【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 論文(タイトル「The HIF−1/glial TIM−3 axis controls inflammation−associated brain damage under hypoxia」)を「nature COMMUNICATIONS」に掲載(公開日 2015年3月20日)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明は、虚血性脳卒中など低酸素症による脳損傷疾患の治療用組成物及び脳損傷疾患治療剤のスクリーニング方法に関し、具体的には、TIM(T−cell immunoglobulin and mucin domain protein)−3抑制剤を有効成分として含む脳損傷疾患の治療用組成物、及び(a)TIM−3が発現される細胞または動物に候補物質を処理する段階と、(b)TIM−3の発現または活性程度を測定する段階と、(c)TIM−3の発現または活性程度が候補物質を処理しない対照群に比べて減少した候補物質を選別する段階とを含む脳損傷疾患治療剤のスクリーニング方法に関する。
【0025】
大脳虚血(cerebral ischaemia)は、一連の病態生理学的変化を引き起こして脳損傷を誘発する。炎症媒介体(inflammatory mediator)の生産及び浸透は、脳損傷を引き起こす重要な段階で、大脳虚血による脳損傷程度は、炎症状態と非常に密接な関連があることを示唆する臨床及び研究結果が増加している。そこで、炎症調節をターゲットとする脳神経系疾患の治療剤の開発戦略に対する関心が高まっている。但し、現在までは、虚血性脳疾患時に伴われる炎症反応について知られた情報が非常に少ないという限界があった。
【0026】
本発明は、虚血以後に発生するhypoxia(低酸素)状態による脳損傷に、TIM−3が非正常的な炎症細胞の浸透及び炎症反応と連関があり、TIM−3の制御は、炎症反応、脳細胞の死滅、脳梗塞部位の減少に影響を与えるということを糾明することにその特徴がある。本発明は、虚血によって発生する低酸素(hypoxia)状態時に誘発する脳損傷で、TIM−3タンパク質がモジュレータとしての役割をしており、TIM−3の発現が低酸素状態で発生する遺伝子発現を調節するHIF−1によって調節を受けるという研究結果を基盤としている。本発明の一実施例によると、低酸素虚血性脳卒中のマウスモデル(Hypoxia−ischemia mouse model)の低酸素が誘導された脳領域の神経膠細胞(glial cell)でTIM−3の発現は増加し(
図1)、TIM−3の発現は、HIF−1によって調節された(
図2)。また、TIM−3の遮断は、低酸素虚血症後に伴われる脳梗塞部位及び脳細胞の死滅を減少させ(
図3)、好中球の脳への移動及び移動関連サイトカインを減少させることを確認した(
図4)。また、低酸素によって誘導される好中球の移動及び脳損傷は、HIF−1欠乏マウスの低酸素虚血脳卒中モデルでも減少され(
図6)、該マウスにTIM−3の発現を増加させれば脳損傷が再び増加した。このような結果は、低酸素環境でHIF−1/TIM−3軸と脳損傷の関連性を表す。
【0027】
従って、本発明は、TIM−3抑制剤を有効成分として含有する脳損傷疾患、例えば、脳梗塞、脳卒中、低酸素性脳損傷、虚血性脳疾患及び中風疾患の予防または治療用薬学的組成物を提供することができる。本明細書で使用された用語「予防」は、療法剤(例えば、予防剤または治療剤)または療法剤の組合物を投与して対象体で脳損傷疾患の兆候が表れるか再発または発展することを防ぐことを意味する。本明細書で使用された用語「治療」は、脳損傷疾患患者の症状やいずれか一つ以上の身体的パラメータを改善させるか調節するかその発生や進展を遅延させることを意味し、患者の認識有無は問わない。本発明の薬学的組成物は、一つ以上の薬剤学的に許容される担体、賦形剤または希釈剤を含む。前記担体、賦形剤及び希釈剤の例としては、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、マルチトール、デンプン、アラビアガム、アルジネート、ゼラチン、カルシウムホスフェート、カルシウムシリケート、セルロース、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン、水、メチルヒドロキシベンゾエート、プロピルヒドロキシベンゾエート、タルク、マグネシウムステアレート及び鉱物油が挙げられる。また、充填剤、抗凝集剤、滑剤、湿潤剤、香料、乳化剤及び防腐剤などをさらに含んでもよい。使用に適合した担体としては、食塩水、燐酸塩緩衝食塩水、最小必須培地(MEM)またはHEPES緩衝液のMEMを含む水性媒質を挙げられるが、これに限定されない。
【0028】
また、本発明の薬学的組成物は、哺乳動物に投与された後、活性成分の迅速、持続または遅延された放出を提供するように当業界に公知された方法を使用して剤形化することができる。剤形は、粉末、料粒、精製、エマルジョン、シロップ、エアゾル、軟質または硬質のゼラチンカプセル、滅菌注射溶液、滅菌粉末などの形態であってもよい。本発明の薬学的組成物は、筋肉、皮下、経皮、静脈、鼻腔内、腹腔内または経口の経路で投与されてもよく、好ましくは、筋肉内または皮下経路で投与される。組成物の投与量は、投与経路、動物の年齢、性別、体重及び重症度などの様々な因子によって適切に選択される。
【0029】
本発明の薬学的組成物は、下記の多様な経口または非経口投与形態で剤形化するが、これに限定されない。先ず、経口投与のための固形製剤としては、錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、硬質または軟質カプセル剤などが含まれ、このような固形製剤は、本発明の有効成分に少なくとも一つ以上の賦形剤を交ぜて調剤される。また、単純な賦形剤の他にマグネシウムステアレート、タルクのような滑剤を使用してもよい。経口投与のための液状製剤としては、懸濁剤、内用液剤、乳剤またはシロップ剤などがあるが、よく使用される単純希釈剤である水、リキッドパラフィンの他に様々な賦形剤が含まれてもよい。また、本発明の薬学的組成物は、非経口投与も可能であり、非経口投与は、皮下注射剤、静脈注射剤、筋肉内注射剤または胸部内注射剤を注入する方法などによる。この場合、非経口投与用剤型に製剤化するために、本発明の有効成分を安定剤または緩衝制と共に水で混合して溶液または懸濁液に製造し、これをアンプルまたはバイアルの単位投与型で製造することができる。非経口投与のための製剤としては、滅菌した水溶液、非水性溶剤、懸濁液剤、乳剤、凍結乾燥製剤または坐剤などが含まれる。非水性溶剤、懸濁液剤としては、プロピレングリコール(propylene glycol)、ポリエチレングリコール、オリーブオイルのような植物性油またはエチルオレートのような注射可能なエステルなどが使用されてもよい。また、本発明の薬学的組成物は、マウス、ラット、家畜、人間などの哺乳動物に多様な経路で投与されてもよく、その例としては、経口、直腸、静脈、筋肉、皮下、子宮内硬膜または脳血管内注射などがある。本発明の薬学的組成物は、患者の年、性別、体重によって適切な方法を選択して投与する。
