(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のハニカム構造体の製造方法の場合、ハニカムセグメントを接合する際に、互いの側面の間にスペーサを配置し、ハニカムセグメント間の間隔(接合材の厚さ)のバラツキを少なくすることが行われている。すなわち、ハニカムセグメントの側面にスペーサを設ける工程が必要となる。
【0006】
更に、ハニカムセグメントに接合材を塗布(施与)する前段階として、ハニカムセグメントの接合面に下地処理を行うことがある。下地処理は、セラミックス成分を含むスラリーを当該接合面に塗布するものである。これにより、「接合材を塗布した際に、接合材中の水分がハニカムセグメントに吸収される」ことを抑制し、ハニカム構造体における接合材の剥離等の不具合の発生を抑制することができる。すなわち、接合面に対して下地処理剤としてのスラリーを塗布する工程が必要となる。
【0007】
加えて、ハニカムセグメントの側面に接合材を塗布して、ハニカムセグメント同士を接合する場合、接合材が側面の間から押し出され、ハニカムセグメントの端面側に排出されることがある。このとき、押し出された接合材が端面に付着し、セルの開口部分が塞がれたり、端面が汚れることがある。そこで、セルの開口部分が接合材で塞がれたり、汚れることを防ぐために、予め端面に樹脂製のフィルムを貼り付け、セルの開口部分を被覆するマスク処理が行われている。すなわち、樹脂性のフィルムを端面に貼り付けるマスク工程及び接合後にフィルムを端面から取り除く剥離工程とが必要となる。
【0008】
ハニカムセグメント間に空隙が生じないために、接合材は余剰に側面に塗布される。そして、ハニカムセグメントを接合するために、接合材を塗布した複数のセグメントを圧縮接合すると、余剰の接合材はハニカム接合体の端面及び側面へ押し出される。これら押し出された余剰の接合材はヘラ等を用いて手作業で除去される。
【0009】
上記のように、スペーサを形成し、接合面に対する下地処理し、端面保護のためのフィルムを貼り付け、押し出された余剰の接合材を除去し、更に当該フィルムを剥離する等の各工程が行われることにより、ハニカム構造体の製造時間が長くなり、効率的な製造を阻害する要因ともなっていた。
【0010】
そこで、本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、スペーサの形成、下地処理、マスク処理、及び余剰接合材の除去等に係る工程を省略可能とし、効率的なハニカム構造体の製造が可能なハニカム構造体の製造方法、及び当該製造方法に使用される接合材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によれば、ハニカム構造体を製造するための製造方法、及び当該製造方法に使用される接合材が提供される。
【0012】
[1] 成形材料を成形して、流体の流路となる一方の端面から他方の端面まで延びる複数のセルを区画形成する隔壁を有する、四角柱状のハニカム成形体を形成する成形工程と、前記成形工程によって得られた前記ハニカム成形体を焼成し、四角柱状のハニカム焼成体を形成する焼成工程と、前記ハニカム焼成体の少なくとも一部の側面に、ペースト状の接合材を塗布する塗布工程と、複数の前記ハニカム焼成体を互いの前記側面同士を当接させ、加圧しながら接合することにより、複数の前記ハニカム焼成体が積層されたハニカムブロック体を作製するハニカムブロック体作製工程と、前記ハニカムブロック体の外周部分を研削し、ハニカム構造体を得る研削工程とを有し、前記ハニカムブロック体作製工程は、前記接合材以外の部材を前記ハニカム焼成体間に介在させることなく接合を行い、前記接合材は、キサンタンガム及びダイユータンガムの少なくとも一つの増粘剤を含有し、前記キサンタンガムを前記増粘剤として使用する場合、
水100質量部に対して0.06質量部以上、0.60質量部以下の前記キサンタンガムを含有し、前記接合材がアルミナ粒子及びコージェライト粒子を含まない場合、少なくとも0.24質量部以上の前記キサンタンガムを含有するせん断減粘性を有するハニカム構造体の製造方法。
【0013】
[2] 前記ハニカム焼成体の前記端面にマスク処理を行わずに、前記塗布工程および前記ハニカムブロック体作製工程を行う前記[1]に記載のハニカム構造体の製造方法。
【0014】
[3] 前記塗布工程は、前記接合材を塗布する前の前記ハニカム焼成体の前記側面に下地材を塗布しない前記[1]または[2]に記載のハニカム構造体の製造方法。
【0015】
[4] 前記接合材の粘度は、1500〜5000ポアズである前記[1]〜[3]のいずれかに記載のハニカム構造体の製造方法。
【0016】
[5] 前記接合材のせん断減粘性を表すチキソトロピー性指数は、
