特許第6653072号(P6653072)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6653072水圧ハンマーの打撃数評価方法及びそれを用いた前方地山の探査方法並びに前方地山の探査システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6653072
(24)【登録日】2020年1月29日
(45)【発行日】2020年2月26日
(54)【発明の名称】水圧ハンマーの打撃数評価方法及びそれを用いた前方地山の探査方法並びに前方地山の探査システム
(51)【国際特許分類】
   G01V 1/00 20060101AFI20200217BHJP
   G01V 1/137 20060101ALI20200217BHJP
【FI】
   G01V1/00 C
   G01V1/137
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-100588(P2015-100588)
(22)【出願日】2015年5月16日
(65)【公開番号】特開2016-217791(P2016-217791A)
(43)【公開日】2016年12月22日
【審査請求日】2018年4月19日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(74)【代理人】
【識別番号】100099704
【弁理士】
【氏名又は名称】久寶 聡博
(72)【発明者】
【氏名】磐田 吾郎
(72)【発明者】
【氏名】木梨 秀雄
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 哲
(72)【発明者】
【氏名】木野村 有亮
【審査官】 島田 保
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−277940(JP,A)
【文献】 特開2012−193592(JP,A)
【文献】 特開2004−197429(JP,A)
【文献】 特開2002−013381(JP,A)
【文献】 特開平09−287379(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0261869(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01V 1/00−99/00
E21B 1/00−49/10
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の削孔対象物を水圧ハンマーで削孔しつつ該水圧ハンマーへの送水圧の時間変動を計測し、該時間変動における変動特性から前記水圧ハンマーの打撃数を特定する水圧ハンマーの打撃数評価方法であって、前記変動特性を、送水圧の振幅が一定時間中にピークとなる頻度を指標としたものとし、該変動特性を、予め評価されたピーク頻度と水圧ハンマーの打撃数との対応関係に適用することで前記特定を行うことを特徴とする水圧ハンマーの打撃数評価方法。
【請求項2】
ボーリングマシンに装着した削孔ロッドの先端に水圧ハンマーを取り付け、該水圧ハンマーで切羽等の露出面の前方に拡がる地山を削孔することにより、該前方地山の地盤性状を探査する前方地山の探査方法において、
前記水圧ハンマーへの送水圧を計測して送水圧Pとし、
前記送水圧Pの計測と同時に該送水圧の時間変動を計測し、
該送水圧の時間変動における変動特性から前記水圧ハンマーの打撃数Nを特定し、
前記水圧ハンマーによる削孔エネルギーの大きさをエネルギー指標値Mとして定義するとともに、該エネルギー指標値を前記送水圧P及び前記打撃数Nを用いて、次式、
M=P・N/V (1)
V;削孔速度
から算出し、
前記エネルギー指標値Mを用いて前記前方地山の地盤性状を推定する前方地山の探査方法であって、前記変動特性を、送水圧の振幅が一定時間中にピークとなる頻度を指標としたものとし、該変動特性を、予め評価されたピーク頻度と水圧ハンマーの打撃数との対応関係に適用することで前記特定を行うことを特徴とする前方地山の探査方法。
【請求項3】
高圧ポンプに接続された水圧ハンマーで切羽等の露出面の前方に拡がる地山を削孔することにより、該前方地山の地盤性状を探査する前方地山の探査システムにおいて、
前記高圧ポンプに設けられた水圧計と、前記水圧計に電気接続され該水圧計で計測された前記水圧ハンマーへの送水圧をデータ処理する演算処理手段とを備えてなり、該演算処理手段は、前記送水圧の時間変動における変動特性から前記水圧ハンマーの打撃数Nを特定するとともに、該打撃数Nと前記水圧計で計測された送水圧Pとを用いて、次式、
