(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記2回目のDSC曲線の全融解熱量に対する、前記1回目のDSC曲線における前記固有ピークの融解熱量と前記高温ピークの融解熱量との合計融解熱量の比が1.2以上である、請求項1又は2に記載のポリアミド系樹脂発泡粒子。
前記1回目のDSC曲線において、前記固有ピークの融解熱量と前記高温ピークの融解熱量との合計融解熱量に対する高温ピークの融解熱量の比率が、10%以上45%以下である、請求項1〜3のいずれか1つに記載のポリアミド系樹脂発泡粒子。
前記1回目のDSC曲線における前記固有ピークの融解熱量と前記高温ピークの融解熱量との合計融解熱量が40J/g以上である、請求項1〜4のいずれか1つに記載のポリアミド系樹脂発泡粒子。
前記発泡層の表面にポリアミド系樹脂から構成される被覆層を有し、前記発泡層が芯層であり、前記被覆層を構成しているポリアミド系樹脂の融点(Tms)及び前記芯層を構成しているポリアミド系樹脂の融点(Tmc)が、以下の式1を満足する、請求項1〜9のいずれか1つに記載のポリアミド系樹脂発泡粒子。
Tms<Tmc (式1)
前記芯層を構成しているポリアミド系樹脂の融解熱量よりも前記被覆層を構成しているポリアミド系樹脂の融解熱量が小さい、請求項10又は11に記載のポリアミド系樹脂発泡粒子。
前記ポリアミド系樹脂発泡粒子が、芯層と、共押出により該芯層に積層された被覆層とからなるポリアミド系樹脂粒子を発泡させたポリアミド系樹脂発泡粒子である、請求項13又は14に記載のポリアミド系樹脂発泡粒子。
【発明を実施するための形態】
【0021】
[ポリアミド系樹脂発泡粒子(本発明の第一の実施形態)]
本発明の第一の実施形態のポリアミド系樹脂発泡粒子は、ポリアミド系樹脂を発泡させてなる発泡層を有するポリアミド系樹脂発泡粒子であって、下記の条件1にて得られる1回目のDSC曲線と2回目のDSC曲線において、該1回目のDSC曲線が、該2回目のDSC曲線の融解ピークの頂点温度以下の低温側に頂点温度を有する融解ピーク(以下、「固有ピーク」ともいう。)と、該2回目のDSC曲線の融解ピークの頂点温度を超える高温側に頂点温度を有する融解ピーク(以下、「高温ピーク」ともいう)とを有し、かつ、該2回目のDSC曲線の融解ピークの頂点温度が180℃以上280℃以下であり、ポリアミド系樹脂発泡粒子の見掛け密度が10〜300kg/m
3であり、独立気泡率が85%以上である。
条件1
JIS K7121−1987の熱流束示差走査熱量測定法に基づき、ポリアミド系樹脂発泡粒子の発泡層を試験片とし、加熱速度10℃/分にて30℃から融解ピーク終了時よりも30℃高い温度まで加熱溶融させる際に測定されるDSC曲線を1回目のDSC曲線とし、次いでその温度にて10分間保った後、冷却速度10℃/分にて30℃まで冷却し、再度、加熱速度10℃/分にて融解ピーク終了時よりも30℃高い温度まで加熱溶融させる際に測定されるDSC曲線を2回目のDSC曲線とする。
【0022】
本発明の第一の実施形態のポリアミド系樹脂発泡粒子は、ポリアミド系樹脂を発泡させてなる発泡層を有する。本発明の第一の実施形態のポリアミド系樹脂発泡粒子は、発泡層のみからなるものでもよく、発泡層を芯層とし、発泡層(芯層)の表面にポリアミド系樹脂から構成される被覆層を有するものであってもよい。本発明の第一の実施形態のポリアミド系樹脂発泡粒子は、後述する本発明の第二の実施形態の製造方法により得ることが好ましい。
【0023】
本発明の第一の実施形態のポリアミド系樹脂発泡粒子の1回目のDSC曲線において、固有ピークの頂点の温度と高温ピークの頂点の温度との差は、好ましくは10℃以上、より好ましくは12℃以上、更に好ましくは15℃以上である。固有ピークの頂点の温度と高温ピークの頂点の温度との差が上記範囲であれば、耐熱性が向上する。
【0024】
本発明の第一の実施形態のポリアミド系樹脂発泡粒子は、熱流束示差走査熱量測定によって、加熱速度10℃/分にて、30℃から融解ピーク終了時よりも30℃高い温度まで加熱溶融させる際に測定される1回目のDSC曲線に、ポリアミド系樹脂に固有の固有ピークと、該固有ピークよりも高温側の高温ピークとが現れる。該固有ピークの高温側に現れるすべての高温ピークの融解熱量の合計は、好ましくは5J/g以上、より好ましくは9J/g以上、更に好ましくは12J/g以上、より更に好ましくは15J/g以上であり、好ましくは50J/g以下、より好ましくは30J/g以下、更に好ましくは20J/g以下である。融解熱量が上記範囲であれば、ポリアミド系樹脂発泡粒子は、型内成形する際に成形性に優れる。
【0025】
本発明の第一の実施形態のポリアミド系樹脂発泡粒子において、1回目のDSC曲線における合計融解熱量(固有ピークの融解熱量と高温ピークの融解熱量との合計融解熱量)は、40J/g以上であることが好ましく、45J/g以上であることがより好ましい。合計融解熱量は、1回目のDSC曲線における合計融解熱量が大きい発泡粒子ほど結晶化が進んでいることを意味する。結晶化が進んでいる発泡粒子は、耐熱性に優れたものとなる。よって、1回目のDSC曲線における合計融解熱量が上記範囲であれば、耐熱性に優れる発泡粒子となることから好ましい。一方、1回目のDSC曲線における合計融解熱量の上限は、概ね70J/gであり、さらに60J/gであることが好ましい。
【0026】
本発明の第一の実施形態のポリアミド系樹脂発泡粒子の1回目のDSC曲線において、上記固有ピークの融解熱量と上記高温ピークの融解熱量とを合計した全融解熱量(合計融解熱量)に対する高温ピークの融解熱量の比率は、5%以上であることが好ましく、7%以上であることがより好ましく、10%以上であることが更に好ましく、15%以上であることが更に好ましい。一方、上記比率は、45%以下であることが好ましく、40%以下であることがより好ましく、35%以下であることが更に好ましく、30%以下であることが更に好ましい。高温ピークの融解熱量の割合が上記範囲内であれば、発泡粒子を構成する樹脂の融点における発泡粒子の50%圧縮応力が高く、高温時の圧縮強度に優れる発泡粒子とすることができると共に、型内成形時における二次発泡性および融着性に優れた発泡粒子成形体が得られる。
【0027】
本発明の第一の実施形態のポリアミド系樹脂発泡粒子において、ポリアミド系樹脂発泡粒子の2回目のDSC曲線の全融解熱量に対する、ポリアミド系樹脂発泡粒子の1回目のDSC曲線における固有ピークの融解熱量と高温ピークの融解熱量との合計融解熱量の比〔(1回目のDSC曲線における固有ピークの融解熱量と高温ピークの融解熱量との合計融解熱量)/(2回目のDSC曲線の全融解熱量)〕は、好ましくは1.2以上、より好ましくは1.5以上である。本発明の第一の実施形態のポリアミド系樹脂発泡粒子は、1回目のDSC曲線におけるピーク面積が、2回目のDSC曲線におけるピーク面積に比べて、概ね高温ピークの分だけ広くなっている。
【0028】
ポリアミド系樹脂発泡粒子の高温ピークの吸熱エネルギーは、例えば
図1に示すDSC曲線において、固有ピークaよりも高温側に現れる高温ピークbの面積に相当し、次のようにして求めることができる。まず
図1に示すようにDSC曲線上の150℃の点Iと、DSC曲線上の融解終了温度を示す点IIとを結ぶ直線を引く。次に固有ピークa(2回目のDSC曲線の融解ピークの頂点温度以下の低温側に頂点温度を有する融解ピーク)と高温ピークb(2回目のDSC曲線の融解ピークの頂点温度を超える高温側に頂点温度を有する融解ピーク)との間の谷部にあたるDSC曲線上の点IIIを通りグラフ横軸の温度に対して垂直な直線と、点Iと点IIとを結んだ直線との交点を点IVとする。このようにして求めた点IVと点IIとを結ぶ直線、点IIIと点IVを結ぶ直線及び点IIIと点IIを結ぶDSC曲線によって囲まれる部分(斜線部分)の面積が高温ピークの吸熱エネルギーに相当する。上記高温ピークbは、上記のようにして1回目のDSC曲線を求めた後、次いで融解ピーク終了時よりも30℃高い温度にて10分間保った後、冷却速度10℃/分にて30℃まで冷却し、再度、加熱速度10℃/分で融解ピーク終了時よりも30℃高い温度まで加熱溶融させる際に測定される2回目のDSC曲線には現れないが、固有ピークは、1回目のDSC曲線にも2回目のDSC曲線にも現れる。なお、上記2回目のDSC曲線の固有ピークの頂点が示すグラフ横軸上の温度を融点とする。また、1回目のDSC曲線において、2回目のDSC曲線の融解ピークの頂点温度を超える高温側に頂点温度を有する融解ピーク(高温ピーク)が2つ以上現れる場合には、該高温ピークの融解熱量は、全ての高温ピークの合計熱量を意味する。
【0029】
上記2回目のDSC曲線の融解ピークの頂点温度は、180℃以上であり、好ましくは185℃以上、より好ましくは188℃以上、更に好ましくは190℃以上である。一方、発泡時の温度コントロールが容易であるという観点から、上記2回目のDSC曲線の融解ピークの頂点温度は、280℃以下であり、好ましくは260℃以下、より好ましくは230℃以下、更に好ましくは225℃以下である。
【0030】
本発明の第一の実施形態のポリアミド系樹脂発泡粒子の見掛け密度は、10kg/m
3以上であり、好ましくは30kg/m
3以上、より好ましくは50kg/m
3以上であり、そして、300kg/m
3以下であり、より好ましくは250kg/m
3以下であり、更に好ましくは150kg/m
3以下である。発泡粒子の見掛け密度が上記範囲であれば、発泡粒子や発泡粒子からなる成型体が収縮しにくく、良好な発泡粒子成形体が得られ易くなる。なお、ポリアミド系樹脂発泡粒子の見掛け密度は、以下の方法で測定される。
温度23℃の水の入ったメスシリンダーを用意し、該メスシリンダーに、相対湿度50%、23℃、1atmの条件にて2日間放置した約500cm
3の発泡粒子の質量W1を測定し、金網を使用して沈める。金網の体積を考慮して、水位上昇分より読みとられる発泡粒子の容積V1[cm
3]を測定し、発泡粒子の質量W1[g]を容積V1で割り算し(W1/V1)、単位を[kg/m
3]に換算することにより、発泡粒子の見掛け密度を求められる。
【0031】
本発明の第一の実施形態のポリアミド系樹脂発泡粒子の独立気泡率は、85%以上であり、好ましくは88%以上であり、より好ましくは90%以上である。発泡粒子の独立気泡率が上記範囲を満足すると、見掛け密度が低い発泡粒子が得られやすい。また、発泡粒子の成形性が良好であり、発泡粒子を型内成形して作製した発泡粒子成形体は、二次発泡性、融着性に優れる。なお、独立気泡率は、発泡粒子中の全気泡の容積に対する独立気泡の容積の割合であり、ASTM−D2856−70に基づき空気比較式比重計を用いて求めることができる。
【0032】
本発明の第一の実施形態のポリアミド系樹脂発泡粒子の平均気泡径は、好ましくは20〜200μmであり、より好ましくは50〜150μmである。なお、ポリアミド系樹脂発泡粒子の平均気泡径は、以下の方法で測定される。
まず、発泡粒子の中心部を通るように発泡粒子を約二分割し、切断面を走査型電子顕微鏡にて写真を撮影する。次いで、得られた断面写真において、発泡粒子切断面の中心付近から8方向に等間隔に直線を引き、その直線と交わる気泡の数を全てカウントする。該直線の合計長さを、カウントされた気泡数で除して得られた値を発泡粒子の気泡径とする。この操作を10個以上の発泡粒子について同様に行い、各発泡粒子の気泡径の算術平均値を発泡粒子の平均気泡径とする。
【0033】
本発明の第一の実施形態のポリアミド系樹脂発泡粒子は、高温時の圧縮強度に優れると共に型内成形性に優れる。具体的には、融点における50%圧縮応力が、好ましくは5kPa以上、より好ましくは8kPa以上、更に好ましくは10kPa以上である。融点における50%圧縮応力の測定方法は以下のようにして求められる。
融点における50%圧縮応力は、発泡粒子を熱分析装置(TMA;例えば、株式会社日立ハイテクサイエンス製「TMA7100」)を用いて圧縮モードで測定することで求めることができる。具体的には、発泡粒子1個を無作為に選び、発泡粒子の短径方向を圧縮プローブで1mNの荷重をかけて挟んだ後、原料樹脂の融点まで昇温する。その後、原料樹脂の融点で等温保持を行いながら30mN/minのスピードで荷重を増していき、プローブの押し込み深さ(変位量)をモニタする。発泡粒子の厚さが、圧縮前の発泡粒子の厚さの50%となった時点での応力を発泡粒子の融点における50%圧縮応力とする。
【0034】
本発明のポリアミド系樹脂発泡粒子が、発泡層を芯層とし、発泡層(芯層)の表面にポリアミド系樹脂から構成される被覆層を有するものである場合、被覆層を構成するポリアミド系樹脂の融点(Tms)は芯層を構成するポリアミド系樹脂の融点(Tmc)よりも低いことが好ましい。すなわち、ポリアミド系樹脂発泡粒子の被覆層を構成するポリアミド系樹脂の融点(Tms)及びポリアミド系樹脂発泡粒子の芯層を構成するポリアミド系樹脂の融点(Tmc)は、以下の式1を満足することが好ましい。また、被覆層を構成するポリアミド系樹脂の融点(Tms)は、芯層を構成するポリアミド系樹脂の融点(Tmc)より20℃低い温度よりも低いことがより好ましい。すなわち、ポリアミド系樹脂発泡粒子の被覆層を構成するポリアミド系樹脂の融点(Tms)及びポリアミド系樹脂発泡粒子の芯層を構成するポリアミド系樹脂の融点(Tmc)は、以下の式2を満足することがより好ましい。
