特許第6653206号(P6653206)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6653206
(24)【登録日】2020年1月29日
(45)【発行日】2020年2月26日
(54)【発明の名称】液封防振装置
(51)【国際特許分類】
   F16F 13/10 20060101AFI20200217BHJP
   F16B 5/07 20060101ALI20200217BHJP
【FI】
   F16F13/10 H
   F16F13/10 L
   F16B5/07 L
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-72389(P2016-72389)
(22)【出願日】2016年3月31日
(65)【公開番号】特開2017-180779(P2017-180779A)
(43)【公開日】2017年10月5日
【審査請求日】2019年3月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000177900
【氏名又は名称】山下ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】門脇 宏和
【審査官】 熊谷 健治
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2012/0267184(US,A1)
【文献】 特開2009−92137(JP,A)
【文献】 特開2006−57847(JP,A)
【文献】 特開2013−243858(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 11/00−13/30
F16B 5/00− 5/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動源側に取り付けられる第1取付部材と、非振動源側に取り付けられる第2取付部材と、前記第1取付部材と前記第2取付部材との間に介設されたインシュレータと、を備えた液封防振装置であって、
前記第2取付部材は、前記インシュレータの下部に接続される筒形の第1枠体と、前記インシュレータの下方に配置される仕切部材を保持する筒形の第2枠体と、前記第1枠体と、前記第2枠体とを連結する連結具と、を備えており、
前記連結具は、
前記第1枠体と前記第2枠体の一方に設けられた複数の係止部と、
他方に設けられ前記係止部に係止される複数の弾性フック部と、を備えており、
前記第1枠体および第2枠体のうち、前記弾性フック部が設けられる枠体は、対向する一対の直線状の主枠部と、前記主枠部の端部同士を繋ぐ一対の側枠部と、を備えており、
前記弾性フック部は、
枠体の周方向に間隔を空けて前記主枠部に設けられているとともに、前記主枠部と前記側枠部との角部に設けられており、
前記角部に配置される前記弾性フック部は、前記主枠部に配置される前記弾性フック部に比べて剛性が低いことを特徴とする液封防振装置。
【請求項2】
振動源側に取り付けられる第1取付部材と、非振動源側に取り付けられる外筒部材としての第2取付部材と、前記第1取付部材と前記第2取付部材との間に介設されたインシュレータと、を備えた液封防振装置であって、
前記第2取付部材は、前記インシュレータの下部に接続される筒形の第1枠体と、前記インシュレータの下方に配置される仕切部材を保持する筒形の第2枠体と、前記第1枠体と、前記第2枠体とを連結する連結具と、を備えており、
前記連結具は、
前記第1枠体と前記第2枠体の一方に設けられた複数の係止部と、
他方に設けられ前記係止部に係止される複数の弾性フック部と、を備えており、
前記第1枠体および第2枠体のうち、前記弾性フック部が設けられる枠体は、対向する一対の直線状の主枠部と、前記主枠部の端部同士を繋ぐ一対の側枠部と、を備えており、
前記弾性フック部は、
枠体の周方向に間隔を空けて前記主枠部に設けられており、
前記複数の弾性フック部のうち、前記主枠部の端部に配置される前記弾性フック部は、前記端部から離れた位置に配置される前記弾性フック部に比べて剛性が低いことを特徴とする液封防振装置。
【請求項3】
