(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、一実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
【0013】
<1.回転電機の駆動システムの構成>
まず、
図1を用いて本実施形態に係る回転電機10の駆動システム1の構成の一例について説明する。
【0014】
図1に示すように、駆動システム1は、コンバータ2と、コンデンサ3と、複数のインバータ4(4A〜4H)と、コントローラ5と、回転電機10とを備える。回転電機10は、モータ又は発電機として使用される。
【0015】
コンバータ2は、交流電源7から供給される交流電力を直流電力に変換する。コンデンサ3は、コンバータ2の正側直流母線8aと負側直流母線8bとの間に接続され、コンバータ2により変換された直流電力を平滑化する。コンデンサ3としては、例えば電気二重層コンデンサ等が使用される。
【0016】
複数のインバータ4(電力変換装置の一例)は、この例では8台の第1インバータ4A〜第8インバータ4Hで構成される。各インバータ4A〜4Hは、それぞれコンバータ2の正側直流母線8aと負側直流母線8bとに接続され、コンデンサ3により平滑化された直流電力を、コントローラ5からの制御信号S1(PWM信号等)に基づいて交流電力に変換し、回転電機10に供給する。なお、インバータ4の台数は8台に限定されるものではなく、インバータ4の容量と回転電機10の容量等に応じて適宜設定される。
【0017】
回転電機10は、1台の回転電機が複数のインバータに接続される、いわゆる多重巻線型の回転電機である。回転電機10は、各インバータ4A〜4Hごとに互いに独立した複数系統(この例では8系統)の巻線群を有している。各系統の巻線群は、1台のインバータに電気的に接続される複数の巻線42(後述の
図2参照。少なくとも1組の3相巻線)で構成される。
【0018】
コントローラ5(制御装置の一例)は、位置検出器13で検出された回転電機10の回転位置等に基づき制御信号S1を生成し、各インバータ4A〜4Hに出力する。各インバータ4A〜4Hは、コントローラ5からの制御信号S1に基づき直流電力を交流電力に変換し、対応する系統の巻線群に交流電力を供給して回転電機10を駆動する。なお、コントローラ5は複数のコントローラで構成されてもよい。
【0019】
<2.回転電機の全体構成>
次に、
図2〜
図4を用いて回転電機10の全体構成の一例について説明する。
図2は回転電機10の全体構成の一例を表す水平断面図であり、
図3は回転電機10の全体構成の一例を表す左側面図であり、
図4は回転電機10の全体構成の一例を表す後面図である。
【0020】
なお、以下では、回転電機等の構成の説明の便宜上、上下左右前後等の方向を適宜使用する。前後方向は回転電機10のシャフト31の軸方向(回転軸心AXの方向)、上下方向は回転電機10の設置状態における鉛直方向、左右方向は軸方向及び上下方向の両方向に垂直な方向を指すものとする。なお、これらの方向は回転電機等の各構成の位置関係を限定するものではない。
【0021】
また、以下において「負荷側」とは回転電機10に対して負荷が取り付けられる方向、すなわちこの例ではシャフト31が突出する方向(前方)を指し、「反負荷側」とは負荷側の反対方向(後方)を指す。
【0022】
図2に示すように、回転電機10は、ロータ30と、ステータ40と、円筒状のフレーム15と、負荷側ブラケット16と、反負荷側ブラケット17と、2つの端子箱50L,50Rとを備えている。
【0023】
ロータ30は、シャフト31と、シャフト31の外周に設けられたロータコア32と、ロータコア32に配置された複数の永久磁石35とを有する。ロータコア32は、この例では軸方向に2分割された構成となっており、2つのコア半体32Aを備える。各コア半体32Aは、表面に永久磁石35が配置される外周部32aと、外周部32aとシャフト31を連結する複数の連結部32bとを有している。連結部32bは、外周部32aよりも軸方向に短い柱状に形成されており、複数の連結部32bがシャフト31の外周部に放射状に固定されている。2つのコア半体32Aは、外周部32a同士が軸方向に密着又はわずかな隙間を介して配置され、連結部32b同士が軸方向に間隔を空けて配置されている。ロータコア32は、周方向に並んだ連結部32b同士の間及び軸方向に並んだ連結部32b同士の間等の空隙34を有するいわゆる肉抜き構造となっている。これにより、ロータコア32が軽量化され、ロータ30のイナーシャの低減が図られている。