Tms<Tmc (式1)
Tms<(Tmc−20℃) (式2)
芯層を構成するポリアミド系樹脂の融点(Tmc)及び被覆層を構成するポリアミド系樹脂の融点(Tms)が上記式1を満たすことで、成形圧力を高くすることなく、高い耐熱性を維持しつつ、融着性に優れるポリアミド系樹脂発泡粒子を提供することができる。更に上記式2を満たすことで、更に成形圧力を高くすることなく、高い耐熱性を維持しつつ、融着性に優れるポリアミド系樹脂発泡粒子が得られやすくなることから好ましい。
【0035】
本発明のポリアミド系樹脂発泡粒子における芯層と被覆層との質量比(芯層/被覆層)は、好ましくは80/20以上、より好ましくは83.4/16.6以上、更に好ましくは85/15以上、より更に好ましくは87.5/12.5以上である。そして、芯層と被覆層との質量比(芯層/被覆層)は、好ましくは99/1以下、より好ましくは97.6/2.4以下、更に好ましくは96.8/3.2以下、より更に好ましくは95/5以下、より更に好ましくは94/6以下である。
【0036】
本発明のポリアミド系樹脂発泡粒子において、被覆層を構成するポリアミド系樹脂が芯層を構成するポリアミド系樹脂とは異なるポリアミド系樹脂であり、かつ芯層を構成するポリアミド系樹脂の融解熱量よりも被覆層を構成するポリアミド系樹脂の融解熱量が小さいことが好ましい。芯層を構成するポリアミド系樹脂の融解熱量よりも被覆層を構成するポリアミド系樹脂の融解熱量が小さいと、高い耐熱性を維持しつつ、融着性に優れるポリアミド系樹脂発泡粒子を提供することができる。
【0037】
芯層を構成するポリアミド系樹脂の融解熱量及び被覆層を構成するポリアミド系樹脂の融解熱量は、ポリアミド系樹脂発泡粒子の芯層及び被覆層それぞれについて、以下の方法で測定される。
【0038】
ポリアミド系樹脂発泡粒子の芯層及び被覆層における全体の融解熱量について以下のようにして求められる。JIS K7122−1987の熱流束示差走査熱量測定法に基づき、上記調整により得られた各測定試料を加熱速度10℃/分にて30℃から融解ピーク終了時よりも30℃高い温度まで加熱溶融させる際に測定されるDSC曲線を1回目のDSC曲線とする。1回目のDSC曲線について、昇温時の発熱ピークと吸熱ピークの熱量を求め、吸熱ピークの熱量から発熱ピークの熱量を引くことにより総熱量を求める。吸熱ピークが2つ以上現れる場合には、吸熱ピークの融解熱量は、全ての吸熱ピークの合計熱量を意味する。なお、測定装置として、例えば、高感度型示差走査熱量計「EXSTAR DSC7020」(エスアイアイ・ナノテクノロジー社製)を使用することができる。
【0039】
[ポリミド系樹脂発泡粒子の製造方法(本発明の第二の実施形態)]
本発明の第二の実施形態のポリアミド系樹脂発泡粒子の製造方法は、融点180℃以上280℃以下のポリアミド系樹脂を発泡させてなる発泡層を有するポリアミド系樹脂発泡粒子の製造方法であって、
密閉容器内で、融点180℃以上280℃以下のポリアミド系樹脂を含むポリアミド系樹脂粒子を水中に分散させ、分散液を得る工程と、
該分散液中の該ポリアミド系樹脂粒子に発泡剤を含浸させる工程と、
該分散液を、該ポリアミド系樹脂の融点(Tm)よりも90℃低い温度(Tm−90℃)以上50℃低い温度(Tm−50℃)未満で1分以上60分以下の保持時間で保持する工程と、
発泡させる直前の分散液の温度(Te)を該ポリアミド系樹脂の融点(Tm)よりも90℃低い温度(Tm−90℃)以上、50℃低い温度(Tm−50℃)未満とし、発泡剤を含むポリアミド系樹脂粒子を水と共に密閉容器内から密閉容器内の圧力よりも低圧下に放出して発泡させる工程とを含むことを特徴とする。
本発明の第二の実施形態のポリアミド系樹脂発泡粒子(以下、単に「発泡粒子」ともいう。)の製造方法は、上記工程以外の工程を有していてもよいし、上記工程において、更に他の成分を添加してもよい。
【0040】
〔分散液を得る工程〕
分散液を得る工程は、密閉容器内で、融点180℃以上280℃以下のポリアミド系樹脂粒子を水中に分散させ、分散液を得る工程である。
ポリアミド系樹脂粒子を水中に分散させる方法としては、特に限定されるものではなく、公知の方法を用いることができる。例えば、撹拌機を使用して、水を撹拌しながら水にポリアミド系樹脂粒子を添加し、更に撹拌することによって、分散液を得ることができる。
また、必要に応じて分散液に、酸化アルミニウム、第三リン酸カルシウム、ピロリン酸マグネシウム、酸化亜鉛、カオリン、マイカ、タルク、スメクタイト等の無機物質等の分散剤、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルカンスルホン酸ナトリウム等のアニオン界面活性剤等の分散助剤を添加することが好ましい。ポリアミド系樹脂粒子と分散剤との質量比(樹脂粒子/分散剤)は、20〜2000とすることが好ましく、より好ましくは30〜1000である。また、分散剤と分散助剤との質量比(分散剤/分散助剤)は、1〜500とすることが好ましく、より好ましくは1〜100である。
【0041】
<ポリアミド系樹脂粒子>
本発明の第二の実施形態に係るポリアミド系樹脂粒子は、融点が180℃以上280℃以下のポリアミド系樹脂を含む。ポリアミド系樹脂粒子は、ポリアミド系樹脂を、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記ポリアミド系樹脂粒子には、本発明の目的、効果を阻害しない範囲において、他の熱可塑性樹脂を含有させてもよい。他の熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、酢酸ビニル樹脂、熱可塑性ポリエステル樹脂、アクリル酸エステル樹脂、メタクリル酸エステル樹脂等が挙げられる。
ポリアミド系樹脂粒子中のポリアミド系樹脂の含有量は、耐熱性、耐摩耗性、及び耐薬品性に優れたポリアミド系樹脂発泡粒子を得る観点から、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、更に好ましくは80質量%以上、より更に好ましくは90質量%以上であり、100質量%であることが特に好ましい。
ポリアミド系樹脂粒子中の他の熱可塑性樹脂の含有量は、耐熱性、耐摩耗性、及び耐薬品性に優れたポリアミド系樹脂発泡粒子を得る観点から、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下、更に好ましくは10質量%以下、より更に好ましくは5質量%以下であり、0質量%であることが特に好ましい。
【0042】
(ポリアミド系樹脂の融点(Tm))
本発明の第二の実施形態に係るポリアミド系樹脂の融点(Tm)は、耐熱性に優れたポリアミド系樹脂発泡粒子を得る観点から、180℃以上であり、好ましくは185℃以上、より好ましくは188℃以上、更に好ましくは190℃以上である。一方、発泡時の温度コントロールが容易であるという観点から、本発明の第二の実施形態に係るポリアミド系樹脂の融点(Tm)は、280℃以下であり、好ましくは260℃以下、より好ましくは230℃以下、更に好ましくは225℃以下である。
なお、ポリアミド系樹脂の融点とは、ポリアミド系樹脂を1種単独で用いた場合は、そのポリアミド系樹脂の融点を指す。ポリアミド系樹脂が、2種以上のポリアミド系樹脂の混合物からなる場合、又はポリアミド系樹脂と他の熱可塑性樹脂の混合物からなる場合には、予め押出機等で混練した混練物の融点を指す。
【0043】
本明細書において、融点(Tm)は、JIS K7121−1987に基づき、試験片の状態調節として「一定の熱処理を行った後、融解温度を測定する場合」(試験片の状態調節における加熱速度と冷却速度は、いずれも10℃/分とする。)を採用し、熱流束示差走査熱量測定法により、加熱速度10℃/分で得られるDSC曲線の融解ピークのピーク頂点温度として求められる値である。DSC曲線が複数の融解ピークを有する場合、最も大きな面積を有する融解ピークのピーク頂点温度を融解温度として採用する。なお、ポリアミド系樹脂及びポリアミド系樹脂粒子の試験片は、例えば、デシケーター内で窒素雰囲気下とした後、真空吸引して保存する等、高温、多湿条件下を避けて加水分解しないように保存したものを使用する。
なお、融点の測定については、後に詳述する。
【0044】
ポリアミド系樹脂粒子には、ポリアミド系樹脂の他に、通常使用される気泡調整剤、帯電防止剤、導電性付与剤、滑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤、金属不活性化剤、着色剤(顔料、染料等)、結晶核剤、及び充填材等の各種の添加剤を、必要に応じて適宜配合することができる。気泡調整剤としては、タルク、塩化ナトリウム、炭酸カルシウム、シリカ、酸化チタン、石膏、ゼオライト、ホウ砂、水酸化アルミニウム、ミョウバン、及びカーボン等の無機系気泡調整剤、リン酸系化合物、アミン系化合物、及びポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等の有機系気泡調整剤が挙げられる。これらの各種添加剤の添加量は、成形体の使用目的により異なるが、ポリアミド系樹脂粒子を構成するポリマー成分100質量部に対して25質量部以下であることが好ましい。より好ましくは15質量部以下、更に好ましくは10質量部以下、より更に好ましくは5質量部以下である。
【0045】
ポリアミド系樹脂粒子の1個の質量は、目的とするポリアミド系樹脂発泡粒子の大きさ、見掛け密度等に応じて適宜設定されるが、0.5〜15.0mgであることが好ましい。上記範囲内であれば、見掛け密度を高めることができる。かかる観点から、ポリアミド系樹脂粒子の質量の下限は1.0mgであることがより好ましく、1.5mgであることが更に好ましい。一方、その上限は10.0mgであることがより好ましく、7.0mgであることが更に好ましく、5.0mgであることが特に好ましい。
【0046】
本発明に用いられるポリアミド系樹脂粒子は、鞘芯構造の樹脂粒子を用いることができる。鞘芯構造を形成する芯層と被覆層で異なる性質のポリアミド系樹脂を用いることにより、様々な機能を有する発泡粒子を得ることが可能となる。
芯層と被覆層との質量比(芯層/被覆層)は、好ましくは4以上(すなわち80/20以上)、より好ましくは5以上(すなわち83.4/16.6以上)、更に好ましくは5.6以上(すなわち85/15以上)、更に好ましくは7以上(すなわち87.5/12.5以上)である。そして、上記質量比(芯層/被覆層)は、好ましくは99以下(すなわち99/1以下)、より好ましくは40以下(すなわち97.6/2.4以下)、更に好ましくは30以下(すなわち96.8/3.2以下)、更に好ましくは19以下(すなわち95/5以下)である。
【0047】
ポリアミド系樹脂粒子の製造方法は、特に限定されるものではなく、公知の方法により得ることができる。例えば、ポリアミド系樹脂と、必要に応じて気泡調整剤、及び着色剤等の添加剤を押出機に投入し、混練して溶融混練物とし、押出機先端に付設されたダイの小孔からストランド状に溶融混練物を押し出し、押出された溶融物をペレタイザーで所定の質量となるように切断するストランドカット法、前記溶融混練物を気相中に押出した直後に切断するホットカット法、前記溶融混練物を水中に押出した直後に切断するアンダーウォーターカット法(UWC法)等により、ポリアミド系樹脂粒子を得ることができる。
【0048】
<ポリアミド系樹脂>
本明細書中におけるポリアミド系樹脂としては、例えば、ポリアミド、ポリアミド共重合体が挙げられ、ポリアミド共重合体が好ましい。
ポリアミドとしては、例えば、ポリ(カプロラクタム)としても知られるポリ(6−アミノヘキサン酸)(ポリカプロアミド、ナイロン6)、ポリ(ラウロラクタム)(ナイロン12)、ポリ(ヘキサメチレンアジパミド)(ナイロン66)、ポリ(7−アミノヘプタン酸)(ナイロン7)、ポリ(8−アミノオクタン酸)(ナイロン8)、ポリ(9−アミノノナン酸)(ナイロン9)、ポリ(10−アミノデカン酸)(ナイロン10)、ポリ(11−アミノウンデカン酸)(ナイロン11)、ポリ(ヘキサメチレンセバカミド)(ナイロン610)、ポリ(デカメチレンセバカミド)(ナイロン1010)、ポリ(ヘキサメチレンアゼラミド)(ナイロン69)、ポリ(テトラメチレンアジパミド)(ナイロン46)、ポリ(テトラメチレンセバカミド)(ナイロン410)、ポリ(ペンタメチレンアジパミド)(ナイロン56)、及びポリ(ペンタメチレンセバカミド)(ナイロン510)等のホモポリマーが挙げられる。ポリアミド共重合体とは、2種以上の繰り返し単位を有し、それぞれの繰り返し単位の少なくとも一部にアミド結合を有するものを意味する。ポリアミド共重合体としては、例えば、ポリカプロアミド/ポリヘキサメチレンアジパミドコポリマー(ナイロン6/66)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアミノアジピン酸/ラウリルラクタム(ナイロン6/66/12)、及びカプロラクタム/ラウリルラクタム共重合体(ナイロン6/12)等が挙げられる。ポリアミド系樹脂は、これらのポリアミド及びポリアミド共重合体を1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。以上のポリアミド系樹脂の中でも、ナイロン6、ナイロン66、及びナイロン6/66から選択される1種または2種以上を組み合わせたポリアミド系樹脂であることが好ましく、ナイロン6/66であることがより好ましい。