一定のせん断速度を段階的に変化させるクリープ回復から評価する評価プログラムによる値が18〜30の範囲である請求項1〜4のいずれか一項に記載のハニカム構造体の製造方法。
【0019】
[
6] 前記接合材は、少なくとも二種以上の気孔形成剤を含有する前記[1]〜[
5]のいずれかに記載のハニカム構造体の製造方法。
【0020】
[7] 前記[1]〜[6]のいずれかに記載のハニカム構造体の製造方法に使用される接合材であって、前記接合材は、キサンタンガム及びダイユータンガムンの少なくとも一つの増粘剤を含んで構成され、前記キサンタンガムを前記増粘剤として使用する場合、
水100質量部に対して0.06質量部以上、0.60質量部以下の前記キサンタンガムを含有し、前記接合材がアルミナ粒子及びコージェライト粒子を含まない場合、少なくとも0.24質量部以上の前記キサンタンガムを含有する接合材。
【0021】
[8] 前記接合材のせん断減粘性を表すチキソトロピー性指数は、
一定のせん断速度を段階的に変化させるクリープ回復から評価する評価プログラムによる値が18〜30の範囲である前記[7]に記載の接合材。
【発明の効果】
【0022】
本発明のハニカム構造体の製造方法及び接合材によれば、せん断減粘性を有する接合材を用いてハニカム焼成体(ハニカムセグメント)の加圧接合が行われるため、ハニカム焼成体の側面の端面側及び側面側の間から押し出された接合材が端面を汚すことなく、容易に除去することができる。
【0023】
その結果、従来のハニカム構造体の製造方法において行われていたスペーサの形成、下地処理、押し出された余剰の接合材の除去処理及びマスク処理等の各工程を省略することが可能となり、効率的なハニカム構造体の製造ができる。接合材は、当該製造方法に使用することができる。
【0024】
ここで、“せん断減粘性”とは、せん断力を加えると粘性が低下し、流動性が向上するとともに、せん断力が加わらなくなると粘性が上昇し固化する特性をいう。このせん断減粘性は、例えば、チキソトロピー性指数(Ti値:チキソトロピックインデックス)の値によってその特性を表すことができる。このせん断減粘性(チキソトロピー性)の特性を利用して接合材の流動性を適切に制御することにより、本発明のハニカム構造体の製造方法を行うことができる。この特性は、本発明の接合材に限定されるものではなく、例えば、ハニカム構造体の目封止材や外周コート材にも適用することができる。このせん断減粘性は、適切な増粘剤を種々の材料に添加することによって得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照しつつ本発明のハニカム構造体の製造方法、及び接合材の実施の形態についてそれぞれ説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱しない限りにおいて、変更、修正、改良等を加え得るものである。
【0027】
本発明の一実施形態のハニカム構造体の製造方法1(以下、単に「製造方法1」と称す。)は、
図1に示すように、成形工程S1と、焼成工程S2と、塗布工程S3と、ハニカムブロック体作製工程S4とを有している。
【0028】
更に、その他の構成として、形成されたハニカムブロック体10を乾燥させる乾燥工程S5と、乾燥後のハニカムブロック体10の端面11を研削加工する端面研削工程S6と、ハニカムブロック体10の外周部分である外周面12を研削加工する外周研削工程S7と、研削された外周面12にコート材を塗布する外周コート工程S8とを備えている。
【0029】
本実施形態の製造方法1によれば、塗布工程S3において、四角柱状に形成された複数のハニカム焼成体20を加圧接合するために側面21a及び当該側面21aに直交する側面21bの少なくとも一部に、所定の塗布厚さでペースト状の接合材30が塗布される。接合材30は、予めせん断減粘性の調整が行われ、特に、低いせん断力下では従来の接合材と比べて高い粘度に設定されている。その結果、せん断力の加わらないハニカム焼成体20の端面22に粘着せず、容易に除去することができる。
【0030】
したがって、四角柱状の複数のハニカム焼成体20を組み合わせてハニカムブロック体10を形成する際に、互いに対向する側面21a同士(または側面21b同士)を当接させた間に形成された隙間23から、端面22側及び接合体側面25に向かって接合材30が押し出されても、押し出された時点で固化し、後続のはみ出しを抑制し、接合面の接合材充填度を高め、空隙の発生を抑制できる。
【0031】
したがって、接合材の塗布量を減らすことができ、その結果、はみ出し量も大幅に減らすことができる。はみ出した接合材はその場で固化するため、端面22を汚すことなく、またはみ出し量も少ないため、はみ出した接合材を乾燥前に除去する必要はなく、端面研削、外周研削でハニカム構造体の切削部と同時に除去することができる。
【0032】
