直ガイドを設置した炉心のY字型制御棒近傍の水平断面図である。
図13】本発明の第6の実施例に係る鉛直ガイドを設置した炉心のY字型制御棒近傍の水平断面図である。
図14】本発明の第7の実施例に係る鉛直ガイドを設置した炉心のY字型制御棒近傍の鳥瞰図である。
図15】本発明の第7の実施例に係る鉛直ガイドを設置した炉心のY字型制御棒近傍の水平断面図である。
図16】本発明の第8の実施例に係る鉛直ガイドを設置した炉心のY字型制御棒近傍の水平断面図である。
図17】本発明の第9の実施例に係る鉛直ガイドを設置した炉心のY字型制御棒近傍の水平断面図である。
図18】本発明の第10の実施例に係る鉛直ガイドを設置した炉心のY字型制御棒近傍の水平断面図である。
図19】本発明の第11の実施例に係る鉛直ガイドを設置した炉心のY字型制御棒近傍の水平断面図である。
図20】本発明の第12の実施例に係る鉛直ガイドを設置した炉心のY字型制御棒近傍の水平断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1に沸騰水型原子炉(RBWR)の全体構成を示す。沸騰水型原子炉1は、電気出力1350MW用の炉心2を備えているが、出力規模はこれに限定されるものではない。炉心2に装荷された燃料集合体の体数を変更することによって、他の出力規模の炉心2を実現することができる。
【0013】
沸騰水型原子炉1は、原子炉圧力容器3内に、炉心2、気水分離器4及び蒸気乾燥器5を配置している。炉心2は、原子炉圧力容器3内で炉心シュラウド6によって取り囲まれている。気水分離器4は炉心2の上方に配置され、蒸気乾燥器5は気水分離器4の上方に配置されている。複数のインターナルポンプ(冷却材供給装置)7が原子炉圧力容器3の底部に設置され、インターナルポンプ7のインペラ(羽根車)が原子炉圧力容器3と炉心シュラウド6との間に形成されるダウンカマ内に配置される。蒸気乾燥器5からの蒸気をタービン8に供給する主蒸気配管9及び給水配管10が原子炉圧力容器3に接続されている。
【0014】
沸騰水型原子炉1の運転時、インターナルポンプ7のインペラの回転によってダウンカマ内の冷却材が加圧されて炉心2に供給される。炉心2内に供給された冷却材は、後述する各燃料集合体内に導かれ、核分裂性物質の核分裂によって発生する熱で加熱されて一部が蒸気になる。気液二相流状態の冷却材は、炉心2から気水分離器4に導かれて蒸気が分離される。分離された蒸気は、蒸気乾燥器5によって水分がさらに除去される。水分が除去された蒸気は、主蒸気配管9を流れてタービン8に供給され、タービン8が回転する。タービン8に連結された発電機11が回転し、電力を発生する。タービン8から排出された蒸気は、復水器12にて凝縮されて凝縮水となる。この凝縮水は、給水ポンプ13により給水配管10を介して原子炉圧力容器3内に導かれる。一方、気水分離器4で分離された液体の冷却材は、給水配管10を介して供給される凝縮水とダウンカマ内で混合され、再びインターナルポンプ7で加圧され、炉心2に供給される。ここで、冷却材として、軽水、軽水及び重水の混合液が用いられる。
【0015】
図2に炉心2の水平断面を示す。炉心2には、例えば720体の六角柱形状の燃料集合体14が稠密に装荷されている。Y字型制御棒15は、3体の燃料集合体14に1本の割合で配置されており、223本のY字型制御棒15が炉心2内に挿入可能に設けられている。
【0016】
図3は、炉心2のY字型制御棒15近傍の水平断面図であり、互いに隣接した3体の六角柱形状の燃料集合体14の間にY字型制御棒15が挿入された状態を示している。燃料集合体14は、六角筒形状のチャンネルボックス16内に燃料棒17を三角格子状に配置している。核燃料物質によって構成された複数のペレットが、燃料棒17の軸方向(鉛直方向)に並ぶように、燃料棒17の図示しない被覆管内に配置されている。そして、燃料棒17は、下端から上端に向かって、下部燃料領域、内部ブランケット領域、上部燃料領域及び上部ブランケット領域を備えている。内部ブランケット領域及び上部ブランケット領域には、ウラン濃縮時の残渣である劣化ウランが充填されており、下部燃料領域及び上部燃料領域には、使用済み核燃料から抽出されたウラン核種(TRU:Trans Uranium element)を含む核燃料物質からなる燃料ペレットが配置されている。