【0024】
負荷側ブラケット16は、フレーム15の負荷側(前側)に設けられ、反負荷側ブラケット17は、フレーム15の反負荷側(後側)に設けられる。フレーム15と、負荷側ブラケット16と、反負荷側ブラケット17は、回転電機10のハウジング20を構成する。シャフト31は、負荷側ブラケット16に設けられた負荷側軸受18と、反負荷側ブラケット17に設けられた反負荷側軸受19(軸受の一例)とにより、回転軸心AXまわりに回転自在に支持されている。本実施形態では、負荷側軸受18は例えばラジアル軸受である。また、反負荷側軸受19は例えば一対のアンギュラ軸受であり、軸方向の支持方向が対向するように配置されている。
【0025】
反負荷側ブラケット17は、径方向中央部に負荷側に向けて凹んだ凹部17aを有しており、この凹部17aに反負荷側軸受19が設けられている。これにより、反負荷側軸受19の少なくとも一部、この例では一対のアンギュラ軸受のうちの負荷側の1つは、回転軸心AXに対する径方向においてステータ40の巻線42の反負荷側のコイルエンド部43の内側に位置するように配置されている。
【0026】
負荷側ブラケット16には軸受温度計21が設置されており、負荷側軸受18の温度が検出される。反負荷側ブラケット17には軸受温度計22が装着されており、反負荷側軸受19の温度が検出される。シャフト31の反負荷側端部には、シャフト31の回転位置を検出する上記位置検出器13が取り付けられている。位置検出器13は、例えばエンコーダやレゾルバ等であり、位置検出器カバー23によって覆われている。
【0027】
フレーム15の外周面には、仕切り26aによりらせん状の冷却通路26bが形成されている。冷却通路26bの外周には、円筒状の冷却ジャケット24が取り付けられている。冷却通路26bの負荷側端部又は反負荷側端部のいずれか一方から他方に向けて、ステータ40を冷却するための水等の冷却媒体が循環される。また、
図3及び
図4に示すように、冷却ジャケット24の下部の左右両側における前後の位置には、回転電機10を台座等に据え付けるための複数の脚部25が設けられている。
【0028】
ステータ40は、ハウジング20に収容されている。ステータ40は、フレーム15の内周面に環状に設けられたステータコア41と、ステータコア41の図示しないスロットに収容されることによって周方向に並列に配置された複数の巻線42とを備えている。ステータコア41とロータ30の永久磁石35とは、磁気的ギャップを空けて径方向に対向するように配置されている。反負荷側ブラケット17内には、ステータコア41から反負荷側に突出した巻線42のコイルエンド部43近傍(この例では後側)位置に、複数の第1リード線44が束ねて配線されている。第1リード線44の一端は、対応する巻線42のコイルエンド部43と電気的に接続され、他端は対応する端子箱50L,50Rに導入されている。
【0029】
図2及び
図4に示すように、端子箱50L,50Rは、ハウジング20の外周の複数箇所に配置されている。具体的には、端子箱50L,50Rは、軸方向に垂直な方向においてハウジング20の両側、すなわち反負荷側ブラケット17の左右両側位置に中空の接続部27L,27Rを介して設置されている。端子箱50L,50Rは、前後方向寸法よりも上下方向寸法が長い略直方体形状の箱体である。
図3に示すように、端子箱50L,50Rの上下方向寸法は反負荷側ブラケット17の上下方向寸法よりも小さい。また、
図2に示すように、端子箱50L,50Rは後端部が位置検出器カバー23の後端部と軸方向の位置が略一致するように配置されている。つまり、位置検出器カバー23は端子箱50L,50Rの間の空間に収容され、軸方向において後側に突出しないように配置されている。
【0030】
