(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6652836
(24)【登録日】2020年1月28日
(45)【発行日】2020年2月26日
(54)【発明の名称】層状複水酸化物を用いた脱臭剤およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
A61L 9/00 20060101AFI20200217BHJP
A61L 9/014 20060101ALI20200217BHJP
B01J 20/28 20060101ALI20200217BHJP
【FI】
A61L9/00 Z
A61L9/014
B01J20/28 Z
【請求項の数】7
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-257425(P2015-257425)
(22)【出願日】2015年12月28日
(65)【公開番号】特開2017-119015(P2017-119015A)
(43)【公開日】2017年7月6日
【審査請求日】2018年12月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000231198
【氏名又は名称】日本国土開発株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100131657
【弁理士】
【氏名又は名称】奥田 律次
(72)【発明者】
【氏名】大野 睦浩
(72)【発明者】
【氏名】小林 裕
【審査官】
松井 一泰
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2015/056486(WO,A1)
【文献】
特開2006−026566(JP,A)
【文献】
特開昭58−214338(JP,A)
【文献】
国際公開第2015/144778(WO,A1)
【文献】
特表2015−535797(JP,A)
【文献】
国際公開第2011/099378(WO,A1)
【文献】
特開2005−089277(JP,A)
【文献】
特開平11−209258(JP,A)
【文献】
特表2011−530405(JP,A)
【文献】
特開2006−176894(JP,A)
【文献】
特開2003−339836(JP,A)
【文献】
特開2012−192089(JP,A)
【文献】
特開2013−000624(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2015/0217288(US,A1)
【文献】
特開2005−306667(JP,A)
【文献】
特開2004−285485(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 9/00− 9/22
B01J 20/00− 20/28
B01J 20/30− 20/34
B01D 53/34− 53/73
B01D 53/74− 53/85
B01D 53/92
B01D 53/96
B01D 53/02− 53/12
C01F 1/00− 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
比表面積が20m2/g以上であり、結晶子サイズが20nm以下の層状複水酸化物を活性炭に担持させたことを特徴とする脱臭剤。
【請求項2】
前記層状複水酸化物は、脱臭性金属成分を担持させたものであることを特徴とする請求項1記載の脱臭剤。
【請求項3】
前記層状複水酸化物は、結晶内に過ハロゲン酸イオンを含有するものであることを特徴とする請求項1又は2記載の脱臭剤。
【請求項4】
前記層状複水酸化物は、結晶内に炭酸イオンを含有するものであることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の脱臭剤。
【請求項5】
比表面積が20m2/g以上である層状複水酸化物を有効成分とする脱臭剤を製造する製造方法であって、
(1)2価の金属イオンと、3価の金属イオンと、を含む酸性溶液と、
(2)アルカリ性溶液と、
(3)脱臭性金属成分を含む水溶液と、
(4)前記酸性溶液と前記水溶液とのいずれか一方に含まれる過ハロゲン酸イオンと、
を混合して前記層状複水酸化物を合成する層状複水酸化物合成工程を有することを特徴とする脱臭剤の製造方法。
【請求項6】
前記層状複水酸化物合成工程は、前記酸性溶液とアルカリ性溶液の混合が完了した後、2時間以内に水分を除去又は中和することで合成することを特徴とする請求項5記載の脱臭剤の製造方法。
【請求項7】
前記層状複水酸化物を活性炭またはゼオライトに担持させる工程を含む請求項5または6記載の脱臭剤の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、層状複水酸化物を用いた脱臭剤およびその製造方法ならびに層状複水酸化物を用いた脱臭性樹脂、脱臭性繊維、脱臭性衣服、脱臭性フィルタおよび脱臭性マスクに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、悪臭や不快臭を取り除く方法として、活性炭やゼオライトなどの多孔質体を用いた物理的吸着による方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。また、ゼオライトは、陽イオン交換機能を有しており、化学的方法により臭いを除去することも知られている。
