(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6653089
(24)【登録日】2020年1月29日
(45)【発行日】2020年2月26日
(54)【発明の名称】三相同期機駆動発電装置
(51)【国際特許分類】
H02K 3/28 20060101AFI20200217BHJP
【FI】
H02K3/28 J
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-14894(P2016-14894)
(22)【出願日】2016年1月12日
(65)【公開番号】特開2017-127170(P2017-127170A)
(43)【公開日】2017年7月20日
【審査請求日】2018年12月8日
【権利譲渡・実施許諾】特許権者において、権利譲渡の用意がある。
(73)【特許権者】
【識別番号】596137830
【氏名又は名称】有限会社シー・アンド・エス国際研究所
(72)【発明者】
【氏名】新中 新二
【審査官】
池田 貴俊
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−115086(JP,A)
【文献】
特開2015−039256(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2015/0155764(US,A1)
【文献】
特開2015−106972(JP,A)
【文献】
中国実用新案第202798544(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転子と三相巻線を有する固定子とから構成される三相同期機と、三相同期機と三相電流を送受する電力変換手段とからなる同期機駆動発電装置であって、
Npを正の偶数とし、
u相電流に対してv相電流が位相遅れ、v相電流に対してw相電流が位相遅れとする相順の三相電流を正相三相電流と定義し、正相三相電流の相電流を相順に従って各々流す相巻線を、u相巻線、v相巻線、w相巻線とし、
u相巻線、v相巻線、w相巻線をY形あるいはこれと特性等価なΔ形で結線した三相巻線の1組を1巻線組とするとき、
該三相同期機の回転子を、極対数がNpで、かつ、回転子が突極特性を示す場合にはすべての正突極あるいはすべての負突極の磁気特性が同様な回転子とし、回転子が非突極特性を示す場合にはすべての非突極の磁気特性が同様な回転子とし、
互いに独立した第1巻線組、第2巻線組を、u相巻線、v相巻線、w相巻線の空間的位相が2極対数を基準とした空間において順次120度空間的位相遅れとなるように、かつ第1巻線組と第2巻線組との空間的位相差が2極対数を基準とした空間において±180度となるように構成し、
該三相同期機の固定子を、上記構成した第1巻線組と第2巻線組とを備えた固定子とし、該電力変換手段を、上記固定子に備えられた第1巻線組と第2巻線組とに対して、ロバスト性を確保できるよう、第1巻線組と第2巻線組の両者によるトルク発生運転、第1巻線組のみによるトルク発生運転、第2巻線組のみによるトルク発生運転と言う3種トルク発生運転の切換を達成する完全独立な形式で、トルク発生運転を目的とした三相電流のみを送受できるように構成した
ことを特徴とする同期機駆動発電装置。
【請求項2】
該三相同期機を、回転子に永久磁石を備えた永久磁石形三相同期機とし、さらには備えた永久磁石をN極とS極でNS極性相違を除き磁気特性が同様かつ不可変の永久磁石のみとしたことを特徴とする請求項1記載の同期機駆動発電装置。
【請求項3】
該同期機駆動発電装置において、第1巻線組と電力変換手段とで構成される三相電流送受系統を第1系統とし、第2巻線組と電力変換手段とで構成される三相電流送受系統を第2系統とし、また第1系統のu相、v相、w相電流と第2系統のu相、v相、w相電流とが、相電流ごとに同相であることを「同相の三相電流」と定義するとき、
第1、第2の2系統が共に正常の場合には、2系統で基本的に同相の三相電流を各々送受できるように、2系統の1個が異常で他が正常の場合には、異常な系統は三相電流遮断し、正常な系統のみを利用して三相電流を送受するように、該電力変換手段を構成したことを特徴とする請求項1記載の同期機駆動発電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリ電気自動車、燃料電池電気自動車、ハイブリッド電気自動車の主駆動三相同期機(三相永久磁石形同期機、三相界磁巻線形同期機、三相同期リラクタンス機など)に好適な三相同期機駆動発電装置に関する。
