特許第6652983号(P6652983)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6652983
(24)【登録日】2020年1月28日
(45)【発行日】2020年2月26日
(54)【発明の名称】口腔鏡補助装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 1/247 20060101AFI20200217BHJP
   A61C 19/04 20060101ALI20200217BHJP
   A61C 17/06 20060101ALI20200217BHJP
【FI】
   A61B1/247
   A61C19/04 Z
   A61C17/06 B
【請求項の数】6
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2018-52450(P2018-52450)
(22)【出願日】2018年3月20日
(65)【公開番号】特開2019-146945(P2019-146945A)
(43)【公開日】2019年9月5日
【審査請求日】2018年12月20日
(31)【優先権主張番号】特願2018-33310(P2018-33310)
(32)【優先日】2018年2月27日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】518068095
【氏名又は名称】山▲崎▼ 勝之
(74)【代理人】
【識別番号】100091373
【弁理士】
【氏名又は名称】吉井 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100097065
【弁理士】
【氏名又は名称】吉井 雅栄
(74)【代理人】
【識別番号】100201237
【弁理士】
【氏名又は名称】吉井 将太郎
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 勝之
【審査官】 ▲高▼ 芳徳
(56)【参考文献】
【文献】 欧州特許出願公開第00314657(EP,A1)
【文献】 特開平10−014951(JP,A)
【文献】 特開2017−000704(JP,A)
【文献】 実開昭59−073911(JP,U)
【文献】 実開昭54−127488(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 1/24 − 1/253
A61C 17/06
A61C 19/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
握柄部の先端部にミラー部を設けた口腔鏡に設けられる口腔鏡補助装置であって、前記ミラー部が嵌合され口腔内に配される有底筒状の被嵌合部を有し、この被嵌合部には吸引機と連設され前記握柄部に添設される吸引管が設けられ、この吸引管の先端開口は前記被嵌合部内に臨ましめられ、前記被嵌合部内には該被嵌合部の内径を調整する環状の調整体が設けられ、この調整体の内壁と前記ミラー部の外壁との間には前記被嵌合部の底部と連通する通気間隙が設けられ、前記吸引管の先端開口,前記被嵌合部の底部及び前記通気間隙は連通せしめられていることを特徴とする口腔鏡補助装置。
【請求項2】
請求項1記載の口腔鏡補助装置において、前記ミラー部は平面視円形であり、また、前記被嵌合部も平面視円形であることを特徴とする口腔鏡補助装置。
【請求項3】
請求項1,2いずれか1項に記載の口腔鏡補助装置において、前記調整体は、径の異なる複数の環状体で構成されていることを特徴とする口腔鏡補助装置。
【請求項4】
請求項1〜いずれか1項に記載の口腔鏡補助装置において、前記調整体の外壁は前記被嵌合部の内壁と当接し、前記調整体の内壁にして先端寄りには、厚さ方向に長さを有する複数の凹溝が周方向に並設されて前記通気間隙として構成されていることを特徴とする口腔鏡補助装置。
【請求項5】
請求項1〜いずれか1項に記載の口腔鏡補助装置において、前記通気間隙からの吸引により前記ミラー部の表面に、この表面と平行な吸引流が生じるように構成したことを特徴とする口腔鏡補助装置。
【請求項6】
請求項記載の口腔鏡補助装置において、前記被嵌合部の開口縁に内方へ突出する鍔状部を設けて前記ミラー部の表面に、この表面と平行な吸引流が生じるように構成したことを特徴とする口腔鏡補助装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、口腔鏡補助装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