【0030】
以下、本発明を実施例によってさらに詳しく説明する。下記の実施例は、単に本発明をより具体的に説明するためのもので、本発明の範囲がこれらの実施例に限らないということは、当業界で通常の知識を持った者において自明である。
【実施例1】
【0031】
実験材料及び方法
<1−1>実験動物
Randall Johnson博士が製作したHIF−1α
+f/+f(HIF−1α−floxed alleles)を持ったマウスを使用した。骨髄系統細胞でHIF−1αに欠けたマウスは、HIF−1α
+f/+fマウスとLysM−Cre形質転換マウスの異種交配から製作した(非特許文献2)。8週令の雄C57BL/6マウス(Orient Bio)を生体内(in vivo)及び試験管内(in vitro)実験に使用した。
【0032】
<1−2>低酸素性脳虚血症モデル及び梗塞(infarct)の体積の測定
C57BL/6雄マウス(8週、Orient Bio)に対して非特許文献3のような方法でH/Iを誘導した。簡単に説明すると、マウスをZoletil(Virbac)及びRompun(Bayer)(4:1)で麻酔させ、それぞれのマウスの右側総頸動脈(common carotid artery)を露出させ、4−0手術用シルク(surgical silk)で二重接合した。切開部位を縫合し、過量の食べ物と水で2時間の間マウスを回復させた。全身性低酸素症(systemic hypoxia)は、温度調節低酸素チャンバ(BioSpherix、C−474)で8%の酸素/バランスN2に露出させて誘導した。このような一時的一側脳虚血症(transient unilateral cerebral ischaemia)モデルは、同側半球(ipsilateral hemisphere)で再生可能な脳損傷を発生させるが、対側半球(contralateral hemisphere)では発生させない。TIM−3−抑制(blocking)実験のために、H/I30分後にマウスに100μgのラット(rat)IgG2a、k isotype(eBioscience、16−4321)または抗TIM−3モノクロニル抗体(eBioscience、RMT−3−23)を静脈注射した。H/Iの24時間が経った後マウスを殺した後、脳を除去し、直ちに2mm厚さのセクションで切った後、TTCと共に37℃で30分間培養した。前記セクションのイメージは、カメラが装着された立体顕微鏡(Zeiss、Stereo Discovery.V20)で観察した。梗塞(infarct)体積は、梗塞組織の浮腫に対して償う間接的な方式で測定し、半球面積に対する損傷面積の割合の百分率で計算し、浮腫による半球の膨潤(swelling)は補正された。梗塞体積の計算式は、以下の通りである(非特許文献4):
梗塞体積(Infarct volume)(%)=[(対側性半球−同側性半球の健康な領域)/対側性半球]×100
【0033】
<1−3>磁気共鳴映像の測定(Magnetic resonance imaging assessments)
マウスを動物ベッドに固定させ、MRI測定装備(Bruker7T BioSpec)下に位置させた後、映像測定の間麻酔させる。Relaxation Enhancement sequenceを持ったRapid Acquisitionを利用してT2−加重された(weighted)イメージを得た。0.7mm厚さの18個の隣接軸スライスを得た[matrix256×256;field of view=20×20mm;TR(Repetition Time)=2,500ms;TE(Echo Time)=35ms;acquisition time=4分;no gap]。ADC(apparent diffusion coefficient)マップは、スピン−エコーシーケンスを利用して拡散加重された(diffusion−weighted)イメージによって得た。このため、8個の隣接軸イメージを得た[thickness 0.7mm、matrix256×128、field of view=20×20mm、TR=2,000ms、TE=26.936ms、acquisition time=16分、1average、b values=45,350、mm
2当たり1,000及び2,000s、no gap]。ADCマップは、スキャナで得た。浮腫体積は、T2−加重されたイメージから得、ADCマップは、Image J analyserから得た。浮腫体積(Oedema volume)(%)=[(同側性体積−対側性体積)/対側性体積]×100。
【0034】
<1−4>マウス脳組織から小膠細胞(microglia)及び星状細胞(astrocytes)の分離
公知の方法によって脳組織から小膠細胞を分離した(非特許文献5)。簡単に説明すると、かん流された(perfused)マウスから脳を除去し、同側性(ipsilateral)及び対側性(contralateral)半球に分けた後、研いで250μgml
−1のcollagenase IV/DNase Iを処理した後、37℃で45分間培養して分解した。その細胞分解産物を50/70%Percoll濃度勾配(gradients)で1,000gで25分間分画した。50及び70%バンド間の境界面で小膠細胞を集め、HBSS(hanks’ balanced salt solutions)で洗浄した(Welgene)。分離した小膠細胞の純度は、FACS分析で測定した。公知の方法によって星状細胞を分離した(非特許文献6)。簡単に説明すると、脳組織からの細胞サスペンション(suspensions)を30/60%のPercoll濃度勾配(gradients)で1,000gで25分間分画した。PBS/30%の境界面で星状細胞を収集した。分離した星状細胞の純度は、抗−GFAP抗体を利用したFACS分析で測定した(Cell Signaling Technology、#3670、1:500)。
【0035】
<1−5>神経膠細胞及びニューロン強化(enriched)中脳培養
1ないし3日が過ぎたマウスの大脳皮質からマウス1次混合神経膠細胞(primary mixed glial cells)を培養した(非特許文献7)。抗CD11b抗体を使用したFACS分析によってマウスの混合神経膠細胞の培養で小膠細胞の割合は30.50%と測定された(eBioscience、11−0112、5μgml
−1)。14胎児日(embryonic day)のマウスからニューロン強化(enriched)中脳細胞を培養した(非特許文献7)。簡単に説明すると、腹側の中脳組織(ventral mesencephalic tissues)を切開し、CMF−HBSS(Ca2+、Mg2+−free HBSS)で10分間培養し、CMF−HBSS内の0.01%のトリプシン(trypsin)で9分間37℃で培養した。培養物を10%ウシ胎児血清、6mgml
−1グルコース、204mgml
−1L−グルタミン及びトリプシンの阻害のための100Uml
−1ペニシリン/ストレプトマイシン(P/S)を添加したDMEM(Dulbecco’s modified eagle’s medium)で二回洗浄した後、粉砕して単一細胞に分離させた。細胞をポリ−D−lysine(5mgml
