(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記部分領域設定部は、前記部分領域のアスペクト比が、前記構図データベースに格納されているいずれかの特徴量に対応する写真画像のアスペクト比と同一となるように、前記部分領域を設定する、
請求項1に記載の画像処理装置。
前記複数種類の認識対象それぞれについて算出された認識指標値のうち、所定の閾値を超える認識指標値に対応する認識対象が一種類以下の場合、そのことを通知する通知部をさらに備える、
請求項3又は4に記載の画像処理装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記の技術は、撮影者があらかじめ指定した構図と、撮影者が撮影した写真の構図との比較を行うことにより、撮影した写真における構図が評価される。したがって、写真の撮影者が、あらかじめ記憶された構図情報が示す所定の構図と同様の構図となる写真を撮影しないと、よい評価の構図が得られないことになる。つまり、写真の撮影者に一定の写真撮影技術が求められ、そのような技術を持たない一般のユーザでは、よい構図となる写真を撮影するのが難しくなりかねない。
【0005】
そこで、本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、よい構図となる写真を撮影することを補助する技術におけるユーザビリティを向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様は、画像処理装置である。この装置は、処理対象とする写真画像である処理対象画像を取得する画像取得部と、前記処理対象画像に複数の部分領域を設定する部分領域設定部と、前記複数の部分領域それぞれについて、写真の構図を表現する特徴量を取得する特徴量取得部と、前記処理対象画像とは異なる複数の写真画像それぞれの前記構図を表現する特徴量を格納する構図データベースを参照して算出された、当該構図データベースに格納されている複数の特徴量と前記複数の部分領域それぞれの特徴量との類似度を示す類似度指標値を取得する類似度取得部と、を備える。
【0007】
前記部分領域設定部は、前記部分領域のアスペクト比が、前記構図データベースに格納されているいずれかの特徴量に対応する写真画像のアスペクト比と同一となるように、前記部分領域を設定してもよい。
【0008】
前記特徴量取得部は、あらかじめ定められた複数種類の認識対象それぞれについて、前記処理対象画像に設定された単位領域毎に、当該単位領域に撮像されている被写体が前記認識対象である蓋然性を示す認識指標値を算出する物体認識部と、前記認識指標値に基づいて特徴量を生成する特徴量生成部と、を備えてもよい。
【0009】
前記特徴量取得部は、前記部分領域設定部が設定した複数の部分領域それぞれについて、前記部分領域に含まれる1以上の前記単位領域毎に、前記複数の認識対象に関する認識指標値を並べたベクトルを生成するベクトル生成部をさらに備えてもよく、前記特徴量生成部は、前記ベクトルを、前記部分領域における前記単位領域の存在位置を示す位置情報と関連付けた情報を前記特徴量として生成してもよい。
【0010】
前記画像処理装置は、前記複数種類の認識対象それぞれについて算出された認識指標値のうち、所定の閾値を超える認識指標値に対応する認識対象が一種類以下の場合、そのことを通知する通知部をさらに備えてもよい。
【0011】
前記画像処理装置は、前記複数の部分領域のうち、前記類似度指標値が示す類似度が高い部分領域を、類似度が低い画像よりも優先して表示部に表示させる表示制御部をさらに備えてもよい。
【0012】
前記表示制御部は、前記複数の類似度指標値のうち、前記構図データベースに格納されている特徴量との類似度が最も高いことを示す類似度指標値に対応する部分領域を特定する類似部分領域設定部と、前記類似部分領域設定部が特定した部分領域を、前記処理対象画像において他の領域とは異なる態様とした表示用画像を生成する表示用画像生成部と、前記表示用画像を前記表示部に出力する画像出力部と、を備えてもよい。
【0013】
前記表示制御部は、前記類似部分領域設定部が特定した部分領域を、前記処理対象画像とは異なる新たな画像として記憶部に記憶させる画像保存部をさらに備えてもよい。
【0014】
前記画像取得部は、動画像を撮像する撮像部が撮像中の動画像を構成する画像フレームを前記処理対象画像として取得してもよく、前記表示制御部は、前記動画像を構成する画像フレームのうち、前記画像取得部が前記処理対象画像として取得した画像フレームを前記表示用画像に置換した動画像を、前記表示部に表示させてもよい。
