(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
長尺状のプラズマ生成容器及び前記プラズマ生成容器における長手方向と直交する方向に対向する側壁に設けられた一対のローラを備えるイオン源が載置されるイオン源支持台であって、
前記イオン源が吊り下げられた状態において、前記一対のローラが転動可能に載置される一対のレールと、
前記一対のレールに前記一対のローラが載置された状態において、前記イオン源を前記レールの一端側から他端側に向かって引き込む引き込み機構とを具備するイオン源支持台。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に係るイオン源支持台の一実施形態について説明する。
【0016】
本実施形態のイオン源支持台Xは、イオン照射装置100を構成するイオン源101を支持するものであり、イオン源101を所定の位置へ搬送するために用いられる。
【0017】
まず、イオン照射装置100について
図1を参照しながら説明する。
イオン照射装置100は、例えば半導体製造に用いられるものであり、質量分離器103や分離スリット104などを備えた装置本体102と、装置本体102に対して着脱可能なイオン源101とを備え、イオン源101から引き出されたイオンビームをホルダ105に保持されているウエハWに照射するものである。
【0018】
イオン源101は、リン、ヒ素、ボロン等の所定のイオンを含むイオンビームを発生させて装置本体102へ射出するものであり、具体的には
図2に示すように、内部でプラズマが生成される長尺状のプラズマ生成容器10と、プラズマ生成容器10に形成された引出し口Oからイオンビームを引き出す複数の電極からなる引出電極系(不図示)と、プラズマ生成容器10に連結されるとともに引出電極系を保持する電極保持部材20とを備えている。
【0019】
プラズマ生成容器10は、熱電子を放出するフィラメント(不図示)が挿入されており、このフィラメントから放出された電子によってプラズマ生成容器10内に導入されたイオン源ガスが電離してプラズマが生成されるように構成されている。
本実施形態のプラズマ生成容器10は、
図2に示すように、例えば直方体形状をなすものであり、装置本体102にイオン源101が取り付けられた状態において縦長形状となる。
プラズマ生成容器10の一側面11a(以下、前面11aという)には、上述した引出し口Oが長尺状に形成されており、この前面11aには、複数のボルト孔13を有したフランジ部12が設けられている。
【0020】
引出電極系(不図示)は、プラズマ生成容器10内で生成されたプラズマから電界の作用でイオンビームを加速させて引き出すものであり、例えば加速電極、引出電極、抑制電極、接地電極などから構成されている。ここでの引出電極系は、上述した引出し口Oの近傍に配置されており、引出し口Oからリボン状のイオンビームを引き出す。
【0021】
電極保持部材20は、上述した複数の電極が内部に設けられた筒状体であり、一端面21aが上述したプラズマ生成容器10の前面11aに取り付けられるとともに、他端面21bが装置本体102の取付面(不図示)に取り付けられる。なお、装置本体102の取付面は、質量分離器103側の面であり、例えばイオンビームの輸送経路を構成する真空容器(不図示)の端面である。また、電極保持部材20は筒状のものに限らず、その形状は種々変更して構わない。
【0022】
より具体的に説明すると、電極保持部材20の一端面21a及び他端面21bには複数のボルト孔23を有したフランジ部22が設けられており、プラズマ生成容器10の前面11aのボルト孔13と電極保持部材20の一端面21aのボルト孔23とにボルトを通すことで、プラズマ生成容器10と電極保持部材20とが連結される。また、装置本体102の取付面のボルト孔(不図示)と電極保持部材20の他端面21bのボルト孔23とにボルトを通すことで、装置本体102と電極保持部材20とが連結される。
これにより、イオン源101は、所定の取付姿勢で装置本体102に取り付けられる。
【0023】
本実施形態の取付姿勢は、
図1及び2に示すように、イオン源101が鉛直方向に沿って起立した姿勢であり、言い換えればプラズマ生成容器10の長手方向と鉛直方向とが平行になる姿勢である。
【0024】
本実施形態のイオン源101は、装置本体102に取り付けられた状態において、プラズマ生成容器10の下側に設けられた下側ローラ31と、プラズマ生成容器10の上側に設けられた上側ローラ32とをさらに具備している。
【0025】