振動源側に取り付けられる第1取付部材と、非振動源側に取り付けられる外筒部材としての第2取付部材と、前記第1取付部材と前記第2取付部材との間に介設されたインシュレータと、を備えた液封防振装置であって、
前記第2取付部材は、前記インシュレータの下部に接続される筒形の第1枠体と、前記インシュレータの下方に配置される仕切部材を保持する筒形の第2枠体と、前記第1枠体と、前記第2枠体とを連結する連結具と、を備えており、
前記連結具は、
前記第1枠体と前記第2枠体の一方に設けられた係止部と、
他方に設けられ前記係止部に係止される弾性フック部と、を備えており、
前記第1枠体および第2枠体のうち、前記弾性フック部が設けられる枠体は、剛性の低い低剛性部と、前記低剛性部よりも剛性の高い高剛性部と、を備えており、
前記弾性フック部は、
前記弾性フック部が設けられる枠体の周方向に間隔を空けて複数設けられており、
前記高剛性部に配置される前記弾性フック部は、前記低剛性部に配置される前記弾性フック部に比べて剛性が低いことを特徴とする液封防振装置。
【請求項4】
前記弾性フック部は、前記係止部に向けて延在する脚部と、前記脚部の先端に設けられ前記係止部に係止される先端部と、を備えており、
前記弾性フック部のうち、剛性が低い前記弾性フック部は、これよりも剛性の高い前記弾性フック部に比べて前記脚部が長く形成されていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の液封防振装置。
【請求項5】
前記弾性フック部のうち、剛性が低い前記弾性フック部は、これよりも剛性の高い前記弾性フック部に比べて肉厚が薄く形成されていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の液封防振装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の液封防振装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の液封防振装置としては、特許文献1に記載されたものが知られている。この液封防振装置では、主液室と副液室とを区画する円形状の仕切部材を設けて、主液室の内圧を吸収するように構成されている。
【0003】
この液封防振装置では、エンジン側へ固定される第1取付け部と、車体側へ固定される第2取付け部とを備え、第1取付け部と第2取付け部との間にインシュレータが介設されている。第2取付け部は、インシュレータの周囲を囲むように配置された外筒部材であり、第1枠体と、第1枠体に連結される第2枠体とからなる。第1枠体の下部には仕切部材が配置される。第2枠体は仕切部材の周囲を覆っている。
【0004】
第1枠体の外周面上には、係合のための凹部が周方向に沿って複数形成されている。これに対して、第2枠体には第1枠体の凹部に係合する爪状の凸部が設けられている。外筒部材は、第1枠体の凹部に第2枠体の突部を係合させることにより容易に組み付けられる。
【0005】
ところで、自動車のエンジンルームの小型化に伴い、液封防振装置に対しても小型化の要求がある。特許文献1の液封防振装置を含め、一般に、液封防振装置は、外形状が平面視で円形状を呈しており、スペース効率の低下を来し易いものであった。そこで、省スペース化を考慮した液封防振装置として、外形状を平面視で略四角形状としたものが検討されている。この液封防振装置では、仕切部材の形状も平面視で略四角形状に形成して高減衰性能を得るための面積を確保することが好ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−092137号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
通常、外筒部材の形状を平面視で略四角形状にすると、角部では外筒部材自体の剛性が高くなり、直線部では外筒部材自体の剛性が角部に比べて低くなる。このため、前記した特許文献1のように、第1枠体の凹部に第2枠体の凸部を係合する連結構造とした場合には、凸部の剛性にばらつきを生じてしまい、第1枠体と第2枠体との締め代を周方向に略均一にすることが難しくなるという課題があった。このことは、外筒部材の外形が平面視で略四角形状に形成された液封防振装置に限られることはなく、直線部とこれに連続する角部とを有する形状を備えた外筒部材を有する液封防振装置においても共通する課題である。