−1)及びラミニン(laminin)(0.2mgml
−1)コーティングプレートに分注した(ウェル当たり2×10
6細胞)。
【0036】
<1−6>アデノウイルス形質導入(Adenoviral transduction)
Cre再組合酵素遺伝子がサイトメガロウイルスプロモータの調節下で発現される非増殖性アデノウイルス(AD−GFP/Cre)をVector Biolabsから購入した。レポーターAd−GFPを対照群として使用した(Vector Biolabs)。アデノウイルスの形質導入のために、1次混合神経膠細胞をHIF−1α
+f/+fマウスから培養し、Ad−GFPまたはAd−GFP/Creで24時間の間感染させた[MOI(multiplicity of infection)=100]。フローサイトメトリーで測定された感染効率(infection efficiency)は、約50%であった。
【0037】
<1−7>ChIPアッセイ
ChIPアッセイキット(Upstate Biotechnology)を使用してChIPアッセイを行った。マウス1次混合神経膠細胞を低酸素環境で24時間の間培養し、直ちに1%ホルムアルデヒド/ホスフェート−バッファー食塩水(phosphate−buffered saline)で固定し、超音波処理して500ないし1,000−bp DNA断片を得た。クロマチン(chromatin)を5μgの抗HIF−1α(Novus、NB100−134)またはウサギIgGで免疫沈殿させた。免疫沈殿されたDNAをTIM−3−プロモータに特異的なプロモータ対で増幅させた[F,5’−CCTGCTGCTTTGGAATTTGC−3’(序列番号3);及びR,5’−GAGTACTTGGCAGGGGAAATC−3’(序列番号4)]。
【0038】
<1−8>好中球移動測定(Neutrophil migration assay)
FITC−結合された抗CD11b(eBioscience、11−0112、5μgml
−1)及びPE−結合された抗Gr−1(Ly6G)(eBioscience、12−5931、2ugml
−1)の結合に基づいて、FACS Aria system(BD Bioscience)を使用して好中球を分離した。分類された好中球をトランスウェル(Transwell)の上側チャンバにマウス1次混合神経膠細胞が分注された24−ウェルプレート上に添加した。前記細胞を1%または20%の酸素条件で24時間の間培養した。移動(transmigration)は、ヘマサイトメータ(haematocytometer)及びフローサイトメトリー(flow cytometry)を利用して測定した。
【0039】
<1−9>神経学的後遺症(neurological deficits)の測定
神経学的後遺症は、神経学的スコアリングシステム(neurological scoring system)を使用して評価した(非特許文献8)。マウスの神経学的点数は、以下の通りである:0、正常運動機能(normal motor function);1、しっぽ持ち上げによる対側性胴体及び前肢の屈折(flexion ofcontralateral torso and forelimb upon lifting by tail);2、対側への回転(circling to the contralateral side when mouse was held by the tail、but normal posture at rest);3、休息期対側への偏向(leaning to contralateral side at rest);及び4、自発的運動能力の喪失(no spontaneous motor activity)。
【0040】
<1−10>免疫組織化学(immunohistochemistry)
免疫組織化学のために脳を除去し、パラフィンに固定及び包埋した。ミクロトーム(microtome)を使用して梗塞部位を通じて冠状部(coronal sections)(10−mm厚さ)を切ってスライドにマウントした。パラフィンを除去し、セクションをPBS−Tで洗浄し、10%ウシ血清アルブミンで2時間の間ブロッキングした。その後、次の1次抗体を適用した:goat anti−TIM−3(Santa Cruz Biotechnology、sc−30326、2μgml
−1)、rat anti−Gr−1(Ly6G)(eBioscience、MPO(Dako、A0398、10μgml
−1)、rabbit anti−Iba−1(Wako、#019−19741、2μgml
−1)、rabbit anti−cleaved caspase−3(Cell Signaling Technology、#9662S、1:300)、mouse anti−NeuN(Millipore、#MAB377、10μgml
−1)。ピモニダゾール(pimonidazole)(Hypoxyprobe−1、Natural Pharmacia International)を使用して低酸素領域を検出した(非特許文献9)。共焦点顕微鏡(Carl Zeiss LSM510)を使用してイメージを得た。1次神経膠細胞でTIM−3発現の測定のために、マウス1次混合神経膠細胞をメタノールで固定し、PBS−Tで洗浄し、抗TIM−3抗体(R&D Systems、AF1529、1μgml
−1)で4℃で培養した。
【0041】
<1−11>TIM−3プロモータアッセイ
ゲノムDNAからマウスTIM−3プロモータの1,517−bp断片(始めコドンに対して−1,517から+1)をPCR−増幅し、PGL3 basic vector(Promega)にクローニングした。突然変異プライマー及びPhusion High−Fidelity DNA重合酵素(NEB)を使用して、それぞれのHREの部位特異的突然変異(site−directed mutagenesis)を行った。全ての製作物(constructs)は、DNAシークエンシングで確認した。Lipofectamine2000(Invitrogen)を使用してマウス1次混合神経膠細胞(primary mixed glial cells)をトランスフェクションした。トランスフェクション後に、細胞を1%または20%の酸素条件で24時間の間培養し、luciferase assay system(Promega)でレポーター遺伝子活性を測定した。トランスフェクション効率の標準化(normalization)のためにベータ−ガラクトシダーゼ(β−Galactosidase)活性を測定した。
【0042】
<1−12>ウエスタンブロットの分析
H/Iマウスの右側及び左側半球を切開し、プロテアーゼ阻害剤(protease inhibitors)[2mM phenylmethylsulphonyl fluoride、100μgml
−1 leupeptin、10μgml
−1 pepstatin、1μgml
−1 aprotinin及び2mM EDTA]を含有した氷冷却したRIPAバッファーでpellet pestle(Fisher)で均質化した。均質化物を4℃で12,000rpmで30分間遠心分離し、上層液を収去した。サンプルをSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動法で分離し、ニトロセルロース膜(nitrocellulose membranes)に移し、次の1次抗体と共に培養した:goat anti−TIM−3(R&D Systems、AF1529、0.1μgml
