特許第6652849号(P6652849)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6652849
(24)【登録日】2020年1月28日
(45)【発行日】2020年2月26日
(54)【発明の名称】中栓付き容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 47/36 20060101AFI20200217BHJP
   B65D 51/22 20060101ALI20200217BHJP
【FI】
   B65D47/36
   B65D51/22 120
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-17329(P2016-17329)
(22)【出願日】2016年2月1日
(65)【公開番号】特開2017-137068(P2017-137068A)
(43)【公開日】2017年8月10日
【審査請求日】2019年1月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000223193
【氏名又は名称】東罐興業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109221
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 充広
(74)【代理人】
【識別番号】100171848
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 裕美
(72)【発明者】
【氏名】磯貝 孝光
【審査官】 蓮井 雅之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−163525(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/183180(WO,A1)
【文献】 特開平7−2263(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/083724(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 47/36
B65D 51/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器本体に係止される基部と、前記基部に剪断部を介して連接された分離部とを有する中栓と、
前記中栓を覆うようにして前記中栓の前記基部又は前記容器本体に螺合部を介して螺合され、前記分離部に係合可能な上蓋と、
前記上蓋と前記分離部との一部として設けられて、開栓のため前記上蓋を反螺合方向に回転させた場合に、前記上蓋とともに前記分離部を回転させることにより、前記分離部を前記基部から剪断によって分離する力を伝達するラチェット機構とを備え、
前記ラチェット機構のうち前記上蓋側の第1ラチェット爪の第1当接部の下端は、回転軸を含む面に対して前記上蓋の反螺合方向に傾いており、前記分離部側の第2ラチェット爪の第2当接部の上端は、回転軸を含む面に対して前記上蓋の螺合方向に傾いていることを特徴とする中栓付き容器。
【請求項2】
前記上蓋は、当該上蓋の下面側に回転軸と同芯に第1の円筒体を有するとともに、前記分離部は、前記回転軸と同芯に第2の円筒体を有し、前記第1及び第2の円筒体の対向する周面に前記ラチェット機構が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の中栓付き容器。
【請求項3】
前記回転軸に垂直な面での前記第1ラチェット爪の前記回転軸に対して相対的に近い先端は、前記回転軸を含む面に対して前記上蓋の前記反螺合方向に傾いており、
前記回転軸に垂直な面での前記第2ラチェット爪の前記回転軸に対して相対的に遠い先端は、前記回転軸を含む面に対して前記上蓋の前記螺合方向に0°以上に傾いていることを特徴とする請求項1及び2のいずれか一項に記載の中栓付き容器。
【請求項4】
前記回転軸に垂直な面での前記第1ラチェット爪の前記先端は、2つの角部を有し、