【0008】
本発明は、前記課題を解決するためになされたものであり、組付性の向上を図りつつ、外筒部材の締め代を周方向に略均一にすることができる液封防振装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような課題を解決する本発明の液封防振装置は、振動源側に取り付けられる第1取付部材と、非振動源側に取り付けられる第2取付部材と、前記第1取付部材と前記第2取付部材との間に介設されたインシュレータと、を備えている。前記第2取付部材は、前記インシュレータの下部に接続される筒形の第1枠体と、前記インシュレータの下方に配置される仕切部材を保持する筒形の第2枠体と、前記第1枠体と、前記第2枠体とを連結する連結具と、を備えている。前記連結具は、前記第1枠体と前記第2枠体の一方に設けられた複数の係止部と、他方に設けられ前記係止部に係止される複数の弾性フック部と、を備えている。前記第1枠体および第2枠体のうち、前記弾性フック部が設けられる枠体は、対向する一対の直線状の主枠部と、前記主枠部の端部同士を繋ぐ一対の側枠部と、を備えている。前記弾性フック部は、枠体の周方向に間隔を空けて前記主枠部に設けられているとともに、前記主枠部と前記側枠部との角部に設けられており、前記角部に配置される前記弾性フック部は、前記主枠部に配置される前記弾性フック部に比べて剛性が低くなっている。
ここで、剛性とは、主枠部において、主枠部の外側方向に弾性フック部を変形させようとするときの力に対する変形のしずらさの度合いのことをいう。また、角部において、角部の外側方向に弾性フック部を変形させようとするときの力に対する変形のしずらさの度合いのことをいう。
【0010】
このような液封防振装置では、第1枠体と第2枠体との一方に設けられた係止部に、他方に設けられ弾性フック部を係止することで、外筒部材としての第2取付部材を容易に組み付けることができる。そして、第2取付部材では、枠体自体の剛性が低い主枠部に剛性の高い弾性フック部が配置されるとともに、枠体自体の剛性が高い角部に剛性の低い弾性フック部が配置されるので、枠体の周方向において弾性フック部の剛性の均一化を図ることができる。したがって、組付性の向上を図りつつ、外筒部材の締め代を周方向に略均一にすることができる。これにより、外筒部材のシール性が向上する。
【0011】
また、本発明の液封防振装置は、振動源側に取り付けられる第1取付部材と、非振動源側に取り付けられる外筒部材としての第2取付部材と、前記第1取付部材と前記第2取付部材との間に介設されたインシュレータと、を備えている。前記第2取付部材は、前記インシュレータの下部に接続される筒形の第1枠体と、前記インシュレータの下方に配置される仕切部材を保持する筒形の第2枠体と、前記第1枠体と、前記第2枠体とを連結する連結具と、を備えている。前記連結具は、前記第1枠体と前記第2枠体の一方に設けられた複数の係止部と、他方に設けられ前記係止部に係止される複数の弾性フック部と、を備えている。前記第1枠体および第2枠体のうち、前記弾性フック部が設けられる枠体は、対向する一対の直線状の主枠部と、前記主枠部の端部同士を繋ぐ一対の側枠部と、を備えている。前記弾性フック部は、枠体の周方向に間隔を空けて主枠部に設けられている。前記複数の弾性フック部のうち、前記主枠部の端部に配置される前記弾性フック部は、前記端部から離れた位置に配置される前記弾性フック部に比べて剛性が低くなっている。
ここで、剛性とは、主枠部の外側方向に弾性フック部を変形させようとするときの力に対する変形のしずらさの度合いのことをいう。
【0012】
このような液封防振装置では、第1枠体と第2枠体との一方に設けられた係止部に、他方に設けられ弾性フック部を係止することで、外筒部材としての第2取付部材を容易に組み付けることができる。そして、第2取付部材では、主枠部の剛性が低い部分に剛性の高い弾性フック部が配置されるとともに、主枠部の剛性が高い端部に剛性の低い弾性フック部が配置されるので、外筒部材の周方向において弾性フック部の剛性の均一化を図ることができる。したがって、組付性の向上を図りつつ、外筒部材の締め代を周方向に略均一にすることができる。これにより外筒部材のシール性が向上する。