ここでは、一対の下側ローラ31が、引出し口Oを長手方向と直交する方向から挟むように配置されるとともに、一対の上側ローラ32が、引出し口Oを長手方向と直交する方向から挟むように配置されている。つまり、下側ローラ31は、前面11aと直交するとともに長手方向に沿って延びる対向側面11bそれぞれに設けられており、上側ローラ32も同様に対向側面11bそれぞれに設けられている。
【0026】
一対の下側ローラ31は、いずれもプラズマ生成容器10の底面11cから等しい高さであり、且つ、前面11aから等しい距離となるように配置されている。
【0027】
一対の上側ローラ32は、いずれも下側ローラ31から長手方向に沿って上方に等しい距離離間し、且つ、一対の上側ローラ32の離間距離が一対の下側ローラ31の離間距離と等しくなるように配置されている。
【0028】
本実施形態では、
図1に示すように、イオン源101が装置本体102に取り付けられた状態において、下側ローラ31、上側ローラ32、及びイオン源101の重心Gが鉛直方向に沿って直線状に配置されている。
【0029】
なお、各下側ローラ31及び各上側ローラ32は、それぞれローラ支持部材Hに転動可能に支持されており、ローラ支持部材Hを介してプラズマ生成容器10の対向側面11bに取り付けられている。
【0030】
次に、本実施形態のイオン源支持台Xについて、
図3を参照しながら説明する。
【0031】
イオン源支持台Xは、装置本体102から取り外されて吊り下げられた姿勢(以下、起立姿勢という)のイオン源101が載置されて、起立姿勢よりも重心Gの低い倒伏姿勢でイオン源101を支持するものである。
【0032】
具体的にイオン源支持台Xは、
図3に示すように、台車4と、台車4に設けられた一対のレール5とを具備している。
【0033】
台車4は、枠体41と、枠体41に取り付けられた複数の車輪42とを備えている。各車輪42は、枠体41の下面に取り付けられるとともに、例えば装置本体102が配置される床面やイオン源101を搬送するための専用の床面を転動するものである。
【0034】
一対のレール5は、枠体41の上面に設けられており、水平方向に沿って互いに平行に延びる水平レールである。
より具体的には、各レール5の離間距離は、一対の下側ローラ31の離間距離及び一対の上側ローラ32の離間距離と等しく、各レール5の長さは、下側ローラ31と上側ローラ32との離間距離よりも長い。
また、これらのレール5の両端部には、下側ローラ31及び上側ローラ32がレール5から転落することを防ぐストッパ51が設けられている。
【0035】
然して、本実施形態のイオン源支持台Xは、
図3及び
図4に示すように、一対のレール5に一対の下側ローラ31が載置された状態で、イオン源101をレールの一端側Aから他端側Bに向かって引き込む引き込み機構6をさらに備えている。
【0036】
この引き込み機構6は、イオン源101を引き込み力をイオン源101における重心Gよりも下方に作用させるものであり、一対の下側ローラ31をレール5上で一端側Aから他端側Bに向かって転動させるとともに、イオン源101を起立姿勢から倒伏させて倒伏姿勢とする機能を備えている。
【0037】
具体的に引き込み機構6は、レール5の一端側Aから他端側Bに向かって移動可能な移動体61と、移動体61を移動させる駆動部62とを備えており、移動体61がプラズマ生成容器10と一体的に設けられた被接触部材Zに接触しながらレール5の一端側Aから他端側Bに向かって移動することで、イオン源101を引き込むように構成されている。
【0038】
被接触部材Zは、イオン源101の一部又はイオン源101に取り付けられた部材であり、本実施形態では
図2に示すように、一対の被接触部材Zがイオン源101に外付けされている。
具体的に被接触部材Zは、一対の下側ローラ31から外側に向かって延びており、ここでは下側ローラ31を回転可能に支持するローラ支持部材Hに取り付けられて、下側ローラ31の軸方向に沿って延びる円柱状のものである。
【0039】
移動体61は、
図3に示すように、上向きに開口した収容凹部61Sが形成された例えば樹脂製のブロック状をなすものであり、この収容凹部61Sに上述した被接触部材Zが収容される。
収容凹部61Sの深さ寸法は、少なくとも被接触部材Zの直径よりも大きく設定されており、これにより被接触部材Zは、開口61Oよりも上方に突出することなく収容凹部61Sに収容される。
【0040】
本実施形態の引き込み機構6は、イオン源101を手動で引き込むことができるように構成されており、ここでは上述した引き込み力を手動で調整できるように構成されている。なお、ここでいう引き込み力の調整とは、引き込み力の大きさを調整することのみならず、引き込み力の方向(つまり、引き込むか押し込むか)を調整することも含まれる。
【0041】
具体的に引き込み機構6は、駆動部62によって移動体61を手動で移動できるように構成されている。より詳細に説明すると、本実施形態の駆動部62は、移動体61が取り付けられる搬送ベルト621と、搬送ベルト621を手動で動かすためのハンドル622とを備えている。