前記2つの角部の少なくとも一方は、前記第1当接部として前記第2当接部に当接することを特徴とする請求項3に記載の中栓付き容器。
【請求項5】
前記上蓋は、当該上蓋の下面側に回転軸と同芯に第3の円筒体を有するとともに、前記分離部は、前記回転軸と同芯に第4の円筒体を有し、前記第3及び第4の円筒体の対向する周面を互いに接触させることにより、前記分離部と前記上蓋との相対的な回転に関して摩擦抵抗を付与することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の中栓付き容器。
【請求項6】
前記第1ラチェット爪及び前記第2ラチェット爪は、前記上蓋を前記螺合方向に回転させた場合に互いに当接する第1及び第2滑動面をそれぞれ有し、
前記第2ラチェット爪の前記第2滑動面は曲面を有することを特徴とする請求項1〜のいずれか一項に記載の中栓付き容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開栓に際して中栓の一部を分離するとともに上蓋側に保持させる中栓付き容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
中栓付き容器には、例えば、分離部を有し基部を容器本体に係止させる中栓と、その中栓を覆うようにして中栓基部に螺合させる上蓋とを備えるものであって、中栓の分離部を上蓋側に係合させ、上蓋を容器本体等から離脱させる際に中栓の分離部を中栓基部から分離するとともに、分離部を上蓋側に保持させて開栓するタイプのものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1の容器では、中栓の分離部と上蓋とを両者に設けた筒状部にそれぞれ形成した環状の突部を介して互いに回転可能で軸方向に連動するように連結するとともに、分離部の筒状部と上蓋の筒状部との間に反螺合方向の回転に伴って噛み合うラチェット機構を配している。
上記容器では、上蓋を反螺合方向に回転させて上蓋を容器本体から離反させる際に、両筒状部間のラチェット機構を介して中栓の分離部を上蓋とともに回転させて基部から剪断によって分離するとともに、上蓋によってこれに連結された分離部を引き上げ、分離部を上蓋に保持させる。
【0004】
ところで、特許文献1の技術では、分離部を上蓋に保持させるために、軸方向の連動を確保する突部を両者に形成する必要がある。この突部は、中栓や上蓋の型成形に際してアンダーカットになるため、突部の高さ(径方向の高さ)が高いと、型抜きの際に中栓の分離部に大きな力が作用し、中栓の分離部を基部から剪断して不良品化するおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015−163525号公報
【発明の概要】
【0006】
本発明は、上記背景技術に鑑みてなされたものであり、型成形に際して中栓の分離部を中栓の基部から剪断するおそれがない中栓付き容器を提供することを目的とする。
【0007】
上記課題を解決するため、本発明に係る中栓付き容器は、容器本体に係止される基部と当該基部に剪断部を介して連接された分離部とを有する中栓と、中栓を覆うようにして中栓の基部又は容器本体に螺合部を介して螺合され、分離部に係合可能な上蓋と、上蓋と分離部との一部として設けられて、開栓のため上蓋を反螺合方向に回転させた場合に、上蓋とともに分離部を回転させることにより、分離部を基部から剪断によって分離する力を伝達するラチェット機構とを備え、ラチェット機構のうち上蓋側の第1ラチェット爪の第1当接部の下端は、回転軸を含む面に対して上蓋の反螺合方向に傾いており、分離部側の第2ラチェット爪の第2当接部の上端は、回転軸を含む面に対して上蓋の螺合方向に傾いている。ここで、上蓋の反螺合方向とは、上蓋を緩める回転方向(具体的には、上側から見て反時計方向)を意味し、上蓋の螺合方向とは、上蓋を締める回転方向(具体的には、上側から見て時計方向)を意味する。また、回転軸を含む面とは、回転軸を中心とする円周上の位置毎に設定されるものである。上蓋及び中栓において、その回転軸は共通することが望ましい。
【0008】