【0017】
これら燃料集合体14の下部タイプレート(図示せず)は、炉心2の下端部に配置されている炉心支持板(図示せず)に設けられる複数の燃料支持金具に支持される。燃料集合体14に冷却材を導く冷却材流路が燃料支持金具内に形成されており、燃料支持金具内に設置されたオリフィスがその冷却材流路の入口部に配置されている。
【0018】
また、図3に示すように、Y字型制御棒15は、中心に位置するタイロッド18から外側に向かって伸びる3枚の翼19を有し、これら3枚の翼19が120度の間隔を持って配置されてY字型の形状をなし、三角格子状に配置された3体の燃料集合体14の間に位置するよう配されている。
【0019】
ここで、Y字型制御棒15を構成する翼19の構造について説明する。図4にY字型制御棒15を構成する翼19の水平断面を示す。断面U字状のシース20の一端がタイロッド18に接続され、ステンレス鋼で形成されるシース20の内部には複数の中性子吸収材管21が1列に配列されている。中性子吸収材管21内には、ボロンカーバイト(BC)等の中性子吸収材22が充填されており、中性子吸収領域を形成している。図4は、この中性子吸収領域における水平断面を示している。シース20には複数の孔(図示せず)が設けられており、これら複数の孔を介して冷却材を流通させることにより、中性子吸収材管21を冷却することができる。
【0020】
Y字型制御棒15は、原子炉圧力容器3の底部に個別に設けられた制御棒駆動装置23(図1参照)に連結されている。制御棒駆動装置23は、Y字型制御棒15の炉心2への挿入及び炉心2からの引き抜きの各操作を実行する。制御棒駆動装置23はモーター駆動であり、Y字型制御棒15の鉛直方向の位置を微調整することが可能である。
【0021】
本発明に係る沸騰水型原子炉1は、燃料集合体14とY字型制御棒15との干渉を防止するため、互いに隣接した3体の燃料集合体14の間でかつY字型制御棒15を構成する3枚の翼19のそれぞれの水平方向延長上に鉛直方向に延びる鉛直ガイドを設置できるように構成されている。
【0022】
以下、鉛直ガイドの実施例を図面を用いて説明する。なお、各図中、同一の構成要素には同一の符号を付し、重複した説明は適宜省略する。
【実施例1】
【0023】
図5は、本発明の第1の実施例に係る鉛直ガイドを設置した炉心2のY字型制御棒15近傍の鳥瞰図であり、図6は、同水平断面図である。
【0024】
図5に示すように、鉛直ガイド24は、四角柱形状の部材で構成され、その下端には、先細形状に形成された挿入部25が設けられている。この挿入部25を燃料支持金具26の上面に設けられた嵌合部27に挿入することにより、鉛直ガイド24を燃料支持金具26に設置することができる。
【0025】
鉛直ガイド24の上端部は、三又形状のガイドアーム28によって相互に連結されている。これにより、3本の鉛直ガイド24を燃料支持金具26に一体に設置することが可能となる。鉛直ガイド24の高さは、Y字型制御棒15の上端部がガイドアーム28と干渉しないように、鉛直ガイド24を燃料支持金具26に設置したときにその上端部が燃料集合体14の上端よりも上方に突出する高さに設定されている。
【0026】
図6に示すように、Y字型制御棒15の中心から見た鉛直ガイド24の幅(T1)は、Y字型制御棒15の翼の厚さ(T2)より大きく、かつ燃料集合体14間の間隙幅(G1)より小さく設定されている。これにより、燃料集合体14とY字型制御棒15との干渉を防止すると共に、燃料集合体14及びY字型制御棒15の振動や揺れを抑制することが可能となる。
