(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第2中空部は、基端部から先端部にかけて内径の異なる複数の中空部を内径の小さいものから順に連続させた形状を有することを特徴とする、請求項1に記載の排気用中空ポペットバルブ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のような軸中空バルブは、内径が一定であるためにバルブの軸方向運動に基づいて冷媒がバルブの軸方向に動きやすい反面、冷媒の装填量不足及び冷媒の熱伝達許容量の限界によってバルブから冷媒への熱伝達が不十分になり、十分な冷却効果を得られないおそれがある。
【0005】
また、特許文献2のような傘中空バルブは、一定内径を有する中空部の先端に傘部の外形に倣うように形状の中空部を形成して中空部の容積を拡大したことで、冷媒の装填容量及び熱伝達許容量を増やしてエンジンの高速回転時に十分な冷却効果を得られる点で優れる反面、軸部に連続する傘部の内側に傘部の外形に倣った中空部を形成することには手間がかかるため、より簡易な形態で十分な冷却効果を得られる中空ポペットバルブが求められている。
【0006】
特に近年は、エンジンを走行用の駆動源に用いずに走行用モーターに電源を供給する発電機のみに用いる場合があり、そのようなエンジンは、高速回転をせずに低中速回転のみで発電を行うため、高速回転時よりも低中速回転時に優れた冷却効果を発揮することで耐ノック性が向上し、燃費改善に繋がる排気用中空ポペットバルブが求められている。
【0007】
上記課題に鑑み、本願発明は、簡易な構造でエンジンの低中速回転時において傘中空バルブと同等以上の冷却効果を発揮する排気用中空ポペットバルブを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
先端に向かって増径する首部を介して一体化される軸部と傘部を有し、傘部から軸部にかけて形成された中空部に冷媒を装填された排気用中空ポペットバルブにおいて、前記軸部は、基端側の第1軸部と、段差部を介して第1軸部に一体化されると共に首部に一体化される第2軸部を有し、前記中空部は、第1軸部の内側に形成される第1中空部と、第1中空部よりも大きく一定の内径を有するように第2軸部、首部及び傘部の内側に形成され、テーパー部または湾曲部を介して第1中空部に接続するように形成された第2中空部と、を備えるようにした。
【0009】
(作用)排気時の高温の燃焼室にさらされるバルブの第2軸部、首部及び傘部の強度が保持された状態で、第2軸部、首部及び傘部の内側に設けた第2中空部の容積が拡大して排気の高温にさらされる部位の冷媒装填量が増加して熱伝達の許容量が増加することで燃焼室から冷媒への熱伝達が円滑に行われ、バルブの高速振動時に一定内径を有する第2中空部内でバルブの軸方向に振られることで冷媒が第2中空部の内壁に残留しにくくなり、テーパー部または湾曲部を介して第1中空部との間の円滑な移動を促進される。
【0010】
特許文献1のような冷媒入り中空バルブを使用したエンジンを低中速回転領域で動作させる場合、中空部内で傘部や首部近辺から熱を伝達された冷媒が、燃焼室内に直接さらされずに温度の低い軸端部(バルブ軸先端部2)の近傍領域に移動した際に融点以下に冷却されることによって中空部内の軸端部近傍領域に固着してしまい、バルブの熱引性を悪化させることがある。しかし、本願のエンジンバルブによれば、軸端部に近く燃焼室内にさらされない第1中空部の内径が第2中空部の内径よりも縮径されていることによって固着する冷媒の量が少なくなるため、低中速回転量域でのバルブの温度が低減される。
【0011】
また、排気用中空ポペットバルブは、前記第2軸部を第1軸部よりも厚肉に形成することが望ましい。
【0012】
(作用)第2軸部そのものの熱伝達の許容量が増加することで燃焼室から冷媒への熱伝達性が更に向上する。
【0013】
第2中空部は、基端部から先端部にかけて内径の異なる複数の中空部を内径の小さいものから順に連続させた形状を有することが望ましい。
【0014】
(作用)先端部に向かって増径する首部の外形に倣うように、より大きな内径の中空部が形成されて、第2中空部内の冷媒装填量が更に増加する。
【0015】