【0049】
ポリアミド共重合体は、ある一定量同じ繰り返し単位のアミドが続いた後に異なる種類のアミドがある一定量続くブロック共重合体であっても、異なる種類のアミドがそれぞれランダムに繰り返すランダム共重合体であってもよいが、ランダム共重合体であることが好ましい。ポリアミド共重合体がランダム共重合体であれば、ポリアミド系樹脂発泡粒子を型内成形する際に比較的低い成形圧力で成形することが可能となる。
【0050】
本明細書中におけるポリアミド系樹脂は、曲げ弾性率が1000MPa以上であることが好ましく、1200MPa以上であることがより好ましく、1500MPa以上であることがさらに好ましい。なお、アミド系エラストマーは、概ね曲げ弾性率が600MPa以下である。ポリアミド系樹脂の曲げ弾性率が上記範囲であれば、曲げ弾性率が高いことに由来して発泡後に常温に晒されても収縮しにくく、高倍率の発泡粒子が得られ易くなるため好ましい。また、曲げ弾性率が高いことにより型内成形性に優れるため好ましい。なお、ポリアミド系樹脂の曲げ弾性率の上限は概ね3000MPa程度である。
【0051】
ポリアミド系樹脂の曲げ弾性率は、試験片を温度23℃、湿度50%の状態で24時間静置した後、JIS K7171:2016に準拠して測定することにより求めることができる。
【0052】
本明細書中におけるポリアミド系樹脂は、密度が1.05g/cm
3以上であることが好ましく、1.1g/cm
3以上であることが好ましい。なお、アミド系エラストマーの密度は概ね1.05g/cm
3未満である。密度の測定は、ISO 1183−3に記載の方法に基づいて求めることができる。
【0053】
本発明で用いられるポリアミド系樹脂は、分子鎖末端の官能基が封鎖されている末端封鎖ポリアミド系樹脂であることが好ましい。これにより、ポリアミド系樹脂発泡粒子の製造過程での加水分解をより確実に抑制することができ、型内成形に耐えうるポリアミド系樹脂発泡粒子が得られやすくなる。
更には、型内成形により得られるポリアミド系樹脂発泡粒子成形体(以下、単に「発泡粒子成形体」や、「成形体」ともいう。)の耐久性が向上する。
上記分子鎖末端を封鎖するための末端封鎖剤としては、例えばカルボジイミド化合物、オキサゾリン化合物、イソシアネート化合物、エポキシ化合物等を用いることができる。
これらの中でも、カルボジイミド化合物が好ましい。具体的には、ビス(ジプロピルフェニル)カルボジイミド(例えば、ラインケミー社製「Stabaxol 1−LF」)等の芳香族モノカルボジイミド、芳香族ポリカルボジイミド(例えば、ラインケミー社製「Stabaxol P」、「Stabaxol P100」、「Stabaxol P400」等)、ポリ(4,4’−ジシクロヘキシルメタンカルボジイミド)等の脂肪族ポリカルボジイミド(例えば日清紡ケミカル(株)製「カルボジライトLA−1」)等が挙げられる。これらの末端封鎖剤は単独で使用してもよく、あるいは2種以上を組み合わせて使用してもよい。
なお、ポリアミド系樹脂粒子が鞘芯構造を有する場合、芯層及び被覆層の両方の分子鎖末端の官能基が封鎖されていることが好ましい。
また、末端封鎖剤の配合量は、ポリアミド系樹脂100質量部に対して0.1〜5質量部が好ましく、0.5〜3質量部がより好ましい。
このように、本発明で用いられるポリアミド系樹脂は、カルボジイミド化合物、エポキシ化合物、及びイソシアナート化合物等から選ばれる1種以上の末端封鎖剤にて末端封鎖されたポリアミド系樹脂であることが好ましく、カルボジイミド化合物にて末端封鎖されたポリアミド系樹脂であることがより好ましい。
【0054】
〔発泡剤を含浸させる工程〕
発泡剤を含浸させる工程は、分散液中のポリアミド系樹脂粒子に発泡剤を含浸させるとともにポリアミド系樹脂粒子を吸水させる工程である。ポリアミド系樹脂粒子への発泡剤の含浸方法は特に限定されるものではないが、オートクレーブ等の加圧可能な密閉容器内でポリアミド系樹脂粒子を水中に分散させ、該ポリアミド系樹脂粒子に発泡剤を含浸させることが好ましい。なお、発泡剤をポリアミド系樹脂粒子に短時間で十分に含浸させる観点から、ポリアミド系樹脂粒子への発泡剤の含浸は、加圧に加えて、加熱することが好ましい。
発泡剤を含浸させる工程は、加圧する場合、密閉容器内の圧力が、大気圧から含浸時の圧力(以下、含浸圧力ともいう。)まで到達する工程を含む。
また、発泡剤を含浸させる工程は、ポリアミド系樹脂粒子を水中に分散せた分散液を、常温から含浸時の温度(以下、含浸温度ともいう。)まで加熱する工程を含む。
【0055】
加熱下で行われる含浸時の温度は、発泡剤をポリアミド系樹脂粒子に短時間で十分に含浸させる観点から、好ましくは50℃以上、更に好ましくは80℃以上であり、好ましくはポリアミド系樹脂粒子の融点(Tm(℃))以下、より好ましくは(Tm−20(℃))以下である。
【0056】
また、加圧下で行われる含浸時の圧力(以下、含浸圧力ともいう。)は、発泡剤をポリアミド系樹脂粒子に短時間で十分に含浸させる観点から、分散液が入った容器に発泡剤を添加することにより、密閉容器内の圧力が、1.5MPa(G)以上となるようにすることが好ましく、2.5MPa(G)以上となるようにすることがより好ましく、7.0MPa(G)以下となるようにすることが好ましく、5.0MPa(G)以下となるようにすることがより好ましい。
なお、「1.5MPa(G)」は、ゲージ圧で1.5MPaであることを意味する。
【0057】
ポリアミド系樹脂粒子を水中に分散させて分散液を得る工程及び発泡剤を含浸させる工程は、ポリアミド系樹脂粒子を吸水させる役割も有する。ポリアミド系樹脂粒子を十分に吸水させて可塑化させる観点から、分散液を得る工程及び発泡剤を含浸させる工程の合計時間が20分以上であることが好ましく、30分以上であることがより好ましい。一方、ポリアミド系樹脂発泡粒子の生産性の観点からは、上記時間が60分以下であることが好ましい。
また、発泡剤を含浸させる工程における昇温速度は、ポリアミド系樹脂粒子を十分に吸水させて可塑化させる観点から、10℃/分以下とすることが好ましく、7℃/分以下とすることがより好ましい。一方、ポリアミド系樹脂発泡粒子の生産性の観点から、昇温速度は、1℃/分以上とすることが好ましく、2℃/分以上とすることがより好ましい。
【0058】
(発泡剤)
発泡剤としては、物理発泡剤を用いることができる。物理発泡剤としては、有機系物理発泡剤として、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素、シクロペンタン、シクロヘキサン等の脂環式炭化水素、クロロフルオロメタン、トリフルオロメタン、1,1−ジフルオロエタン、1,1,1,2−テトラフルオロエタン、メチルクロライド、エチルクロライド、及びメチレンクロライド等のハロゲン化炭化水素、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、及びメチルエチルエーテル等のジアルキルエーテル等が挙げられる。また、無機系物理発泡剤として、二酸化炭素、窒素、ヘリウム、アルゴン、空気等が挙げられる。
物理発泡剤の中でも、環境への影響が少ないとともに可燃性がなく安全性に優れるという観点から、無機系物理発泡剤が好ましく、二酸化炭素又は窒素がより好ましく、二酸化炭素が更に好ましい。
【0059】
〔保持する工程〕
保持する工程は、分散液を、ポリアミド系樹脂の融点(Tm)よりも90℃低い温度(Tm−90℃)以上50℃低い温度(Tm−50℃)未満で1分以上60分以下の保持時間で保持する工程である。
保持する工程における分散液の保持温度は、ポリアミド系樹脂を十分に吸水させ可塑化させる観点、及び発泡剤をポリアミド系樹脂に均一に含浸させる観点から、ポリアミド系樹脂の融点(Tm)よりも90℃低い温度(Tm−90℃)以上、好ましくは80℃低い温度(Tm−80℃)以上、より好ましくは70℃低い温度(Tm−70℃)以上、更に好ましくは65℃低い温度(Tm−65℃)以上であり、50℃低い温度(Tm−50℃)未満、好ましくは55℃低い温度(Tm−55℃)以下、より好ましくは57℃低い温度(Tm−57℃)以下、更に好ましくは59℃低い温度(Tm−59℃)以下である。
【0060】
通常、ポリプロピレン系樹脂等の汎用樹脂を基材樹脂とする発泡粒子を製造する際、原材料の樹脂の融点付近で保持を行う。しかしながら、本願発明のポリアミド系樹脂発泡粒子の製造方法においては、ポリアミド系樹脂の融点(Tm)よりも90℃低い温度(Tm−90℃)以上、50℃低い温度(Tm−50℃)未満で保持して製造される。これは、ポリアミド系樹脂が吸湿性を有するため、分散液として用いる水によりポリアミド系樹脂粒子が可塑化され、融点が大幅に下がり、その結果、ポリアミド系樹脂粒子の融点よりも大幅に低い温度で、所望の見掛け密度及び独立気泡率を有する発泡粒子を製造することが可能になったためと考えられる。
【0061】
保持する工程における保持時間は、ポリアミド系樹脂を十分に吸水させ可塑化させる観点、及び発泡剤をポリアミド系樹脂に均一に含浸させ、高い独立気泡率を有するポリアミド系樹脂発泡粒子を得る観点から、1分以上、好ましくは5分以上、より好ましくは10分以上、更に好ましくは13分以上である。そして、ポリアミド系樹脂発泡粒子の生産性の観点、及びポリアミド系樹脂の加水分解を防ぐ観点から、保持する工程における保持時間は、60分以下、好ましくは40分以下、より好ましくは30分以下、更に好ましくは20分以下、より更に好ましくは18分以下である。上記時間で保持することにより、見掛け密度が低く、独立気泡率が高いポリアミド系樹脂発泡粒子を得ることが可能となる。保持する工程は、前記温度範囲内で多段階に設定することもでき、また、該温度範囲内で十分な時間を要してゆっくりと昇温させることも可能である。容易に製造が可能であるという観点からは、前記温度範囲内で一段階(保持温度が一定)に設定し、上記時間保持することが好ましい。
【0062】
保持する工程は、ポリアミド系樹脂を十分に吸水させ可塑化させる観点、及び発泡剤をポリアミド系樹脂に均一に含浸させる観点から、加圧下で行われることが好ましく、含浸圧力と同じ圧力を維持することが好ましい。分散液が入った容器内の圧力は、1.5MPa(G)以上となるようにすることが好ましく、2.5MPa(G)以上となるようにすることがより好ましい。また、分散液が入った容器内の圧力は、7.0MPa(G)以下となるようにすることが好ましく、5.0MPa(G)以下となるようにすることがより好ましい。
【0063】
〔発泡させる工程〕
発泡させる工程は、発泡剤を含浸したポリアミド系樹脂粒子を発泡させる工程である。
ポリアミド系樹脂粒子の発泡方法は特に限定されるものではないが、前記保持する工程に続いて、発泡剤が含浸したポリアミド系樹脂粒子を水とともに、保持する工程における圧力より低い圧力雰囲気下(通常は大気圧下)に放出して発泡させる、ダイレクト発泡法が好ましい。
【0064】
発泡させる直前の分散液の温度Te(以下、発泡温度ともいう。)は、見掛け密度が低く、独立気泡率が高いポリアミド系樹脂発泡粒子を得る観点から、ポリアミド系樹脂の融点(Tm)よりも90℃低い温度(Tm−90℃)以上、好ましくは80℃低い温度(Tm−80℃)以上、より好ましくは70℃低い温度(Tm−70℃)以上、更に好ましくは65℃低い温度(Tm−65℃)以上である。また、発泡温度は、ポリアミド系樹脂の融点(Tm)よりも50℃低い温度(Tm−50℃)未満、好ましくは55℃低い温度(Tm−55℃)以下、より好ましくは57℃低い温度(Tm−57℃)以下、更に好ましくは59℃低い温度(Tm−59℃)以下である。
【0065】
発泡させる工程における放出直前の圧力(発泡圧力)は、好ましくは0.5MPa(G)以上、より好ましくは1.5MPa(G)以上、更に好ましくは2.5MPa(G)以上である。また、発泡圧力は、好ましくは10.0MPa(G)以下、より好ましくは7.0MPa(G)以下、更に好ましくは5MPa(G)以下である。
【0066】
[ポリアミド系樹脂発泡粒子(本発明の第三の実施形態)]
本発明の第三の実施形態のポリアミド系樹脂発泡粒子は、ポリアミド系樹脂を発泡させてなる発泡層を有するポリアミド系樹脂発泡粒子であって、
前記発泡層の表面にポリアミド系樹脂から構成される被覆層を有し、前記発泡層が芯層であり、前記被覆層を構成しているポリアミド系樹脂の融点(Tms)及び前記芯層を構成しているポリアミド系樹脂の融点(Tmc)が、以下の式1を満足する。
Tms<Tmc (式1)