【0015】
本発明の第2の態様は、画像処理方法である。この方法において、プロセッサが、処理対象とする写真画像である処理対象画像を取得するステップと、前記処理対象画像に複数の部分領域を設定するステップと、前記複数の部分領域それぞれについて、写真の構図を表現する特徴量を取得するステップと、前記処理対象画像とは異なる複数の写真画像それぞれの前記構図を表現する特徴量を格納する構図データベースを参照して算出された、当該構図データベースに格納されている複数の特徴量と前記複数の部分領域それぞれの特徴量との類似度を示す類似度指標値を取得するステップと、を実行する。
【0016】
本発明の第3の態様は、画像処理方法である。この方法において、クラウドコンピューティングの計算リソースが、処理対象とする写真画像である処理対象画像を取得するステップと、前記処理対象画像に複数の部分領域を設定するステップと、前記複数の部分領域それぞれについて、写真の構図を表現する特徴量を取得する機能と、前記処理対象画像とは異なる複数の写真画像それぞれの前記構図を表現する特徴量を格納する構図データベースを参照して、当該構図データベースに格納されている複数の特徴量と前記複数の部分領域それぞれの特徴量との類似度を示す類似度指標値を算出するステップと、を実行する。
【0017】
本発明の第4の態様は、プログラムである。このプログラムは、コンピュータに、処理対象とする写真画像である処理対象画像を取得する機能と、前記処理対象画像に複数の部分領域を設定する機能と、前記複数の部分領域それぞれについて、写真の構図を表現する特徴量を取得する機能と、前記処理対象画像とは異なる複数の写真画像それぞれの前記構図を表現する特徴量を格納する構図データベースを参照して算出された、当該構図データベースに格納されている複数の特徴量と前記複数の部分領域それぞれの特徴量との類似度を示す類似度指標値を取得する機能と、を実現させる。
【0018】
本発明の第5の態様は、画像処理装置と、ネットワークを介して前記画像処理装置と通信するサーバと、を備える情報処理システムである。このシステムにおいて、前記画像処理装置は、画像を撮像する撮像部と、画像を表示する表示部と、を備える。前記サーバは、複数の写真画像それぞれについて、写真の構図を表現する特徴量を対応付けて格納する構図データベースを備える。前記画像処理装置と前記サーバとの少なくともいずれか一方は、前記撮像部が撮像した画像を処理対象画像として取得する画像取得部と、前記処理対象画像に複数の部分領域を設定する部分領域設定部と、前記複数の部分領域それぞれについて、写真の構図を表現する特徴量を取得する特徴量取得部と、前記構図データベースを参照して、当該構図データベースに格納されている複数の特徴量と前記部分領域設定部が設定した複数の部分領域それぞれの特徴量との類似度を示す類似度指標値を算出する類似度指標算出部と、を備える。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、よい構図となる写真を撮影することを補助する技術におけるユーザビリティを向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
<実施の形態の概要>
図1を参照して、実施の形態の概要を述べる。
図1は、実施の形態に係る情報処理システムSの構成を模式的に示す図である。実施の形態に係る情報処理システムSは、画像処理装置1、サーバ2、及び構図データベース3を備える。画像処理装置1とサーバ2とは、インターネットや携帯電話通信網等から構成されるネットワークNを介して互いに通信することができる。画像処理装置1は例えば携帯電話、スマーフォン、タブレットPC(Personal Computer)等の電子機器であり、サーバ2は例えばブレードサーバやクラウドサーバ等の計算機である。
【0022】
以下に記載する(1)から(5)までの流れは、
図1中の(1)から(5)の矢印で示す情報の流れに対応する。
【0023】
(1)画像処理装置1のユーザUは、例えば画像処理装置1の撮像部を用いて撮像し、写真画像を生成する。(2)サーバ2は、写真画像の一部の領域である部分領域の構図を表現する特徴量を取得する。ここでサーバ2は、ネットワークNを介して画像処理装置1から写真画像をまず取得し、取得した写真画像を解析することで特徴量を取得してもよいし、画像処理装置1が写真画像を解析することで生成した特徴量自体をネットワークNを介して画像処理装置1から取得してもよい。なお、サーバ2は、写真画像に設定された複数の部分領域それぞれに対応する複数の特徴量を取得する。