M=P・N/V (1)
V;削孔速度
を演算することにより、前記水圧ハンマーによる削孔エネルギーの大きさとして定義されるエネルギー指標値Mを算出できるようになっている前方地山の探査システムであって、前記変動特性を、送水圧の振幅が一定時間中にピークとなる頻度を指標としたものとし、前記演算処理手段は、前記変動特性を、予め評価されたピーク頻度と水圧ハンマーの打撃数との対応関係に適用することで前記特定を行うようになっていることを特徴とする前方地山の探査システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として山岳トンネルの切羽前方に拡がる地山の地盤性状を探査する際に適用される水圧ハンマーの打撃数評価方法及びそれを用いた前方地山の探査方法並びに前方地山の探査システムに関する。
【背景技術】
【0002】
山岳トンネルを掘削するにあたり、切羽前方に拡がる地山の性状を適切かつ高い精度で把握することは、支保工及び補助工を含めた掘削工事全体を効率よくかつ安全に進めていく上で非常に重要である。
【0003】
トンネル切羽の前方探査を行う技術として、ドリルジャンボ(パーカッション型削孔機)やノンコア先進ボーリングマシン(ロータリー・パーカッション型削孔機)を利用したノンコア削孔による穿孔探査が知られているが、最近では、水圧ハンマーを用いた穿孔探査も試みられるようになってきた(特許文献1,2)。
【0004】
水圧ハンマーは、削孔ロッドを介してボーリングマシンから伝達される給進力及び回転トルクを削孔面に作用させつつ、内蔵されたハンマーピストンを高圧水で往復動させることで該削孔面に打撃力を作用させることができる先端打撃式の削孔機であって、削孔ロッドの基端側で打撃力を与えるトップハンマー式の削孔機に比べ、削孔ロッド同士の継目でエネルギーロスが生じないため、削孔可能な深度が大きく、削孔速度も大きい。
【0005】
そのため、水圧ハンマーによって従来よりも遠方の地山を前方探査できるようになることが期待されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2012−193592号公報
【特許文献2】特開2007−277940号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一方、水圧ハンマーによる削孔エネルギーは、送水圧と打撃数に比例すると考えることができるところ、水圧ハンマーは、先端打撃式のいわゆるダウンザホールハンマーであって、削孔深度が大きくなればなるほど打撃数の計測が困難になるので、水圧ハンマーによる前方探査を行うにあたっては、打撃数に代えて送水流量が用いられていた(特許文献2)。
【0008】
しかしながら、水圧ハンマーは、ある程度の大きさの反力を削孔面から受けないと、打撃が開始されず、軟らかい地盤では、反力が得られずに打撃が行われない場合があるが、打撃が行われていないときにも、構造上、ビット先端から水が排出される。
【0009】
そのため、送水流量から打撃数を推定するには限度があり、送水流量と打撃数が比例することを前提とした上述の評価方法では精度が不十分で、信頼性の高い前方探査を行うことが困難であるという問題を生じていた。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上述した事情を考慮してなされたもので、水圧ハンマーを用いて前方地山の地盤性状を探査する場合に信頼性を向上させることが可能な水圧ハンマーの打撃数評価方法及びそれを用いた前方地山の探査方法並びに前方地山の探査システムを提供することを目的とする。
【0011】
上記目的を達成するため、本発明に係る水圧ハンマーの打撃数評価方法は請求項1に記載したように、所定の削孔対象物を水圧ハンマーで削孔しつつ該水圧ハンマーへの送水圧の時間変動を計測し、該時間変動における変動特性から前記水圧ハンマーの打撃数を特定する水圧ハンマーの打撃数評価方法であって、前記変動特性を、送水圧の振幅が一定時間中にピークとなる頻度を指標としたものとし、該変動特性を、予め評価されたピーク頻度と水圧ハンマーの打撃数との対応関係に適用することで前記特定を行うものである。
【0012】
また、本発明に係る前方地山の探査方法は請求項2に記載したように、ボーリングマシンに装着した削孔ロッドの先端に水圧ハンマーを取り付け、該水圧ハンマーで切羽等の露出面の前方に拡がる地山を削孔することにより、該前方地山の地盤性状を探査する前方地山の探査方法において、
前記水圧ハンマーへの送水圧を計測して送水圧Pとし、
前記送水圧Pの計測と同時に該送水圧の時間変動を計測し、