上記中栓付き容器によれば、ラチェット機構により、上蓋を反螺合方向に回転させる際に上蓋とともに分離部を回転させることによって基部から剪断によって分離するだけでなく、上蓋の回転に伴って分離部が相対的に降下することを防止できるとともに第1及び第2ラチェット爪の第1及び第2当接部間の摩擦抵抗によって分離部を上蓋に保持させることができる。つまり、分離部を上蓋に保持させるための突部を形成する必要がなくなり、型成形に際して中栓の分離部が中栓の基部から剪断・分離されることを防止できる。
【0009】
また、本発明の具体的な側面では、上記中栓付き容器において、上蓋は、当該上蓋の下面側に回転軸と同芯に第1の円筒体を有するとともに、分離部は、回転軸と同芯に第2の円筒体を有し、第1及び第2の円筒体の対向する周面にラチェット機構が設けられている。この場合、上蓋に設けた第1の円筒体と分離部に設けた第2の円筒体とを介してラチェット機構が動作するので、上蓋による分離部の保持が確実となって安定する。
【0010】
また、本発明の別の側面では、回転軸に垂直な面での第1ラチェット爪の回転軸に対して相対的に近い先端は、回転軸を含む面に対して上蓋の反螺合方向に傾いており、回転軸に垂直な面での第2ラチェット爪の回転軸に対して相対的に遠い先端は、回転軸を含む面に対して上蓋の螺合方向に0°以上に傾いている。なお、第2ラチェット爪の先端が回転軸を含む面に対して0°である場合は、実質的に傾いていない状態である。このような傾きとした場合、上蓋を容器本体等に対して螺合方向に回転させる際に、第1ラチェット爪の変形が容易になって上蓋のみの回転が許容され、上蓋を容器本体等に対して反螺合方向に回転させる際に、両ラチェット爪を食い込ませて上蓋及び分離部を一体的に回転させるロックがかかる。
【0011】
また、本発明のさらに別の側面では、回転軸に垂直な面での第1ラチェット爪の先端は、2つの角部を有し、2つの角部の少なくとも一方は、第1当接部として第2当接部に当接する。
【0013】
また、本発明のさらに別の側面では、上蓋は、当該上蓋の下面側に回転軸と同芯に第3の円筒体を有するとともに、分離部は、回転軸と同芯に第4の円筒体を有し、第3及び第4の円筒体の対向する周面を互いに接触させることにより、分離部と上蓋との相対的な回転に関して摩擦抵抗を付与する。この場合、上蓋に保持された分離部の相対的な回転が効果的に阻止され、結果的に上蓋から見て分離部が螺合方向に回転して分離部が離れる方向に移動することが防止され、上蓋による分離部の保持をより確実にできる。


【0014】
また、本発明のさらに別の側面では、第1ラチェット爪及び第2ラチェット爪は、上蓋を螺合方向に回転させた場合に互いに当接する第1及び第2滑動面をそれぞれ有し、第2ラチェット爪の第2滑動面は曲面を有する。この場合、上蓋を螺合方向に回転させた際に、第1ラチェット爪が第2ラチェット爪に乗り上げやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明に係る中栓付き容器の一実施形態を示した概念的な分解斜視図である。
図2】本実施形態の中栓付き容器の中栓を容器本体に係止し、上蓋を中栓基部に螺合させた状態を示した概念的な断面図である。
図3】ラチェット爪の傾斜角度を説明した図で、(a)は正面視を示し、(b)は平面視を示し、(c)〜(f)は(b)の変形例を示している。
図4】本実施形態の図2におけるA−A線断面図に対応し、(a)は上蓋を中栓に螺合させて締め込み中の状態を示し、(b)はさらに締め込んだ状態を示している。
図5】本実施形態の図2におけるA−A線断面図に対応し、(a)は締め込み完了後の状態を示し、(b)は上蓋を中栓から反螺合方向に回転させて開栓を行った状態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1及び図2は、本発明に係る中栓付き容器の一実施形態を示している。なお、以下の実施形態では、容器の軸芯すなわち回転軸AXを鉛直にして立てた状態で、上下等の位置関係を説明する。
【0017】
図示の中栓付き容器100は、容器本体1に係止される中栓10と、中栓10を覆うようにして中栓10に螺着される上蓋20とを備えている。
【0018】
中栓10は、型成形による樹脂製の一体成形品であり、容器本体1の口部1aに嵌着される基部11と、開栓される分離部12とを備えている。
【0019】