【0003】
一方、ハイドロタルサイト等の層状複水酸化物を用いた臭いの除去方法も知られている(例えば、特許文献2参照)。ハイドロタルサイト等の層状複水酸化物は、層間に種々のイオンや分子等を挿入できる構造を有しており、陰イオン交換機能を発現させることができる。そのため、当該陰イオン交換機能を利用した化学的方法により、臭いを除去することができる。
【0004】
【特許文献1】特開平10−071193
【特許文献2】特開平07−102497
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、活性炭やゼオライトなどの吸着材の吸着能だけでは、十分な脱臭効果は得られず、吸着能がすぐに飽和状態になってしまうという問題があった。また、ハイドロタルサイト等の層状複水酸化物を用いた場合でも、素早くかつ強力に脱臭することができないという問題があった。
【0006】
そこで本発明は、従来よりも素早くかつ強力に脱臭するための
脱臭剤およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明における脱臭剤は、比表面積が20m
2/g以上である層状複水酸化物を有効成分とするものであることを特徴とする。
【0008】
この場合、前記層状複水酸化物は、脱臭性金属成分を担持させたものである方が好ましい。また、結晶内に過ハロゲン酸イオンおよび/または炭酸イオンを含有するものである方が好ましい。
【0009】
さらに、前記層状複水酸化物は、
(1)2価の金属イオンと、3価の金属イオンと、を含む酸性溶液と、
(2)アルカリ性溶液と、
(3)脱臭性金属成分、過ハロゲン酸イオン、炭酸イオンのいずれか1以上を含む水溶液と、を混合して合成されるものであるか、あるいは、
(1)2価の金属イオンと、3価の金属イオンと、少なくとも過ハロゲン酸イオン又は炭酸イオンのいずれかを含む酸性溶液と、
(2)アルカリ性溶液と、
(3)脱臭性金属成分を含む水溶液と、を混合して合成されるものである方が好ましい。
【0010】
また、前記層状複水酸化物は、比表面積が70m
2/g以上である方が好ましく、結晶子サイズが20nm以下である方が好ましい。また、前記層状複水酸化物は、活性炭又はゼオライトに担持させたものである方が好ましい。また、前記層状複水酸化物は、樹脂又は繊維に担持させたものとすることもできる。
【0011】
また、本発明の脱臭剤の製造方法は、比表面積が20m
2/g以上である層状複水酸化物を有効成分とする脱臭剤を製造する製造方法であって、(1)2価の金属イオンと、3価の金属イオンと、を含む酸性溶液と、(2)アルカリ性溶液と、(3)脱臭性金属成分、過ハロゲン酸イオン、炭酸イオンのいずれか1以上を含む水溶液と、を混合して合成する層状複水酸化物合成工程を有することを特徴とする。
【0012】
この場合、前記層状複水酸化物合成工程は、前記酸性溶液とアルカリ性溶液の混合が完了した後、2時間以内に水分を除去又は中和するものである方が好ましい。
【0013】
また、本発明の脱臭性樹脂は、上述した本発明の脱臭剤を含有することを特徴とする。
【0014】
また、本発明の脱臭性繊維は、上述した本発明の脱臭剤を含有することを特徴とする。
【0015】
また、本発明の脱臭性衣服は、上述した本発明の脱臭剤を含有することを特徴とする。
【0016】
また、本発明の脱臭性フィルタは、上述した本発明の脱臭剤を含有することを特徴とする。
【0017】
また、本発明の脱臭性マスクは、上述した本発明の脱臭剤を含有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、従来よりも比表面積の大きい層状複水酸化物を用いることで、素早くかつ強力に、悪臭や不快臭の脱臭を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
[脱臭剤]
以下に、本発明の脱臭剤について説明する。
【0020】
本発明の脱臭剤は、比表面積が20m
2/g以上である層状複水酸化物を有効成分とするものである。
【0021】
層状複水酸化物は、一般式がM
2+1-xM
3+x(OH)
2(A
n-)
x/n・mH
2O(ここで、M
2+は2価の金属イオン、M
3+は3価の金属イオン、A
n-はn価の陰イオン、0<x<1、m>0)で表される不定比化合物であり、ハイドロタルサイト様化合物と呼ばれることもある。2価の金属イオン(M
2+)としては、例えば、Mg
2+、Fe
2+、Zn
2+、Ca
2+、Li
2+、Ni
2+、Co
2+、Cu
2+等が挙げられる。また、3価の金属イオン(M
3+)としては、例えば、Al
3+、Fe
3+、Cr
3+、Mn
3+等が挙げられる。また、陰イオン(A
n-)としては、例えば、ClO
4-、CO
32-、HCO
3-、PO
43-、SO
42-、SiO
44-、OH
-、Cl
-、NO
2-、NO