−1)、mouse anti−PARP(Zymed、33−3100、2μgml
−1)、rabbit anti−MPO(Dako、A0398、2μgml
−1)、goat anti−Iba−1(Abcam、ab5076、0.5μgml
−1)、mouse anti−GFAP(Cell Signaling Technology、#3670、1:1,000)、mouse anti−NeuN(Millipore、#MAB377、1μgml
−1)、mouse anti−α−tubulin(Sigma、T5168、1:5,000)、microtubule−associated protein 2(Millipore、#MAB3418、1μgml
−1)、glutamate decarboxylase(Abcam、ab11070、1μgml
−1)、peroxidase−conjugated goat anti−rabbit(Bio−Rad,#170−6515,1:5,000)、peroxidase−conjugated rabbit anti−goat(Zymed,R−21459,1:5,000)、peroxidase−conjugated goat anti−mouse(Bio−Rad,#170−6516,1:5,000)。結果は、増加された化学発光システム(enhanced chemiluminescence system)を使用して視覚化し、濃度計(densitometric analysis)(Image J software、NIH)で定量した。全ての実験は、独立して少なくとも3回繰り返して行われた。
【0043】
<1−13>RT−PCR分析
Easy−Blue(iNtRON)を使用して総RNAを分離し、avian myeloblastosis virus reverse transcriptase(TaKaRa)を製造社の説明に従って使用してcDNAを合成した。25−30サイクルの連続反応でPCRを行った。全ての実験は、独立して少なくとも3回繰り返して行われ、PCR産物は、NIH Image Jを使用して定量してアクチンに対して標準化した。QuantiFast SYBR Green PCR kit(Qiagen)を使用してreal−time PCRを行った。Roche LightCycler 480 Real−Time PCR System(Roche Applied Science)及びLigthCycler 480 Quantification Software Version1.5を使用してreal−time PCRを行い分析した。
【0044】
定量的(quantitative)PCRに使用されたプライマーは、以下の通りである:
IL−1βに対して(forward)5’−GGATGAGGACATGAGCACCT−3’(序列番号5)及び(reverse)5’−TCCATTGAGGTGGAGAGCTT−3’(序列番号6);
CXCL1に対して(forward)5’−TGCACCCAAACCGAAGTCAT−3’(序列番号7)及び(reverse)5’−TTGTCAGAAGCCAGCGTTCAC−3’(序列番号8);
HIF−1αに対して(forward)5’−CTCATCAGTTGCCACTTCC−3’(序列番号9)及び(reverse)5’−TCATCTTCACTGTCTAGACCAC−3’(序列番号10);
GAPDHに対して(forward)5’−TGTCGTGGAGTCTACTGGTGTCTTC−3’(序列番号11)及び(reverse)5’−CGTGGTTCACACCCATCACAA−3’(序列番号12)。
【0045】
その他に使用されたPCRプライマー序列は、以下の通りである:
TIM−3に対して(forward)5’−CCCTGCAGTTACACTCTACC−3’(序列番号13)及び(reverse)5’−GTATCCTGCAGCAGTAGGTC−3’(序列番号14);
HIF1αに対して(forward)5’−AGCCTTAACCTGTCTGCCACTT−3’(序列番号15)及び(reverse)5’−GAAATCATTTAACATTGCATATATACTAGAACAT−3’(序列番号16);
MPOに対して(forward)5’−AGGATAGGACTGGATTTGCCTG−3’(序列番号17)及び(reverse)5’−GTGGTGATGCCAGTGTTGTCA−3’(序列番号18);
IL−1βに対して(forward)5’−TACAGGCTCCGAGATGAACAACAA−3’(序列番号19)及び(reverse)5’−TGGGGAAGGCATTAGAAACAGTCC−3’(序列番号20);
CXCL1に対して(forward)5’−CGCTCGCTTCTCTGTGCAGC−3’(序列番号21)及び(reverse)5’−GTGGCTATGACTTCGGTTTGG−3’(序列番号22);
Actinに対して(forward)5’−CATGTTTGAGACCTTCAACACCCC−3’(序列番号23)及び(reverse)5’−GCCATCTCCTGCTCGAAGTCTAG−3’(序列番号24)。
【0046】
<1−14>フローサイトメトリー(Flow cytometry)
全ての染色段階は、闇中で行われ、BD Fc Blockで遮断された。新たに得た小膠細胞及び星状細胞を、次の抗体で染色した:rabbit anti−Iba−1(Wako、#019−19741、1μgml
−1)後にAlexa 488−conjugated chick anti−rabbit(Invitrogen、A21441、2μgml
−1)、及びPE−conjugated anti−mouse TIM−3(eBioscience、RMT−3−23、2μgml
−1)またはisotype control Ab(eBioscience、2μgml
−1)で4℃で30分間、GFAPの細胞内染色のために、IC fixation/permeabilizationバッファー(eBioscience)を使用して細胞を20分間固定及び透過化し、透過化(permeabilization)バッファーで二回洗浄し、抗GFAP(Cell Signaling Technology、#3672、1:500)と共に透過化バッファーで30分間培養し、Alexa 488−conjugated chick anti−mouse(Invitrogen、A21200、2μgml
−1)で染色した。データは、Cell−Quest software(BD Bioscience)及びFlow Jo software(Treestar)パッケージで分析した。
【0047】
<1−15>レンチウイルス生産及び定位注射(stereotaxic injection)