中栓10の基部11は、容器本体1の内容物の抽出口を形成する大径円筒体11aを備えている。この大径円筒体11aの上端には半径方向外方に拡がるリップ11bが形成され、中間部外周面に雄ねじ11cが形成されている。基部11の下部には、半径方向外方に拡がるフランジ11dと、そのフランジ11dの下面内周側に下方に向けて延びる内筒部11eと、フランジ11dの下面外周縁に下方に向けて延びる外筒部11fとが形成され、それらによって下方に開口する断面コ字状の環状凹部13が形成されている。
【0020】
中栓10の分離部12は、円盤状の封止体12aを備えている。この封止体12aは、基部11の大径円筒体11aの下端内周に対して、周方向にノッチが形成された環状の剪断部14を介して連接されている。封止体12aの上面周縁には、小径円筒体12bが立設されている。この小径円筒体12bは、第2及び第4の円筒体として機能する。そして、この小径円筒体12bの外周面12kには、第2ラチェット爪15aが周方向に等間隔で6個形成されている。
【0021】
第2ラチェット爪15aは、肉厚で外周面12kに沿って畝状に延び、後述する上蓋20側の第1ラチェット爪15bと協働してラチェット機構15を構成する。詳細は後述するが、第2ラチェット爪15aの上端15fは、回転軸AXの周りに上蓋20の螺合方向に若干捻れて形成されている。また、回転軸AXに垂直な面での第2ラチェット爪15aのうち回転軸AXに対して根元側の基端15pより相対的に遠い先端15dは、回転軸AXを含む鉛直面RSに対して上蓋20の螺合方向に傾けて形成されている(図3(b)参照)。ここで、第2ラチェット爪15aの先端15dとは、第2ラチェット爪15aのうち、基端15pを基準として中栓10の半径方向外側の最も端の部分である。半径方向とは、回転軸AXを中心として放射状に向かう方向である。また、回転軸AXを含む鉛直面RSとは、回転軸AXに対して回転軸AXを中心とする円周上の位置毎に設定されるものである。上蓋20及び中栓10において、その回転軸AXは共通することが望ましい。
【0022】
上蓋20は、型成形による樹脂製の一体成形品であり、天井壁20aと、当該天井壁20aから湾曲して下方に延びる円筒状の周壁20bとによって外形が形成されている。そして、天井壁20aの下面には、周壁20bに近接して最外円筒体21が一体に形成されている。この最外円筒体21の内周面には雌ねじ21aが形成されている。また、天井壁20aの下面側には、最外円筒体21の内部に同芯を成す大径円筒体22と、中径円筒体23と、小径円筒体24とが一体に形成されている。ここで、中径円筒体23は第1の円筒体として機能し、小径円筒体24は第3の円筒体として機能する。
【0023】
上蓋20の最外円筒体21に設けた雌ねじ21aと、中栓10の大径円筒体11aに設けた雄ねじ11cとによって、上蓋20を中栓10にねじ付けるための螺合部51が構成される。上蓋20又は最外円筒体21にとっては、上側から見て時計回転の方向が螺合方向であり、下側の方向D2が螺進方向となっている。なお、中栓10又は大径円筒体11aにとっては、下側から見て時計回転の方向が螺合方向であり、上側の方向D1が螺進方向となっている。
【0024】
中径円筒体23の内周面23kには、ラチェット機構15の他方を成す第1ラチェット爪15bが形成されている。この第1ラチェット爪15bは、肉薄で弾性を有し、内周面23kに沿って細長く板状に延びる。詳細は後述するが、第1ラチェット爪15bの下端15gは、回転軸AXの周りに上蓋20の反螺合方向に若干捻れて形成されている(図3(a)参照)。また、回転軸AXに垂直な面での第1ラチェット爪15bのうち回転軸AXに対して根元側の基端15qより相対的に近い先端15eは、回転軸AXを含む鉛直面RSに対して上蓋20側の反螺合方向に傾けて形成されている(図3(b)参照)。ここで、第1ラチェット爪15bの先端15eとは、第1ラチェット爪15bのうち、基端15qを基準として上蓋20の半径方向内側の最も端の部分である。
【0025】
以下、図3(a)及び図3(b)を参照して、第2及び第1ラチェット爪15a,15bの形状や姿勢について詳細に説明する。
【0026】