【0042】
ここでは一対の搬送ベルト621が各レール5の外側に設けられており、これらの搬送ベルト621は、複数のギアやリンク部材等からなるリンク機構63により双方が連動するように構成されている。
具体的に搬送ベルト621は、各レール5に沿って設けられた無端ベルト状の所謂タイミングベルトであり、レール5に沿った長さがレール5の長さとほぼ等しいか、それよりも若干長いものである。
【0043】
ハンドル622は、一方の搬送ベルト621とギア等(不図示)を介して連結されており、ここでは操作性や安全性に鑑みて、枠体41の上面におけるイオン源101の引き込み側、すなわちレール5の他端側Bに設けてある。
そして、例えばハンドル622を正方向(例えば時計回り)に回転させることで、搬送ベルト621によって移動体61がレール5の一端側Aから他端側Bに搬送され、ハンドル622を逆方向(例えば反時計回り)に回転させることで、搬送ベルト621によって移動体61がレール5の他端側Bから一端側Aに搬送される。
【0044】
本実施形態では、ハンドル622を正方向に回転させて、移動体61をレール5の一端側Aから他端側Bに搬送することでイオン源101に正の引き込み力が作用し、その力はハンドル622の回転速度を速くするほど大きくなり、回転速度を遅くするほど小さくなる。一方、ハンドル622を逆方向に回転させて、移動体61をレール5の他端側Bから一端側Aに搬送することでイオン源101に負の引き込み力(つまり、押し込む力)が作用し、その力は回転速度を速くするほど大きくなり、回転速度を遅くするほど小さくなる。
【0045】
また、この引き込み機構6は、イオン源101に引き込み力が作用する引き込み状態と、イオン源101に引き込み力が作用させない停止状態とを、手動で切替可能に構成されている。具体的には、ハンドル622を回転させることでイオン源101に引き込み力が作用し、ハンドル622を操作しなければイオン源101には引き込み力が作用しない。
【0046】
このように構成されたイオン源支持台Xは、
図4に示すように、装置本体102から取り外したイオン源101を吊り下げる吊り下げ機構Yとともに、イオン源101を搬送する搬送システム200を構築している。
なお、吊り下げ機構Yは、イオン源101を鉛直方向及び水平方向に移動可能に吊り下げるものであり、ここでは水平方向に移動可能なチェーンブロックを利用したものである。吊り下げ機構Yとしては、電動クレーンを利用したものであっても良い。
【0047】
次に、上述した搬送システム200の動作について
図4を参照しながら説明する。
【0048】
始めに、装置本体102に取り付けられているイオン源101を取り外して、所望の場所に搬送する場合について説明する。
【0049】
まず、イオン源101が装置本体102に取り付けられている状態において、イオン源支持台Xをイオン源101の近傍に移動させる。
【0050】
次に、チェーンブロックのチェーンをイオン源101に掛けた状態で、例えばユーザが装置本体102と電極保持部材20とを連結しているボルトを抜き、イオン源101を装置本体102から取り外す。これにより、プラズマ生成容器10と電極保持部材20とが一体的に装置本体102から取り外されて、イオン源101は吊り下げ機構Yによって吊り下げられ、起立姿勢となる(
図4a)。
本実施形態では、取付姿勢を保持したままイオン源101を吊り下げるべく、つまり取付姿勢と起立姿勢とを同じ姿勢にすべく、チェーンを例えば上側ローラ32を支持するローラ支持部材Hそれぞれに掛け、イオン源101を重心Gの真上から吊り下げる。なお、チェーンは、プラズマ生成容器10に取り付けても良い。
【0051】
続いて、吊り下げられたイオン源101を必要に応じて旋回や水平移動させ、イオン源101をイオン源支持台Xの上方に移動させる。より詳細には、一対の下側ローラ31それぞれが一対のレール5の一端側Aの上方に位置するように、イオン源101を移動させる。
【0052】
そして、イオン源101を徐々に降ろして、一対の下側ローラ31を一対のレール5の一端側Aに載置させる(
図4b)。このとき、下側ローラ31がレール5に載置されることで、下側ローラ31から外側に延びる被接触部材Zが移動体61の収容凹部61Sに収容されるように、予め移動体61をレール5の一端側Aに配置しておく。
【0053】
一対の下側ローラ31を一対のレール5の一端側Aに載置させた後、被接触部材Zが移動体61の収容凹部61Sに収容されたことを確認して、引き込み機構6によってイオン源101をレール5の一端側Aから他端側Bに引き込む。本実施形態では、作業者がハンドル622を例えば正方向に回転させることで、移動体61をレール5の一端側Aから他端側Bに向かって移動させる(