図4に示すように、端子箱50L、50Rは、端子箱本体51と、端子箱本体51の開口部を覆う蓋52とを備える。端子箱50Lの端子箱本体51は左側の面が開口し、当該左側の開口面に蓋52が着脱自在に取り付けられる。端子箱50Rの端子箱本体51は右側の面が開口し、当該右側の開口面に蓋52が着脱自在に取り付けられる。蓋52の外面には、蓋52を着脱する際に作業者が掴むための取っ手52aが設けられている。端子箱50L,50Rには、反負荷側ブラケット17の内部から導出された第1リード線44等が接続部27L,27Rを通ってそれぞれ導入されている。また、端子箱50L,50Rの端子箱本体51の後面には、各インバータ4A〜4Hに接続されるインバータケーブル9(後述の
図8、
図9参照)が挿通される複数の挿通口53が設けられている。
【0031】
<3.コイルエンド部における各種リード線の配線構成>
次に、
図5〜
図7を用いてコイルエンド部における各種リード線の配置構成の一例について説明する。
【0032】
前述のように、回転電機10は、各インバータ4A〜4Hごとに互いに独立した複数系統(この例では8系統)の巻線群を有している。各系統の巻線群は、1台のインバータに電気的に接続される複数の巻線42(少なくとも1組の3相巻線)で構成される。本実施形態では、各系統の巻線群は周方向に等分された角度範囲内に配置されている。すなわち
図5に示すように、第1インバータ4Aに接続される巻線群は角度θ1の範囲内に、第2インバータ4Bに接続される巻線群は角度θ2の範囲内に、第3インバータ4Cに接続される巻線群は角度θ3の範囲内に、第4インバータ4Dに接続される巻線群は角度θ4の範囲内に、第5インバータ4Eに接続される巻線群は角度θ5の範囲内に、第6インバータ4Fに接続される巻線群は角度θ6の範囲内に、第7インバータ4Gに接続される巻線群は角度θ7の範囲内に、第8インバータ4Hに接続される巻線群は角度θ8の範囲内に、それぞれ配置されている。
【0033】
図5に示すように、巻線42のコイルエンド部43の近傍(この例では後方)には、各系統の巻線群の巻線42に接続された複数の第1リード線44が配置されている。これらの第1リード線44は、左右に分配されるように配線されて端子箱50L,50Rに導入されている。具体的には、各第1リード線44は、2つの端子箱50L,50Rのうち、対応するコイルエンド部43と接続部27L,27Rとの距離が短い近い方の端子箱に向けて、系統単位ごとに左側と右側に分配されて配線されている。
【0034】
すなわち、この例では、第1インバータ4Aに接続される第1系統の巻線群のコイルエンド部43と電気的に接続された3相(U相、V相、W相)の第1リード線44U1,44V1,44W1と、第2インバータ4Bに接続される第2系統の巻線群のコイルエンド部43と電気的に接続された3相の第1リード線44U2,44V2,44W2と、第3インバータ4Cに接続される第3系統の巻線群のコイルエンド部43と電気的に接続された3相の第1リード線44U3,44V3,44W3と、第4インバータ4Dに接続される第4系統の巻線群のコイルエンド部43と接続された3相の第1リード線44U4,44V4,44W4が、コイルエンド部43の周方向に沿って左側に向けて配線され、接続部27Lを介して端子箱50Lに導入されている。
【0035】
また、第5インバータ4Eに接続される第5系統の巻線群のコイルエンド部43と電気的に接続された3相の第1リード線44U5,44V5,44W5と、第6インバータ4Fに接続される第6系統の巻線群のコイルエンド部43と電気的に接続された3相の第1リード線44U6,44V6,44W6と、第7インバータ4Gに接続される第7系統の巻線群のコイルエンド部43と電気的に接続された3相の第1リード線44U7,44V7,44W7と、第8インバータ4Hに接続される第8系統の巻線群のコイルエンド部43と電気的に接続された3相の第1リード線44U8,44V8,44W8が、コイルエンド部43の周方向に沿って右側に向けて配線され、接続部27Rを介して端子箱50Rに導入されている。
【0036】
図6に示すように、巻線42のコイルエンド部43には、巻線42の熱(温度変化)を検出する複数のサーミスタ45A(第1温度センサの一例)が設けられている。サーミスタ45Aは一系統に1個ずつ設けられており、第1系統用のサーミスタ45A1、第2系統用のサーミスタ45A2、第3系統用のサーミスタ45A3、第4系統用のサーミスタ45A4、第5系統用のサーミスタ45A5、第6系統用のサーミスタ45A6、第7系統用のサーミスタ45A7、第8系統用のサーミスタ45A8が設けられている。各サーミスタ45A(45A1〜45A8)は、例えば3相の巻線42の相間、すなわちU相−V相の巻線42間、V相−W相の巻線42間、又はW相−U相の巻線42間に設置されている。