【0013】
また、本発明の液封防振装置は、振動源側に取り付けられる第1取付部材と、非振動源側に取り付けられる外筒部材としての第2取付部材と、前記第1取付部材と前記第2取付部材との間に介設されたインシュレータと、を備えている。前記第2取付部材は、前記インシュレータの下部に接続される筒形の第1枠体と、前記インシュレータの下方に配置される仕切部材を保持する筒形の第2枠体と、前記第1枠体と前記第2枠体とを連結する連結具と、を備えている。前記連結具は、前記第1枠体と前記第2枠体の一方に設けられた複数の係止部と、他方に設けられ前記係止部に係止される複数の弾性フック部と、を備えており、前記第1枠体および第2枠体のうち、前記弾性フック部が設けられる枠体は、剛性の低い低剛性部と、前記低剛性部よりも剛性の高い高剛性部と、を備えており、前記弾性フック部は、枠体の周方向に間隔を空けて前記弾性フック部が設けられる枠体に備わり、前記高剛性部に配置される前記弾性フック部は、前記低剛性部に配置される前記弾性フック部に比べて剛性が低くなっている。
ここで、剛性とは、弾性フック部が設けられる枠体において、枠体の外側方向に弾性フック部を変形させようとするときの力に対する変形のしずらさの度合いのことをいう。
【0014】
このような液封防振装置では、第1枠体と第2枠体との一方に設けられた係止部に、他方に設けられ弾性フック部を係止することで、外筒部材としての第2取付部材を容易に組み付けることができる。そして、第2取付部材では、枠体自体の剛性が低い低剛性部に剛性の高い弾性フック部が配置されるとともに、枠体自体の剛性が高い高剛性部に剛性の低い弾性フック部が配置されるので、外筒部材の周方向において弾性フック部の剛性の均一化を図ることができる。したがって、組付性の向上を図りつつ、外筒部材の締め代を周方向に略均一にすることができる。これにより外筒部材のシール性が向上する。
【0015】
また、前記した液封防振装置において、前記弾性フック部が、前記係止部に向けて延在する脚部と、前記脚部の先端に設けられ前記係止部に係止される先端部と、を備えている場合には、前記弾性フック部のうち、剛性の低い前記弾性フック部が、これよりも剛性の高い前記弾性フック部に比べて前記脚部が長く形成されているのがよい。このようにすると、剛性の低い弾性フック部を容易に形成することができる。
【0016】
また、前記した液封防振装置において、前記弾性フック部のうち、剛性が低い前記弾性フック部が、これよりも剛性の高い前記弾性フック部に比べて肉厚が薄く形成されているのがよい。このようにすると、剛性の低い弾性フック部を容易に形成することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、組付性の向上を図りつつ、外筒部材の締め代を周方向に略均一にすることができる液封防振装置が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の第1実施形態に係る液封防振装置を示す斜視図である。
図2図1のA−A線断面図である。
図3図1のB−B線断面図である。
図4】第1枠体と第2枠体とを分解した側面図である。
図5図4のC−C矢視図である。
図6】(a)は直線状の主枠部に設けられる弾性フック部の係止状態を示す断面図、(b)は角部に設けられる弾性フック部の係止状態を示す断面図である。
図7】(a)は直線状の主枠部に設けられる弾性フック部の係止前の様子を示す斜視図、(b)は同じく断面図、(c)は同じく係止後の状態を示す斜視図、(d)は同じく断面図である。
図8】第2実施形態に係る液封防振装置を示す図であり、(a)は第2枠体の斜視図、(b)は第2枠体の平面図である。
図9】第3実施形態に係る液封防振装置を示す図であり、(a)は第2枠体の平面図、(b)は第2枠体の側面図である。
図10】液封防振装置の第1変形例を示す第2枠体の平面図である。
図11】液封防振装置の第2変形例を示す第2枠体の平面図である。
図12】液封防振装置の第3変形例を示す第2枠体の側面図である。