3-等が挙げられる。本発明の脱臭剤に用いる層状複水酸化物は、2価の金属イオン(M
2+)、3価の金属イオン(M
3+)、陰イオン(A
n-)として、どのようなものを用いたものでもよい。
【0022】
また、層状複水酸化物は、正電荷をもつ水酸化物層がシート状に積み重なり、その層間に負電荷をもつ陰イオンと水が保持された構造であり、水酸化物層のシートの積み重なり方により、菱面体晶構造のものと六方晶構造のものがある。本発明の脱臭剤に用いる層状複水酸化物は、いずれの構造であってもよい。
【0023】
また、本発明の脱臭剤に用いる層状複水酸化物の形状は、スラリー状で用いるほか、スラリーをろ過・洗浄・乾燥・粉砕して粉末状にしたものや、粒状にしたもの等を用いることができる。なお、粒状で用いる場合、その粒径は特に限定されるものではないが、本発明の脱臭剤に用いる層状複水酸化物の比表面積が20m
2/g以上のものであることから、従来の層状複水酸化物(比表面積の小さい層状複水酸化物)よりも大きい粒径を用いても高い効果を得ることができる。
【0024】
また、本発明の脱臭剤に用いる層状複水酸化物の結晶子サイズは、20nm以下とすることができ、10nm以下であることが好ましい。また、平均結晶子サイズが10nm以下であることが好ましい。
【0025】
また、本発明の脱臭剤に用いる層状複水酸化物は、層状複水酸化物の焼成物であってもよい。当該焼成物は、例えば、層状複水酸化物を約500℃以上で焼成することにより得ることができる。
【0026】
本発明の脱臭剤に用いる層状複水酸化物は、BET法による比表面積が20m
2/g以上であり、好ましくは30m
2/g以上であり、更に好ましくは50m
2/g以上であり、更に好ましくは70m
2/g以上である。比表面積の上限は特に限定されない。
【0027】
BET法による比表面積は、例えば、窒素吸脱着等温線を比表面積・細孔分布測定装置を用いて測定し、当該測定結果からBET−plotを作成して求めることができる。
【0028】
また、本発明の脱臭剤に用いる層状複水酸化物は、活性炭又はゼオライトに担持させたものであることが好ましい。これにより、層状複水酸化物に由来する陰イオン交換作用に加えて、活性炭に由来する吸着作用やゼオライトに由来する陽イオン交換作用を有するものとなり、種々のガス(酸性ガス、塩基性ガス、中性ガス等)の脱臭が可能となる。また、活性炭は、微小な黒鉛様結晶子とそれらをつなぐ炭化水素部分からなり、多孔性構造を有するものである。活性炭が多機能である理由はこの多孔性構造にあると考えられており、孔径に応じて異なる機能が発揮される。これに対し、本発明の層状複水酸化物の結晶子サイズが20nm以下の場合には、活性炭の細孔に比較して小さいことから、活性炭本来の吸着作用効果を阻害することがない。したがって、層状複水酸化物と活性炭の両方の効果を発揮できるという利点を有する。
【0029】
本発明の脱臭剤に用いる活性炭は、その原料が、石炭系(泥炭、亜炭、かつ炭、瀝青炭等)、木質系(ヤシ殻、木材、おが屑)、その他(石油ピッチ、合成樹脂(高分子)、各種有機灰等)のいずれを用いたものでもよい。また、活性炭の形状は、粉末状活性炭、破砕、顆粒、成型等の粒状活性炭、繊維状活性炭等、どのような形状であってもよい。
【0030】
ゼオライトは、アルカリ金属またはアルカリ土類金属を含む含水アルミノケイ酸塩であり、一般式が(M
I, M
II1/2)
m(Al
mSi
nO
2(m+n))・xH
2O(ここで、M
Iは1価の金属イオン、M
IIは2価の金属イオン、n≧m)で表されるものである。1価の金属イオン(M
I)としては、例えば、Li
+、Na
+、K
+等が挙げられる。また、2価の金属イオン(M
II)としては、例えば、Ca
2+、Mg
2+、Ba
2+等が挙げられる。本発明の脱臭剤に用いるゼオライトは、1価の金属イオン(M
I)、2価の金属イオン(M
II)として、どのようなものを用いたものでもよい。また、天然ゼオライト、人工ゼオライト、合成ゼオライトのいずれを用いてもよい。ゼオライトの構造としては、例えば、A型(構造コード:LTA)、フェリエライト(構造コード:FER)、MCM−22(構造コード:MWW)、ZSM−5(構造コード:MFI)、モルデナイト(構造コード:MOR)、L型(構造コード:LTL)、Y型・X型(構造コード:FAU)、ベータ型(構造コード:BEA)等が挙げられるが、どのような構造のものを用いてもよい。また、ゼオライトの形状は、粉末状、粒状等どのようなものであってもよい。
【0031】
本発明の脱臭剤に用いる層状複水酸化物、活性炭およびゼオライトの種類や配合割合は、脱臭の対象となる成分等を考慮して適宜選択すればよい。
【0032】
層状複水酸化物を活性炭又はゼオライトに担持させる方法は、互いに接触させて一体化せしめる方法であれば特に限定されるものではない。活性炭への担持方法としては、例えば、層状複水酸化物を溶媒に溶解して活性炭と均一に混合した後、撹拌し、所定条件の処理をして層状複水酸化物を活性炭に吸着させる方法が挙げられる。また、ゼオライトへの担持方法としては、ゼオライトおよびアルカリ溶液を含有する原料と、2価の金属イオンを含む可溶性塩および3価の金属イオンを含む可溶性塩を溶媒に溶解した層状複水酸化物の前駆体を含有する原料とを接触させる方法が挙げられる。また、バインダーを用いて、層状複水酸化物を活性炭又はゼオライトの表面に結合させてもよい。