【0002】
同期機(永久磁石形同期機、界磁巻線形同期機、同期リラクタンス機など)は、力行モードでは、電気エネルギーを機械エネルギーに変換するいわゆる電動機状態となる。これに対して、回生モードでは、機械エネルギーを電気エネルギーに変換するいわゆる発電機状態となる。当業者には、周知のように、同期機などの電気機器は、主として力行モードで使用される場合には、電動機あるいはモータと呼ばれ、主として回生モードで使用される場合には、発電機と呼ばれる。力行と回生の運転モードの相違を除けば、電動機も発電機も、基本的には同一である。本発明は、同期電動機と同期発電機を総じて同期機と称している。なお、説明の簡明性を確保すべく、本明細書における技術説明は、力行モードを想定して行なう。これにより、本発明の一般性を失うことなない。
【0003】
本発明では、三相を構成する各相をu相、v相、w相と呼称し、三相電流の各相における相電流をu相電流、v相電流、w相電流と呼称する。また、u相電流に対してv相電流が位相遅れ、v相電流に対してw相電流が位相遅れとする「相順」の三相電流を正相三相電流と定義する。正相三相電流の相電流を、「相順」に従って、各々流す相巻線を、u相巻線、v相巻線、w相巻線と定義する。この相巻線定義に従えば、正相三相電流のu相電流、v相電流、w相電流を流す相巻線を、各々、u相巻線、v相巻線、w相巻線と呼称することも、あるいは各々、v相巻線、w相巻線、u相巻線と呼称することもできる。いずれの相巻線の呼称においても、巻線に流れる電流の「相順」は変わりない。
【0004】
本発明では、同期機の「固定子」を「電機子」と同義で使用する。固定子に施される三相巻線には、Y形とΔ形が存在する。当業者には周知のように、三相端子から評価した場合、Y形巻線による特性とΔ形巻線による特性は互いに等価変換される。説明の簡明性を確保すべく、本明細書における技術説明は、Y形結線を想定して行なう。等価変換の存在より明白なように、これにより、本発明の一般性を失うことなない。
【0005】
本発明では、u相巻線、v相巻線、w相巻線をY形あるいはこれと特性等価なΔ形で結線した三相巻線の1組を1巻線組と呼称する。「巻線組」は、広義の「巻線」に属するが、本発明では、複数の独立した巻線組を使用するため、独立性を明示すべく、「巻線組」なる新たな用語を使用する。また、複数の「巻線組」の総称として、狭義の「巻線」なる用語を使用する。
【0006】
本発明では、2次元平面を極座標的に捉え、角度、空間的位置、空間的位相の3用語を同義で使用する。これらの単位は「度(degree)」または「ラジアン(rad)」である。本発明における角度、空間的位置、空間的位相の正方向は、左周り(反時計周り)、右周り(時計周り)のいずれに定義してもよい。ただし、本明細書では、角度、空間的位置、空間的位相の正方向は左周り(反時計周り)と定義し、本発明を説明する。これにより、本発明の一般性を失うことはない。
【背景技術】
【0007】
回転子に永久磁石あるいは界磁巻線をもたせた同期機のための駆動発電装置として、従来、固定子に2個の独立した三相巻線組を持たせ、各巻線組に独立に電力変換器を接続したものが知られている。この種の先行発明としては、特許文献1〜3がある。なお、特許文献4〜5には、基本的に誘導機のための駆動発電装置として、固定子に2個の独立した三相巻線組を持たせ、各巻線組に独立に電力変換器を接続したものが報告されている。本発明は、交流機として同期機のみを対象とするものであり、本発明と関係の深い先行発明は、特許文献1〜3である。
【0008】
特許文献1〜3を参考に、従前の同期機のための駆動発電装置の概要を、永久磁石形三相同期機を例にとり、
図2に示した。1は同期機(回転子、固定子を含む)を、1−1は同期機の回転子を、1−21は同期機固定子の第1巻線組を、1−22は同期機固定子の第2巻線組を、2は電力変換部を、2−21は第1系統用電力変換器を、2−22は第2系統用電力変換器を、それぞれ示している。同図では、固定子の第1巻線組と第2巻線組との区別の明瞭化を図るべく、第1巻線組は太線で、第2巻線組は細線で表示している。
【0009】
同図は、当該装置の一般性を失うことなく、以下を前提に作図している。