TIM−3(GE Dharmacon)のコーディング序列をPLL3.7.EF1αプラスミド(Addgene、Inc.)に接合させてPLL3.7.EF1α−TIM3を製作した。前記プラスミドを使用して再組合レンチウイルスLV−TIM3−GFPを製作した。対照群としてGFPのみを発現するレンチウイルスベクター(LV−GFP)を作った。レンチウイルスをフローサイトメトリーを使用して滴定した(非特許文献10)。脳固定装置(stereotaxic instrument)を利用してLV−TIM3−GFPまたはLV−GFPを注射した。それぞれのマウスは、4回のレンチウイルス(5×10
6TUml
−1を含有した20μリットルを右側半球に)頭蓋注射(intracranial injections)を打たれた。試験管内(in vitro)蛍光イメージングのため、収集された細胞をFACS及び抗GFP抗体(Santacruz、sc−9996、1:1,000)を使用したウエスタンブロッティングで分析した。Caliper Life Science’s Xenogen IVIS Spectrumを使用して全身の生体内(in vivo)イメージングを行った[励起(excitation)フィルターで445から490nm、放出(emission)フィルターで515から575nmで照射]。
【0048】
<1−16>データの分析
全てのデータは、平均±s.dで表示した。SigmaPlot10.0を使用してPost−hoc comparisons(Student−Newman−Keuls test)を行った。神経学的点数(neurological scores)は非母数的(nonparametric)統計処理で評価した。二つのグループ(IgG vs anti−TIM−3、HIF−1α
+f/+fマウス vs LysM−Hif−1α
−/−マウス、LV−GFP注射 LysM−Hif−1α
−/−マウス vs LV−TIM3−GFP注射LysM− Hif−1α
−/−)間の比較は、Mann−hitney U−testsで分析した。
【実施例2】
【0049】
低酸素半陰影(hypoxic penumbra)でのTIM−3発現の増加
虚血性脳損傷と炎症間の相互依存的関連性の基礎となる分子的機作を調べるために、本発明者らは、脳の低酸素虚血症(cerebral hypoxia−ischaemia、H/I)による病態生理学的炎症反応に主な役割をすることができる候補分子を調査した。このため、右側頚動脈の一方接合(unilateral ligation)後、全身的低酸素症(systemic hypoxia)を誘発した一時的一側脳虚血症(transient unilateral cerebral ischaemia)マウスモデルを利用した(非特許文献11)。H/Iの24時間後に対側性(contralateral)及び半陰影(penumbral)皮質領域から組織を得た後、多様な炎症関連分子の発現水準をRNA及びタンパク質水準で調査した。その結果、同側性半陰影(ipsilateral penumbra)でTIM−3(T−cell immunoglobulin and mucin domain−3)の転写水準が対側性領域(contralateral regions)ではるかに高く増加したことを発見した。また、同側性半陰影(ipsilateral penumbra)でTIM−3タンパク質も対側性領域より増加したことを確認した(
図1a、b)。前記同側性半陰影領域は、低酸素下で陽性対照群(positive control)であるHIF−1の転写体及びタンパク質水準が高いと報告された(非特許文献12;及び非特許文献13)。
【0050】
上記結果を確証するために、TIM−3に対する抗体を利用してH/Iマウスの冠状面(coronal sections)に免疫組織化学法を行った(非特許文献14;及び非特許文献15)。その結果、上記結果と一致するように、同側性半陰影でTIM−3−陽性細胞が非常に増加したことが確認できた(
図1c)。さらに低酸素症マーカーであるピモニダゾール(pimonidazole)(hypoxyprobe−1)を利用して、H/Iマウスのhypoxyprobe−1染色された低酸素半陰影でTIM−3が高く発現されたことを確認した(
図1d)。
【0051】
このような結果は、TIM−3発現が低酸素半陰影で上向き調節されるということを示し、TIM−3が脳虚血による病態生理学的変化に所定の役割ができることを示唆する。
【実施例3】
【0052】
低酸素環境の神経膠細胞でTIM−3発現の上向き調節
本発明者は、H/I後に如何なる細胞がTIM−3の上向き調節(upregulation)を表すについて調査した。ウエスタンブロット分析の結果、H/I24時間後にH/Iマウスの同側性皮質で、活性化された小膠細胞マーカーであるIba−1(ionized calciumbinding adaptor molecule−1)及び活性化された星状膠細胞マーカーであるGFAP(glial fibrillary acidic protein)のタンパク質発現水準が対側性皮質よりさらに高かった。一方、NeuN(neuronal nuclei)、マイクロチューブル−連関タンパク質2(microtubule−associated protein 2)及びグルタメートデカルボキシラーゼ(glutamate decarboxylase)のようなニューロン細胞マーカーの発現水準は、半陰影皮質組織(penumbral cortex tissues)で減少した。
【0053】
従って、本発明者らは、H/I24時間後に小膠細胞(microglia)及び星状膠細胞(astrocytes)でTIM−3の発現水準を調査した。免疫組織化学の結果、H/Iマウスの同側性皮質でTIM−3−発現細胞の多くの領域は、Iba−1陽性で表れた。また、同側性皮質のGFAP−免疫活性(immunoreactive)星状膠細胞でTIM−3の強い発現も観察された。さらに、H/Iマウスから分離した脳細胞のFACS(Fluorescence−activated cell sorting)分析の結果、低酸素虚血症(hypoxia−ischaemia)は、小膠細胞及び星状膠細胞の活性をもたらし、これは、増加したTIM−3の発現を表す。高い水準のIba−1を発現する小膠細胞及び高い水準のGFAPを発現する星状膠細胞は、H/I24時間後に同側性半陰影(ipsilateral penumbra)で非常に増加し、これは、小膠細胞及び星状膠細胞が低酸素環境で活性化されたことを意味する。また、TIM−3の発現は、同側性皮質から分離したIba−1−陽性小膠細胞及びGFAP−陽性星状膠細胞において、対側性領域で分離したものより、有意味な水準で高く表れた(
図1e、f)。
【0054】
このような結果は、低酸素下で活性化された小膠細胞及び星状膠細胞でTIM−3の発現が非常に増加するという事実を裏付ける。
【実施例4】
【0055】
低酸素環境でTIM−3のHIF−1−依存的増加
前記実験結果に基づいて本発明者らは、神経膠細胞(glial cell)でTIM−3の発現が酸素分圧(oxygen tension)によって変更され得るか否かを、BV2小膠細胞及び1次培養された神経膠細胞を使用して実験した。BV2細胞は、正常酸素(normoxic)(20%のO
2)または低酸素(hypoxic)(1%のO
2)条件で24時間の間培養し、TIM−3の細胞表面水準は、FACS分析で測定した。興味深いことに、TIM−3発現は、低酸素条件で非常に増加した(