【0027】
次に、本実施例に係る炉心2の燃料交換手順を、図7及び図8を用いて説明する。図7は、鉛直ガイド24を炉心2に常設する場合の燃料交換手順を示す図であり、図8は、鉛直ガイド24を炉心2に常設しない場合の燃料交換手順を示す図である。
【0028】
まず、鉛直ガイド24を炉心2に常設する場合の燃料交換手順を説明する。
【0029】
(1)核燃料の臨界を防止するため、Y字型制御棒15を互いに隣接した3体の燃料集合体14の間に全挿入し、沸騰水型原子炉1の運転を停止する(図7(a)参照)。
【0030】
(2)燃料交換機あるいは専用の吊り具(図示せず)でガイドアーム28を掴み、Y字型制御棒15の中心とガイドアーム28の中心とが一致するように3本の鉛直ガイド24を移動する。その後、鉛直ガイド24を鉛直下方向に降下させ、鉛直ガイド24の挿入部25を燃料支持金具26の嵌合部27に挿入し、燃料支持金具26に設置する(図7(b)参照)。
【0031】
(3)燃料交換機で使用済み燃料集合体14aを鉛直ガイド24に沿って引き抜き後、その空きスペース29に未使用の燃料集合体14bを鉛直ガイド24に沿って装荷する(図7(c)参照)。
【0032】
(4)以上で鉛直ガイド24を炉心2に常設する場合の燃料交換作業が完了する(図3(d)参照)。
【0033】
一方、鉛直ガイド24を常設しない場合は、上記(1)〜(3)に続いて、以下の手順を行う。
【0034】
(5)燃料交換機又は専用の吊り具によってガイドアーム28を掴み、鉛直上方向に引き上げて燃料支持金具26から取り外す(図8(d)参照)。
【0035】
(6)以上で鉛直ガイド24を炉心2に常設しない場合の燃料交換作業が完了する(図8(e)参照)。
【0036】
本実施例に係る鉛直ガイド24を設置した沸騰水型原子炉1によれば、燃料初装荷時又は燃料交換時に、互いに隣接した燃料集合体14の間でかつY字型制御棒15を構成する3枚の翼19のそれぞれの水平方向延長上に鉛直ガイド24を設置することにより、燃料集合体14とY字型制御棒15との干渉を防止すると共に、燃料集合体14及びY字型制御棒15の振動や揺れを抑制することができる。その結果、Y字型制御棒15を保護すると共に、燃料初装荷作業又は燃料交換作業を円滑に行うことが可能となる。
【0037】
また、鉛直ガイド24の水平断面を四角形とし、そのいずれかの側面が最も近接する燃料集合体14の側面と平行に対向する向きに鉛直ガイド24を配置することにより、燃料集合体14と鉛直ガイド24とが面で接触し得ることとなり、燃料集合体14の振動抑制効果を向上させることができる。
【0038】
また、鉛直ガイド24を炉心2内に常設した場合は、沸騰水型原子炉1の運転中も、燃料集合体14とY字型制御棒15との干渉を防止すると共に、燃料集合体14及びY字型制御棒15の振動や揺れを抑制することができる。
【0039】
また、鉛直ガイド24を炉心2内に常設した場合は、鉛直ガイド24の断面積分だけ冷却材の流路面積が減少し、水対燃料体積比が小さくなる。これにより、冷却材による中性子減速効果が抑制され、高速中性子や共鳴領域の中性子が増加するため、超ウラン核種の転換比を高めることができ、局所での発熱量を増加させることが可能となる。
【実施例2】
【0040】
本発明の第2の実施例に係る鉛直ガイド24について、第1の実施例と比較して説明する。図9は、本実施例に係る鉛直ガイド24を設置した炉心2のY字型制御棒15近傍の水平断面図である。図9において、第1の実施例(図6参照)との相違点は、鉛直ガイド24の水平断面を円形とした点である。
【0041】
本実施例に係る鉛直ガイド24を設置した沸騰水型原子炉1によれば、第1の実施例と同様の効果に加えて、以下の効果が得られる。
【0042】
鉛直ガイド24の水平断面を円形としたことにより、鉛直ガイド24の製作が容易となる。ただし、第1の実施例では、鉛直ガイド24の側面と燃料集合体14の側面とが面接触し得るのに対し、本実施例では、鉛直ガイド24の側面と燃料集合体14の側面とが面接触し得ないため、燃料集合体14の振動抑制効果が、第1の実施例に比べて若干劣る可能性はある。
