特許第6652902号(P6652902)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6652902
(24)【登録日】2020年1月28日
(45)【発行日】2020年2月26日
(54)【発明の名称】クリーンルーム
(51)【国際特許分類】
   F24F 7/06 20060101AFI20200217BHJP
【FI】
   F24F7/06 C
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-182223(P2016-182223)
(22)【出願日】2016年9月16日
(65)【公開番号】特開2018-44748(P2018-44748A)
(43)【公開日】2018年3月22日
【審査請求日】2018年8月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】502129933
【氏名又は名称】株式会社日立産機システム
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】松村 健史
(72)【発明者】
【氏名】安達 東彦
(72)【発明者】
【氏名】横山 誠
(72)【発明者】
【氏名】徳永 太一
【審査官】 浅野 弘一郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−198079(JP,A)
【文献】 特開2016−165249(JP,A)
【文献】 国際公開第2005/119131(WO,A1)
【文献】 特開2010−051351(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料を操作する操作装置と、前記操作装置と接続し前記試料を出し入れするクリーンブースを内部に備えるクリーンルームであって、
前記操作装置の手前の作業者空間の上側に第1のファンフィルタユニットを設け、該第1のファンフィルタユニットの風速を、周りよりも大きくし、
前記クリーンブースは、清浄空気が供給されるメインブースの外側に、前記メインブースの下部に形成した第1の開口から前記メインブースの上部に配置した第2のファンフィルタユニットにつながる空気の循環流路を設け、
前記クリーンブースの下部には、少なくとも作業者空間側から前記循環流路に空気が流入する第2の開口を設けたことを特徴とするクリーンルーム。
【請求項2】
請求項1記載のクリーンルームにおいて、
前記クリーンブースとして、受入側のクリーンブースと、出口側のクリーンブースを備え、
前記受入側のクリーンブースと、前記操作装置と、前記出口側のクリーンブースとは、コ字状に連結して配置されていることを特徴とするクリーンルーム。
【請求項3】
請求項1記載のクリーンルームにおいて、
前記操作装置は、安全キャビネットまたはアイソレータであることを特徴とするクリーンルーム。
【請求項4】
請求項1記載のクリーンルームにおいて、
前記クリーンブースは、
前記第2のファンフィルタユニットの下側の前記メインブースは陽圧とされ、前記循環流路内は陰圧とされ、
前記第2のファンフィルタユニットから下方に排出された空気が前記循環流路を通って前記第2のファンフィルタユニットに戻るとともに、前記クリーンブースの下部の第2の開口から前記循環流路に周囲の空気を吸い込むものであることを特徴とするクリーンルーム。
【請求項5】
請求項4記載のクリーンルームにおいて、
前記クリーンブースの下部の第2の開口は、作業者空間側にのみ開口していることを特徴とするクリーンルーム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、清浄空気を供給するクリーンルームに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば医薬品、化粧品の製造所において、内部に清浄空気を供給するためにクリーンルームが使用される。
従来、細胞操作の培養容器を解放する際は「医薬品及び医薬部外品の製造管理及び品質管理の基準」により無菌管理区域(グレードA)とする必要がある。また、培養系への培養容器、培地入り容器の導入の際は無菌管理区域を実現するパスボックス、クリーンブースを設置する必要がある。また、細胞操作を実施する施設は、無菌を担保する細胞処理施設(以下、CPC:Cell Processing Center)が用いられる。
これら無菌管理区域を実現するために、清浄空気を供給するファンフィルタユニットを用いたクリーンブースが用いられる。
【0003】
特許文献1には、内部空間を清浄な環境に保持することができ、且つ周辺領域においても良好に汚染制御することのできるクリーンブース構造を提供することを目的として、「局所的な清浄環境を提供するクリーンブース構造は、内部空間を清浄な環境に保持すべきメインブース(1)と、第1開口部(2)を介してメインブースと連通し且つ第2開口部(4)を介して外部と連通したサブブース(3)と、吸込み口(5a)から吸い込んだ空気を清浄にして吹出し口(5b)からメインブースの内部へ吹き出すファンフィルターユニット(5)と、サブブースの内部の空気をファンフィルターユニットの吸込み口へ導くための還気経路(6)とを備えている。(要約)」と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014−5992号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