図13】液封防振装置の第4変形例を示す第2枠体の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る液封防振装置の実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の説明において、「前後」「上下」「左右」を言うときは、図1に示した方向を基準とするが、「前後」は、自動車の車体に対する前後方向とは必ずしも一致するものではない。なお、説明において、同一の要素には同一の符号を用い、重複する説明は省略する。なお、液封防振装置に対して、主たる振動は上下方向から入力される。
【0020】
(第1実施形態)
液封防振装置は、液封式であり、図1に示すように、第1取付部材10と、第2取付部材20と、これらの間に介設されるインシュレータ30と、を備える。第1取付部材10は、振動源であるエンジン(不図示)側に取り付けられるものである。第2取付部材は、振動受け側である非振動源側の車体側(不図示)に取り付けられるものである。液封防振装置は、前後方向を長辺とし、これに直交する左右方向を短辺とする、平面視で略長四角形状を呈している。
【0021】
第1取付部材10は、インシュレータ30の上部に一体に設けられている。第1取付部材10は、例えば、アルミニウム合金製である。第1取付部材10は、図2図3に示すように、下部がインシュレータ30に埋設される基部11と、基部11から上方に突出する突出部12と、を備えている。基部11の下部はインシュレータ30に加硫接着されている。なお、突出部12の形状は円柱状に限定されるものではなく種々の形状を採用することができる。また、突出部12を形成する代わりに、基部11に、エンジン(不図示)側に配置されるブラケットを固定するためのボルト穴を形成してもよい。
【0022】
基部11は、図2図3に示すように、長辺方向および短辺方向に沿う断面形状が、いずれも下部に向けて窄まる形状とされている。基部11は、エンジン側のブラケットが載置される平坦な座面11aを備えている。
【0023】
インシュレータ30は、図2に示すように、凹部31を備えている。凹部31は、図2の下方へ開放されており、仕切部材50(上プレート51)で仕切られて主液室1となる。凹部31の内部には、非圧縮性の作動液体が封入される。インシュレータ30の下部は、第2取付部材20の第1枠体21に固着されている。第1枠体21の詳細は後記する。
【0024】
主液室1は仕切部材50により副液室2と区画されている。主液室1と副液室2とは、仕切部材50の外周部に形成されたオリフィス通路55(図2図3参照)を介して連通している。オリフィス通路55は、例えば、低周波数の振動に対して共振するよう設定されている。副液室2はダイヤフラム3と仕切部材50との間に形成され、ダイヤフラム3を壁部の一部としている。
【0025】
第2取付部材20は、外筒部材として機能する。第2取付部材20は、第1枠体21と、第2枠体25と、連結具40(図1参照)とを備えている。
第1枠体21は、図2図3に示すように、インシュレータ30の下部(下端部)に接続される筒形の枠体である。第2枠体25は、インシュレータ30の下方に配置される仕切部材50を保持する筒形の枠体である。第1枠体21および第2枠体25は略長四角筒形を呈している。第1枠体21および第2枠体25は、いずれも合成樹脂成形品である。第2取付部材20は、図示しないホルダへ嵌合して車体側へ取り付けられ、または図示しないブラケットを介して車体側へ取り付けられる。
【0026】
連結具40は、図1に示すように、第1枠体21と第2枠体25とを連結している。連結具40は、第1枠体21に設けられた複数の係止部41と、第2枠体25に設けられ複数の係止部41に係止される複数の弾性フック部45とを備えている。以下、各部について詳細に説明する。
【0027】
第1枠体21は、その内面が、図2図3に示すように、下部から上部に向けて拡径(拡幅)する傾斜状に形成されている。第1枠体21は、図3に示すように、左右一対の直線状の主枠部22,22と、図2に示すように、主枠部22,22の端部同士を繋ぐ前後一対の直線状の側枠部23,23と、を備えている。図1に示すように、隣接する主枠部22と側枠部23との角部24(図1では片側の2つを図示)は、アール状に形成されている。