【0024】
構図データベース3は、複数の写真画像それぞれの構図を表現する特徴量を格納するデータベースである。構図データベース3は、例えばプロのカメラマンが撮像した、いわば手本となる写真画像の構図を表現する特徴量を格納している。(3)サーバ2は構図データベース3を参照し、写真画像の部分領域の構図を表現する特徴量と構図データベース3に格納されている特徴量との類似度を算出する。これにより、サーバ2は、構図データベース3に格納された手本となる写真画像と構図が類似する部分領域を取得できる。
【0025】
(4)サーバ2は、手本となる写真画像と構図が類似する部分領域を示す情報を、ネットワークNを介して画像処理装置1に送信する。これにより、画像処理装置1は、撮像して得られた写真画像のうち、手本となる写真画像と構図が類似する部分領域を特定できる。
【0026】
(5)したがって、画像処理装置1は手本となる写真画像と構図が類似する部分領域を切り出したり、その部分のみを表示したりすることにより、ユーザUに良質な構図の写真を提示することができる。ユーザUは画像処理装置1で写真を撮りさえすれば、その写真内において良質な構図となる部分が自動で抽出されるので、実施の形態に係る情報処理システムSは、ユーザUに写真撮影の技術を要求しない。
以下、実施の形態に係る画像処理装置1の機能構成についてより詳細に説明する。
【0027】
<画像処理装置1の機能構成>
図2は、実施の形態に係る画像処理装置1の機能構成を模式的に示す図である。実施の形態に係る画像処理装置1は、通信部10、記憶部20、撮像部30、表示部40、及び制御部50を備える。
【0028】
通信部10は、画像処理装置1が構図データベース3との間で情報を送受信するための通信インタフェースである。通信部10は、例えばWi−Fi(登録商標)モジュールや携帯電話通信モジュール等の既知の通信モジュールによって実現される。
【0029】
記憶部20は、OS(Operating System)やアプリケーションプログラム等を格納するROM(Read Only Memory)や画像処理装置1の作業領域となるRAM(Random Access Memory)、その他、構図データベース3の一部又は全部等の各種情報を格納するHDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)等の大容量記憶装置である。
【0030】
撮像部30は、撮像によって写真画像を生成する。撮像部30は、例えばCCD(Charge Coupled Device)イメージセンサやCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサ等、既知の固体撮像素子で実現される。
【0031】
表示部40は、画像処理装置1が生成した情報をユーザUに視覚的に通知するためのインタフェースである。撮像部30は表示領域とタッチパネルとが一体となったタッチスクリーンであってもよく、この場合撮像部30は画像処理装置1の入力インタフェースとしても機能する。
【0032】
制御部50は、画像処理装置1のCPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)等のプロセッサであり、記憶部20に記憶されたプログラムを実行することによって画像取得部51、部分領域設定部52、特徴量取得部53、類似度取得部54、表示制御部55、及び通知部56として機能する。
【0033】
画像取得部51は、処理対象とする写真画像である処理対象画像を取得する。画像取得部51は、例えば画像処理装置1のユーザUが撮像部30を用いて撮像した写真画像を処理対象画像として取得する。画像取得部51はまた、画像処理装置1とは異なる他の装置から処理対象画像を取得してもよい。部分領域設定部52は、処理対象画像に複数の部分領域を設定する。
【0034】
図3は、実施の形態に係る部分領域設定部52が設定する部分領域の一例を模式的に示す図である。
図3は処理対象画像60中に設定された3つの部分領域61(61a、61b、及び61c)を示している。なお、部分領域設定部52が設定する部分領域61の数は3つに限られず、1つ、又は2つ、あるいは4つ以上であってもよい。
【0035】