▲1▼ 同期機を正回転・力行駆動するための正相三相電流は、電力変換部2の2個の端子組「u1、v1、w1」、「u2、v2、w2」から順次出力されるものとしている。
▲2▼ 同期機固定子の第1巻線組1−21を構成するu相巻線、v相巻線、w相巻線の端子をu1、v1、w1としている。同様に、第2巻線組1−22を構成するu相巻線、v相巻線、w相巻線の端子をu2、v2、w2としている。
▲3▼ 同期機の回転子の正回転の方向を、左回転(反時計方向)としている。
▲4▼ 三相結線におけるY結線とΔ結線の間には等価関係が存在することを考慮し、同図ではこの代表としてY結線を用いている。
【0010】
従前の三相同期機のための駆動発電装置の特徴は、
図2より明白なように、以下のように整理される。
▲1▼ 回転子に関し、その極対数は1(すなわち、N極とS極が各々1つの計2極)としている。
▲2▼ 第1巻線組1−21と第2巻線組1−22とは、互いに独立している。
▲3▼ 第1巻線組、第2巻線組のいずれにおいても、u相巻線、v相巻線、w相巻線を、「1極対数を基準とした空間において120度空間的位相進みの位置」に順次配置している。
▲4▼ 第1巻線組と第2巻線組の空間的位相差θ12は、1極対数を基準とした空間において30度(特許文献1〜2)、あるいは60度(特許文献1〜2)、あるいは24度(特許文献3)である。
▲5▼ 第1巻線組と第2巻線組の空間的位相差θ12に対応した形で、第1巻線組と第2巻線組に印加する三相電流に時間的位相差を付与すべく、電力変換器のスイッチングを行う必要がある(特許文献1〜2)。
【0011】
なお、上記▲5▼に示したスイッチング条件下では、空間的位相差θ12を60度(特許文献1〜2)に選定する場合には、本同期機は、厳密には、もはや三相同期機ではなく、実質的に六相同期機となる。本同期機が六相同期機になる場合にも、本同期機の極対数が1(すなわち、N極とS極が各々1つの計2極)であることは変わりない。
【0012】
上記先行発明が期待した代表的効果は、次の2点である。
▲1▼ 第1巻線組と第2巻線組のいずれか1つの巻線組が異常を起こした場合にも、正常の巻線組を利用して同期機の運転が可能である。すなわち、異常に対する装置としてのロバスト性(頑健性)を向上できる。
▲2▼ 発生トルクのリプルを低減できる。ひいてはトルクリプルに起因する騒音を低減できる。
【0013】
しかしながら、
図2により容易に理解されるように、第1巻線組と第2巻線組との空間的対称性が必ずしも良くなく、固定子に巻線を施す場合、特別の工夫・細工が必要とされた。また、巻線組の空間的非対称性より、新たなトルクリプルを起すこともあった。ひいては新たな騒音を引起すこともあった。更には、電力変換器のスイッチング信号を、第1巻線組と第2巻線組との空間的位相差を考慮して、おのおの個別に生成する必要があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】伴在慶一郎・大林和良:「自動車用電動駆動装置」、特開第2000−41392号(1998−7−23)
【特許文献2】鳥井孝史:「車両用同期電動機装置」、特開第2003−174790号(2001−12−5)
【特許文献3】金澤宏至・小林孝司・日野徳昭・白川真司・増野敬一・土屋雅範:「車両用駆動発電システム」、特開第2006−33897号(2004−7−12)
【特許文献4】大川宏・長田正彦・谷口真:「車載用モータ装置」、特開第2007−295720号(2006−4−25)
【特許文献5】大川宏・長田正彦・谷口真:「車載用モータ装置」、特開第2012−80773号(2012−1−19)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は上記背景の下になされたものであり、その目的は、従前装置による主要効果(駆動発電装置としてのロバスト性(頑健性)の向上、トルクリプルの低減)を維持しつつ、従前装置が問題とした第1巻線組と第2巻線組との空間的非対称性の排除が可能で、ひいては固定子に巻線を施す場合に特別の工夫・細工を必要としない、さらには巻線組の空間的非対称性に起因したトルクリプルを低減でき、騒音を一段と低減でき、加えて、電力変換器のスイッチング信号の発生が容易な三相同期機駆動発電装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、回転子と三相巻線を有する固定子とから構成される三相同期機と、三相同期機と三相電流を送受する