接合材30を用いてハニカムブロック体10を形成した後、乾燥、端面研削、外周研削、及び外周コート等の各工程を経て、
図2に示すような略円柱状のハニカム構造体40を作製することができる。すなわち、従来のハニカム構造体の製造方法と比較して、本実施形態のようなせん断減粘性を有する接合材30を塗布工程S3に用いることで、接合材30以外の部材であるスペーサの形成作業が不要となり、ハニカム焼成体20の各側面21a,21bに対する下地材を塗布する下地処理を行う必要がなく、かつ、ハニカム焼成体20の端面22のセル24を保護するためのフィルム等を端面22に貼付するマスク処理、はみ出した接合材の除去処理及び当該フィルムを剥離する剥離処理が不要なものとなる。
【0033】
これにより、ハニカム構造体40の製造方法1において、五つの工程を省略することができる。その結果、ハニカム構造体40の製造効率を向上させることができ、安定したハニカム構造体40の製造が可能となる。以下、各工程の詳細及び本発明の効果について、
図1〜
図6に基づいて説明する。
【0034】
(1)成形工程S1:
セラミック原料にバインダー、界面活性剤、造孔材、水等を添加して成形材料とする。セラミック原料は、従来から周知の炭化珪素、珪素−炭化珪素系複合材、コージェライト化原料、コージェライト、ムライト、アルミナ、チタニア、スピネル、炭化珪素−コージェライト系原料、リチウムアルミニウムシリケート、チタン酸アルミニウム、鉄−クロム−アルミニウム系合金からなる群から選択される少なくとも1種が選択される。特に
、珪素−炭化珪素系複合材料の使用が好適である。
【0035】
コージェライト化原料(コージェライト粒子)とは、シリカが42〜56質量部、アルミナが30〜45質量部、マグネシアが12〜16質量部の範囲の化学組成を満たして配合されたものであり、焼成によりコージェライトとなるものである。なお、珪素−炭化珪素系複合材料をセラミック原料として使用する場合、炭化珪素粉末及び金属珪素粉末を混合したものが用いられる。
【0036】
一方、バインダーとしては、メチルセルロース、ヒドロキシプロポキシルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール等を例示することができる。特に、メチルセルロース及びヒドロキシプロポキシルセルロースを併用することが好適である。また、バインダーの含有量は、セラミック原料100質量部に対して、3〜15質量部含有することが好ましく、なお、水の含有量は、セラミック原料100質量部に対して、20〜90質量部含有することが好ましい。
【0037】
界面活性剤には、エチレングリコール、デキストリン、脂肪酸石鹸、ポリアルコール等を用いることができる。なお、界面活性剤は、上記から1種類を選択して単独で使用するものであっても、2種類以上を適宜組み合わせて使用するものであってもよい。
【0038】
気孔形成剤としては、焼成後に気孔となるものであれば、特に限定されず、例えば、澱粉、発泡樹脂、吸水性樹脂、シリカゲル、炭素等を上げることができる。気孔形成剤の含有量は、セラミック原料100質量部に対して0〜45質量部であることが好ましい。
【0039】
上記の成分を混合して調製された成形材料を用い、中心軸に直交する断面形状が長方形の四角柱状のハニカム成形体を形成する。ここで、ハニカム成形体の成形個数は、作製するハニカム構造体40(
図2参照)の形状、サイズに応じて適宜設定される。また、形成する複数のハニカム成形体は、それぞれ同一形状であることが好ましい。
【0040】
始めに、成形材料を混練し坏土とする。ここで、坏土の形成方法は、特に限定されるものではなく、ニーダー、真空土練機等の周知の混練装置を用いることができる。混練された坏土を所望形状に調製された口金から所定圧力で押出成形することで、ハニカム成形体が形成される。
【0041】
ハニカム成形体は、流体の流路となる一方の端面から他方の端面まで延びる複数のセルを区画形成する複数の隔壁を備え、中心軸に直交する断面(セルの延びる方向に直交する面)が長方形状の四角柱状を呈する。中心軸に直交する断面は、特に正方形のものが好適である。また、上記押出成形以外に、従来から公知の坏土の成形手法を採用することができる。ハニカム成形体のセル形状、隔壁厚さ、セル密度等は、特に限定されるものではなく、任意に設定することができる。
【0042】
その後、形成されたハニカム成形体を乾燥させる。乾燥の方法は、特に限定されるものではなく、例えば、マイクロ波加熱乾燥、高周波誘電加熱乾燥等の電磁波加熱方式、或いは、熱風乾燥、過熱水蒸気乾燥等の外部加熱方式等の周知の乾燥方法を適宜組み合わせて使用することができる。
【0043】
