(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記絶縁層が、前記成分(A)〜(D)を含む樹脂組成物を外層上に塗布した後、加熱又は減圧下で乾燥し、固化して得られるものである、請求項1〜6のいずれか一項に記載の樹脂シート。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の一態様は、高分子フィルム、金属箔及び金属フィルムからなる群から選択される、いずれか一種である外層と、当該外層上に積層された絶縁層とを含む樹脂シートであって、当該絶縁層が、エポキシ化合物(A)、シアン酸エステル化合物(B)、アミノシラン処理されたシリカ(C)及び酸に可溶な無機充填材(D)を含有する、樹脂シートである。
【0016】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明において「X〜Y」はその端値であるX及びYを含む。また「X又はY」はX、Yのいずれか、或いは双方を意味する。
【0017】
本発明において、成分(A)〜(D)及び必要に応じて後述する他の成分を含む組成物を「樹脂組成物」という。外層の上に設けられた層であって、樹脂組成物を含み室温で流動性を持たない層を「絶縁層」という。後述するように当該絶縁層は溶媒を含む場合がある。また、当該絶縁層は他の材料と接着されて使用されるので硬化可能である必要がある。具体的には、当該絶縁層中の硬化性樹脂は未硬化、または一部が反応しているが硬化可能な状態にある。前記樹脂組成物と溶媒を含み、室温で外層に塗布できる流動性を有する液体を「ワニス」という。以下、各成分について説明する。
【0018】
〔I−1.エポキシ化合物(A)〕
本発明に使用されるエポキシ化合物(A)は、少なくとも1個のエポキシ基を有する有機化合物である。エポキシ化合物(A)の1分子当たりのエポキシ基の数は、1以上である。該エポキシ基の数は2以上であることがより好ましい。
【0019】
エポキシ化合物(A)は、従来公知のエポキシ樹脂を用いることができる。エポキシ化合物(A)は、1種類のみが用いられてもよく、2種類以上が併用されてもよい。
【0020】
エポキシ化合物(A)としては、例えば、ビフェニルアラルキル型エポキシ化合物(エポキシ基含有ビフェニルアラルキル樹脂)、ナフタレン型エポキシ化合物(ナフタレン骨格を有するエポキシ基含有化合物:ナフタレン2官能型エポキシ化合物)、ビスナフタレン型エポキシ化合物(ビスナフタレン骨格を有するエポキシ基含有化合物:ナフタレン4官能型エポキシ化合物)、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド型エポキシ化合物(エポキシ基含有芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂)、アントラキノン型エポキシ化合物(アントラキノン骨格を有するエポキシ基含有化合物)、ナフトールアラルキル型エポキシ化合物(エポキシ基含有ナフトールアラルキル樹脂)、ザイロック型エポキシ化合物(エポキシ基含有ザイロック樹脂)、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、3官能フェノール型エポキシ化合物(3官能フェノール骨格を有するエポキシ基含有化合物)、4官能フェノール型エポキシ化合物(4官能フェノール骨格を有するエポキシ基含有化合物)、ビフェニル型エポキシ樹脂(ビフェニル骨格を有するエポキシ基含有化合物)、アラルキルノボラック型エポキシ樹脂、トリアジン骨格エポキシ化合物(トリアジン骨格含有エポキシ樹脂)脂環式エポキシ樹脂、ポリオール型エポキシ樹脂、グリシジルアミン、グリシジルエステル、ブタジエン等の二重結合含有化合物の二重結合をエポキシ化した化合物、及び、水酸基含有シリコーン樹脂類とエピクロルヒドリンとの反応により得られる化合物、等が挙げられる。
【0021】
なお、上記例示に記すように、本明細書では、ある樹脂又は化合物をエポキシ化して得られる構造を有するエポキシ化合物を、その樹脂又は化合物の名称に「〜型エポキシ化合物」との記載を付して表す場合がある。
【0022】
これらの中でも、エポキシ化合物(A)としては、絶縁層とめっき導体層との密着性及び難燃性等の観点から、ビフェニルアラルキル型エポキシ化合物、ナフタレン型エポキシ化合物、ビスナフタレン型エポキシ化合物、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド型エポキシ化合物(好ましい例としては、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素をホルムアルデヒドと重合して得られた芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂を、フェノール、キシレノール等の水酸基含有芳香族炭化水素で変性し、更に当該水酸基をエポキシ化した化合物や、フェノール、キシレノール等の水酸基含有芳香族炭化水素をホルムアルデヒドと重合して得られた芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂の当該水酸基をエポキシ化した化合物等)、アントラキノン型エポキシ化合物、ナフトールアラルキル型エポキシ化合物、及びザイロック型エポキシ化合物、からなる群から選択される1種又は2種以上であることが好ましい。
【0023】
ビフェニルアラルキル型エポキシ化合物としては、式(1)で表される化合物が好ましい。この好ましいビフェニルアラルキル型エポキシ化合物樹脂の使用により絶縁層の耐燃焼性を向上することができる。
【0024】
【化1】
(式中、R
1は各々独立に、水素原子又はメチル基を表す。n
1は1以上の整数を示す。)
【0025】