【実施例3】
【0043】
本発明の第3の実施例に係る沸騰水型原子炉1について、第1の実施例と比較して説明する。図10は、本実施例に係る鉛直ガイド24を設置した炉心2のY字型制御棒15近傍の水平断面図である。図10において、第1の実施例(図6参照)との相違点は、鉛直ガイド24の水平断面を六角形とした点である。
【0044】
本実施例に係る鉛直ガイド24を設置した沸騰水型原子炉1においても、第1の実施例と同様の効果が得られる。なお、鉛直ガイド24の水平断面は、第1の実施例では四角形とし、本実施例では六角形としたが、燃料集合体14の振動抑制効果を向上させる観点では、隣接する燃料集合体14の側面と平行に対向する側面を有する限り、どのような水平断面であっても良い。
【実施例4】
【0045】
本発明の第4の実施例に係る鉛直ガイド24について、第1の実施例と比較して説明する。図11は、本実施例に係る鉛直ガイド24を設置した炉心2のY字型制御棒15近傍の水平断面図である。図11において、第1の実施例(図6参照)との相違点は、水面断面が四角形の鉛直ガイド24の各側面に鉛直方向に延びる溝30を設けた点である。
【0046】
本実施例に係る鉛直ガイド24を設置した沸騰水型原子炉1によれば、第1の実施例と同様の効果に加えて、以下の効果が得られる。
【0047】
鉛直ガイドの各側面に設けた溝30が冷却材の流路となり、鉛直ガイド24付近を流れる冷却材の流量が、第1の実施例と比べて増加する。これにより、燃料集合体14の外周部において、鉛直ガイド24に近接する部分を流れる冷却材の流量とそれ以外の部分を流れる冷却材の流量との差が小さくなり、燃料集合体14の外縁部における冷却効果の不均衡を改善することができる。なお、本実施例では、鉛直ガイド24の各側面に溝30を1つずつ設ける構成としたが、溝30の数、位置、大きさ等は適宜変更可能である。
【実施例5】
【0048】
本発明の第5の実施例に係る鉛直ガイド24について、第2の実施例との相違点を中心に説明する。図12は、本実施例に係る鉛直ガイド24を設置した炉心2のY字型制御棒15近傍の水平断面図である。図12において、第2の実施例(図9参照)との相違点は、水平断面が円形の鉛直ガイド24の側面に鉛直方向に延びる溝30を複数設けた点である。
【0049】
本実施例に係る鉛直ガイド24を設置した沸騰水型原子炉1によれば、第2の実施例と同様の効果に加えて、以下の効果が得られる。
【0050】
鉛直ガイドの側面に設けた複数の溝30が冷却材の流路となり、鉛直ガイド24付近を流れる冷却材の流量が、第2の実施例と比べて増加する。これにより、燃料集合体14の外周部において、鉛直ガイド24に近接する部分を流れる冷却材の流量とそれ以外の部分を流れる冷却材の流量との差が小さくなり、燃料集合体14の外縁部における冷却効果の不均衡を改善することができる。なお、本実施例では、鉛直ガイド24の側面に溝30を4つ設ける構成としたが、溝30の数、位置等は適宜変更可能である。
【実施例6】
【0051】
本発明の第6の実施例に係る鉛直ガイド24について、第3の実施例と比較して説明する。図13は、本実施例に係る鉛直ガイド24を設置した炉心2のY字型制御棒15近傍の水平断面図である。図13において、第3の実施例(図10参照)との相違点は、水平断面が六角形の鉛直ガイド24の各側面に鉛直方向に延びる溝30を設けた点である。
【0052】
本実施例に係る鉛直ガイド24を設置した沸騰水型原子炉1によれば、第3の実施例と同様の効果に加えて、以下の効果が得られる。
【0053】