ハニカム成形体の場合、全体を迅速、かつ均一に乾燥させ、クラックの発生を防止するために、例えば、電磁波加熱方式で一定量の水分(例えば、前記水分量の30〜95質量部)を乾燥させた後、残存する水分を外部加熱方式で乾燥させ、全体質量に対して3質量部以下の水分含有率にすることができる。電磁波加熱方式の中では、特に誘電乾燥加熱が好適であり、外部加熱方式では熱風乾燥が好適である。また、乾燥温度は、特に限定されるものではないが、例えば、90〜180℃、乾燥時間は1〜10hであることが好ましい。
【0044】
形成されたハニカム成形体に対して、一方の端面におけるセルの開口部と、他方の端面における残余のセルの開口部にそれぞれ目封止部を形成したものであってもよい。これにより、目封止部がそれぞれの端面において交互に並設されたハニカム成形体とすることができる。このように、ハニカム成形体に目封止部を形成した場合、製造されるハニカム構造体40は、「目封止ハニカム構造」となる。なお、ハニカム成形体に目封止部を形成する方法は、特に限定されるものではなく、周知の手法を採用することができる。
【0045】
(2)焼成工程S2:
次に、得られたハニカム成形体を焼成し、四角柱状のハニカム焼成体20を形成する(
図3参照)。焼成工程S2は、成形材料中に含まれるバインダー等を除去するために、脱脂(仮焼成)を行った後、本焼成を行うことが望ましい。仮焼成は、例えば、大気雰囲気下で400〜500℃の温度範囲で、0.5〜20時間加熱する。なお、仮焼成及び本焼成の手法は特に限定されず、周知の電気炉或いはガス炉等を用いることができる。本焼成は、例えば、炭化珪素又は珪素−炭化珪素系複合材料の場合、1300〜1500℃の温度範囲で、1〜10時間加熱する。
【0046】
(3)塗布工程S3:
次に、焼成工程S2によって得られた四角柱状のハニカム焼成体20について、少なくとも一部の側面21a(または側面21b)に、予めせん断減粘性の調製されたペースト状の接合材30を所定厚さとなるように均一に塗布する(
図3参照)。
図3において、ハニカム焼成体20の一方の側面21aと、当該側面に直交する側面21bの双方に接合材30を塗布したものを例示している。
【0047】
接合材30の塗布は、所定幅(例えば、ハニカム焼成体20の幅と一致)に開口したノズル口を有する塗布ノズルから、一定圧力で接合材30を押し出しながら、ハニカム焼成体20の中心軸方向に沿って当該塗布ノズルを移動させることにより行われる。これにより、側面21a,21bに均一の厚みで接合材30を塗布することができる。この際、ハニカム焼成体20の端面22を保護するためのフィルムを当該端面に貼付するマスク処理を行う必要がない。
【0048】
接合材30は、ベースとなるセラミック原料、水、気孔形成剤、無機バインダー、有機バインダー、分散剤、及びせん断減粘性付与剤を含有するものである。セラミック原料は、上述したハニカム成形体の成形材料として使用されるものと略同一の成分を用いることができる。例えば、炭化珪素、珪素−炭化珪素系複合材料、コージェライト化原料、アルミナ等を用いることができる。
【0049】
接合材100質量部に対して、これらのセラミック原料を50〜70質量部使用することができる。また、無機バインダーは、例えば、シリカゾル或いはアルミナゾル等を利用することができ、有機バインダーは、例えば、メチルセルロース、セルロース、PVA、PVB、及び吸水性樹脂等を利用することができる。これらのバインダーは、主として接合材30の強度を向上させる目的で導入される。接合材100質量部に対して、無機バインダーは15〜25質量部、有機バインダーは0.1〜2質量部含有することができる。
【0050】
本実施形態の製造方法1における接合材30は、従来の接合材と比べて、せん断減粘性付与剤を含有することを特徴とする。このせん断減粘性付与剤は、代表的には増粘剤であり、適切な増粘剤としてはキサンタンガム、ダイユータンガム、及びスメクトンの少なくとも一つが用いられ、外配添加水100質量部に対して、0.1〜1.0質量部含有する。これにより、従来の接合材と比してせん断減粘性を付与することができる。
【0051】
更に、キサンタンガム等を加えることにより、接合材30の中の水分をゾル化する効果を奏する。水分がゾル化した接合材30の場合、当該接合材30がハニカム焼成体20の端面22に付着しても、高い粘性によって当該端面22から容易に除去することが可能となり、端面22に接合材30(またはその一部)が残存するおそれが小さくなる。加えて、接合材30の中の水分がゾル化することで、ハニカム焼成体20の端面22に形成された複数の気孔に、接合材30中の水分が浸透または吸収され難くなる。そのため、接合材30の付着によって、端面22が汚れる等の不具合の発生を解消することができる。
【0052】