図3に示すように、部分領域設定部52は、処理対象画像60中の複数の箇所に、種々の大きさ及び形状の部分領域61を設定する。部分領域設定部52は、あらかじめ定められた複数の位置にそれぞれ部分領域61を設定してもよいし、処理対象画像60中のランダムな位置に部分領域61を設定してもよい。前者の場合、部分領域設定部52は記憶部20に定められた位置を示す情報を参照して部分領域61を設定する。部分領域61が矩形領域の場合、記憶部20は、部分領域61の対角に位置する2つの頂点の位置に関する処理対象画像60の相対的な位置座標を格納すればよい。
【0036】
図2の説明に戻る。特徴量取得部53は、部分領域設定部52が処理対象画像60中に設定した複数の部分領域61それぞれについて、写真の構図を表現する特徴量を取得する。写真の構図を表現する特徴量の詳細は後述するが、写真中にどのような種類の被写体がどのような位置に配置されているかを示す情報である。特徴量のデータサイズは、元となる処理対象画像60のデータサイズと比較して小さい。具体的には、処理対象画像60のデータサイズが数メガバイトであるのに対し、一つの部分領域61の特徴量は大きくて数キロバイト程度である。
【0037】
類似度取得部54は、特徴量取得部53から特徴量を取得する。類似度取得部54は、取得した特徴量を通信部10及びネットワークNを介してサーバ2に送信する。上述したように、構図データベース3は、処理対象画像60とは異なる複数の写真画像それぞれの構図を表現する特徴量を格納するデータベースである。サーバ2は、画像処理装置1から取得した特徴量に基づいて構図データベース3を参照する。サーバ2は、構図データベース3に格納されている複数の特徴量と、画像処理装置1から取得した複数の部分領域それぞれの特徴量との類似度を示す類似度指標値を算出する。サーバ2は、取得した類似度指標値をネットワークNを介して画像処理装置1に送信する。
【0038】
類似度取得部54は、サーバ2が算出した類似度指標値を通信部10から取得する。このように、画像処理装置1が特徴量を算出してからサーバ2に送信する場合は、画像処理装置1が処理対象画像60自体をサーバ2に送信する場合よりも、ネットワークNの負荷を抑制し、通信に係るコストを抑えることができる。
【0039】
表示制御部55は、複数の部分領域のうち、類似度指標値が示す類似度が高い部分領域を、類似度が低い画像よりも優先して表示部40に表示させる。これにより、画像処理装置1のユーザは表示部40を見ることにより、撮像部30を使って撮像した写真画像のうち、構図データベース3に格納されている手本となる写真画像の構図と類似する領域を把握することができる。
【0040】
[表示制御部55の機能構成]
図4は、実施の形態に係る表示制御部55の機能構成を模式的に示す図である。表示制御部55は、類似部分領域設定部551、表示用画像生成部552、画像出力部553、及び画像保存部554を含む。
【0041】
類似部分領域設定部551は、類似度取得部54から取得した複数の類似度指標値のうち、構図データベース3に格納されている特徴量との類似度が最も高いことを示す類似度指標値に対応する部分領域を特定する。表示用画像生成部552は、類似部分領域設定部551が特定した部分領域を、処理対象画像60において他の領域とは異なる態様とした表示用画像を生成する。
【0042】
画像出力部553は、表示用画像を表示部40に出力する。画像保存部554は、類似部分領域設定部551が特定した部分領域を、処理対象画像60とは異なる新たな画像として記憶部20に記憶させる。これにより、ユーザUは構図データベース3に格納されている手本となる写真画像の構図と類似する領域のみを切り出した新たな画像データを取得することができる。
【0043】
図5は、実施の形態に係る表示用画像生成部552が生成した表示用画像62の一例を模式的に示す図である。
図5に示すように、表示用画像生成部552は、類似部分領域設定部551が設定した部分領域については処理対象画像60と同じ輝度を保ちつつ、類似部分領域設定部551が設定した部分領域以外の領域は処理対象画像60と比較して輝度値を下げたり色相を変更したりして表示用画像62を作成する。これにより、ユーザUは表示部40に表示された部分領域61を一見するだけで、類似部分領域設定部551が特定した部分領域61を把握することができる。
【0044】
なお、実施の形態に係る画像処理装置1の撮像部30は、動画像を撮像することもできる。このため画像取得部51は、動画像を撮像する撮像部30が撮像中の動画像を構成する画像フレームを処理対象画像60として取得することができる。表示制御部55は、撮像部30が撮像した動画像を構成する画像フレームのうち、画像取得部51が処理対象画像60として取得した画像フレームを部分領域61に置換した動画像を、表示部40に表示させてもよい。これにより、撮像部30が流し撮りして表示部40に表示されるいわゆる「ライブビュー」において、ユーザUは手本となる写真画像と類似する構図をリアルタイムで確認することができるようになる。