CPC内で開放型の安全キャビネットとクリーンブースを連結し、細胞培養、培地交換、梱包までの一連の培養容器の移動をグレードA(高クリーン度)内で行うことで、汚染リスクを排除することができる。
図4に、この先行技術を示す。クリーンルーム1は、CPCを収容している。CPCは、受入側のクリーンブース21と、安全キャビネット3と、出口側のクリーンブース22を連結して構成されている。受入側のクリーンブース21では、細胞培養容器を受入れ、一時的にストックする。その後、細胞培養容器を安全キャビネット3へ移動し、検査や培地交換などの細胞操作の作業を行う。その後、出口側のクリーンブース22へ移動し、梱包、培養、遠心分離などの作業を行う。この装置では、開放型である安全キャビネットを用いるので、操作性が良く、小型で、滅菌時間も短くなる。図において、矢印はクリーンブース21,22から排気される空気を示す。
【0006】
しかし、クリーンブース21,22と安全キャビネット3の排気空気がCPC内に拡散するため、CPC内の気流が乱れ、塵埃が浮遊する可能性がある。また、クリーンブース21,22からの排気空気により細胞操作を行う安全キャビネット3内の気流を乱してしまう。また、作業者5が安全キャビネット3の手前に立って作業を行うが、発塵元の一つである作業者からの塵埃がCPC内に飛散してしまう恐れがある。
【0007】
特許文献1には、クリーンブースの周辺領域においても良好に汚染制御するクリーンブース構造が記載されているが、作業者から発生する塵埃については考慮されていない。
【0008】
本発明は、安全キャビネット内の気流を乱さず、発塵元である作業者からの塵埃をクリーンルーム内に飛散させず、クリーンルーム内での汚染リスクを低減できるクリーンルームを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明では、クリーンブースの外側に循環流路を設け、作業者側に開口を設けることで、作業者からの塵埃を回収する。また、クリーンルーム内の作業者がいる空間上のファンフィルタユニットの風速を大きくすることで、周囲より陽圧にし、クリーンブースの循環流路に誘導する流路を形成する。
【0010】
本発明の「クリーンルーム」の一例を挙げるならば、
試料を操作する操作装置と、前記操作装置と接続し前記試料を出し入れするクリーンブースを内部に備えるクリーンルームであって、
前記操作装置の手前の作業者空間の上側に第1のファンフィルタユニットを設け、該第1のファンフィルタユニットの風速を、周りよりも大きくし、
前記クリーンブースは、清浄空気が供給されるメインブースの外側に、前記メインブースの下部に形成した第1の開口から前記メインブースの上部に配置した第2のファンフィルタユニットにつながる空気の循環流路を設け、
前記クリーンブースの下部には、少なくとも作業者空間側から前記循環流路に空気が流入する第2の開口を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、安全キャビネット内の気流を乱さず、発塵元である作業者からの塵埃をクリーンルーム内に飛散させず、クリーンルーム内での汚染リスクを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施例1のクリーンルームの概略を示す平面図である。
図2A】本発明の実施例1の受入側のクリーンブースを示す断面図である。
図2B】本発明の実施例1の出口側のクリーンブースを示す断面図である。
図3A】本発明の実施例2の受入側のクリーンブースを示す断面図である。
図3B】本発明の実施例2の出口側のクリーンブースを示す断面図である。
図4】本発明の先行技術のクリーンルームの概略を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図面を用いて説明する。なお、実施の形態を説明するための各図において、同一の構成要素にはなるべく同一の名称、符号を付して、その繰り返しの説明を省略する。
【実施例1】
【0014】
図1図2Bに、本発明の実施例1のクリーンルームを示す。
図1は、実施例1のクリーンルームの概略平面図の例である。実施例1は、CPC(細胞処理施設)に適用したものである。図1において、CPCは受入側のクリーンブース21と、細胞等の試料を操作する操作装置の一例である安全キャビネット3と、出口側のクリーンブース22を連結して構成されている。図に示すように、受入側のクリーンブース21と、安全キャビネット3と、出口側のクリーンブース22とは、コの字状に配置されている。そして、安全キャビネット3の手前には、作業者がいる作業者空間4が設定されている。ここで、クリーンブースとは、ファンフィルタユニット等を用いて清浄空気を供給して、ブース内の空間の清浄度を保つ装置をいう。なお、本実施例では操作装置として安全キャビネットを用いたが、細胞を操作する操作装置としてはアイソレータでも良い。