該送水圧の時間変動における変動特性から前記水圧ハンマーの打撃数Nを特定し、
前記水圧ハンマーによる削孔エネルギーの大きさをエネルギー指標値Mとして定義するとともに、該エネルギー指標値を前記送水圧P及び前記打撃数Nを用いて、次式、
M=P・N/V (1)
V;削孔速度
から算出し、
前記エネルギー指標値Mを用いて前記前方地山の地盤性状を推定する前方地山の探査方法であって、前記変動特性を、送水圧の振幅が一定時間中にピークとなる頻度を指標としたものとし、該変動特性を、予め評価されたピーク頻度と水圧ハンマーの打撃数との対応関係に適用することで前記特定を行うものである。
【0013】
また、本発明に係る前方地山の探査システムは請求項3に記載したように、高圧ポンプに接続された水圧ハンマーで切羽等の露出面の前方に拡がる地山を削孔することにより、該前方地山の地盤性状を探査する前方地山の探査システムにおいて、
前記高圧ポンプに設けられた水圧計と、前記水圧計に電気接続され該水圧計で計測された前記水圧ハンマーへの送水圧をデータ処理する演算処理手段とを備えてなり、該演算処理手段は、前記送水圧の時間変動における変動特性から前記水圧ハンマーの打撃数Nを特定するとともに、該打撃数Nと前記水圧計で計測された送水圧Pとを用いて、次式、
M=P・N/V (1)
V;削孔速度
を演算することにより、前記水圧ハンマーによる削孔エネルギーの大きさとして定義されるエネルギー指標値Mを算出できるようになっている前方地山の探査システムであって、前記変動特性を、送水圧の振幅が一定時間中にピークとなる頻度を指標としたものとし、前記演算処理手段は、前記変動特性を、予め評価されたピーク頻度と水圧ハンマーの打撃数との対応関係に適用することで前記特定を行うようになっているものである。
【0014】
水圧ハンマーによる削孔エネルギーを評価するにあたり、該削孔エネルギーが送水圧と打撃数に比例すると考えることができるところ、計測困難な打撃数に代えて送水流量を用いた場合、精度低下を招く懸念があることは前述した通りである。
【0015】
本出願人は、水圧ハンマーの構造上、その切替弁が水圧によって作動することで打撃が行われるようになっていることに鑑み、送水圧には、打撃動作に応答する形で変動が生じるのではないかという点に着眼して研究開発を行ったところ、本願発明をなすに至ったものである。
【0016】
すなわち、本発明に係る水圧ハンマーの打撃数評価方法においては、まず、所定の削孔対象物を水圧ハンマーで削孔しつつ、該水圧ハンマーへの送水圧の時間変動を計測する。
【0017】
送水圧の時間変動を計測するにあたっては、水圧ハンマーの切替弁が作動したとき、それによって波動が生じ、該波動が送水圧の時間変動として高圧水中を伝播するので、これを、例えば水圧ハンマーに接続された高圧ポンプの水圧計を用いて計測すればよい。
【0018】
次に、計測された時間変動における変動特性から水圧ハンマーの打撃数を特定する。
【0019】
変動特性は、例えば送水圧の振幅が一定時間中にピークとなる頻度を指標とすることが可能であり、かかるピーク頻度と水圧ハンマーの打撃数との対応関係を実験等によって予め調べておくことで、水圧ハンマーの打撃数を特定することができるし、送水圧の時間変動を周波数領域に変換することで得られる卓越周波数を指標とすることも可能である。この場合も、ピーク頻度と同様、卓越周波数と水圧ハンマーの打撃数との対応関係から水圧ハンマーの打撃数を特定すればよい。
【0020】
以上述べた構成により、トンネルの掘削工事で前方探査を行う際、水圧ハンマーにおける送水圧の時間変動を計測するだけで、該水圧ハンマーの打撃数を適切に推定することが可能となり、かくして、打撃数に代えて送水流量を用いていた従来よりも、格段に高い信頼性をもって前方地山の探査を行うことが可能となる。
【0021】
削孔対象物は、トンネル掘削を行う地山が典型例となるが、水圧ハンマーの打撃数を評価する必要があるのであれば、どのような地山でもよいし、地山以外、例えば地山を模擬した供試体も包摂される。
【0022】
上述した水圧ハンマーの打撃数評価方法を用いて前方地山を探査するには、従来と同様、ボーリングマシンに装着した削孔ロッドの先端に水圧ハンマーを取り付け、該水圧ハンマーで切羽等の露出面の前方に拡がる地山を削孔するが、水圧ハンマーで地山を削孔するにあたっては、該水圧ハンマーへの送水圧Pを計測する一方、該送水圧の時間変動を上述した発明と同様に計測する。
【0023】
次に、計測された送水圧の時間変動における変動特性から水圧ハンマーの打撃数を特定し、打撃数Nとする。このステップについても、上述した発明と同様に行えばよい。
【0024】