【0067】
また、本発明の第一の実施形態に関して説明したとおり、2回目のDSC曲線の融解ピークの頂点温度は、ポリアミド系樹脂の融点を表す。本発明の第三の実施形態のポリアミド系樹脂発泡粒子において、芯層を構成するポリアミド系樹脂の融点は、耐熱性に優れたポリアミド系樹脂発泡粒子を得る観点から、好ましくは180℃以上、より好ましくは185℃以上、更に好ましくは188℃以上、より更に好ましくは190℃以上、より更に好ましくは200℃以上、より更に好ましくは210℃以上である。一方、発泡時の温度コントロールが容易であるという観点から、芯層を構成するポリアミド系樹脂の融点は、好ましくは300℃以下、より好ましくは290℃以下、更に好ましくは280℃以下、より更に好ましくは260℃以下、より更に好ましくは230℃以下、より更に好ましくは225℃以下である。すなわち、本発明の第三の実施形態のポリアミド系樹脂発泡粒子は、ポリアミド系樹脂を発泡させてなる発泡層を有するポリアミド系樹脂発泡粒子であって、前記発泡層の表面にポリアミド系樹脂から構成される被覆層を有し、前記発泡層が芯層であり、前記被覆層を構成しているポリアミド系樹脂の融点(Tms)及び前記芯層を構成しているポリアミド系樹脂の融点(Tmc)が、前記式1を満足し、前記芯層を構成するポリアミド系樹脂の融点が前記範囲であることが好ましい。
【0068】
本発明の第三の実施形態のポリアミド系樹脂発泡粒子は、ポリアミド系樹脂を発泡させてなる発泡層(芯層)と、該芯層を被覆する被覆層とからなる、いわゆるコアシェル型のポリアミド系樹脂発泡粒子である。
発泡層の表面を被覆する方法として、発泡層の表面に粒子状の被覆材を展着する方法や発泡層の表面に溶液状の被覆材を塗布する方法なども挙げられるが、本発明の第三の実施形態のポリアミド系樹脂発泡粒子は、芯層と、共押出により該芯層に積層された被覆層とからなるポリアミド系樹脂粒子であることが好ましく、該発泡層を発泡させたポリアミド系樹脂発泡粒子であることがより好ましい。
芯層と被覆層とからなるポリアミド系樹脂粒子を構成する芯層は、ポリアミド系樹脂から構成され、被覆層は、ポリアミド系樹脂から構成され、該芯層を被覆する。
前記共押出により積層された多層のポリアミド系樹脂発泡粒子である場合には、発泡層(芯層)から被覆層が脱離しにくく、被覆層が発泡設備へ付着することを抑制することができる。
【0069】
本発明の第三の実施形態のポリアミド系樹脂発泡粒子における芯層と被覆層との質量比(芯層/被覆層)は、好ましくは80/20以上、より好ましくは83.4/16.6以上、更に好ましくは85/15以上、より更に好ましくは87.5/12.5以上である。そして、芯層と被覆層との質量比(芯層/被覆層)は、好ましくは99/1以下、より好ましくは97.6/2.4以下、更に好ましくは96.8/3.2以下、より更に好ましくは95/5以下、より更に好ましくは94/6以下である。
【0070】
芯層及び被覆層を構成するポリアミド系樹脂としては、本発明の第二の実施形態に関して説明したものを用いることができる。具体的には、ポリアミド、ポリアミド共重合体が挙げられる。
ポリアミドとしては、例えば、ポリ(カプロラクタム)としても知られるポリ(6−アミノヘキサン酸)(ポリカプロアミド、ナイロン6)、ポリ(ラウロラクタム)(ナイロン12)、ポリ(ヘキサメチレンアジパミド)(ナイロン66)、ポリ(7−アミノヘプタン酸)(ナイロン7)、ポリ(8−アミノオクタン酸)(ナイロン8)、ポリ(9−アミノノナン酸)(ナイロン9)、ポリ(10−アミノデカン酸)(ナイロン10)、ポリ(11−アミノウンデカン酸)(ナイロン11)、ポリ(ヘキサメチレンセバカミド)(ナイロン610)、ポリ(デカメチレンセバカミド)(ナイロン1010)、ポリ(ヘキサメチレンアゼラミド)(ナイロン69)、ポリ(テトラメチレンアジパミド)(ナイロン46)、ポリ(テトラメチレンセバカミド)(ナイロン410)、ポリ(ペンタメチレンアジパミド)(ナイロン56)、及びポリ(ペンタメチレンセバカミド)(ナイロン510)等のホモポリマーが挙げられる。ポリアミド共重合体とは、2種以上の繰り返し単位を有し、それぞれの繰り返し単位の少なくとも一部にアミド結合を有するものを意味する。ポリアミド共重合体としては、例えば、ポリカプロアミド/ポリヘキサメチレンアジパミドコポリマー(ナイロン6/66)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアミノアジピン酸/ラウリルラクタム(ナイロン6/66/12)、及びカプロラクタム/ラウリルラクタム共重合体(ナイロン6/12)等が挙げられる。ポリアミド系樹脂は、これらのポリアミド及びポリアミド共重合体を1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。以上のポリアミド系樹脂の中でも、ナイロン6、ナイロン66、及びナイロン6/66から選択される1種または2種以上を組み合わせたポリアミド系樹脂であることが好ましく、ナイロン6/66であることがより好ましい。
【0071】
前記ポリアミド系樹脂は、曲げ弾性率が1000MPa以上であることが好ましく、1200MPa以上であることがより好ましく、1500MPa以上であることがさらに好ましい。なお、アミド系エラストマーは、概ね曲げ弾性率が600MPa以下である。ポリアミド系樹脂の曲げ弾性率が上記範囲であれば、曲げ弾性率が高いことに由来して発泡後に常温に晒されても収縮しにくく、高倍率の発泡粒子が得られ易くなるため好ましい。なお、ポリアミド系樹脂の曲げ弾性率の上限は概ね3000MPa程度である。
【0072】
ポリアミド系樹脂の曲げ弾性率は、試験片を温度23℃、湿度50%の状態で24時間以上静置した後、JIS K7171:2016に準拠して測定することにより求めることができる。
【0073】
前記ポリアミド系樹脂の密度は、1.05g/cm
3以上であることが好ましく、1.1g/cm
3以上であることが好ましい。なお、アミド系エラストマーの密度は概ね1.05g/cm
3未満である。
【0074】
ただし、芯層を構成するポリアミド系樹脂と被覆層を構成するポリアミド系樹脂とは、異なる融点を有する観点から、異なる種類であることが好ましい。芯層を構成するポリアミド系樹脂は、融点が高く耐熱性に優れるという観点からポリアミドであることがより好ましい。一方、被覆層を構成するポリアミド系樹脂は、比較的融点が低く、発泡粒子相互の融着性を向上させることができるという観点からポリアミド共重合体であることがより好ましい。ポリアミド系樹脂の中でも、ポリアミドは融点が高く耐熱性に優れている。しかし、ポリアミドからなる発泡粒子成形体を得ようとすると発泡粒子相互の融着性に劣るおそれがある。そこで、芯層を構成するポリアミド系樹脂をポリアミドとし、被覆層を構成するポリアミド系樹脂をポリアミド共重合体としたポリアミド系樹脂発泡粒子することにより、得られるポリアミド系樹脂発泡粒子成形体は、高い耐熱性と優れた融着性を効果的に両立することが可能となる。
【0075】
また、被覆層が発泡粒子の表面に位置することから、被覆層を構成するポリアミド系樹脂は、分子鎖末端の官能基が封鎖された末端封鎖ポリアミド系樹脂であることが好ましい。被覆層を構成するポリアミド系樹脂が末端封鎖ポリアミド系樹脂であることにより、ポリアミド系樹脂発泡粒子の製造過程での加水分解をより確実に抑制することができ、型内成形に耐えられるポリアミド系樹脂発泡粒子が得られやすくなる。上記分子鎖末端を封鎖するための末端封鎖剤については、本発明の第二の実施形態に関して説明したものを用いることができ、好ましい範囲も同様である。
例えばカルボジイミド化合物、オキサゾリン化合物、イソシアネート化合物、エポキシ化合物等を用いることができ、カルボジイミド化合物が好ましい。具体的には、ビス(ジプロピルフェニル)カルボジイミド等の芳香族モノカルボジイミド、芳香族ポリカルボジイミド、ポリ(4,4’−ジシクロヘキシルメタンカルボジイミド)等の脂肪族ポリカルボジイミド等が挙げられる。これらの末端封鎖剤は単独で使用してもよく、あるいは2種以上を組み合わせて使用してもよい。
なお、本発明の第三の実施形態において、ポリアミド系樹脂発泡粒子の製造過程での加水分解をさらに確実に抑制する観点から、被覆層を構成するポリアミド系樹脂だけでなく、芯層を構成するポリアミド系樹脂の分子鎖末端の官能基も封鎖されていることが好ましい。
また、末端封鎖剤の配合量は、芯層又は被覆層を構成するポリアミド系樹脂100質量部に対して、それぞれ0.1〜5質量部が好ましく、0.5〜3質量部がより好ましい。
【0076】
本発明の第三の実施形態において、発泡粒子には、レゾルシノール、フェノール、エチルフェノール又はベンジルアルコール等の結晶化阻害性化合物を含まないことが好ましい。
【0077】
本発明の第三の実施形態のポリアミド系樹脂発泡粒子において、被覆層を構成するポリアミド系樹脂の融点(Tms)は芯層を構成するポリアミド系樹脂の融点(Tmc)よりも低い。すなわち、ポリアミド系樹脂発泡粒子の被覆層を構成するポリアミド系樹脂の融点(Tms)及びポリアミド系樹脂発泡粒子の芯層を構成するポリアミド系樹脂の融点(Tmc)は、以下の式1を満足する。また、被覆層を構成するポリアミド系樹脂の融点(Tms)は、芯層を構成するポリアミド系樹脂の融点(Tmc)より20℃低い温度よりも低いことが好ましい。すなわち、ポリアミド系樹脂発泡粒子の被覆層を構成するポリアミド系樹脂の融点(Tms)及びポリアミド系樹脂発泡粒子の芯層を構成するポリアミド系樹脂の融点(Tmc)は、以下の式2を満足することが好ましい。
Tms<Tmc (式1)
Tms<(Tmc−20℃) (式2)
芯層を構成するポリアミド系樹脂の融点(Tmc)及び被覆層を構成するポリアミド系樹脂の融点(Tms)が上記式1を満たすことで、成形圧力を高くすることなく、高い耐熱性を維持しつつ、融着性に優れるポリアミド系樹脂発泡粒子を提供することができる。更に上記式2を満たすことで、更に成形圧力を高くすることなく、高い耐熱性を維持しつつ、融着性に優れるポリアミド系樹脂発泡粒子が得られやすくなることから好ましい。
【0078】
本発明の第三の実施形態において、被覆層を構成するポリアミド系樹脂の融点(Tms)及び芯層を構成するポリアミド系樹脂の融点(Tmc)は、以下に示す方法で測定試料を調製し、芯層及び被覆層の測定試料について前記条件1の下で熱流束示差走査熱量測定法に基づく融解熱量測定を行うことによって得られる。条件1については、本発明の第一の実施形態に関して説明したとおりであり、具体的には以下のとおりである。
条件1
JIS K7121−1987の熱流束示差走査熱量測定法に基づき、加熱速度10℃/分にて30℃から融解ピーク終了時よりも30℃高い温度まで加熱溶融させる際に測定されるDSC曲線を1回目のDSC曲線とし、次いでその温度にて10分間保った後、冷却速度10℃/分にて30℃まで冷却し、再度、加熱速度10℃/分にて融解ピーク終了時よりも30℃高い温度まで加熱溶融させる際に測定されるDSC曲線を2回目のDSC曲線とする。
【0079】
〔測定試料の調製〕
(発泡粒子被覆層の融解熱量測定試料)
発泡粒子の表面を含む表層部分を切削処理して表層部分を集めて試験片とする。なお、切削処理にあたっては1個の発泡粒子の表面全面から、切削処理前の発泡粒子の粒子質量の1/10〜1/6の質量の測定試料を採取する。
【0080】
(発泡粒子芯層の融解熱量測定試料)
発泡粒子の表面全面を切削除去し、切削処理前の発泡粒子の粒子質量の1/5〜1/3の質量となる発泡粒子残部を測定試料として採取する。
【0081】
本発明の第三の実施形態のポリアミド系樹脂発泡粒子において、被覆層を構成するポリアミド系樹脂が芯層を構成するポリアミド系樹脂とは異なるポリアミド系樹脂であり、かつ芯層を構成するポリアミド系樹脂の結晶化度よりも被覆層を構成するポリアミド系樹脂の結晶化度が低いことが好ましい。芯層を構成するポリアミド系樹脂の結晶化度よりも被覆層を構成するポリアミド系樹脂の結晶化度が低いと、被覆層の含水性が高まると考えられる。そのため、発泡粒子製造時に水を使用する場合、水により可塑化されやすく、比較的低温で発泡が可能となる。したがって、芯層を構成するポリアミド系樹脂の結晶化度よりも被覆層を構成するポリアミド系樹脂の結晶化度が低いことで、高い耐熱性を維持しつつ、融着性に優れるポリアミド系樹脂発泡粒子を提供することができる。芯層を構成するポリアミド系樹脂の結晶化度及び被覆層を構成するポリアミド系樹脂の結晶化度は、ポリアミド系樹脂発泡粒子の芯層及び被覆層それぞれについて、融解熱量測定試料と同様にして測定試料を用意し、以下の方法で測定される。
【0082】
JIS K7122−1987の熱流束示差走査熱量測定法に基づき、加熱速度10℃/分にて30℃から融解ピーク終了時よりも30℃高い温度まで加熱溶融させる際に測定されるDSC曲線を1回目のDSC曲線とする。1回目のDSC曲線について、昇温時の発熱ピークと吸熱ピークの熱量を求め、吸熱ピークの熱量から発熱ピークの熱量を引くことにより総熱量を求める。総熱量をナイロン6基材の樹脂の場合には完全結晶体熱量230J/gで、ナイロン66基材の樹脂の場合には完全結晶体熱量226J/gで割って100を掛ける。これにより、ポリアミド系樹脂発泡粒子の芯層を構成するポリアミド系樹脂の結晶化度及び被覆層を構成するポリアミド系樹脂の結晶化度を求めることができる。