本発明におけるエポキシ化合物(A)の含有量は特に限定されないが、耐熱性及び硬化性の観点から、絶縁層の樹脂固形分100質量部に対し、20〜80質量部範囲が好ましく、30〜70質量部の範囲が特に好適である。ここで「絶縁層の樹脂固形分」とは、絶縁層における、溶剤、アミノシラン処理されたシリカ(C)及び酸に可溶な無機充填材(D)を除いた成分である。後述するように、ワニスで絶縁層が製造された場合、絶縁層は溶媒を含みうる。この場合、絶縁層中の樹脂固形分はシリカ(C)、無機充填材(D)および溶媒を除いた成分である。よって、樹脂固形分100質量部とは、絶縁層におけるアミノシラン処理されたシリカ(C)及び酸に可溶な無機充填材(D)、並びに溶媒を含む場合はさらに当該溶媒を除いた成分の合計が100質量部であることをいう。
【0026】
エポキシ化合物(A)としては、様々な構造の既製品が市販されており、それらを適宜入手して用いることができる。また、公知の種々の製法を用いて、エポキシ化合物(A)を製造してもよい。斯かる製法の例としては、所望の骨格を有する水酸基含有化合物を入手又は合成し、当該水酸基を公知の手法により修飾してエポキシ化(エポキシ基導入)する方法等が挙げられる。
【0027】
〔I−2.シアン酸エステル化合物(B)〕
本発明に使用されるシアン酸エステル化合物(B)は、シアナト基(シアン酸エステル基)を有する化合物であれば特に限定されない。具体的には、ナフトールアラルキル型シアン酸エステル化合物(シアナト基含有ナフトールアラルキル樹脂)、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド型シアン酸エステル化合物(シアナト基含有芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂)、ビフェニルアラルキル型シアン酸エステル化合物(シアナト基含有ビフェニルアラルキル樹脂)、及びノボラック型シアン酸エステル化合物(シアナト基含有ノボラック樹脂)、等が挙げられる。
【0028】
これらのシアン酸エステル化合物(B)は、本発明の絶縁層において高耐薬品性、高ガラス転移温度、低熱膨張性等の優れた特性を付与するので、本発明の樹脂組成物の成分として好適に使用することができる。
【0029】
なお、上記例示に記すように、本明細書では、ある樹脂又は化合物をシアナト化(シアン酸エステル化)して得られる構造を有するシアン酸エステル化合物(B)を、その樹脂又は化合物の名称に「〜型シアン酸エステル化合物」との記載を付して表す場合がある。
【0030】
これらの中でも、シアン酸エステル化合物(B)としては、難燃性に優れ、硬化性が高く、かつ硬化物のガラス転移温度が高い本発明の絶縁層を提供するという観点から、ナフトールアラルキル型シアン酸エステル化合物、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド型シアン酸エステル化合物(好ましい例としては、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素をホルムアルデヒドと重合して得られた芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂を、フェノール、キシレノール等の水酸基含有芳香族炭化水素で変性し、更に当該水酸基をシアナト化した化合物や、フェノール、キシレノール等の水酸基含有芳香族炭化水素をホルムアルデヒドと重合して得られた水酸基含有芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂の当該水酸基をシアナト化した化合物等)、及びビフェニルアラルキル型シアン酸エステル化合物からなる群から選択される1種又は2種以上が特に好ましい。
【0031】
ナフトールアラルキル型シアン酸エステル化合物としては、式(2)で表される化合物が好ましい。
【0032】
【化2】
(式中、R
2は各々独立に水素原子又はメチル基を表し、中でも水素原子が好ましい。n
2は1以上の整数を示す。)
【0033】
ノボラック型シアン酸エステル化合物としては、式(3)又は式(4)で表される化合物が好ましい。
【0034】
【化3】
(式中、R
3は水素原子又はメチル基を表し、中でも水素原子が好ましい。n
3は1以上の整数を示す。)
【0035】
【化4】
(式中、R
4は水素原子又はメチル基を表し、中でも水素原子が好ましい。n
4は1以上の整数を示す。)
【0036】
本発明におけるシアン酸エステル化合物(B)の含有量は特に限定されないが、耐熱性及び硬化性の観点から、絶縁層の樹脂固形分100質量部に対し、20〜40質量部の範囲が好ましく、25〜35質量部の範囲が特に好適である。
【0037】
シアン酸エステル化合物(B)としては、様々な構造の既製品が市販されており、それら適宜入手して用いることができる。また、公知の種々の製法を用いて、シアン酸エステル化合物(B)を製造してもよい。斯かる製法の例としては、所望の骨格を有する水酸基含有化合物を入手又は合成し、当該水酸基を公知の手法により修飾してシアナト化する方法等が挙げられる。水酸基をシアナト化する手法としては、例えば、Ian Hamerton,“Chemistry and Technology of Cyanate Ester Resins,” Blackie Academic & Professionalに記載の手法が挙げられる。
【0038】
〔I−3.アミノシラン処理されたシリカ(C)〕
本発明におけるアミノシラン処理されたシリカ(C)は、シリカ粒子にアミノシラン系のシランカップリング剤を処理させて得ることができる。以下、詳述する。
【0039】
〔I−3−1.アミノシラン処理されたシリカ(C)におけるシリカ粒子〕
本発明で使用されるアミノシラン処理されたシリカ(C)におけるシリカ粒子としては、特に制限されないが、例としては、天然シリカ、溶融シリカ、アモルファスシリカ、中空シリカ、などが挙げられる。低熱膨張化の観点から、その中でも溶融シリカが特に好ましい。溶融シリカの具体例としては、電気化学工業(株)製のSFP−130MC等、(株)アドマテックス製のSC2050、SC2500、SC4500等が挙げられる。
【0040】