【0045】
[構図を表現する特徴量及び類似度指標値]
続いて、特徴量取得部53が取得する写真の構図を表現する特徴量及び特徴量同士の類似度指標値について
図6、
図7、及び
図8を参照して説明する。
【0046】
図6は、実施の形態に係る特徴量取得部53の機能構成を模式的に示す図である。特徴量取得部53は、物体認識部531、ベクトル生成部532、及び特徴量生成部533を含む。物体認識部531は、あらかじめ定められた複数種類の認識対象それぞれについて、処理対象画像60に設定された単位領域毎に、その単位領域に撮像されている被写体が認識対象である蓋然性を示す認識指標値を算出する。
【0047】
図7は、処理対象画像60に設定された単位領域とその認識結果を説明するための図である。
図7に示す単位領域は、処理対象画像60を縦方向に9分割、横方向に6分割、計54分割した場合の各領域である。
図7に示すように、処理対象画像60に設定された単位領域と、部分領域設定部52が設定する部分領域61とは異なっている。物体認識部531は、単位領域毎に、その領域に撮像されている被写体の蓋然性を示す認識指標値を算出する。物体認識部531は、例えばニューラルネットワーク、SVM(Support Vector Machine)、ブースティング等の既知の教師あり機械学習によって生成した被写体認識エンジンを用いて実現できる。
【0048】
図7において、各部分領域に記載された「空」、「雲」、「塔」、「山」等は、物体認識部531が認識した被写体を示す。ベクトル生成部532は、部分領域設定部52が設定した複数の部分領域61それぞれについて、その部分領域61に含まれる1以上の単位領域毎に、複数の認識対象に関する認識指標値を並べたベクトルを生成する。
【0049】
特徴量生成部533は、認識指標値を並べたベクトルに基づいて、写真の構図を表現する特徴量を生成する。より具体的には、特徴量生成部533は、ベクトル生成部532が生成したベクトルを、部分領域61における単位領域の存在位置を示す位置情報と関連付けた情報を、写真の構図を表現する特徴量として生成する。
【0050】
図8は、実施の形態に係る特徴量生成部533が生成する特徴量を構成するベクトルのデータ構造を模式的に示す図である。特徴量生成部533は、各部分領域61に含まれる単位領域それぞれを一意に特定するための単位領域番号を、各単位領域に割り振る。例えば
図8は、単位領域番号が3−2で特定される単位領域の特徴量を示している。ここで単位領域番号が「3−2」で表されるのは、この単位領域が部分領域61に含まれる単位領域のうち、左から3番目、上から2番目の単位領域であることを示す。
【0051】
図8に示すように、特徴量生成部533が生成するベクトルは、単位領域における被写体に関する認識指標値を並べたベクトルである。したがって、特徴量生成部533が生成するベクトルは、物体認識部531が認識可能な被写体の種類の数と同じ次元数のベクトルである。限定はしないが、物体認識部531が認識可能な被写体の種類は例えば100種類程度である。またベクトルを構成する要素は被写体の蓋然性を示す割合であるため、0以上1以下の数値である。
【0052】
特徴量生成部533は、ベクトル生成部532が生成したベクトルと、単位領域番号、すなわち部分領域61における単位領域の位置を示す情報とを対応付けた情報を、写真の構図を表現する特徴量として生成する。
【0053】
なお、構図データベース3には、手本となる写真画像について、特徴量生成部533が生成する特徴量と同様の特徴量が格納されている。サーバ2は、特徴量生成部533が生成した特徴量と、構図データベース3に格納されている特徴量とを比較することにより、類似度を算出する。
【0054】
具体的には、サーバ2は、特徴量生成部533が生成する特徴量と構図データベース3に格納されている特徴量とについて、それぞれ対応するベクトルの類似度を算出する。サーバ2は、特徴量に含まれるすべてのベクトルの類似度の総和を、特徴量の類似度指標値とすればよい。なお、サーバ2は、ベクトル間の類似度の計算として、一般的な類似画像検索技術で用いられる既知の類似度算出手法(例えばコサイン類似度やベクトルの内積等)を用いればよい。
【0055】
再び