内径の異なる前記複数の中空部は、それぞれテーパー部または湾曲部を介して連続するように形成されることが望ましい。
【0016】
(作用)テーパー部または湾曲部により連続複数の中空部間で冷媒の円滑な移動が促進される。
【0017】
排気用中空ポペットバルブは、前記傘部が、弁閉時にシリンダヘッドのシート部に当接するフェース部を有し、前記段差部の基端部からフェース部の先端部までの軸方向長さが、シリンダヘッドのバルブガイド開口部の最先端部からシート部の先端部までの軸方向長さよりも短く形成されることが望ましい。
【0018】
(作用)排気時における中空ポペットバルブの開閉動作時に段差部及び第2軸部がシリンダヘッドのバルブガイド開口部に干渉しない。
【発明の効果】
【0019】
本願の排気用中空ポペットバルブによれば、高温にさらされる部位の強度低下がなく、高温にさらされる部位の内側の冷媒装填量が増えたことで冷媒の熱伝達の許容量が増え、かつ傘部と軸部間の冷媒の移動効率が向上することと、第2中空部よりも第1中空部の内径を小さくして軸端部近くにおける冷媒の固着を低減させることにより、エンジンの低中速回転時において従来の傘中空バルブと同等以上の冷却効果を発揮しつつ、第2中空部の形状が内径一定のストレート孔であるために第2中空部を簡易に形成出来る。
【0020】
本願の排気用中空ポペットバルブによれば、高温にさらされる部位を厚肉にすることで第2軸部そのものの熱伝達の許容量が増えて燃焼室から冷媒への熱伝達性が向上することでバルブによる冷却効果が更に向上する。
【0021】
本願の排気用中空ポペットバルブによれば、内径の異なる複数のストレート孔が内径の小さな順に形成されるために第2中空部を容易に形成出来、高温にさらされる第2中空部の内側の冷媒装填量が更に増えたことで冷媒の熱伝達の許容量が更に増える。
【0022】
本願の排気用中空ポペットバルブによれば、内径の異なる複数のストレート孔が内径の小さな順に形成されるために第2中空部を容易に形成出来、高温にさらされる第2中空部の内側の冷媒装填量が更に増えたことで冷媒の熱伝達の許容量が更に増えて、バルブの冷却効果が向上する。
【0023】
本願の排気用中空ポペットバルブによれば、第2中空部内の冷媒の移動が促進されることで傘部と軸部間の冷媒の移動効率がさらに向上し、バルブの冷却効果が向上する。
【0024】
本願の排気用中空ポペットバルブによれば、バルブの開閉動作時に段差部及び第2軸部をシリンダヘッドのバルブガイド開口部に干渉させることなく第2中空部の容積及び第2軸部の肉厚を大きく出来るため、燃焼室から冷媒への熱伝達性が更に向上する。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1により排気用中空ポペットバルブの第1の実施形態を説明する。
図1においては、排気用中空ポペットバルブの傘部側を先端側とし、軸部側を基端側として説明する。
【0027】
図1に示す第1の実施形態における排気用中空ポペットバルブ1は、高い耐熱性を有する耐熱合金等で形成された軸部2、首部3及び傘部4を有する。
【0028】
軸部2は、第1軸部5、段差部6及び第2軸部7によって形成される。第2軸部7は、先端側から基端側に先窄まりで凸型の湾曲形状に形成された段差部6を介して第1軸部5に一体化され、第2軸部7の外径D2は、段差部6により全体として第1軸部5の外径D1よりも大きく形成される。首部3は、外径が先端に向かって徐々に増径する凹型湾曲形状に形成され、かつ第2軸部7の先端部7aに滑らかに接続される。傘部4は、基端側から先端側に末広がりとなるテーパー状のフェース部8を外周に有し、フェース部8は、首部3の先端部3aと接続する。尚、段差部6は、先端側から基端側に先窄まりのテーパー部として形成されても良い。
【0029】
軸部2,首部3及び傘部4の内側の中心には、排気用中空ポペットバルブ1の中心軸線Oと同軸となる中空部9が形成される。中空部9は、第1中空部10、湾曲部11及び第2中空部12によって形成される。第1中空部10は、一定の内径を有するように軸部2の第1軸部5の内側に形成され、第2中空部12は、第1中空部10の内径d1よりも大きく一定の内径d2を有するように第2軸部7,首部3及び傘部4の内側にかけて形成される。
【0030】