電力変換手段とからなる同期機駆動発電装置であって、Npを正の偶数とし、u相電流に対してv相電流が位相遅れ、v相電流に対してw相電流が位相遅れとする相順の三相電流を正相三相電流と定義し、正相三相電流の相電流を相順に従って各々流す相巻線を、u相巻線、v相巻線、w相巻線とし、u相巻線、v相巻線、w相巻線をY形あるいはこれと特性等価なΔ形で結線した三相巻線の1組を1巻線組とするとき、該三相同期機の回転子を、極対数Npの回転子とし、互いに独立した第1巻線組、第2巻線組を、u相巻線、v相巻線、w相巻線の空間的位相が2極対数を基準とした空間において順次120度空間的位相遅れとなるように、かつ第1巻線組と第2巻線組との空間的位相差が2極対数を基準とした空間において±180度となるように構成し、該三相同期機の固定子を、上記構成した第1巻線組と第2巻線組とを備えた固定子とし、該電力変換手段を、上記固定子に備えられた第1巻線組と第2巻線組とに対して、完全独立的に三相電流を送受できるように構成したことを特徴とする。
【0017】
請求項2の発明は、請求項1記載の同期機駆動発電装置であって、該三相同期機を、回転子に永久磁石を備えた永久磁石形三相同期機としたことを特徴とする。
【0018】
請求項3の発明は、請求項1記載の該同期機駆動発電装置において、第1巻線組と電力変換手段とで構成される三相電流送受系統を第1系統とし、第2巻線組と電力変換手段とで構成される三相電流送受系統を第2系統とし、また第1系統のu相、v相、w相電流と第2系統のu相、v相、w相電流とが、相電流ごとに同相であることを「同相の三相電流」と定義するとき、第1、第2の2系統が共に正常の場合には、2系統で基本的に同相の三相電流を各々送受できるように、2系統の1個が異常で他が正常の場合には、異常な系統は三相電流遮断し、正常な系統のみを利用して三相電流を送受するように、該電力変換手段を構成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明の効果を説明する。まず請求項1の発明の効果を説明する。
図1は、請求項1の発明に基づく代表的な実施形態例である。ただし、三相同期機として、回転子に永久磁石を備えた永久磁石形三相同期機を対象とした例としている。本図より、以下の効果が明白である。
【0020】
▲1▼ 同期機の固定子は、独立した第1巻線組と第2巻線組を備えている。また、固定子に備えられた第1巻線組と第2巻線組とに対して、完全独立的に三相電流を送受できるように電力変換手段が構成されている。これにより、請求項1の発明によれば、第1巻線組からなる第1系統、第2巻線組からなる第2系統のいずれかが異常の場合にも、正常の系統を利用して同期機を運転することができると言う効果が得られる。すなわち、装置としてのロバスト性を確保できると言う効果が得られる。
【0021】
▲2▼ 交流機は、概して、極対数の増加に応じてトルクリプルが低減されると言う特性をもつ。従前の技術を説明した
図2と本発明を説明した
図1との比較より明白なように、従前と本発明における巻線組が同一の場合(空間配置を除く)、本発明の同期機の極対数は、従前の同期機の極対数の2倍となる。ひいては、請求項1の発明によれば、トルクリプルを低減できると言う効果が得られる。
【0022】
▲3▼
図1より明白なように、2個の巻線組を構成する相巻線の空間的配置は、高い対称性を有する。この結果、請求項1の発明によれば、固定子への巻線施工が簡単になると言う効果が得られる。
【0023】
▲4▼ 相巻線の空間対称性により、非対称性に起因するトルクリプルを低減できると言う効果も得られる。ひいては、請求項1の発明によれば、トルクリプルに起因する騒音を低減できると言う効果も得られる。
【0024】
▲5▼ 2個の巻線組の高い対称性に起因して、第1巻線組からなる第1系統と、第2巻線組からなる第2系統とは、互いに同相の電流を送受することになる。これは、基本的に、第1系統のための電力変換器のスイッチング信号と第2系統のための電力変換器のためのスイッチング信号は同一でよいことを意味する。ひいては、請求項1の発明によれば、電力変換器のスイッチング信号の発生が半減されるあるいは容易になると言う効果が得られる。
【0025】
つづいて、請求項2の発明の効果を説明する。各種電気自動車において最も多用されている三相同期機は、永久磁石形三相同期機である。ひいては、請求項2の発明によれば、請求項1の発明の効果を、応用面において最も高めることができると言う効果が得られる。