【0037】
各サーミスタ45Aには、2本の第2リード線46Aがそれぞれ接続されている。これらの第2リード線46Aは、第1リード線44と同様に、左右に分配されるように配線されて端子箱50L,50Rに導入されている。具体的には、各第2リード線46Aは、端子箱50L,50Rのうち、対応するサーミスタ45Aと接続部27L,27Rとの距離が短い方の端子箱に向けて、左側と右側に分配されて配線されている。
【0038】
すなわち、この例では、第1系統用のサーミスタ45A1に接続された第2リード線46A11,46A12と、第2系統用のサーミスタ45A2に接続された第2リード線46A21,46A22と、第3系統用のサーミスタ45A3に接続された第2リード線46A31,46A32と、第4系統用のサーミスタ45A4に接続された第2リード線46A41,46A42が、コイルエンド部43の周方向に沿って左側に向けて配線され、接続部27Lを介して端子箱50Lに導入されている。
【0039】
また、第5系統用のサーミスタ45A5に接続された第2リード線46A51,46A52と、第6系統用のサーミスタ45A6に接続された第2リード線46A61,46A62と、第7系統用のサーミスタ45A7に接続された第2リード線46A71,46A72と、第8系統用のサーミスタ45A8に接続された第2リード線46A81,46A82が、コイルエンド部43の周方向に沿って右側に向けて配線され、接続部27Rを介して端子箱50Rに導入されている。
【0040】
図7に示すように、巻線42のコイルエンド部43には、巻線42の熱(温度変化)を検出し、所定の条件を満たした場合に(例えば所定の温度を超えた場合等)、第3リード線48の導通を遮断する複数のサーモスタット47A(第2温度センサの一例)が設けられている。サーモスタット47は一系統に2個ずつ設けられており、、第1系統用のサーモスタット47A11,47A12、第2系統用のサーモスタット47A21,47A22、第3系統用のサーモスタット47A31,47A32、第4系統用のサーモスタット47A41,47A42、第5系統用のサーモスタット47A51,47A52、第6系統用のサーモスタット47A61,47A62、第7系統用のサーモスタット47A71,47A72、第8系統用のサーモスタット47A81,47A82が設けられている。各サーモスタット47A(47A11〜47A82)は、例えば3相の巻線42の相間、すなわちU相−V相の巻線42間、V相−W相の巻線42間、又はW相−U相の巻線42間に設置されている。
【0041】
複数のサーモスタット47Aは、接続リード線49を介してコイルエンド部43の周方向に沿って互いに直列に接続されており、それらの複数のサーモスタット47Aの両端(この例ではサーモスタット47A22,47A31)に2本の第3リード線48が接続されている。これらの2本の第3リード線48は、端子箱50L,50Rの一方、この例では端子箱50Lに接続部27Lを介して導入されている。なお、第3リード線48を端子箱50Rに導入する構成としてもよい。
【0043】
次に、
図8及び
図9を用いて端子箱50L,50Rの内部構成の一例を説明する。
【0044】
図8に示すように、左側の端子箱50Lは、複数の第1リード線44が系統ごとに接続される複数(この例では4つ)の端子台55L、すなわち端子台55LA〜55LDと、サーミスタ45A用の2つの端子台56LA,56LBと、サーモスタット47A用の1つの端子台57Lと、1つの軸受温度用端子台58とを有する。
【0045】
第1リード線44用の第1〜第4の端子台55LA〜55LDは、端子箱本体51の幅方向(前後方向)の中央部近くに上下方向に沿って上から下に向けて順に配置されている。より詳細には、第1の端子台55LAと第4の端子台55LDとが端子箱本体51の幅方向前側寄り、第2の端子台55LBと第3の端子台55LCとが端子箱本体51の幅方向後側寄りに配置されている。これにより、第1の端子台55LAと第2の端子台55LBとが前後方向(回転軸心方向)に所定量ずれた互い違いの配置となり、それら端子台55LA,55LBの少なくとも一部が上下方向に重複するように配置されている。同様に、第3の端子台55LCと第4の端子台55LDとが前後方向に所定量ずれた互い違いの配置となり、それら端子台55LC,55LDの少なくとも一部が上下方向に重複するように配置されている。各端子台55LA〜55LDは、前側に3相の第1リード線44用の3つの端子座60を1列に有し、後側に3相のインバータケーブル9用の3つの端子座61を1列に有する。