歯科治療において、例えば術者が直視できない上あごの歯を治療する場合、術者は治療器具としてのタービン(回転切削器具)を持つ手と反対の手に口腔鏡を持って治療を行うが、この際、タービンから出る冷却水(患部に発生する摩擦熱を冷却する水)や口腔内を洗浄する洗浄液などが口腔鏡(ミラー部)に付着すると見えにくくなる為、吸引機から延設される管状の吸引具により口腔鏡(ミラー部)に付着した水などを除去しているが、口腔鏡(ミラー部)が見えにくくなるたびに吸引具に持ち替えていたのでは作業性が悪く、また、吸引具をスタッフに操作させていたのでは二人掛かりの治療となり非効率である。
【0003】
そこで、従来においても、例えば特開2005−137865号に開示されるような液体除去機能を具備した口腔鏡(以下、従来例)が提案されている。
【0004】
この従来例は、先端部にミラー部が設けられる握柄を中空体で構成し、ミラー部近傍に吸気口が開口形成されるとともに、握柄の基端部に吸引機の吸引ホースが接続される構造である。
【0005】
従って、吸引機を作動させると、ミラー部に付着した水などは、吸気口,握柄内及び吸引ホースを通過して吸引除去され、ミラー部による視界が確保されることになり、術者は術中に吸引具に持ち替える必要はなく、一人で歯科治療が良好に行え、前述した問題点は解消されることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−137865号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、口腔鏡のミラー部は、種々のサイズが提案され、術者の好みや治療する部位に応じて使い分けられているが、従来例は、その構造上、サイズごとに専用のものを製作しなければならず、コスト高となる。
【0008】
本発明は、前述した問題点を解消する、従来にない非常に実用的な口腔鏡補助装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
添付図面を参照して本発明の要旨を説明する。
【0010】
握柄部31の先端部にミラー部32を設けた口腔鏡30に設けられる口腔鏡補助装置であって、前記ミラー部32が嵌合され口腔内に配される有底筒状の被嵌合部3を有し、この被嵌合部3には吸引機10と連設され前記握柄部31に添設される吸引管2が設けられ、この吸引管2の先端開口2aは前記被嵌合部3内に臨ましめられ、前記被嵌合部3内には該被嵌合部3の内径を調整する環状の調整体4が設けられ、この調整体4の内壁4aと前記ミラー部32の外壁32aとの間には前記被嵌合部3の底部3aと連通する通気間隙5が設けられ、前記吸引管2の先端開口2a,前記被嵌合部3の底部3a及び前記通気間隙5は連通せしめられていることを特徴とする口腔鏡補助装置に係るものである。
【0011】
また、請求項1記載の口腔鏡補助装置において、前記ミラー部32は平面視円形であり、また、前記被嵌合部3も平面視円形であることを特徴とする口腔鏡補助装置に係るものである。
【0012】
また、請求項1,2いずれか1項に記載の口腔鏡補助装置において、前記調整体4は、径の異なる複数の環状体で構成されていることを特徴とする口腔鏡補助装置に係るものである。
【0013】
また、請求項1〜いずれか1項に記載の口腔鏡補助装置において、前記調整体4の外壁4bは前記被嵌合部3の内壁3bと当接し、前記調整体4の内壁4aにして先端寄りには、厚さ方向に長さを有する複数の凹溝5aが周方向に並設されて前記通気間隙5として構成されていることを特徴とする口腔鏡補助装置に係るものである。
【0014】
また、請求項1〜いずれか1項に記載の口腔鏡補助装置において、前記通気間隙5からの吸引により前記ミラー部32の表面に、この表面と平行な吸引流が生じるように構成したことを特徴とする口腔鏡補助装置に係るものである。
【0015】
また、請求項記載の口腔鏡補助装置において、前記被嵌合部3の開口縁に内方へ突出する鍔状部6を設けて前記ミラー部32の表面に、この表面と平行な吸引流が生じるように構成したことを特徴とする口腔鏡補助装置に係るものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明は上述のように構成したから、既存の口腔鏡に液体除去機能を確実に付与することができるなど、従来にない非常に実用的な口腔鏡補助装置となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施例1を示す斜視図である。
図2】実施例1の要部を示す分解斜視図である。
図3】実施例1の要部を示す平面図である。