【0083】
本発明の第三の実施形態のポリアミド系樹脂発泡粒子において、被覆層を構成するポリアミド系樹脂が芯層を構成するポリアミド系樹脂とは異なるポリアミド系樹脂であり、かつ芯層を構成するポリアミド系樹脂の融解熱量よりも被覆層を構成するポリアミド系樹脂の融解熱量が小さいことが好ましい。芯層を構成するポリアミド系樹脂の融解熱量よりも被覆層を構成するポリアミド系樹脂の融解熱量が小さいと、高い耐熱性を維持しつつ、融着性に優れるポリアミド系樹脂発泡粒子を提供することができる。
【0084】
芯層を構成するポリアミド系樹脂の融解熱量及び被覆層を構成するポリアミド系樹脂の融解熱量は、ポリアミド系樹脂発泡粒子の芯層及び被覆層それぞれについて、本発明の第一の実施形態に関して説明した測定方法を用いることができ、具体的には以下の方法で測定される。
【0085】
ポリアミド系樹脂発泡粒子の芯層及び被覆層における全体の融解熱量について以下のようにして求められる。JIS K7122−1987の熱流束示差走査熱量測定法に基づき、上記調整により得られた各測定試料を加熱速度10℃/分にて30℃から融解ピーク終了時よりも30℃高い温度まで加熱溶融させる際に測定されるDSC曲線を1回目のDSC曲線とする。1回目のDSC曲線について、昇温時の発熱ピークと吸熱ピークの熱量を求め、吸熱ピークの熱量から発熱ピークの熱量を引くことにより総熱量を求める。吸熱ピークが2つ以上現れる場合には、吸熱ピークの融解熱量は、全ての吸熱ピークの合計熱量を意味する。なお、測定装置として、例えば、高感度型示差走査熱量計「EXSTAR DSC7020」(エスアイアイ・ナノテクノロジー社製)を使用することができる。
【0086】
本発明の第三の実施形態のポリアミド系樹脂発泡粒子の見掛け密度は、好ましくは50kg/m
3以上、より好ましくは60kg/m
3以上、更に好ましくは70kg/m
3以上であり、そして、好ましくは250kg/m
3以下、より好ましくは200kg/m
3以下、更に好ましくは150kg/m
3以下である。発泡粒子の見掛け密度が上記範囲であれば、発泡粒子や発泡粒子からなる成型体が収縮しにくく、良好な発泡粒子成形体が得られ易くなる。なお、ポリアミド系樹脂発泡粒子の見掛け密度は、後述する実施例に記載の方法で測定される。
【0087】
本発明の第三の実施形態のポリアミド系樹脂発泡粒子の独立気泡率は、好ましくは85%以上であり、より好ましくは88%以上であり、更に好ましくは90%以上である。発泡粒子の独立気泡率が上記範囲を満足すると、見掛け密度が低い発泡粒子が得られやすい。また、発泡粒子の成形性が良好であり、発泡粒子を型内成形して作製した発泡粒子成形体は二次発泡性、融着性に優れる。独立気泡率の測定方法は、本発明の第一の実施形態に関して説明したとおりである。
【0088】
本発明の第三の実施形態のポリアミド系樹脂発泡粒子は、耐熱性に優れる。具体的には、熱分析装置にて成形体を圧縮しながら昇温したときの圧縮量−温度曲線の外挿温度が、好ましくは160℃以上、より好ましくは180℃以上、更に好ましくは190℃以上である。なお、本発明の第三の実施形態に関する耐熱性の評価方法は、例えば5mm角の成形体を成形体から切り出し、熱分析装置(TMA;例えば、株式会社日立ハイテクサイエンス製「TMA7100」)を用いて、圧縮しながら昇温させたときのプローブの押し込み深さ(変位量)をモニタし、サンプルの厚みが試験前のサンプルの厚みに対して5%圧縮された際の温度から求められる。
【0089】
本発明の第三の実施形態のポリアミド系樹脂発泡粒子は、融着性に優れる発泡粒子成形体とすることができる。具体的には、発泡粒子成形体の融着率が、好ましくは75%以上、より好ましくは80%以上、更に好ましくは85%以上である。発泡粒子成形体の融着率は、発泡粒子成形体を破断した際の破断面に露出した発泡粒子のうち、材料破壊した発泡粒子の数の割合に基づいて求める。具体的には、まず、発泡粒子成形体から試験片(縦100mm×横100mm×厚み:成形体の厚み)を切り出し、カッターナイフなどで各試験片の厚み方向に約5mmの切り込みを入れた後、切り込み部から試験片を破断させる。次に、発泡粒子成形体の破断面に存在する発泡粒子の個数(n)と、材料破壊した発泡粒子の個数(b)を測定し、(b)と(n)との比(b/n)を百分率で表して融着率(%)とする。
【0090】
本発明の第二の実施形態で説明したダイレクト発泡法によれば、耐熱性に優れたポリアミド系樹脂発泡粒子を得ることができる。そのため、本発明の第三の実施形態のポリアミド系樹脂発泡粒子は、本発明の第二の実施形態の製造方法により得ることが好ましい。
【0091】
[ポリアミド系樹脂発泡粒子(本発明の第四の実施形態)]
本発明の第四の実施形態のポリアミド系樹脂発泡粒子は、ポリアミド系樹脂を発泡させてなる発泡層を有するポリアミド系樹脂発泡粒子であって、該ポリアミド系樹脂発泡粒子の見掛け密度が10〜150kg/m
3であり、該ポリアミド系樹脂発泡粒子の平均気泡径が20〜200μmである。なかでも、ポリアミド共重合体を基材樹脂としてなるポリアミド系樹脂発泡粒子であって、該ポリアミド系樹脂発泡粒子の見掛け密度が10〜150kg/m
3であり、該ポリアミド系樹脂発泡粒子の平均気泡径が20〜200μmであることが好ましい。
更に、本発明の第四の実施形態のポリアミド系樹脂発泡粒子は、ポリアミド系樹脂の融点が185℃以上280℃以下であることが好ましい。
すなわち、本発明の第四の実施形態の好適なポリアミド系樹脂発泡粒子は、ポリアミド系樹脂を発泡させてなる発泡層を有するポリアミド系樹脂発泡粒子であって、該ポリアミド系樹脂発泡粒子の見掛け密度が10〜150kg/m
3であり、該ポリアミド系樹脂発泡粒子の平均気泡径が20〜200μmであり、該ポリアミド系樹脂の融点が185℃以上280℃以下である。
【0092】
本発明の第四の実施形態のポリアミド系樹脂発泡粒子は、ポリアミド系樹脂を発泡させてなる発泡層を有するポリアミド系樹脂発泡粒子であり、ポリアミド共重合体を基材樹脂とするポリアミド系樹脂発泡粒子であることが好ましい。
ポリアミド系樹脂としては、例えば、ポリアミド、ポリアミド共重合体が挙げられる。
ポリアミドとしては、例えば、ポリ(カプロラクタム)としても知られるポリ(6−アミノヘキサン酸)(ポリカプロアミド、ナイロン6)、ポリ(ラウロラクタム)(ナイロン12)、ポリ(ヘキサメチレンアジパミド)(ナイロン66)、ポリ(7−アミノヘプタン酸)(ナイロン7)、ポリ(8−アミノオクタン酸)(ナイロン8)、ポリ(9−アミノノナン酸)(ナイロン9)、ポリ(10−アミノデカン酸)(ナイロン10)、ポリ(11−アミノウンデカン酸)(ナイロン11)、ポリ(ヘキサメチレンセバカミド)(ナイロン610)、ポリ(デカメチレンセバカミド)(ナイロン1010)、ポリ(ヘキサメチレンアゼラミド)(ナイロン69)、ポリ(テトラメチレンアジパミド)(ナイロン46)、ポリ(テトラメチレンセバカミド)(ナイロン410)、ポリ(ペンタメチレンアジパミド)(ナイロン56)、及びポリ(ペンタメチレンセバカミド)(ナイロン510)等のホモポリマーが挙げられる。ポリアミド共重合体としては、例えば、ポリカプロアミド/ポリヘキサメチレンアジパミドコポリマー(ナイロン6/66)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアミノアジピン酸/ラウリルラクタム(ナイロン6/66/12)、及びカプロラクタム/ラウリルラクタム共重合体(ナイロン6/12)等が挙げられる。これらのポリアミド共重合体を1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。以上のポリアミド共重合体の中でも、ナイロン6/66を含むことが好ましく、ナイロン6/66を単独で用いることがより好ましい。
ポリアミド系樹脂は、これらのポリアミド及びポリアミド共重合体を1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
なお、ポリアミド系樹脂は、高い融点に由来して耐熱性に優れている。しかし、前記ポリアミド共重合体は、ポリアミドと比べて比較的融点が低く、製造時の温度も比較的低温とすることができるため、加水分解されにくい温度で製造することができ、型内成形性に優れている。
よって、本発明の第四の実施形態のポリアミド系樹脂は、ポリアミド共重合体を用いる場合において、型内成形性に優れることから分子鎖末端の官能基が封鎖されている末端封鎖ポリアミド系樹脂でなくても構わない。
【0093】
ポリアミド共重合体は、ある一定量同じ繰り返し単位のアミドが続いた後に異なる種類のアミドがある一定量続くブロック共重合体であっても、異なる種類のアミドがそれぞれランダムに繰り返すランダム共重合体であってもよいが、ランダム共重合体であることが好ましい。ポリアミド共重合体がランダム共重合体である場合、ブロック共重合体よりも融点が低い傾向にあるため、特に型内成形性に優れるポリアミド系樹脂発泡粒子とすることができる。
【0094】
前記ポリアミド系樹脂は、曲げ弾性率が1000MPa以上であることが好ましく、1200MPa以上であることがより好ましく、1500MPa以上であることがさらに好ましい。なお、アミド系エラストマーは、概ね曲げ弾性率が600MPa以下である。ポリアミド系樹脂の曲げ弾性率が上記範囲であれば、曲げ弾性率が高いことに由来して発泡後に常温に晒されても収縮しにくく、高倍率の発泡粒子が得られ易くなるため好ましい。なお、ポリアミド系樹脂の曲げ弾性率の上限は概ね3000MPa程度である。
【0095】
ポリアミド系樹脂の曲げ弾性率は、試験片を温度23℃、湿度50%の状態で24時間以上静置した後、JIS K7171:2016に準拠して測定することにより求めることができる。
【0096】
前記ポリアミド系樹脂の密度は、1.05g/cm
3以上であることが好ましく、1.1g/cm
3以上であることが好ましい。なお、アミド系エラストマーの密度は概ね1.05g/cm
3未満である。密度の測定は、ISO 1183−3に記載の方法に基づいて求めることができる。
【0097】
本発明の第四の実施形態のポリアミド系樹脂発泡粒子は見掛け密度が低いと共に平均気泡径が小さい。見掛け密度が低く、かつ平均気泡径が小さな発泡粒子であると成形体を得るために型内成形する際の二次発泡性に優れる。また、水冷時間を短くすることができ、その結果、全体の成形時間を短くすることができる。上記観点から、本発明の第四の実施形態のポリアミド系樹脂発泡粒子の見掛け密度は、好ましくは10〜150kg/m
3であり、より好ましくは30〜100kg/m
3である。なお、ポリアミド系樹脂発泡粒子の見掛け密度は、第二の実施形態のポリアミド系樹脂発泡粒子の見掛け密度の測定方法と同様にして測定される。
具体的には、温度23℃の水の入ったメスシリンダーを用意し、該メスシリンダーに、相対湿度50%、23℃、1atmの条件にて2日間放置した約500cm
3の発泡粒子の質量W1を測定し、金網を使用して沈める。金網の体積を考慮して、水位上昇分より読みとられる発泡粒子の容積V1[cm
3]を測定し、発泡粒子の質量W1[g]を容積V1で割り算し(W1/V1)、単位を[kg/m
3]に換算することにより、発泡粒子の見掛け密度を求められる。
【0098】
また上記観点から、本発明の第四の実施形態のポリアミド系樹脂発泡粒子の平均気泡径は、好ましくは20〜200μmであり、より好ましくは50〜150μmである。なお、ポリアミド系樹脂発泡粒子の平均気泡径は、以下の方法で測定される。
まず、発泡粒子の中心部を通るように発泡粒子を約二分割し、切断面を走査型電子顕微鏡にて写真を撮影する。次いで、得られた断面写真において、発泡粒子切断面の中心付近から8方向に等間隔に直線を引き、その直線と交わる気泡の数を全てカウントする。該直線の合計長さを、カウントされた気泡数で除して得られた値を発泡粒子の気泡径とする。この操作を10個以上の発泡粒子について同様に行い、各発泡粒子の気泡径の算術平均値を発泡粒子の平均気泡径とする。
【0099】
本発明の第四の実施形態のポリアミド系樹脂発泡粒子の独立気泡率は、好ましくは85%以上であり、より好ましくは88%以上であり、更に好ましくは90%以上である。独立気泡率の測定方法は、本発明の第一の実施形態に関して説明したとおりである。具体的には、発泡粒子中の全気泡の容積に対する独立気泡の容積の割合であり、ASTM−D2856−70に基づき空気比較式比重計を用いて求めることができる。
【0100】
本発明の第四の実施形態のポリアミド系樹脂発泡粒子の表層膜厚は、好ましくは5〜50μmであり、より好ましくは5〜40μmであり、更に好ましくは10〜30μmである。ポリアミド系樹脂発泡粒子の表層膜厚が前記範囲であると、発泡粒子を加圧成形する際に内圧が付与しやすく、二次発泡性に優れる発泡粒子成形体とすることができる。