シリカの平均粒子径は、限定されないが、樹脂シートの製造性向上の観点からは、0.01〜5.0μmが好ましく、0.2〜2.0μmがより好ましい。なお、本明細書においてアミノシラン処理されたシリカ(C)の「平均粒子径」とは、シリカのメジアン径を意味する。ここでメジアン径とは、ある粒子径を基準として粉体の粒度分布を2つに分けた場合に、より粒径が大きい側の粒子の質量と、より粒径が小さい側の質量が、全粉体の夫々50%を占めるような粒子径を意味する。アミノシラン処理されたシリカ(C)の平均粒子径(メジアン径)は、湿式レーザー回折・散乱法により測定される。
【0041】
〔I−3−2.アミノシラン処理されたシリカ(C)におけるシランカップリング剤〕
上記アミノシラン系のシランカップリング剤としては、例えばγ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、フェニルアミノシラン等、が挙げられる。特に吸湿耐熱性向上の観点から、フェニルアミノシラン(KBM−573、信越化学工業(株)製)が特に好ましい。
【0042】
その含有量は限定されないが、吸湿耐熱性向上の観点からは、シリカに対して、シランカップリング剤の比率を0.05〜5質量%とすることが好ましく、0.1〜3質量%とすることがより好ましい。なお、2種以上のシランカップリング剤を併用する場合には、これらの合計量が上記比率を満たすことが好ましい。これらのアミノシラン処理されたシリカ(C)は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0043】
上記のアミノシラン処理されたシリカ(C)の製造方法としては、例えば、以下の方法が挙げられる。
【0044】
第一の方法としては、乾式法が挙げられる。乾式法としては、例えば、前記任意のシリカ粒子に前記任意のシランカップリング剤を直接付着させる方法等が挙げられる。ミキサーにシリカ粒子を仕込んで、攪拌しながらシランカップリング剤のアルコール溶液又は水溶液を滴下又は噴霧した後、さらに攪拌し、ふるいにより分級する。その後、加熱によりシランカップリング剤とシリカ粒子とを脱水縮合ことにより、アミノシラン処理されたシリカ(C)を得ることができる。
【0045】
第二の方法としては、湿式法が挙げられる。湿式法では、未処理のスラリーシリカを攪拌しながら任意のシランカップリング剤を添加し、攪拌した後、濾過、乾燥及びふるいによる分級を行う。次に、加熱によりシランカップリング剤とシリカ粒子とを脱水縮合させることにより、アミノシラン処理されたシリカ(C)を得ることができる。
【0046】
第三の方法としては、未処理のスラリーシリカを攪拌しながら、任意のシランカップリング剤を添加した後、加熱還流処理により脱水縮合を進行させることにより、アミノシラン処理されたシリカ(C)を得る方法が挙げられる。
【0047】
第四の方法としては、絶縁層を製造するためのワニスを調製する際に、他の成分と共にシリカとアミノシラン系のシランカップリング剤を添加し、絶縁層を形成する工程においてアミノシラン処理されたシリカ(C)を生成する方法が挙げられる。
【0048】
本発明の樹脂組成物に使用されるアミノシラン処理されたシリカ(C)としては、上記の製造方法に加え、市販品を用いることもできる。市販品としては、フェニルアミノシラン(KBM−573、信越化学工業(株)製)が処理されたスラリーシリカ(SC2050−MTX、アドマテックス(株)製)が挙げられる。
【0049】
これらの中でも、絶縁層の熱膨張率を低減しながら高いめっきピール強度を得る観点から、第一〜第三の方法が好ましい。これらの方法は、予めシリカをアミノシラン処理するため、シリカ表面のアミノ基濃度が高くなり、絶縁層のマトリックスとの接着性が良好になるためと推察される。しかし、絶縁層は通常、硬化されているので前記濃度を定量することは現実的ではない。
【0050】
本発明におけるアミノシラン処理されたシリカ(C)の含有量は、特に限定されないが、絶縁層の熱膨張率を低減しながら高いめっきピール強度を得る観点からは、絶縁層の樹脂固形分100質量部に対し、50〜350質量部とすることが好ましく、70〜300質量部とすることが好ましい。なお、2種類以上のアミノシラン処理されたシリカ(C)を併用する場合には、これらの合計量が上記比率を満たすことが好ましい。
【0051】
〔I−4.酸に可溶な無機充填材(D)〕
本発明に使用される成分(D)としては、酸に可溶な無機充填材であれば特に限定されないが、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウムが挙げられる。前記酸は、塩酸または硫酸であることが好ましい。これらは絶縁層表面のデスミア処理において中和液に溶出し、均一な粗化面を形成してめっきピール強度を向上させる効果がある。具体的には、水酸化マグネシウムとしてタテホ化学工業(株)製のエコーマグZ−10、エコーマグPZ−1、神島化学工業(株)製のマグシーズN、マグシーズS、マグシーズEP、マグシーズEP2−A、堺化学工業(株)製のMGZ−1、MGZ−3、MGZ−6R、協和化学工業(株)製のキスマ5、キスマ5A、キスマ5P等が挙げられる。酸化マグネシウムとしてタテホ化学工業(株)製のFNM−G、堺化学工業(株)製のSMO、SMO−0.1、SMO−S−0.5等が挙げられる。これらの酸に可溶な無機充填材(D)は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0052】
前記酸に可溶な無機充填材(D)の平均粒子径としては、デスミア処理後に均一な表面粗度を得る観点から0.1〜2.0μmであることが好ましい。平均粒子径とは前述のとおりメジアン径である。
【0053】
前記酸に可溶な無機充填材(D)の含有量は、デスミア処理後に均一な表面粗度を得る観点、高いめっきピール強度を得る観点からは、絶縁層の樹脂固形分100質量部に対し、20〜150質量部とすることが好ましく、30〜130質量部とすることが好ましい。
【0054】