図2の説明に戻る。通知部56は、複数種類の認識対象それぞれについて物体認識部531が算出した認識指標値のうち、所定の閾値を超える認識指標値に対応する認識対象が一種類以下の場合、そのことを通知する。ここで「所定の閾値」とは、物体認識部531の認識結果が信頼し得るか否かを決定するために通知部56が参照する「信頼性判定閾値」である。この閾値の具体的な値は物体認識部531の認識性能等を考慮して実験により定めればよいが、例えば50である。
【0056】
物体認識部531が算出した認識指標値のうち信頼性判定閾値を超える認識対象が一種類である場合、その部分領域61には一種類の被写体のみが撮像されていると考えられる。この場合、そのような部分領域61は「構図」を判断することのメリットが低いため、通知部56はそのことを通知する。また、物体認識部531が算出した認識指標値のうち信頼性判定閾値を超える認識対象が存在しない場合も、そのような部分領域61について「構図」を判断することのメリットが低い。したがって、通知部56はそのことを通知する。
【0057】
なお、通知部56は、例えば構図を特定するメリットが少ないことを示すメッセージを表示部40に表示させて通知してもよい。これに替えて、あるいはこれに加えて、通知部56は、音声で通知したり、画像処理装置1のバイブレーション機能を作動させて通知したりしてもよい。
【0058】
ここで、サーバ2において特徴量生成部533が生成する特徴量と構図データベース3に格納されている特徴量との類似度を算出する際に、それぞれ対応するベクトルの決定が容易である方が好ましい。そこで部分領域設定部52は、部分領域61のアスペクト比が、構図データベース3に格納されているいずれかの特徴量に対応する写真画像のアスペクト比と同一となるように、部分領域61を設定してもよい。
【0059】
これにより、画像処理装置1は部分領域61に拡大処理又は縮小処理を施すことにより、構図データベース3に格納されている特徴量と対応する写真画像のサイズ及び形状に部分領域61のサイズ及び形状を合わせることができる。結果として、特徴量生成部533が生成する特徴量と構図データベース3に格納されている特徴量との類似度を算出する際に、サーバ2はそれぞれ対応するベクトルの決定が容易となる。
【0060】
<画像処理装置1が実行する画像処理の処理フロー>
図9は、実施の形態に係る画像処理装置1が実行する画像処理の流れを説明するためのフローチャートである。本フローチャートにおける処理は、例えば画像処理装置1の電源が投入されたときに開始する。
【0061】
画像取得部51は、処理対象とする写真画像である処理対象画像60を取得する(S2)。部分領域設定部52は処理対象画像60に複数の部分領域61を設定する(S4)。物体認識部531は、あらかじめ定められた複数種類の認識対象それぞれについて、処理対象画像60に設定された単位領域毎に、その単位領域に撮像されている被写体が認識対象である蓋然性を示す認識指標値を算出する物体認識を実行する(S6)。
【0062】
特徴量取得部53は、算出した認識指標値に基づいて、各部分領域における写真の構図を表現する特徴量を生成する(S8)。類似度取得部54は、各部分領域における特徴量と、構図データベース3に格納されている特徴量との類似度を取得する(S10)。表示制御部55は、類似度が高い特徴に対応する部分領域61を、表示部40に表示する(S12)。
【0063】
表示制御部55が部分領域61を表示部40に表示すると、本フローチャートにおける処理は終了する。画像処理装置1は上記の処理を繰り返すことにより、構図の手本となる写真画像の特徴量との類似度との類似度が高い特徴に対応する部分領域61を表示部40に表示する処理を継続する。
【0064】
以上説明したように、実施の形態に係る画像処理装置1によれば、よい構図となる写真を撮影することを補助する技術におけるユーザビリティを向上させることができる。特に、構図データベース3にあらかじめ用意した大量の写真画像を教師データとして、ユーザUが撮像した新たな写真画像の中から部分画像として適切な構図を切り出すことができる。
【0065】
画像処理装置1は、構図データベース3にあらかじめ格納された大量の写真画像と同じアスペクト比の部分領域を設定することにより、部分画像と構図データベース3にあらかじめ格納された大量の写真画像との比較を容易とすることができる。また、画像処理装置1はユーザUが撮像した写真画像のうち、よい構図と判断された部分領域を他の領域とは変えて表示することにより、ユーザUは一見してよい構図となる部分を把握することができる。