湾曲部11は、先端部内径がd2、かつ基端部内径がd1となる先端側から基端部に先窄まりとなる凹型の湾曲形状を有し、第2中空部12は、湾曲部11を介して第1中空部10に滑らかに接続される。第1中空部10、湾曲部11及び第2中空部12は、排気用中空ポペットバルブ1の底面4a側から掘削加工等によって排気用中空ポペットバルブ1の中心軸線O周りに形成される。中空部9は、金属ナトリウム等の冷媒を装填された状態で耐熱合金等で形成されたキャップ13を抵抗接合等で取り付けられることによって閉塞される。尚、湾曲部11は、先端側から基端側に先窄まりとなるテーパー部として形成されても良い。
【0031】
第1軸部5は、外径D1になるまで耐熱金属製の棒材の外周を切削すること等によって形成される。第1の実施形態においては、第1軸部5の肉厚t1が、第2軸部7の肉厚t2と一致するように形成されている。第2軸部7は、第1軸部5の第1中空部10よりも内径の大きな第2中空部12を内側に形成されても第1軸部5と同じ肉厚を有することにより、強度を保ちつつ冷媒14の増量による熱伝達性の向上効果を発揮する。
【0032】
第1の実施形態の排気用中空ポペットバルブ1によれば、エンジンの燃焼室及び排気通路の高温の排気ガスにさらされる第2軸部7、首部3及び傘部4の内側に設けた第2中空部12の内径d2を第1中空部10の内径d1よりも大きくし、高温にさらされる第2中空部12の容積を拡大して冷媒14の装填量を増加させ、熱伝達の許容量を増加させたことで燃焼室から冷媒14への熱伝達が円滑に行われる。また、冷媒14は、排気用中空ポペットバルブ1の高速振動時に一定の内径d2を有する第2中空部12の内側でバルブの中心軸線Oに沿って先後に振られることで第2中空部12の内壁に残留しにくくなるため、基端側の第1軸部5に向かって先細りとなり、かつ接続点の内径が第1及び第2中空部(10,12)と一致するように形成された湾曲部11を介して第1中空部10との間の円滑な移動を促進される。
【0033】
その結果、排気用中空ポペットバルブ1によれば、傘部4と軸部2との間の冷媒14の移動効率が向上することにより、エンジンの低中速回転時において従来の傘中空バルブと同等以上の冷却効果を発揮しつつ、第2中空部12の形状が一定の内径d2を有するストレート孔であるために第2中空部12を簡易に形成出来る。
【0034】
尚、
図2は、第1の実施形態に示す第2中空部12の変形例を示すものである。第1の実施形態と同一の要素については、同一の符号を使用して説明を割愛する。
図2の第2中空部12’は、内径d2の中空部Aと、内径d21の中空部Bと、内径d22の中空部Cによって構成される。中空部Aの内径d2は、
図1の第2中空部12の内径と同一である。また、中空部Bは、首部3の内側に形成され、中空部3は、傘部4の内側に形成される。
【0035】
図2に示すように中空部AからCは、基端部から先端部にかけて内径の異なる複数の中空部を内径の小さいものから順に連続する形状を有するように形成され、かつエンジンバルブ1’の中心軸線O’周りに同軸となるように形成される。中空部AからCは、各内径は、d2<d21<d22となる。中空部AからCは、
図2に示すような凸型の湾曲部a1,a2やテーパー部(図示せず)を介して滑らかに接続されるように形成されることが望ましい。中空部AからCの各接続部分は、ストレート孔としてもよいが、湾曲部やテーパー部を介して接続されることで中空部AからC間における冷媒の移動が促進される。
【0036】
第2中空部12’は、第1中空部10及び湾曲部11と共に中空部9’を形成し、中空部9’は、金属ナトリウム等の冷媒を装填された状態で耐熱合金等で形成されたキャップ13’を抵抗接合等で取り付けられることによって閉塞される。本実施形態の排気用中空ポペットバルブ1’によれば、異なる内径d2,d21,d22をそれぞれ有するストレート孔からなる中空部AからCが内径の小さな順に形成されるために第2中空部12’をバルブの先端側から容易に形成出来、高温にさらされる第2中空部12’の内側の冷媒装填量が更に増えたことで冷媒14の熱伝達の許容量が更に増えて、バルブの冷却効果が向上する。
【0037】
尚、本変形例の第2中空部12’は、一例として中空部AからCまで3つに分けているが、第2中空部12’は、2つに分けることでコストを低減させても良いし、逆に4つ以上に分けて更に首部や傘部に倣わせた形状とすることで第2中空部の内容積を増加させてもよい。