また、前記酸に可溶な無機充填材(D)は、吸湿耐熱性、耐薬品性の観点から表面処理されたものであることが好ましい。表面処理剤としては、シランカップリング剤が好ましい。シランカップリング剤の具体例としては、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノシラン系、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランなどのエポキシシラン系、γ−メタアクリロキシプロピルトリメトキシシランなどのビニルシラン系、N−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩などのカチオニックシラン系、フェニルシラン系などが挙げられ、1種もしくは2種以上を適宜組み合わせて使用することも可能である。具体的には、エポキシシラン(KBM−403、信越化学工業(株)製)で処理したものが好ましい。
【0055】
シランカップリング剤を使用する場合、その含有量は限定されないが、吸湿耐熱性向上の観点からは、成分(D)に対して、シランカップリング剤の比率を0.05〜5質量%とすることが好ましく、0.1〜3質量%とすることがより好ましい。なお、2種以上のシランカップリング剤を併用する場合には、これらの合計量が上記比率を満たすことが好ましい。
【0056】
〔I−5.マレイミド化合物(E)〕
本発明においては、プリント配線板の絶縁層の吸湿耐熱性を向上させる場合に、マレイミド化合物(E)を使用することが好ましい。使用されるマレイミド化合物(E)としてはマレイミド基を有する化合物であれば、特に限定されず、具体的には、ビス(4−マレイミドフェニル)メタン、2,2−ビス{4−(4−マレイミドフェノキシ)−フェニル}プロパン、ビス(3,5−ジメチル−4−マレイミドフェニル)メタン、ビス(3−エチル−5−メチル−4−マレイミドフェニル)メタン、ビス(3,5−ジエチル−4−マレイミドフェニル)メタン、トリス(4−マレイミドフェニル)メタン、式(5)で表されるマレイミド化合物、式(6)で表される長鎖アルキルビスマレイミドなどが挙げられる。
【0057】
この中でも吸湿耐熱性、耐燃性の観点から式(5)で表されるマレイミド化合物が好ましい。該化合物は市販品を用いることができ、そのような例としては、ケイ・アイ化成(株)製、BMI−2300等がある。
【0058】
【化5】
(式中、R
5は各々独立に、水素原子又はメチル基を表す。n
5は平均値として1〜10の範囲である。)
【0059】
また、高いめっきピール強度を得る観点からは、式(6)で表される長鎖アルキルビスマレイミドを用いることが好ましい。該化合物は市販品を用いることができ、そのようなものとしては、ケイ・アイ化成(株)製BMI−1000P等がある。
【0060】
【化6】
(式中n
6は、1以上30以下の整数を示す。)
【0061】
なお、これらマレイミド化合物のプレポリマー、もしくはマレイミド化合物とアミン化合物のプレポリマーなどの形で配合することもでき、1種もしくは2種以上を適宜混合して使用することも可能である。
【0062】
本発明におけるマレイミド化合物(E)の含有量は、エポキシ化合物(A)、シアン酸エステル化合物(B)及びマレイミド化合物(E)成分の合計100質量部に対し、5〜50質量部が好ましく、より好ましくは、5〜20質量部である。マレイミド化合物の配合量が5〜50質量部の範囲であれば、良好な吸湿耐熱性を得ることができる。
【0063】
〔I−6.その他の成分〕
本発明においては、エポキシ化合物(A)、シアン酸エステル化合物(B)、アミノシラン処理されたシリカ(C)及び酸に可溶な無機充填材(D)及びマレイミド化合物(E)の他に、以下に例示するようなその他の1種以上の成分を含有していてもよい。
【0064】
本発明の絶縁層は、樹脂シートのハンドリング性向上の観点から、ゴムを添加しても良い。ゴムとしては、一般に使用されているゴムであれば、限定されない。具体例としては、天然ゴム(NR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、ブチルゴム(IIR)、エチレン−プロピレンゴム(EPM)、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、ウレタンゴム(U)、シリコーンゴム、フッ素ゴム(FKM)が挙げられる。これらのゴムは、1種を単独で使用してもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。特に、均一性の観点から、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)が好ましい。
【0065】
本発明の樹脂シートは、樹脂シート製造性向上等の観点から湿潤分散剤を含有してもよい。湿潤分散剤としては、一般に塗料等に使用されている湿潤分散剤であれば、限定されない。具体例としては、ビッグケミー・ジャパン(株)製のDisperbyk−110、同−111、同−180、同−161、BYK−W996、同−W9010、同−W903等が挙げられる。これらの湿潤分散剤は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0066】
湿潤分散剤を使用する場合、その含有量は限定されないが、樹脂シート製造性向上の観点からは、アミノシラン処理されたシリカ(C)及び酸に可溶な無機充填材(D)の合計量に対して、湿潤分散剤の比率を0.1〜5質量%とすることが好ましく、0.5〜3質量%とすることがより好ましい。なお、2種以上の湿潤分散剤を併用する場合には、これらの合計量が上記比率を満たすことが好ましい。
【0067】
本発明の絶縁層は、硬化速度の調整等の目的で、硬化促進剤を含有してもよい。硬化促進剤としては、エポキシ化合物やシアン酸エステル化合物等の硬化促進剤として公知であり、一般に使用されるものであれば、特に限定されない。具体例としては、銅、亜鉛、コバルト、ニッケル、マンガン等の金属を含む有機金属塩類(例えばオクチル酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、オクチル酸ニッケル、オクチル酸マンガン等)、イミダゾール類及びその誘導体(例えば2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、2,4,5−トリフェニルイミダゾール等)、第3級アミン(例えばトリエチルアミン、トリブチルアミン等)等が挙げられる。これらの硬化促進剤は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0068】