【0015】
本実施例において、作業者5がいる作業者空間4の上側には、ファンフィルタユニット7(第1のファンフィルタユニット)が設けられており、周りの空間、例えばクリーンブース21,22上や安全キャビネット3上に設けたファンフィルタユニット(図示せず)に比べて、作業者のいる作業者空間4上に設けたファンフィルタユニット7の風速を大きくし、作業者のいる作業者空間4を陽圧としている。
【0016】
次に、クリーンブース2において、外側に循環流路形成用の構造を設け、作業者側に開口を設けることで、作業者から出た塵埃を回収する。そのため、クリーンブース内のメインブース14の気圧は+20〜30(Pa)程度の陽圧とし、CPC内を+10〜20(Pa)程度の陽圧とする。また、クリーンブース2の外側の循環流路(チャンバ)15内を-10〜20(Pa)程度の陰圧とすることで、塵埃を回収する。
【0017】
図2Aおよび図2Bに、図1のクリーンブース21,22の例を示す。図2Aは受入側のクリーンブース21に、図2Bは出口側のクリーンブース22に対応している。なお、図2Aおよび図2Bにおいて、矢印は空気の流れを示す。
【0018】
クリーンブース2内のメインブース14は、クリーンブースの天井面に設置されたファンフィルタユニット11(第2のファンフィルタユニット)のファン12より、フィルタ13を通して供給される清浄空気により、20〜30(Pa)の陽圧とする。
メインブース14の外側には、ステンレス板やアクリル板等で循環流路であるチャンバ15を設ける。また、それらの板はクリーンブースの内外に開口を設ける。すなわち、チャンバの内側のメインブース14側に内側開口16を、チャンバの外側に外側開口17を設ける。ステンレス板やアクリル板は、例えば塩ビ板やガラス板の様な排気風速により変形しないものであれば、置き換えることができる。
外側にステンレス板やアクリル板等で設けたチャンバ15は、ファンフィルタユニット11のファン12の空気の吸い込みにより、-10〜20(Pa)程度の陰圧になる。
【0019】
クリーンルーム1は、作業者空間4上に設置されているファンフィルタユニット7のみ高回転数で運転し、風速を大きくし、作業者空間4を+10〜20(Pa)程度の陽圧とする。
【0020】
空気は陽圧から陰圧に流れる。そのため、ファンフィルタユニット11によって送り込まれたクリーンブース2の排気は、メインブース14の外側に設置された陰圧のチャンバ15に内側開口16を通して流れる。また、クリーンルーム1内の空気については、作業者空間4の陽圧からクリーンブースの外側に設置された陰圧のチャンバ15に外側開口17を通して流れる。そして、陰圧のチャンバ15内の空気はファンフィルタユニット11に設置されたファン12によりフィルタ13を通り塵埃は除去され、清浄空気としてクリーンブース2内を循環する。
【0021】
本実施例によれば、クリーンブース2の外側にチャンバ15を設け、メインブースの下側からチャンバ15を通りファンフィルタユニット11に戻る循環流路を形成したので、クリーンブース2からの排気をクリーンルーム1内に排出することが無く、安全キャビネット3内などの気流を乱すことが無い。また、塵埃の発生元である作業者がいる作業者空間4の圧力を周囲に比べて高くすることで、作業者から発生した塵埃をクリーンブース2の外側の循環流路により回収することができ、クリーンルーム1内に浮遊する塵埃を最短でクリーンブース2のフィルタ13に回収することができる。
【実施例2】
【0022】
図3Aおよび図3Bに、本発明の実施例2のクリーンブースを示す。図3Aは受入側のクリーンブース21を、図3Bは出口側のクリーンブース22を示す。
実施例1のクリーンブースは、クリーンブースの下部において、作業者空間側にのみ外側開口17を設けたものであるが、本実施例は、作業者空間側およびその反対の壁側に外側開口17を設けたものである。例えば、CPC内を+10〜20(Pa)程度の陽圧とし、チャンバ15内を-10〜20(Pa)程度の陰圧とすることにより、クリーンルーム内の壁側の塵埃も外側開口17を通して循環流路により回収することができる。
【0023】
本実施例によれば、作業者から発生した塵埃に限らず、壁側の塵埃も回収することができる。これに対して、実施例1のクリーンブースでは、作業者空間側にのみ外側開口17を設けたので、作業者から発生した塵埃を有効に回収することができる。
【符号の説明】
【0024】
1 クリーンルーム
2 クリーンブース
21 受入側クリーンブース
22 出口側クリーンブース
3 安全キャビネット
4 作業者空間
5 作業者
6 第2のファンフィルタユニット
7 第1のファンフィルタユニット
11 ファンフィルタユニット
12 ファン
13 フィルタ
14 メインブース
15 チャンバ(循環流路)
16 内側開口
17 外側開口
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4