【0028】
第1枠体21の側部には、図4に示すように、所定の間隔を空けて複数の凹部42が設けられている。凹部42は、主枠部22の外周面に設けられているとともに、角部24,24に設けられている。凹部42は、第1枠体21の一側(左側)において、主枠部22に例えば4つ設けられているとともに、角部24,24に一つずつ設けられている。凹部42は、第1枠体21の他側(右側)においても同様に設けられている。
各凹部42内には、係止部41が形成されている。各係止部41は、側方へ向けて突出する突起状に形成されている。各係止部41の上面には、係止面41c(図7(a)(b)参照)が形成されている。係止面41cには、弾性フック部45の後記する先端部47が係止される(図7(c)(d)参照)。
【0029】
第2枠体25は、第1枠体21の形状に対応して、図5に示すように、左右一対の直線状の主枠部26,26(図3参照)と、前後一対の直線状の側枠部27,27(図2参照)と、を備えている。隣接する主枠部26と側枠部27との角部28は、アール状に形成されている。第2枠体25は、図5に示すように、主枠部26および角部28の肉厚が略同じに形成されている。
【0030】
第2枠体25の側部には、図4に示すように、所定の間隔を空けて複数の弾性フック部45が設けられている。各弾性フック部45は、第1枠体21の各係止部41に対応する位置に形成されている。具体的に、弾性フック部45は、第2枠体25の一側(左側)において、主枠部26の外周面に計4つ設けられているとともに、角部28,28の外周面に一つずつ設けられている。弾性フック部45は、第2枠体25の他側(右側)においても同様に設けられている。各弾性フック部45は、第2取付部材20の組付時に第1枠体21の各係止部41に対して係止可能である。
【0031】
弾性フック部45は、いずれも側面視略逆U字状に形成されている(図1参照)。弾性フック部45は、第1枠体21に向けて延在する前後一対の脚部46,46と、脚部46,46の先端同士を繋ぐ先端部47と、を備えている。
複数の弾性フック部45のうち、主枠部26に設けられる弾性フック部45の脚部46,46は、図6(a)に示すように、弾性変形可能な長さL1を有している。
一方、複数の弾性フック部45のうち、角部28,28に設けられる弾性フック部45の脚部46,46は、図6(b)に示すように、弾性変形可能な長さL2を有している。図6(a)(b)に示すように、弾性変形可能な長さL1と長さL2とを比べると、長さL1よりも長さL2が長く形成されている。これにより、角部28の弾性フック部45の脚部46は、隣接する主枠部26の弾性フック部45の脚部46よりも剛性が低くなっており、主枠部26の弾性フック部45に比べて弾性変形し易くなっている。つまり、高剛性部(角部28)に配置される弾性フック部45は、低剛性部(主枠部26)に配置される弾性フック部45に比べて剛性が低くなっている。このように、脚部46の長さを異ならせることで、弾性フック部45自体の弾性を高剛性部(角部28)と低剛性部(主枠部26)とで異ならせている。
【0032】
各脚部46の下端部は、図6(a)(b)に示すように、第2枠体25の上下方向に亘って延在するリブ46bに接続されている。これにより、各脚部46の強度が確保されるとともに、各脚部46は、第2枠体25自体の剛性に対応して弾性変形するように構成されている。つまり、主枠部26(低剛性部)の弾性フック部45は、主枠部26の剛性に対応して弾性変形し、また、角部28(高剛性部)の弾性フック部45は、角部28の剛性に対応して弾性変形するようになっている。
【0033】
図3に示すように、主枠部26の上端部26aは、フランジ状を呈しており、第1枠体21の主枠部22の下面に当接し、主枠部22とともにインシュレータ30の延出部32を挟持している。また、側枠部27の上端部29は、図2に示すように、フランジ状を呈しており、第1枠体21の側枠部23の下面に当接し、側枠部23とともにインシュレータ30の延出部32を挟持している。インシュレータ30の延出部32は、仕切部材50の上面の外周端部を位置決めしており、シール部材としても機能している。
【0034】