次に、水圧ハンマーによる削孔エネルギーの大きさをエネルギー指標値Mとして定義するとともに、該エネルギー指標値を上述した送水圧P及び打撃数Nを用いて、次式、
M=P・N/V (1)
V;削孔速度
から算出し、次いで、エネルギー指標値Mを用いて前方地山の地盤性状を推定する。
【0025】
上述した前方地山の探査方法を実施可能な前方地山の探査システムは例えば、高圧ポンプに設けられた水圧計と、水圧計に電気接続され該水圧計で計測された水圧ハンマーへの送水圧をデータ処理する演算処理手段とを備えてなり、該演算処理手段は、送水圧の時間変動における変動特性から水圧ハンマーの打撃数Nを特定するとともに、該打撃数Nと水圧計で計測された送水圧Pとを用いて、上述の(1)式を演算することにより、エネルギー指標値Mを算出できるように構成することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本実施形態に係る前方地山の探査方法の実施手順を示したフローチャート。
図2】本実施形態に係る前方地山の探査システムを示した図であり、(a)は配置図、(b)はブロック図。
図3】ピーク頻度と水圧ハンマーの打撃数との対応関係を調べるためのシステムを示したブロック図。
図4】加速度センサー30で計測された振動値と送水圧の時間変動とをそれぞれ縦軸にとった場合の時刻歴計測結果を概念的に示したグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明に係る水圧ハンマーの打撃数評価方法及びそれを用いた前方地山の探査方法並びに前方地山の探査システムの実施の形態について、添付図面を参照して説明する。
【0028】
図1は、本実施形態に係る前方地山の探査方法の実施手順を示したフローチャート、図2(a)は、本実施形態に係る前方地山の探査システムの配置図、同図(b)は同じくブロック図である。
【0029】
図2に示すように、本実施形態に係る前方地山の探査システム1は、高圧ポンプ27に接続された水圧ハンマー22を装着してなる削孔機20を用いて構成してあり、高圧ポンプ27に設けられた水圧計28と、水圧計28に電気接続され該水圧計で計測された水圧ハンマー22への送水圧をデータ処理可能な演算処理手段としての演算処理装置31とを備える。
【0030】
削孔機20は、ボーリングマシン21に削孔ロッド23を連結するとともに該削孔ロッドの先端に上述した水圧ハンマー22を取り付けて構成してあり、該水圧ハンマーで露出面である切羽26の前方に拡がる削孔対象物としての地山25を削孔するようになっている。
【0031】
演算処理装置31は、水圧ハンマー22への送水圧の時間変動における変動特性から水圧ハンマー22の打撃数Nを特定するとともに、該打撃数Nと水圧計28で計測された送水圧Pとを用いて、次式、
M=P・N/V (1)
V;削孔速度
を演算することにより、水圧ハンマー22による削孔エネルギーの大きさとして定義されるエネルギー指標値Mを算出できるようになっている。
【0032】
上述した前方地山の探査システム1を用いて本実施形態に係る前方地山の探査方法を実施するには、まず、地山25を水圧ハンマー22で削孔しつつ、該水圧ハンマーへの送水圧を、該水圧ハンマーに接続された高圧ポンプ27の水圧計28を用いて計測し、これを送水圧Pとする(図1,ステップ101)。
【0033】
一方、水圧ハンマー22が打撃動作を行う際にはその切替弁が作動し、そのときに高圧水中に生じた波動が送水圧の時間変動として高圧水中を伝播するので、該送水圧の時間変動を水圧計28を用いて計測する(ステップ102)。
【0034】
送水圧の時間変動を計測するにあたっては、例えば計測間隔を1/100秒程度に設定すればよい。
【0035】
次に、計測された送水圧の時間変動における変動特性から水圧ハンマー22の打撃数を演算処理装置31で特定し、これを打撃数Nとする(ステップ103)。
【0036】
送水圧の時間変動における変動特性は、送水圧の振幅が一定時間中にピークとなる頻度を指標とすることが可能であり、かかるピーク頻度と水圧ハンマーの打撃数との対応関係を実験等によって予め調べた上、その結果を演算処理装置31に反映させておけばよい。
【0037】
ピーク頻度と水圧ハンマーの打撃数との対応関係は、前方探査の対象となる地山で調べるのであれば、例えば図3に示したシステムを用いることができる。
【0038】
同図に示したシステムは、上述した水圧計28及び演算処理装置31に加えて、切羽26に取り付けられた加速度センサー30を備えて構成してあり、演算処理装置31は、加速度センサー30で計測された振動数を水圧ハンマー22の打撃数として特定するとともに、水圧計28で計測された送水圧の時間変動におけるピーク頻度をカウントするようになっている。