【0066】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。特に、装置の分散・統合の具体的な実施形態は以上に図示するものに限られず、その全部又は一部について、種々の付加等に応じて、又は、機能負荷に応じて、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。以下そのような変形例について説明する。
【0067】
<変形例>
上記では
図1を参照して、ネットワークNを介して画像処理装置1とサーバ2とが接続している様子を説明したが、これは現実のシステム構成を模式的に図示するものである。しかしながら、画像処理装置1を利用するユーザUは、ネットワークNを含め、サーバ2や構図データベース3等のシステム構成を認識することはあまりない。情報処理システムSを利用するユーザUの立場から見ると、サービスの提供を受ける上で情報処理システムSの物理構成やソフトウェア構成等を理解する必要はなく、あたかもネットワークの雲(Cloud;クラウド)の中から出てきたサービスを利用するかのような印象を受ける。
【0068】
画像処理装置1は、ほとんどの場合CPUやGPU等の計算リソースを持っており、アプリケーションの少なくとも一部を画像処理装置1のローカルな環境で実行することも可能である。しかしながら、画像処理装置1を利用するユーザUにとっては、アプリケーションがローカルな計算リソースで実行されるか、あるいはネットワークNを介してサーバ2の計算リソースで実行されるかは重要な問題ではなく、サービスを利用できるという点では同じである。したがって、以下本明細書において、「クラウドコンピューティングシステムの計算リソース」あるいは単に「計算リソース」という場合、画像処理装置1の計算リソースとサーバ2の計算リソースの少なくともいずれか一方を意味することとする。
【0069】
図10は、変形例に係る情報処理システムSの機能構成を模式的に示す図である。変形例に係る情報処理システムSは、構図データベース3、撮像部30、表示部40、画像取得部51、部分領域設定部52、特徴量取得部53、類似度取得部54、表示制御部55、及び通知部56を含む。ここで、同一符号で示す部材は、実施の形態に係る情報処理システムSにおいて対応する部材と同様であるため説明を省略する。
【0070】
変形例に係る情報処理システムSにおいて、画像処理装置1は撮像部30と表示部40とを少なくとも備える。画像処理装置1はユーザUが所持する機器であるため、ユーザUが写真撮影をするために撮像部30は画像処理装置1に備えられている。また、ユーザUが写真画像をはじめとする画像処理装置1が生成する情報を確認するために、表示部40は画像処理装置1に備えられている。
【0071】
また、構図データベース3は、構図の手本となる複数の写真画像から抽出された特徴量を格納している。構図データベース3は、例えばサーバ2の運用者が維持管理することができれば最新の情報を保つことができる。この構図データベース3を複数の異なる画像処理装置1からアクセスできるようにするために、構図データベース3はオンラインにあることが好ましい。また構図データベース3のデータ量が大きい場合も、各ユーザUが所持する画像処理装置1が構図データベース3を個別に保持するよりも、ネットワーク上に置かれた方が好ましい。そこで、変形例に係る情報処理システムSにおいては、構図データベース3はサーバ2に含まれている。
【0072】
これに対し、画像取得部51、部分領域設定部52、特徴量取得部53、類似度取得部54、表示制御部55、及び通知部56の各機能は、画像処理装置1の計算リソースを用いて実現されてもよいし、サーバ2の計算リソースを用いて実現されてもよい。すなわち、画像取得部51、部分領域設定部52、特徴量取得部53、類似度取得部54、表示制御部55、及び通知部56は、画像処理装置1とサーバ2との少なくともいずれか一方が備えていればよい。
【0073】
画像処理装置1とサーバ2とのいずれが画像取得部51、部分領域設定部52、特徴量取得部53、類似度取得部54、表示制御部55、及び通知部56を備えるかは、画像処理装置1及びサーバ2の計算リソースの大きさや、ネットワークNの通信速度、物体認識部531が認識対象とする被写体の種類の数等を考慮して、実験により決めてもよいし、動的に変更されてもよい。すなわち、画像取得部51、部分領域設定部52、特徴量取得部53、類似度取得部54、表示制御部55、及び通知部56は、クラウドコンピューティングシステムの計算システムが実行すればよく、すべてが画像処理装置1又はサーバ2のいずれか一方で実行されてもよい。