硬化促進剤を使用する場合、その含有量は限定されないが、高いガラス転移温度を得る観点からは、絶縁層の樹脂固形分100質量部に対し、硬化促進剤の比率を0.01〜5質量部とすることが好ましく、0.05〜4質量部とすることがより好ましい。なお、2種以上の硬化促進剤を併用する場合には、これらの合計量が上記比率を満たすことが好ましい。
【0069】
本発明の絶縁層は、所期の特性が損なわれない範囲において、その他の種々の高分子化合物又は難燃性化合物等を含有してもよい。高分子化合物及び難燃性化合物としては、一般に使用されているものであれば限定されない。高分子化合物の例としては、各種の熱硬化性樹脂及び熱可塑性樹脂並びにそのオリゴマー、エラストマー類等が挙げられる。難燃性化合物の例としては、リン含有化合物(例えばリン酸エステル、リン酸メラミン、リン含有エポキシ樹脂等)、窒素含有化合物(例えばメラミン、ベンゾグアナミン等)、オキサジン環含有化合物、シリコーン系化合物等が挙げられる。これらの高分子化合物又は難燃性化合物は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0070】
また、本発明の絶縁層は、所期の特性が損なわれない範囲において、種々の目的により、各種の添加剤を含有していてもよい。添加剤の例としては、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光重合開始剤、蛍光増白剤、光増感剤、染料、顔料、増粘剤、滑剤、消泡剤、分散剤、レベリング剤、光沢剤等が挙げられる。これらの添加剤は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0071】
〔I−7.ワニス〕
前記成分(A)〜(D)及び必要に応じて前記のその他の成分を溶媒に溶解又は分散させてワニスとすることができる。斯かるワニスは、後述する本発明の樹脂シートを作製する際のワニスとして、好適に使用することができる。溶媒としては、上述の成分を各々好適に溶解又は分散させることができ、且つ、本発明の所期の効果を損なわないものであれば限定されない。具体例としては、アルコール類(メタノール、エタノール、プロパノール等)、ケトン類(例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等)、アミド類(例えばジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド等)、芳香族炭化水素類(例えばトルエン、キシレン等)等が挙げられる。これらの有機溶剤は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0072】
〔II−1.樹脂シート〕
本発明の樹脂シートは、外層上に、上述した本発明の絶縁層を有する。当該樹脂シートを用いてプリント配線板を製造する場合等は必要に応じて、外層を樹脂シートから剥離又はエッチングしてもよい。
【0073】
上記外層としては、特に限定されないが、高分子フィルム、金属箔又は金属フィルムを使用することができる。高分子フィルムの具体例としては、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリブテン、ポリブタジエン、ポリウレタン、エチレン‐酸化ビニル共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート及びポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン‐プロピレン共重合体、ポリメチルペンテン、ポリイミド及びポリアミドからなる群より選ばれる少なくとも1種以上の樹脂を含有するフィルム、並びにこれらのフィルムの表面に離型剤を塗布した離型フィルムが挙げられ、これらの中でも、特にポリエステル、ポリイミド、ポリアミドが好ましく、その中でもポリエステルの一種である、ポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。
【0074】
また、高分子フィルムの厚さは特に限定されず、例えば、0.002〜0.1mmであってもよい。金属箔又は金属フィルムの具体例としては、銅やアルミニウム等の金属からなる箔又はフィルムが挙げられ、中でも銅箔又は銅フィルムが好ましく、特に電解銅箔、圧延銅箔、銅合金フィルム等が好適に使用できる。金属箔又は金属フィルムには、例えばニッケル処理やコバルト処理等、公知の表面処理が施されていてもよい。金属箔又は金属フィルムの厚さは、使用用途によって適宜調整することができるが、例えば5〜70μmの範囲が好適である。
【0075】
上述の外層上に、本発明の絶縁層を形成して本発明の樹脂シートを製造する方法は、限定されない。例としては、前述のワニスを、上述の外層の表面に塗布し、加熱又は減圧下で乾燥し、溶媒を除去してワニスを固化させる手法等が挙げられる。乾燥条件は特に限定されないが、このようにして形成された絶縁層の総量に対する溶媒の含有比率が通常10質量部以下、好ましくは5質量部以下となるように乾燥させる。斯かる乾燥を達成する条件は、ワニス中の有機溶媒量によっても異なるが、例えば30〜60質量部の有機溶剤を含むワニスの場合、50〜160℃の加熱条件下で3〜10分程度乾燥させればよい。本発明の樹脂シートにおける絶縁層の厚さは限定されないが、乾燥時に軽揮発分をより良好に除去する観点、及び樹脂シートとしての機能をより有効かつ確実に奏する観点から、0.1〜500μmの範囲が好適である。樹脂組成物が溶媒を含まずとも流動性を有する場合は、当該樹脂組成物をワニスのように使用して絶縁層を形成してもよい。
【0076】
なお、ワニスまたは流動性を有する樹脂組成物から形成された絶縁層と、これとは異なる方法(樹脂を溶融してプレスする等)で形成された方法とを比較すると、前者の方が層の均一性や外層との密着性に優れる。
【0077】