【0039】
加速度センサー30は、水圧ハンマー22の打撃で生じた弾性波が切羽26で適切に検出されるよう、削孔ロッド23が挿入される削孔口の回りに複数設置する、例えば両側にそれぞれ設置するのが望ましい。
【0040】
図4(a),(b)は、加速度センサー30で計測された振動値と送水圧の時間変動とをそれぞれ縦軸にとった場合の時刻歴計測結果を概念的に示したグラフであり、同図の例であれば、送水圧の時間変動におけるピークは、加速度センサー30で計測された振動値の概ね2倍の頻度で出現すると考えることができるとともに、加速度センサー30で計測された振動値はそのまま水圧ハンマー22の打撃数とみなすことができるので、上記の例であれば、送水圧の時間変動におけるピーク頻度に1/2を乗じた値を水圧ハンマー22の打撃数と推定することが可能である。
【0041】
このような送水圧の時間変動におけるピーク頻度と水圧ハンマー22の打撃数との対応関係は、トンネル24の掘削工事に伴う前方探査の開始前に予め調査しておくとともに、その調査結果に基づいて水圧ハンマー22の打撃数が算出されるように、上述の例であれば、カウントされたピーク頻度に1/2を乗じた値が水圧ハンマー22の打撃数として算出されるように、演算処理装置31を構成しておく。
【0042】
ステップ103において、水圧ハンマー22の打撃数Nが演算処理装置31で特定されたならば、次に、水圧ハンマー22による削孔エネルギーの大きさとして定義されるエネルギー指標値Mを、ステップ101で計測された送水圧Pとステップ103で特定された打撃数Nを用いて、次式、
M=P・N/V (1)
V;削孔速度
から演算処理装置31で算出し(ステップ104)、次いで、エネルギー指標値Mを用いて前方地山の地盤性状を推定する(ステップ105)。
【0043】
以上説明したように、本実施形態に係る前方地山の探査方法によれば、トンネル24の掘削工事で前方探査を行う際、水圧ハンマー22における送水圧の時間変動を計測するだけで、該水圧ハンマーの打撃数を適切に推定することが可能となり、かくして、打撃数に代えて送水流量を用いていた従来よりも、格段に高い信頼性をもって前方地山の探査を行うことが可能となる。
【0044】
本実施形態では、送水圧の時間変動におけるピーク頻度と水圧ハンマー22の打撃数との対応関係を前方探査の対象となる地山で調べるようにしたが、前方探査に先行して行うのであれば、上述した対応関係をいつどのように調べるかは任意であり、掘削が行われる地山に代えて、他の地山で行ってもよいし、地山を模擬した供試体で行うことも可能である。なお、いずれの場合であっても、ピーク頻度と打撃数との対応関係については、ピーク頻度に対応する打撃数が演算処理装置31で特定されるように、該演算処理装置に予め反映させておく。
【0045】
また、本実施形態では、ピーク頻度と打撃数との対応関係を加速度センサー30を用いて調べるようにしたが、かかる対応関係を調べる手段は任意である。
【0046】
また、本実施形態及び変形例では、前方地山の探査システム1を用いて前方地山の探査方法を実施することを前提としたが、本発明に係る前方地山の探査方法は、必ずしも前方地山の探査システム1を用いて実施する必要はないし、それゆえ演算処理装置31も必須構成とする必要はなく、例えば水圧ハンマー22への送水圧の時間変動における変動特性をモニターにグラフィック表示してピーク頻度を把握し、これを、予め定められたピーク頻度と打撃数との対応関係に照合することで打撃数Nを特定した後、送水圧P及び打撃数Nを用いて(1)式からエネルギー指標値Mを適宜算出するようにしてもかまわない。
【0047】
また、本実施形態では、送水圧の時間変動における変動特性としてピーク頻度を用いたが、変動特性として何を指標にするのかは任意であり、ピーク頻度に代えて、例えば、計測された送水圧の時間変動を時間領域から周波数領域に変換してこれを変動特性とし、該変動特性から卓越周波数を検出して水圧ハンマーの打撃数を特定するようにしてもよい。
【0048】
また、本実施形態では、本発明に係る水圧ハンマーの打撃数評価方法を前方地山の探査方法に適用した場合について説明したが、水圧ハンマーの打撃数を評価する必要があるのであれば、前方地山の探査方法に適用が限定されるものではなく、前方探査以外の目的で任意の地山に適用するようにしてもよいし、地山を模擬した供試体に適用するようにしてもかまわない。
【符号の説明】
【0049】
21 ボーリングマシン
22 水圧ハンマー
23 削孔ロッド
25 地山(削孔対象物)
26 切羽(露出面)
27 高圧ポンプ
28 水圧計
31 演算処理装置(演算処理手段)
図1
図2
図3
図4