【0038】
尚、
図1及び
図2に示す第1の実施形態における排気用中空ポペットバルブ1は、第1及び第2軸部(5,7)の肉厚がt1=t2となるように形成されているが、第2軸部7の肉厚t2は、第1軸部5の肉厚t1よりも厚肉に(つまりt2>t1となるように)形成することが望ましい。その場合、第2軸部7のそのものの熱伝達の許容量が増加することで燃焼室及び排気通路の排気ガスから冷媒14への熱伝達性が更に向上することでバルブによる冷却効果が向上する。
【0039】
次に
図3及び
図4により、排気用中空ポペットバルブの第2の実施形態を説明する。
図3及び
図4においても排気用中空ポペットバルブの傘部側を先端側とし、軸部側を基端側として説明する。
【0040】
図3及び
図4に示す第2の実施形態における排気用中空ポペットバルブ21は、第1の実施形態の排気用中空ポペットバルブ1と同じ外形を有し、高い耐熱性を有する耐熱合金等で形成された軸部22、首部23及び傘部24を有する。
【0041】
軸部22は、第1軸部25、段差部26及び第2軸部27によって形成される。第1軸部25は、内側に後述する第1中空部30を有する本体部25aと、本体部25aと同じ外径D3を有するように形成されて排気用中空ポペットバルブ21を形成する中実の軸端部25bによって形成される。第2軸部27は、先端側から基端側に先窄まりとなるテーパー状の段差部26を介して第1軸部25の本体部25aに一体化され、第2軸部27の外径D4は、段差部26により全体として第1軸部25の外径D3よりも大きく形成される。尚、段差部26は、先端側から基端側に先窄まりとなる凸曲面状の湾曲部として形成されても良い。
【0042】
首部23は、外径が先端に向かって徐々に増径する凹型湾曲形状に形成され、かつ第2軸部27の先端部27aに滑らかに接続される。傘部24は、基端側から先端側に末広がりとなるテーパー状のフェース部28を外周に有し、フェース部28は、首部23の先端部23aと接続する。
【0043】
軸部22,首部23及び傘部24の内側の中心には、排気用中空ポペットバルブ21の中心軸線O1と同軸となる中空部29が形成される。中空部29は、第1中空部30、テーパー部31及び第2中空部32によって形成される。第1中空部30は、一定の内径を有するように軸部22の第1軸部25の本体部25aの内側に形成され、第2中空部32は、第1中空部30の内径d3よりも大きく一定の内径d4を有するように第2軸部27,首部23及び傘部24の内側にかけて形成される。尚、テーパー部31は、先端側から基端側に先窄まりとなる凹曲面状の湾曲部として形成されても良い。
【0044】
テーパー部31は、先端部内径がd4、かつ基端部内径がd3となる先端側から基端部に先窄まりとなる形状を有し、第2中空部32は、テーパー部31を介して第1中空部30に滑らかに接続される。第2中空部32は、傘部24と一体の底部32aによって底面24a側に貫通しない有底円筒形状に形成される。
【0045】
排気用中空ポペットバルブ21は、第1中空部30、テーパー部31及び第2中空部32は、首部23及び傘部24と同形の首部及び傘部とを有し、かつ本体部25aと第2軸部27を合計した軸方向長さを有する中実ポペットバルブを形成し、内径d4の円孔を前記中実ポペットバルブの基端部側から中心軸線O1周りに有底となるように形成し、形成された中空ポペットバルブの基端部側外周を絞り加工して内径d4の円孔の基端部側にテーパー部31を介して連結される内径d3の円孔を形成して本体部25a、第2軸部27,第1中空部30及び第2中空部32を形成し、中空部29に冷媒34を装填し、最後に軸端部25bを本体部25aの基端部25cに抵抗接合等で軸接合すること等によって形成される。
【0046】
また、第2の実施形態においては、第1軸部25の肉厚t3に比べて第2軸部27の肉厚t4を厚肉に(つまりt4>t3となるように)形成しているため、第2軸部27のそのものの熱伝達の許容量が増加することで燃焼室から冷媒14への熱伝達性が更に向上することでバルブによる冷却効果が向上する。第2軸部27は、第1軸部25の第1中空部30よりも内径の大きな第2中空部32を内側に形成され、更に第1軸部5よりも肉厚に形成されることにより、強度を保ちつつ熱伝達の許容量及び冷媒14の増加による熱伝達性の向上効果を発揮する。尚、第2軸部27は、第2軸部27の肉厚t4を第1軸部25の肉厚t3同一に形成してもよいが、第2軸部27のそのものの熱伝達の許容量を増加させるために第1軸部よりも厚肉に形成されることが望ましい。