【0046】
第2の端子台55LBと第3の端子台55LCとは、上下方向に離間して設けられている。これら端子台55LB,55LCの間には、サーモスタット用の端子台57Lが配置されている。また、端子台57Lの後方位置、すなわち端子台55LB,55LCの間の後方位置にはサーミスタ用の端子台56LA,56LBが上下方向に1列に設けられている。第2の端子台55LBと端子台56LA、端子台56LBと第3の端子台55LCは、前後方向に所定量ずれて配置されており、それら端子台55LB,56LAの少なくとも一部、及び、端子台56LB,55LCの少なくとも一部がそれぞれ上下方向に重複するように配置されている。
【0047】
軸受温度用端子台58は、端子箱本体51の上端部の前側寄りの位置に配置されている。軸受温度用端子台58と第1の端子台55LAは、前後方向に所定量ずれて配置されており、それら端子台58,55LAの少なくとも一部がそれぞれ上下方向に重複するように配置されている。
【0048】
端子台57Lの前方位置、すなわち端子台55LB,55LCの間の前方位置には、4つの環状のゴムブッシュ62と、4つのゴムブッシュ62の中央に位置するように配置された、ゴムブッシュ62よりも小さい1つの環状のゴムブッシュ63とが設けられている。反負荷側ブラケット17から導出された第1〜第4系統の第1リード線44は、接続部27Lを通って4つのゴムブッシュ62により系統ごとに区分されて端子箱本体51内に導入され、対応する端子台55LA〜55LDに接続される。具体的には、第1系統の第1リード線44U1,44V1,44W1は、第1系統に対応するゴムブッシュ62(この例では上側後方寄りのゴムブッシュ62)を通って第1の端子台55LAに導かれ、端子台55LAの3つの端子座60にねじ止めされる。第2系統の第1リード線44U2,44V2,44W2は、第2系統に対応するゴムブッシュ62(この例では上側前方寄りのゴムブッシュ62)を通って第2の端子台55LBに導かれ、端子台55LBの3つの端子座60にねじ止めされる。第3系統の第1リード線44U3,44V3,44W3は、第3系統に対応するゴムブッシュ62(この例では下側前方寄りのゴムブッシュ62)を通って第3の端子台55LCに導かれ、端子台55LCの3つの端子座60にねじ止めされる。第4系統の第1リード線44U4,44V4,44W4は、第4系統に対応するゴムブッシュ62(この例では下側後方寄りのゴムブッシュ62)を通って第4の端子台55LDに導かれ、端子台55LDの3つの端子座60にねじ止めされる。
【0049】
端子箱50Lには、第1〜第8インバータ4A〜4Hのうちの第1〜第4インバータ4A〜4Dに接続された複数のインバータケーブル9が端子箱本体51の後面の複数の挿通口53を通って導入される。複数のインバータケーブル9は、それぞれ端子台55LA〜55LDに導かれ、各端子台55LA〜55LDの3つの端子座61にねじ止めされる。これにより、回転電機10の第1〜第4系統の巻線群は、第1〜第4インバータ4A〜4Dとそれぞれ電気的に接続される。
【0050】
反負荷側ブラケット17から導出された第1〜第4系統用のサーミスタ45A(45A1〜45A4)用の8本の第2リード線46A(46A11〜46A42)と、2本の第3リード線48は、接続部27Lを通ってゴムブッシュ63から端子箱本体51内に導入される。そして、第1、第2系統用の4本の第2リード線46A11〜46A22は、端子台56LAの4つの端子接続部に固定される。第3、第4系統用の4本の第2リード線46A31〜46A42は、同様に端子台56LBの4つの端子接続部に固定される。一方、2本の第3リード線48は、端子台57Lの2つの端子接続部に固定される。
【0051】