図4】実施例1の要部を説明する断面図である。
図5】実施例2の要部を示す分解斜視図である。
図6】実施例2の要部を説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
好適と考える本発明の実施形態を、図面に基づいて本発明の作用を示して簡単に説明する。
【0019】
吸引機10を作動させると、ミラー部32に付いた水などの液体Lは、通気間隙5,被嵌合部3内及び吸引管2を通過して吸引除去され、ミラー部32による視界が確保される。
【0020】
従って、前述した従来例と同様、術者は術中に吸引具に持ち替える必要はなく、一人で歯科治療が良好に行えることになる。
【0021】
また、本発明は、被嵌合部3内には該被嵌合部3の内径を調整する調整体4が設けられており、この調整体4により種々のサイズのミラー部32に対応することができる。
【0022】
従って、既存の口腔鏡30に液体除去機能を確実に付与することができ、前述した従来例のようにサイズごとに専用のものを用意する必要が無く、コスト安となる。
【実施例1】
【0023】
本発明の具体的な実施例1について図面に基づいて説明する。
【0024】
本実施例は、握柄部31の先端部にミラー部32を設けた口腔鏡30に設けられる口腔鏡補助装置であって、ミラー部32が嵌合され口腔内に配される被嵌合部3を有し、この被嵌合部3には吸引機10と連設され握柄部31に添設される吸引管2が設けられ、この吸引管2の先端開口2aは被嵌合部3内に臨ましめられ、被嵌合部3内には該被嵌合部3の内径を調整する調整体4が設けられ、この調整体4の内壁4aとミラー部32の外壁32aとの間には被嵌合部3の底部3aと連通する通気間隙5が設けられたものである。
【0025】
尚、本実施例で使用される口腔鏡30は周知構造のものであり、ミラー部32が握柄部31の先端部に着脱自在となるタイプのものを採用している。
【0026】
以下、本実施例に係る構成各部について詳細な説明をする。
【0027】
被嵌合部3は、図1〜4に図示したように適宜な合成樹脂製の部材(ポリプロピレン若しくはシリコン)で形成された平面視円形の有底筒状体であり、底部3aの周縁に立ち上がる周壁の基端寄り下方位置には、後述する吸引管2を貫通する貫通孔3cが設けられている。
【0028】
従って、この被嵌合部3の貫通孔3cに吸引管2の先端部を貫通状態に設けることで、該吸引管2の先端開口2aが被嵌合部3内に臨ましめられる。
【0029】
符号3dは口腔鏡30の握柄部31の先端部位を位置決め係合する凹部である。
【0030】
吸引管2は、図1,2に図示したように適宜な金属製の部材(アルミニウム,ステンレス若しくはチタン)で形成された管状体であり、この吸引管2の先端部は被嵌合部3に連結され、基端部には吸引ホース11を介して吸引機10が連設されている。
【0031】
従って、吸引機10の吸引により吸引管2を介して被嵌合部3内の空気が吸引される。
【0032】
また、吸引管2の周面には握柄連結部1が設けられている。
【0033】
この握柄連結部1は、図1に図示したように適度な弾性を有する合成樹脂製の部材で形成されたものであり、吸引管2に被嵌する被嵌部1aと、この被嵌部1aの周面前後位置に設けられ口腔鏡30の握柄部31を嵌合状態に保持する凹状の保持部1bとで構成されている。
【0034】
この保持部1bは径が拡縮することで径の異なる握柄部31を保持することができる。
【0035】
また、本実施例は、被嵌合部3内には該被嵌合部3の内径を調整する調整体4が設けられている。
【0036】
この調整体4は、図1〜4に図示したように適宜な合成樹脂製の部材(ポリプロピレン若しくはシリコン)で形成された平面視円形の環状体であり、この調整体4の外壁4bが被嵌合部3の内壁3bに添設状態となるように該被嵌合部3に嵌合配設されるサイズに設けられている。
【0037】
また、調整体4の内面上下方向の中央位置には、周方向に長さを有する凹条部4cが設けられており、この凹条部4cはミラー部32の周縁部が凹凸係合するように設けられている。
【0038】
従って、この調整体4を介して、被嵌合部3にミラー部32を嵌合配設した際、ミラー部32は被嵌合部3の底部3aから所定高さ位置に配置され、この被嵌合部3の内面(底部3a及び内壁3b)とミラー部32の裏面部との間に吸引管2と連通状態となる空間が形成される。
【0039】
また、調整体4の外壁4bは、被嵌合部3の内壁3bと当接し、調整体4の内壁4aにして先端寄りには、長さ方向(上下方向)に深さを有する複数の凹溝5aが周方向に並設されて通気間隙5として構成されている。
【0040】