【0033】
また、本発明の脱臭剤に用いる層状複水酸化物は、樹脂又は繊維に担持させたものとすることができる。
【0034】
ここで、本発明に用いる樹脂としては、天然樹脂、合成樹脂のいずれであってもよい。また、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂のいずれであってもよい。例えば、熱可塑性プラスチックとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ABS樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル等の汎用プラスチック、超高分子量ポリエチレン、ポリアミド、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリブチレン・テレフタラレート、ポリエチレン・テレフタレート、ポリフェニレンオキシド等のエンジニアリングプラスチック、ポリベンゾイミダゾール、ポリアミド・イミド、ポリエーテル・スルフォン、ポリスルフォン、ポリエーテル・エーテルケトン、ポリフェニレン・スルフィド、ポリテトラ・フルオロ・エチレン、液晶ポリマー等のスーパーエンジニアリングプラスチックを用いることができる。また、熱硬化性プラスチックとしては、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂等を用いることができる。また、熱可塑性エラストマー、ウレタンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム等の熱硬化性樹脂系エラストマー、天然ゴム等を用いることができる。
【0035】
また、本発明に用いる繊維としては、天然繊維、化学繊維のいずれであってもよい。天然繊維としては、例えば、絹、羽毛、獣毛等の動物性繊維、綿、麻等の植物繊維、石綿等の鉱物繊維を用いることができる。化学繊維としては、レーヨン、キュプラ等の再生繊維、アセテート、トリアセテート等の半合成繊維、ナイロン、ビニロン、ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、アクリル、ポリエチレン、ポリプロピレン、レクセ・サクセス、ポリウレタン等の合成繊維、金属繊維、炭素繊維、ケイ酸塩繊維、精製繊維等の無機繊維を用いることができる。
【0036】
層状複水酸化物を樹脂又は繊維に担持させる方法は、互いに接触させて一体化せしめる方法であれば特に限定されるものではないが、例えば、バインダーを用いて層状複水酸化物を樹脂又は繊維の表面に結合させる方法や、層状複水酸化物を溶媒に溶解して樹脂又は繊維と均一に混合した後、撹拌し、所定条件の処理をして添着させる方法が挙げられる。また、層状複水酸化物を担持させた樹脂を繊維に含浸・コーティングする方法を用いることもできる。
【0037】
本発明の脱臭剤に用いる層状複水酸化物、樹脂および繊維の種類や配合割合は、脱臭の対象となる成分等を考慮して適宜選択すればよい。
【0038】
本発明の脱臭剤に用いる層状複水酸化物は、脱臭性金属成分を担持させたものとすることもできる。脱臭性金属成分としては、銅、銀、金、鉛、白金、ニッケル、アルミニウム、錫、亜鉛、コバルト、ニッケル、マンガン、チタン等の金属の原子、イオン、または化合物を用いることができる。ここで、化合物とは、無機酸塩、有機酸塩、酸化物又または錯体を含むものである。例えば、銅の化合物としては、硫酸銅、硝酸銅、塩化第一銅、塩化第二銅、臭化第一銅、臭化第二銅、ヨウ化第一銅、ヨウ化第二銅、酢酸第一銅、酢酸第二銅、炭酸銅、オレイン酸銅、ナフテン酸銅、酸化第一銅、酸化第二銅、銅クロロフィル、フタロシアニン銅、等が挙げられる。
【0039】
本発明の脱臭剤に用いる層状複水酸化物は、結晶内に過ハロゲン酸イオン又は炭酸イオンを含有するものとすることができる。ここで、過ハロゲン酸イオンとしては、過塩素酸イオン、過臭素酸イオン、過ヨウ素酸イオンを用いることができる。過ハロゲン酸イオンや炭酸イオンは、当該イオン自体に脱臭機能があるため、層状複水酸化物の結晶内に当該イオンを含有させることで、当該イオン自体に由来する脱臭効果と陰イオン交換に由来する脱臭効果とを併せ持つ脱臭剤にすることができる。
【0040】
[脱臭剤の製造方法]
本発明の脱臭剤に用いる層状複水酸化物は、(1)2価の金属イオンと、3価の金属イオンと、を含む酸性溶液と、(2)アルカリ性溶液と、を混合する層状複水酸化物合成工程において合成することができる。
【0041】
ここで酸性溶液に含まれる2価の金属イオンとしては、例えば、Mg
2+、Fe
2+、Zn
2+、Ca
2+、Li
2+、Ni
2+、Co
2+、Cu
2+等を用いることができる。また、3価の金属イオンとしては、例えば、Al
3+、Fe
3+、Cr
3+、Mn
3+等を用いることができる。
【0042】
また、層状複水酸化物は、生成後の熟成時間を短くする程、比表面積の大きいものを製造することができる。したがって、熟成時間は、比表面積が20m
2/g以上、好ましくは30m
2/g以上、更に好ましくは50m