ダイヤフラム3は、薄肉の本体部3aと、その外周部に一体形成されたシール部3bとを備えている。シール部3bは、仕切部材50の下面の外周端部に装着され、第2枠体25と仕切部材50との間に介在される。
【0035】
仕切部材50は、図5に示すように、第2枠体25の形状に対応して外形状が平面視略長四角形状に形成されている。仕切部材50は、図2図3に示すように、上プレート51と下ホルダ52とで弾性仕切部材53を挟持して構成されている。
【0036】
この液封防振装置を組み立てるには、まず、第2枠体25にダイヤフラム3および仕切部材50を収容した小組体を作る。一方、第1取付部材10、インシュレータ30および第1枠体21が一体化した小組体を作り、これを上方から第2枠体25に近づける。
【0037】
そうすると、図7(a)(b)に示すように、第2枠体25の弾性フック部45の先端部47が第1枠体21の係止部41に弾性をもって当接し、弾性フック部45が外方(側方)に弾性変形する。その後、図7(c)(d)に示すように、第1枠体21を第2枠体25にさらに接近させ、第2枠体25の上面(上端部26a、図7(d)参照)に、第1枠体21の下面(延出部32、図7(d)参照)を当接させる。そうすると、弾性フック部45が弾性復帰して、先端部47が凹部42内に侵入して係止部41の係止面41cに係止される。
各弾性フック部45の先端部47が各係止部41に係止されることにより、第2取付部材20が組立一体化される。
【0038】
以上説明した本実施形態の液封防振装置によれば、第1枠体21に設けられた各係止部41に、第2枠体25に設けられた各弾性フック部45を係止することで、第2取付部材20を容易に組み付けることができる。そして、枠体自体の剛性が低い主枠部26(低剛性部)に剛性の高い弾性フック部45が配置されるとともに、枠体自体の剛性が高い角部28(高剛性部)に剛性の低い弾性フック部45が配置されるので、枠体の周方向において弾性フック部45の剛性の均一化を図ることができる。したがって、第1枠体21と第2枠体25との締め代を周方向に略均一にすることができる(周方向で締め代のバランスをとることができる)。
【0039】
(第2実施形態)
図8を参照して本発明の第2実施形態について説明する。第2実施形態の液封防振装置が前記第1実施形態と異なるところは、角部28に設けられる弾性フック部45の肉厚D2と、主枠部26に設けられる弾性フック部45の肉厚D1と、を異ならせた点にある。
【0040】
図8(a)に示すように、複数の弾性フック部45は、いずれも同じ長さの脚部46を有している。角部28の弾性フック部45の肉厚D2は、主枠部26の弾性フック部45の肉厚D1に比べて薄く形成されている(図8(b)参照)。これにより、角部28の弾性フック部45は、主枠部26の弾性フック部45よりも剛性が低くなっている。つまり、剛性の高い角部28(高剛性部)に配置される弾性フック部45は、剛性の低い主枠部26(低剛性部)に配置される弾性フック部45に比べて弾性変形し易くなっている。
【0041】
本実施形態においても、前記第1実施形態と同様の作用効果が得られる。すなわち、第1枠体21に設けられた各係止部41に、第2枠体25に設けられた各弾性フック部45を係止することで、第2取付部材20を容易に組み付けることができる。
【0042】
(第3実施形態)
図9を参照して本発明の第3実施形態について説明する。第3実施形態の液封防振装置が前記第1,第2実施形態と異なるところは、弾性フック部45が主枠部26にのみ設けられている点にある。
【0043】
図9(a)に示すように、第2枠体25は、対向する一対の直線状の主枠部26,26と、主枠部26,26の端部同士を繋ぐ一対の側枠部27,27と、を備えている。主枠部26と側枠部27との角部28は、前記第1,第2実施形態のものに比べてアールを小さく形成している。弾性フック部45は、第2枠体25の周方向に間隔を空けて主枠部26,26にのみ設けられている。図示はしないが、第1枠体21は、第2枠体25に対応する形状とされている。第1枠体21には、各弾性フック部45が係止される係止部41が複数設けられている。
【0044】