負荷側の軸受温度計21及び反負荷側の軸受温度計22のそれぞれに接続された図示しない2本のリード線は、冷却ジャケット24の外方を端子箱50Lまで引き回される。そして、2本のリード線は、端子箱本体51の前面上部に設けられた2つの端子引き込みリード部64にそれぞれ接続される。各端子引き込みリード部64は、軸受温度用端子台58にリード線59を介して接続されている。
【0052】
図9に示すように、右側の端子箱50Rは、複数の第1リード線44が系統ごとに接続される複数(この例では4つ)の端子台55R、すなわち端子台55RA〜55RDと、サーミスタ45A用の2つの端子台56RA,56RBとを有している。前述の端子箱50Lと異なり、端子箱50Rにはサーモスタット用の端子台と軸受温度計用端子台は設けられていない。但し、これらの端子台を端子箱50Lではなく端子箱50Rに設ける構成としてもよい。
【0053】
第1リード線44用の第5〜第8の端子台55RA〜55RDは、端子箱本体51の幅方向(前後方向)の中央部近くに上下方向に沿って下から上に向けて順に配置されている。より詳細には、第5の端子台55RAと第8の端子台55RDとが端子箱本体51の幅方向前側寄り、第6の端子台55RBと第7の端子台55RCとが端子箱本体51の幅方向後側寄りに配置されている。これにより、第5の端子台55RAと第6の端子台55RBとが前後方向(回転軸心方向)に所定量ずれた互い違いの配置となり、それら端子台55RA,55RBの少なくとも一部が上下方向に重複するように配置されている。同様に、第7の端子台55RCと第8の端子台55RDとが前後方向に所定量ずれた互い違いの配置となり、それら端子台55RC,55RDの少なくとも一部が上下方向に重複するように配置されている。各端子台55RA〜55RDは、前側に3相の第1リード線44用の3つの端子座60を1列に有し、後側に3相のインバータケーブル9用の3つの端子座61を1列に有する。
【0054】
第6の端子台55RBと第7の端子台55RCとは、上下方向に離間して設けられている。これら端子台55RB,55RCの間の後方位置には、サーミスタ用の端子台56RA、56RBが上下方向に1列に設けられている。第6の端子台55RBと端子台56RA、端子台56RBと第7の端子台55RCは、前後方向に所定量ずれるように配置されており、それら端子台55RB,56RAの少なくとも一部、及び、端子台56RB,55RCの少なくとも一部がそれぞれ上下方向に重複するように配置されている。
【0055】
端子台55RB,55RCの間の前方位置には、4つの環状のゴムブッシュ62と、4つのゴムブッシュ62の中央に位置するように配置された、ゴムブッシュ62よりも小さい1つの環状のゴムブッシュ63とが設けられている。反負荷側ブラケット17から導出された第5〜第8系統の第1リード線44は、接続部27Rを通って4つのゴムブッシュ62により系統ごとに区分されて端子箱本体51内に導入され、対応する端子台55RA〜55RDに接続される。具体的には、第5系統の第1リード線44U5,44V5,44W5は、第5系統に対応するゴムブッシュ62(この例では下側後方寄りのゴムブッシュ62)を通って第5の端子台55RAに導かれ、端子台55RAの3つの端子座60にねじ止めされる。第6系統の第1リード線44U6,44V6,44W6は、第6系統に対応するゴムブッシュ62(この例では下側前方寄りのゴムブッシュ62)を通って第6の端子台55RBに導かれ、端子台55RBの3つの端子座60にねじ止めされる。第7系統の第1リード線44U7,44V7,44W7は、第7系統に対応するゴムブッシュ62(この例では上側前方寄りのゴムブッシュ62)を通って第7の端子台55RCに導かれ、端子台55RCの3つの端子座60にねじ止めされる。第8系統の第1リード線44U8,44V8,44W8は、第8系統に対応するゴムブッシュ62(この例では上側後方寄りのゴムブッシュ62)を通って第8の端子台55RDに導かれ、端子台55RDの3つの端子座60にねじ止めされる。
【0056】
端子箱50Rには、第1〜第8インバータ4A〜4Hのうちの第5〜第8インバータ4E〜4Hに接続された複数のインバータケーブル9が端子箱本体51の後面の複数の挿通口53を通って導入される。複数のインバータケーブル9は、それぞれ端子台55RA〜55RDに導かれ、各端子台55RA〜55RDの3つの端子座61にねじ止めされる。これにより、回転電機10の第5〜第8系統の巻線群は、第5〜第8インバータ4E〜4Hとそれぞれ電気的に接続される。