また、発泡粒子を型内成形する際に破泡しにくく、高倍率の発泡粒子成形体が得られやすく、かつ型内成形時に発泡粒子間の融着性に優れ、成形圧力を過度に高くせずに成形することが可能となる。
【0101】
ポリアミド系樹脂発泡粒子の表層膜厚は、以下のようにして測定することができる。まず、無作為に30個以上の発泡粒子を選択する。次に、発泡粒子をその中心部を通るように切断して2分割する。切断された各発泡粒子の一方の断面において、発泡粒子の最表面から中心部を通って反対側の最表面まで、等角度で4本の線分を引く。線分上において、発泡粒子の最表面から発泡粒子の最外に位置する気泡までの長さ(表面膜厚み)を測定し、それらの値を算術平均することにより、発泡粒子の平均表面膜厚みを求める。
【0102】
本発明の第二の実施形態で説明したダイレクト発泡法によれば、耐熱性に優れたポリアミド系樹脂発泡粒子を得ることができる。そのため、本発明の第四の実施形態のポリアミド系樹脂発泡粒子は、本発明の第二の実施形態の製造方法により得ることが好ましい。
【0103】
本発明の第二の実施形態で説明したとおり、ポリアミド系樹脂の融点(Tm)は、耐熱性に優れたポリアミド系樹脂発泡粒子を得る観点から、好ましくは180℃以上であり、より好ましくは185℃以上、更に好ましくは188℃以上、より更に好ましくは190℃以上である。一方、発泡時の温度コントロールが容易であるという観点から、本発明の第四の実施形態に係るポリアミド系樹脂の融点(Tm)は、好ましくは280℃以下であり、より好ましくは260℃以下、更に好ましくは230℃以下、より更に好ましくは225℃以下である。
なお、ポリアミド系樹脂の融点とは、ポリアミド系樹脂を1種単独で用いた場合は、そのポリアミド系樹脂の融点を指す。ポリアミド系樹脂が、2種以上のポリアミド系樹脂の混合物からなる場合、又はポリアミド系樹脂と他の熱可塑性樹脂の混合物からなる場合には、予め押出機等で混練した混練物の融点を指す。
【0104】
本明細書において、融点(Tm)は、JIS K7121−1987に基づき、試験片の状態調節として「一定の熱処理を行った後、融解温度を測定する場合」(試験片の状態調節における加熱速度と冷却速度は、いずれも10℃/分とする。)を採用し、熱流束示差走査熱量測定法により、加熱速度10℃/分で得られるDSC曲線の融解ピークのピーク頂点温度として求められる値である。DSC曲線が複数の融解ピークを有する場合、最も大きな面積を有する融解ピークのピーク頂点温度を融解温度として採用する。なお、ポリアミド系樹脂及びポリアミド系樹脂粒子の試験片は、例えば、デシケーター内で窒素雰囲気下とした後、真空吸引して保存する等、高温、多湿条件下を避けて加水分解しないように保存したものを使用する。
【0105】
[ポリアミド系樹脂発泡粒子成形体]
本発明により得られたポリアミド系樹脂発泡粒子を型内成形することにより、発泡成形体を得ることができる。型内成形法は、従来公知の方法を採用することできるが、スチームによる加熱を用いることが好ましい。スチームにより、ポリアミド系樹脂粒子発泡粒子中のポリアミド系樹脂が、吸水し可塑化する為、成形圧を低くすることが可能となる。なお、得られた成形体を乾燥して水分を除去すれば、ポリアミド系樹脂本来の物性に戻り、高い耐熱性を有する成形体となる。
【0106】
本発明の第四の実施形態のポリアミド系樹脂発泡粒子は、型内成形性に優れる発泡粒子成形体とすることができる。具体的には、成形体を得るために型内成形する際の二次発泡性に優れる。また、水冷時間を短くすることができ、その結果、全体の成形時間を短くすることができることから好ましい。
発泡粒子成形体の水冷時間は、以下のようにして求められる。まず、得られたポリアミド系樹脂発泡粒子を成形型(例えば、縦200mm×横250mm×厚さ50mm)に充填し、スチーム加熱による型内成形を行なって板状の発泡粒子成形体を得る。加熱方法は両面の型のドレン弁を開放した状態でスチームを5秒間供給して予備加熱(排気工程)を行ったのち、移動側型よりスチームを供給し、次いで固定側型よりスチームを供給した後、成形加熱スチーム圧力(成形圧力=成形蒸気圧)まで加熱する。加熱終了後、放圧し、成形体の発泡力による表面圧力が0.02MPa(ゲージ圧)に低下するまで水冷したのち、型を開放し成形体を型から取り出す。発泡粒子成形体の水冷時間は、水冷開始から面圧が0.02MPa(ゲージ圧)に到達するまでに要した水冷時間(秒)とする。
【実施例】
【0107】
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれにより限定されるものではない。
【0108】
各例におけるポリアミド系樹脂、ポリアミド系樹脂粒子、ポリアミド系樹脂発泡粒子の各種物性は、以下の方法により測定した。
【0109】
[測定方法]
〔融点(Tm)〕
JIS K7121−1987に基づき、熱流束示差走査熱量測定法により、ポリアミド系樹脂粒子の融点を測定した。窒素流入量30mL/分の条件下で、10℃/分の加熱速度で30℃から融解ピーク終了時よりも30℃高い温度まで加熱溶融(1回目の昇温)してから、次いでその温度にて10分間保った後、10℃/分の冷却速度で30℃まで冷却し、再度、加熱速度10℃/分で融解ピーク終了時よりも30℃高い温度まで加熱溶融して得られるDSC曲線の融解ピークのピーク頂点温度として求めた。なお、測定装置として、高感度型示差走査熱量計「EXSTAR DSC7020」(エスアイアイ・ナノテクノロジー社製)を使用した。また、ポリアミド系樹脂粒子及びポリアミド系樹脂は、高温、多湿条件下を避けて加水分解しないようデシケーター内で窒素雰囲気下とした後、真空吸引して水分量を1000質量ppm以下で24時間保存したものを融点の測定に使用した。
【0110】
〔密度〕
ISO 1183−3に記載の方法に基づいて求めた。
【0111】
〔曲げ弾性率(MPa)〕
ポリアミド系樹脂の曲げ弾性率は、JIS K7171:2016に準拠して測定することにより求めた。曲げ弾性率は、厚み4mm、幅10mm、長さ80mmの樹脂試験片を作製し、試験片を室温23℃、湿度50%の状態で72時間静置した後、支点間距離64mm、圧子の半径R15.0mm、支持台の半径R25.0mm、試験速度2mm/min、室温23℃、湿度50%の条件で、オートグラフAGS−10kNG(島津製作所製)試験機により測定し、算出された値(5点)の平均値を採用した。
なお、アミド系エラストマー(アルケマ社製、製品名「PEBAX5533」、融点159℃、密度1.01g/cm
3)の曲げ弾性率を上記方法に基づき測定したところ、150MPaであった。
【0112】
〔融解熱量(高温ピークの吸熱エネルギー)〕
熱流束示差走査熱量測定によって10℃/分の昇温速度で、30℃から融解ピーク終了時よりも30℃高い温度まで昇温して測定したときに得られる1回目のDSC曲線の高温ピークから融解熱量を求めた。なお、測定装置として、高感度型示差走査熱量計「EXSTAR DSC7020」(エスアイアイ・ナノテクノロジー社製)を使用した。
本発明における発泡粒子の高温ピークの吸熱エネルギーは、
図1に示すDSC曲線において、固有ピークaよりも高温側に現れる高温ピークbの面積に相当し、次のようにして求めた。まず、
図1に示すようにDSC曲線上の150℃の点Iと、DSC曲線上の融解終了温度を示す点IIとを結ぶ直線を引いた。次に、固有ピークaと高温ピークbとの間の谷部にあたるDSC曲線上の点IIIを通りグラフ横軸の温度に対して垂直な直線と、点Iと点IIとを結んだ直線との交点を点IVとした。このようにして求めた点IVと点IIとを結ぶ直線、点IIIと点IVを結ぶ直線及び点IIIと点IIを結ぶDSC曲線によって囲まれる部分(斜線部分)の面積を高温ピークの吸熱エネルギーとした。
【0113】
[評価]
〔発泡粒子の見掛け密度〕
温度23℃の水の入ったメスシリンダーを用意し、該メスシリンダーに、相対湿度50%、23℃、1atmの条件にて2日間放置した約500cm
3の発泡粒子の質量W1を測定し、金網を使用して沈めた。金網の体積を考慮して、水位上昇分より読みとられる発泡粒子の容積V1[cm
3]を測定し、発泡粒子の質量W1[g]を容積V1で割り算し(W1/V1)、単位を[kg/m
3]に換算することにより、発泡粒子の見掛け密度を求めた。
【0114】
〔独立気泡率〕
ASTM−D2856−70に記載されている手順Cに準じて、発泡粒子の真の体積(発泡粒子を構成する樹脂の容積と、発泡粒子内の独立気泡部分の気泡全容積との和)の値Vxを測定した。この真の体積Vxの測定には、東芝・ベックマン(株)製の空気比較式比重計「930」を用いた。次いで、下記の式(1)により独立気泡率を算出し、5回の測定結果の算術平均値を求めた。
独立気泡率(%)=(Vx−W/ρ)×100/(Va−W/ρ)・・・(1)
Vx:上記方法で測定される発泡粒子の真の体積(cm
3)
Va:発泡粒子の見掛けの体積(cm
3)
W:発泡粒子測定用サンプルの質量(g)
ρ:発泡粒子を構成する樹脂の密度(g/cm
3)
【0115】
(本発明の第二の実施形態)
例101及び102
[ポリアミド系樹脂粒子の製造]
内径65mmの芯層形成用押出機及び内径30mmの被覆層形成用押出機を併設し、出口側で多数本の多層ストランド状の共押出が可能なダイを付設した押出機を用いた。
芯層形成用押出機に、表1に示す芯層樹脂1030B又は5033Bを供給し、気泡調整剤として「タルカンパウダーPK−S」(林化成株式会社製)をその含有量が3000質量ppmとなるように供給し、末端封鎖剤として「Stabaxol P100」(ラインケミー社製)を1質量部となるように供給し、それぞれ溶融混錬した。また、被覆層形成用押出機に表1に示す被覆層樹脂5034B又は6434Bを供給し、末端封鎖剤として「Stabaxol P100」(ラインケミー社製)をその含有量が1質量部となるように供給し、溶融混練した。
その溶融混練物は、芯層/被覆層の質量比が92/8で、ダイ内で合流し、押出機先端に取り付けた口金の細孔から、芯層の外周面が被覆層により被覆された、断面円形状の多層ストランドとして共押出し、共押出されたストランドを水冷した後、ペレタイザーで質量が1個当たり約2.0mgとなるように切断し、乾燥してポリアミド系樹脂粒子を得た。
【0116】
[ポリアミド系樹脂発泡粒子の製造]
得られたポリアミド系樹脂粒子10kgと、分散液として水310リットルとを、撹拌機を備えた400リットルのオートクレーブ内に仕込み、更に、ポリアミド系樹脂粒子100質量部に対して、分散剤としてカオリン3.0質量部と、界面活性剤としてアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.08質量部とを分散液に添加した。
オートクレーブ内の内容物を撹拌しながら室温(23℃)から昇温し、表2に示す含浸温度に到達後、該オートクレーブ内に発泡剤として二酸化炭素を、オートクレーブ内の圧力が表2に示す含浸圧力となるまで圧入した。このとき、室温(23℃)から表2に示す含浸温度に到達するまでの昇温時間は30分であった。昇温速度は、表2に示す含浸温度から室温(23℃)を引いた値を該昇温時間で割った平均速度とした。次に、表2に示す保持する工程における保持温度、保持時間、圧力を維持した。
その後、発泡剤が含浸されたポリアミド系樹脂粒子を分散液とともに大気圧(0.1MPa)下に放出した。得られたポリアミド系樹脂発泡粒子を60℃のオーブン内にて24時間養生し、その後徐冷することによりポリアミド系樹脂発泡粒子を得た。
得られた発泡粒子の融解熱量(J/g)、見掛け密度、及び独立気泡率を表2に示す。
【0117】
例103〜106、108、109、及び151〜158
[ポリアミド系樹脂粒子の製造]
単層構成とし、芯層形成用押出機に、表1に示す樹脂1030B、6434B、E2046又は5033Bを供給し、気泡調整剤として「タルカンパウダーPK−S」(林化成株式会社製)をその含有量が3000質量ppmとなるように供給し、末端封鎖剤として「Stabaxol P100」(ラインケミー社製)を1質量%となるように供給し、それぞれ溶融混錬した。その溶融混練物は、押出機先端に取り付けた口金の細孔から、断面円形状の単層ストランドとして押出し、押出されたストランドを水冷した後、ペレタイザーで質量が1個当たり約2.0mgとなるように切断し、乾燥してポリアミド系樹脂粒子を得た。
上記以外は例101と同様にして表2及び表3に示す条件にてポリアミド系樹脂発泡粒子を得た。得られた発泡粒子の融解熱量(J/g)、見掛け密度、及び独立気泡率を表2及び表3に示す。
【0118】
例107
ポリアミド系樹脂発泡粒子の製造において、発泡剤として窒素を用いた以外は、例103と同様にして表2に示す条件にてポリアミド系樹脂発泡粒子を得た。得られた発泡粒子の融解熱量(J/g)、見掛け密度、及び独立気泡率を表2に示す。
【0119】
なお、例103で得られたポリアミド系樹脂発泡粒子を成形型に充填し、加熱媒体として水蒸気を使用して、加圧成形法により型内成形を行い、ポリアミド系樹脂発泡粒子成形体を得た。得られたポリアミド系発泡粒子成形体の結晶子サイズを測定したところ、7.1nmであった。