図9(b)に示すように、複数の弾性フック部45のうち、主枠部26の端部26gに配置される弾性フック部45の脚部46の長さL2(不図示、第1実施形態と同様)は、端部26gから離れた位置に配置される弾性フック部45の脚部46の長さL1(不図示、第1実施形態と同様)に比べて、長く形成されている。これにより、端部26gの弾性フック部45の脚部46は、端部26gから離れた位置に配置される弾性フック部45の脚部46よりも剛性が低くなっており、弾性変形し易くなっている。つまり、高剛性部となる端部26gに配置される弾性フック部45は、低剛性部となる端部26gから離れた位置に配置される弾性フック部45に比べて剛性が低くなっている。このように、本実施形態では、主枠部26の端部26gと端部26gから離れた位置とで、脚部46の長さを異ならせることにより弾性フック部45自体の弾性を異ならせている。
【0045】
本実施形態においても、前記第1実施形態と同様の作用効果が得られる。すなわち、第1枠体21に設けられた各係止部41に、第2枠体25に設けられた各弾性フック部45を係止することで、第2取付部材20を容易に組み付けることができる。
【0046】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記した実施形態に限定されることはなく、種々変形することが可能である。
例えば、前記各実施形態では、アール状の角部28を設けたが、これに限られることはなく、図10の第1変形例に示すように、角部28は、直線状に形成してもよい。この場合にも前記第1実施形態と同様の作用効果が得られる。
また、図11の第2変形例に示すように、側枠部27を円弧状に形成してもよい。この場合には、主枠部26に隣接している側枠部27の両端部27g(高剛性部)に対して、剛性の低い弾性フック部45を配置する。これにより、前記第1実施形態と同様に、枠体の周方向において弾性フック部45の剛性の均一化を図ることができる。
【0047】
また、第2取付部材20の平面視形状は、楕円形状、多角形状、三角形状等に形成してもよい。この場合には、枠体の高剛性部となる部分に剛性の低い弾性フック部45を配置するとともに、枠体の低剛性部となる部分に剛性の高い弾性フック部45を配置する。これにより、前記第1実施形態と同様に、枠体の周方向において弾性フック部45の剛性の均一化を図ることができる。
また、第2取付部材20の平面視形状を前記以外の形状に形成した場合にも、枠体の高剛性部となる部分に剛性の低い弾性フック部45を配置するとともに、枠体の低剛性部となる部分に剛性の高い弾性フック部45を配置する。これにより、前記第1実施形態と同様に、枠体の周方向において弾性フック部45の剛性の均一化を図ることができる。
【0048】
また、図12の第3変形例に示すように、主枠部26の前後方向(長手方向)の剛性の高い部分、低い部分に対応して、両端部に近い側にあるものほど脚部46を長く、中央部に近い側にあるものほど脚部46を短く形成してもよい。このようにすることで、枠体の周方向において弾性フック部45の剛性の均一化をより一層図ることができる。
【0049】
また、図13の第4変形例に示すように、弾性フック部45の左右の脚部46の長さを角部28側(高剛性部側)に近い側ほど長くなるように形成してもよい。
【0050】
また、前記実施形態では、第1枠体21に係止部41を設け、第2枠体25に弾性フック部45を設けたが、これに限られることはなく、これとは逆に、第1枠体21に弾性フック部45を設け、第2枠体25に係止部41を設けてもよい。
【0051】
また、本発明は、振動源をエンジンとするものに限られることはなく、振動源をモータとする車両にも広く適用できる。
【符号の説明】
【0052】
10 第1取付部材
20 第2取付部材
21 第1枠体
26 主枠部
27 側枠部
28 角部
25 第2枠体
30 インシュレータ
40 連結具
41 係止部
45 弾性フック部
50 仕切部材
L1 長さ(低剛性部における脚部46の長さ)
L2 長さ(高剛性部における脚部46の長さ)
D1 肉厚(低剛性部における弾性フック部45の肉厚)
D2 肉厚(高剛性部における弾性フック部45の肉厚)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13