鉛直ガイドの各側面に設けた溝30が冷却材の流路となり、鉛直ガイド24付近を流れる冷却材の流量が、第3の実施例と比べて増加する。これにより、燃料集合体14の外周部において、鉛直ガイド24に近接する部分を流れる冷却材の流量とそれ以外の部分を流れる冷却材の流量との差が小さくなり、燃料集合体14の外縁部における冷却効果の不均衡を改善することができる。なお、本実施例では、水平断面が六角形の鉛直ガイド24の各側面に溝30を1つずつ設ける構成としたが、溝30の数、位置等は適宜変更可能である。
【実施例7】
【0054】
本発明の第7の実施例に係る鉛直ガイド24について、第1の実施例と比較して説明する。図14は、本実施例に係る鉛直ガイド24を設置した炉心2のY字型制御棒15近傍の鳥瞰図であり、図15は、同水平断面図である。図14及び図15において、第1の実施例(図6参照)との相違点は、3本の鉛直ガイド24と一体となってY字型制御棒15の外周を覆う薄板状の保護板31を鉛直ガイド24に取り付けた点である。保護板31には、図14に示すように、複数の流路孔32が設けられており、これら複数の流路孔32を介して冷却材を流通させることにより、Y字型制御棒15の翼19を冷却することができる。なお、流路孔32の数、位置、大きさ等は適宜変更可能である。
【0055】
本実施例に係る鉛直ガイド24を設置した沸騰水型原子炉1によれば、第1の実施例と同様の効果に加えて、以下の効果が得られる。
【0056】
燃料初装荷時又は燃料交換時に鉛直ガイド24と保護板31が一体となってY字型制御棒15の外周を覆うことにより、鉛直ガイド24に沿って移動中の燃料集合体14がY字型制御棒15と接触することを防止し、Y字型制御棒15を保護することができる。
【0057】
また、鉛直ガイド24間に保護板31を設けたことにより、ガイドアーム28で連結された3本の鉛直ガイド24の全体の構造強度が向上する。これにより、3本の鉛直ガイド24の挿入部25間の位置ずれが抑制され、3本の鉛直ガイド24の各挿入部25を燃料支持金具26の3つの嵌合部27にそれぞれ容易に挿入することが可能となる。
【実施例8】
【0058】
本発明の第8の実施例に係る鉛直ガイド24について、第7の実施例と比較して説明する。図16は、本実施例に係る鉛直ガイド24を設置した炉心2のY字型制御棒15近傍の水平断面図である。図16において、第7の実施例(図15参照)との相違点は、鉛直ガイド24の水平断面を円形とした点である。
【0059】
本実施例に係る鉛直ガイド24を設置した沸騰水型原子炉1によれば、第7の実施例と同様の効果に加えて、以下の効果が得られる。
【0060】
鉛直ガイド24の水平断面を円形としたことにより、鉛直ガイド24の製作が容易となる。
【実施例9】
【0061】
本発明の第9の実施例に係る鉛直ガイド24について、第7の実施例と比較して説明する。図17は、本実施例に係る鉛直ガイド24を設置した炉心2のY字型制御棒15近傍の水平断面図である。図17において、第7の実施例(図15参照)との相違点は、鉛直ガイド24の水平断面を六角形とした点である。
【0062】
本実施例に係る鉛直ガイド24を設置した沸騰水型原子炉1においても、第7の実施例と同様の効果が得られる。
【実施例10】
【0063】
本発明の第10の実施例に係る鉛直ガイド24について、第7の実施例と比較して説明する。図18は、本実施例に係る鉛直ガイド24を設置した炉心2のY字型制御棒15近傍の水平断面図である。図18において、第7の実施例(図15参照)との相違点は、水平断面が四角形の鉛直ガイド24の各側面に鉛直方向に延びる溝30を設けた点である。
【0064】
本実施例に係る鉛直ガイド24を設置した沸騰水型原子炉1によれば、第7の実施例と同様の効果に加えて、以下の効果が得られる。
【0065】
鉛直ガイドの各側面に設けた溝30が冷却材の流路となり、鉛直ガイド24付近を流れる冷却材の流量が、第7の実施例と比べて増加する。これにより、燃料集合体14の外周部において、鉛直ガイド24に近接する部分を流れる冷却材の流量とそれ以外の部分を流れる冷却材の流量との差が小さくなり、燃料集合体14の外縁部における冷却効果の不均衡を改善することができる。なお、本実施例では、鉛直ガイド24の各側面に溝30を1つずつ設ける構成としたが、溝30の数、位置等は適宜変更可能である。