図4c)。
【0054】
このように移動体61が被接触部材Zに接触しながらレール5の一端側Aから他端側Bに移動することにより、下側ローラ31がレール5上を一端側Aから他端側Bに向かって転動し、上側ローラ32がレール5に近づきながら、イオン源101は起立姿勢から徐々に傾く。
【0055】
そして、一対の上側ローラ32がレール5に載置されると、下側ローラ31及び上側ローラ32の双方がレール5に載置された状態となり、イオン源101は倒伏姿勢となる。なお、本実施形態では、倒伏姿勢において引出し口Oが下方を向いた状態となる。
【0056】
この倒伏姿勢のままクレーンのフックを外し、例えば作業者が台車4を移動させることで、イオン源101を安定な状態で所望の位置に搬送させることができる。
【0057】
続いて、イオン源101を装置本体102に取り付ける場合について説明する。
【0058】
まず、イオン源支持台Xに載置されているイオン源101を装置本体102の近傍に移動させる。なお、このときのイオン源101は倒伏姿勢である。
【0059】
次に、イオン源101にチェーンブロックのチェーンを掛けて、イオン源101を持ち上げる。これにより、上側ローラ32が、レール5から離間するとともに、下側ローラ31がレール5上を他端側Bから一端側Aに向かって転動する。そして、下側ローラ31がレール5から離間して、イオン源101は吊り下げられて起立姿勢となる。
このとき、起立姿勢と取付姿勢とを同じ姿勢にすべく、つまりイオン源101を鉛直方向に沿って起立させるべく、チェーンを例えば上側ローラ32を支持するローラ支持部材Hそれぞれに掛けるなどして、イオン源101を重心Gの真上から吊り下げる。なお、チェーンは、プラズマ生成容器10に取り付けても良い。
【0060】
続いて、吊り下げられたイオン源101を必要に応じて旋回や水平移動や上下移動させて、装置本体102に近接させ、装置本体102と電極保持部材20とをボルトにより連結する。これにより、イオン源101は起立姿勢を保持したまま装置本体102に取り付けられる。
【0061】
このように構成された本実施形態に係るイオン源支持台Xであれば、一対のレール5に一対の下側ローラ31が載置された状態で、引き込み機構6がイオン源101をレール5
の一端側Aから他端側Bに向かって引き込むので、吊り下げられたイオン源101が仮に不安定な状態であったとしても、イオン源101を引き込む際にはイオン源101を安定な状態にすることができる。これにより、イオン源101を安定な状態で倒伏姿勢にすることが可能となり、イオン源101を安定な姿勢で搬送することができる。
【0062】
ところで、装置本体102から取り外されたイオン源101が例えば前傾姿勢となるように吊り下げる場合、取り外し時にイオン源101が傾いてイオン源101と装置本体102とが擦れてしまい、イオン源101や装置本体102が傷ついてしまう。また、イオン源101を装置本体102から取り外す際に、イオン源101と装置本体102とを締結するボルト等に負荷がかかってしまい、ボルト等が破損する恐れがある。
一方、前傾姿勢で吊り下げられたイオン源101を装置本体102に取り付ける際には、イオン源101を装置本体102に押さえつけながらボルト等で締結することとなり、作業が大掛かりになるうえ、取付時もボルト等に負荷がかかって破損する恐れがある。
【0063】
こうした問題を避けるためには、装置本体102からイオン源101を取り外す際に、イオン源101を極力傾けずに取付姿勢のまま取り外すことが好ましいが、一方で取付姿勢のままイオン源101をイオン源支持台Xに載置すると、イオン源101がレール5の一方側A又は他方側Bのどちらに倒れるか分からず危険である。
【0064】
これに対して、本実施形態のイオン源支持台Xであれば、一対のレール5に一対の下側ローラ31が載置された状態で、引き込み機構6がイオン源101をレール5の一端側Aから他端側Bに向かって引き込むので、装置本体102から取り外されたイオン源101を傾けずに取付姿勢のままイオン源支持台Xに載置したとしても、イオン源101を確実にレールの一方側に倒伏させることができる。
これにより、装置本体102からイオン源101を取り外す際にイオン源101を傾ける必要がないので、取り外し時にイオン源101と装置本体102とが擦れてしまうことや、ボルト等に負荷がかかることを防ぐことができる。
さらに、装置本体102にイオン源101を取り付ける際は、イオン源101を装置本体102に無理やり押さえつける必要がなく、作業が大掛かりになったり、ボルト等に負荷がかかったりすることを防ぐことができる。
【0065】