製造方法1において使用される接合材30は、1500〜5000ポアズの粘度を示している。更に好ましくは2000〜3000ポアズの粘度のものである。なお、粘度は、市販のB型回転式粘度計(TOKI VISCOMETER TVB−10:東機産業株式会社製)を用い、H7ロータを使用し、測定時間を60s、ロータ回転速度を10rpmに設定した条件で、常温の状態で測定を行った。接合材の粘度が1500ポアズよりも低い場合、接合材の流動性が高くなり、ハニカム焼成体20の端面22に付着した接合材の除去が困難となる。その結果、ハニカム焼成体20のセル24(ハニカム構造体40のセル41)が接合材によって閉塞する可能性が大となる。ここで、B型回転式粘度計を用いた接合材30の特性評価を本明細書において評価Aとする。
【0053】
一方、接合材の粘度が5000ポアズを超える場合、接合材の流動性が著しく低くなる。その結果、ハニカム焼成体20の側面21a,21bに対する接合材の塗布が良好に行えない。具体的に説明すると、接合材を塗布する塗布装置において、接合材を貯留した貯留タンク(図示しない)から塗布ノズルの先端に開口したノズル口まで接合材の粘度に抗する強い圧力で供給する必要があり、従来の接合材と比べて供給圧が高く設定する必要があった。加えて、高粘度の接合材は、塗布ノズル及び貯留タンクの間を連結する供給用配管や、側面21a,21bに塗布されず、再使用のために貯留タンクまで未塗布の接合材を回収するための回収用配管の間で詰まる可能性が高かった。したがって、接合材の供給及び回収に係る機構が大掛かりなものとなり、ポンプによる接合材の供給機構及び循環機構に多大な影響を及ぼす可能性があった。そこで、本実施形態の製造方法1では、上記粘度範囲に規定した粘度に接合材30が調整されている。
【0054】
なお、本実施形態の製造方法1において、接合材30の特性をせん断減粘性(Shear thinning)の値(チキソトロピー性指数:Ti値)に基づいて評価するものであっても構わない。このとき、せん断減粘性を表すチキソトロピー性指数の評価方法は、せん断速度を徐々に変化させ、静止粘度の値と降伏点の値に基づくヒステリシス曲線から評価する評価プログラム(評価B)、及び、一定のせん断速度を段階的に変化させるクリープ回復から評価する評価プログラム(評価C)のいずれであっても構わない。
【0055】
ここで、評価Bの場合は、例えば、せん断速度(ずり速度)を0(s
−1)から5(s
−1)まで徐々に変化させ、或いは、5(s
−1)から0(s
−1)から徐々に変化させることにより、静止粘度の値と降伏点の粘度との値に基づいて算出される。一方、評価Cの場合は、せん断速度(ずり速度)を0.3(s
−1)に設定した状態で所定時間継続し、その後、瞬間的に10(s
−1)までせん断速度を変化させ、更に10(s
−1)を所定時間継続した後に、再び瞬間的に0.3(s
−1)まで戻す操作を行うものである。
【0056】
本実施形態の製造方法1において、上記評価Cの手法を特に採用した場合において、接合材30のチキソトロピー性指数(Ti値)を18〜30の範囲にすることが規定される。ここで、クリープ回復とは、物体に一定の応力が加え続けられた場合に固体(弾性)と液体(粘性)の両方の挙動である粘弾性挙動(クリープ)がある時間進行したときに、瞬間的に当該応力を取り除くことにより、物体に現れていたひずみが時間とともに徐々に減少する現象をいう。本実施形態の製造方法1の場合、上記示したように、一定のせん断速度を所定時間継続した状態から瞬間的に他のせん断速度に変化させた際の挙動に相当する。評価Cの手法を採用することより、評価Bと比べてTi値のバラツキを解消することができる。
【0057】
更に詳細に説明すると、チキソトロピー性指数(せん断減粘性指数)とは、せん断速度に応じて粘度が減少していく現象である。すなわち、液体に“ずり”を与えた場合、その液体の流動度が増大し、粘度が減少する現象である。ここで、チキソトロピー性指数(Ti値)は、評価Bの場合は、下記式(1)に基づいて、評価Cの場合は下記式(2)に基づいてそれぞれ算出される。式(1)及び式(2)において、Tiは、チキソトロピー性指数を表し、D
1,D
2は変化前後のずり速度(s
−1)(またはせん断速度(s
−1))を表し、η
1,η
2は、D
1,D
2における変化前後の粘度(mPa・s)を表している。
式(1): Ti = η
1/η
2
式(2): Ti = [log(η
1/η
2)]/[log(D
1/D
2)]
【0058】
一方、接合材30に含まれる気孔形成剤は、成形材料に使用される造孔材と略同一のものを使用することができる。なお、本実施形態における製造方法1では、微細な気孔を形成可能なタイプと、比較的大きな気孔を形成可能なタイプの二種類の気孔形成剤を適宜混合して使用する。二種以上の気孔形成剤を用いることにより、ハニカム構造体における接合材30の部分の気孔率や気孔サイズを任意に調整することができる。気孔形成剤は、接合材100質量部に対し、0.5〜5質量部含有することができる。
【0059】