2/g以上、更に好ましくは70m
2/g以上となるように熟成時間をコントロールする必要がある。具体的な熟成時間は、2時間以内にするのが良く、好ましくは1時間以内にするのが良く、更に好ましくは、熟成を行わないのが良い。熟成を止めるには、酸性溶液とアルカリ性溶液の混合が完了した後、当該混合液のpHを層状複水酸化物の結晶成長が止まる値まで下げれば良い。例えば、一般式がMg
2+1-xAl
3+x(OH)
2(A
n-)
x/n・mH
2Oで表される層状複水酸化物は、pHを9以下にすると熟成を止めることができる。また、一般式Zn
2+1-xAl
3+x(OH)
2(A
n-)
x/n・mH
2Oで表される層状複水酸化物は、pHを5以下にすると熟成を止めることができる。また、水分を除去することによっても、熟成を止めることができる。水分を除去するためには、吸引濾過、遠心分離など水分と層状複水酸化物とを分離するための適当な分離方法を用いれば良い。
【0043】
また、本発明の脱臭剤に用いる層状複水酸化物は、既に合成された層状複水酸化物に対して脱臭性金属成分、過ハロゲン酸イオン、炭酸イオンを接触させて調製しても良いし、層状複水酸化物の合成時に同時に合成しても良い。
【0044】
合成の方法としては、(1)2価の金属イオンと、3価の金属イオンと、を含む酸性溶液と、(2)アルカリ性溶液と、を混合して合成する際に、(3)脱臭性金属成分、過ハロゲン酸イオン、炭酸イオンのいずれか1以上を含む水溶液を更に混合して同時に合成すれば良い。また、過ハロゲン酸イオンと炭酸イオンは、(1)の酸性溶液に含んでいても良い。
【0045】
脱臭性金属成分を担持させた層状複水酸化物を合成したい場合には、水溶液の脱臭性金属成分源として、例えば、硫酸銅、硝酸銅、塩化第一銅、塩化第二銅、酢酸第一銅、酢酸第二銅等の水溶性金属塩を用いることができる。
【0046】
また、結晶内に過塩素酸イオンを含有する層状複水酸化物を合成したい場合には、水溶液又は酸性溶液の過塩素酸イオン源として、例えば、過塩素酸や過塩素酸塩を用いることができる。また、結晶内に炭酸イオンを含有する層状複水酸化物を合成したい場合には、水溶液又は酸性溶液の炭酸イオン源として、炭酸ナトリウムや炭酸カリウム等の水溶性炭酸塩を用いることができる。
【0047】
(1)2価の金属イオン及び3価の金属イオンを含む酸性溶液と、(2)アルカリ性溶液と、(3)脱臭性金属成分、過ハロゲン酸イオン、炭酸イオンのいずれか1以上を含む水溶液と、を混合する方法は、各溶液を十分に撹拌できるものであれば特に限定されないが、例えば、酸性溶液とアルカリ性溶液を混合した後、脱臭性金属成分、過ハロゲン酸イオン、炭酸イオンのいずれか1以上を含む水溶液を同時に又は速やかに混合すれば良い。また、脱臭性金属成分、過ハロゲン酸イオン、炭酸イオンのいずれか1以上を含む水溶液の存在下で、酸性溶液とアルカリ性溶液を適量ずつ混合させてもよい。
【0048】
以下に、本発明の脱臭剤に用いる層状複水酸化物の具体的な合成方法を説明する。
【0049】
例えば、一般式が、Mg
2+1-xAl
3+x(OH)
2(A
n-)
x/n・mH
2O(A
n-はn価の陰イオン、m>0)である層状複水酸化物を製造する場合には、まず、アルミニウムイオンとマグネシウムイオンを含む酸性溶液を調製する。
【0050】
アルミニウムイオンのアルミニウム源としては、水中でアルミニウムイオンを生成するものであれば良く、特定の物質に限定されるものではない。例えば、アルミナ、アルミン酸ソーダ、水酸化アルミニウム、塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム、ボーキサイト、ボーキサイトからのアルミナ製造残渣、アルミスラッジ等を用いることができる。また、これらアルミニウム源は、いずれかを単独で用いても、2種類以上を組み合わせて用いても良い。
【0051】
また、マグネシウムイオンのマグネシウム源としては、水中でマグネシウムイオンを生成する物であれば良く、特定の物質に限定されるものではない。例えば、ブルーサイト、水酸化マグネシウム、マグネサイト、マグネサイトの焼成物等を用いることができる。これらマグネシウム源は、いずれかを単独で用いても、2種類以上を組み合わせて用いても良い。
【0052】
なお、前記アルミニウム源としてのアルミニウム化合物、マグネシウム源としてのマグネシウム化合物は、前記酸性溶液にアルミニウムイオン、マグネシウムイオンが存在していれば完全に溶解している必要はない。したがって、酸性溶液中に溶解していないアルミニウム化合物やマグネシウム化合物を含んでいても問題なく層状複水酸化物を製造することができる。
【0053】
また、Mg
2+1-xAl
3+x(OH)
2(A
n-)
x/n・mH
2Oで表わされる高結晶質の層状複水酸化物は、アルミニウムイオンとマグネシウムイオンのモル比が1:3(x=0.25)となっていることが知られている。したがって、酸性溶液中のアルミニウムイオンとマグネシウムイオンのモル比は、1:5〜1:2の範囲とするのが好ましい。この範囲とすることによって、アルミニウム源とマグネシウム源を無駄にすることなく、物質収支的に有利に層状複水酸化物を製造することができる。
【0054】