本発明の樹脂シートは、プリント配線板のビルドアップ材料として使用可能である。本発明の樹脂シートを用いて形成されたプリント配線板においては、本発明の絶縁層がプリント配線板における絶縁層を構成することになる。プリント配線板における絶縁層は通常は硬化されている。プリント配線板については以下に詳述する。
【0078】
〔II−2.プリント配線板〕
本発明のプリント配線板は、コア基材に対し、本発明の樹脂シートをビルドアップ材として用いることにより得ることができる。コア基材とはビルドアップ工法において芯となる基板であり、樹脂絶縁層が完全硬化した金属箔張積層板である。コア基材の表面には通常当業界で用いられる金属箔張積層板の金属箔、又は金属箔を剥離した後にめっきするなどして得られる導体層により導体回路を形成する。
【0079】
コア基材とは、主として、ガラスエポキシ基板、金属基板、ポリエステル基板、ポリイミド基板、BTレジン基板、熱硬化型ポリフェニレンエーテル基板等の基板の片面又は両面にパターン加工された導体層(回路)が形成されたものをいう。また、多層プリント配線板を製造する際に、さらに絶縁層又は導体層が形成されるべき中間製造物の内層回路基板も本発明でいう回路基板に含まれる。なお、導体層(回路)表面は黒化処理等により予め粗化処理が施されていることが絶縁層の回路基板への密着性の観点から好ましい。
【0080】
本発明の樹脂シートの絶縁層が硬化されて、プリント配線板における絶縁層を構成することになる。
【0081】
具体的に、本発明の樹脂シートをビルドアップ材料として用いる場合は、常法により、当該樹脂シートの絶縁層を表面処理し、絶縁層表面にめっきにより配線パターン(導体層)を形成することにより、本発明のプリント配線板が得られる。
【0082】
必要に応じてその他の各種の工程(例えば、ビアホール、スルーホール等を形成する穴加工処理等)を加えてもよい。
【0083】
以下、本発明のプリント配線板を製造するための各工程について説明する。
【0084】
1)表面処理
絶縁層に対する表面処理は、絶縁層とめっき導体層との密着性の向上や、スミア除去等の観点から実施される。表面処理としては、デスミア処理、シランカップリング処理等がある。デスミア処理は膨潤化、表面粗化及びスミア溶解、及び中和処理を含むことが好ましい。粗化処理は膨潤剤及びアルカリ性酸化剤によって実施され、中和処理は酸性の還元剤により実施されることが好ましい。本発明では、アミノシラン系カップリング剤で処理したシリカを用いることで、崩落痕を小さくすることができ、低表面粗度を達成できる。
【0085】
粗化処理は、孔あけ工程により生じたスミアの除去も兼ねることがより好ましい。この場合、絶縁層の硬化度の違いにより、粗化状態が異なるため、後述の積層成形の条件は、その後の粗化処理条件やめっき条件との組み合わせで最適な条件を選ぶことが好ましい。
【0086】
好ましい態様において粗化処理は、まず膨潤剤を用いて表面絶縁層を膨潤させる。膨潤剤としては、表面絶縁層の濡れ性が向上し、次の表面粗化及びスミア溶解処理において酸化分解が促進される程度にまで表面絶縁層を膨潤させることができるものであれば、制限されない。例としては、アルカリ溶液、界面活性剤溶液等が挙げられる。
【0087】
次いで膨潤した表面を酸化剤で処理して、表面を酸化分解し粗化する。このとき当該処理で生じたスミアも除去する。酸化剤としては、例えばアルカリ性の過マンガン酸塩溶液等が挙げられ、好適な具体例としては、過マンガン酸カリウム水溶液、過マンガン酸ナトリウム水溶液等が挙げられる。斯かる酸化剤処理はウェットデスミアと呼ばれるが、当該ウェットデスミアに加えて、プラズマ処理やUV処理によるドライデスミア、バフ等による機械研磨、サンドブラスト等の他の公知の粗化処理を、適宜組み合わせて実施してもよい。
【0088】
さらに中和処理によって、前処理で使用した酸化剤を還元剤で中和する。還元剤としては、アミン系還元剤が挙げられ、好適な具体例としては、ヒドロキシルアミン硫酸塩水溶液、エチレンジアミン四酢酸水溶液、ニトリロ三酢酸水溶液等の酸性水溶液が挙げられる。
【0089】
微細配線パターンを形成する上で、粗化処理後の絶縁層の表面凹凸は小さい方が好ましい。具体的には、Rz値で4.0μm以下が好ましく、より好ましくは2.0μm以下である。粗化処理後の表面凹凸は、絶縁層の硬化度や粗化処理の条件等に応じて決まるため、所望の表面凹凸を得るための最適条件を選ぶことが好ましい。特に、本発明の絶縁層は、表面粗度が低くても、めっき導体層との密着性を確保することができ、極めて好適である。
【0090】
2)導体層の形成
めっきにより配線パターン(導体層)を形成する方法としては、セミアディティブ法、フルアディティブ法、サブトラクティブ法等が挙げられる。中でも、微細配線パターンを形成する観点からは、セミアディティブ法が好ましい。
【0091】
セミアディティブ法でパターン形成する手法の例としては、絶縁層表面に無電解めっき等により薄い導体層を形成した後、めっきレジストを用いて選択的に電解めっきを施し(パターンめっき)、その後めっきレジストを剥離し、全体を適量エッチングして配線パターン形成する手法が挙げられる。
【0092】
フルアディティブ法でパターン形成する手法の例としては、絶縁層表面にめっきレジストを用いて予めパターン形成を行い、選択的に無電解めっき等を付着させることにより配線パターンを形成する手法が挙げられる。
【0093】
サブトラクティブ法でパターン形成する手法の例としては、絶縁層表面にめっきにより導体層を形成した後、エッチングレジストを用いて選択的に導体層を除去することにより、配線パターンを形成する手法が挙げられる。あるいは、樹脂シートの外層が金属箔又は金属フィルムである場合、これらをエッチングして配線パターンを形成することもできる。
【0094】
めっきにより配線パターンを形成する際に、絶縁層と導体層との密着強度を向上させる観点から、めっきの後に乾燥を行うことが好ましい。セミアディティブ法によるパターン形成では、無電解めっきと電解めっきとを組み合わせて行うが、その際、無電解めっきの後と、電解めっきの後に、それぞれ乾燥を行うことが好ましい。無電解めっき後の乾燥は、例えば80〜180℃で10〜120分に亘って行うことが好ましく、電解めっき後の乾燥は、例えば130〜220℃で10〜120分に亘って行うことが好ましい。無電解めっき層は電界めっき層に比べて層の均一性に優れるので、両者の識別は可能である。