ポリアミド系樹脂発泡粒子成形体の結晶子サイズは以下の方法により求めた。得られたポリアミド系樹脂発泡粒子成形体のX線回折(XRD)測定を、X線散乱装置「D8 DISCOVER μHR Hybrid、Bulker」(AXS社製)を用いた透過法により、行った。検出器にはイメージングプレート(IP)を用いた。試料には試料厚みが0.6mm程度になるようにスライスした発泡成形体を用いた。IPにより得られた二次元X線回折パターンを円環平均により一次元化した。また、空セル散乱補正も実施した。こうして得られた一次元X線回折プロフィールを、ピーク形状としてガウス関数を仮定して、結晶由来の回折ピークと非晶由来の回折ピークとにピーク分離を行った。ピーク分離により得られたピークのうち、最も狭いピーク幅を有するピークの半価全幅β(rad)を計算し、該半価全幅βを用いて下記式(2)に従って、発泡成形体の結晶子サイズDを算出した。
【0120】
【数1】
【0121】
【表1】
【0122】
【表2】
【0123】
【表3】
【0124】
表2に示した評価結果より、例101〜109では、ポリアミド系樹脂粒子を融点よりも90℃低い温度以上50℃低い温度未満の温度で発泡することができ、見掛け密度が低いポリアミド系樹脂発泡粒子を得ることができた。したがって、本発明の第二の実施形態のポリアミド系樹脂発泡粒子の製造方法によれば、ポリアミド系樹脂粒子を融点よりも90℃低い温度以上50℃低い温度未満の温度で発泡することができ、耐熱性に優れ、かつ複雑な立体形状の発泡成形体を成形可能な発泡粒子を比較的容易に得ることができることが分かる。
【0125】
表3に示した評価結果より、保持温度及び発泡させる直前の分散液の温度が融点より約100℃低い温度である例151及び153では、ポリアミド系樹脂粒子はほとんど発泡せずに樹脂粒子の状態であった。
また、保持温度及び発泡させる直前の分散液の温度が融点より40℃低い温度である例152及び154では、保持温度とするための昇温中に、樹脂粒子の状態にて容器内で融着してしまったため、保持温度に達する前に実験を中断した。
保持時間を設けなかった例155では、独立気泡率が低い発泡粒子となった。なお、例155の製造条件では、高温ピークの融解熱量が7J/gであったが、分散液を得る工程及び発泡剤を含浸させる工程の合計時間をさらに短くした場合には高温ピークの融解熱量の値が0に近くなると考えられる。
また、保持時間を100分とした例156では、見掛け密度が高く、独立気泡率が低い発泡粒子となった。加えて、長時間の保持によりポリアミド樹脂が加水分解したと考えられ、発泡粒子が黄変していた。
保持温度をポリアミド系樹脂の融点と同じ温度とした例157は、保持温度とするための昇温中に樹脂粒子のまま容器内で融着してしまった為、保持温度に達する前に実験を中断した。なお、例157の容器内に融着した樹脂粒子について高温ピークを測定したところ、高温ピークの融解熱量は0J/gであった。
発泡させる直前の分散液の温度をポリアミド系樹脂の融点と同じ温度とした例158は、発泡させる直前の分散液の温度とするための昇温中に、樹脂粒子の状態で容器内に融着してしまった為、発泡温度に達する前に実験を中断した。
【0126】
(本発明の第一の実施形態)
例201〜204、252及び253
[ポリアミド系樹脂粒子の製造]
押出機に、表1及び4に示す樹脂を供給し、気泡調整剤として「タルカンパウダーPK−S」(林化成株式会社製)をその含有量が3000質量ppmとなるように供給し、表4に示す末端封鎖剤を供給し、それぞれ溶融混錬した。その溶融混練物は、押出機先端に取り付けた口金の細孔から断面円形状の単層ストランドとして押出し、押出されたストランドを水冷した後、ペレタイザーで質量が1個当たり約2.0mgとなるように切断し、乾燥してポリアミド系樹脂粒子を得た。
【0127】
[ポリアミド系樹脂発泡粒子の製造]
得られたポリアミド系樹脂粒子10kgと、分散液として水310リットルとを、撹拌機を備えた400リットルのオートクレーブ内に仕込み、更に、ポリアミド系樹脂粒子100質量部に対して、分散剤としてカオリン3.0質量部と、界面活性剤としてアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.08質量部とを分散液に添加した。オートクレーブ内の内容物を撹拌しながら室温(23℃)から昇温し、表4に示す含浸温度に到達後、該オートクレーブ内に発泡剤として二酸化炭素を、オートクレーブ内の圧力が表4に示す含浸圧力となるまで圧入した。このとき、室温(23℃)から表4に示す含浸温度に到達するまでの昇温時間は30分であった。昇温速度は、表4に示す含浸温度から室温(23℃)を引いた値を該昇温時間で割った平均速度とした。次に、表4に示す保持する工程における保持温度、保持時間、圧力を維持した。
その後、発泡剤が含浸されたポリアミド系樹脂粒子を分散液とともに大気圧(0.1MPa)下に放出した。得られたポリアミド系樹脂発泡粒子を60℃のオーブン内にて24時間養生し、その後徐冷することによりポリアミド系樹脂発泡粒子を得た。
【0128】
例251
[ポリアミド系樹脂粒子の製造]
例201と同様にしてポリアミド系樹脂粒子を得た。
[ポリアミド系樹脂発泡粒子の製造]
得られたポリアミド系樹脂粒子を、10℃のオートクレーブに入れ4.0MPaの二酸化炭素雰囲気下で3時間静置することによりポリアミド系樹脂粒子に二酸化炭素を含浸させた。これを取り出して熱風発泡器に入れ240℃の熱風を20秒間吹き込むことによりポリアミド系樹脂発泡粒子を得た。
【0129】
例201〜204及び251〜253で得られた発泡粒子の融解熱量(J/g)、見掛け密度、独立気泡率、及び融点における50%圧縮応力を測定した。結果を表4に示す。
【0130】
〔発泡粒子の融点における50%圧縮応力〕
発泡粒子を熱分析装置(TMA;株式会社日立ハイテクサイエンス製「TMA7100」)にて圧縮モード(圧縮プローブの先端の直径3.5mm)で測定した。具体的には、発泡粒子1個を無作為に選び、発泡粒子の短径方向を圧縮プローブで1mNの荷重をかけて挟んだ後、原料樹脂の融点まで昇温した。その後、原料樹脂の融点で等温保持を行いながら30mN/minのスピードで荷重を増していき、プローブの押し込み深さ(変位量)をモニタし、発泡粒子の厚さが、圧縮前の発泡粒子の厚さの50%となった時点での応力を発泡粒子の融点における圧縮応力を測定した。上記操作を3回行い、それらの算術平均値を50%圧縮応力とした。
【0131】
[ポリアミド系樹脂発泡粒子成形体の製造]
次に、ポリアミド系樹脂発泡粒子を用いて発泡粒子成形体を作製した。
まず、得られたポリアミド系樹脂発泡粒子を縦200mm×横250mm×厚さ50mmの平板成形型に充填し、スチーム加熱による型内成形を行なって板状の発泡粒子成形体を得た。加熱方法は両面の型のドレン弁を開放した状態でスチームを5秒間供給して予備加熱(排気工程)を行ったのち、移動側型よりスチームを供給し、次いで固定側型よりスチームを供給した後、成形加熱スチーム圧力(成形圧力=成形蒸気圧)まで加熱した。
加熱終了後、放圧し、成形体の発泡力による表面圧力が0.02MPa(ゲージ圧)に低下するまで水冷したのち、型を開放し成形体を型から取り出した。得られた成形体は80℃のオーブンにて12時間養生し、その後、室温まで徐冷した。このようにして、ポリアミド発泡粒子成形体を得た。
【0132】
例201〜204及び251〜253で得られた発泡粒子成形体について、以下の測定を行った。結果を表4に示す。
【0133】
(回復性)
型内成形で用いた平板形状の金型の寸法に対応する発泡粒子成形体における端部(端より10mm内側)と中心部(縦方向、横方向とも2等分する部分)の厚みを計測した。次いで、発泡粒子成形体の厚み比(成形体中心部の厚み/成形体端部の厚み×100(%))を算出し、以下のように評価した。
A:厚み比が90%以上である。
C:厚み比が90%未満である。
【0134】
(二次発泡性)
発泡粒子成形体の二次発泡性を次のようにして評価した。
A:成形体表面の発泡粒子間隙が完全に埋まっている。
C:成形体表面の発泡粒子間隙が埋まっていない。
【0135】
(融着性)
成形体の融着率は、発泡粒子成形体を破断した際の破断面に露出した発泡粒子のうち、材料破壊した発泡粒子の数の割合に基づいて求めた。具体的には、まず、発泡粒子成形体から試験片(縦100mm×横100mm×厚み:成形体の厚み)を切り出し、カッターナイフで各試験片の厚み方向に約5mmの切り込みを入れた後、切り込み部から試験片を破断させた。次に、発泡粒子成形体の破断面に存在する発泡粒子の個数(n)と、材料破壊した発泡粒子の個数(b)を測定し、(b)と(n)の比(b/n)を百分率で表して融着率(%)とした。
【0136】
(発泡粒子成形体の融点における50%圧縮応力)
発泡粒子成形体から、成形体の表面を含まないように5mm角のサンプルを無作為に切り出し、熱分析装置(TMA;株式会社日立ハイテクサイエンス製「TMA7100」)を用いて、圧縮モード(圧縮プローブの先端の直径3.5mm)にて該サンプルを1mNの荷重で挟んだ後、原料樹脂の融点まで昇温した。その後、原料樹脂の融点で等温保持を行いながら30mN/minのスピードで荷重を増した。発泡粒子成形体の厚さが、圧縮前の発泡粒子成形体の厚さに対して50%となった時点での応力を求めた。
【0137】
【表4】
【0138】
表4に示した結果より、例201〜204で得られたポリアミド系樹脂発泡粒子の融点における50%圧縮応力は8〜15kPaであった。そのようなポリアミド系樹脂発泡粒子を用いて得られた発泡粒子成形体は、成形性に優れかつ高温時の圧縮強度に優れるものであった。したがって、本発明の第一の実施形態によれば、高温時の圧縮強度に優れるポリアミド系樹脂発泡粒子を提供することができることが分かる。
一方、含浸発泡法にて発泡粒子を得た例251では、発泡粒子が高温ピークを有さず、高温時の圧縮強度が不十分であった。また、例252では、ダイレクト発泡法にて発泡粒子を得た場合であっても高温ピークの割合が低い場合には、高温時の圧縮強度が不十分であることを示した。また、例253では、ダイレクト発泡法にて発泡粒子を得た場合であっても高温ピークの割合が高すぎる場合には、樹脂粒子から発泡粒子を得る際に見掛け密度が高くなり、さらに、型内成形時の融着性と二次発泡性が不十分なものとなり成形性に劣り、成形体を得ることが困難であることを示した。
【0139】
(本発明の第三の実施形態)
例301〜303及び351
[ポリアミド系樹脂粒子の製造]
内径65mmの芯層形成用押出機及び内径30mmの被覆層形成用押出機を併設し、出口側で多数本の多層ストランド状の共押出が可能なダイを付設した押出機を用いた。
芯層形成用押出機に、表1及び5に示す芯層樹脂を供給し、気泡調整剤として「タルカンパウダーPK−S」(林化成株式会社製)をその含有量が3000質量ppmとなるように供給し、表5に示す末端封鎖剤を1質量部となるように供給し、それぞれ溶融混錬した。また、被覆層形成用押出機に表1及び5に示す被覆層樹脂を供給し、表5に示す末端封鎖剤をその含有量が1質量部となるように供給し、溶融混練した。
その溶融混練物は、表5に示す芯層/被覆層の質量比にて、ダイ内で合流し、押出機先端に取り付けた口金の細孔から、芯層の外周面が被覆層により被覆された、断面円形状の多層ストランドとして共押出し、共押出されたストランドを水冷した後、ペレタイザーで質量が1個当たり約2.0mgとなるように切断し、乾燥してポリアミド系樹脂粒子を得た。
【0140】
[ポリアミド系樹脂発泡粒子の製造]
得られたポリアミド系樹脂粒子10kgと、分散液として水310リットルとを、撹拌機を備えた400リットルのオートクレーブ内に仕込み、更に、ポリアミド系樹脂粒子100質量部に対して、分散剤としてカオリン3.0質量部と、界面活性剤としてアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.08質量部とを分散液に添加した。
オートクレーブ内の内容物を撹拌しながら室温(23℃)から昇温し、表5に示す含浸温度に到達後、該オートクレーブ内に発泡剤として二酸化炭素を、オートクレーブ内の圧力が表5に示す含浸圧力となるまで圧入した。このとき、室温(23℃)から表5に示す含浸温度に到達するまでの昇温時間は30分であった。昇温速度は、表5に示す含浸温度から室温(23℃)を引いた値を該昇温時間で割った平均速度とした。次に、表5に示す保持する工程における保持温度、保持時間、圧力を維持した。
その後、発泡剤が含浸されたポリアミド系樹脂粒子を分散液とともに大気圧(0.1MPa)下に放出した。得られたポリアミド系樹脂発泡粒子を60℃のオーブン内にて24時間養生し、その後徐冷することによりポリアミド系樹脂発泡粒子を得た。
【0141】
例352及び353
[ポリアミド系樹脂粒子の製造]