【実施例11】
【0066】
本発明の第11の実施例に係る鉛直ガイド24について、第8の実施例と比較して説明する。図19は、本実施例に係る鉛直ガイド24を設置した炉心2のY字型制御棒15近傍の水平断面図である。図19において、第8の実施例(図16参照)との相違点は、水平断面が円形の鉛直ガイド24の側面に鉛直方向に延びる溝30を複数設けた点である。
【0067】
本実施例に係る鉛直ガイド24を設置した沸騰水型原子炉1によれば、第8の実施例と同様の効果に加えて、以下の効果が得られる。
【0068】
鉛直ガイド24の水平断面を円形としたことにより、鉛直ガイド24の製作が容易となる。
【0069】
鉛直ガイドの側面に設けた複数の溝30が冷却材の流路となり、鉛直ガイド24付近を流れる冷却材の流量が、第8の実施例と比べて増加する。これにより、燃料集合体14の外周部において、鉛直ガイド24に近接する部分を流れる冷却材の流量とそれ以外の部分を流れる冷却材の流量との差が小さくなり、燃料集合体14の外縁部における冷却効果の不均衡を改善することができる。なお、本実施例では、鉛直ガイド24の側面に溝30を4つ設ける構成としたが、溝30の数、位置等は適宜変更可能である。
【実施例12】
【0070】
本発明の第12の実施例に係る鉛直ガイド24について、第9の実施例と比較して説明する。図20は、本実施例に係る鉛直ガイド24を設置した炉心2のY字型制御棒15近傍の水平断面図である。図20において、第9の実施例(図17参照)との相違点は、水平断面が六角形の鉛直ガイド24の各側面に鉛直方向に延びる溝30を設けた点である。
【0071】
本実施例に係る鉛直ガイド24を設置した沸騰水型原子炉1によれば、第9の実施例と同様の効果に加えて、以下の効果が得られる。
【0072】
鉛直ガイドの各側面に設けた溝30が冷却材の流路となり、鉛直ガイド24付近を流れる冷却材の流量が、第9の実施例と比べて増加する。これにより、燃料集合体14の外周部において、鉛直ガイド24に近接する部分を流れる冷却材の流量とそれ以外の部分を流れる冷却材の流量との差が小さくなり、燃料集合体14の外縁部における冷却効果の不均衡を改善することができる。なお、本実施例では、鉛直ガイド24の各側面に溝30を1つずつ設ける構成としたが、溝30の数、位置等は適宜変更可能である。
【0073】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明は、上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は、本発明を分かり易く説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成に他の実施例の構成の一部を加えることも可能であり、ある実施例の構成の一部を削除し、あるいは、他の実施例の一部と置き換えることも可能である。
【符号の説明】
【0074】
1…沸騰水型原子炉(RBWR)、2…炉心、3…原子炉圧力容器、4…気水分離器、5…蒸気乾燥器、6…炉心シュラウド、7…インターナルポンプ、8…タービン、9…主蒸気配管、10…給水配管、11…発電機、12…復水器、13…給水ポンプ、14…燃料集合体、15…Y字型制御棒、16…チャンネルボックス、17…燃料棒、18…タイロッド、19…翼、20…シース、21…中性子吸収材管、22…中性子吸収材、23…制御棒駆動装置、24…鉛直ガイド、25…挿入部、26…燃料支持金具、27…嵌合部、28…ガイドアーム、29…空きスペース、30…溝、31…保護板、32…流路孔、G1…燃料集合体間の間隙幅、T1…鉛直ガイドの幅、T2…翼の厚さ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20