【0026】
つづいて、請求項3の発明の効果を説明する。請求項3の発明によれば、第1系統と第2系統が共に正常の場合には、同期機駆動発電装置は、三相同期機に対し、これが元来有している最大を能力を発揮させることができる。また、第1系統、第2系統のいずれかが異常の場合には、三相同期機の発揮能力は元来の半分となるが、能力発揮を継続することができる。すなわち、請求項3の発明によれば、請求項1の重要効果の1つであるロバスト性を最大限高めることができると言う効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】 「本発明による三相同期機駆動発電装置の代表的実施形態例を示す図」
【
図2】 「従前の永久磁石形三相同期機のための駆動発電装置の代表的実施形態例を示す図」
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面を用いて、本発明の好適な態様を具体的に説明する。
【実施例1】
【0029】
三相同期機として、回転子に永久磁石を備えた永久磁石形三相同期機を対象とした実施形態例を
図1に示した。1は三相同期機(回転子、固定子を含む)を、1−1は同期機の回転子を、1−21は同期機固定子の第1巻線組を、1−22は同期機固定子の第2巻線組を、2は電力変換手段を実現した電力変換部を、2−1は電力変換部統合制御器を、2−21は第1系統用電力変換器を、2−22は第2系統用電力変換器を、2−31は第1系統用遮断器を、2−32は第2系統用遮断機を、それぞれ示している。同図では、固定子の第1巻線組1−21と第2巻線組1−22との区別の明瞭化を図るべく、第1巻線組は太線で、第2巻線組は細線で表示している。
【0030】
同図は、当該装置の一般性を失うことなく、以下を前提に作図している。
▲1▼ 三相同期機を正回転・力行駆動するための正相三相電流は、電力変換部2の2個の端子組「u1、v1、w1」、「u2、v2、w2」から順次出力されるものとしている。
▲2▼ 三相同期機固定子の第1巻線組1−21を構成するu相巻線、v相巻線、w相巻線の端子をu1、v1、w1としている。同様に、第2巻線組1−22を構成するu相巻線、v相巻線、w相巻線の端子をu2、v2、w2としている。
▲3▼ 三相同期機の回転子の正回転の方向を、左回転(反時計方向)としている。
▲4▼ 三相結線におけるY結線とΔ結線の間には等価関係が存在することを考慮し、同図ではこの代表としてY結線を用いている。
【0031】
請求項1〜3に基づく本発明の説明のための上記の前提は、従前技術を解説した
図2に適用した前提と同一である。
【0032】
請求項1〜3の発明に基づく
図1の実施例は、三相同期機に関し、以下の特徴を有する。
▲1▼ 回転子に関し、その極対数Npは偶数である(本例ではNp=2、すなわちN極とS極が各々2つの計4極)
▲2▼ 第1巻線組1−21と第2巻線組1−22とは、互いに独立している。
▲3▼ u1、v1、w1端子に対応した3つの相巻線からなる第1巻線組、u2、v2、w2端子に対応した3つの相巻線からなる第2巻線組のいずれにおいても、u相巻線、v相巻線、w相巻線を、「2極対数を基準とした空間において、順次120度空間的位相遅れ」となるように順次配置している。
▲4▼ 第1巻線組と第2巻線組の空間的位相差は、2極対数を基準とした空間において±180度である。
【0033】
図2に示した従前の同期機駆動発電装置における同期機と、
図1に示した本発明による三相同期機駆動発電装置における三相同期機の相違は、上記の▲1▼、▲3▼、▲4▼項にある。従前の同期機において、第1巻線組と第2巻線組の空間的位相差θ12を60度に選定する場合には、
図2の従前同期機と
図1の本発明の三相同期機との間は、高い類似性があるような印象を、一見与える。しかし両同期機の間には以下のような明瞭な違いがある
【0034】
▲1▼ 従前の同期機の極対数は1である(したがって、極数は2)。これに対し、本発明による三相同期機の極対数は従前の2倍、すなわち極対数は2である(したがて、極数は4)。
▲2▼ 従前の同期機は、第1巻線組、第2巻線組のいずれにおいても、u相巻線、v相巻線、w相巻線を、「1極対数を基準とした空間において120度空間的位相進みの位置」に順次配置する。これに対し、本発明の同期機は、第1巻線組、第2巻線組のいずれにおいても、u相巻線、v相巻線、w相巻線を、「2極対数を基準とした空間において、順次120度空間的位相遅れ」となるように順次配置する。すなわち、本発明の同期機における相巻線の相対位置は、従前の同期機における相巻線の相対位置の真逆である。