上記したせん断減粘性に調製され、かつ水分がゾル化した接合材30を用いることにより、ハニカム焼成体20の多孔性の側面に、接合材30が吸収されることを防ぐための、下地処理を予め行う必要がなく、互いに対向するハニカム焼成体20の側面の間を一定に保つためのスペーサ処理を行う必要がない。すなわち、下地処理及びスペーサ形成に係る工程を省略することができる。したがって、これらに必要なコストを削減し、かつ、ハニカム構造体の製造の効率化を図ることができる。
【0060】
(4)ハニカムブロック体作製工程S4:
次に、複数の四角柱状のハニカム焼成体20を側面21a,21bに塗布した接合材30を用いて互いに接合し、
図4に示すように、複数のハニカム焼成体20が積層されたハニカムブロック体10を形成する。ここで、接合する際に、互いに相対するハニカム焼成体20の側面21a(または側面21b)の少なくともいずれか一方に接合材30が塗布されていればよい。本実施形態の製造方法1において、縦4個×横4個の計16個の四角柱状のハニカム焼成体20を積層してなるハニカムブロック体10を作製した。
【0061】
複数のハニカム焼成体20の接合状態を更に強固なものとするために、積層された複数のハニカム焼成体20に対し、所定方向から加圧力F(
図4参照)を加える加圧処理が行われる。これにより、上下左右に隣接するハニカム焼成体20同士の接合を強くすることができる。なお、ハニカム焼成体20に対する加圧機構及び加圧装置は、特に限定されるものではなく、例えば、油圧、空気圧、又は電動シリンダ等の周知の加圧装置を採用することができる。具体的には、油圧シリンダ等のシリンダ先端に取付けられた平板状の押圧板(図示しない)を用い、一対の当該押圧板で積層されたハニカム焼成体20を互いに相対する方向から挟み込むようにして所定の加圧力を加える。なお、ハニカム焼成体20に加える加圧力は、特に限定されないが、例えば、1〜20MPaの加圧範囲とすることができる。
【0062】
1MPaよりも加圧力が小さい場合、接合材30とハニカム焼成体20との密着が十分でなく、強固な接合力を生じない。その結果、接合材30とハニカム焼成体20との境界付近で剥離等が生じ、ハニカムブロック体10の形状を維持できなくなる。一方、20MPaよりも圧力が大きい場合、一対のハニカム焼成体20の側面21a(または側面21b)同士の間(隙間23)が薄くなる傾向がある。その結果、ハニカム焼成体20の側面21a(または側面21b)の間から、塗布した接合材30が必要以上に端面11,22側及び接合体側面25に押し出され、接合力が弱くなる可能性がある。更に、端面11,22側に押し出された接合材30によって端面11,22が汚れやすくなる。なお、互いに隣接するハニカムブロック体10の側面21aの間の距離(隙間23)は、例えば、0.5mm〜1.5mmの範囲に設定されているものでよい。加圧接合時に係る距離となるように、加圧力を勘案し、ハニカム焼成体20の側面21a,21bにそれぞれ塗布される接合材30の塗布量(塗布厚さ)が調整されている。
【0063】
上記ハニカムブロック体作製工程S4において、互いに相対するハニカム焼成体20の側面21a(または21b)の間にペースト状の接合材30を介在させて加圧接合が行われる。このとき、側面21a等の間の接合材30は、加圧によって押し潰され、ハニカム焼成体20の側面21a等に沿って拡がりながら接合力を発揮し、互いに隣接するハニカム焼成体20同士を接合する。このとき、塗布された接合材30の一部は、側面21a等の間から端面22側に向かって押し出される。
【0064】
そして、押し出された接合材30の一部は、当該端面22に到達し、側面21a等の隙間23から重力に従って下方に垂れた状態となる(
図5参照)。このとき、接合材30は、キサンタンガム等の増粘剤を含有しているため、粘性が強く、端面22から押し出された瞬間に鉛直下方に落下するものではなく、端面22の押出箇所(隙間23)から垂れ下がる。このとき、端面22に対しては、接合材30はその一部が単に端面22に接しているのみであり、端面22に接合材30が強く押し付けられたものではない。すなわち、接合材30に負荷を加えて押し付けたものではない。はみ出した接合材は固化しているので、接合直後に除去する必要はない。乾燥後の研削工程で除去される。
【0065】
(5)乾燥工程S5:
複数のハニカム焼成体20を積層し、加圧接合を行って形成されたハニカムブロック体10を乾燥させる。例えば、乾燥温度を80〜140℃、乾燥時間を3〜6時間として、所定の乾燥炉の中にハニカムブロック体10を導入する。なお、係る乾燥工程S5において、ハニカムブロック体10の端面11について、予め150〜250℃の端面乾燥温度で乾燥させ、その後、ハニカムブロック体10の全体に対して上記乾燥条件で乾燥させてもよい。これにより、各ハニカム焼成体20同士が強固に接合されたハニカムブロック体10が完成する。なお、端面乾燥は、その後の乾燥工程で端面側の接合材にヒケが発生することを防止するために、端面側の接合材を先行的に固化させるためのものである。