従って、吸引機10からの吸引により、ミラー部32の表面上の空気が、通液間隙部5,空間及び吸引管2を介して吸引される。
【0041】
また、調整体4の基端寄り上方位置には、口腔鏡30の握柄部31の先端部位を位置決め係合する凹部4dが設けられ、調整体4の基端寄り下方位置には、吸引管2を貫通する貫通孔4eが設けられている。
【0042】
従って、この調整体4の貫通孔4eに吸引管2の先端部を貫通状態に設けることで、該吸引管2の先端開口2aが被嵌合部3及び調整体4内に臨ましめられる。
【0043】
また、本実施例では、図3に図示したように調整体4として外径は被嵌合部3に嵌合するそのままの寸法で、内径の異なる(放射方向への厚みが異なる)複数の調整体4が設けられている。
【0044】
従って、この調整体4を介してサイズ(外径)の異なるミラー部32を被嵌合部3に嵌合させることができ、既存の口腔鏡30に液体除去機能を確実に付与することができる。
【0045】
尚、本実施例では、ミラー部32のサイズに対応するために該ミラー部32の各サイズに合った内径を有する複数の調整体4(環状体)を設けているが、例えば径の異なる環状体同士を径方向に重ねて調整する構造でも良く、その他にも、径が拡縮する構造を備えた一つの環状体で構成しても良い。
【0046】
本実施例は上述のように構成したから、吸引機10を作動させると、ミラー部32に付いた水などの液体Lは、通気間隙5,被嵌合部3内及び吸引管2を通過して吸引除去され、ミラー部32による視界が確保される。
【0047】
よって、本実施例によれば、術者は術中に吸引具に持ち替える必要はなく、一人で歯科治療が良好に行えることになる。
【0048】
また、本実施例は、被嵌合部3内には該被嵌合部3の内径を調整する調整体4が設けられており、この調整体4を取り換えるだけで、種々のサイズのミラー部32に対応することができる。
【0049】
従って、既存の口腔鏡30に液体除去機能を確実に付与することができ、前述した従来例のようにサイズごとに専用のものを用意する必要が無く、コスト安となる。
【0050】
また、本実施例は、ミラー部32は平面視円形であり、また、被嵌合部3も平面視円形の凹状部であるから、口腔内に入れるものとして違和感なく使用することができる。
【0051】
また、本実施例は、吸引管2の先端開口2aと、被嵌合部3の底部3aと、前記通気間隙5とは連通せしめられているから、前述した作用効果を確実に発揮することになる。
【0052】
また、本実施例は、調整体4は環状体であるから、簡易構造でありながら確実に前述した作用効果を発揮することになる。
【0053】
また、本実施例は、調整体4の外壁4bは被嵌合部3の内壁3bと当接し、調整体4の内壁4aにして先端寄りには、厚さ方向に深さを有する複数の凹溝5aが周方向に並設されて通気間隙5として構成されているから、ミラー部32の表面の液体Lを確実に吸引除去することができる。
【実施例2】
【0054】
本発明の具体的な実施例2について図面に基づいて説明する。
【0055】
本実施例は、図5,6に図示したように通気間隙5からの吸引によりミラー部32の表面に、この表面と平行な吸引流が生じるように構成した場合である。
【0056】
具体的には、被嵌合部3の開口縁に内方へ突出する鍔状部6が設けられており、この鍔状部6が通気間隙5の上方部位(被嵌合部3の上部開口部の前方部位)を覆うように設けることで、ミラー部32の表面の面方向に吸引流が生じ、液体L(水滴)が通気間隙5に吸い込まれることになる。
【0057】
尚、鍔状部6は、特に吸引機10の吸引力が弱い場合にその機能を発揮することになり、吸引機10の吸引力が強い場合には、実施例1のように鍔状部6が無くても吸引作用が発揮され、ミラー部32の表面の液体L(水滴)は吸引除去される。
【0058】
また、本実施例では、被嵌合部3の内壁3b対向位置に一対の凸部7aを設けるとともに、この凸部7aが凹凸係合する一対の凹部7bを調整体4の外壁4b対向位置に設けており、被嵌合部3に調整体4を嵌合させた際、凸部7aと凹部7bが凹凸係合することで調整体4の抜け止め作用が発揮されるように構成されている。尚、被嵌合部3に凹部7bを設け、調整体4に凸部7aを設けても良い。
【0059】
その余は実施例1と同様である。
【0060】
尚、本発明は、実施例1,2に限られるものではなく、各構成要件の具体的構成は適宜設計し得るものである。
【符号の説明】
【0061】
2 吸引管
2a 先端開口
3 被嵌合部
3a 底部
3b 内壁
4 調整体
4a 内壁
4b 外壁
5 通気間隙
5a 凹溝
6 鍔状部
10 吸引機
30 口腔鏡
31 握柄部
32 ミラー部
32a 外壁
図1
図2
図3
図4
図5
図6