【0095】
3)その他
プリント配線板を製造するために、本発明の樹脂シートには穴加工処理がなされてもよい。当該処理はビアホール、スルーホール等の形成のために実施される。穴加工処理は、NCドリル、炭酸ガスレーザー、UVレーザー、YAGレーザー、プラズマ等の公知の方法のうち何れか1種を用い、或いは必要により2種以上を組み合わせて行う。
【0096】
本発明のプリント配線板は、多層プリント配線板とすることも可能である。例えば、めっき処理を実施した本発明の積層板を形成した後、これに内層回路を形成し、得られた回路に黒化処理を実施して、内層回路板とする。こうして得られた内層回路板の片面又は両面に、本発明の樹脂シートを配置し、更に金属箔(例えば銅やアルミニウム等)又は離型フィルム(ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、エチレンテトラフルオロエチレン共重合体フィルム、ポリエステルフィルム、ポリイミドフィルム、ポリアミドフィルム等の表面に離型剤を塗布したフィルム)をその外側に配置する、という操作を繰り返し、積層成形することにより、多層プリント配線板が製造される。
【0097】
積層成形は、通常のプリント配線板用積層板の積層成形に一般に使用される手法、例えば、多段プレス、多段真空プレス、ラミネーター、真空ラミネーター、オートクレーブ成形機等を使用し、温度は例えば100〜300℃、圧力は例えば0.1〜100kgf/cm
2(約9.8kPa〜約38MPa)、加熱時間は例えば30秒〜5時間の範囲で適宜選択して行う。また、必要に応じて、例えば150〜300℃の温度で後硬化を行い、硬化度を調整してもいい。
【実施例】
【0098】
以下に合成例、実施例及び比較例を示し、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0099】
〔シアン酸エステル化合物の製造〕
合成例1:α−ナフトールアラルキル型シアン酸エステル化合物(7)の合成
【0100】
【化7】
(式中、n
7は平均値として3から4までの範囲である。)
【0101】
温度計、攪拌器、滴下漏斗及び還流冷却器を取りつけた反応器を予め食塩水により0〜5℃に冷却しておき、そこへ塩化シアン7.47g(0.122mol)、35%塩酸9.75g(0.0935mol)、水76ml、及び塩化メチレン44mlを仕込んだ。
【0102】
この反応器内の温度を−5〜+5℃、pHを1以下に保ちながら、撹拌下、下記式(8)で表されるα−ナフトールアラルキル樹脂(SN485、OH基当量:214g/eq.軟化点:86℃、新日鐵化学(株)製)20g(0.0935mol)、及びトリエチルアミン14.16g(0.14mol)を塩化メチレン92mlに溶解した溶液を滴下漏斗により1時間かけて滴下し、滴下終了後、更にトリエチルアミン4.72g(0.047mol)を15分間かけて滴下した。
【0103】
【化8】
(式中、n
8は平均値として3から4までの範囲である。)
【0104】
滴下終了後、同温度で15分間撹拌後、反応液を分液し、有機相を分取した。得られた有機相を水100mlで2回洗浄した後、エバポレーターにより減圧下で塩化メチレンを留去し、最終的に80℃で1時間濃縮乾固させて、上記化合物7で表されるα−ナフトールアラルキル樹脂のシアン酸エステル化物(α−ナフトールアラルキル型シアン酸エステル化合物)23.5gを得た。
【0105】
〔樹脂組成物及び樹脂シートの作製〕
実施例1
エポキシ化合物(A)として、ビフェニルアラルキル型エポキシ化合物(NC−3000−FH、エポキシ当量:320g/eq.、日本化薬(株)製)のMEK溶液(不揮発分70質量%)85.7質量部(不揮発分換算で60質量部)、シアン酸エステル化合物(B)として、合成例1により得られたα−ナフトールアラルキル型シアン酸エステル化合物(シアネート当量:261g/eq.)のメチルエチルケトン(以下「MEK」と略す場合がある。)溶液(不揮発分50質量%)60質量部(不揮発分換算で30質量部)、アミノシラン処理されたシリカ(C)として、フェニルアミノシラン処理シリカMEKスラリー(SC2050−MTX、アドマテックス(株)製、平均粒子径0.5μm、不揮発性成分70質量%)107.1質量部(不揮発分換算で75質量部)、酸に可溶な無機充填材(D)として、酸化マグネシウムMEKスラリー(SMO−0.4 、堺化学工業(株)製、平均粒子径0.4μm、不揮発性成分70質量%)21.4質量部(不揮発分換算で15質量部)、マレイミド化合物(E)として、下記式(5)で表されるノボラック型マレイミド化合物(BMI−2300、ケイ・アイ化成(株)製)5.0質量部、ビスマレイミド化合物(BMI−1000P、ケイ・アイ化成(株)製)5.0質量部、硬化促進剤として2,4,5−トリフェニルイミダゾール(和光純薬製)のDMAc溶液(不揮発分20質量%)15質量部(不揮発分換算で3質量部)及びオクチル酸亜鉛のMEK溶液(不揮発分10質量%)0.8質量部(不揮発分換算で0.08質量部)をMEK溶液に添加した。添加後、高速攪拌装置を用いて30分間攪拌して、エポキシ化合物(A)、シアン酸エステル化合物(B)、アミノシラン処理されたシリカ(C)、酸に可溶な無機充填材(D)、マレイミド化合物(E)を含むワニスを得た。このワニスを、表面に離型剤をコートした厚さ38μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(TR1−38、ユニチカ(株)製)に塗布し、100℃で3分間加熱乾燥して絶縁層を形成し、ポリエチレンテレフタレートフィルムを外層とした樹脂シートを得た。
【0106】
【化9】
(式中、R
5は各々独立に、水素原子又はメチル基を表す。n
5は平均値として1〜10の範囲である。)
【0107】
〔内層回路基板の作製〕