単層構成とし、芯層形成用押出機に、表1及び5に示す樹脂を供給し、気泡調整剤として「タルカンパウダーPK−S」(林化成株式会社製)をその含有量が3000質量ppmとなるように供給し、表5に示す末端封鎖剤を1質量%となるように供給し、それぞれ溶融混錬した。その溶融混練物は、押出機先端に取り付けた口金の細孔から、断面円形状の単層ストランドとして押出し、押出されたストランドを水冷した後、ペレタイザーで質量が1個当たり約2.0mgとなるように切断し、乾燥してポリアミド系樹脂粒子を得た。
上記以外は例301又は303と同様にして表5に示す条件にてポリアミド系樹脂発泡粒子を得た。
【0142】
〔被覆層及び芯層の融点の測定試料の調製〕
本発明の第三の実施形態において、被覆層の融点(Tms)及び芯層の融点(Tmc)は、以下に示す方法で測定試料を調製し、その測定試料について前記条件1の下で熱流束示差走査熱量測定法に基づく融解熱量測定を行うことによって得た。なお、被覆層及び芯層の結晶化度の測定試料についても、同様に被覆層及び芯層の測定試料を調製した。
【0143】
〔測定試料の調製〕
(発泡粒子被覆層の融解熱量測定試料)
発泡粒子の表面を含む表層部分を切削処理して表層部分を集めて試験片とした。なお、切削処理にあたっては1個の発泡粒子の表面全面から、切削処理前の発泡粒子の粒子質量の1/10の質量の測定試料を採取した。上記切削処理を複数の発泡粒子について行い、約2gの測定試料を採取した。
【0144】
(発泡粒子芯層の融解熱量測定試料)
発泡粒子の表面全面を切削除去し、切削処理前の発泡粒子の粒子質量の1/3の質量となる発泡粒子残部を測定試料として採取した。上記切削処理を複数の発泡粒子について行い、約2gの測定試料を採取した。
【0145】
〔芯層及び被覆層における全体の融解熱量〕
ポリアミド系樹脂発泡粒子の芯層及び被覆層それぞれについて以下のようにして求めた。JIS K7122−1987の熱流束示差走査熱量測定法に基づき、上記調整により得られた各測定試料を加熱速度10℃/分にて30℃から融解ピーク終了時よりも30℃高い温度まで加熱溶融させる際に測定されるDSC曲線を1回目のDSC曲線とした。1回目のDSC曲線について、昇温時の発熱ピークと吸熱ピークの熱量を求め、吸熱ピークの熱量から発熱ピークの熱量を引くことにより総熱量を求めた。
【0146】
〔結晶化度の算出方法〕
上記により得たそれぞれの総熱量をナイロン6基材の樹脂(1030B、5034B、5033B、6434Bおよび1022B)の場合には完全結晶体熱量230J/gで、ナイロン66基材の樹脂(E2046)の場合には完全結晶体熱量226J/gで割って100を掛けることによりポリアミド系樹脂発泡粒子の芯層及び被覆層の結晶化度を求めた。
【0147】
例301〜303及び351〜353で得られた発泡粒子成形体について、以下の測定を行った。結果を表5に示す。
【0148】
(融着率)
発泡粒子成形体の融着率は、発泡粒子成形体を破断した際の破断面に露出した発泡粒子のうち、材料破壊した発泡粒子の数の割合に基づいて求めた。具体的には、まず、発泡粒子成形体から試験片(縦100mm×横100mm×厚み:成形体の厚み)を切り出し、カッターナイフで各試験片に約5mmの切り込みを入れた後、切り込み部から試験片を破断させた。次に、発泡粒子成形体の破断面に存在する発泡粒子の個数(n)と、材料破壊した発泡粒子の個数(b)を測定し、(b)と(n)との比(b/n)を百分率で表した。上記操作を5つの試験片について行い、それらの算術平均値を融着率(%)とした。
【0149】
(耐熱性)
発泡粒子成形体から、成形体の表面を含まないように5mm角のサンプルを無作為に切り出し、熱分析装置(TMA;株式会社日立ハイテクサイエンス製「TMA7100」)を用いて、圧縮モード(圧縮プローブの先端の直径3.5mm)にて該サンプルを高温条件下にて圧縮した。具体的には、初期荷重を500mNとし、30℃から5℃/minの速度にてプローブを250℃まで昇温させたときの、プローブの押し込み深さ(変位量)をモニタし、サンプルの厚みが試験前のサンプルの厚みに対して5%圧縮された際の温度を求めた。
A:5%圧縮温度が190℃以上である。
B:5%圧縮温度が160℃以上190℃未満である。
【0150】
【表5】
【0151】
表5に示した結果より、例301〜303で得られたポリアミド系樹脂発泡粒子を用いて得られた発泡粒子成形体は、融着率が90%以上と高く、かつ、耐熱性にも優れていた。したがって、本発明の第三の実施形態によれば、高い耐熱性を維持しつつ、融着性に優れるポリアミド系樹脂発泡粒子を提供することができることが分かる。
一方、例351では、芯層及び被覆層を有する樹脂粒子であっても芯層の融点と被覆層の融点との差が無い場合には、融着性に劣ることを示した。また、例352では、融点の高いポリアミド樹脂を単層で用いた樹脂粒子は融着性に劣ることを示し、例353では、融点の低いポリアミド樹脂を単層で用いた樹脂粒子は融着性がやや改善されるものの不十分であることを示した。
【0152】
(本発明の第四の実施形態)
例411〜414及び例471
[ポリアミド系樹脂粒子の製造]
押出機に、表1及び6に示す樹脂を供給し、気泡調整剤として「タルカンパウダーPK−S」(林化成株式会社製)をその含有量が表6に記載の量となるように供給し、溶融混錬した。その溶融混練物は、押出機先端に取り付けた口金の細孔から、断面円形状の単層ストランドとして押出し、押出されたストランドを水冷した後、ペレタイザーで質量が1個当たり約2.0mgとなるように切断し、乾燥してポリアミド系樹脂粒子を得た。
【0153】
[ポリアミド系樹脂発泡粒子の製造]
得られたポリアミド系樹脂粒子10kgと、分散液として水310リットルとを、撹拌機を備えた400リットルのオートクレーブ内に仕込み、更に、ポリアミド系樹脂粒子100質量部に対して、分散剤としてカオリン3.0質量部と、界面活性剤としてアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.08質量部とを分散液に添加した。
オートクレーブ内の内容物を撹拌しながら室温(23℃)から昇温し、表6に示す含浸温度に到達後、該オートクレーブ内に発泡剤として二酸化炭素を、オートクレーブ内の圧力が表6に示す含浸圧力となるまで圧入した。このとき、室温(23℃)から表6に示す含浸温度に到達するまでの昇温時間は30分であった。昇温速度は、表6に示す含浸温度から室温(23℃)を引いた値を該昇温時間で割った平均速度とした。次に、表6に示す保持する工程における保持温度、保持時間、圧力を維持した。
その後、発泡剤が含浸されたポリアミド系樹脂粒子を分散液とともに大気圧(0.1MPa)下に放出した。得られたポリアミド系樹脂発泡粒子を60℃のオーブン内にて24時間養生し、その後徐冷することによりポリアミド系樹脂発泡粒子を得た。
得られた発泡粒子の融解熱量(J/g)、見掛け密度、独立気泡率及び平均気泡径を表6に示す。
【0154】
例472
[ポリアミド系樹脂粒子の製造]
押出機に、表1及び6に示す樹脂を供給し、気泡調整剤として「タルカンパウダーPK−S」(林化成株式会社製)をその含有量が8000質量ppmとなるように供給し、溶融混錬した。その溶融混練物は、押出機先端に取り付けた口金の細孔から断面円形状の単層ストランドとして押出し、押出されたストランドを水冷した後、ペレタイザーで質量が1個当たり約2.0mgとなるように切断し、乾燥してポリアミド系樹脂粒子を得た。
[ポリアミド系樹脂発泡粒子の製造]
得られたポリアミド系樹脂粒子を、10℃のオートクレーブに入れ4.0MPaの二酸化炭素雰囲気下で3時間静置することによりポリアミド系樹脂粒子に二酸化炭素を含浸させた。これを取り出して熱風発泡器に入れ240℃の熱風を20秒間吹き込むことによりポリアミド系樹脂発泡粒子を得た。
【0155】
例473
例472で得られた発泡粒子を70℃に保持した圧力容器に入れ、圧力容器内の圧力が0.60MPaとなるまで24時間かけて圧縮空気を圧入し、その後24時間保持した。得られた発泡粒子を取り出し、熱風発泡器に入れ240℃の熱風を20秒間吹き込むことによりポリアミド系樹脂発泡粒子を得た。
【0156】
また、例411〜414及び471〜473で得られた発泡粒子の粒子形状について、以下の評価を行った。結果を表6に示す。
【0157】
〔発泡粒子の平均気泡径の測定方法〕
まず、発泡粒子の中心部を通るように発泡粒子を約二分割し、切断面を走査型電子顕微鏡にて写真を撮影した。次いで、得られた断面写真において、発泡粒子切断面の中心付近から8方向に等間隔に直線を引き、その直線と交わる気泡の数を全てカウントした。該直線の合計長さを、カウントされた気泡数で除して得られた値を発泡粒子の気泡径とした。この操作を10個の発泡粒子について同様に行い、各発泡粒子の気泡径の算術平均値を発泡粒子の平均気泡径とした。
【0158】
〔発泡粒子の表層膜厚の測定方法〕
まず、無作為に50個の発泡粒子を選択した。次に、発泡粒子をその中心部を通るように切断して2分割した。切断された各発泡粒子の一方の断面において、発泡粒子の最表面から中心部を通って反対側の最表面まで、45°ずつ角度を変更し、等角度で4本の線分を引いた。
線分上において、発泡粒子の最表面から発泡粒子の最外に位置する気泡までの長さ(最表面層の厚み)を測定し、それらの値を算術平均することにより、各発泡粒子の最表面層の平均厚みを求めた。そして、これらの値を算術平均することにより発泡粒子の平均表層膜厚を求めた。
【0159】
[ポリアミド系樹脂発泡粒子成形体の製造]
成形型を型締めしてから得られたポリアミド系樹脂発泡粒子を縦200mm×横250mm×厚さ50mmの平板成形型に充填し、スチーム加熱による型内成形を行なって板状の発泡粒子成形体を得た。加熱方法は両面の型のドレン弁を開放した状態でスチームを5秒間供給して予備加熱(排気工程)を行ったのち、移動側型よりスチームを供給し、次いで固定側型よりスチームを供給した後、成形加熱スチーム圧力(成形圧力=成形蒸気圧)まで加熱した。
加熱終了後、放圧し、成形体の発泡力による表面圧力が0.02MPa(ゲージ圧)に低下するまで水冷したのち、型を開放し成形体を型から取り出した。
【0160】
(発泡粒子成形体の水冷時間)
発泡粒子成形体の水冷時間は、水冷開始から面圧が0.02MPa(ゲージ圧)に到達するまでに要した水冷時間(秒)を測定した。
【0161】
(発泡粒子成形体の成形サイクル)
発泡粒子成形体の成形サイクルは、成形型の型締め開始から成形体を取り出すまでの時間(秒)を測定した。
【0162】
(発泡粒子成形体の二次発泡性)
発泡粒子成形体の二次発泡性を次のようにして評価した。
A:成形体表面の発泡粒子間隙が埋まっている。
C:成形体表面の発泡粒子間隙が埋まっていない。
【0163】
(発泡粒子成形体の回復性)
型内成形で用いた平板形状の金型の寸法に対応する発泡粒子成形体における端部(端より10mm内側)と中心部(縦方向、横方向とも2等分する部分)の厚みを計測した。次いで、発泡粒子成形体の厚み比(成形体中心部の厚み/成形体端部の厚み×100(%))を算出し、以下のように評価した。
A:厚み比が90%以上である。
C:厚み比が90%未満である。
【0164】
(発泡粒子成形体の融着性)
成形体の融着率は、発泡粒子成形体を破断した際の破断面に露出した発泡粒子のうち、材料破壊した発泡粒子の数の割合に基づいて求めた。具体的には、まず、発泡粒子成形体から試験片(縦100mm×横100mm×厚み:成形体の厚み)を切り出し、カッターナイフで各試験片の厚み方向に約5mmの切り込みを入れた後、切り込み部から試験片を破断させた。次に、発泡粒子成形体の破断面に存在する発泡粒子の個数(n)と、材料破壊した発泡粒子の個数(b)を測定し、(b)と(n)の比(b/n)を百分率で表して以下のように評価した。
A:破断面の材料破壊が80%以上である。
B:破断面の材料破壊が60%以上80%未満である。
C:破断面の材料破壊が60%未満である。
【0165】
【表6】
【0166】
表6に示した結果より、例411〜414で得られたポリアミド系樹脂発泡粒子は、見掛け密度が低く、かつ、成形体の物性、特に回復性と融着性に優れていた。したがって、本発明の第四の実施形態によれば、軽量性及び成形性に優れたポリアミド系樹脂発泡粒子を提供することができることが分かる。
例472では、含浸発泡で得られたものは、見掛け密度が高いものとなることを示した。さらに、例473では、例472で得られた発泡粒子を通常行なわれる大気圧下での養生工程を経て、該発泡粒子を別の密閉容器に充填し、圧縮空気を圧入して加圧した後、スチーム加熱によりさらに発泡させたものであり、その場合、見掛け密度は低くなるものの、気泡径が大きな発泡粒子となり、成形性が不十分であることを示した。
ポリアミド系樹脂を発泡させてなる発泡層を有するポリアミド系樹脂発泡粒子であって、1回目のDSC曲線と2回目のDSC曲線において、該1回目のDSC曲線が、該2回目のDSC曲線の融解ピークの頂点温度以下の低温側に頂点温度を有する融解ピーク(固有ピーク)と、該2回目のDSC曲線の頂点温度を超える高温側に頂点温度を有する融解ピーク(高温ピーク)とを有し、かつ、該2回目のDSC曲線の融解ピークの頂点温度が180℃以上280℃以下であり、ポリアミド系樹脂発泡粒子の見掛け密度が10〜300kg/m