図2a)。免疫細胞化学(immunocytochemistry)の分析結果も、マウス1次混合神経膠細胞(primary mixed glial cells)でTIM−3発現が正常酸素(normoxic)環境に比べて低酸素(hypoxic)環境で非常に増加するということを示した(
図2b)。また、本発明者らは、低酸素環境でTIM−3の転写水準が1次混合神経膠細胞では増加したことに対し、1次ニューロン細胞(primary neuronal cells)では増加しないことを確認した(
図2c、d)。このような結果は、神経膠細胞で低酸素症がTIM−3発現を誘導することを示す。
【0056】
HIF−1は、低酸素環境で多くの遺伝子の主な転写調節因子である。神経膠細胞で低酸素によって刺激されたTIM−3の上向き調節がHIF−1によって媒介されるかについて調べるために、本発明者らは、抗HIF−1α抗体及び潜在的HREコンセンサス序列(HIF−responsive element(HRE)consensus sequences)を含むTIM−3プロモータ領域(elements)を利用してChIPアッセイ(chromatin immunoprecipitation assay)を行った。
図2eに示すように、低酸素環境の1次混合神経膠細胞(primary mixed glial cell)でHIF−1αは、HRE−含みTIM−3プロモータ領域に結合することができた。さらに、上記の結果を確認するために、本発明者らは、HIF−1α−欠乏神経膠細胞でTIM−3プロモータの活性を調査した。HIF−1α
flox/flox(HIF−1α
+f/+f)マウスから1次混合神経膠細胞を培養した後、アデノウイルス−Cre/GFP(Ad−Cre/GFP)または対照群GFP(緑蛍光タンパク質(GFP)を暗号化するアデノウイルス(Ad−GFP))で感染させた。FACSを利用してウイルス感染の効率を確認し、細胞をTIM−3ルシフェラーゼレポーター(−1,517/+1)でトランスフェクションした後、TIM−3プロモータ活性を測定した。予想どおり、低酸素環境でTIM−3プロモータ活性は、対照群Ad−GFP−感染された神経膠細胞(HIF1α
+f/+f)では非常に増加したが、Ad−Cre/GFP−感染された、HIF−1α−欠乏神経膠細胞(HIF1α
Δ/Δ)では非常に減少した(
図2f)。TIM−3プロモータの潜在的HREsの部位特異的突然変異(site−directed mutagenesis)は、ルシフェラーゼ活性の低酸素−依存的増加を野生型レポーターに比べて非常に減少させた。また、Ad−Cre/GFP−感染されたHIF−1α−欠乏神経膠細胞でTIM−3転写体及びタンパク質の低酸素刺激による増加は非常に抑制された(
図2g、h)。
【0057】
このような結果は、低酸素環境でTIM−3の発現がHIF−1−依存的方式で調節されることを示す。
【実施例5】
【0058】
マウスH/IモデルでTIM−3抑制による脳損傷の減少
H/Iマウスモデルの神経膠細胞でTIM−3が上向き調節されたので、本発明者らは、大脳(cerebral)H/I後に脳で低酸素誘導されたTIM−3の役割を調査した。このため、H/I24時間後にTIM−3−抑制抗体が脳損傷に及ぼす影響をTTC(2,3,5−triphenyltetrazolium)染色を利用して調査した。
図3aに示すように、対照群IgG−注射マウスに比べて100μgのTIM−3−抑制抗体を静脈注射したマウスでTTC−陰性領域が非常に減少したことを確認することができた。このような結果は、低酸素環境でTIM−3−抑制抗体が脳損傷を減少させることができることを示す。
【0059】
脳梗塞の生命を脅威する結果である浮腫は、炎症と虚血性脳損傷に伴って表れる(非特許文献16)。従って、本発明者らは、TIM−3−抑制がH/Iによる浮腫の形成に及ぼす影響を調査した。梗塞(infarct)領域と浮腫の形成を観察するために、H/Iの1日から7日までT2−加重(weighted)磁気共鳴映像を得た。TTC染色から得た結果と同様に、H/Iの1日目、TIM−3−抗体−注入マウスの同側性半球(ipsilateral hemispheres)で梗塞と浮腫の形成は、IgG−注入マウスに比べて非常に減少し(
図3b−d)、このような浮腫の形成と梗塞の減少は、3、5及び7日目にも持続した(
図3c、d)。
【0060】
H/I後の脳損傷とTIM−3の関連性を追加で調査するために、TIM−3−抑制抗体がニューロン細胞の死滅に及ぼす影響を、脳虚血症に重要な役割をする細胞死滅エフェクタープロテアーゼ(cell death effector protease)であるカスパーゼ(caspase)−3の発現を測定することで調査した(非特許文献17;及び非特許文献18)。免疫組織化学の結果、IgG−処理H/Iマウスの同側性皮質領域のニューロン細胞でカスパーゼ−3の発現は非常に増加したことに対し、TIM−3抑制抗体処理マウスでこのような増加は非常に減少した(
図3e)。次に、対照群IgGまたはTIM−3−抑制抗体を処理したH/Iマウスの同側性及び対側性皮質において、カスパーゼ−3によって切断するカスパーゼ−3活性のマーカーで、虚血性細胞の死滅と関連のあるPARP(poly(ADP−ribose)polymerase)の水準を測定した(非特許文献19)。
図3fに示すように、対照群IgG−注射H/Iマウスの同側性皮質組織で全長PARPの発現は非常に減少したが、TIM−3−抑制抗体−注射H/Iマウスでは減少しなかった。
【0061】
このような結果は、TIM−3の抑制がマウスで脳虚血症後の梗塞部位とニューロン細胞の死滅を非常に減少させることができることを示す。
【実施例6】
【0062】
TIM−3抑制による好中球(neutrophil)の浸潤の減少
様々な研究によると、好中球は、虚血性脳で数時間中に速く浸潤されて、炎症反応と脳損傷の発生に関与する(非特許文献20;及び非特許文献21)。神経膠細胞は、虚血症発生後の数分内に関連した活性を表す脳損傷に1次的に反応する細胞のうち一つであるので、本発明者らは、神経膠細胞でTIM−3のHIF−1−依存的増加が好中球の虚血半陰影(ischaemic penumbra)への浸潤に影響を及ぼし、TIM−3が好中球を集める能力の下向き調節(downregulation)は、脳虚血後の脳損傷を減少させることができるという仮説を立てた。これにより、先ず代表的な二つの好中球マーカーであるMPO(myeloperoxidase)及びGr−1(granulocyte receptor−1)の発現を測定し、H/I後、24時間になった時、対側性領域に比べて半陰影皮質(penumbral cortex)及び線条体(striatum)で前記マーカーに陽性である細胞(MPO
+Gr−1
+)が大きく増加することを確認した。次に、本発明者らは、神経膠細胞(glial cells)が低酸素環境でGr−1
highCD11b
high好中球を集めることができるか否かについて調査した。C57BL/6マウスから脾臓細胞(splenocytes)を分離し、1次混合神経膠細胞または兔疫細胞を損傷部位に集めると知られたマウス胎仔線維芽細胞(murine embryonic fibroblast)の対照群細胞を含むか含まないトランスウェル(Transwell)システムにおいて、1または20%の酸素条件で24時間の間培養した(非特許文献22)。神経膠細胞またはマウス胎仔線維芽細胞の存在下で、Gr−1