【0057】
反負荷側ブラケット17から導出された第5〜第8系統用のサーミスタ45A(45A5〜45A8)用の8本の第2リード線46A(46A51〜46A82)は、接続部27Rを通ってゴムブッシュ63から端子箱本体51内に導入される。そして、第5、第6系統用の4本の第2リード線46A51〜46A62は、端子台56RAの4つの端子接続部に固定される。第7、第8系統用の4本の第2リード線46A71〜46A82は、同様に端子台56RBの4つの端子接続部に固定される。
【0058】
以上において、上述した第1リード線44の配線構成、接続部27L,27R、端子箱50L,50Rが、ハウジングの内部で配線された複数の第1リード線を、系統単位で分配してハウジングの外側に導出する手段の一例に相当する。
【0059】
<5.実施形態の効果>
以上説明したように、本実施形態の回転電機10は、ハウジング20と、ハウジング20に収容されたステータコア41と、ステータコア41に配置され、1つのインバータ4と電気的に接続される複数の巻線42を1つの系統の巻線群とした場合に、複数のインバータ4A〜4Hと電気的に接続される複数系統の巻線群と、複数系統の巻線群と電気的に接続され、ハウジング20の内部で配線された複数の第1リード線44と、ハウジング20の外周の複数箇所に配置され、複数の第1リード線44が系統単位で分配されて導入された複数の端子箱50L,50Rと、を有する。これにより、次の効果を奏する。
【0060】
すなわち、本実施形態の回転電機10は、1台の回転電機が複数のインバータ4に電気的に接続された、いわゆる多重巻線型の回転電機である。多重巻線型の回転電機は、インバータ4ごとに互いに独立した複数系統の巻線群を有している。各系統の巻線群は、1つのインバータ4に電気的に接続される複数の巻線42(少なくとも1組の3相巻線)で構成される。このため、巻線42が多数となり、ハウジング20の内部で多数の第1リード線44が配線されることとなり、配線スペースが増大する。
【0061】
本実施形態では、ハウジング20の外周の2箇所に端子箱50L,50Rが配置されており、複数の第1リード線44が系統単位で各端子箱50L,50Rに分配されて導入されている。これにより、端子箱が1つの場合(全ての第1リード線44を1箇所から引き出す場合)に比べて、ハウジング20の内部における第1リード線44の配線長さを短縮できると共に、束ねられる第1リード線44の本数を減少できるので、配線スペースを縮小できる。また、1つの端子箱に導入される第1リード線44の本数を減少できるので、端子箱50L,50Rや接続部27L,27Rについても小型化できる。したがって、回転電機10を多重巻線構造とすることで大容量化しつつ、サイズを小型化することが可能となる。
【0062】
また、本実施形態では特に、端子箱50L,50Rは、回転軸心方向に垂直な方向においてハウジング20の両側に接続部27L,27Rを介して設置されており、第1リード線44は、2つの端子箱50L,50Rのうち、電気的に接続された巻線42のコイルエンド部43と接続部27L,27Rとの距離が短い方の端子箱に導入されている。
【0063】
これにより、ハウジング20の内部における第1リード線44の配線長さの短縮効果をより高めることができる。また、2つの端子箱50L,50Rをハウジング20の左右両側に配置することにより、回転電機10全体の重量バランスを向上させ、振動や騒音を低減できる。
【0064】
また、本実施形態では特に、巻線42の温度変化を検出する複数のサーミスタ45と、複数のサーミスタ45の各々に2本ずつ電気的に接続された複数の第2リード線46と、を有し、第2リード線46は、2つの端子箱50L,50Rのうち、電気的に接続されたサーミスタ45と接続部27L,27Rとの距離が短い方の端子箱に導入されている。これにより、次の効果を奏する。
【0065】
すなわち、巻線42の温度変化を検出するサーミスタ45を設けることにより、巻線42が過熱状態となったときにアラームを出す等の措置が可能となる。これにより、回転電機10の過負荷保護機能を高めることができる。また、ハウジング20の内部における第2リード線46の配線長さを短縮できると共に、束ねられる第2リード線46の本数を減少できるので、配線スペースを縮小できる。したがって、回転電機10を小型化できる。