内層回路を形成したガラス布基材BT樹脂両面銅張積層板(銅箔厚さ18μm、基板厚み0.2mm、三菱ガス化学(株)製CCL−HL832NX type A)の両面をメック(株)製CZ8100にて1μmエッチングして銅表面の粗化処理をおこない内層回路基板を得た。
【0108】
〔プリント配線板の作製〕
得られた樹脂シートの絶縁層面を内層回路基板上に配置し、真空ラミネーター(ニチゴー・モートン製)を用いて、30秒間真空引き(5.0MPa以下)を行った後、圧力10kgf/cm
2、温度100℃で30秒間の積層成形を行った。さらに圧力10kgf/cm
2、温度100℃で60秒間の積層成形を行うことでプリント配線板を得た。得られたプリント配線板を180℃で60分間乾燥することで、硬化を十分に進行させプリント配線板を得た。
【0109】
実施例2
酸化マグネシウムMEKスラリー(SMO−0.4、不揮発分70質量%)の使用量を42.9質量部(不揮発分換算で30.0質量部)とした以外は、実施例1と同様にしてワニス(樹脂組成物の溶液)を調整し、樹脂シート及びそれを用いたプリント配線板を得た。
【0110】
実施例3
酸化マグネシウムMEKスラリー(SMO−0.4、不揮発分70質量%)の使用量を85.7質量部(不揮発分換算で60.0質量部)とした以外は、実施例1と同様にしてワニス(樹脂組成物の溶液)を調整し、樹脂シート及びそれを用いたプリント配線板を得た。
【0111】
実施例4
酸化マグネシウムMEKスラリー(SMO−0.4、不揮発分70質量%)の使用量を178.6質量部(不揮発分換算で125.0質量部)とした以外は、実施例1と同様にしてワニス(樹脂組成物の溶液)を調整し、樹脂シート及びそれを用いたプリント配線板を得た。
【0112】
実施例5
酸化マグネシウムMEKスラリー(SMO−0.4、不揮発分70質量%)の使用量を85.7質量部(不揮発分換算で60.0質量部)、フェニルアミノシラン処理シリカMEKスラリー(SC2050−MTX、不揮発性成分70質量%)の使用量を285.7質量部(不揮発分換算で200質量部)とした以外は、実施例1と同様にしてワニス(樹脂組成物の溶液)を調整し、樹脂シート及びそれを用いたプリント配線板を得た。
【0113】
実施例6
酸化マグネシウムMEKスラリー(SMO−0.4、不揮発分70質量%)の使用量を85.7質量部(不揮発分換算で60.0質量部)、フェニルアミノシラン処理シリカMEKスラリー(SC2050−MTX、不揮発性成分70質量%)の使用量を428.6質量部(不揮発分換算で300質量部)とした以外は、実施例1と同様にしてワニス(樹脂組成物の溶液)を調整し、樹脂シート及びそれを用いたプリント配線板を得た。
【0114】
実施例7
アミノシラン処理シリカ(SC2050−MTX、不揮発分70質量部)を無処理シリカMEKスラリー(SO−C2、不揮発分70質量部)に全置換し、ワニス中にフェニルアミノシラン(KBM−573、信越化学製)を後添加した以外は、実施例1と同様にしてワニス(樹脂組成物の溶液)を調整し、樹脂シート及びそれを用いたプリント配線板を得た。
【0115】
比較例1
酸化マグネシウムMEKスラリー(SMO−0.4、不揮発分70質量%)の使用量を0質量部とした以外は、実施例1と同様にしてワニス(樹脂組成物の溶液)を調整し、樹脂シート及びそれを用いたプリント配線板を得た。
【0116】
比較例2
酸化マグネシウムMEKスラリー(SMO−0.4、不揮発分70質量%)の使用量を178.6質量部(不揮発分換算で125.0質量部)、フェニルアミノシラン処理シリカMEKスラリー(SC2050−MTX、不揮発性成分70質量%)の使用量を0質量部とした以外は、実施例1と同様にしてワニス(樹脂組成物の溶液)を調整し、樹脂シート及びそれを用いたプリント配線板を得た。
【0117】
比較例3
アミノシラン処理シリカMEKスラリー(SC2050−MTX、不揮発分70質量%)をエポキシシラン処理シリカMEKスラリー(SC2050−MB、不揮発分70質量%)に全置換した以外は、実施例1と同様にしてワニス(樹脂組成物の溶液)を調整し、樹脂シート及びそれを用いたプリント配線板を得た。
【0118】
比較例4
アミノシラン処理シリカMEKスラリー(SC2050−MTX、不揮発分70質量部)をビニルシラン処理シリカMEKスラリー(SC2050−MNU、不揮発分70質量部)に全置換した以外は、実施例1と同様にしてワニス(樹脂組成物の溶液)を調整し、樹脂シート及びそれを用いたプリント配線板を得た。
【0119】
〔プリント配線板の評価〕
プリント配線板の湿式粗化処理と導体層めっき:
実施例1〜6及び比較例1〜4で得られたプリント配線板外層を剥離した。露出した絶縁層に対し、上村工業製の無電解銅めっきプロセス(使用薬液名:MCD−PL、MDP−2、MAT−SP、MAB−4−C、MEL−3−APEA ver.2)にて、約0.8μmの無電解銅めっきを施し、130℃で1時間の乾燥を行った。続いて、電解銅めっきをめっき銅の厚みが18μmになるように施し、180℃で1時間の乾燥を行った。こうして、絶縁層上に厚さ18μmの導体層(めっき銅)が形成されたサンプルを作製し、以下の評価に供した。
(1)めっき銅接着力
上記手順により作製されたサンプルを用い、めっき銅の接着力をJIS C6481に準じて3回測定し、平均値を求めた。電解銅めっき後の乾燥で膨れが発生したサンプルに関してはめっき後膨れが「有」、膨れが発生しなかったサンプルに関してはめっき後膨れが「無」とした。めっき膨れ「有」のサンプルに関しては、膨れていない部分を用いて評価を行った。結果を表1に示した。
(2)表面粗さ
上記手順により作製されたサンプルの表層めっき銅をエッチング後、レーザー顕微鏡(キーエンス製VK−9500)を用いて、3000倍の画像により、絶縁層表面のRz(10点平均粗さ)およびRa(算術平均粗さ)を求めた。結果を表1に示した。
(3)熱膨張率(CTE)
180℃、2時間硬化させた絶縁層厚さ0.05mmの樹脂シートを用い、熱機械分析装置(TAインスツルメント製Q400)で25℃から250℃まで毎分10℃で昇温し、25℃から150℃における熱膨張率を測定した。結果を表1に示した。
【0120】
【表1】