酸性溶液に含まれる酸としては、水溶液を酸性にするものであれば特に限定されないが、例えば、硝酸や塩酸を用いることができる。また、結晶内に過塩素酸イオンを含有する層状複水酸化物を合成したい場合には、過塩素酸や過塩素酸塩を用いても良い。また、結晶内に炭酸イオンを含有する層状複水酸化物を合成したい場合には、炭酸ナトリウムや炭酸カリウム等の水溶性炭酸塩を用いても良い。
【0055】
アルカリ性溶液に含まれるアルカリとしては、水溶液をアルカリ性にするものであれば特に限定されないが、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム等を用いることができる。また、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸アンモニウム、アンモニア水、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸カリウムなどを用いることもできる。これらはいずれかを単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。アルカリ性溶液は、pHを8〜14に調製したものを用いることができ、pHを8〜11に調製したものを用いるのが好ましい。
【0056】
この酸性溶液とアルカリ性溶液を所定の割合で混合することにより、層状複水酸化物が生成する。この際、上述したように、層状複水酸化物は、生成後の熟成時間を短くする程、比表面積の大きいものを製造することができる。したがって、当該層状複水酸化物合成工程は、当該酸性溶液とアルカリ性溶液の混合が完了した後、2時間以内、好ましくは1時間以内に熟成を止めるのが良く、更に好ましくは、熟成を行わないのが良い。
【0057】
熟成を止めるには、酸性溶液とアルカリ性溶液の混合が完了した後、当該混合液のpHを層状複水酸化物の結晶成長が止まる値まで下げる方法と、水分を除去する方法がある。
【0058】
pHを層状複水酸化物の結晶成長が止まる値まで下げる方法としては、例えば、酸性溶液とアルカリ性溶液を混合した後に直ちに水で希釈する方法により行うことができる。例えば、一般式がMg
2+1-xAl
3+x(OH)
2(A
n-)
x/n・mH
2Oで表される層状複水酸化物は、pHが9以下となるように水で希釈すれば良い。
【0059】
水分の除去は、吸引濾過、遠心分離など水分と層状複水酸化物とを分離するための適当な分離方法を用いることができる。
【0060】
また、本発明の脱臭剤に用いる層状複水酸化物は、上述したように、既に合成された層状複水酸化物に対して脱臭性金属成分、過ハロゲン酸イオン、炭酸イオンを接触させて調製しても良く、また、層状複水酸化物の合成時に同時に合成しても良い。
【0061】
[脱臭剤の用途]
本発明の脱臭剤は、所望の形状の袋や容器に入れて、例えば、室内用、冷蔵庫用、ごみ箱用、下駄箱用、靴用等に用いることができる。下駄箱用の場合には、プラスチックの容器に本発明の脱臭剤を詰めたものを用いることができ、靴用の場合には、不織布等の袋に本発明の脱臭剤を詰めたものを用いることができる。また、人工肛門や人工膀胱のストーマから排泄物を収集する袋(ストーマ袋)に本発明の脱臭剤を入れることで、便や尿の臭気を脱臭することもできる。
【0062】
[脱臭性樹脂]
次に、本発明の脱臭性樹脂について説明する。
【0063】
本発明の脱臭性樹脂は、上述した本発明の脱臭剤を含有することを特徴とする。樹脂に脱臭剤を含有させる方法は特に限定されず、公知の方法で行うことができる。例えば、粉末樹脂や液状樹脂に直接混合・分散する方法や、一旦ペレットを作製し、当該ペレットを用いて混合・分散させる方法を用いることができる。
【0064】
本発明に用いることのできる樹脂の種類は、上述の通りである。また、本発明の脱臭性樹脂に用いる層状複水酸化物および樹脂の種類や配合割合は、脱臭の対象となる成分や樹脂の特性等を考慮して適宜選択すればよい。
【0065】
本発明の脱臭性樹脂を用いて、公知の方法で成形することにより、脱臭性樹脂の成形体を得ることができる。脱臭性樹脂を用いた成形体の例としては、食品包装用のフィルム、食器、住宅用の建材などが挙げられ、本発明の脱臭性樹脂は、脱臭機能を要する種々の分野の製品に応用が可能である。
【0066】
[脱臭性繊維]
次に、本発明の脱臭性繊維について説明する。
【0067】
本発明の脱臭性繊維は、上述した本発明の脱臭剤を含有することを特徴とする。繊維に脱臭剤を含有させる方法は特に限定されず、公知の方法で行うことができる。例えば、化学繊維の場合、脱臭剤を配合した繊維加工用樹脂を液体にして紡糸口金から押出して繊維状にすればよい。また、脱臭剤を配合した繊維加工用バインダーを用いて繊維に結合させてもよい。
【0068】
本発明に用いることのできる繊維の種類は、上述の通りである。また、本発明の脱臭性繊維に用いる層状複水酸化物および繊維の種類や配合割合は、脱臭の対象となる成分や繊維の特性等を考慮して適宜選択すればよい。
【0069】
本発明の脱臭性繊維を用いて、公知の方法により、脱臭性の繊維品を得ることができる。脱臭性繊維を用いたものの例としては、カーテン、絨毯、布団、衣服、靴、鞄などが挙げられ、本発明の脱臭性繊維は、脱臭機能を要する種々の分野の製品に応用が可能である。