第2ラチェット爪15aの第2当接部AB1は、図3(a)に示したように、正面視で(具体的には、図3(b)のB−B矢視断面で見て)、回転軸AXを含む鉛直面RSに対して上端15f側で角度α1をもって上蓋20側の螺合方向R2に傾けて形成されている。また、第2ラチェット爪15aは、図3(b)に示すように、平面視で(具体的には、図3(a)のC−C矢視断面で見て)、回転軸AXを含む鉛直面RSに対して先端15d側で角度β1をもって上蓋20側の螺合方向R2に傾けて形成されている。なお、図3(b)は例示であり、回転軸AXに垂直な面での第2ラチェット爪15aの先端15dは、回転軸AXを含む鉛直面RSに対して傾いていなくてもよい。この場合、具体的には、第2ラチェット爪15aの先端15dは、回転軸AXを含む鉛直面RSに対して0°となっている。
【0027】
一方、第1ラチェット爪15bの第1当接部AB2は、図3(a)に示したように、正面視で、回転軸AXを含む鉛直面RSに対して下端15g側で角度α2をもって上蓋20側の反螺合方向(分離部12側の螺合方向R1)に傾けて形成されている。また、第1ラチェット爪15bは、図3(b)に示すように、平面視で、回転軸AXを含む鉛直面RSに対して先端15e側で角度β2をもって上蓋20側の反螺合方向(分離部12側の螺合方向R1)に傾けて形成されている。また、第1ラチェット爪15bの先端15eは、平面視で、2つの角部E1,E2を有している。この2つの角部E1,E2の少なくとも一方は、上蓋20を反螺合方向に回転させた場合に、第1当接部AB2として第2ラチェット爪15aの第2当接部AB1に最初に当接する。第1ラチェット爪15bの先端15eは、図3(b)〜3(e)に示すように、その端面が回転軸AXを含む鉛直面RSに対して傾いていてもよいし、図3(f)に示すように、傾いていなくてもよい。
【0028】
以上において、第1及び第2当接部AB2,AB1とは、一方の当接部が他方の当接部に当接する部分である。第1当接部AB2は、第2当接部AB1に対して角部(又は角部及びその周囲)で当接する場合や端面に沿って当接する場合がある。
【0029】
以下、図2等に示す中栓付き容器100の組立方法や使用方法について説明する。あらかじめ、容器本体1内に内容物を収容した後に、中栓10の環状凹部13を容器本体1の口部1aに嵌合させて容器本体1に係止した状態とする。この状態では、中栓10によって容器1の口部1aが完全に密封される。
その後、上蓋20を中栓10に組み付ける。具体的には、上蓋20の雌ねじ21aを中栓10の雄ねじ11cに螺合させることによって、上蓋20が中栓10に対して螺合方向R2に回転しつつ螺進方向D2に徐々に移動し、上蓋20が中栓10や口部1aを覆う状態となって、両者の組み付けが完了する。その際、図4(a)に示す状態に位置する上蓋20の第1ラチェット爪15bは、中栓10の第2ラチェット爪15aの間にあり、図4(b)に示す状態に位置する中栓10側の第2ラチェット爪15aは、上蓋20側の第1ラチェット爪15bに互いの第2及び第1滑動面SL1,SL2を介して当接し、この場合は上蓋20側の第1ラチェット爪15bが撓みながら中栓10側の第2ラチェット爪15aを通過する。そして、図5(a)に示すように、上蓋20側の第1ラチェット爪15bは中栓10側の第2ラチェット爪15aに対して螺合方向R2前方側に位置してそこに停止する。中栓10側の第2ラチェット爪15aの第2滑動面SL1は、曲面を有しており、上蓋20側の第1ラチェット爪15bが中栓10側の第2ラチェット爪15aに乗り上げやすくなっている。
【0030】
なお、図5(a)の状態は、図2の状態に対応し、図5(a)の状態においては、上蓋20の大径円筒体22の外側が中栓10のリップ11bの内側に密接し、上蓋20の小径円筒体24の外周面24jが中栓10の分離部12の小径円筒体12bの内周面12jに当接する。中栓付き容器100は、このような状態で流通する。
【0031】
中栓付き容器100を使用する際には、まず上蓋20を用いて開栓を行う。開栓は、上蓋20を容器本体1に対して緩めるように回転(反螺合方向に回転)することによって行われる。
【0032】
上蓋20を緩める方向に回転させると、図5(b)に示すように、上蓋20の第1ラチェット爪15bは、中栓10の第2ラチェット爪15aに係合する。この第1ラチェット爪15bは、第2ラチェット爪15aに噛みこむように係合し、第1及び第2当接部AB2,AB1同士が密着する。この結果、第1及び第2ラチェット爪15b,15aを介して中栓10の分離部12を上蓋20と一体的に回転させるとともに、分離部12を上方へ引き上げる。したがって、分離部12は、剪断部14において基部11から剪断される。