【0066】
(6)端面研削工程S6:
次に、乾燥後のハニカムブロック体10の端面11を研削する。ここで、端面11に対する研削深さは、例えば、1〜2mm程度である。これにより、端面11に僅かに残存する接合材30等を完全に除去することができる。なお、端面11に対する研削は、当該端面11に相対するように配置したカップ型砥石(図示しない)を用い、所定の回転数で回転させたカップ型砥石を徐々に端面11に近接させる。なお、端面研削の手法及び端面研削用の研削装置等は周知であるため、ここでは詳細な説明は省略する。ハニカムブロック体10の端面11側にはみ出した接合材30は本工程で除去される。
【0067】
(7)外周研削工程S7:
次に、ブロック状のハニカムブロック体10の外周面12を研削し、所望形状のハニカム構造体40を作製する。ここでは、
図2に示すような略円柱状のハニカム構造体40に研削加工する。外周面12の研削は、特に限定されないが、例えば、ダイヤモンド砥粒が埋め込まれた砥石を用い、ハニカムブロック体10及び砥石を互いに回転させながら外周面12を徐々に削り取ることによって行われる。更に、研削によって作製されるハニカム構造体40の形状は、上記円柱状に限定されるものではなく、中心軸に直交する断面が楕円形状の楕円柱状等のものであってもよい。更に、ハニカム構造体40のサイズは、積層するハニカム焼成体20のサイズ及び積層個数によって任意とすることができる。ハニカムブロック体10の接合体側面25側にはみ出した接合材は本工程で除去される。
【0068】
(8)外周コート工程S8:
その後、外周研削工程S7を経たハニカム構造体40の外周面に対してコート材(図示しない)を塗布し、外周コート層42を形成する。なお、コート材の構成及び外周コート工程S8は周知であるため、詳細な説明は省略する。これにより、本実施形態の製造方法1を用いたハニカム構造体40の製造が完了する。
【実施例】
【0069】
以下、本発明をいくつかの実施例によって更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。下記の実施例1〜
13及び参考例1〜6は、複数のハニカム焼成体20を加圧接合する際に用いる接合材の増粘剤の量、及び増粘剤の種類を変化させたものである。また、得られたハニカム構造体の剪断強度及びヤング率の値で評価を行った。
【0070】
(実施例1〜
13及び参考例1〜6)
実施例1〜8は、アルミナ粒子及びコージェライト粒子を含む接合材1または接合材2(詳細は後述する)を用い、増粘剤として使用するキサンタンガムの含有量を、0.06質量部から0.60質量部の範囲で変化させたものである。一方、実施例9〜11は、増粘剤として使用するダイユータンガムの含有量を、0.06質量部から0.60質量部の範囲で変化させたものである。また、実施例12、13は、アルミナ粒子及びコージェライト粒子を含まない接合材3(詳細は後述する)を用い、かつ、増粘剤としてキサンタンガムの含有量を、0.24質量部含有するものであり、
参考例1,2は、接合材2を用い、増粘剤として使用するスメクトンの含有量を、1.00質量部または0.75質量部含むものである。
参考例3〜6は、アルミナ粒子及びコージェライト粒子の比率が接合材1及び接合材2と異なる接合材4(詳細は後述する)を用い、増粘剤として、キサンタンガムを0.08質量部から0.24質量部の範囲で変化させ、更にスメクトンを0.20質量部から1.00質量部の範囲で変化させた二種類の増粘剤を含むものである。
【0071】
アルミナ粒子及びコージェライト粒子を含み、更に無機繊維を4質量部含むものを接合材1と定義し、無機繊維を8質量部含むものを接合材2と定義する。更に、アルミナ粒子及びコージェライト粒子を含まないものを接合材3と定義し、アルミナ粒子及びコージェライト粒子の比率が接合材1等と異なり、無機繊維を12質量部含むものを接合材4と定義する。実施例1〜
13及び参考例1〜6の接合材の配合条件を表1に示す。これらの接合材を用いてハニカム構造体40を製造した。ハニカム構造体40の製造条件(接合条件)を表2に示す。なお、実施例1〜
13及び参考例1〜6では、ハニカム焼成体20に対する下地処理、スペーサ形成、端面22を保護するためのマスク処理に係る工程を行っていない。
【0072】
(比較例1〜16)
一方、比較例1〜8は、接合材1または接合材2中に増粘剤としてキサンタンガム、ダイユータンガム、またはスメクトンを含まないものである。更に、比較例9,10は接合材1中のキサンタンガムの含有量を、対水比で0.04質量部または0.64質量部含有するものである。比較例11,12は、アルミナ粒子及びコージェライト粒子を含まないものであり、かつ、増粘剤としてキサンタンガムの含有量を、対水比で0.12質量部含有するものである(接合材3)。比較例13〜16は、接合材4中に増粘剤を含まないものである。比較例1〜16の接合材の配合条件を表1に示す。これらの接合材を用いてハニカム構造体40を製造した。ハニカム構造体40の製造条件(接合条件)を表2(実施例1〜