【0070】
[脱臭性衣服]
次に、本発明の脱臭性衣服について説明する。
【0071】
本発明の脱臭性衣服は、上述した本発明の脱臭剤を含有することを特徴とする。衣服に脱臭剤を含有させる方法は特に限定されないが、例えば、上述した脱臭性繊維を用いることができる。脱臭性衣服の例としては、肌着、下着、靴下、ストッキング、シャツ、ズボン、スカート、セーター、コート、帽子、手袋、マフラーなどが挙げられる。
【0072】
[脱臭性フィルタ]
次に、本発明の脱臭性フィルタについて説明する。
【0073】
本発明の脱臭性フィルタは、上述した本発明の脱臭剤を含有することを特徴とする。フィルタに脱臭剤を含有させる方法は特に限定されず、公知の方法で行うことができる。例えば、フィルタの基材にバインダー等を用いて本発明の脱臭剤を塗布する方法が挙げられる。また、上述した脱臭性繊維を用いてフィルタの基材を作製してもよい。
【0074】
本発明に用いられるフィルタに用いられる基材の素材、形状加工等は特に限定されないが、例えば素材としては、不織布、紙、セラミックス、金属などが挙げられ、形状加工としては、シート加工、プリーツ加工、ハニカム加工、コルゲート加工などが挙げられる。
【0075】
[脱臭性マスク]
次に、本発明の脱臭性マスクについて説明する。
【0076】
本発明の脱臭性マスクは、上述した本発明の脱臭剤を含有することを特徴とする。マスクに脱臭剤を含有させる方法は特に限定されず、公知の方法で行うことができる。例えば、マスクを構成する不織布の表面に本発明の脱臭剤を塗布してもよいし、上述した脱臭性繊維から構成された不織布を用いてマスクを作製してもよい。
【0077】
本発明に用いられるマスクの素材、形状加工等は特に限定されないが、例えば素材としては、ガーゼ、ナイロン、不織布などが挙げられ、形状加工としては、平型、プリーツ型、立体型などが挙げられる。
【実施例】
【0078】
以下に、本発明の脱臭剤に用いる層状複水酸化物および本発明の脱臭剤の脱臭効果を示す実施例について説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0079】
実施例1(比表面積)
製造方法等が異なる4種類の層状複水酸化物1〜4を準備し、それぞれの比表面積を測定した。比表面積の測定は、各層状複水酸化物の粉体粒子表面に窒素ガスを液体窒素の温度(−196℃)で吸着させ、その量からBET法によって計算した。その結果を表1に示す。
【0080】
【表1】
【0081】
なお、各層状複水酸化物1〜4の詳細は以下の通りである。
(1)層状複水酸化物1
和光純薬株式会社製の層状複水酸化物(販売元コード:324−87435)を層状複水酸化物1とした。
(2)層状複水酸化物2
まず、塩化マグネシウム六水和物(和光純薬工業株式会社製)16.92gと塩化アルミニウム六水和物(和光純薬工業株式会社製)10.06gを26.98gの蒸留水に溶解させ、酸性溶液を調製する。また、水酸化ナトリウム(和光純薬工業株式会社製)10gを30gの蒸留水に溶解させ、アルカリ性溶液を調製する。次いで、当該酸性溶液とアルカリ溶液を混合し、当該混合溶液に281.85gの蒸留水を、時間をおかず速やかに添加して、pH7.5−8.5に調整した。そして、24時間後に当該溶液をろ過し、得られたろ過物を120℃で10時間乾燥したものを層状複水酸化物2とした。
(3)層状複水酸化物3
まず、塩化マグネシウム六水和物(和光純薬工業株式会社製)16.92gと塩化アルミニウム六水和物(和光純薬工業株式会社製)10.06gを26.98gの蒸留水に溶解させ、酸性溶液を調製する。また、水酸化ナトリウム(和光純薬工業株式会社製)10gを30gの蒸留水に溶解させ、アルカリ性溶液を調製する。次いで、当該酸性溶液とアルカリ溶液を混合し、当該混合溶液に281.85gの蒸留水を、時間をおかず速やかに添加した後、水酸化ナトリウム水溶液を加えてpH10.0に調整した。そして、24時間後に当該溶液をろ過し、得られたろ過物を120℃で10時間乾燥したものを層状複水酸化物3とした。
(4)層状複水酸化物4
まず、塩化マグネシウム六水和物(和光純薬工業株式会社製)16.92gと塩化アルミニウム六水和物(和光純薬工業株式会社製)10.06gを26.98gの蒸留水に溶解させ、酸性溶液を調製する。また、水酸化ナトリウム(和光純薬工業株式会社製)10gを30gの蒸留水に溶解させ、アルカリ性溶液を調製する。次いで、当該酸性溶液とアルカリ溶液を混合し、当該混合溶液に281.85gの蒸留水を、時間をおかず速やかに添加した後、水酸化ナトリウム水溶液を加えてpH12.0に調整した。そして、24時間後に当該溶液をろ過し、得られたろ過物を120℃で10時間乾燥したものを層状複水酸化物4とした。
【0082】
実施例2(ノネナールに対する脱臭効果)
本発明脱臭剤のノネナールに対する脱臭効果を調べる試験を行った。本発明の脱臭剤としては、前記層状複水酸化物2(検体1)、前記層状複水酸化物2を活性炭に担持させたもの(検体2)、前記層状複水酸化物2をゼオライトに担持させたもの(検体3)を用いた。なお、検体2は、層状複水酸化物2を合成する際のアルカリ性溶液に活性炭(和光純薬工業株式会社製、コードNo.034−18051)10gを添加することにより、前記層状複水酸化物2を活性炭に担持させたものである。また、検体3は、層状複水酸化物2を合成する際のアルカリ性溶液にゼオライト(和光純薬工業株式会社製、コードNo.268−01522)10gを添加することにより、前記層状複水酸化物2をゼオライトに担持させたものである。