▲3▼ 従前の同期機は、第1巻線組と第2巻線組の空間的位相差θ12を60度に選定する場合には、六相同期機として動作し、第1、第2巻線組に対応した系統のいずれかを遮断した場合に限り、三相同期機となる。これに対し、本発明による同期機は、第1、第2巻線組に対応した系統が共に正常な場合にも、またいずれかの系統を遮断した場合にも、三相同期機として動作する。すなわち、いかなる運転状態であれ、運転時は常時、三相同期機として動作する。
【0035】
請求項1〜3の発明に従った
図1の実施例は、電力変換部(電力変換手段の実現)2に関し、以下の特徴を有する。
▲1▼ 電力変換部2は、第1巻線組にのみ接続された第1系統電力変換器2−21と第2巻線組にのみ接続された第2系統電力変換器2−22とを有する構成となっている。すなわち、電力変換部2は、第1巻線組と第2巻線組とに対して、完全独立的に三相電流を送受できるように構成されている。
▲2▼ 第1系統電力変換器2−21と第2系統電力変換器2−22への各々6個のスイッチング信号は、単一の電力変換部統合制御器2−1から送り出される構成となっている。本構成では、第1系統電力変換器2−21へのスイッチング信号と第2系統電力変換器2−22へのスイチング信号を同一とすれば、第1系統の三相電流と第2系統の三相電流を基本的に同相とすることができる。
▲3▼ 互いに独立した第1系統と第2系統は、各系統用電力変換器と各系統三相端子(u1、v1、w1端子とu2、v2、w2端子)との間に、各々、独立した系統用遮断器2−31、2−32を備えている。しかも、各系統用遮断器のオン・オフ指令は、電力変換部統合制御器から、独立的に与えられるように構成されている。電力変換部統合制御器は、各系統の正常・異常に応じて各系統用遮断器のオン・オフ指令を発することができるので、本構成によれば、2系統のいずれか1個が異常の場合には、正常な系統のみを利用して、電力変換部と三相同期機との間で三相電流を送受することができる。
【0036】
なお、第1系統用電力変換器と第2系統用電力電力変換器においては、電力変換の対象となる直流電力に関し、共有する形で直流電力を保持することも、あるいは系統ごとに独立した形で直流電力を保持することも可能である。
【実施例2】
【0037】
図1を用いた実施形態例では、回転子の極対数を2とした例を示した。請求項1〜3の発明は、これに限定されるものでなく、極対数が偶数(2、4、6、8・・)であれば、問題なく適用される。なお、当業者には、
図1の極対数2の実施形態例を参照することで、極対数を4、6あるいは8などに選定した場合の実施形態は容易に理解されるので、この説明は省略する。
【実施例3】
【0038】
図1を用いた実施形態例では、三相同期機として、回転子に永久磁石を有する永久磁石形三相同期機を用いた例を示した。請求項1、請求項3の発明は、これに限定されるものでなく、回転子に永久磁石に代わって界磁巻線を有する界磁巻線形三相同期機、さらには回転子に界磁を有しない三相同期リラクタンス機などにも、適用される。この場合の実施形態例は、
図1と実質的な相違はない。このため、これ以上の説明は省略する。
【実施例4】
【0039】
図1を用いた実施形態例では、電力変換部に各系統専用の電流遮断のための系統用遮断器2−31、2−32を備えさせた。各系統専用の電力変換器2−21、2−22へのスイチング信号を介して系統の三相電流を遮断できる場合には、系統用遮断器2−31、2−32は不要であり、撤去できる。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、バッテリ電気自動車、燃料電池電気自動車、ハイブリッド電気自動車の主駆動三相同期機(三相永久磁石形同期機、三相界磁巻線形同期機、三相同期リラクタンス機など)のための駆動発電装置に好適である。
【符号の説明】
【0041】
1 三相同期機
1−1 三相同期機の回転子
1−21 三相同期機の固定子の第1巻線組
1−22 三相同期機の固定子の第2巻線組
2 電力変換部
2−1 電力変換部統合制御器
2−21 第1系統用電力変換器
2−22 第2系統用電力変換器
2−31 第1系統用遮断器
2−32 第2系統用遮断器