また、移動体61が一対のレール5の外側に位置するので、例えば被接触部材Zに移動体61が接触しているかなどといった作業状況を、作業者はレール5の外側から確認することができ、レール5の内側に入ることなく安全に作業を進めることができる。
【0066】
加えて、引き込み機構6がイオン源101を手動で引き込む力を調整できるように構成されているので、例えばイオン源101がバランスを崩したときなど、危険が生じそうなときに作業者の判断でイオン源101を引き込むことを止めたり、ハンドルを逆回転させてイオン源を押し戻したりすることができる。これにより、下側ローラ31がレール5から脱輪したりイオン源101が転倒したりする事故を未然に防ぐことができる。
【0067】
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。
【0068】
例えば、前記実施形態の引き込み機構は、タイミングベルトを利用して、移動体を搬送ベルトにより搬送するように構成されたものであったが、移動体をレールの一端側から他端側に移動させる構成であれば適宜可能であり、具体的には、引き込み機構にスプリングバランサやウィンチ等を利用した構成が挙げられる。
【0069】
具体的に説明すると、スプリングバランサやウィンチは、ワイヤの先端に設けられたフック(取付部)と、フックを引っ張る本体部とを備えており、フックが移動体であり、本体部が駆動部である。
より詳細には、フックを例えばプラズマ生成容器に引っ掛けることにより、その引っ掛けられた部分が被接触部材となる。これにより、フックは被接触部に接触しながらレールの一端側から他端側に移動する移動体として機能する。
そして、本体部を例えば台車の他端側に固定しておき、レールの一端側に下側ローラが載置された状態で、本体部によってフックを引っ張ることで、イオン源を一端側から他端側に引き込むことができる。なお、本体部は、必ずしも台車に固定させておく必要はなく、レールの他端側に位置している部材や床面などに固定しておけば良い。
【0070】
また、引き込み機構は、前記実施形態では手動で移動体を移動できるように構成されていたが、モータ等を用いて移動体を自動で移動できるように構成されていても良いし、手動自動に関わらず移動体の移動速度の変速比を切り替える変速機を備えていても良い。
【0071】
さらに、引き込み機構は、イオン源をレールの一端側から他端側に押し込むものであっても良い。
【0072】
前記実施形態では、イオン源が装置本体に取り付けられている状態において、下側ローラ、上側ローラ、及びイオン源の重心が鉛直方向に沿って配置されたものとして説明したが、必ずしも全てが鉛直方向に沿って配置されている必要はなく、例えば下側ローラや上側ローラが鉛直方向に沿って重心からずれていても良い。
このようなイオン源であっても、イオン源の重心の真上にチェーンを取り付ければ、取付姿勢を保ったままイオン源を装置本体から取り外すことができ、その後は前記実施形態と同様の作業により、イオン源を倒伏姿勢にすることができる。
【0073】
前記実施形態では、起立姿勢と取付姿勢とが同じ姿勢である場合について説明したが、例えば装置本体から取り外されたイオン源を取付姿勢よりも前傾した姿勢で吊り下げても良いし、このように前傾姿勢で吊り下げたイオン源を鉛直方向に沿って起立させた後、イオン源支持台に載置するようにしても良い。
【0074】
前記実施形態では、下側ローラをレールの一端側に載置した状態でイオン源をレールの一端側から他端側に向かって引き込んでいたが、例えばイオン源101の長手方向よりも十分に長いレールを用意して、下側ローラをレールの中央部や他端側に載置した状態で、イオン源をレールの一端側から他端側に向かって引き込んでも良い。
さらに、長いレールを用いた場合は、1台のイオン源支持台に2つ以上のイオン源を載置しても良い。
【0075】
前記実施形態の被接触部材は、下側ローラから外側に延びるものであったが、例えばプラズマ生成容器の対向側面から外側に延びるものであっても良いし、電極保持部材の側面から外側に延びるものであっても良い。
【0076】
前記実施形態では、下側ローラ及び上側ローラが、対向側面に設けられていたが、前面と前面の反対側の背面とに設けられていても良いし、電極保持部材に設けられていても良い。また、ローラの数は前記実施形態に限られず、例えば上側ローラと下側ローラとの間に一対の中間ローラを設けるようにしても良い。
【0077】
前記実施形態では、イオン源支持台が、プラズマ生成容器と、引出電極系と、電極保持部材とを備えたイオン源を支持するものとして説明していたが、イオン源支持台は、引出電極系や電極保持部材を備えていないイオン源、すなわちプラズマ生成容器を支持するものであっても良い。
【0078】
その他、本発明は前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であるのは言うまでもない。