【0083】
試験方法を以下に示す。まず、0.9gの検体をにおい袋(35cm×50cm,アラム株式会社製)に入れ、ヒートシールを施した後、空気を封入し、約15〜25ppmの濃度となるようにtrans−2−ノネナール(一級,和光純薬工業株式会社製)を添加して9Lとした。これを静置し、経過時間ごとに袋内のガスをDNPHカートリッジ(InertSep mini AERO DNPH,ジーエルサイエンス株式会社製)に300mL捕集した。次に、当該DNPHカートリッジにアセトニトリル5mLを通してDNPH誘導体を溶出させ、この溶出液を高速液体クロマトグラフ法により測定し、袋内のガス濃度を算出した。高速液体クロマトグラフの操作条件は以下の通りである。
<高速液体クロマトグラフ操作条件>
機種:LC−10ATvp(株式会社島津製作所製)
検出器:紫外可視吸光光度計 SPD−10AVvp(株式会社島津製作所製)
カラム:Ascentis RP−Amide, φ4.6 mm×250 mm(シグマアルドリッチジャパン合同会社製)
カラム温度:40℃
移動相:アセトニトリル及び水の混液(80:20)
移動相流量:1.5mL/min
測定波長:360nm
なお、検体を入れずに同様の操作をしたものを空試験とした。試験結果を以下の表に示す(表中に<1とあるのは定量下限(1ppm)未満であることを表し、−とあるのは測定を行っていないことを表す)。
【0084】
【表2】
【0085】
検体1、検体2および検体3のすべてにおいて、ノネナールの脱臭効果が認められた。これは、袋内のノネナールの濃度が、試験経過時間30分までに15ppmから1ppmまたは1ppm未満に減少するという非常に顕著な効果であった。また、層状複水酸化物を単独で用いる(検体1)よりも、層状複水酸化物を活性炭や活性炭およびゼオライトに担持させたもの(検体2、検体3)のほうが、より脱臭能力が高いことがわかった。
【0086】
実施例3(イソ吉草酸に対する脱臭効果)
本発明脱臭剤のイソ吉草酸に対する脱臭効果を調べる試験を行った。各検体およびその合成方法は、実施例2と同様である。
【0087】
試験方法は以下の通りである。まず、0.9gの検体をにおい袋(35cm×50cm,アラム株式会社製)に入れ、ヒートシールを施した後、空気を封入し、約15ppmの濃度となるようにイソ吉草酸(特級,東京化成工業株式会社製から発生させたガスを使用)を添加して9Lとした。これを静置し、経過時間ごとに袋内のガスを、ガス検知管(株式会社ガステック製)を用いて測定した。なお、検体を入れずに同様の操作をしたものを空試験とした。試験結果を以下の表に示す(表中に<1とあるのは定量下限(1ppm)未満であることを表す)。
【0088】
【表3】
【0089】
検体1、検体2および検体3のすべてにおいて、イソ吉草酸の脱臭効果が認められた。これは、袋内のイソ吉草酸の濃度が、試験経過時間30分までに15ppmから1ppm未満に減少するという非常に顕著な効果であった。
【0090】
実施例4(酢酸に対する脱臭効果)
本発明脱臭剤の酢酸に対する脱臭効果を調べる試験を行った。各検体およびその作製方法は、実施例2と同様である。また、試験方法は、試験初期のガス濃度(酢酸,特級,小宗化学薬品株式会社製から発生させたガスを使用)を約50ppmとなるように添加したこと以外は、実施例3と同様である。試験結果を以下の表に示す(表中に<1とあるのは定量下限(1ppm)未満であることを表し、−とあるのは測定を行っていないことを表す)。
【0091】
【表4】
【0092】
検体1、検体2および検体3のすべてにおいて、酢酸の脱臭効果が認められた。これは、袋内の酢酸の濃度が、試験経過時間10分までに50ppmから1ppmまたは1ppm未満に減少するという非常に顕著な効果であった。また、層状複水酸化物を単独で用いる(検体1)よりも、層状複水酸化物を活性炭や活性炭およびゼオライトに担持させたもの(検体2、検体3)のほうが、より脱臭能力が高いことがわかった。
【0093】
実施例5(アンモニアに対する脱臭効果)
本発明脱臭剤のアンモニアに対する脱臭効果を調べる試験を行った。各検体およびその合成方法は、実施例2と同様である。また、試験方法は、試験初期のガス濃度(アンモニア水,28%特級,小宗化学薬品株式会社製から発生させたガスを使用)を約100ppmとなるように添加したこと以外は、実施例3と同様である。試験結果を以下の表に示す(表中に<1とあるのは定量下限(1ppm)未満であることを表し、−とあるのは測定を行っていないことを表す)。
【0094】
【表5】
【0095】
検体1、検体2および検体3のすべてにおいて、アンモニアの脱臭効果が認められた。特に、検体2および検体3において、アンモニアの脱臭効果が顕著に認められた。また、層状複水酸化物を活性炭に担持させたもの(検体2)よりも、ゼオライトに担持させたもの(検体3)のほうが、脱臭効果が高いことがわかった。