【0047】
尚、第2の実施形態の排気用中空ポペットバルブ21(及び第1の実施形態の排気用中空ポペットバルブ1においても同様)においては、第2中空部32の基端部32bを第2軸部27の基端部27bとバルブの中心軸線O1に沿った方向において面一になるように形成することが望ましい。このように形成した場合、第2中空部32が、段差部26の内側に食い込んで肉厚を薄くすることで段差部26の強度を低下させること無く、排気ガスの高温にさらされる第2軸部27の内側に最大限の容積を有するように形成されるため、バルブによる冷却効果が更に向上する。
【0048】
第2の実施形態の排気用中空ポペットバルブ21によれば、エンジンの燃焼室及び排気通路の高温の排気ガスにさらされる第2軸部27、首部23及び傘部24の内側に設けた第2中空部32の内径d4を第1中空部30の内径d3よりも大きくし、高温にさらされる第2軸部27の熱伝達の許容量を拡大しつつ第2中空部32の容積を拡大して冷媒34の装填量を増加させたことで後述する燃焼室41及び排気通路42の排気ガスから冷媒34への熱伝達が円滑に行われる。また、冷媒34は、排気用中空ポペットバルブ1の高速振動時に一定の内径d4を有する第2中空部32の内側でバルブの中心軸線O1に沿って先後に振られることで第2中空部32の内壁に残留しにくくなるため、基端側の第1軸部25に向かって先細りとなり、かつ接続点の内径が第1及び第2中空部(30,32)と一致するように形成されたテーパー部31を介して第1中空部30との間の円滑な移動を促進される。
【0049】
その結果、排気用中空ポペットバルブ21によれば、傘部24と軸部22との間の冷媒34の移動効率が向上することにより、エンジンの低中速回転時において従来の傘中空バルブと同等以上の冷却効果を発揮しつつ、第2中空部32の形状が一定の内径d4を有するストレート孔であるために第2中空部32を簡易に形成出来る。
【0050】
尚、
図4は、シリンダヘッド40に設置され、排気に基づく開閉時に燃焼室41と排気通路42の間を進退する第2の実施形態の排気用中空ポペットバルブ21を示している。シリンダヘッド40には、バルブガイド40aと燃焼室41に向かって開口する排気通路42が設けられている。バルブガイド40aには、排気用中空ポペットバルブ21の軸部22が摺接するバルブ挿通孔40bが設けられ、バルブ挿通孔40bの先端は、排気通路42に開口する。バルブ挿通孔40bには、バルブスプリング43によって閉弁方向(バルブの先端から基端方向)に付勢された排気用中空ポペットバルブ21の軸部22が保持されて先後に進退する。排気用中空ポペットバルブ21は、開弁時において中心軸線O1に沿って先端方向にスライドし、閉弁時において傘部24のフェース部28がバルブスプリング43の付勢力によって排気通路42の開口周縁部に形成されたシリンダヘッド40のシート部44のシート面44aに当接するように形成される。
【0051】
尚、
図4に示す第2の実施形態の排気用中空ポペットバルブ21においては、段差部26の基端部26aからフェース部28の先端部28aまでの中心軸線O1に沿った方向の長さL1が、シリンダヘッド40のバルブガイド開口部40cの最先端部40dからシート部44の先端部44bまでの軸方向長さL2よりも短く形成されることが望ましく、
図1及び
図2に示す第1の実施形態の排気用中空ポペットバルブ1においては、段差部6の基端部6aからフェース部8の先端部8aまでの中心軸線Oに沿った方向の長さL3が、排気用中空ポペットバルブ1を
図3のシリンダヘッド40に設置したと仮定した場合におけるバルブガイド開口部40cの最先端部40dからシート部の先端部までの軸方向長さL2よりも短く形成されることが望ましい。
【0052】
排気用中空ポペットバルブ(1,21)をこのように形成した場合、段差部(6,26)の基端部(6a,26a)は、弁閉時においてシリンダヘッドのバルブガイド開口部の最先端部40dよりも下に位置するため、排気時における中空ポペットバルブ(1,21)の開閉動作時に段差部(6,26)及び第2軸部(7,27)がシリンダヘッド40のバルブガイド開口部40cに干渉しない。その結果、中空ポペットバルブ(1,21)においては、第2中空部(12,32)の容積及び第2軸部(7,27)の肉厚(t2,t4)を更に大きく出来るため、燃焼室から冷媒への熱伝達性が更に向上する。