highCD11b
high細胞は、低酸素環境では下側チャンバに非常に多く移動したが、正常(normoxic)環境では数個の細胞のみが移動した。しかし、このようなGr−1
highCD11b
high細胞の移動の低酸素依存的増加は、神経膠細胞のない状態では非常に減少した。このような結果は、神経膠細胞が低酸素環境でGr−1
highCD11b
high細胞を集めることに関与し得ることを示唆する。
【0063】
次に、本発明者らは、H/I後の24時間になった時、TIM−3−抑制が好中球の同側性半球(ipsilateral hemispheres)への浸潤に及ぼす効果を実験した。H/Iマウスの皮質組織に対する逆転写−PCR(RT−PCR)及びウエスタンブロット分析の結果は、対照群IgG−処理マウスに比べてTIM−3−抑制抗体−処理マウスでMPO発現の水準が非常に減少することを示した(
図4a、b)。同側性皮質の冠状面(coronal section)に対する免疫組織化学の実験結果も、TIM−3−抑制抗体処理によってMPO
+Gr−1
+細胞が非常に減少することを示す(
図4c)。このような結果は、抗好中球及び抗MPO抗体を使用した免疫組織化学実験によっても確認された。また、H/I脳(bregma−2から+2)の多くの同側性領域の冠状面を使用して、TIM−3抑制が好中球の浸潤に及ぼす影響を様々な時点で測定した。
図4d、eに示すように、全ての観察時点(1〜7日)でTIM−3を抑制させたマウスの半陰影皮質及び線条体(striatum)でさらに少ない数のMPO
+Gr−1
+細胞が観察された。
【0064】
上記の結果は、低酸素環境でTIM−3が好中球の損傷された脳への浸潤と関連していることを強く示唆する。
【実施例7】
【0065】
TIM−3の遮断による好中球補充(recruitment)の減少
膠細胞TIM−3が好中球の移動に及ぼす影響をさらに特異的に測定するために、低酸素環境で膠細胞が好中球を補充する能力がTIM−3の遮断によって影響を受けるか否かを調査した。トランスウェル(Transwell)システムを利用して、1次膠細胞(primary glial cells)を下側チャンバにプレーティングし、TIM−3−抑制抗体または対照群IgGで前処理した後、上側チャンバに脾臓細胞(splenocytes)をローディングした。1%の酸素条件で24時間の間細胞を培養し、下側チャンバにあるGr−1
highCD11b
high細胞の割合をFACS分析で測定した。その結果、低酸素環境で下側チャンバにあるGr−1
highCD11b
high細胞が、対照群IgGに比べて、10mgのTIM−3−抑制抗体によって非常に減少したことを確認した(
図5a)。
上記の結果をさらに検証するために、低酸素環境で骨髄(BM)由来のGr−1
highCD11b
high細胞の移動を調査した。Gr−1
highCD11b
high
細胞をBM細胞から分離して上側チャンバにプレーティングし、下側チャンバには、1%の酸素条件でTIM−3−抑制抗体または対照群IgG−処理された1次混合神経膠細胞(primary mixed glial cells)をローディングした。上記の結果と一致するように、BM由来のGr−1
highCD11b
high細胞の下側チャンバへの移動は、対照群IgG処理に比べてTIM−3−抑制抗体処理によって非常に減少した(
図5b)。このような結果は、脳虚血後、低酸素領域に好中球が補充されるにあたって膠細胞TIM−3の役割を明確に示す。
【実施例8】
【0066】
TIM−3抑制による好中球走化因子(chemoattractants)の減少
好中球の炎症または損傷部位への浸潤は、化学走性因子(chemoattractants)によって調節され、これらは虚血後脳の好中球浸潤に先立って上向き調節される(非特許文献23)。従って、本発明者らは、TIM−3抑制が虚血状態の脳で好中球化学走性因子として作用するIL−1β及びCXCL1の水準に及ぼす影響を調査した(非特許文献24)。H/I後、30分になった時、マウスに100mgのTIM−3−抑制抗体または対照群IgGを静脈注射した。24時間後に、同側性及び対側性皮質組織でIL−1β及びCXCL1転写水準を調査した。
図5c、dに示すように、対照群IgGを注射したH/Iマウスの同側性皮質領域でIL−1β及びCXCL1の転写体水準が全て非常に増加したが、このような効果は、TIM−3−抑制抗体を注射したマウスでは非常に減少した。
【0067】
膠細胞TIM−3の役割をさらに調べるために、TIM−3の遮断がIL−1β及びCXCL1発現水準に及ぼす影響を調査した。前記細胞にTIM−3−抑制抗体または対照群IgGを処理し、1%の酸素または20%の酸素条件下で24時間の間培養した。上記の結果と一致するように、20%の酸素条件に比べて1%の酸素条件で培養したIgG−処理対照群細胞でIL−1β及びCXCL1転写体の水準は増加したが、このような増加は、TIM−3−抑制抗体を処理した細胞で非常に減少した(
図5e、f)。
【0068】
このような結果は、細胞TIM−3が好中球の浸潤の調節を通じて脳虚血症の発病に重要な役割をする因子であることを示す。
【実施例9】
【0069】
HIF−1欠乏による好中球の移動及び梗塞(infarct)の減少
低酸素環境の神経膠細胞でHIF−1αがTIM−3の発現を調節するという発見に基づいて、本発明者らは、HIF−1αが低酸素環境で神経膠細胞の好中球の補充能力に影響を及ぼすか否かを調査した。HIF−1α
+f/+fマウスから培養した1次混合神経膠細胞をAd−GFPまたはAd−GFP/Creで感染させ、トランスウェル(Transwell)システムで脾臓細胞(splenocytes)と共に1%または20%の酸素条件で24時間の間培養した。低酸素環境で下側チャンバのGr−1
highCD11b
high細胞の割合は、脾臓細胞をAd−GFP/Cre感染されたHIF−1α−欠乏神経膠細胞と共に培養した時、対照群Ad−GFP−感染細胞に比べて非常に減少した。一方、20%の酸素条件で移動したGr−1
highCD11b
high細胞の数は、HIF−1α−欠乏及び正常細胞の間に大きな差がなかった(
図6a)。次に、本発明者らは、移動したBM−由来Gr−1
highCD11b
high細胞の数が、1%の酸素条件でHIF−1α−欠乏神経膠細胞と共に培養することによって非常に減少したことを発見した(
図6b)。また、対照群Ad−GFP−感染細胞に比べて、TIM−3の低酸素−依存的増加が表れないAd−GFP/Cre−感染されたHIF−1α−欠乏神経膠細胞でIL−1β及びCXCL1の低酸素−依存的増加は非常に減少した(
図6c、d)。
【0070】
小膠細胞(microglia)は、脳で常在骨髄細胞(residentmyeloid cells)となることが知られている(非特許文献25)。膠細胞HIF−1αの役割を確認するために、本発明者らは、骨髄細胞で特異的にHIF−1αが欠けたLysMCre−HIF−1α
+f/+f(LysM−Hif−1α