【0066】
また、本実施形態では特に、互いに直列に接続され、巻線42の温度変化を検出して所定の条件が満たされた場合に導通を遮断する複数のサーモスタット47Aと、複数のサーモスタット47Aに電気的に接続された2本の第3リード線48と、を有し、2本の第3リード線48は、端子箱50L,50Rのうちのいずれか1つの端子箱に導入されている。
【0067】
これにより、第3リード線48が導入される端子箱を任意に選択することができる。その結果、例えば回転電機10の使用環境等に応じて第3リード線48の引き出し位置を変更することが可能となる。したがって、回転電機10の設計の自由度を向上できると共に、ユーザのニーズに柔軟に対応することができる。
【0068】
また、本実施形態では特に、シャフト31と、シャフト31を回転自在に支持する複数の軸受18,19と、を有し、複数の軸受18,19は、径方向において少なくとも一部が巻線42のコイルエンド部43の内側に位置するように配置された反負荷側軸受19を含む。
【0069】
これにより、反負荷側軸受19の少なくとも一部と巻線42のコイルエンド部43とを軸方向に重複するように配置できるので、回転電機10の軸方向寸法を短縮できる。
【0070】
また、本実施形態では特に、端子箱50L(50R)は、複数の第1リード線44が系統ごとに接続される複数の端子台55L(55R)を有しており、複数の端子台55L(55R)の少なくとも一部は、端子箱50L(50R)内における回転軸心方向の位置が所定量ずれるように配置されている。
【0071】
これにより、複数の端子台55L(55R)を回転軸心方向の位置が互い違いとなるように配置することが可能となる。したがって、複数の端子台55L(55R)を回転軸心方向で同一位置となるように配置する場合に比べて、端子箱50L(50R)の高さ寸法を短縮できる。また、各系統間の絶縁を確保できると共に、各端子台55L(55R)への配線作業性を向上できる。
【0072】
<6.変形例>
なお、開示の実施形態は、上記に限られるものではなく、その趣旨及び技術的思想を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。
【0073】
以上では、複数の第1リード線44が反負荷側ブラケット17(ハウジング20)の内部において巻線42のコイルエンド部43の反負荷側(後側)に配線される場合について説明したが、第1リード線44の配置はこれに限定されるものではない。例えば、第1リード線44をコイルエンド部43の径方向外側に配置してもよい。本変形例における複数の第1リード線44の配線構成の一例を
図10に示す。
図10において
図2に付した符号と同一の符号は同一の部材を示す。
【0074】
図10に示すように、本変形例では、複数の第1リード線44は、回転軸心AXに対する径方向において巻線42のコイルエンド部43の外側に配線されている。これにより、第1リード線44の配線スペースと巻線42のコイルエンド部43とを軸方向に重複するように配置できるので、回転電機10の軸方向寸法をさらに短縮できる。
【0075】
なお、以上の説明において、「垂直」「平行」「平面」等の記載がある場合には、当該記載は厳密な意味ではない。すなわち、それら「垂直」「平行」「平面」とは、設計上、製造上の公差、誤差が許容され、「実質的に垂直」「実質的に平行」「実質的に平面」という意味である。
【0076】
また、以上の説明において、外観上の寸法や大きさ、形状、位置等が「同一」「同じ」「等しい」「異なる」等の記載がある場合は、当該記載は厳密な意味ではない。すなわち、それら「同一」「同じ」「等しい」「異なる」とは、設計上、製造上の公差、誤差が許容され、「実質的に同一」「実質的に同じ」「実質的に等しい」「実質的に異なる」という意味である。
【0077】
また、以上既に述べた以外にも、上記実施形態や変形例による手法を適宜組み合わせて利用しても良い。その他、一々例示はしないが、上記実施形態や変形例は、その趣旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更が加えられて実施されるものである。