【0053】
図5(a)(b)により、熱電対法によって測定した第2の実施形態の冷媒入り中空ポペットバルブ21(
図3を参照)を使用したエンジンの回転数に対するバルブの傘部24の底面24aの中央と首部23の温度を説明する。
図5(a)は、バルブの底面24aの中央に関するグラフであり、
図5(b)は、バルブの首部23に関するグラフである。各図の横軸はバルブの回転数(rpm)、縦軸は温度(℃)を示し、三角のラインが特許文献2のような従来の冷媒入り傘中空バルブの温度を示し、四角のラインが第2の実施形態における冷媒入り中空バルブの温度を示すものである。
【0054】
図5(a)によると本実施形態における冷媒入り中空バルブの傘部の底面温度は、エンジンの回転数が約3500rpmのときに従来の冷媒入り傘中空バルブと同等の温度となる。また、本実施形態における中空バルブ底面温度は、エンジンが約3500rpmを越えて高速回転すると、従来の傘中空バルブよりもやや高温になるが、エンジンが3500rpm以下の回転数で低中速回転をすると、従来の傘中空バルブよりも低く抑えられる。
【0055】
また、
図5(b)によると本実施形態におけるエンジンバルブの首部温度は、エンジンの回転数が3000rpmのときに従来の傘中空バルブと同等の温度となる。また、本実施形態におけるエンジンバルブの首部温度は、エンジンの回転数が約3000rpmを越えて高速回転すると従来の傘中空バルブよりもやや高温になるが、エンジンが3000rpm以下の回転数で低中速回転をすると、本実施形態における中空バルブの底面温度は、従来の傘中空バルブよりも低く抑えられる。
【0056】
このように、
図5(a)(b)の測定結果から従来の冷媒入り傘中空バルブは、エンジンの高速回転時に優れた冷却効果を発揮するが、本実施形態の排気用中空ポペットバルブは、エンジンの低中速回転時に傘中空バルブと同等以上の優れた冷却効果を発揮することで耐ノック性が向上し、燃費の改善に貢献するものと言える。
【0057】
中空バルブの冷媒として一般的に使用される金属ナトリウムは、融点が98℃である。エンジンが低中速回転する際の燃焼室から熱を受ける冷媒入り中空バルブは、高速回転時ほど高温にならないため、従来の中空バルブの中空部内に冷媒として装填された金属ナトリウムは、燃焼室にさらされる高温の傘部や首部の内側領域から燃焼室にさらされないために温度の低い軸端部の近傍領域に移動した際に融点以下に冷却されて軸端部の近傍領域に固着することで移動を阻害され、傘部及び首部から軸部へのバルブの熱引性を悪化させるおそれがある。しかし、本実施形態の冷媒入り中空バルブによれば、軸端部に近い第1中空部10の内径が第2中空部12の内径よりも小さく、仮に軸端部近傍領域に固着しても固着する冷媒の量が少なくなって熱引性の悪化が低減されるため、エンジンが低中速回転量域で動作していてもバルブの温度が低減されるものと考えられる。
【0058】
そのため、本実施形態の排気用中空ポペットバルブは、電気自動車の駆動用モーターに使用される発電専用エンジンのような低中速回転領域でのみ動作するエンジンに使用されることで最も優れた冷却効果を発揮するものと言える。
簡易な構造でエンジンの低中速回転時において傘中空バルブと同等またはそれ以上の冷却効果を発揮する排気用中空ポペットバルブの提供。先端に向かって増径する首部(3)と軸部(2)と傘部(4)を有し、傘部(4)から軸部(2)にかけて形成された中空部(9)に冷媒(14)を装填された排気用中空ポペットバルブ(1)において、軸部(2)は、基端側の第1軸部(5)と、段差部(6)を介して第1軸部(5)に一体化されると共に首部(3)に一体化される第2軸部(7)を有し、中空部(9)は、第1軸部(5)の内側に形成される第1中空部(10)と、第1中空部(10)よりも大きく一定の内径(d2)を有するように第2軸部(5)、首部(3)及び傘部(4)の内側に形成され、テーパー部または湾曲部を介して第1中空部(10)に連続するように形成された第2中空部(12)と、を備えるようにした。