−/−)マウスでH/I後の脳損傷の程度を調査した。先ず、本発明者らは、LysM−Hif−1α
−/−マウスの1次小膠細胞でHIF−1αの水準を測定した。
図7aに示すように、HIF−1α転写体の水準は、HIF−1α
+f/+fに比べてLysM−Hif−1α
−/−マウスの小膠細胞で非常に低かった。H/I後、24時間になった時、TIM−3転写体の水準もLysM−Hif−1α
−/−マウスの東側皮質領域でさらに低かった(
図7b)。本発明者らは、HIF−1α
+f/+fマウスに比べてLysM−Hif−1α
−/−マウスでTTC染色−陰性領域が非常に減少したことを発見し、これは、H/Iの24時間後、脳損傷で小膠細胞HIF−1αの役割を表す(
図7c)。HIF−1α
+f/+fマウスに比べてLysM−Hif−1α
−/−マウスのニューロン細胞でカスパーゼ(caspase)−3の発現も非常に減少した(
図7d)。さらに、H/Iの24時間後、LysM−Hif−1α
−/−マウスの同側性皮質でIL−1β及びCXCL1発現の有意味な増加は検出されなかった。
【0071】
このような結果は、低酸素症でHIF−1αがTIM−3−関連の好中球の浸潤及び繋がる脳損傷と密接な関連があることを示す。
【実施例10】
【0072】
TIM−3の遮断及びHIF−1αの欠乏がNDSに及ぼす影響
減少された梗塞(infarct)の体積及びニューロン細胞の死滅が神経機能の改善と連関するか否かを調べるために、公知の方法を使用してH/IモデルでNDS(neurological deficit score)を測定した(非特許文献26;及び非特許文献27)。神経学的後遺症(neurological deficits)は、対側性胴体(contralateral torso)と前肢の屈折(flexion)、対側への回転(circling to the contralateral side)、停止期の対側への偏向(leaning to the contralateral side at rest)、及び自発的運動活動(spontaneous motor activity)によって測定した。H/Iによる神経学的後遺症は、IgG−処理マウスに比べて、TIM−3−抑制抗体を処理したマウスで減少した。H/Iの20時間後に、IgG処理マウスに対するNDSは2.8±0.8(±s.d.)であったことに対し、TIM−3−抑制抗体処理マウスに対するNDSは0.8±0.8であった(表1;P=0.012;Mann−Whitney U−test)。
【0073】
【表1】
【0074】
このような結果は、TIM−3が低酸素環境で神経機能と関連があることを示す。次に、本発明者らは、HIF−1α
+f/+fマウス(n=10)及びLysM−Hif−1α
−/−マウス(n=11)に対して、H/I後24時間になった時、NDSを測定した。HIF−1α
+f/+fマウスでは偏向(leaning)行動と自発的運動機能の不在が観察されたが、LysM−Hif−1α
−/−マウスでは観察されなかった。LysM−Hif−1α
−/−マウスにおける平均NDSは、HIF−1α
+f/+fマウスより非常に低かった(表2;1.2±0.6 vs.2.6±1.1、P=0.0008)
【0075】
【表2】
【0076】
このような結果は、HIF−1α/TIM−3軸(axis)が脳梗塞体積及び病態生理学的炎症反応だけでなく、神経機能とも密接に関連していることを示す。
【実施例11】
【0077】
HIF−1α−欠乏マウスでTIM−3による神経損傷の増加
本発明者らは、TIM−3がH/I後にHIF−1α−欠乏マウスの形質に影響を及ぼし得るか否かを実験した。このため、TIM−3及びGFPを発現するレンチウイルスベクター(LV−TIM3−GFP)を製作した。先ず、レンチウイルスが神経膠細胞を感染できるか否かを調査した後、レンチウイルス−注射マウスのGFP−陽性−CD11b
highCD45
low神経膠細胞でTIM−3の発現が非常に増加したことを観察した。脳固定装置(stereotaxic instrument)を利用してウイルスをLysM−Hif−1α
−/−マウスの右側半球に注射した。対照群マウスには、GFPのみを発現するLV−GFPを注射した。それぞれのマウスの右側半球に4回の頭蓋内注射(intracranial injection)を行った(
図8a)。H/Iは、LysM−Hif−1α
−/−マウスにLV−TIM3−GFPまたはLV−GFPを注射し、5日後に誘導し、梗塞大きさ(infarct size)及び神経学的結果は、24時間後に調査した。
図8b、cに示すように、対照群LV−GFP−注射マウス(n=6)に比べて、LV−TIM3−GFP注射マウス(n=5)でTTC−染色−陰性領域が非常に増加した。また、LV−TIM3−GFPを注射したLysM−Hif−1α
−/−マウスに対する平均NDSは、LV−GFP−注射対照群マウスより高かった(
図8d)(1.1±0.7 vs.2.3±0.8、P=0.046)。このような結果は、低酸素環境でHIF−1/TIM−3軸と脳損傷の関連性を再度示す結果である。
【実施例12】
【0078】
TIM−3に対するshRNAを利用したTIM−3抑制活性の分析
上記で行った実施例における実験は、TIM−3に対する抗体を利用して行い、さらに、本発明者らは、TIM−3を抑制することができるまた他の方法として、TIM−3に対するshRNAの使用可能性を確認した。このため、先ず一次培養膠細胞(
図10A)またはV2小膠細胞(
図10B)にTIM−3に対するshRNAを発現するレンチウイルスまたは対照群レンジウイルスを製品生産会社(Santacruz #sc−72015−V)から提供された説明書に従って細胞内に感染させた。以後、感染された細胞を24時間の間1%または20%の酸素条件で培養し、逆転写重合酵素連鎖反応分析法、免疫細胞化学法及び流細胞分析法を利用してTIM−3の発現を確認し、このような実験は、3回の独立した繰返し実験から結果を得て、meanSDとして示した。
【0079】
分析の結果、
図10に示すように、本発明の実験で使用したTIM−3に対するshRNAは、対照群と比べてみると、効果的にTim−3の発現を要請することが表れ、また、低酸素条件でTIM−3に対するshRNAを処理した群の場合、対照群を処理した群に比べてTIM−3の発現増加が阻害することが表れた。
【0080】
従って、このような結果からみると、TIM−3の発現または活性を阻害し得るTIM−3に対する抗体またはshRNAを含むTIM−3阻害剤は、TIM−3の発現または活性を効果的に阻害することができることが表れ、よって、このような阻害剤を脳損傷疾患の予防または治療のための製剤として使用可能なことが分かった。
【0081】
これまで本発明についてその好ましい実施例を中心として検討した。本発明が属する技術分野で通常の知識を持った者は、本発明が本発明の本質的な特性から逸脱しない範囲で変形された形態で具現可能なことが理解できるであろう。従って、開示された実施例は、限定的な観点ではなく、説明的な観点で考慮されるべきである。本発明の範囲は、前述した説明ではなく、特許請求の範囲に表れており、それと同等な範囲内にある全ての差異点は、本発明に含まれると解釈されなければならない。