13及び参考例1〜6)、及び表3(比較例1〜16)に示す。なお、比較例1〜4では、ハニカム焼成体20に対するマスク処理を行っている。また、比較例1〜8では、ハニカム焼成体20に対するスペーサ形成を行っている。更に、比較例13〜16では、ハニカム焼成体20に対するマスク処理及びスペーサ形成のいずれも行っている。
【0073】
【表1】
【0074】
【表2】
【0075】
【表3】
【0076】
実施例1〜
13及び参考例1〜6、及び比較例1〜16の接合材を用い、四角柱状のハニカム焼成体20からハニカムブロック体10を形成し、乾燥、端面研削、外周研削、及び外周コートの各工程を経て、
図2に示すような円柱状のハニカム構造体を作製した。
【0077】
得られたハニカム構造体について、実施例1〜
13及び参考例1〜6においては、掻き取り、ハツリ、マスク剥がしは行わず、端面汚れと端面割れのいずれにおいても不具合は発生しなかった。更に、ハニカム構造体について、以下の方法で剪断強度及びヤング率の測定を行った。なお、掻き取りとはゴムベラ等を用いて端面や側面にはみ出した接合材を除去する作業であり、ハツリとは接合体の乾燥後に側面に残留する接合材を金属ヘラ等を用いて除去する作業を言う。
【0078】
(剪断強度及びヤング率の測定)
ハニカム構造体より、隣接する2本のハニカム焼成体を接合された状態のまま切り出し、一方のハニカム焼成体を固定し、もう一方のハニカム焼成体に対してその長軸方向から荷重をかけることにより測定する。荷重をかけて、2本のハニカム焼成体が分断された時の最大荷重を剪断強度とする。係る状態の応力と歪み量との関係からヤング率を算出した。
【0079】
剪断強度は200kPa以上のものが合格であり、ヤング率は60MPa以下が合格である。測定及び算出の結果を下記の表4に示す。これによると、実施例1〜
13及び参考例1,2の接合材を用いたハニカム構造体は、いずれの場合において剪断強度及びヤング率は、上記合格基準を満たしていた。したがって、十分な実用性を有することが確認された。更に、増粘剤として、キサンタンガムに替えてダイユータンガム或いはスメクトンを用いた場合であっても(実施例9〜11、
参考例1,2)、或いは、アルミナ原料及びコージェライト化原料を含まない接合材3を用いた場合であっても実用性が確認された。
【0080】
【表4】
【0081】
これに対し、比較例1〜8のように、増粘剤を含まない場合、余剰の接合材を除去するために端面及び側面に対する掻き取り及び側面のハツリが必要であり、端面汚れや端面割れ等の不具合が見られる場合があった。一方、キサンタンガムを増粘剤として加える場合であっても、対水比で0.04質量部含有するもの(比較例9)は、端面汚れが発生した。すなわち、実施例7に示すように、少なくとも0.06質量部以上含有させる必要があることが確認された。一方、増粘剤の含有量が0.64質量部以上の場合(比較例10)、剪断強度が195kPaと合格基準を満たさないものとなった。
【0082】
キサンタンガムを増粘剤として用いる場合、対水比で0.06質量部以上、0.60質量部以下にする必要がある。一方、アルミナ粒子及びコージェライト粒子を含まない接合材3の場合、キサンタンガムの含有量が、0.12質量部では端面汚れ等の不具合が発生した。そのため、実施例12,13のように、対水比で少なくとも0.24質量部以上のキサンタンガムを含有する必要があることが示された。
【0083】
(粘度の測定、及びチキソトロピー性指数の算出)
B型回転式粘度計(TOKI VISCOMETER TVB−10:東機産業株式会社製、H7ロータ使用)を用い、測定時間を60s、ロータ回転速度を10rpmに設定した条件で、常温の状態で接合材の粘度を測定した(評価A)。更に、Thermo SCIENTIFIC社製の粘度計測装置(HAAKE VISCOMETER 550)を用い、それぞれの実施例及び比較例におけるチキソトロピック性指数(Ti値)を算出した。なお、評価プログラムを変更することにより、既に説明したヒステリシス曲線に基づく評価方法(評価B)及びクリープ回復に基づく評価方法(評価C)をそれぞれ実施した。それぞれの結果を表4に示す。これによると、クリープ回復に基づく評価方法(評価C)を採用して、チキソトロピー性指数(Ti値)を算出した方が、バラツキのない精度の高いTi値を得られることが確認された。なお、比較例10は高粘度となったため、上記粘度計測装置では評価Cによる算出を行うことができなかった。そのため、表4において当該項目は省略して示している。