【0033】
開栓に際しては、剪断部14の破断によるパキンという音が発生し、また、上蓋20の回転に必要なトルクが急激に減少するため、明確な開封感を生じさせることができる。
【0034】
その後、中栓10の分離部12は、上蓋20に係止された状態で中栓10の基部11、即ち容器本体1から離反され、容器本体1の口部1aは、中栓10の基部11の大径円筒体11aを介して完全に開放される。つまり、上蓋20とともに分離部12が容器本体1から取り外される。それによって容器本体1内の内容物を注ぐことができるようになる。
【0035】
開栓後の分離部12は、上蓋20の第1ラチェット爪15bによって第2ラチェット爪15aを介して保持され、補助的に中栓10の小径円筒体12bの内周面12jと上蓋20の小径円筒体24の外周面24jとの摩擦抵抗によって回転が抑制され、それによって、上蓋20に確実に保持される。
【0036】
最初の開栓後に上蓋20を再度装着する際には、上蓋20を中栓10の基部11に螺合させる。これにより、上蓋20に保持されている分離部12の封止体12aの周面が基部11の剪断残部に当接して、容器本体1内の内容物に対する密封が図られる。また、上蓋20の大径円筒体22の外側が中栓10のリップ11bの内側に密接することによっても、容器本体1内の内容物に対する密封が図られる。
【0037】
以上で説明した実施形態の中栓付き容器100では、ラチェット機構15により、上蓋20を反螺合方向に回転させる際に上蓋20とともに分離部12を回転させることによって基部11から剪断によって分離するだけでなく、上蓋20の回転に伴って分離部12が相対的に降下することを防止できるとともに第2及び第1ラチェット爪15a,15bの第2及び第1当接部AB1,AB2間の摩擦抵抗によって分離部12を上蓋20に保持させることができる。つまり、分離部12を上蓋20に保持させるための突部を形成する必要がなくなり、型成形に際して中栓10の分離部12が中栓10の基部11から剪断・分離されることを防止することができる。
【0038】
なお、第2及び第1ラチェット爪15a,15bの回転軸AX方向に関する角度α1,α2は、分離部12を上蓋20に保持させるためには、大きい程好ましいが、脱型が煩雑になることが考えられるため、それらを考慮すると、10度〜60度の範囲にすることが好ましい。また、第2及び第1ラチェット爪15a,15bの回転軸AXに垂直な方向に関する角度β1,β2及び厚みは、第2及び第1ラチェット爪15a,15bの撓み状態、即ち、中栓10及び上蓋20の材質(一般的には、中栓10よりも上蓋20の方が硬質である)によって適宜に決定する。
【0039】
以上では実施形態に即して本発明を説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態が適用される容器本体1の材質は、合成樹脂、ガラス、金属であってもよく、また、フィルムからなる袋状の部材の口部に中栓10を設けたものとすることができる。
【0040】
また、上記実施形態では、上蓋20を中栓10の基部11の外周に螺合さているが、上蓋20を容器本体1に螺合させてもよい。
【0041】
また、上記実施形態では、第1ラチェット爪15bの先端15eに2つの角部E1,E2を設けたが、角部を設けず、例えば丸みを有する形状としてもよい。
【符号の説明】
【0042】
1…容器本体、 1a…口部、 10…中栓、 10a…抽出口、 11…基部、 11a…大径円筒体、 11b…リップ、 11c…雄ねじ、 11d…フランジ、 11e…内筒部、 11f…外筒部、 12…分離部、 12a…封止体、 12b…小径円筒体、 13…環状凹部、 14…剪断部、 15…ラチェット機構、 15a,15b…ラチェット爪、 20…上蓋、 20a…天井壁、 20b…周壁、 21…円筒体、 21a…雌ねじ、 22…大径円筒体、 23…中径円筒体、 24…小径円筒体、 51…螺合部、 100…中栓付き容器100、 AX…回転軸
図1
図2
図3
図4
図5